【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、モバイル受信機ユニットの位置を測定するためのシステムは、各々が超音波信号を送信するように構成さている複数の静止送信局であって、超音波信号が静止送信局に特有の位相偏移シグニチャーを含んでいる、複数の静止送信局と、複数の静止送信局のうちの1つから超音波信号を受信するように構成されているモバイル受信機ユニットと、受信されたシグニチャーを用いてソース送信局を特定するように構成されている処理手段と、受信された信号およびソース送信局の識別情報を用いてモバイル受信機ユニットの位置に関する情報を求めるように構成されている処理手段とを備えている。
【0008】
本発明の他の態様によれば、モバイル受信機ユニットの位置を測定する方法は、複数の静止送信局の各々から超音波信号を送信することであって、各超音波信号が静止送信局に特有の位相偏移シグニチャーを含んでいる、超音波信号を送信することと、複数の静止送信局のうちの1つから超音波信号をモバイル受信機ユニットで受信することと、受信されたシグニチャーを用いてソース送信局を特定することと、受信された信号およびソース送信局の識別情報を用いてモバイル受信機ユニットの位置に関する情報を求めることとを含んでいる。
【0009】
本発明のさらなる態様では、静止送信局に特有の位相偏移シグニチャーを含む超音波信号を送信するように構成されている静止送信局が提供されている。
【0010】
したがって、当業者にとって明らかなように、本発明によれば、信号は静止送信局によりモバイルユニットへ送信される。出願人は、病院のような多くの状況においては、ある領域内の移動可能オブジェクト(人々、装置など)の数が同じ領域を網羅するのに必要な静止局の数より大きい場合が多いことを見出した。静止局から送信することにより、複雑な信号を必要とすることなく、またシステムの精度に影響を与えることなく、モバイルユニットの数を無期限に増やすことができる。
【0011】
さらに、信号の一部として位相偏移シグニチャーを送信することにより、モバイル受信機ユニットは、複数の送信局からのオーバーラップしている信号を確実に識別し、運動により誘発される位相偏移および多重パスの干渉に対処することができるようになる。このことについての詳細は後述する。
【0012】
好ましくは、各シグニチャーは、位相偏移変調(PSK)コード化されたシーケンスまたはコードである前もって決められたパターン、たとえばPSKコード化された前もって決められたバーカーコード(Barker codes)を含んでいる。
【0013】
好ましくは、各シグニチャーは、長さが11または13であるPSKコード化されたバーカーコードを含んでいる。好ましくは、各シグニチャーは、前もって決められた時間的な関係および位相の関係のうち少なくとも一方の関係を相互に有しているPSKコード化されたバーカーコードの1つ、2つまたはそれ以上のインスタンスを含んでいる。好ましくは、この関係は各送信機に特有なものある。したがって、この関係が、送信機を特定するために受信機により用いられてもよい。
【0014】
好ましくは、各シグニチャーは、第一のPSKコード化されたパターンと第二のPSKコード化されたパターンとを含み、第二のパターンの位相が第二のパターンの位相からオフセットされている(ずらされている)。90度分だけオフセットするのが便利であるが、他のオフセット値であってもよい。両方のパターンが4相PSK(QPSK)コード化されてもよい。静止送信局は、2相位相偏移変調(BPSK)コード化を用いて第一のキャリア上の第一のパターンをコード化し、第二のキャリア上の第二のパターンをBPSKコード化するように構成されており、第一のキャリアおよび第二のキャリアが同一の周波数であるものの、第二のキャリアの位相が第一のキャリアの位相からずれている。好ましい実施形態では、第一のキャリアは第二のキャリアと位相が90度ずれている。6相PSKまたは8相PSKの如き高次のPSKコード化の使用が除外されているわけではないが、QPSKが現在は好まれている。というのは、QPSKでは、相関演算が比較的簡単であるからである。このことについての詳細は後述されている。第一のキャリアが正弦波であってもよいし、第二のキャリアが余弦波であってもよいし、その逆であってもよい。
【0015】
バーカーコードとは、ゼロオフセットにおいて強い自己相関を有するもののすべての非ゼロオフセットにおいて弱い自己相関を有するビット値(+1または−1として表わされる)からなる1組の周知の文字列のうちの一つの文字列である。2ビット、3ビット、4ビット、5ビット、7ビット、11ビットおよび13ビットの長さを有するバーカーコードが知られている。
【0016】
第一のパターンはバーカーコードであってもよい。第二のパターンはバーカーコードであってもよい。好ましくは、第二のパターンは、相対的位相を除いて第一のパターンと同じである。このことにより、複号を単純化することができる。
【0017】
好ましくは、第二のパターンの開始は、第一のパターンの開始から前もって決められたオフセット値分だけ時間がオフセットされている。好ましくは、このオフセット値は第一のパターンの長さ未満であり、その結果、2つのパターンは時間がオーバーラップする。
【0018】
(異なる位相の)オーバーラッピングパターンを含むシグニチャーを送信することにより、第一のパターンの開始と第二のパターンの終りとの間の時間の長さが、連続(非オーバーラッピング)送信と比較して短くなるため、この時間内に運動誘発位相変化が生じる可能性が低くなり、それにより、シグニチャーが送信機と受信機との間の相対運動の影響に対して非常にロバストなものとなる。強いピークのあるバーカーコードの自己相関特性により、非同期システムにおいてでさえ、受信されたシグニチャー内のオーバーラッピングパターンの識別ができるようになる。
【0019】
好ましくは、時間的なオフセットは各送信機に特有のものである。送信機に特有のものであるということは、システム全体にわたってその送信機に固有のものであるということを意味してもよいし、または、一群の送信機、たとえば送信信号の範囲がオーバーラップしている一群の送信機の間において固有のものであることを意味してもよい。
【0020】
好ましくは、すべての送信機のシグニチャーに単一の共通パターンが存在する。このことにより、複号プロセスを単純化することができる。好ましくは、このパターンはバーカーコードである。11ビットまたは13ビットのバーカーコードは、それより短いコードに比べて信号対雑音比を向上させるので好まれる。13ビットを超える長いコードは、それらの自己相関特性が最適化されていないので好まれない(それらのコードが今日までに発見されていないバーカーコードでない限り)。それにもかかわらず、パターンはバーカーコードでない比較的短いコードを含んでいてもよい。この場合、コードは比較的短い、たとえば16ビット未満であることが望ましい。非ゼロオフセットにおいてコードは弱い自己相関を有していることが望ましい(たとえば、自己相関値は常に2または3未満である)。
【0021】
13ビットのバーカーコードを用いる場合、実施形態によっては、送信機に特有の異なるオフセット値を有している約5台の異なる送信機までサポートすることが可能となる場合もある。シグニチャーが、異なるオフセット値におけるさらなるバーカーコードを含む場合、この数よりもはるかに多くの数の送信機をサポートすることが可能である。ただし、長いシグニチャーによる代償、すなわち帯域幅が減少するという犠牲が伴う。
【0022】
モバイルユニットが処理手段のうちの一部を備えていてもよいしまたは全部を備えていてもよい。このことはいくつかの利点を有しうる。というのは、信号が、モバイルユニットで受信された後、どこか他のところへ送られて処理される必要がないからである。
【0023】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、送信局からの位相偏移シグニチャーを含んでいる超音波信号を受信するように構成されているモバイル受信機ユニットは、受信された位相偏移シグニチャーを用いてソース送信局を特定するように構成されている処理手段を備えているか、または、受信された信号およびソース送信局の識別情報を用いてモバイル受信機ユニットの位置に関する情報を求めるように構成されている処理手段を備えている。
【0024】
実施形態によっては、複数の静止局のうちの1つ以上が、処理手段のうちの一部または全部を含んでいる場合もあれば、または、処理手段がモバイルユニットおよび静止局の外部、たとえば1つ以上の外部サーバーに設けられている場合もある。このことは有利である場合もある。というのは、モバイルユニットに必要とされる処理能力を最小限に抑えることにより、モバイルユニットからデータを送信する必要を考慮にいれた後でさえ、コストを削減することができかつ消費電力を削減することができるからである。このことは、それらがバッテリー駆動である場合に特に有用である。処理手段は、複数のプロセッサ、複数の場所、またはそれら両方の全体にわたって分配されていてもよい。受信機は、受信信号または受信信号から導き出される情報を遠隔処理手段へ送信するように構成されていてもよい。モバイルユニットまたは静止局は、受信信号または送信信号に関する情報を送信するために、有線送信手段またはラジオ送信機の如き無線送信機を有していてもよい。
【0025】
ラジオ送信機はタイミング情報を送信するために用いられてもよい。このように、位置測定にあたって、より複雑でかつそれほどロバストではない到着時刻の差を用いる必要がなく、到着時刻情報を用いることができるように、送信機と受信機とを同期させることが可能となる。
【0026】
好ましくは、処理手段は、モバイルユニットと静止局との間の距離に関する情報を求めるために送信時刻および受信時刻のうち少なくとも一方の時刻を用い、モバイルユニットの位置を測定する場合にこの距離情報を用いるように構成されている。
【0027】
好ましくは、受信機は、同時にまたは時間がオーバーラップして、異なる送信局から複数の信号を受信するように構成されており、処理手段は、受信されたシグニチャーを用いてソース送信機を特定し、ソース送信機の識別情報を用いてモバイルユニットの位置に関する情報を求めるように構成されている。
【0028】
処理手段は、たとえば当業者によく知られている三辺測量術計算(trilateration calculation)を実行することによりモバイルユニットの位置に関する情報を求めるために、信号強度情報、到着時刻情報、到着時刻の差情報のうちの少なくとも一つの情報を用いてもよい。モバイルユニットの位置に関する情報は、たとえば、固定された原点に対するモバイルユニットの推定位置座標であってもよい。位置情報は、二次元または三次元のモバイルユニットの位置に関するものであってもよい。
【0029】
好ましくは、受信機は、送信された信号を複数のパスに沿って受信するように構成されており、処理手段は、送信時刻および受信時刻(または、微分計算の場合、受信時刻のみ)を用いて複数のパスの各々についての距離情報を求めるように構成されている。通常、複数のパスのうちの1つは直通パスであり(このことは必ずしも正しいとは限らない)、その他のパスは、1つ以上のオブジェクトからの反射を含む。
【0030】
超音波信号が運動により誘発されて位相が変化する可能性があるため、ラジオ信号の同期処理において通常行われような、再生成されたキャリア信号を受信信号と直交変調器を用いて混合するようなことは現実的ではない。もっと正確にいえば、処理手段は、受信信号とパターンの参照コピーとの間の相互相関を求めて同相情報および直交情報を含む複雑な相関信号Z(i)を求めるように構成されていることが好ましい。
【0031】
好ましくは、処理手段は、受信信号内に、第一のパターンから90度分だけ位相偏移されかつ第一のパターンからオフセット値分だけ時間がオフセットされている第二のパターンの存在を求める(検出する)ように構成されている。処理手段は、複雑な相関信号Z(i)を、この複雑な相関信号で同一であるものの時間がオフセット値分だけ偏移されている信号、すなわちZ(i+m)と比較するように構成されていてもよい。便宜上、この比較のことをスーパー相関演算(操作)と呼ぶこととする。
【0032】
いうまでもなく、信号の実数部および虚数部を一緒に処理してもよいしまたは別々に処理してもよく、結果に影響を与えることはない。
【0033】
実施形態によっては、スーパー相関は、(i)複雑な相関信号と(ii)この複雑な相関信号をオフセット値m分だけ時間を偏移させた信号との外積のサインサイズ(signed size)、すなわち│Z(i)ΛZ(i+m)│を求めることが含まれる。このようなスーパー相関演算は、オフセット値が送信機により用いられるオフセット値と等しくない場合、とくに偶数オフセット値および奇数オフセット値が比較される場合(これらのオフセット値は第一のパターンのチップ長(chip length)により表される)およびとくにパターンがバーカーコードである場合には、相互相関(cross−correlation)が非常に低い。また、この演算は、効率的に実行することができ、比較的簡単なハードウェアの使用が可能となる。
【0034】
処理手段は、複数の異なるオフセット時間mの各々についてスーパー相関を実行するように構成されてもよい。これらのオフセット値はすべての送信機または一部の送信機により用いられるオフセット値に対応している。処理手段は、受信信号を処理してスーパー相関がマッチ基準を満たすようなオフセット値を求めてもよい。マッチ基準は、スーパー相関オフセット値が、送信されたパターン間のオフセット値と同一である場合にマッチしたと見なされる基準であるのが好ましい。たとえば、マッチ基準により、1組の可能なオフセット値にわたって、スーパー相関の出力が最大となるまたは最も強いピークに達したときにマッチしたと見なすように規定されてもよい。マッチは、信号のソース送信機を特定する際に、そのオフセット値を、送信機により用いられている既知のオフセット値と比較するために用いられてもよい。
【0035】
送信機に特有のシグニチャーを送信する利点としては、モバイルユニットが受信機であるシステムに比べて、2つの位相がずれたパターンまたは好ましくはオーバーラップしているパターンを有するシグニチャーをより幅広く適用することができるということが挙げられる。具体的にいえば、このようなアプローチは、複数の静止受信機と一つのモバイル送信機とを備えたシステムにおいて効果的に用いることができる。
【0036】
したがって、本発明のさらなる態様では、モバイル送信機ユニットの位置を測定するためのシステムは、各々が超音波信号を送信するように構成されている複数のモバイル送信機ユニットであって、超音波信号が各モバイル送信機ユニットに特有の位相偏移シグニチャーを含んでおり、各シグニチャーが、第一のキャリア信号上でPSKコード化される第一のパターンと、第一のキャリア信号と同一の周波数を有するものの第一のキャリア信号とは位相がずれている第二のキャリア信号上でPSKコード化される第二のパターンとを含んでおり、第二のパターンが、送信機に特有のオフセッ値分だけ第一のパターンから時間がオフセットされている、複数のモバイル送信機ユニットと、複数のモバイル送信機ユニットのうちの1つから超音波信号を受信するように構成されている静止受信局と、受信された信号を用いてソース送信機ユニットを特定するように構成されている処理手段と、この送信機ユニットの位置に関する情報を求めるように構成されている処理手段とを備えている。
【0037】
他の態様では、モバイル送信機ユニットの位置を測定する方法は、複数のモバイル送信機ユニットの各々から超音波信号を送信することであって、各信号がその送信機ユニットに特有の位相偏移シグニチャーを含んでおり、各シグニチャーが、第一のキャリア信号上でPSKコード化される第一のパターンと、第一のキャリア信号と同一の周波数を有するものの第一のキャリア信号とは位相がずれている第二のキャリア信号上でPSKコード化される第二のパターンとを含んでおり、第二のパターンが、送信機に特有のオフセット値分だけ第一のパターンから時間がオフセットされている、超音波信号を送信することと、複数のモバイル送信機ユニットのうちの1つから超音波信号を静止受信局で受信することと、受信されたシグニチャーを用いてソース送信機ユニットを特定することと、受信されたシグニチャーを用いてソース送信機ユニットの位置に関する情報を求めることとを含んでいる。
【0038】
本発明のさらなる態様では、超音波信号を送信するように構成されているモバイル送信機ユニットは、超音波信号がモバイル送信機ユニットに特有の位相偏移シグニチャーを含んでおり、シグニチャーが、第一のキャリア信号上でPSKコード化される第一のパターンと、第一のキャリア信号と同一の周波数を有するものの第一のキャリア信号とは位相がずれている第二のキャリア信号上でPSKコード化される第二のパターンとを含んでおり、第二のパターンが、送信機ユニットに特有のオフセッ値分だけ第一のパターンから時間がオフセットされている。
【0039】
先の態様を参照して記載されている送信機、受信機、モバイルユニット、および静止ユニットの任意選択的な構成要素が、ここに記載の態様の実施形態にかかるモバイル送信機ユニットおよび静止受信局の任意選択的な構成要素であってもよい。
【0040】
好ましくは、第二のキャリアは第一のキャリアと位相が90度ずれている。
【0041】
処理手段のうちの一部または全部が静止受信局内に設けられてもよい。したがって、本発明のさらなる態様によれば、送信機ユニットから超音波信号を受信するように構成されている静止受信局は、超音波信号が送信機ユニットに特有の位相偏移シグニチャーを含んでおり、シグニチャーが、第一のキャリア信号上でPSKコード化される第一のパターンと、第一のキャリア信号と同一の周波数を有するものの第一のキャリア信号とは位相がずれている第二のキャリア信号上でPSKコード化される第二のパターンとを含んでおり、第二のパターンが、送信機ユニットに特有のオフセッ値分だけ第一のパターンから時間がオフセットされており、受信局が、受信された信号を用いてソース送信機ユニットを特定するように構成されている処理手段、または受信された信号を用いて送信機ユニットの位置に関する情報を求めるように構成されている処理手段を有している。
【0042】
しかしながら、処理手段のうちの一部または全部が受信局の外部、たとえば1つ以上の遠隔サーバーに設けられてもよい。
【0043】
先に記載のすべての態様では、各シグネチャは、2つのパターンのみではなく3つのパターン、たとえば3つのPSKコード化されたパターンを含んでいてもよい。これらのパターンは、所与のシグネチャにおいて、異なるパターンであってもよいが(相対位相を除いて)同一のパターンであることが好ましい。すべての送信機にわたって同一のパターンが用いられることが好ましく、このことにより、復号が単純なものとなる。好ましくは、シグネチャ内では、第二のパターンは、第一のパターンおよび第三のパターンと時間がオーバーラップしているものの第一のパターンおよび第三のパターンと位相がたとえば90度ずれている。第一のパターンと第三のパターンとは、位相が同じであってもよいし、または位相が180度ずれていてもよい。好ましくは、第三のパターンは、第一のパターンの終了後、好ましくは第一のパターンの終了直後に開始される。
【0044】
各シグネチャは、たとえば、第一のQPSKコード化された長さLのバーカーコードと、第一のコードに対して90度でかつ第一のコードから第一のオフセット値n
1分だけオフセットされている第二のQPSKコード化されたバーカーコードと、第二のコードに対して90度でかつ第二のコードから第二のオフセット値n
2分だけオフセットされた第三のQPSKコード化されたバーカーコードとを含んでいる。n
1はL未満であることが好ましく、n
2=L−n
1であることが好ましい。
【0045】
シグネチャ内に3つ(またはそれよりも多い数の)パターンを有していることにより、スーパー相関演算において(オフセットmと等しい主ピークからの距離に)本来生じうる副ピークを補償することが可能となる。
【0046】
異なる送信機シグネチャの可能な数は、1つ以上のポウズを含む1つ以上の送信機シグネチャずつ増やしていくことが可能である。すべての位相にわたってポウズを設けるようにしてもよいし、または1つ以上の位相にのみポウズを設けるようにしてもよい。上述の例示の実施形態では、たとえば、第一のパターンと最後のパターンとの間に長さpのチップポウズ(chip pause)が挿入され、n
2=L−n
1+pとなっている。
【0047】
好ましくは、処理手段は、シグネチャが3つのバーカーコード(これらは2対のバーカーコードと見なすことができる。たとえばこれらの2対が1つのコードを共有している場合である)を有している場合に用いることができる強化相関関数(enhanced correlation function)を評価するように構成されている。強化相関関数は、2つの異なるオフセット値を用いた2つのスーパー相関演算の関数である。これらのオフセット値は、たとえば送信機シグネチャのうちの1つについて、第一のパターンと第二のパターンとの間のオフセット値と第二のパターンと第三のパターンとの間のオフセット値とに対応しうる。スーパー相関演算のうちの1つは、第一のパターンの長さから他のスーパー相関演算により用いられるオフセット値を引いたものに等しいオフセット値を用いてもよい。たとえば、実施形態によっては、処理手段は、オフセットmでのスーパー相関とオフセットL−mでのスーパー相関との積を求めるようになっていてもよい。ここで、Lは送信機シグネチャの第一のパターンの長さである。他の実施形態では、強化相関関数は、2つのスーパー相関演算の絶対値の大きさの小さい方を出力するようになっていてもよい。
【0048】
スーパー相関の最小合成(minimum combining)を用いる場合、出力のサインを求めるためにサイン関数が別個に評価されるようになっていてもよい。スーパー相関のサインは、+90度の位相差の場合には+1、−90度の位相差の場合には−1と定義することができる。次いで、強化相関のサインは、スーパー相関のサイン(+1または−1)の積として別個に取り扱うことができる。
【0049】
この強化相関関数は、複数の異なるオフセット値mについて評価されてもよい。複数の異なるオフセット値mは、複数の異なる送信機のシグネチャ内で用いられる第一のパターンと第二のパターンとの間の異なるオフセット値を含みうる。受信された信号のソース送信機の特定は、強化相関関数がマッチ基準を満たすオフセット値を求めることによりなされるようになっていてもよい。
【0050】
本発明の実施形態のある利点は、少ない処理要件でそれらを実現することができるという点である。このことにより、本発明が低価格の電池式のデバイスに適したものとなる。具体的にいえば、記載の強化相関関数は比較的限られたプロセッサ動作回数のみで実行することができる。
【0051】
マッチ基準には、ある範囲のオフセット値にわたって評価される3点式ピーク検出アルゴリズムが含まれていてもよい。たとえば、マッチは、強化相関関数の出力値が直前のオフセット値および次のオフセット値よりも高いオフセット値に対して記録されるようになっていてもよい。しきい値最小値がさらに用いられてもよい。たとえばマッチを記録するためには、オフセット値は、強化相関関数の出力値が前もって決められた最小値よりも高くなければならない。マッチ基準は、強化相関関数の二次導関数にもある条件を満たすことを要求するようになっていてもよい。このことにより、雑音からピークを良好に分離することができるようになる。たとえば、マッチ演算は、適切なkの値について、強化相関関数演算の出力値における第一のk個の最大ピークと、この出力値の二次導関数における第一のk個の最大ピークとのインターセクションを求めるようになっていてもよい。
【0052】
1つ以上のピークから複数の送信パス(たとえば、直通パスおよび複数の反射パス)を特定することができる。
【0053】
送信信号は、送信機シグネチャの2つのコピーを含んでいてもよい。シグネチャのうちの1つにおけるパターンは、他のシグネチャにおける対応するパターンとは位相が異なっていてもよい。たとえば、1つのシグネチャ全体が他のシグネチャから90度分だけオフセットされていてもよい。このことにより、たとえば強化相関関数演算の出力のサインを考慮することによって、2つのシグネチャを他から容易に識別することができるようになる。
【0054】
送信信号にシグネチャが二度以上現われる実施形態では、たとえば乗算(multiplication)または絶対最小値合成(absolute minimum combining)により、複数の強化相関関数演算を組み合わせる総送信信号相関演算(whole−transmission correlation operation)が実行されてもよい。
【0055】
好ましくは、送信機ユニットまたは送信局のうちの少なくとも1つが位相偏移超音波メッセージを含む信号を送信するように構成されている。好ましくは、このメッセージはシグネチャと同一の送信信号で送信される。シグネチャが1つ以上のキャリア周波数の変調により生成される場合、このメッセージは、同一のキャリアのうちの1つ以上の変調により送信されることが好ましい。これらのメッセージおよびシグネチャは両方とも共通のバーカーコードを含んでいてもよい。メッセージは、シグネチャの後、好ましくは直後に続くことにより送信信号全体の長さを最小限にするようになっていてもよい。
【0056】
単一の通信において位相偏移シグネチャおよびメッセージを送信することによりメッセージを復号する際に送信機の特定が可能となるとともに、シグネチャに対して適切な相関演算を行うことによりメッセージ内の運動誘発位相変化の補正が可能となる。
【0057】
本発明のさらなる態様では、情報を送信する方法は、送信機ユニットから超音波信号を送信することであって、この超音波信号が、(i)第一のキャリア信号上でPSKコード化される第一のパターンと、第一のキャリア信号と同一の周波数を有するものの第一のキャリア信号とは位相がずれている第二のキャリア信号上でPSKコード化される第二のパターンとを含んでいるシグニチャーであって、第二のパターンが、送信機に特有のオフセット値分だけ第一のパターンから時間がオフセットされている、シグニチャーと、(ii)PSKコード化されるメッセージ保持部とを有している、 超音波信号を送信することと、超音波信号を受信機ユニットで受信することと、受信された超音波信号内の第一のパターンおよび第二のパターンを用いて、受信された超音波信号内の運動誘発位相歪みを特徴づけることと、この特性づけを用いて受信されたメッセージ保持部内の運動誘発位相歪みを補償することと、補償された超音波信号からメッセージを複号することとを含んでいる。
【0058】
本発明のさらなる態様によれば、情報を送信するためのシステムは、超音波信号を送信するように構成されている送信機ユニットであって、この超音波信号が、(i)第一のキャリア信号上でPSKコード化される第一のパターンと、第一のキャリア信号と同一の周波数を有するものの前記第一のキャリア信号とは位相がずれている第二のキャリア信号上でPSKコード化される第二のパターンとを含んでいるシグニチャーであって、第二のパターンが、送信機に特有のオフセット値分だけ第一のパターンから時間がオフセットされている、シグニチャーと、(ii)PSKコード化されるメッセージ保持部とを有している、送信機ユニットと、送信機ユニットから超音波信号を受信するように構成されている受信機ユニットと、受信された信号内の第一のパターンおよび第二のパターンを用いて受信された信号内の運動誘発位相歪みを特徴づけし、この特性づけを用いて受信されたメッセージ保持部内の運動誘発位相歪みを補償し、補償された信号からメッセージを複号するように構成されている処理手段とを備えている。
【0059】
本発明の他の様相では、超音波信号を送信するように構成されている送信機ユニットは、この超音波信号が、(i)第一のキャリア信号上でPSKコード化される第一のパターンと、第一のキャリア信号と同一の周波数を有するものの第一のキャリア信号とは位相がずれている第二のキャリア信号上でPSKコード化される第二のパターンとを含んでいるシグニチャーであって、第二のパターンが、送信機に特有のオフセット値分だけ第一のパターンから時間がオフセットされている、シグニチャーと、(ii)PSKコード化されているメッセージ保持部とを有している。
【0060】
処理手段のうちの一部または全部が受信機ユニット内に設けられてもよい。したがって、本発明のさらなる態様によれば、送信ユニットから超音波信号を受信するように構成されている受信機ユニットは、この超音波信号が、(i)第一のキャリア信号上でPSKコード化される第一のパターンと、第一のキャリア信号と同一の周波数を有するものの第一のキャリア信号とは位相がずれている第二のキャリア信号上でPSKコード化される第二のパターンとを含んでいるシグニチャーであって、第二のパターンが、送信機に特有のオフセット値分だけ第一のパターンから時間がオフセットされている、シグニチャーと、(ii)PSKコード化されるメッセージ保持部とを備えており、受信機ユニットが、受信された信号内の第一のパターンおよび第二のパターンを用いて受信された信号内の運動誘発位相歪みを特徴づけするように構成されている処理手段を有している。さらに、受信機ユニットは、上述の特徴づけを用いて受信メッセージ保持部内の運動誘発位相歪みを補償する構成、および、補償された信号からメッセージを復号する構成のうち少なくとも一方の処理を行うように構成されてもよい。
【0061】
しかしながら、処理手段のうちの一部または全部が、受信機ユニットの外部、たとえば1つ以上の外部サーバーに設けられるようになっていてもよい。
【0062】
先に記載の態様の任意選択的要素が、これらの態様の任意選択的な要素であってもよい。具体的にいえば、実施形態によっては、シグネチャは、3つの同一のバーカーコードの如き3つのPSKコード化されたパターンを含んでいる場合もある。
【0063】
好ましくは、第二のキャリアは第一のキャリアと位相が90度ずれている。
【0064】
本発明のこれらの態様および先に記載の態様の好ましい実施形態では、送信信号は、送信機シグネチャの2つのコピーを、1つ目はメッセージのプリアンブルとして、2つ目はメッセージのポストアンブルとして含みうる。このシグネチャは、メッセージ内に存在してもよい。
【0065】
シグネチャを送信信号の開始位置および終了位置に有していることは有利であることが分かっている。というのは、これらの位置における信号条件が潜在的に非常に異なるためである。
【0066】
メッセージは、直交信号スペクトラム拡散(DSSS)を用いて、好ましくはシグネチャ内で用いられているものと同一のバーカーコードでありうる1つ以上のバーカーコードを用いてコード化されるようになっていてもよい。たとえば、各メッセージビットは13ビットのバーカーコードとしてコード化されてもよい。メッセージ内において、1ビットはバーカーコードの13チップ(13 chips)としてコード化され、0ビットは同様に13チップとしてコード化されるもの1ビットのものとは180度分だけ位相がずれている。メッセージのデータ部に対する拡散コードと同じものをシグネチャに対しても用いることが非常に好ましい。というのは、好ましい実施形態で用いられる短いコード長に対する直交コード(orthogonal codes)は存在しないからである。したがって同じコードを用いることは、たとえばエコーや、他のデバイスの送信信号などからの干渉が存在する場合に良好な信号対雑音比を得るために有益である。
【0067】
また、メッセージは、BPSKコード化されてもよいし、またはQPSKコード化されてもよい。それらは両方とも、送信エラーが少ないことが分かっている。ただし、他の適切なコード化手法を用いてもよい。データは、参照値として送信信号内の1つ以上のシグネチャの位相を用いて効果的に区別してコード化されるようになっていてもよい。
【0068】
シグネチャはメッセージと比較して比較的短いものであってもよい。たとえば、シグネチャが26チップ長さ(すなわち、2つの隣接する13ビットのバーカーコード)であり、8ビットのメッセージが104チップ長さ(すなわち、8つの13ビットのバーカーコード)であってもよい。メッセージに比べてシグネチャが短いということは、総チャネル容量のほとんどをメッセージ情報に用いることができるということを意味する。
【0069】
メッセージで1つ以上の位相参照要素(phase reference element)を送信するようになっていてもよい。このことのより、とくに長いメッセージ(たとえば、8ビットのメッセージより長い)場合の復号精度を向上させることができるようになる。位相参照要素が、既知の位置の既知の値のデータビッツ(コード化前)のメッセージを含めることにより生成されるようになっていてもよい。それに代えて、位相参照要素が、既知の位置の既知のパターン(たとえば、バーカーコード)を含んでいてもよい。この位相参照要素は、コード化されたメッセージからオフセットされたある位相で送信されてもよい。たとえば、メッセージがBPSKコード化されたキャリアに対して90度にあるキャリア上でBPSKコード化される。受信された送信信号を処理する場合、このような位相参照要素を用いて、運動誘発位相変化(ドップラーシフト)を補償すること、および送信パスの品質指標を得ることのうちの少なくとも一つを実現することができる。
【0070】
このメッセージは誤差補正コードを用いてコード化されるようになっていてもよい。
【0071】
送信機から受信機までの信号の伝送時間が求められるようになっていてもよい。信号の異なる送信パスに沿った複数の伝送時間が求められるようになっていてもよい。
【0072】
信号強度が求められてもよい。異なる送信パスに沿った信号の複数の強度が求められてもよい。
【0073】
実施形態によっては、受信された位相参照要素からある時間にわたって得られた位相情報に対して最良適合カーブが求められるようになっている場合もある。このカーブは、受信信号の運動誘発位相歪みを特徴づけするために用いられてもよい。
【0074】
処理手段は、ある時間にわたる受信信号からの位相情報を分析して、受信機に対する送信機の相対的位相オフセット、速さ、速度および加速度のうちの1つ以上を求めるように構成されてもよい。
【0075】
最良適合カーブについて相関係数を求め、1組の送信パスの各々の信頼量(reliability measure)を求めるために用いてもよい。信号対雑音比を向上させてメッセージを正確に復号するために、異なる送信パスの受信信号への貢献度を、レイク受信(rake receiving)を用いて組み合わせて(合成して)もよい。レイクアルゴリズム(rake algorithm)への各パスの貢献度は当該パスの信頼度に応じて重み付けされてもよい。
【0076】
送信された信号は、複数のパスに沿って受信されてもよいし、受信された信号はレイク合成(rake combine)されてもよい。このレイク合成されたものからメッセージが復号される。
【0077】
メッセージは、信号の送信時刻に関する情報を含んでいてもよい。この情報は、送信機と受信機との間の距離に関する情報を求めるために用いられてもよい。
【0078】
実施形態によっては、送信機により用いられるキャリア周波数が干渉に応じて調節されるようになっている場合もある。この調節は自動的であってもよい。すなわち、システムは、ある周波数において干渉の有無を求め、それに応じて送信機のキャリア周波数を調節するように構成されている処理手段を備えていてもよい。たとえば、送信機および受信機は、38kHzおよび42kHzのキャリア周波数で、(それぞれ)PSKコード化およびPSK復号化されるように構成されてもよい。システムが室内で用いられ、干渉領域ある周波数の周辺に集中する場合、キャリア周波数を切り替える機能は非常に有用なものとなりうる。
【0079】
超音波信号とは、正常な人が聞くことができる範囲よりも高い周波数を有した音響信号のことである。通常、これは、20kHzよりも高い周波数、たとえば30〜100kHzの周波数を有する信号のことを意味する。
【0080】
添付の図面を参照して、本発明のいくつかの好ましい実施形態が例示のみを意図して記載されている。