特許第6063916号(P6063916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6063916黄斑変性の処置のための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063916
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】黄斑変性の処置のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/423 20060101AFI20170106BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20170106BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20170106BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170106BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A61K31/423
   A61K31/47
   A61K47/40
   A61K9/08
   A61P27/02
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-255880(P2014-255880)
(22)【出願日】2014年12月18日
(62)【分割の表示】特願2012-543284(P2012-543284)の分割
【原出願日】2010年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-57437(P2015-57437A)
(43)【公開日】2015年3月26日
【審査請求日】2014年12月18日
(31)【優先権主張番号】61/285,745
(32)【優先日】2009年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507387033
【氏名又は名称】アルデイラ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エー. ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クリフォード キャバラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド ディー. ケイグル
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第01/041757(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/091630(WO,A1)
【文献】 特表2007−532648(JP,A)
【文献】 特表2008−542291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00,31/00,47/00
Registry,CAPLUS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)
【化1】

の化合物または薬学的に受容可能なその塩であって、ここで、
X、Y、およびZは、それぞれ独立してN、CHまたはNHが結合したCであり、X、Y、およびZのうちの1つがNであり、
pは0、1、2、または3であり、
Bはハロゲン、ヒドロキシル、カルバモイル、またはアミノであり、
Aは、
【化8】

であり、
Dは、非枝鎖低級アルキルである、化合物または薬学的に受容可能なその塩、ならびに
β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルまたは薬学的に受容可能なその塩から選択されるキャリア
を含む局所眼用水溶液。
【請求項2】
式(Ia)の化合物が、0.01%w/v〜1.0%w/vで存在する、請求項1に記載の眼用溶液。
【請求項3】
式(Ia)の化合物が、0.01%w/v〜0.5%w/vで存在する、請求項1に記載の眼用溶液。
【請求項4】
前記薬学的に受容可能なβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルの塩が、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の眼用溶液。
【請求項5】
前記β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩が、0.01%w/v〜30%w/vで存在する、請求項4に記載の眼用溶液。
【請求項6】
前記β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩が、5%w/v〜25%w/vで存在する、請求項5に記載の眼用溶液。
【請求項7】
前記β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩が、9.5%w/v〜20%w/vで存在する、請求項5に記載の眼用溶液。
【請求項8】
前記β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩が、9.5% w/vで存在
する、請求項5に記載の眼用溶液。
【請求項9】
前記溶液が、5.5〜8.5のpHである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の眼用溶液。
【請求項10】
前記溶液が、6.5〜7.5のpHである、請求項9の眼用溶液。
【請求項11】
さらにバッファーを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の眼用溶液。
【請求項12】
前記バッファーが、リン酸バッファーである、請求項11に記載の眼用溶液。
【請求項13】
さらに保存剤を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の眼用溶液。
【請求項14】
さらに抗酸化剤を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の眼用溶液。
【請求項15】
黄斑変性を処置するための請求項1〜14のいずれか1項に記載の局所眼用溶液。
【請求項16】
処置される黄斑変性が萎縮型AMDである、請求項15に記載の眼用溶液。
【請求項17】
処置される黄斑変性が、萎縮型AMDに続発する地図状萎縮である、請求項15に記載の眼用溶液。
【請求項18】
処置される黄斑変性が滲出型AMDである、請求項15に記載の眼用溶液。
【請求項19】
処置される黄斑変性がシュタルガルト病である、請求項15に記載の眼用溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年12月11日に出願された米国仮出願第61/285,745号の利益を主張し、その全内容が本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
黄斑変性は、進行性の失明の主な原因である。黄斑は、網膜の中心領域であり、高明瞭度の中心視力(high acuity central vision)が処理される窩を有する。黄斑変性は、黄斑における神経変性疾患であり、それは視覚機能を、無能にする欠損を進行性に引き起こす。
【0003】
黄斑変性には複数の形態が存在する。加齢性黄斑変性(AMD)は、最も一般的な形態であり、中年またはそれ以降に初めて現れる。AMD患者において、萎縮型(dry)形態が、通常、最初に起こり、脈管の合併症なく発達する。その臨床的徴候としては、眼底自発蛍光(FAF:fundus auto−fluorescence)における増加、および軟性ドルーゼンと呼ばれる細胞外蓄積物の形成が挙げられ、両方は、下に議論されるような網膜色素上皮(RPE)細胞における脂褐素の蓄積によって引き起こされる。萎縮型AMD患者の約40%が、萎縮型AMDに続発する地図状萎縮(GA)と呼ばれる疾患の進行した形態に進み、これは、RPE細胞および隣接する網膜光受容体細胞の局所的な死によって引き起こされる1つまたはそれより多くの萎縮性網膜病変によって特徴付けられる。萎縮型AMD患者の別の10%は滲出型(wet)AMDに進行し、これは、A2E毒性からの重度の酸化的ストレスを受けるRPE細胞によるVEGFシグナル伝達に応答して、脈絡膜から網膜への新生血管(neovascular)成長によって特徴付けられる。脈絡膜の新生血管成長は、これが起こる黄斑の領域において網膜組織を崩壊させ、視覚機能を破壊する。最後に、ティーンエージャーおよび若い成人に初めて現れるシュタルガルト病と呼ばれる黄斑変性の早期発症形態がある。シュタルガルト病は、萎縮型AMDと同じ病因を有することが考えられる。
【0004】
複数の一続きの証拠は、黄斑変性が、A2Eを含む天然に存在するビス−レチノイド化合物のRPE細胞における細胞毒性蓄積によって引き起こされることを示す(非特許文献1)。all−trans−レチナールアルデヒド(RAL)と、光受容体外節の円盤膜(disc membrane)において見出される膜リン脂質であるホスファチジルエタノールアミン(PE)とのA2Eは反応生成物である。PEと反応するRALは、(i)光受容体細胞外節におけるオプシンタンパク質による光交換において使用するために、アルコール(レチノール)からのビタミンAを光反応性アルデヒド(11−cis−レチナールアルデヒド)に変換し、そして(ii)光交換後に、RALをレチノールに変換する、眼の後部(back)における代謝経路である視サイクル(図1におけるステップ3b)から逃れる。RALが視サイクルから逃れる場合、A2E前駆体が、光受容体外節において可逆的に形成し、それは、日周期性の脱落(diurnal shedding)後に隣のRPE細胞によって取り込まれる。A2Eの生合成における最後および不可逆的なステップは、RPE細胞のリソソームの酸性環境において行われる。A2EがRPE細胞において蓄積するにつれ、A2Eはリソソームの機能不全(failure)を含む複数の細胞毒性メカニズムによって、徐々にRPE細胞を障害する(poison)。このことは、A2Eを含む脂褐素と呼ばれる、消化されていない細胞破片の蓄積をもたらし、FAFによって臨床的に検出され得る。RPE細胞が劣化するにつれ、それらは、視サイクルに参加する能力を失い、通常の網膜機能に必要とされる他の代謝サポートを光受容体に供給できない(図1を参照のこと;非特許文献2)。それらの代謝サポートが停止させられる場合、光受容体は、それらの脱落した外節を再び新しくすることができず、視覚機能が進行性に失われる。A2E形成を減少させることによって、RPE細胞は、A2Eの毒性作用(poisoning)から回復させ、光受容体細胞の正常な代謝サポートを再び始めることを可能にする。
【0005】
特許文献1は、A2Eの形成を減少させることが示されている化合物および組成物を開示し、このA2Eは、上に記載されるように、黄斑変性(萎縮型AMDおよびシュタルガルト病が挙げられる)の基礎をなす病因である。これらの化合物は、A2Eの生合成経路における最初のステップである、光受容体外節におけるPEとの反応について利用可能な遊離RALの量を減少させることによって、A2Eの生合成を阻害するように設計される。これらの化合物は、それらのRALとの共有結合反応が、A2E前駆体が生じる光受容体外節の円盤膜において行われるので、計画的に親油性である(すなわち、水とn−オクタノールとの間の、それらの測定または計算された分配定数の対数[本明細書中で使用される場合、pH7.4で、それぞれlogDまたはclogDと呼ばれるlogPまたはclogP]は、0より大きい)。
【0006】
A2Eの生合成を減少させる異なる手法は、視サイクルが阻害されるとき、より少ないRALが視サイクルを逃れ、PEと反応するのに利用可能となり、A2E前駆体を生じるので、視サイクルの1つまたはそれより多くのタンパク質を阻害することである。視サイクルインヒビターでの長期の(chronic)処置は、マウスにおいてA2Eの合成を減少させることが示されている(非特許文献3)。この処置アプローチの臨床的な価値は、視サイクルインヒビター化合物がレチノイドクラスのメンバーである場合に、視サイクルインヒビターが、杆体光受容体の感受性を低下させることによって夜盲症を引き起こし、暗順応速度を遅くすることによって暗順応を害し、そしてレチノイン酸受容体(RAR)を活性化することによってレチノイド毒性を引き起こすという事実によって制限される。現在、臨床開発中の視サイクルインヒビターとしては、レチノイド化合物であるフェンレチニド、および伝えられるところによればレチノイドではないACU−4429が挙げられる。
【0007】
黄斑変性を処置するための他のアプローチは、限定されずに、神経栄養因子受容体アゴニスト、抗炎症性化合物(補体カスケードインヒビターが挙げられる)、抗アポトーシス化合物、ステロイド、および抗酸化化合物を含めた、作用の神経保護メカニズムに基づくものであって、そしてそれはA2E毒性の結果としての重度の酸化的ストレスにあるRPE細胞によるVEGFシグナル伝達の作用を緩和するVEGF受容体ブロッカーを用いて、滲出型AMDへの進行を制限するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/127945号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sparrow JR,Wu Y,Kim CY,Zhou J.Phospholipid meets all−trans−retinal:the making of RPE bisretinoids.J Lipid Res.2009 Aug 7 e−published
【非特許文献2】Lamb TD,Pugh EN,Dark adaptation and the retinoid cycle of vision.Prog.Retinal and Eye Res.2004;23:307
【非特許文献3】Radu et al.,Treatment with isotretinoin inhibits lipofuscin accumulation in a mouse model of recessive Stargardt’s macular degeneration.Proc Natl Acad Sci U S A.2003;100:4742
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
治療および予防する使用において、局所的な眼投与は、経口投薬と比較して全身曝露を最小限にする。本発明は、黄斑変性(萎縮型AMD、萎縮型AMDに続発するGA、滲出型AMD、およびシュタルガルト病が挙げられる)を処置する親油性化合物の局所的な眼投薬のための処方物および方法を提供するものであって、この処方物および方法は、視サイクルを逃れる遊離RAL、および別の方法でA2Eおよび他の天然に存在するビス−レチノイドの化合物の前駆体を形成する遊離RALと共有結合反応させることにより、該A2Eおよび他の天然に存在するビス−レチノイドを減少させることによるものである、親油性化合物の局所的な眼投薬のための処方物および方法を提供する。本発明の範囲内の親油性化合物は、0より大きいlogPまたはclogP(pH=7.4でのlogDまたはclogD)を有することによって、さらに定義される。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
化合物A、化合物B、および化合物Cまたは薬学的に受容可能なその塩からなる群から選択される親油性化合物、ならびに
β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルまたは薬学的に受容可能なその塩から選択されるキャリア
を水性溶液に含む局所眼用組成物。
(項目2)
前記親油性化合物が、化合物Aまたは薬学的に受容可能なその塩である、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記キャリアがβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩である、項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記溶液が、6.5〜7.5のpHにリン酸緩衝化された水性の食塩水溶液である、項目3に記載の組成物。
(項目5)
β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩の濃度が、9.5w/v%〜20w/v%である、項目4に記載の組成物。
(項目6)
β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩の濃度が9.5w/v%である、項目5に記載の組成物。
(項目7)
黄斑変性を処置するための方法であって、該方法は、局所眼用組成物を患者の眼(複数可)に投与する工程であって、ここで該局所用組成物は、化合物A、化合物B、および化合物Cまたは薬学的に受容可能なその塩からなる群から選択される親油性化合物、ならびにβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルまたは薬学的に受容可能なその塩から選択されるキャリアを水性溶液に含む、工程を含む、
方法。
(項目8)
前記親油性化合物が、化合物Aまたは薬学的に受容可能なその塩である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記キャリアが、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記溶液が、6.5〜7.5のpHにリン酸緩衝化された水性の食塩水溶液である、項目9に記載の方法。
(項目11)
β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩の濃度が、9.5w/v%〜20w/v%である、項目10に記載の方法。
(項目12)
β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルの濃度が9.5w/v%である、項目11に記載の方法。
(項目13)
処置されている黄斑変性の形態が萎縮型AMDである、項目12に記載の方法。
(項目14)
処置されている黄斑変性の形態が、萎縮型AMDに続発する地図状萎縮である、項目12に記載の方法。
(項目15)
処置されている黄斑変性の形態が滲出型AMDである、項目12に記載の方法。
(項目16)
処置されている黄斑変性の形態がシュタルガルト病である、項目12に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、視サイクルを表す。
図2図2は、眼組織のng/gでの14C−化合物Aの濃度の時間プロフィール(time profile)を表す。
図3図3は、13−cis−レチノイン酸の短時間のTOまたはIP投与後のマウスにおける暗順応速度におけるRA処置の作用を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の1つの実施形態は、黄斑変性(萎縮型AMD、萎縮型AMDに続発するGA、滲出型AMD、およびシュタルガルト病が挙げられる)を処置するための薬学的組成物を提供する。黄斑変性の根本的原因は、RPE細胞における、天然に存在するビス−レチノイド(A2Eが挙げられる)の細胞毒性蓄積である。この蓄積は、視サイクルを逃れる遊離RAL、および別の方法でPEと反応してそれらの前駆体を形成する遊離RALの量を制限することによって薬理学的に低下させ得る。これらの化合物の蓄積が薬理学的に減少するにつれ、RPE細胞は、細胞毒性損傷から回復し、正常な視覚機能に不可欠であるそれらの光受容体の代謝サポートを再び始め得る。公開第WO2006/127945号において、この様式でA2Eの蓄積を減少させ、従って黄斑変性を処置することにおいて有用である化合物が記載される。本願は、WO2006/127945の主題を参考として組み込む。
【0013】
A2Eを減少させ、それにより黄斑変性(萎縮型AMD、およびシュタルガルト病が挙げられる)を他の方法によって(例えば、視サイクルを阻害することによって)処置する親油性化合物はまた、本発明の範囲内に含まれる。このような化合物としては、ACU−4429が挙げられる。全てのこのような化合物は、0より大きいlogPまたはclogPを有する。
【0014】
治療および予防する使用において、局所的な眼投与は、経口投薬と比較して全身曝露を最小限にする。しかし、ほとんどの局所用処方物は、有効なレベルの薬物をその作用のメカニズムの部位である網膜へと送達し損なっている。驚くことに、出願人は、親油性活性薬剤およびシクロデキストリン、または化学的に改変されたシクロデキストリン(トリメチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、およびβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩(またはカリウム塩)が挙げられる)を含む調製物を用いることによって、有効なレベルの親油性活性薬剤が、眼の後部ならびに特異的にRPEおよび網膜へと送達されることを見出している。親油性活性薬剤の薬学的組成物およびオリゴマーのキャリアまたはポリマーのキャリア(例えば、シクロデキストリン、または化学的に改変されたシクロデキストリン(トリメチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、およびβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩(またはカリウム塩)が挙げられる))は、黄斑変性(萎縮型加齢性黄斑変性、萎縮型AMDに続発するGA、滲出型AMD、およびシュタルガルト病が挙げられる)の処置に有用である。
【0015】
本発明の1つの例示は、活性のある親油性化合物およびオリゴマーのキャリアまたはポリマーのキャリア(例えば、シクロデキストリン、または化学的に改変されたシクロデキストリン(トリメチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、およびβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩(またはカリウム塩)が挙げられる))を水性溶液またはゲル分散物に含む局所眼用組成物によって代表される。このような活性のある親油性化合物としては、RALと共有結合反応することによって、A2Eを減少させるものが挙げられる(例えば、WO2006/127945の化合物)。このような化合物の実例となるものは、WO2006/127945に記載されるものであり、その出願の内容は、本明細書中で参考として援用される。本発明において用いられ得る上記化合物を例示するものは、式Iaの化合物:
【0016】
【化1】
および薬学的に受容可能なその塩であり、ここで、X、Y、およびZは、X、Y、およびZのうちの1つがNであるように、それぞれ独立してN、CH、NHが結合したC、または非存在であり;pは0、1、2、または3であり、Bはハロゲン原子、ヒドロキシル、カルバモイル、アミノ、またはアリールであり、Aは、
【0017】
【化2】
であり、Dは、非枝鎖低級アルキルである。具体的には、WO2006/127945の段落(00027)の化合物Aおよび薬学的に受容可能なその塩は、本発明において用いられ得る。
【0018】
【化3】
本明細書中で有用な化合物をさらに例示するものは、式IIIaの化合物:
【0019】
【化4】
および薬学的に受容可能なその塩であり、ここで、Lは、単結合またはCHであり;X、Y、およびZは、X、Y、およびZのうちの1つが、NまたはNHであるように、それぞれ独立してN、NH、O、S、CB、CHであるか、または非存在であり;pは、0、1、2、または3であり;Bは、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルバモイル、アリール、またはアミノであり;Aは、
【0020】
【化5】
であり;そして、Dは、非枝鎖低級アルキルであり;そして、
具体的には、WO2006/127945の段落(00046)の化合物BおよびC、および薬学的に受容可能なその塩は、本発明において用いられ得る。
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
上記組成物における活性薬剤の量は、上記化合物の本来備わっている活性に依存して変動する。しかし、式Iaおよび式IIIaの化合物について、その量は、一般に、0.01重量/体積%〜1.0重量/体積%、およびより具体的には0.1重量/体積%〜0.5重量/体積%である。それぞれの場合において、上に記載されるような化合物、または薬学的に受容可能な上記化合物の塩が使用され得る。親油性化合物という用語は、上記化合物およびその薬学的に受容可能な塩を含むことを意味する。本明細書中で薬学的に受容可能な塩は、患者の眼に局所的に送達されることが可能である塩を意味する。上記組成物におけるキャリアは、オリゴマーのキャリアまたはポリマーのキャリア(例えば、シクロデキストリン(トリメチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、およびβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩(またはカリウム塩)が挙げられる))である。オリゴマーのキャリアまたはポリマーのキャリアとして、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩が例示される。水性の調製物におけるβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩の量は、約0.01重量/体積%〜30重量/体積%の範囲であり得る。1つの実例において、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩の濃度は、5重量/体積%〜25重量/体積%である。β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩の濃度のさらなる実例は、9.5重量/体積%〜20重量/体積%である。1つの例示において、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルの濃度は、9.5重量/体積%である。
【0023】
上記組成物は、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルを用いたさらなる実例であるが、各親油性薬剤が、賦形剤のそれぞれとともに処方され得ることに留意すべきである。上記組成物は、食塩水を含み得、例えば、リン酸バッファーで緩衝化され得、その結果、上記組成物のpHは、5.5〜8.5のpH範囲、またはより具体的には6.5〜7.5のpHがもたらされる。保存剤は、必要に応じて、上記組成物に含まれ得る。このような保存剤は、化学的安定剤および防腐剤の両方を含み得る。化合物(例えば、化合物A)は、使用する条件下で安定であるが、他の化合物は、他の賦形剤(例えば、抗酸化剤)の使用を必要とし得る。
【0024】
本発明の第二の実施形態は、活性のある親油性化合物およびキャリアの局所用処方物を、患者の眼(複数可)に投与することによって、黄斑変性(萎縮型加齢性黄斑変性、萎縮型AMDに続発するGA、滲出型AMD、およびシュタルガルト病が挙げられる)を処置する方法に関する。別の実施形態において、本発明は、黄斑変性を処置することにおいて使用するための局所眼用組成物を提供し、ここで、上記組成物は、活性のある親油性化合物およびキャリアまたは薬学的に受容可能なその塩を水性溶液に含む。キャリアとして、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、または薬学的に受容可能なその塩(sat)が例示される。これらの実施形態のそれぞれにおける活性のある親油性化合物としては、RALと反応することによって、A2Eを減少させるものが挙げられる(例えば、WO2006/127945の化合物)。このような化合物の例は、WO2006/127945に記載されるものである。このような化合物として、化合物A、B、およびCが例示される。他のメカニズムによって機能する親油性化合物(例えば、ACU−4429)はまた、含まれる。親油性化合物という用語は、上記化合物およびその薬学的に受容可能な塩の両方を含むことを意味する。上記処方物中の賦形剤は、オリゴマーまたはポリマーのもの(例えば、シクロデキストリン、または化学的に改変されたシクロデキストリン、より具体的には、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩(またはカリウム塩)が挙げられる)である。β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルを用いて具体的に実例が出されているが、上記方法は、各賦形剤とともに処方される各親油性化合物を用いて実施され得ることに留意すべきである。上記処方物は、5.5〜8.5のpH範囲、またはより具体的には6.5〜7.5のpHに緩衝化され得る。バッファーは、リン酸バッファーであり得る。上記処方物は、水性溶液またはゲル分散物として適用され得、その溶液は、食塩水溶液であり得る。脂褐素の蓄積は、眼の後部におけるRPE細胞において起こる。出願人は、本明細書中に記載されるような局所用組成物の使用が、局所の眼投与後に、薬理学的に活性なレベルの親油性の活性薬物を、眼の後部に安全に送達すること、従って黄斑変性(萎縮型加齢性黄斑変性、萎縮型AMDに続発するGA、滲出型AMD、およびシュタルガルト病が挙げられる)の処置に有用であることを、動物において実験により決定している。有効なレベルは、動物研究において、A2Eの蓄積を著しく減少させるものと定義される。
【0025】
本発明の組成物の調製
親油性活性薬剤およびオリゴマーのキャリアまたはポリマーのキャリアの処方物は、ポリマーのキャリア(例えば、シクロデキストリン、または化学的に改変されたシクロデキストリン(トリメチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、およびβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム(またはカリウム)塩が挙げられる))の水性の懸濁液または溶液を、ポリマーのキャリアに依存して、水、食塩水、またはリン酸緩衝化食塩水で、20℃〜50℃の温度にて、しかし好ましくは、周囲温度にて0.1時間〜24時間、撹拌することによって調製される。上記親油性活性薬剤は、固体またはニートの(neat)液体として、ポリマーのキャリアの上記のように形成された水性の懸濁液または溶液に添加され、得られた混合物は、親油性活性薬剤に依存して、20℃〜50℃の温度にて、しかし好ましくは、周囲温度にて0.1時間〜24時間、しかし代表的には、0.5時間〜2時間、撹拌される。親油性活性薬剤およびオリゴマーのキャリアまたはポリマーのキャリアの上記のように形成された処方物は、次に、無機酸もしくは有機酸、または無機塩基もしくは有機塩基の水性溶液で、所望されるようにその溶液のpHを調整するために処理され得る。保存剤(化学的安定剤および防腐剤の両方が挙げられる)も上記処方物に添加され得る。
【実施例】
【0026】
実施例1 − 9.5w/v%のβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルを用いた化合物Aの0.1w/v%水性処方物の調製
混合するための撹拌棒を備えている1000mlのビーカーにおいて調製を実施した。標的とされる重量の約60%の滅菌水を上記ビーカーに加えた。空気を混ぜないように撹拌を調整した。無水リン酸水素二ナトリウム(総バッチ重量の0.83%)およびリン酸二水素ナトリウム一水和物(総バッチ重量の0.017%)を容器に加え、溶解するまで混合した。β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(総バッチ重量の9.5%)をゆっくりと上記ビーカーに加え、この溶液を溶解するまで混合した。化合物A(総バッチ重量の0.1%)をゆっくりと加え、溶解するまで混合した。サンプルを抽出し、pHを測定した。pHが7.3±0.05の範囲にない場合、1Nの水性NaOHまたは1Nの水性HClで調整を行った。バッチ重量を測定し、最終バッチ重量をもたらすのに必要な滅菌水の量を決定し、加えた。
【0027】
マウスおよびウサギの眼に処方物を適用した結果
1)マウスの後眼杯(posterior eyecup)における14C−化合物Aのレベルの測定
RALと可逆的に反応する化合物(例えば、化合物A、B、およびC)の生物学的活性についての標的組織は、網膜光受容体細胞の外節である。化合物Aの局所的な眼(TO)投与が、治療上有用な量の、例えば、化合物Aを網膜へ送達することを実証するために、abcr−/−マウス(ノックアウトマウス)の親株であるC57BL/6マウスを、10mg/kg(「有効な用量」)で、具体的には、abcr−/−マウスにおいて56日間、毎日繰り返されるときにA2Eの形成を71%減少させる用量(p<0.01)で14C−化合物Aを用いて腹腔内(IP)処置した。局所的な眼投薬後の特定の時点で、マウスの眼を摘出し、後眼杯を切開し、抽出し、そして14C−化合物Aについて液体シンチレーションクロマトグラフィー(LSC)によって分析した。14C−化合物AでのIP処置の30分後、後眼杯における14C−化合物AのCmax量(すなわち、時間Tmaxにおけるピーク濃度)は、14.36μg/gであった。リン酸緩衝化食塩水中に20重量/体積%のβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩を含む組成物中に25μg(0.5重量/体積%)の14C−化合物Aを含む単一の5μLの点眼剤でのTO処置の15分後、後眼杯における14C−化合物Aの等価物の量(equivalent amount)は、13.12μg/gであり、これは有効な用量での全身処置後の同じ眼の組織において測定されたCmax値の90%であった。
【0028】
2)ウサギの網膜およびRPEにおける、眼の14C−化合物Aのレベル
ダッチベルテッドウサギ(Dutch belted rabbit)を、リン酸緩衝化食塩水中に20重量/体積%、6重量/体積%、または2%重量/体積%のβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩においてそれぞれ0.50重量/体積%、0.15重量/体積%、または0.05重量/体積%の14C−化合物Aのいずれかを含む単一の40μLの点眼剤でTO投薬した(表1)。投薬後、異なる時間でウサギの眼を摘出し、切開し、LSCによって、網膜およびRPEを合わせての14C−化合物Aの量を測定した。各値は、6個の眼からの平均値を表す。表1に示すように、TO投薬の1時間以内にウサギの網膜/RPEにおいて、著しい量の14C−化合物Aを見出した。
【0029】
3)カニクイザル(Cynomolgus Macaque)における14C−化合物Aでの局所的な眼投薬
カニクイザルの4つの眼内領域における化合物Aの薬物動態(PK)を、リン酸緩衝化食塩水中のβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩における0.50重量/体積%の14C−化合物Aの、眼1つ当たり40μLの局所的投薬後に測定した。眼内領域(硝子体液、網膜+RPE、前眼杯、および後眼杯)ならびにPK評価のための血液のサンプリングを、投薬後0.25時間、0.5時間、1時間、3時間、6時間、および9時間に行った。図2は、眼組織の、ナノグラム(ng)/グラム(g)で表される14C−化合物Aの濃度の時間経過を示す。
【0030】
【表1】
4)マウスにおける機能的な生物学的活性
本発明の範囲内のいくつかの薬物(例えば、化合物A、B、およびC)の網膜における生物学的活性は、これらの薬物(例えば、化合物A、B、およびC)が網膜の正常な機能を変更しないので、局所的な眼適用後に非侵襲性に測定され得ない。例えば、化合物Aは、視サイクルを阻害せず、視サイクルインヒビターでの等価の処置後数分以内に網膜電図記録(ERG)によって測定され得る変化である、暗順応(DA)の速度も遅くしない。ERGによってDA速度を測定するためのプロトコルは、極度に明るい光への短い曝露による視覚色素の光退色からの機能的な視覚回復の動力学に基づく。化合物A、B、およびCのように、レチノイドは、上に定義されるように親油性化合物である。このように、レチノイドは、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩を含む組成物中の小さな親油性化合物が、眼の前部への局所的な適用後の数分〜数時間に網膜において、生物学的活性を示すことを実証するために使用され得る。
【0031】
この目的のために有用であるレチノイドは、13−cis−レチノイン酸(イソトレチノインとしても公知である、RA)である。RAを用いて20mg/kgでIP処置されたマウスは、視サイクル阻害を示す(図3)。独立した研究は、上記視サイクル阻害がA2Eの合成を低減することを実証する(Radu RA,Mata NL,Nusinowitz S,Liu X,Sieving PA,Travis GH.Treatment with isotretinoin inhibits lipofuscin accumulation in a mouse model of recessive Stargardt’s macular degeneration.Proc Natl Acad Sci 2003;100:4742)。しかし、リン酸緩衝化食塩水中に0.2重量/体積%のRAおよび20重量/体積%のβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩を含む組成物の1つまたは2つの30μLの点眼剤でTO処置されたマウスは、IP投薬後に観測されたものと同様の、DAの用量応答阻害を示した(図3)。
図1
図2
図3