【文献】
R. W. Grady et al.,The development of new iron-chelating drogs. II,The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,1978年,1978, 205(3),757-765
【文献】
Per Hartvig,Chemical principles of chelate therapy in neurotoxicology.,Acta. Neurol. Scand.,1984年,1984, 70(suppl 100),199-202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該GDBCAが、ガドベルセタミド、ガドジアミド、ガドペンテト酸ジメグルミン、ガドキセト酸 or ガドキセト酸二ナトリウム、ガドブトロール、ガドホスベセット、ガドベン酸メグルミン、ガドテリドール、ガドテル酸から選ばれるイオンまたは非イオン大環状または線状Gdキレート剤である請求項1に記載の使用。
該GDBCAが、ガドジアミド、ガドベルセタミド、ガドペンテト酸ジメグルミン、ガドベン酸メグルミンおよびガドキセト酸またはガドキセト酸二ナトリウムから選ばれる請求項3に記載の使用。
L-ヒスチジン、またはL-ヒスチジン二塩酸塩およびL-ヒスチジン一塩酸塩一水和物から選ばれるその誘導体を含む、GDBCA(ガドリニウム系造影剤)投与後の患者の標的臓器中のガドリニウム(Gd3+)の蓄積による疾患の予防用組成物。
L-ヒスチジン、またはL-ヒスチジン二塩酸塩およびL-ヒスチジン一塩酸塩一水和物から選ばれる誘導体が、粉末、固体、または液体組成物である請求項15に記載の使用。
【背景技術】
【0002】
臨床診断は、磁気共鳴画像法(MRI)を利用して、過去20〜30年間において劇的に進化している。
【0003】
常磁性造影剤は、水のプロトンからのシグナルを増強して、水分含量の異なる組織の認識を可能にするために静脈内注射される。
【0004】
造影剤に用いられる分子は、臨床使用において格別に安全であることが証明されているが、それでも、ごく一部の患者に見られる副作用の原因であると考えられるある程度の毒性を残している(Membership of the Working Party、Guidelines Safety in magnetic Resonance units:an update、Anaesthesia、2010、65:766-770)。
【0005】
MRI用造影剤として用いられる常磁性ガドリニウム錯体の毒性を説明するために提案されているメカニズムの1つは、金属および遊離リガンドを得るためのインビボ解離および/または錯体自体の代謝である。
【0006】
遊離リガンドと金属の両方が、遊離リガンドは、生理的陽イオン(Ca
2+、Zn
2+)のキレート剤として作用することによって、そして、金属は、金属交換反応を経て身体組織に必要なイオンにとって代わることによって、それぞれの錯体と比較して少なくとも20倍高いとみなされるある程度の毒性を有することが証明された。
【0007】
しかしながら、新たに形成された錯体は、泌尿器系によって排出されるが、金属は、概して組織に蓄積するので、錯体解離の適切なインジケーターである。
【0008】
この点において、MRI用の3つのガドリニウム錯体、マルチハンス(登録商標)、オムニスキャン(登録商標)およびガドビスト(登録商標)が、動物モデル(ラット)においてさらに研究されており(S. Bussiら、Exp. Toxicol. Pathol. 2007、58:323-330)、キレート化合物から放出された後のガドリニウム蓄積のパターンを評価し、酢酸ガドリニウム(遊離型)の単回または繰り返し(週3回)投与後に観察されたパターンに対して比較した。キレート化合物からのガドリニウムの放出は、この実験において診断目的のために推奨されている用量よりも10倍多い用量で用いられた常磁性造影剤の単回注射後には起こりにくいことが確認されているが、錯形したGdによる最も高いガドリニウム含量は、腎臓において観察され、一方、脾臓、大腿骨と脳は、主として、遊離ガドリニウムによって標的化された(GdAcによって模倣された)。
【0009】
それは、腎不全患者に起こるNSF(腎性全身性線維症)の原因の1つであると考えられるGDBCAからの遊離ガドリニウム放出のこの一定分量である。NSF(参照:“Gadolinium-based contrast agents(GBCAa) and the NSF risk:Regulatory update”January 21、2011、http://www.fda.gov/downloads/AdvisoryCommittees/CommitteesMeetingMaterials/Drugs/PeripheralandCentralNervousSystemDrugsAdvisoryCommittee/UCM241072.pdf)は、1997年に、15人の透析患者において最初に認識され、2000年に記載された。前臨床データによれば遊離Gd
3+によって引き金を引かれる免疫カスケードに起因するこの稀で極めて消耗性の高い障害(Canaveseら、J. Nephrol.、2008、21:324-336)は、集合して、橙皮状皮膚外見になる、紅斑から肥厚したプラークになる紅斑性丘疹にいたる皮膚着色を伴う皮膚の広範な肥厚および硬化を特徴とする。結節が記載されることもある。関節性拘縮が発生することもあり、患者は、2.漸進的に車椅子に依存するようになる。患者は、しばしば、そう痒、灼熱および鋭い痛みを訴える。遠位端は、関与する最も一般的な領域であり(足首から大腿部中央および手首から上中腕部に分布する)、体幹がそれに続く。病斑は、対称的であることが多い。注目されるのは、顔および首は実質的に関与しないということである。
【0010】
NSFは、すべての年齢群において起こりうるものであり、地域、人種や性別に対する偏りはない。今までのところ、NSFに対する広く認められている治療はない。腎機能の改善が、該疾患の進行を遅延化させ、いくつかの場合、その過程を逆転させることもあるということが示唆されている。2006年に、2つのヨーロッパのチームが独立して、磁気共鳴画像法(MRI)のための造影剤として用いたガドリニウムキレートと、腎不全患者におけるNSFの発生との間の関連性を示唆した。数多くのレトロスペクティブ分析が急速に行われ、この時間的関連を確認した(Broome D R、Eur. J. Radiol.、2008、66:230-234)。NSFは、正常な腎機能の患者においては報告されていない。GBCAを服用した後にNSFを発病するリスクが最も大きい患者は、急性腎障害患者(AKI)または慢性の重篤な腎疾患などの薬物の排出が損なわれている患者(糸球体ろ過量(GFR)が<30mL/分/1.73m
2の患者)である。
【0011】
NSFのリスクを最小化するための方針として、最小の可能な診断用量の使用およびGBCAの投与に先立ってのリスク便益分析が挙げられる(Altun E.ら、Acad. Radiol、2009、16:897-905)。遊離GdとNSFの間の直接的な関連性は、依然としてはっきりと確立されてはいないが、金属交換反応は、MRI用造影剤の分野における安全性をさらに高めることを目的とする研究のための有望な出発点とみなされうる。
【0012】
亜鉛および銅などの二価イオンは、必須微量元素であり、多くの酵素の必要な成分である。Zn
2+およびCu
2+イオンは、動物細胞および血液中に広範囲に広がっている。GDBCA中のキレート化部分への物理化学的親和性により、これらのイオンは、血漿中の遊離Gd
3+の結果的放出による金属交換反応を促進することができる。
【0013】
本発明およびL-ヒスチジンの新規な用途は、GDBCAからの遊離ガドリニウムの放出を減少させることができ、標的臓器における蓄積によるその毒性は、このメカニズムによって説明することができる。
【0014】
L-ヒスチジンは、アミノ酸である:ヒト患者におけるその用途は、議論の余地がある結果であったとしても、様々な目的について記載されている:すなわち、Schechter PJおよびPrakash J. Am. J. Clin. Nutrition 1979、32:1011-1014には、食欲抑制剤として記載され、あるいはGerber DAら、J. Am. J. Clin. Nutrition 1971、1382-1383にはコレステロール低下剤として記載されている。引用文献には、治療効果が見られたという観察は記載されていないが、4g/日以下のL-ヒスチジンを投与した後、15日間の治療中モニターされる、タンパク質結合亜鉛(すなわち、アルブミン結合亜鉛およびα2-マクログロブリン結合亜鉛)、血清および尿亜鉛レベルなどの血清パラメーターは、著しくは変化しなかった。それは、現在、食品インテグレーター(food integrator)として市販されており、その使用はヒト患者において長期間安全であるとみなされている。
【0015】
ヒスチジンリッチタンパク質は、インビボでZn
2+およびCu
2+などの二価金属イオンをキレートすることが知られているが、この結合は、それらの高度に構造化された三次元のHis-リッチ Zn-フィンガードメインおよび細胞における非常によく区分化された環境によるものであることが実証されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な記載
本発明は、ガドリニウム系造影剤(GDBCA)の投与後の遊離ガドリニウムの放出における、好ましくは経口投与された、L-ヒスチジンの効果に基づく。
【0026】
GDBCAは、ガドリニウムに基づく、一般に造影磁気共鳴(CE-MR)に用いられるすべての造影剤を意味する。ランタニド系列の常磁性金属であるガドリニウムは、造影剤の近くに位置する水プロトンの緩和率を増強してシグナル強度を増大させる大きな磁場を生み出す。
【0027】
遊離Gd
3+イオンは、インビボで毒性があるので、GDBCAにおいて、常磁性イオンは、安定で不活性な低分子量金属錯体を生成するためにキレート化される。
【0028】
ガドブトロール(ガドビスト(登録商標)、Bayer Shering Pharma AG)、ガドテリドール(プロハンス(登録商標)、Bracco)およびガドテル酸メグルミン(ドタレム(登録商標)、Guerbet)などの大環状Gdキレートは、ガドベルセタミド(オプチマーク(登録商標))、ガドジアミド(Gd-DTPA-BMA、オムニスキャン(登録商標))、ガドペンテト酸ジメグルミン(Gd-DTPA、マグネビスト(登録商標)、Bayer Shering Pharma AG)およびガドベン酸メグルミン(マルチハンス(登録商標)、Bracco SpA)などの線状キレートと比較して、より高いインビボ安定性を有する。Gd系造影剤は、静脈内空間から迅速に除去され、大部分は変化しない状態で主として腎排泄を介してヒトの身体から排出される。
【0029】
キレート錯体は、様々な熱力学的安定度定数をもつが、一般に安定である。熱力学的安定度定数アフィニティは、以下のGDBCAについて記載されている(Caravan Pら、Inorg. Chem、2001:40、2170-2176):ガドベルセタミド、ガドジアミド(Gd DTPA-BMA)、ガドブトロール、Gd-DTPA、ガドホスベセット三ナトリウム、ガドベン酸メグルミン(Gd-BOPTA)、ガドキセト酸(EOB-DTPA)、ガドテリドール(HP-DO3A)およびGd-DOTA。
【0030】
何とか記載されたGDBCAの毒性を説明するために提案されているメカニズムの1つは、金属交換反応として知られているプロセスを介する遊離金属(Gd
3+)およびリガンドを得るためのそれらのインビボ解離および/または錯体自体の代謝である(Morcos S Kら、Eur J. Radiol.、2008、66:175-179)。これらの著者は、NSF(腎性全身性線維症)の発生が、Gd
3+錯体の安定性と対応し、事実、プロハンス(登録商標)(大環状キレート)よりも線状非イオン造影剤であるオムニスキャン(登録商標)の投与により頻繁に伴うことを主張する。
【0031】
金属交換反応は、少なくとも理論的には、常磁性金属/キレート錯体の熱力学的安定度に反比例して、GDBCAに影響を及ぼしうるが、このパラメーターは、インビボ金属交換反応プロセスに影響を及ぼすファクターを十分に記載していない(Tweedleら、Magn Reson Imaging 1991;9:409-415)。血液、そしてより多くの理由で生物体は複雑なシステムであり、様々な濃度および形態(遊離、タンパク質に結合または区分化されている)での様々なイオンおよび対イオンの存在は、インビボで起こるキレート形成反応の反応速度論に影響を及ぼす。実際にガドリニウム錯体の化学速度論的安定度は、血漿中の内因性イオン、対イオンおよびその他の分子の存在によって影響を及ぼされる。クエン酸塩、すなわち、生理的に身体に存在する対イオンは、金属交換反応において放出されたGd
3+イオンと錯体を形成することが知られており(G. E. Jackson、S. Wynchank、M. Woudenberg、Magn. Reson. Med.、1990、16、57-66;L. Sarka、L. Burai、E. Brucher、Chem. Eur. J.、2000、6、719-724)、実験部分でより詳細に記載するように、金属交換反応に参加することが明らかにされている。
【0032】
遊離リガンドが身体組織における内因性陽イオン(Ca
2+、Zn
2+など)の交換によりこれらのイオンのキレート剤として働く金属交換反応は、インビボ遊離リガンドおよび常磁性金属を生成する。両方の化学種は、LD
50に関してはそれらの各錯体と比べて少なくとも20倍というある程度の急性毒性を有することが明らかにされている。しかしながら、新たに形成された錯体は、泌尿器系によって排泄されるが、Gd
3+は組織に蓄積し、皮膚において明らかであり、Gd
3+に対する免疫応答の引き金を引くことによる十分認識された毒性をもつ。
【0033】
骨は、キレート形成していないガドリニウムの天然の貯蔵庫となることが明らかにされており(Wedeking P. & Tweedle、Nucl. Med. Biol.、1988、15:395-402)、したがって、中長期の時間範囲でのGd錯体解離の適当な指標となる。
【0034】
血液中のZn
2+の濃度は、相対的に高い(55〜125μmol/L)(Vanderら、Invest Radiol 2001;36:115-122)ので、主としてZn
2+が、かなりの量のガドリニウムを置換することに関与しうることが仮定されているが、選択された血漿モデルにおいて示されるように、豊富さの点でより少ない化学種でさえも、置換反応の親和性および化学反応速度論に影響を及ぼしうる。
【0035】
Gd
3+と競合する可能性が高い内因性イオンは、Cu
2+、Ca
2+およびZn
2+である。これらのうち、Cu
2+は、血液中では相対的に低い濃度で存在するが(1〜10μmol/L および[Cu
2+]全身=18μmol/L:G. E. Jackson、S. Wynchank、M. Woudenberg、Magn. Reson. Med.、1990、16、57-66)、Ca
2+は、DTPAおよびDTPA-BMAのような有機リガンドに対して相対的に低い親和性を有する。GDBCAからの遊離ガドリニウム放出は、腎不全患者におけるNSF(腎性全身性線維症)の原因の1つであると考えられる(Broome、2008)(腎臓は、通常、GDBCAの排泄の腫瘍臓器である)。
【0036】
GDBCA(ガドリニウム系造影剤)投与後の患者の標的臓器におけるガドリニウム(Gd
3+)の蓄積による疾患の予防におけるL-ヒスチジンまたはその誘導体の使用を提供する本発明のヒスチジンの投与は、インビボでのGDBCAからの遊離ガドリニウムの放出およびその組織、特に骨および皮膚への蓄積を減少させること、したがって、その毒性に関連するリスクを減少させることを可能にする。
【0037】
亜鉛および銅は、多くの酵素の機能性に必要な必須微量元素である。したがって、Zn
2+およびCu
2+イオンは、動物の細胞および血液中に広範に存在する。Zn
2+、Cu
2+などの二価イオンとGd
3+との間の金属交換反応の減少は、本発明のGDBCAおよびL-ヒスチジン投与後の、組織におけるガドリニウム蓄積の減少に基づくと考えられる。実際に、クエン酸塩の存在下で、0.2から0.8mMへのヒスチジン濃度の増加が、試験された2つの異なるインビトロシステムにおいて、濃度依存性モードで、Cu
2+と形成されたリガンドをGdキレート形成部分であるDTPAおよびDTPA-BMAと交換する量および速度を減少させうることが実験的に確認されている。
【0038】
金属沈着の毒性作用は、知られており、一般に認識されている:それは、造影剤製剤自体に過剰量のキレート化合物を添加することによって部分的に妨げられる:ただし、マルチハンス(登録商標)およびドタレム(登録商標)を除く:実際に、すべての他の造影剤は、過剰のキレート化合物を含む(オプチマーク(登録商標)においては、28.4mg/ml以下)。しかしながら、遊離Gd
3+は、錯体の排出前に依然として体内に放出される。
【0039】
この点において、組織内Gd
3+放出および蓄積を予防するための、GDBCA投与後のL-ヒスチジンまたはその誘導体の前投与もしくは共投与に関する本発明は、GDBCA投与後の常磁性金属蓄積による毒性の問題に取り組む。
【0040】
造影剤は、ガドベルセタミド(オプチマーク(登録商標))、ガドジアミド(オムニスキャン(登録商標))、ガドペンテト酸ジメグルミン(マグネビスト(登録商標))、ガドキセト酸 and ガドキセト酸二ナトリウム(エオビスト(登録商標))、ガドブトロール (ガドビスト(登録商標))、ガドホスベセット(アブラバル(登録商標))、ガドベン酸メグルミン(マルチハンス(登録商標))、ガドテリドール(プロハンス(登録商標))、ガドテル酸(ドタレム(登録商標))などのイオンまたは非イオン大環状および線状Gdキレート剤から選ばれるのが好ましい。L-ヒスチジンとの共投与に特に好ましいのは、ガドジアミド、ガドベルセタミド、ガドペンテト酸ジメグルミン、ガドベン酸メグルミンおよびガドキセト酸もしくはガドキセト酸二ナトリウムなどの線状イオンまたは非イオンキレートである。
【0041】
L-ヒスチジン(またはその誘導体)が、造影剤の投与の少なくとも1時間、より好ましくは55、50、45、40、35、30、25、20、15、10または5分前に投与されるのが好ましい。L-ヒスチジンは、遅くとも造影剤の投与と同時に共投与される。造影剤の投与に関するヒスチジン投与の最適時間は、対象の用量範囲における、C
max(ピークレベル)、T
max(最大濃度到達時間)、t
1/2 λ
Z(半減期)またはAUCなどの関連する薬物動態パラメーターを計算して決定することによってより正確に決定することができる。ヒスチジン投与後のGDBCA投与のための最適時間を決定するには、特に、T
maxが考慮されるべきである。このパラメーターは、徐放性形態またはポリヒスチジン錯体などのヒスチジン誘導体について計算されるのが好ましく、その薬物動態パラメーターは、L-ヒスチジンまたは別の投与経路が予想される場合とは異なる可能性がある。これらの場合、別の経路によるか、または別のヒスチジン形態の単回投与後に血清中L-ヒスチジンのピークレベル(T
max)に到達するのに必要な時間は、GDBCA投与のための時間をよりよく適合させる。
【0042】
経口経路によって、塩(HCl)の形態で投与されたL-ヒスチジンのピークレベルは、経口投与の30〜45分後に達成されると推定することができる(Sitton N G、Ann Rheum Dis、1988、47:48-52)。
【0043】
ヒトにおいて、数日間、4〜6g/日までのL-ヒスチジンを経口投与することが、重大な副作用も些細な不都合も提供しないことが報告されているので、GDBCAの投与の直前の時点での好ましくは単回経口投与におけるそのグラム用量までの使用が、本発明のためにも予想される。
【0044】
経口投与の可能性、ヒトにおける公知の吸着動力学、および耐性高用量は、重篤な毒性作用が現在まで散発的にしか報告されていないGDBCA誘発性疾患におけるL-ヒスチジンによる予防療法のための重要な利点を表す。一般に、そして実際に、それは、患者の一般的福祉を妨げたり、不快感を誘発したりしない予防療法にとって非常に重要である。
【0045】
この点に関し、ヒスチジンは、非経口的に投与することもできるが、造影剤とともに1回の代わりに、一方の注射から短時間のうちに、患者が2つめの注射を受けることを避けるために、好ましい投与は、GDBCA前の経口投与であることを言及すべきである。実際に、これは、患者の不快感を増加させる。
【0046】
対照的に、L-ヒスチジンの経口投与は、必要に応じて水分補給療法のための食塩水と一緒にあるいは混合して、GDBCA投与に先立つ60分間前、好ましくは45〜15分前、より好ましくは25〜40分前に、0〜200mg/患者の体重kgの用量範囲でL-ヒスジンまたはその誘導体を含む溶液を介して達成されうる。
【0047】
最も一般的な水分補給混合物は、水または水性溶液と混合される粉末である。予め混合された溶液も、0.5〜1 Lの水に溶解された Na 75〜90、K 20、Cl 65〜80(mmol/L)を含有し、必要に応じてクエン酸塩5〜15およびグルコース80〜120(mmol/L)を含む溶液として市販されている。水を加える直前に、ヒスチジンまたはその誘導体を水分補給混合物に加えることができる。
【0048】
別法として、ヒスチジンは、水または水分補給混合物とともに、固体組成物、すなわち錠剤として投与される。
【0049】
実験的観察(S. Bussiら、2007)に基づく遊離Gd蓄積の標的臓器は、一般に、肝臓、脾臓、骨および脳であるとみなされる。本発明によれば、遊離Gd
3+の沈着の統計的に有意な減少は、L-ヒスチジンの投与後の骨(大腿骨)および皮膚において観察されている。これらの臓器は、ヒスチジンまたはその誘導体の存在下におけるGDBCAからのGd
3+の全体的により低い放出について実際に代表的なものである。特に、骨におけるGd
3+の蓄積は、測定が血漿中に存在するGd
3+フラクションによって影響されず、骨組織中では血管新生が乏しいかまたは無いことによりGdが非常に迅速に除去される、全体的な現象の代表とみなされてよい。皮膚は、腎機能障害状態においてNSFにいたる可能性があるGd
3+蓄積の標的臓器を代表する。
【0050】
L-ヒスチジンの存在下におけるGDBCAからのGd
3+のより低い放出は、実施例部分においてより詳細に記載するように、DTPAまたはDTPA-BMAのいずれかを用いるインビトロ血漿モデルにおける動力学的実験データによって確認されている。
【0051】
したがって、本発明は、金属蓄積、特にGDBCA投与後のGd
3+の蓄積、予防のための、L-ヒスチジンまたはその誘導体のまだ開示されていない使用に関する;したがって、本発明は、標的臓器におけるガドリニウム沈着を予防する処置の製造に用いるため、そして、したがって、特に骨、秘蔵および皮膚におけるこの蓄積の毒性作用を予防するためのL-ヒスチジンおよびその誘導体に関する。
【0052】
金属蓄積、特に遊離Gd
3+蓄積は、損なわれた腎機能をもつ患者におけるNSFの可能な原因として認められているので、本発明はまた、腎機能障害患者におけるGDBCA投与後のGd蓄積による疾患の予防を目的とする方法において用いるためのL-ヒスチジンを提供する。
【0053】
該疾患は、好ましくは、NSF(腎性全身性線維症)などの皮膚症、最も好ましくは、慢性または急性腎疾患などの腎機能障害を有し、糸球体ろ過速度が低下している、すなわち、透析を受けている患者において起こる疾患である。
【0054】
Gd
3+誘発性皮膚障害またはNSFの発病に潜在的に影響を及ぼす補因子は、高カルシウム血症、リン酸キレート剤(セベラマーHClなど)の併用療法、アシドーシス、併用降圧療法および鉄療法において見出すことができる。
【0055】
特に、ラットにおいて行われた動物実験は、L-ヒスチジンの単回経口前処理(オムニスキャン(登録商標)の投与前に、4.38mmol/kgの用量で投与された)が、新鮮な組織1g当たりのnmolとして測定された、骨(大腿骨)および皮膚中のGd
3+濃度を有意に減少させうることを確認している。
【0056】
特に、オムニスキャン(登録商標)投与の30分前のL-ヒスチジン投与は、大腿骨中のGd
3+含量(約40%)(新鮮な組織1g当たりのnmolおよび%IDとして)および皮膚における含量の統計的に有意な減少をもたらした。このデータもまた、骨レベルにおける注射用量%によって確認されている。骨および皮膚が、遊離ガドリニウムの沈着がより頻繁におこる臓器であることは、文献から知られている(Bussi、2007;Wedeking、1988)。
【0057】
ヒスチジン、好ましくはL-ヒスチジンは、好ましくは水性溶液に溶解された、一水和物であるか無水の、二塩酸塩または一塩酸塩のいずれかの粉末として投与される。本発明はまた、ポリヒスチジン錯体として、あるいは徐放性もしくは制御放出製剤のいずれかにおいて、L-ヒスチジンを提供する。制御放出製剤は、US 2002/0004072に記載のものを含むことができる。
【0058】
L-ヒスチジンが経口投与される場合、必要に応じて水分補給療法のための食塩水と一緒にあるいは混合して、10〜200mg/患者の体重kgの用量範囲で、GDBCA投与に先立つ60分間前、好ましくは45〜15分前、より好ましくは25〜40分前より早くではなく投与されるのが好ましい。
【0059】
より容易であって通常耐容性良好であるので経口投与が好ましいけれども、L-ヒスチジンは、いずれかの他の経路、すなわち非経口で投与することができる。
【0060】
臨床モデルにおけるデータおよびヒトにおいて十分確立された安全性によれば、L-ヒスチジンは、ヒトにおいて、200mg/kg/日以下で投与することができる。したがって、ヒトでの使用において、単回用量単位は、0.2〜20gの量でL-ヒスチジンまたはその誘導体を含む。
【0061】
GDBCA投与による標的臓器における金属(Gd
3+)蓄積の予防に用いるためのL-ヒスチジンまたはその誘導体を含む組成物は、本発明の好ましい実施態様に含まれる。特に好ましい組成物は、ヒスチジンまたはその誘導体が、通例用いられる希釈剤(セルロースおよびその誘導体、ポリメタクリレート、デンプンおよびその誘導体、炭酸またはリン酸カルシウム、アルギン酸塩および誘導体など)、崩壊剤(Na-クロスカルメロースなど)、滑沢剤、賦形剤、安定剤、香味料および一価のカチオン塩インテグレーター(monovalent cationic salt integrators)(総説として参照されたい:“The handbook of pharmaceutical excipients”4
th ed、2003、Pharmaceutical Press、editors Raimond C. Rowe、Paul J. Sheskey、Paul J. Weller)とともに、0.2〜20gのL-ヒスチジン塩酸塩/用量単位の量で存在する液体または固体のいずれかの経口組成物である。
【0062】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明はまた、活性成分がL-ヒスチジンまたはその誘導体である組成物を入れた容器およびGDBCAを入れた容器を含む、GDBCAの投与用部品のキットに関する。
【0063】
造影剤は、ガドベルセタミド(オプチマーク(登録商標))、ガドジアミド(オムニスキャン(登録商標))、ガドペンテト酸ジメグルミン(マグネビスト(登録商標))、ガドキセト酸およびガドキセト酸二ナトリウム(エオビスト(登録商標))、ガドブトロール(ガドビスト(登録商標))、ガドホスベセット(アブラバル(登録商標))、ガドベン酸メグルミン(マルチハンス(登録商標))、ガドテリドール(プロハンス(登録商標))、ガドテル酸(ドタレム(登録商標))などのイオンまたは非イオン大環状および線状Gdキレート剤から選ばれるのが好ましい。L-ヒスチジンとの共投与にとって特に好ましいのは、ガドジアミド、ガドベルセタミド、ガドペンテト酸ジメグルミン、ガドベン酸メグルミンおよびガドキセト酸またはガドキセト酸二ナトリウムなどの線状イオンまたは非イオンキレート剤であり、必要に応じて、予め充填された注射器であるのが好ましい。
【0064】
ヒスチジンあるいは好ましくはL-ヒスチジンは、投与の準備ができているか、または投与前に溶解される粉末もしくは錠剤の形態である。すぐに使用できるか、または投与時に調製される、L-ヒスチジンを含む液体組成物は、本明細書に開示する使用に許容される。
【0065】
本発明のさらなる実施態様は、GDBCA投与前の1時間以内に、好ましくは単回経口投与で、本質的にL-ヒスチジンまたはその誘導体を投与することからなる、
患者の組織(ここで、組織は、骨、皮膚、脾臓および血液から選ばれるのが好ましい)へのガドリニウム蓄積の毒性作用を予防する、および/または患者、好ましくは腎機能障害患者において、GDBCA投与後に起こりうるNSFを予防するための治療方法に関する。
【0066】
したがって、本発明はまた、GDBCA投与前の1時間以内、より好ましくは 55分、50分、45分、40分、35分、30分、25分、20分および15分以内に、好ましくは単回単位経口用量で、本質的にL-ヒスチジンまたはその誘導体を投与することからなる診断方法を含むことになる。時間範囲が、45〜15分程度、より好ましく配列番号40〜20分であるのがより好ましい。GDBCAが、ガドベルセタミド(オプチマーク(登録商標))、ガドジアミド(オムニスキャン(登録商標))、ガドペンテト酸ジメグルミン(マグネビスト(登録商標))、ガドキセト酸およびガドキセト酸二ナトリウム(エオビスト(登録商標))、ガドブトロール(ガドビスト(登録商標))、ガドホスベセット(アブラバル(登録商標))、ガドベン酸メグルミン(マルチハンス(登録商標))、ガドテリドール(プロハンス(登録商標))、ガドテル酸(ドタレム(登録商標))などのイオンまたは非イオン大環状および線状Gdキレート剤から選ばれるのが好ましい。L-ヒスチジンとの共投与にとって特に好ましいのは、ガドジアミド、ガドベルセタミド、ガドペンテト酸ジメグルミン、ガドベン酸メグルミンおよびガドキセト酸またはガドキセト酸二ナトリウムなどの線状イオンまたは非イオンキレート剤である。
【0067】
単位用量は、0.2〜20gのL-ヒスチジン用量で、ヒスチジン投与のためのL-ヒスチジンまたは塩および誘導体を含んでよい。
【0068】
以下の本発明の実施例は、説明のためのものであり、いかなる方法においても本発明の範囲を限定するものではない。
実施例
【実施例1】
【0069】
血漿中のL-ヒスチジンレベルの測定
較正曲線および品質コントロールサンプルの調製
正確に秤量したL-ヒスチジン二塩酸塩粉末のアリコートを5および10mL容フラスコに移した。MilliQ-水を用いて粉末を希釈した。標準溶液を調製して、CALサンプルおよびCQサンプルを得た。ストック標準溶液の範囲は、3.46〜343μg/mLであった。すべての標準溶液を冷暗所(+4℃)で保管した:これらの条件下で、それらは最長1ヶ月間安定であるとみなされた。
【0070】
CALサンプルは、濃度3.46、34.3、68.6、173および343μg/mLの標準溶液を用いることによって調製し、QCサンプルは、濃度14.3、67.1、143および268μg/mLの標準溶液を用いることによって調製した。
【0071】
CALおよびQCサンプルは、10μLのヒスチジン標準溶液を90μLのブランクラット血漿と混合することによって調製した。
【0072】
これらのサンプルに、20μLのトリクロロ酢酸(16% w/v)を加えて、血漿タンパク質を沈殿させた。チューブを2、3秒間ボルテックスし、室温にて2000gで10分間遠心分離した;90μLの透明な上清に、45μLの炭酸ナトリウム浸し液(200mM)および90μLの誘導体化溶液(4mg/mLの塩化ダンシル)を加えた。チューブを2、3秒ボルテックスし、60℃にて30分間攪拌しながらインキュベートした。5マイクロリットルのメチルアミン塩酸塩を加え、15分間冷却した後、10マイクロリットルのサンプルをHPLC装置に注入した。
【0073】
非希釈血漿90μL、またはサンプルの体積が十分でない場合にブランク血漿で適当に希釈した血漿90μLに、10μLのMilli-Q水を加えることによって試験血漿サンプルを調製した。これらのサンプルに、20μLのトリクロロトリクロロ酢酸(16% w/v)を加えて、血漿タンパク質を沈殿させた。チューブを2、3秒間ボルテックスし、室温にて2000gで10分間遠心分離した;90μLの透明な上清に、45μLの炭酸ナトリウム浸し液(200mM)および90μLの誘導体化溶液(4mg/mLの塩化ダンシル)を加えた。チューブを2、3秒ボルテックスし、60℃にて30分間攪拌しながらインキュベートした。5マイクロリットルのメチルアミン塩酸塩を加え、15分間冷却した後、10マイクロリットルのサンプルをHPLC装置に注入した。試験中に集めたすべての血漿サンプルを分析するまで−20℃にて保管した。
【0074】
HPLC分析の結果は、局所重み付き線形回帰を用いて3.46〜343μg/mLのヒスチジンに対する較正曲線を作成することが可能であることを明らかにした。較正曲線の良好性およびクロマトグラフィーシステムの性能は、定義された合格基準に適合した。
【0075】
ヒスチジンCAL標準の逆算された濃度の精度(CV%)は、10.4μg/mLにおいて1.19%、41.3μg/mLにおいて1.25%、75.6μg/mLにおいて2.40%、180μg/mLにおいて2.81%、および350μg/mLにおいて2.29%であった。
【0076】
ヒスチジンCAL標準(CV%)の逆算された濃度の正確度(ACC%)は、10.4μg/mLにおいて-1.52%、41.3μg/mLにおいて-3.25%、75.6μg/mLにおいて0.34%、180μg/mLにおいて-1.57%、および350μg/mLにおいて-3.20%であった。
【0077】
相関係数値は、0.9993であった。
【0078】
CALおよびQCサンプルにおけるヒスチジン含量は、内因性ヒスチジン(ブランク血漿プール中の濃度)および添加されたヒスチジン(較正標準)の結果であった。
【0079】
ヒスチジンQCの逆算された濃度の精度は、すべてのサンプルに対して85%と115%の間であり、合格とみなされた。
【0080】
ヒスチジンQCの逆算された濃度の正確度は、すべてのサンプルに対して<15%であった。
【0081】
試験サンプルの精度は、常に合格であった。
Precision of test samples was always acceptable。
【実施例2】
【0082】
ヒスチジン投与のための実験計画および薬物動態学的研究
動物
−種および株:CD(SD)IGS BRラット
−動物の性別:雄性
−処置時の体重および週齢:306〜376g(10〜14週齢)
−供給者:Charles River Laboratories、カルコ(LC)、イタリア
動物に関与するすべての手順は、実験動物に関する国内および国際法(L.D. 116/92;C.D. EEC 86/609;C.R. 2007/526/EC)に従って行なった。認定されていない非動物代替法が、該実験の目的に合致することが分かっている。
【0083】
ラットを用いて、3つの異なるヒスチジン用量(100、500および1000mg/kg、各グループ当たり3匹の動物)の投与後の薬物動態パラメーターを決定した。
【0084】
3匹の動物は、較正曲線用のブランク血漿サンプル収集のために用いた。
【0085】
統計分析
注射後の時間の関数としてのヒスチジンの血漿濃度C(t)を、コンピュータープログラムWIN-NONLIN 4.0.1を用いるノンパラメトリック法によって分析した。試験用量に関しては、各時点に対して3匹の動物からの平均血漿濃度を用いる非コンパートメント解析を行なった(特記しない限り)。Cmax(ピーク血漿濃度)および対応するtmax(薬物が血漿中でCmaxにて存在する時間)に関しては、観察された値を報告した。プロフィールの終末相にあると視覚的に査定したデータ点の対数線形回帰によって、終末相消失速度定(λz)を評価した。少なくとも3つの血漿濃度を用いてλzを評価した。t
1/2λz=ln 2/λzとして、終末消失半減期(t
1/2λz、薬物が、もとの血漿中の値の半分に減少するのに必要な時間)を計算した。対数台形法を用いて、観察されたデータから、最後の観察可能な血漿濃度への血漿濃度−時間曲線下領域(AUC(0〜t))を計算した。ゼロから無限大までの総血漿濃度−時間曲線下領域(AUC(0〜∞))を、AUC(0〜∞)=AUC(0〜t)+ct/λz(ここで、ctは、最後の定量化時点での予測された濃度である)によって評価した。AUCは、薬物曝露の程度を定義する。
【0086】
ラット血漿中のヒスチジン基底値は、4.60〜8.39μg/mLである。
9.0、20.9および36.0μg/mLのCmax値は、それぞれ100、500、1000mg/kgにて経口投与した後30分、1時間および30分(tmax)で得られた。それぞれ3つの異なる用量で処置した動物に対する終末消失相に伴う半減期値t1/2λzは、51、47および13分であった(表A参照)。これらの値は、より高い用量に対して、血漿からの消失が、わずかにより速いことを示唆する。
【0087】
AUC(0〜∞)値は、それぞれ、0.55、0.63および0.39時間*mg/mLであった。値は、同様に、異なる用量での同様の全身曝露を示した。さらに、それらは、ヒスチジン100mg/kgの単回経口投与後の健康なボランティアに見出されるAUC(0〜∞)値の範囲(0.477時間*mg/mL)であった(Sitton N G、Ann Rheum Dis、1988、47:48-52)。
【0088】
総血漿クリアランス値は3つの用量に対して、それぞれ180、790および2562mL/時間/kgであった。クリアランス値は、用量の増加に伴って増加した。
表A:薬物動態値
【0089】
C
max値は、用量の増加に伴って増加した。T
maxは、30分において2回(または1時間)で計算された;AUC(0〜∞)は、3つの用量で同様であった。臨床徴候は、 1000mg/kgまで観察されず、化合物が、患者に対する予想最高用量(200mg/kg)の5倍まで良好な耐容性を示すことが示された。
【実施例3】
【0090】
L-ヒスチジンの投与およびGd
3+標的臓器蓄積の測定
動物
−スプラーグドーリーラット
−動物の性別:雄性
−処置時の体重および週齢:208〜233g、7週齢
−供給者:Charles River Laboratories、カルコ(LC)、イタリア
【0091】
動物の到着と処置グループへの割り当てとの間に少なくとも3日間を置くことができた。
較正曲線用のブランク血漿サンプルを集めるために3匹の動物を用いた。
L-ヒスチジンを強制経口投与し、オムニスキャン(登録商標)を静脈内投与した。
【0092】
オムニスキャン(登録商標)を投与する30分前に、ヒスチジンを4.38mmol/kgの用量で投与した;オムニスキャン(登録商標)(Gd(DTPA-BMA)を、ハーバード輸液ポンプにて、1mM/kgの用量および注入速度2mL/分で経尾静脈投与した。ヒスチジンおよびオムニスキャン(登録商標)は、室温にて投与した。 オムニスキャン(登録商標)投与の24時間後に動物を犠牲死させ、ICP-MSガドリニウム含有量定量のためにその臓器を集めた。
【0093】
死亡率および臨床徴候
処置の日に、何らかの臨床徴候または処置への反応を検出するために、処置前、および投薬後に少なくとも1回動物を観察した。重篤度、発症時期、毒性徴候の持続期間および死亡率を少しでもあれば記録した。
【0094】
肉眼的病理検査
予定の犠牲死の日に、導入期3%および維持期1-2%の呼吸濃度にて、吸入剤セボフルランで動物を麻酔し、腹部大動脈から血液を採取した後、出血させた。放血後、すべての動物の肝臓、脾臓、大腿骨および皮膚を切除し、秤量し、ガドリニウム含量のICP-MS測定用に調製した。マイクロ波システム(MARS-5 CEM Corporation)によって試料分解(脾臓および大腿骨)を行なった。
【0095】
-80℃にて少なくとも1時間凍結させた後、凍結乾燥機(Alpha-1-2LD Plus、CHRIST)で肝臓および皮膚サンプルを凍結乾燥した。乾燥した後、脱水された肝臓を秤量し、次いで、乳鉢で粉砕した。乾燥粉砕肝臓0.3gを正確に秤量し、1.0mLの硝酸(65% w/w)に懸濁させた。この溶液を少なくとも12時間、2〜8℃にて保管した。ELAN 6100 パーキン・エルマー分光計において、以下の機器パラメーターで作動させて、生体サンプル中のガドリニウムに対するICP-MSアッセイ(Bussi、2007)を行なった:
ネブライザーフロー: 0.95-0.98L/分
アルゴン補助ガスフロー: 0.2L/分
アルゴンプラズマガスフロー: 15L/分
アルゴン圧(補助、ネブライザー、プラズマ): 7.5アトム
RFパワー: 1250 W
ポンプ流速: 1.5mL/分
原子質量: 156.934amu
待機起動時間(Waiting start-up time): 45分
【0096】
データ分析
臓器中のガドリニウム含量をGdのμgとして報告した。データは、下記計算式にしたがって、nmol/組織g(表B)および注入用量のパーセント(%ID、表C)に変換した:
nmol/新鮮な組織g=
ガドリニウム含量(μg) x 1000
157.25 x 新鮮な臓器重量(g)
ID%=
100 x ガドリニウム含量(μg)
用量(μmol/g) x 動物重量(g) x 157.25
【0097】
nmol/組織gおよび注入用量のパーセント(ID%)において、一方向ANOVA検定、次いで、データがANOVAの前提に合わなかった場合は、ポストホックダネット検定またはノンパラメトリック・クラスカル-ウォリス検定、次いで、マン・ホイットニーのU検定を適用することによって統計分析を行なった。
【0098】
結果
ヒスチジンおよびオムニスキャン(登録商標)投与後には、死亡率も臨床徴候における変化も観察されなかった。剖検において肉眼で見える変化は観察されなかった。
肝臓および脾臓では、グループ1(ヒスチジン前処置なし)と比較して、グループ2および3(それぞれ30分および1時間の時点でヒスチジン前処置)において、Gd
3+含量の有意な変化は認められなかった。
【0099】
皮膚中のGd
3+含量は、グループ1(ヒスチジン前処置なし)と比較して、グループ2(30分の時点でヒスチジン前処置)において統計的に有意な減少(p<0.05)を示した。それぞれ11.25および16.1nmol/組織gという値を評価した(表B)。
大腿骨中のガドリニウム含量は、グループ1(ヒスチジン前処置なし)と比較して、グループ2(30分の時点でヒスチジン前処置)において統計的に有意な減少(p<0.01)を示した。減少は、およそ40%(6.90nmol/組織g 対 10.9nmol/組織g)であった。この効果は、同じ有意水準でID%においても観察された。
【0100】
肝臓、脾臓および皮膚中のID%は、グループ1(ヒスチジン前処置なし)と比較して、グループ2(30分の時点でヒスチジン前処置)において有意な差異は見られなかった(表C)。
しかしながら、大腿骨中のID%は、グループ1(ヒスチジン前処置なし)と比較して、グループ2(30分の時点でヒスチジン前処置)において統計的に有意な減少(p<0.01)を示した。約40%の減少(0.00166 ID% 対 0.00295 ID%)が観察された。
【0101】
表B:脾臓、大腿骨、皮膚および肝臓中のガドリニウム含量(nmol/組織g、平均値およびSD)
** p<0.01;* p<0.05
【0102】
表C:脾臓、大腿骨、皮膚および肝臓中のID%(平均値およびSD).
** p<0.01
【0103】
オムニスキャン(登録商標)投与前の60分の時点でのヒスチジン処置は、Gd
3+蓄積において効果を示さなかった。この結果は、L-ヒスチジンの観察されたT
maxと一致する(実施例1参照:100および1000mg/kgにおけるT
max=0.5時間)。
【0104】
オムニスキャン(登録商標)投与前の30分の時点で、ヒスチジンで処置された動物において、約40%(nmol/組織gおよびID%の両方)の大腿骨中のGd
3+含量における統計的に有意な減少が観察された。皮膚において、総Gd含量における減少が観察された(表B、p 0.05)。
【0105】
結論として、ラットの大腿骨中のGd
3+レベルは、1mmol/kgの用量のオムニスキャン(登録商標)の静脈内投与前の30分の時点で投与されたヒスチジン(4.38mmol/kgの用量)による単回経口前処置後に減少した(40%低下)。
【実施例4】
【0106】
クエン酸塩とヒスチジンの存在下における、Gd(DTPA)およびGd(DTPA-BMA)錯体と二価イオン[Cu(II)]との金属交換反応の反応速度論
クエン酸塩(血漿中に存在し、Gd
3+との相互作用性が高いことが見出された重要な対イオン)および増加量のヒスチジンの存在下での可能な金属交換反応の反応速度論におけるいくつかの手掛かりを得るために、以下の反応の速度が研究されている:
GdL+Cu
2++His+cit
CuL+Gd(cit)+His (1)
【0107】
実験において、使用したGd
3+錯体(GdL)、クエン酸塩およびCu
2+の濃度はそれぞれ、2.0、2.0および0.1mMであったが、ヒスチジンの濃度は変化させた(0.2、0.4、0.6および0.8mM)。
【0108】
交換反応(1)の進行は、pH範囲6〜8、0.15M NaCl中25℃にて、1.0cmの石英セルを用い、300 nmにて、分光光度法(Cary 1E分光光度計)によって研究されている。Cu
2+、ヒスチジンおよびクエン酸塩の存在下でのGd(DTPA-BMA)およびGd(DTPA)の反応について得られた実験データ(吸光度値)を
図1に示す。
【0109】
CuL錯体が形成されるために、金属交換反応(1)の進行は吸光度値の増加をもたらす。
図1のデータは、ヒスチジン濃度の増加が、2つの効果:a)反応速度の減少(曲線の初期部分);およびb)さらに重要なことには、反応(1)における変換に関して、CuL錯体の飽和濃度の有意な減少;を有することを明らかに示す。言い換えれば、ヒスチジンの存在下、Gd含有開環MRI造影剤と内因性Cu
2+との間で起こる金属交換反応の速度および範囲は有意に減少し、このモデルにおいて、体液との交換に利用することができるGdに対応する、反応(1)中のGd-cit化学種としてのGd
3+の量は減少する。
【実施例5】
【0110】
過剰ヒスチジン存在下での人工血漿中のGd(DTPA-BMA)錯体の解離
単純化血漿モデル(P. M. May、P. W. Linder、D. R. Williams、J. Chem. Soc. Dalton Trans.、1977、588-595)にしたがって、以下の組成の人工血漿を調製した:
【0111】
この溶液に1.0mMのオムニスキャン(Gd(DTPA-BMA))を加え、Bruker Minispec MQ20装置を用い、pH=7.5および37℃、20MHzにて緩和度を測定した。
【0112】
図2に示すように、緩和度は、時間の関数として増加し、Gd(DTPA-BMA)の解離を示す。
図2に見られるように、血清中のGd(DTPA-BMA)(オムニスキャン)の緩和度は、時間の経過とともに有意に増加したが、そのことは、該錯体の解離および“遊離”Gd
3+と人工血漿モデルのいくつかの成分との相互作用によって説明される。サンプルへのヒスチジンの添加(0.5mMおよび1.0mM)は、緩和度の増加の濃度依存性低下をもたらしたが、おそらくこのことは、高度に安定なCu(His)
2およびZn(His)
2錯体の形成へ平衡がシフトすること、ならびにGd(DTPA-BMA)とCu(His)
2またはZn(His)
2との間に金属交換反応が起こらないことによる。したがって、このモデルにおいて、ヒスチジンの存在は、Gd
3+錯体の安定性に対して有利である。
【0113】
体液中、DTPA-誘導Gd
3+錯体と、Cu
2+およびZn
2+などの内因性金属イオンとの間で金属交換反応が起こりうると結論付けることが可能である。金属交換反応の可能性は、最も重要な内因性金属とリガンドとの間で形成された錯体の安定度定数に基づいて予測することができる。安定度定数は、DTPA、DTPA-BMA、クエン酸塩およびヒスチジンリガンドのGd
3+、Cu
2+およびZn
2+錯体に対して決定されている。安定度データに基づく化学種の分布の計算は、クエン酸塩の存在下で起こりうる金属交換反応におけるクエン酸塩イオンの重要性を示す。化学種の分布の計算は、クエン酸塩の不在下でのGd(DTPA-BMA)とCu(His)
2との間の交換反応を追跡することによって実験的に検証されている。
図3Aにおいて、Cu(His)
2のスペクトルは、過剰のGd(DTPA-BMA)の存在下で変化がないことを示す。しかしながら、クエン酸塩も存在する場合、スペクトルにおける変化は、Cu(DTPA-BMA)の形成を示し、このことは、金属交換反応が起こることを示している(
図3B)。
【0114】
ヒスチジン(L-ヒスチジン)の添加は一般に、金属交換反応の変換の程度を減少させる。Gd
3+とCu
2+との間の速度論的研究の結果は、ヒスチジン濃度の増加とともに金属交換反応の速度および変換の両方が減少することを示す。人工血清モデル中のGd(DTPA-BMA)の緩和度の研究は、増加するヒスチジン濃度の存在下でGd
3+錯体の解離の程度が減少することも示している。