特許第6063878号(P6063878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6063878合金で作られた負極を備えたリチウムイオン電池が完全に充電されたことを判定する方法、その関連電池及びバッテリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063878
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】合金で作られた負極を備えたリチウムイオン電池が完全に充電されたことを判定する方法、その関連電池及びバッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20170106BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170106BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170106BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   H01M10/44 A
   H01M10/48 301
   H01M10/052
   H02J7/04 K
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-558455(P2013-558455)
(86)(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公表番号】特表2014-512070(P2014-512070A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】EP2012054632
(87)【国際公開番号】WO2012126817
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】1152264
(32)【優先日】2011年3月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】513233506
【氏名又は名称】ルノー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レニエ イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ポルシェ ヴィリー
【審査官】 早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−285647(JP,A)
【文献】 特表2008−535174(JP,A)
【文献】 特開2008−067420(JP,A)
【文献】 特開2010−032349(JP,A)
【文献】 特開2004−039512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42−10/48
H01M4/00−4/62
H01M10/05−10/0587
H02J7/00−7/12
H02J7/34−7/36
G01R31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの合金で形成された負極を備えたリチウムイオンアキュムレータ(A,A2,A3)のスタックの充電状態の終了を決定する方法であって、
各リチウムイオンアキュムレータは、当該リチウムイオンアキュムレータを前記スタック内の適所に保持するための横方向機械支持体によって互いに離れており、対向するアキュムレータの外側面の間の決定力による表面圧力を検出し、前記表面圧力が、前記負極でのイオン挿入による少なくとも1個のアキュムレータの厚さ増加によって生成され、それにより充電終了状態が定義される方法。
【請求項2】
少なくとも50Nの前記表面圧力の決定力が検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面圧力を生成する前記厚さ増加が、少なくとも0.1mmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの合金で形成された負極を備えたリチウムイオンアキュムレータ(A,A2,A3)の充電状態の終了を決定するための装置(10)であって、
複数のリチウムイオンアキュムレータ(A1,A2,A3)のスタックであって、各アキュムレータが、少なくとも1つの合金で形成されたリチウム挿入物を含む少なくとも1個の負極、1個の正極、及び電解質が含浸されたセパレータから成る少なくとも1個の電子化学セルと、各電子化学セルをシールで収容するように配置されたパッケージとを含むスタックと、
負極でのイオン挿入による厚さ増加によって生成された、前記少なくとも1個のアキュムレータによって加えられる圧力下の堅いケーシング(3)と、
変形に垂直な平面内に配置された横方向機械支持体(4)により前記堅いケーシング(3)内の適所に保持される前記アキュムレータスタック(A1,A2,A3)内の前記アキュムレータ(A2)と、
前記アキュムレータ(A2)の前記パッケージの前記外側部分の両側に取り付けられたコンタクタの少なくとも2つの可動部分(20)又は2つの力センサ(2’)と、を備え、
前記スタック内の各センサ(20,2’)が、決定力下で別のアキュムレータ(A1,A3)の外側部分の表面から離れている放電状態と、前記決定力により前記別のアキュムレータ(A1,A3)の前記パッケージの前記外側部分に対して表面に当たっている充電終了状態と、になることができる装置(10)。
【請求項5】
前記最上(A1)の前記アキュムレータの前記パッケージの前記外側部分上又は前記堅いケーシングの内側に取り付けられた少なくとも1個のセンサ(20,2’)を備える、請求項4に記載の装置(10’)。
【請求項6】
横方向機械支持体(4)によって適所に保持された前記最下(A3)の前記アキュムレータ、及び少なくとも1個の空所によって前記堅いケーシング(3)から離された前記最上(A1)の前記アキュムレータと、
前記スタックの前記最上(A1)の前記アキュムレータの前記パッケージの前記外側部分に取り付けられた可動部分と前記堅いケーシングの前記内側に取り付けられた固定部分とを有する少なくとも1個のコンタクタ(2)と、を備える、請求項4又は5に記載の装置(10’)。
【請求項7】
前記堅いケーシングの前記最下に最も近くに前記アキュムレータ(A3)を機械的に取り付けるための手段が、接着剤である、請求項6に記載の装置(1,1’,10,10’)。
【請求項8】
各負極が、単一合金、又は合金とグラファイトLi4Ti512、TiO2などの他のリチウム挿入材料の混合物とにより形成された、請求項4〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
各正極は、LiMO2(M=Co、Ni、Mn、Al、Mg又はこれらの混合物)、マンガンスピネルLiMn24若しくは高電圧スピネルLiMn1.5Ni0.54などの一般式LiM24のスピネル酸化物、LiMPO4(M=Co、Ni、Fe、Mn、Mg、B又はこれらの混合物)などのリン酸塩を主成分とする材料、又は式Li(1+x)MOy(M=Ni、Co、Mn又はこれらの混合物。式中0.5<x<2及び2<y<3)の過剰化学量論層状酸化物などの層状酸化物で形成された、請求項4〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記電極間のイオン伝導を保証する各電解質が、酸塩を主成分とする液体、又はリチウムイオンを伝導するゲル高分子若しくはイオン液体の形である、請求項4〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
電極間の電気的絶縁を保証する各セパレータが、含浸させる電解質を通す膜からなり、前記膜が、高分子を基材とする、請求項4〜10のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの合金で形成された負極を備えたリチウムイオンアキュムレータの充電終了状態を決定する方法に関する。
【0002】
本発明は、このタイプのリチウムイオン(Li−ionと略記される)アキュムレータの充電終了状態に関する単純で確実なインジケータを提供することを対象とする。
【0003】
本発明は、また、このタイプのリチウムイオンアキュムレータを含む装置、並びにこの方法を適用するために、現在「バッテリパック」と呼ばれるこのタイプの幾つかのアキュムレータのアセンブリに関する。
【背景技術】
【0004】
リチウムイオンアキュムレータの負極は、単一合金、合金の混合物、又は合金とリチウム挿入のための他の材料(合成又は天然の形のグラファイト、Li4Ti512、TiO2…)の混合物で形成されてもよい。この負極は、また、電子伝導添加剤と、リチウムイオンバッテリ用途又はその応用方法に好適な機械的性質及び電気化学的性能を与える高分子添加剤とを含んでもよい。
【0005】
リチウムイオンLiを含む合金を電気化学的に作成する際、少なくとも1つの合金で形成された負極は、結晶格子定数が著しく増加する。合金の結晶格子定数のこの著しい増加は、負極の固有有孔率によって吸収できない。換言すると、連続充電サイクル中、負極は、その寸法、主にその厚さが増加する。徐々に、リチウムイオンバッテリの構成要素の全体、即ちセパレータ、電極、コレクタ、及びパッケージが、低い弾性を有する場合は、合金の結晶格子定数の著しい増加によって、パッケージに応力が生じ、パッケージがその剛性により変形する。
【0006】
合金の膨張は、少なくとも1つの合金で形成された負極を備えたリチウムイオンアキュムレータの充電中に、実際のアキュムレータ、アキュムレータを含むパッケージ、幾つかのリチウムイオンアキュムレータのアセンブリ(リチウムイオンバッテリパック)、リチウムイオンバッテリ又はリチウムイオンバッテリパックを内蔵するシステムに有害なことがあり、パッケージが変形する場合は、パッケージ内の圧力又はパッケージによって他の部分に加えられる圧力が制御されない。
【0007】
通常、リチウムイオンアキュムレータの充電終了状態のインジケータを得る従来の手法は、その電圧及び/又は電流から充電状態を追跡することである。多少複雑な方法が存在し、特にオーム抵抗及び/又はその温度を考慮する。ここで、特許文献1を言及することができる。これらの方法は、実際には、前述の圧力も生じる変形も制御しない。
【0008】
リチウムイオンアキュムレータの高分子柔軟パッケージの物理的変位又は要素に対するパッケージの圧力上昇の連続的測定は、特許文献2から知られており、変位又は圧力増加のこの変化は、負極でのイオン挿入による厚さの増加によって生成される。次の2つの実施形態が提供される。図5の実施形態によると、リチウムイオンアキュムレータ40の高分子スタックが、ばねによって結合された2枚の堅い板41と43の間に配置され、その間に、変位の連続検出を可能にする直線変位ゲージ45が接続される。図6の実施形態によると、同一タイプ50のスタックとスタック50に永久的に当たる柔軟なポケット51とが、堅いハウジング53内に配置され、柔軟なポケット50が、液体で満たされ、堅いハウジング53の外側に延在する管55により拡張される。圧力上昇は、管55内の液位を上昇させ、これにより連続検出が可能になる。
【0009】
厚さ増加は、きわめて小さく、約数マイクロメートルなので、使用される検出器45、50、55は、必然的に極めて高精度でなければならない。更に、そのような検出器は、使い易くない。最後に、厚さ増加の検出は、全体的のみであり、即ち、スタック40又は50のアセンブリに関してだけ行われ、前記スタックを構成するアキュムレータ30ごとに個々には行われない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第2010/0121591号
【特許文献2】米国特許第5,438,249号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、アキュムレータ、そのパッケージ、このタイプの幾つかのアキュムレータを有するリチウムイオンバッテリパック、又はリチウムイオンバッテリパックと内蔵電子部品を含む完成リチウムイオンシステムの劣化を防ぐために、使い易くかつ高信頼性で、少なくとも1つの合金で形成された負極を備えたリチウムイオンアキュムレータの充電終了状態の決定を可能にする解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これを行うため、本発明の目的は、少なくとも1つの合金で形成された負極を備えたリチウムイオンアキュムレータの充電終了状態を決定する方法であり、この方法により、要素に対するアキュムレータの外側部分の決定力(determined force)による表面圧力が検出され、表面圧力は、負極でのイオン挿入による厚さ増加によって生成され、したがって充電終了状態を定義する。
【0013】
発明者は、まず最初に、リチウムイオンアキュムレータの少なくとも1つの合金で形成された負極の厚さが、電位をかけた段階で完了する一定電流で充電中に時間と共に、アキュムレータの容量と同様に時間と共に単調変化したことを示し、このことは図1から規定される。発明者は、このことから、係るアキュムレータの充電が、主に負極合金の厚さ方向の体積膨張がしきい値に達したときに直ちに停止されることがあるという結論を導き出した。したがって、発明者は、機械的当接として働く別の要素による表面圧力を作成することによって、合金の体積膨張による負極の厚さ増加のこのしきい値を検出する概念を有していた。したがって、本発明により充電中に厚さが増加するアキュムレータの機械的当接を提案することによって、使い易くかつ高信頼性の充電終了状態が定義される。更に、本発明による方法は、充電状態を追跡するための既存の方法の追加として使用されてもよく、充電状態を連続的に測定する。ここで、本発明によって、充電段階でアキュムレータ又はその環境が損なわれないことが保証される。
【0014】
有利には、表面圧力の決定力(少なくとも50N)が検出される。
【0015】
更に有利には、表面圧力を生成する厚さ増加は、少なくとも0.1mmである。
【0016】
本発明は、また、前述の方法を適用するための装置に関し、装置は、
電解質の両側に少なくとも1つの合金で形成されたリチウム挿入物を含む少なくとも1個の負極と正極とから成る少なくとも1個の電子化学セルと、電子化学セルをシールで収容するように配置されたパッケージとを有する少なくとも1個のリチウムイオンアキュムレータと、
負極でのイオン挿入による厚さ増加によって生成された、少なくとも1個のアキュムレータによって加えられた圧力下にある堅いケーシングと、
アキュムレータを機械的に取り付け、負極でのイオン挿入による厚さ増加の際に、アキュムレータを堅いケーシング内の適所に保持することを可能にするための少なくとも1個の手段と、
パッケージの外側部分又は堅いケーシングの内側面のうちの1つに取り付けられた少なくとも1個の力センサとを有し、前記力センサは、2つの状態をとることができ、その一方が、いわゆる放電状態(力センサが、決定力下で堅いケーシング又はパッケージの外側部分の表面からそれぞれ離れているか又はその表面に当たっている)であり、他方が、いわゆる充電終了状態(力センサが、決定力を有する堅いケーシング又はパッケージの外側部分の表面にそれぞれ当たっている)である。
【0017】
この場合、アキュムレータの充電中、バッテリ充電器が電気回路網に接続され、したがって力センサの低い電気消費量が、厳密に言うとアキュムレータ(バッテリ)の充電にわずかな影響しか及ぼさないことが規定される。
【0018】
角柱型の形状を有するアキュムレータの場合、機械的保持手段は、アキュムレータの主変形に垂直な平面内に配置され、
円筒型の形状を有するアキュムレータの場合、機械的保持手段は、円筒の回転軸に垂直な平面内に配置されることも規定される。
【0019】
いわゆる「バッテリパック」アセンブリを作成したいとき、装置は、
横方向機械支持体の間の複数の別個のリチウムイオンアキュムレータのスタックであって、横方向機械支持体が、アキュムレータをスタック内の適所に保持するためのものであり、最下のアキュムレータが、機械的取付け手段によって適所に保持され、最上のアキュムレータが、少なくとも1個の空所によって堅いケーシングから離れているか、力センサに直接接触しているスタックと、
スタックの最上のアキュムレータのスタックの外側部分又は堅いケーシング内に取り付けられた少なくとも1個の力センサと、スタック内の各アキュムレータのパッケージの外側部分に取り付けられた少なくとも1個の力センサとを含む複数の力センサとを有し、スタック内の各力センサは、また、力センサが、別のアキュムレータの外側部分から決定力下で表面から離れている放電状態と、力センサが、決定力を有する別のアキュムレータのパッケージの外側部分に対して表面に当たっている充電終了状態とになることができる。
【0020】
本発明は、また、前述の方法を適用するための装置に関し、装置は、
少なくとも1つの合金で形成されたリチウム挿入物を含む少なくとも1個の負極と、電解質が含浸されたセパレータによって分離された正極とから成る少なくとも1個の電子化学セルと、電子化学セルをシールで収容するように配置されたパッケージと有する少なくとも1個のリチウムイオンアキュムレータと、
負極でのイオン挿入による厚さ増加によって生成された、少なくとも1個のアキュムレータによって加えられた圧力下の堅いケーシングと、
負極でのイオン挿入による厚さ増加の際にアキュムレータを機械的に取り付け、アキュムレータを堅いケーシング内の適所に保持することを可能にする少なくとも1個の手段と、
コンタクタとを有し、コンタクタの可動部分が、アキュムレータのパッケージの外側部分に取り付けられ、固定部分が、堅いケーシング内に取り付けられ、コンタクタの可動部分は、固定部分から離れている位置(いわゆる放電位置)と、決定力によりコンタクタの固定部分に対して表面に当たっている位置(いわゆる充電終了位置)との間で動くことができる。
【0021】
「バッテリパック」アセンブリを作成したいとき、装置は、
横方向機械支持体によって互いに離された複数のリチウムイオンアキュムレータのスタックであって、横方向機械支持体が、アキュムレータをスタック内の適所に保持するためのものであり、最下のアキュムレータが、機械的取付け手段によって適所に保持され、最上のアキュムレータが、少なくとも1個の空所によって堅いケーシング(3)から離されたスタックと、
スタックの最上及び/又は最下のアキュムレータのパッケージの外側部分に取り付けられた可動部分と、堅いケーシング内に取り付けられた固定部分とを有する少なくとも1個のコンタクタと、スタック内の各アキュムレータのパッケージの外側部分に取り付けられた可動部分を有する少なくとも1個のコンタクタとを含む複数のコンタクタとを有し、スタック内の各可動コンタクタ部分が、別のアキュムレータの外側部分に取り付けられた別の可動コンタクタ位置から離れている放電位置と、決定力により別のアキュムレータのパッケージの外側部分に取り付けられた他の可動コンタクタ部分に対して表面に当たっている充電終了位置との間で動くことができる。
【0022】
本発明による「バッテリパック」では、コンタクタのうちの1つが閉じたとき、又は力センサのうちの1つが予め決定された圧力(好ましくは少なくとも50N)に達したとき直ちに充電終了に達することが規定される。
【0023】
また、本発明による「バッテリパック」では、充電段階中に全てのアキュムレータが同じ充電状態に留まるように、「バッテリパック」の全てのアキュムレータ間の能動的平衡を達成するのに好適な手段が提供されることが規定される。
【0024】
最後に、スタックの全てのアキュムレータが個々に両側に空所を有するとき、換言すると、アキュムレータが多少浮いているとき、全ての横方向機械的保持手段に、互いにほぼ同じ高さを有するくさびなどが提供されることが規定される。
【0025】
したがって、使い易くかつ信頼性が証明された(コンタクタ又は力センサ)手段によって、破損のリスクを回避するために超えてはならない少なくとも1つの合金で形成された負極の変形しきい値を検出することができる。
【0026】
アキュムレータと堅いケーシングとの間の機械的取付け手段は、有利には接着剤でよい。したがって、堅いケーシングの最下に最も近いアキュムレータの機械的取付け手段は、前記アキュムレータを堅いケーシングに取り付けるための接着剤でよい。
【0027】
各負極は、単一合金(Si,Sn,Al,Sb…)、合金の混合物、又は合金と他のリチウム挿入材料(グラファイト、Li4Ti512、TiO2など)との混合物で形成されてもよい。
【0028】
各正極は、LiMO2(M=Co、Ni、Mn、Al、Mg又はこれらの混合物)、マンガンスピネルLiMn24、高電圧スピネルLiMn1.5Ni0.54などの一般式LiM24のスピネル酸化物、LiMPO4(M=Co、Ni、Fe、Mn、Mg、B又はこれらの混合物)などのリン酸塩を主成分とする材料、又は式Li(1+x)MOy(M=Ni、Co、Mn又はこれらの混合物。式中0.5<x<2、2<y<3)の過剰化学量論層状酸化物などの層状酸化物で形成されてもよい。
【0029】
電極間のイオン伝導を保証する各電解質は、炭酸塩などを主成分とする液体でもよく、リチウムイオンを伝導するゲル高分子又はイオン液体の形でよい。意図された電位(Li+/Liに対して0〜5ボルト)で通常はLiPF6などのリチウム塩の溶解を可能にする他の安定化合物が意図されてもよい。
【0030】
電極間の電気絶縁を保証する各セパレータは、含浸させる電解質を通す膜からなり、前記膜は、高分子を基材とする。リチウムイオンのための他の電気絶縁及びイオン伝導成分が意図されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
他の特徴及び利点は、以下の図を参照して限定ではなく例示として行われる以下の説明を読むとより明らかになる。
【0032】
図1】定電位段階で完了する定電流で充電する際の、少なくとも1つの合金で形成された負極を備えたリチウムイオンアキュムレータの容量と厚さの時間に対する時間依存変化を示す図である。
図2】少なくとも1つの合金で形成された負極を備えた単一リチウムイオンアキュムレータを備える本発明の第1の実施形態による装置の概略断面図である。
図3】少なくとも1つの合金で形成された負極を備えた3つのリチウムイオンアキュムレータのスタックを備える本発明の第1の実施形態による装置の概略断面図である。
図4】少なくとも1つの合金で形成された負極を備えた単一リチウムイオンアキュムレータを備える本発明の第2の実施形態による装置の概略断面図である。
図5】少なくとも1つの合金で形成された負極を備えた3つのリチウムイオンアキュムレータのスタックを備える本発明の第2の実施形態による装置の概略断面図である。
図6】充放電サイクルに対する少なくとも1つの合金で形成された負極を備えたリチウムイオンアキュムレータの厚さに依存する変形の時間依存変化を示すグラフである。
図7A】少なくとも1つの合金で形成された負極を備えたリチウムイオンアキュムレータの応力、電位及び電流の時間依存変化を示すグラフであり、応力は、アキュムレータと近くに固定された要素との間の力センサによって測定され、充電は、最新技術により電流しきい値を検出することによって停止される。
図7B】少なくとも1つの合金で形成された負極を備えたリチウムイオンアキュムレータの応力、電位及び電流の時間依存変化を示すグラフであり、応力は、アキュムレータと近くに固定された要素との間の力センサによって測定され、充電は、本発明によりセンサで力しきい値を検出することにより停止される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1の説明は、前書きで既に行われており、したがってここでは更に詳しく述べない。
【0034】
次に、本発明による少なくとも1つの合金で形成された負極を備えた例示的なリチウムイオンアキュムレータについて説明する。
【0035】
負極は、
・リチウムと合金を形成する、質量の10〜98%の割合で含まれるナノメートル粒子又はマイクロメートル粒子の形のシリコンと、
・質量の1〜20%の割合で含まれる電子伝導体と、
・質量の1〜30%の割合で含まれるバインダとで形成される。この多孔質負極は、その有孔率が体積の15〜50%で含まれ、銅の電流コレクタ上に付着される。
【0036】
正極は、
・質量の80〜98%の割合で含まれるLiNixMnyCoz2型のリチウム酸化物と、
・質量の1〜10%の割合で含まれる電子伝導体と、
・質量の1〜10%の割合で含まれるバインダとで形成される。この多孔質正極は、その有孔率が体積の15〜50%で含まれ、アルミニウムの電流コレクタ上に付着される。
【0037】
これらの電極(負極と正極)は両方とも、体積の20〜60%で含まれる有孔率と典型的には5〜50μmの小さい厚さとを有する多孔質ポリエチレンを主成分とするセパレータによって分離された角柱状マンドレルに巻き付けられる。
【0038】
両電極とセパレータとを含む電気化学的コアの巻き付け厚さは、4.5mmであり、これは、
・約3mmの正極及びアルミニウムコレクタと、
・約1mmの負極及び銅コレクタと、
・約0.5mmのセパレータとを含む。
【0039】
電気化学的コアは、柔軟袋でパッケージされて、柔軟パッケージを形成し、リチウム塩を含む炭酸塩の混合物(例えば、1mol/Lの濃度のLiPF6を含む、炭酸エチレンと炭酸ジメチルが1:1の割合の混合物)である電解質による活性化時にヒートシールされる。
【0040】
したがって、本発明による少なくとも1つの合金で形成された負極を備えたリチウムイオンアキュムレータの厚さは、活性化されたとき約4.7mmである。
【0041】
充電/放電サイクル中、本発明によるリチウムイオンアキュムレータは、パッケージの剛性が低いため厚さの変化を受ける。本発明によるリチウムイオンアキュムレータのそのような厚さ変化は、柔軟パッケージの外側部分に取り付けられた歪みゲージにより測定され、その測定値を図6に示す。したがって、厚さは、最初のサイクルで約5.7mmまで増加することがあり、これは、活性化されたアキュムレータの厚さに対する約21%の増加を表わすことが分かる。
【0042】
この図6では、サイクル速度条件はC/20と同等と示され、これは、充電又は放電を行うのに20時間必要であることに相当する。
【0043】
したがって、充電終了状態を決定するために、単一アキュムレータ又はアキュムレータスタックの堅いケーシングにコンタクタ又は力センサを組み込んで、堅いケーシングに大きすぎる応力が生じるのを防ぐことができる。
【0044】
図2図4は、上記の例で定義されたような、単一リチウムイオンアキュムレータAを含む本発明による装置1,1’それぞれへのコンタクタ2又は力センサ2’の組み込みを示す。より正確には、アキュムレータAは、堅いケーシングに向いている面で接着することによって堅いケーシング3内の適所に保持され、主な変形は、負極でのイオン挿入による変形である。コンタクタ2の可動部分20は、アキュムレータAの柔軟パッケージの外側部分に取り付けられる。コンタクタ2の固定部分21は、可動部分20に向いている堅いケーシングの内壁に取り付けられる。力センサ2’は、堅いケーシング3の内壁に取り付けられる。
【0045】
図3図5は、上の例で定義されたような3つのリチウムイオンアキュムレータA1、A2、A3のスタックを含む本発明による装置10,10’それぞれへのコンタクタ2又は力センサ2’の組み込みを示す。アキュムレータの配置は、主変形に垂直な平面内に配置された横方向機械支持体4が、スタックに挿入されたアキュムレータA2を適所に保持すること以外、図2図4と同じように達成される。また、コンタクタ2と力センサ2’の取り付けは、コンタクタ又は2つの力センサ2’の2つの可動部分20が、スタックの真ん中のアキュムレータA2のパッケージの外側部分の両側に取り付けられること以外、図2図4と同じように達成される。
【0046】
したがって、コンタクタ2又は力センサ2’の力しきい値は、堅いケーシング3の許容可能な変形に基づく配慮により定義される(この場合は200N)。充電電圧しきい値(電気化学的配慮に基づく)は、10mA未満の電流で充電する場合は4.2Vであるように定義される。これらの充電終了インジケータは両方とも、図7A図7Bに示されたように実際には相補的であり、充電は、最新技術による電位充電終了のインジケータ及び/又は本発明による応力充電終了インジケータ2,2’によってそれぞれ停止される。
【0047】
これらの図7A図7Bにおいて、用語C/nは、サイクルCを実行するのに必要な時間数nに相当する。省略形CVは、充電を終了するために電流を減少させながら電圧が特定の値に設定されることを意味する。
【0048】
本発明の範囲内で、コンタクタ又は力センサの調整は決定的であり、アキュムレータの充電/放電サイクルの数により変化しないことが明示される。それにより、充電終了状態は、最大変形に達したときに直ちに定義される。
【符号の説明】
【0049】
1 装置
2 力センサ
3 堅いケーシング
20 可動部分
21 固定部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B