特許第6063881号(P6063881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧

<>
  • 特許6063881-燃料噴射ノズル 図000002
  • 特許6063881-燃料噴射ノズル 図000003
  • 特許6063881-燃料噴射ノズル 図000004
  • 特許6063881-燃料噴射ノズル 図000005
  • 特許6063881-燃料噴射ノズル 図000006
  • 特許6063881-燃料噴射ノズル 図000007
  • 特許6063881-燃料噴射ノズル 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063881
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】燃料噴射ノズル
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/18 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   F02M61/18 330Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-25298(P2014-25298)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-208991(P2014-208991A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2015年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-71199(P2013-71199)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】田名田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】掛橋 展久
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 一史
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 真光
(72)【発明者】
【氏名】有川 文明
(72)【発明者】
【氏名】鎌原 本也
(72)【発明者】
【氏名】稗島 利明
(72)【発明者】
【氏名】林 朋博
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】戸田 直樹
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−045465(JP,A)
【文献】 特表2004−521266(JP,A)
【文献】 特開平06−081750(JP,A)
【文献】 特開平04−347362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00− 3/18、 7/00− 9/08
B41J 2/01− 2/215
F02M 39/00−71/04
F23D 11/36−11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のノズルボディ(3)と、このノズルボディ(3)の内周に軸方向に移動可能となるように収容されるニードル(2)とを備え、前記ニードル(2)が前記ノズルボディ(3)の内周で軸方向に移動することで燃料の噴射を開始または停止する燃料噴射ノズル(1)において、
前記ノズルボディ(3)の内壁の一部であり、前記ニードル(2)の軸方向の先端近傍に設けられたニードル側シート部(13)が離着するボディ側シート部(10)と、
前記ボディ側シート部(10)よりも軸方向の先端側で前記ノズルボディ(3)の内壁に開口するとともに、前記ノズルボディ(3)の外壁に開口し、前記ニードル側シート部(13)が前記ボディ側シート部(10)から離座することで前記ノズルボディ(3)の内周から外部に燃料を導く噴孔(11)と、
この噴孔(11)の前記内壁における開口(11a)の寸法の内、前記ノズルボディ(3)の周方向に関する寸法(La1)と、前記噴孔(11)の前記外壁における開口(11b)の寸法の内、前記ノズルボディ(3)の周方向に関する寸法(Lb1)との大小関係であり、前記寸法(La1)が前記寸法(Lb1)よりも小さい第1の関係と、
前記内壁における開口(11a)の寸法の内、前記ノズルボディ(3)の周方向に垂直かつ前記内壁における開口(11a)に平行となる方向に関する寸法(La2)と、前記外壁における開口(11b)の寸法の内、前記ノズルボディ(3)の周方向に垂直かつ前記外壁における開口(11b)に平行となる方向に関する寸法(Lb2)との大小関係であり、前記寸法(La2)が前記寸法(Lb2)よりも大きい第2の関係とを備え
前記内壁における開口(11a)は、軸方向に長い略2等辺三角形であり、軸方向の先端側に頂部が存在することを特徴とする燃料噴射ノズル(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射ノズル(1)において、
前記噴孔(11)の軸(γ)は前記ノズルボディ(3)の軸(β)に交差し、
前記軸(γ)および前記軸(β)を含む前記ノズルボディ(3)の特定断面において前記軸(γ)を挟んで前記噴孔(11)を画する2つの孔壁線(A、B)は直線であり、
前記2つの孔壁線(A、B)の内、前記ボディ側シート部(10)に近いほうの孔壁線(A)と前記軸(β)とがなす角度(θ1)は、前記ボディ側シート部(10)から遠いほうの孔壁線(B)と前記軸(β)とがなす角度(θ2)よりも小さいことを特徴とする燃料噴射ノズル(1)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料噴射ノズル(1)において、
前記内壁の内、前記ボディ側シート部(10)および前記内壁における開口(11a)が存在する壁部分の形状を規定する構造であり、前記壁部分の内、前記ボディ側シート部(10)を含む部分であるシート面は、前記ノズルボディ(3)の軸(β)と同軸の円錐面(17)として設けられ軸方向先端側ほど小径であって先端が円(20)であり、前記内壁における開口(11a)を含む部分である噴孔開口面は、前記軸(β)と同軸であって前記シート面の先端の径以下の径を有する円筒面(18)、または、この円筒面(18)の軸方向の先端側に連続するとともに、前記円筒面(18)の径と同じ径を有して軸方向の先端側に凸を形成する半球面(19)である第1構造を備える燃料噴射ノズル(1)。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の燃料噴射ノズル(1)において、
前記内壁の内、前記ボディ側シート部(10)および前記内壁における開口(11a)が存在する壁部分の形状を規定する構造であり、前記壁部分の内、前記ボディ側シート部(10)を含む部分であるシート面は、前記ノズルボディ(3)の軸(β)と同軸の円錐面(17)として設けられ軸方向先端側ほど小径であり、前記内壁における開口(11a)も前記シート面に存在する第2構造を備える燃料噴射ノズル(1)。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の燃料噴射ノズル(1)において、
前記内壁の内、前記ボディ側シート部(10)および前記内壁における開口(11a)が存在する壁部分の形状を規定する構造であり、前記壁部分の内、前記ボディ側シート部(10)を含む部分であるシート面は、前記ノズルボディ(3)の軸(β)と同軸の円錐面(17a)として設けられ軸方向先端側ほど小径であって先端が円(20)であり、前記内壁における開口(11a)を含む部分である噴孔開口面は、前記軸(β)と母線との間に形成される角度が前記シート面よりも小さく、かつ、前記軸(β)と同軸の円錐面(17b)として設けられ軸方向先端側ほど小径である第3構造を備える燃料噴射ノズル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を噴射する燃料噴射ノズル(以下、略してノズルと呼ぶことがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、内燃機関に燃料を噴射して供給する燃料噴射弁では、燃料を噴射するノズルと、このノズルを開弁駆動または閉弁駆動するアクチュエータとを備えるものが周知である。また、燃料噴射弁に用いられるノズル(燃料噴射ノズル)では、円筒状のノズルボディと、ノズルボディの内周に軸方向に移動可能となるように収容されるニードルとを備えるものが公知である。そして、このノズルは、ニードルがノズルボディの内周で軸方向に移動することで燃料の噴射を開始または停止する。
【0003】
つまり、ノズルボディの内壁には、ニードルの軸方向の先端近傍に設けられたニードル側シート部が離着するボディ側シート部が設けられ、さらに、ボディ側シート部よりも軸方向の先端側の内壁には、燃料の噴孔が複数開口している。そして、ニードル側シート部がボディ側シート部から離座することで、噴孔を通じてノズルボディの内周から外部に燃料が導かれて噴射される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、燃料噴射ノズルでは、エネルギー的に有利な構造を採用するため、燃料の流れ易さを示す流量係数を高める様々な検討がなされている。例えば、特許文献2によれば、噴孔のノズルボディ内周側の開口を「半楕円形状」とすることで、噴孔内におけるキャビテーションや流れの分布の偏り等を抑制して流量係数を高めることができるとしている。
【0005】
しかし、燃料噴射ノズルの流量係数は噴射圧が高くなるほど低下するので、噴射圧が高いほどエネルギー的に不利になる。このため、例えば、ディーゼルエンジンの気筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁のように、噴射圧の高圧化要求が高い用途では、更なる流量係数の向上策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−180763号公報
【特許文献2】特開2010−222977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射ノズルにおいて、流量係数を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明によれば、燃料噴射ノズルは、円筒状のノズルボディと、ノズルボディの内周に軸方向に移動可能となるように収容されるニードルとを備え、ニードルがノズルボディの内周で軸方向に移動することで燃料の噴射を開始または停止する。そして、燃料噴射ノズルは、次のボディ側シート部、噴孔、第1の関係および第2の関係を備える。
【0009】
まず、ボディ側シート部は、ノズルボディの内壁の一部であり、ニードルの軸方向の先端近傍に設けられたニードル側シート部が離着する。また、噴孔は、ボディ側シート部よりも軸方向の先端側でノズルボディの内壁に開口するとともに、ノズルボディの外壁に開口し、ニードル側シート部がボディ側シート部から離座することでノズルボディの内周から外部に燃料を導く。
【0010】
また、第1の関係とは、噴孔の内壁における開口(11a)の寸法の内、ノズルボディの周方向に関する寸法(La1)と、噴孔の外壁における開口(11b)の寸法の内、ノズルボディの周方向に関する寸法(Lb1)との大小関係であり、寸法(Lb1)が寸法(La1)よりも大きい、というものである。さらに、第2の関係とは、開口(11a)の寸法の内、ノズルボディの周方向に垂直かつ開口(11a)に平行となる方向に関する寸法(La2)と、開口(11b)の寸法の内、ノズルボディの周方向に垂直かつ開口(11b)に平行となる方向に関する寸法(Lb2)との大小関係であり、寸法(La2)が寸法(Lb2)よりも大きい、というものである。
さらに、開口(11a)は、軸方向に長い略2等辺三角形であり、軸方向の先端側に頂部が存在する。
【0011】
ここで、ニードル側シート部とボディ側シート部との間を通った燃料の流れは、噴孔に流入するために、外周側を向くように旋回する必要がある。このため、流れの旋回によりエネルギー的な損失が発生するので、燃料の流れが噴孔に向かって旋回する角度幅(以下、旋回角度幅と呼ぶ。)を低減すれば、エネルギー的な損失を抑制して流量係数を高めることができる。
【0012】
そこで、寸法(La2)を寸法(Lb2)よりも大きくすることで、内壁の開口(11a)の上流端を構造的に上流側へ寄せやすくする。これにより、旋回角度幅を低減して流量係数を高めることができる。また、寸法(Lb1)を寸法(La1)よりも大きくすることで、寸法(Lb2)が寸法(La2)よりも小さくなることによる流量の低下を抑制することができる。
【0013】
さらに、寸法(La1)が小さくなるので、ノズルボディの先端の周囲に複数の噴孔を設けてもサック室等の容量を小さくすることができる(サック室とは、ノズルボディの先端において、ノズルボディの内壁とニードルの先端部とで囲まれる空間である)。このため、噴射終了直後にサック室に残る燃料が減るので、サック室に残った燃料が気筒内に漏れることで生じる未燃炭化水素を低減することができる。
以上により、燃料噴射ノズルにおいて、流量係数を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】燃料噴射ノズルの全体を示す断面図である(参考例1)。
図2】(a)は料噴射ノズルの要部を示す特定断面における部分断面図であり、(b)は噴孔の形状を説明するための斜視図である(参考例1)。
図3】噴孔の寸法を示す説明図である(参考例1)。
図4】燃料噴射ノズルの要部を示す特定断面における部分断面図である(参考例2)。
図5】燃料噴射ノズルの要部を示す特定断面における部分断面図である(参考例3 )。
図6(a)は噴孔の寸法を示す説明図であり(参考例4)、(b)は噴孔の寸法を示す説明図である(実施例)。
図7】(a)〜(d)は特定断面における噴孔の形状を示す説明図であり、(e)は外壁における噴孔の開口形状を示す説明図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0016】
参考例1の構成〕
参考例1の燃料噴射ノズル1(以下、ノズル1と呼ぶ。)の構成を、図面を用いて説明する。
ノズル1は、開弁して燃料を噴射するものであり、ノズル1を開弁駆動または閉弁駆動するアクチュエータ(図示せず。)とともに燃料噴射弁を構成する。そして、燃料噴射弁は、例えば、内燃機関(図示せず。)に搭載され、100MPaを超える高圧の燃料を気筒内に直接噴射するために用いられる。
【0017】
なお、アクチュエータは、例えば、ノズル1の弁体(後記するニードル2)に作用する背圧を増減して弁体を駆動するものであり、コイル(図示せず。)への通電により発生する磁気力を利用して背圧室(図示せず。)を開閉することで背圧を増減する。
そして、燃料噴射弁は、例えば、燃料を高圧化して吐出する燃料供給ポンプ(図示せず。)、および、燃料供給ポンプから吐出された燃料を高圧状態で蓄圧する蓄圧容器(図示せず。)とともに蓄圧式の燃料供給装置を構成し、蓄圧容器から高圧の燃料を分配されて気筒内に噴射する。
【0018】
ノズル1は、図1に示すように、円筒状のノズルボディ3と、ノズルボディ3の内周に軸方向に移動可能となるように収容される弁体としてのニードル2とを備える。そして、ノズル1は、ニードル2がノズルボディ3の内周で軸方向に移動することで燃料の噴射を開始または停止する。
【0019】
ここで、ニードル2は、ノズルボディ3により軸方向に摺動自在に支持される摺動軸部2a、および、実質的に弁部として機能する円錐状の先端部2bを有し、摺動軸部2aと先端部2bとの間は軸方向に長い円柱部2cをなす。
ノズルボディ3の内周は、軸方向に長い円筒状をなし先端が閉じられている。また、ノズルボディ3の内周の一部は、局部的に径方向に拡大され、噴射すべき燃料が一時的に溜まる燃料溜まり4をなす。
【0020】
そして、ノズルボディ3の内周の内、燃料溜まり4の軸方向後端側の領域は、摺動軸部2aを摺動自在に支持するための摺動孔5をなし、燃料溜まり4の軸方向先端側の領域は、先端部2bおよび円柱部2cを収容して円環筒状の燃料通路6を形成する。なお、ノズルボディ3には、蓄圧容器から受け入れた燃料を燃料溜まり4に導くための燃料通路7が、別途、燃料溜まり4に接続している。
【0021】
以下、ノズル1の特徴的な構成を、図2および図3を用いて説明する。
ノズル1は、特徴的な構成として、図2(a)に示すように、ボディ側シート部10および噴孔11を備え、さらに、噴孔11の内外壁それぞれにおける開口11a、11bの寸法に係わる第1、第2の関係、および、ノズルボディ3の先端近傍の内壁の形状を規定する第1構造を備える。
【0022】
まず、ボディ側シート部10は、ノズルボディ3の先端近傍の内壁の一部であり、先端部2bに設けられたニードル側シート部13が離着する。
ここで、先端部2bの外周面は、例えば、3つの異なる円錐面14a、14b、14cが先端から軸方向後端側に同軸に連続するものであり、円錐面14a〜14cは、それぞれの母線とニードル2の軸αとの間に形成される角度が先端側ほど大きくなっている。そして、円錐面14a、14b同士の交線15a、および円錐面14b、14c同士の交線15bは軸αに垂直な円であり、交線15bがニードル側シート部13として機能し、ボディ側シート部10は円形である。
【0023】
また、噴孔11は、ボディ側シート部10よりも軸方向の先端側でノズルボディ3の内壁に開口し、ニードル側シート部13がボディ側シート部10から離座することでノズルボディ3の内周から外部に燃料を導く。つまり、ニードル側シート部13がボディ側シート部10から離座することで、ニードル側シート部13とボディ側シート部10との間に隙間が形成され、この隙間を通って燃料通路6から噴孔11に燃料が導入されてノズルボディ3の外部に噴射される。
【0024】
また、第1の関係とは、図3に示すように、開口11aの寸法の内、ノズルボディ3の周方向に関する寸法La1と、開口11bの寸法の内、ノズルボディ3の周方向に関する寸法Lb1との大小関係である。そして、第1の関係は、寸法La1が寸法Lb1よりも小さい、というものである。
【0025】
また、第2の関係とは、開口11aの寸法の内、ノズルボディ3の周方向に垂直かつ開口11aに平行となる方向に関する寸法La2と、開口11bの寸法の内、ノズルボディ3の周方向に垂直かつ開口11bに平行となる方向に関する寸法Lb2との大小関係である。そして、第2の関係は、寸法La2が寸法Lb2よりも大きい、というものである。
【0026】
ここで、開口11a、11bは、互いにほぼ平行であり、両方ともノズルボディ3の軸βにほぼ平行である。また、開口11aは、ノズルボディ3の軸方向に長いスリット状に設けられ、開口11aの軸方向先端、後端は、それぞれ、軸方向先端側、後端側に凸となる半円である。そして、半円の直径が寸法La1に相当し、先端側の半円の先端と後端側の半円の後端との距離が寸法La2に相当する。さらに、開口11bは、円形に設けられ、開口11bの直径が寸法Lb1、Lb2に相当する。なお、開口11aと開口11bとを結ぶ噴孔11はレーザ加工等により形成される。
【0027】
また、噴孔11の軸γは軸βに交差する。そして、ノズルボディ3の断面の内、軸β、γを含む特定断面を考えると、特定断面において、軸γを挟んで噴孔11を画する2つの孔壁線A、Bは直線である。また、ボディ側シート部10に近いほうの孔壁線Aと軸βとがなす角度θ1は、ボディ側シート部10から遠いほうの孔壁線Bと軸βとがなす角度θ2よりも小さい。このため、孔壁線A、B間の距離は、外壁に近いほど小さくなる。
【0028】
なお、噴孔11の内壁形状は、図2(b)に示すように、孔壁線A、B以外の部分でも、開口11a上の点Xaと、開口11bにおいて点Xaと周方向位置でほぼ対応する(寸法比率がほぼ対応する)点Xbとを結ぶ直線となっているが、孔壁線A、B以外の内壁形状はこのような態様に限定されない。例えば、点Xa、Xbを結ぶ線が曲線となるように噴孔11の内壁形状を設けてもよい。
【0029】
さらに、第1構造とは、ノズルボディ3の先端近傍の内壁の内、ボディ側シート部10を含む部分であるシート面と、開口11aを含む部分である噴孔開口面との関係を規定するものである。より詳しくは、第1構造によれば、シート面および噴孔開口面は、次のように規定される。まず、シート面は、軸βと同軸の円錐面として設けられ軸方向先端側ほど小径であって先端が円である、というものである。また、噴孔開口面は、軸βと同軸であってシート面の先端の径以下の径を有する円筒面、または、この円筒面の軸方向の先端側に連続するとともに、円筒面の径と同じ径を有して軸方向の先端側に凸を形成する半球面である、というものである。
【0030】
より具体的に説明すると、ノズルボディ3の先端近傍の内壁は、以下の円錐面17、円筒面18および半球面19を有し、ノズルボディ3の内周先端を袋状に閉じている。
円錐面17は、軸βと同軸に設けられ、軸方向先端側ほど小径であって先端が円20である。そして、円錐面17は、ボディ側シート部10を含んでシート面となっている。
【0031】
また、円筒面18は、軸βと同軸に設けられ、円20と同径であって円20から軸方向先端側に連続する。さらに、半球面19は、円筒面18と同径であり、軸方向先端側に凸を形成するように円筒面18に連続する。そして、噴孔11の内壁における開口11aは、円筒面18と半球面19とに跨るように設けられ、円筒面18、半球面19は、噴孔開口面となっている(以下、ノズルボディ3の先端近傍の内壁と先端部2bとで囲まれる空間をサック室21と呼ぶことがある。)。
【0032】
参考例1の効果〕
参考例1のノズル1は、次の第1、第2の関係を備える。まず、第1の関係とは、開口11aの寸法の内、ノズルボディ3の周方向に関する寸法La1と、開口11bの寸法の内、ノズルボディ3の周方向に関する寸法Lb1との大小関係である。そして、第1の関係は、寸法La1が寸法Lb1よりも小さい、というものである。また、第2の関係とは、開口11aの寸法の内、ノズルボディ3の周方向に垂直かつ開口11aに平行となる方向に関する寸法La2と、開口11bの寸法の内、ノズルボディ3の周方向に垂直かつ開口11bに平行となる方向に関する寸法Lb2との大小関係である。そして、第2の関係は、寸法La2が寸法Lb2よりも大きい、というものである。
【0033】
ここで、ボディ側シート部10とニードル側シート部13との間を通った燃料の流れは、噴孔11に流入するために、外周側を向くように旋回する必要がある。このため、流れの旋回によりエネルギー的な損失が発生するので、燃料の流れが噴孔11に向かって旋回する角度幅(旋回角度幅)を低減すれば、エネルギー的な損失を抑制して流量係数を高めることができる。
【0034】
そこで、寸法La2を寸法Lb2よりも大きくすることで、開口11aの上流端を構造的に上流側へ寄せやすくする。これにより、旋回角度幅を低減して流量係数を高めることができる。また、寸法Lb1を寸法La1よりも大きくすることで、寸法Lb2が寸法La2よりも小さくなることによる流量の低下を抑制することができる。
【0035】
さらに、寸法La1を小さくすることができるので、ノズルボディ3の先端近傍の周囲に複数の噴孔11を設けてもサック室21等の容量を小さくすることができる。このため、噴射終了直後にサック室21に残る燃料が減るので、サック室21に残った燃料が気筒内に漏れることで生じる未燃炭化水素を低減することができる。
以上により、ノズル1において流量係数を高めることができる。
【0036】
また、軸β、γを含む特定断面において、ボディ側シート部10に近いほうの孔壁線Aと軸βとがなす角度θ1は、ボディ側シート部10から遠いほうの孔壁線Bと軸βとがなす角度θ2よりも小さい。
これにより、旋回角度幅を低減することができる噴孔11を、さらに設定しやすくなるので、流量係数を高めやすくなる。
【0037】
参考例2〕
参考例2のノズル1は、ノズルボディ3の先端近傍の内壁の形状を規定する構造として、次の第2構造を備える。
ここで、第2構造とは、第1構造と同様にシート面と噴孔開口面との関係を規定するものであるが、第2構造によれば、図4に示すようにシート面および噴孔開口面は共通の円錐面17であって、共通の円錐面17にボディ側シート部10および開口11aが両方とも存在する。
【0038】
すなわち、第2構造は、シート面が軸βと同軸の円錐面17として設けられ軸方向先端側ほど小径であり、シート面に開口11aが存在する、というものである。
なお、参考例2のノズル1によれば、ノズルボディ3の先端近傍の内壁には、参考例1の円筒面18、半球面19に相当する部分が存在せず、内周先端には、研削による逃し22が形成されている。
第2構造によれば、サック室21を更に小さくすることができるとともに、ノズルボディ3の先端近傍の内壁を容易に加工することができる。
【0039】
参考例3〕
参考例3のノズル1は、ノズルボディ3の先端近傍の内壁の形状を規定する構造として、次の第3構造を備える。
ここで、第3構造とは、第1、第2構造と同様にシート面と噴孔開口面との関係を規定するものであるが、第3構造によれば、シート面および噴孔開口面は異なる2つの円錐面である。より詳しくは、第3構造によれば、シート面および噴孔開口面は、次のように規定される。すなわち、第3構造によれば、シート面は、軸βと同軸の円錐面として設けられ軸方向先端側ほど小径であって先端が円である。また、噴孔開口面は、軸βと母線との間に形成される角度がシート面よりも小さく、かつ、軸βと同軸の円錐面として設けられ軸方向先端側ほど小径である。
【0040】
より具体的に説明すると、図5に示すように、ノズルボディ3の先端近傍の内壁は、以下の第1、第2円錐面17a、17bを有している。
第1、第2円錐面17a、17bはノズルボディ3の軸βと同軸であり、第1円錐面17aは、軸方向先端側ほど小径であって先端が円20である。また、第2円錐面17bは、円20の軸方向先端側に連続しており、軸βと母線との間に形成される角度が第1円錐面17aよりも小さい。
【0041】
そして、ボディ側シート部10は第1円錐面17aに設けられ、第1円錐面17aがシート面となっている。また、開口11aは第2円錐面17bに設けられ、第2円錐面17bが噴孔開口面となっている。
なお、参考例3のノズル1によれば、ノズルボディ3の先端近傍の内壁には、参考例1の円筒面18、半球面19に相当する部分が存在せず、内周先端は、第3円錐面17cにより閉じられている。
また、第3構造によれば、サック室21を小さくすることができるとともに、ノズルボディ3の先端近傍の内壁を容易に加工することができる。
【0042】
実施例〕
実施例のノズル1によれば、図6(b)に示すように、開口11aは、軸方向に長い略2等辺三角形であり、軸方向の先端側に頂部が存在する。
なお、図6(a)に示すノズル1の開口11aは参考例であり、図6(a)の開口11aは、軸方向に長い略2等辺三角形に設けられ、軸方向後端側に頂部が配置されている。
【0043】
〔変形例〕
ノズル1の態様は実施例に限定されず、種々の変形例を考えることができる。
例えば、実施例のノズル1によれば、特定断面において噴孔11を画する2つの孔壁線A、Bはそれぞれ単一の直線であったが、例えば、孔壁線A、Bのいずれか一方、または、両方を2つ以上の直線により形成してもよい(図7(a)〜(d)参照。)。
さらに、実施例のノズル1によれば、開口11bは円形であったが、例えば、開口11bの軸方向先端、後端をそれぞれ軸方向先端側、後端側に凸となる半円とし、開口11bをトラック形状に設けてもよい(図7(e)参照。)。
なお、変形例のノズル1においても、孔壁線A、B以外の噴孔11の内壁形状は、様々な態様を採用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ノズル(燃料噴射ノズル) 2 ニードル 3 ノズルボディ 10 ボディ側シート部 11 噴孔 11a、11b 開口 13 ニードル側シート部 La1、Lb1、La2、Lb2 寸法
図1
図3
図7
図2
図4
図5
図6