(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)が、デカグリセリンペンタステアリン酸エステル、デカグリセリンペンタイソステアリン酸エステル、デカグリセリンペンタオレイン酸エステルから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の硬化材ペースト。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<硬化材ペースト>
本発明の硬化材ペーストは、アルギン酸(D)及び水を含む基材ペーストと混練することにより、例えば印象材(特に歯科用)や家畜用乳頭パックなどの用途に適用されるアルジネート硬化性組成物を形成するものである。
このような硬化材ペーストは、硫酸カルシウム(A)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)及び難水溶性分散媒(C)を必須成分として含み、さらに必要に応じて配合される他の配合剤を含む。
以下、硬化材ペーストに配合される各成分について説明する。
【0023】
(A)硫酸カルシウム;
硫酸カルシウムは、硬化材ペースト中の主成分であり、ゲル化反応剤とも呼ばれる成分である。即ち、この成分は、後述する基材ペースト中のアルギン酸塩と水の存在下で反応して硬化物を形成する。
硫酸カルシウムとしては、2水塩、半水塩、無水塩等が知られているが、本発明においては、これらの何れも使用することができ、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0024】
硬化材ペースト中の硫酸カルシウムの配合量は、特に制限されないが、後述する基材ペーストと混練する際には、例えば、基材ペースト中のアルギン酸塩(A)100質量部当り、無水塩換算での硫酸カルシウムが10〜2000質量部、特に100〜1000質量部の量となるように、硬化材ペーストが使用される。
【0025】
(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル;
本発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)は、この硬化材ペーストにチキソトロピー性を付与するためのノニオン系界面活性剤であり、特にHLB(親水親油バランス)が2.0〜6.0の範囲にあるものが選択的に使用される。例えば、アニオン系やカチオン系の界面活性剤、或いはHLBが、上記範囲外のノニオン系界面活性剤を使用した場合には、目的とする高いチキソトロピー性は発現しない。
また、上記の範囲のHLBを有するポリグリセリン脂肪酸エステル(B)が使用された硬化材ペーストでは、基材ペーストとの混練物から得られる硬化物の過硬化を抑制し、皮膜形成能を高めることができるという利点も有している。即ち、硬化材ペーストと後述する基材ペースト(アルギン酸塩の水性ペースト)との混練物中での難水溶性分散媒(C)の流動が円滑になるために、硫酸カルシウム(A)とアルギン酸塩(D)との硬化が、混練物全体にわたって均一に進行するために、局部的な硬化が防止され、結果として過硬化が抑制されるものと思われる。
【0026】
本発明において、HLB値は下記の数式で表わされるGriffin法(W.C.Griffin,J.Soc.Cosmists.,Chemists.,1,311(1949))により計算した値である。
HLB=20×(親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)
【0027】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの1又は2以上の水酸基を脂肪酸でエステル化したものである。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、グリセリンの量体数、エステル化された水酸基の数、構成脂肪酸の種類により総合的に決まるものである。一般的には、グリセリンの量体数が多くなるほど、HLBは大きくなり、エステル化された水酸基の数が多いほど、また、構成脂肪酸の炭素数が多いほどHLBは小さくなる傾向がある。
【0028】
本発明では、HLBが2.0〜6.0であれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては特に限定されるものではなく、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であっても良い。一般に、構成脂肪酸は炭素数15〜22のもの、具体的には、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、エイカ酸、ベヘン酸等が好ましく、このうち硬化材ペーストへの分散性の観点から、炭素数16〜20のものがより好ましく、さらには炭素数18のステアリン酸、オレイン酸が最も好ましい。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、HLBが上記範囲内である限りにおいて、2量体〜12量体のもの、すなわちジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ウンデカグリセリン、ドデカグリセリンが好ましく、中でも、硬化材ペーストへの分散性の観点から、8量体〜10量体のオクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリンがより好ましい。
また、ポリグリセリン中のエステル化された水酸基の数については、グリセリンの量体数にもよるが、所望のHLBにするために適宜選択され、一般的には、1置換〜8置換体が用いられる。
【0029】
HLBが2.0〜6.0であるポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、これに限定されるものではないが、以下のものを挙げることができ、これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
ペンタグリセリンモノペンタデシル酸エステル
ペンタグリセリンモノパルミチン酸エステル
トリグリセリンモノマルガリン酸エステル
ジグリセリンモノステアリン酸エステル
ジグリセリンモノオレイン酸エステル
ジグリセリンモノイソステアリン酸エステル
テトラグリセリンモノステアリン酸エステル
テトラグリセリンモノオレイン酸エステル
ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル
デカグリセリンペンタステアリン酸エステル
デカグリセリンペンタイソステアリン酸エステル
デカグリセリンペンタオレイン酸エステル
デカグリセリンペンタノナデカン酸エステル
デカグリセリン酸トリエイカ酸エステル
デカグリセリルトリベヘン酸エステル
【0030】
上記したポリグリセリン脂肪酸エステルの中でも、硬化材ペースト中の固形分(粉成分)の分散性の観点から、HLB=3.0〜4.0の範囲にあるもの、例えば、デカグリセリンペンタステアリン酸エステル(HLB=3.5)、デカグリセリンペンタイソステアリン酸エステル(HLB=3.5)、デカグリセリンペンタオレイン酸エステル(HLB=3.5)が好適である。
【0031】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、特に限定されないが、特に高いチキソトロピー性を発現させるためには、(A)硫酸カルシウム(無水塩換算)100質量部当り、1〜50質量部、特に5〜20質量部の範囲が好ましい。
【0032】
(C)難水溶性有機分散媒;
本発明に用いられる難水溶性分散媒は、硫酸カルシウム(A)を含む固形分(粉材)のペースト化に用いられる。この場合、硫酸カルシウム(A)は水と反応して硬化(ゲル化)する。したがって、保存中での硫酸カルシウムの硬化を防止し、長期にわたっての保存安定性を高めるために、この分散媒は含水し難い難水溶性のもの、例えば、20℃の水100gに対する溶解度が5g以下であることが必要である。この溶解度は、0.4mg以下が好ましい。
【0033】
このような難水溶性の有機分散媒としては、水の存在下での硫酸カルシウムとアルギン酸塩との反応による硬化を阻害せずに硫酸カルシウム粉末をペースト化し得るような流動性を有するものであれば特に制限されないが、一般的には、炭化水素化合物、脂肪族アルコール、環式アルコール、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸塩エステル、疎水性重合体等が好適に使用される。これらの難水溶性有機分散媒は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
以下、これら各種の難水溶性分散媒の好適な例を示す。
【0034】
炭化水素化合物としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ケロシン、2,7−ジメチルオクタン、1−オクテン等の脂肪族鎖状炭化水素、シクロヘプタン、シクロノナン等の脂環式炭化水素化合物、液状飽和炭化水素の混合物である流動パラフィン等が挙げられる。
【0035】
脂肪族アルコールとしては、1−ヘキサノール、1−オクタノール等の飽和脂肪族アルコール、シトロネロール、オレイルアルコール等の不飽和脂肪族アルコールが挙げられる。
環式アルコールとしては、ベンジルアルコール、メタ−クレゾール等が挙げられる。
【0036】
脂肪酸としては、ヘキサン酸、オクタン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸を挙げることができる。
脂肪酸エステルとしては、オクタン酸エチル、フタル酸ブチル、オレイン酸グリセリド;オリーブ油、ごま油等の植物油;肝油、鯨油等の動物脂;などが挙げられる。
【0037】
疎水性重合体としては、ポリシロキサン(いわゆるシリコーンオイル)等が挙げられる。このようなポリシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、ポリフェニルハイドロジェンシロキサン等が代表的である。
【0038】
本発明において、上述した難水溶性分散媒として特に好適なものは、用途によって多少異なる。
例えば印象材、特に歯科用印象材としての用途に硬化材ペーストを用いる場合には、製造コスト、生体に対する為害性、歯牙の印象を採取する際の味覚への影響等の観点から、上記で列挙した難水溶性分散媒の中でも、炭化水素化合物または疎水性重合体を用いることが好ましく、流動パラフィンまたはシリコーンオイルを用いることが最も好適である。
また、家畜用乳頭パックなどの用途に硬化材ペーストを用いる場合には、前述した過硬化の抑制効果をより長期間発揮させる観点から、上記で列挙した分散媒の中でも沸点が高いものが好ましく、1気圧での沸点が100℃以上、特に150〜600℃のもの、例えば、オクタン、ノナン、デカン、1−ヘキサノール、オレイン酸グリセリド、流動パラフィン、シリコーンオイル等が好ましく、さらに、製造コスト、家畜に対する安全性等を考慮すれば、炭化水素化合物及び疎水性重合体が好ましく、流動パラフィン及びシリコーンオイルが最も好ましい。
【0039】
難水溶性分散媒の配合量は特に制限されるものではないが、一般的に、硫酸カルシウム(無水塩)100質量部当り、10〜200質量部、特に20〜100質量部の範囲内が好ましい。
【0040】
上記の(A)〜(C)の各成分を含む本発明の硬化材ペーストは、高いチキソトロピー性を示し、例えば静置時には1000ポイズを超える高い粘度を有しており、包装容器中に長期にわたって密封保存された場合においてもペースト中の固形分(硫酸カルシウム)の沈降分離を有効に抑制でき、また、この硬化材ペーストに高い負荷がかかった時には、粘度が大きく減少し、高い流動性を示す。
例えば、上述した各成分の種類や配合量等を適宜選択することにより、本発明の硬化材ペーストは、下記式(1);
TI=η
A/η
B (1)
式中、η
Aは、コーンプレート型粘度計を用いて、せん断速度0.1/s
で測定した粘度(25℃)であり、
η
Bは、コーンプレート型粘度計を用いて、せん断速度1.0/s
で測定した粘度(25℃)である、
で定義されるチキソトロピー指数TIを1.5以上、特に、1.8以上、最も好ましくは2.0以上に調整できる。
【0041】
<基材ペースト>
上述した硬化材ペーストと混練されて硬化性組成物を形成する基材ペーストは、アルギン酸塩(D)及び水(E)を必須成分として含む。
【0042】
(D)アルギン酸塩;
既に述べたように、アルギン酸塩は、前述した硬化材ペースト中の硫酸カルシウム(A)と水の存在下で反応して硬化物を形成する成分であり、それ自体公知のもの、例えば、
i)アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等のアルギン酸アルカリ金属塩、
ii)アルギン酸アンモニウム、アルギン酸トリエタノールアミン等のアルギン酸アンモニウム塩、
などを使用することができる。
これらのアルギン酸塩の中でも、入手容易性、取扱い容易性、硬化物の物性等の観点から、アルギン酸アルカリ金属塩を用いることが好ましい。また、アルギン酸塩は、2種類以上を混合して用いることもできる。
また、アルギン酸塩の分子量は特に限定されないが、一般的には、アルギン酸塩を1重量%含む水溶液の粘度が50cps〜100cps(23℃)の範囲内となる分子量が好ましい。
【0043】
(E)水;
水は、硫酸カルシウム(A)とアルギン酸塩(D)との硬化反応(ゲル化)に必要な成分であり、水道水、イオン交換水、蒸留水等が使用される。
水の使用量は、アルギン酸塩100質量部当り、100〜4000質量部、特に500〜2000質量部の範囲内とするのがよい。
尚、この水は、その一部の量(例えば1000質量部以下)を基材ペーストと硬化材ペーストとの混練時に配合することもできる。
【0044】
このような基材ペーストは、硬化材ペースト中の硫酸カルシウム(A)と基材ペースト中のアルギン酸塩(D)との無水塩換算での質量比(A/D)が、10/100乃至2000/100、特に100/100乃至1000/100の範囲となるように、硬化材ペーストと混練されて使用される。
【0045】
<その他の配合剤>
本発明においては、前述した高いチキソトロピー性を損なわない範囲で、硬化材ペースト及び基材ペーストの何れにも、その用途や要求特性に応じて、種々の添加剤を配合することができる。
【0046】
このような添加剤として代表的なものとしてマスキング剤がある。
マスキング剤は、特に上述した硬化材ペーストと基材ペーストとの混練物からなるアルジネート硬化性組成物を歯科用印象材に適用する場合に使用されるものであり、この印象材(アルジネート硬化性組成物)を患者の口腔内に挿入したとき、患者に与える不快感を抑制するために使用されるものである。
即ち、口腔内に挿入される印象材には、前述したポリグリセリン脂肪酸エステル(B)が含有されている為、これが口腔内に挿入されると、患者が独特の味(苦味、渋み)を感じる場合がある。このような独特の味をマスキング剤によって緩和することにより、患者に与える不快感を抑制するわけである。
【0047】
このようなマスキング剤としては、例えば、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、ステビア、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、パラチノース、及びトレハロース等の甘味料や、ラフィノース、メレジトース、スタキオース、シクロデキストリン類(α-シクロデキストリン,β−シクロデキストリン,γ−シクロデキストリン等)等のオリゴ糖などが挙げられる。中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステルの苦味の緩和と抗齲蝕性との点で、ステビア、キシリトール、トレハロース等の糖類が好ましい。
【0048】
また、上記の糖類の中でもトレハロース等の二糖類を使用した場合には、上記マスキング効果に加え、印象精度が向上し且つ印象採得後の硬化体の耐乾燥性も向上するという利点がある。即ち、トレハロースはアルギン酸と類似の骨格を有しており且つ親水性が高いため、印象材硬化物の分子鎖内空間に水を保有した状態で入り込む。この結果、分子鎖凝集による硬化体の収縮が抑制され、また、乾燥による水分の揮散もトレハロースにより有効に抑制され、耐乾燥性の向上がもたらされ、乾燥による硬化体の変形も有効に防止され、かくして高い印象精度を保持することができる。
【0049】
マスキング剤の配合量は、特に限定されないが、マスキング効果(苦味や渋みを緩和する効果)を良好に発揮させるためには、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)100質量部に対して、0.5質量部以上配合することが好ましい。また、マスキング剤は、一定量以上加えても特に問題にはならないが、マスキング効果は飽和する。そのため、マスキング剤はポリグリセリン脂肪酸エステル100質量部に対して、0.5〜500質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜50質量部の範囲で使用することがより好ましい。
また、トレハロースを使用し、その印象精度向上効果や耐乾燥性向上硬化を重視する場合には、トレハロースの使用量は、アルギン酸塩100質量部当り、100〜2000質量部、特に400〜1200質量部の量で使用する範囲内であること好ましい。
【0050】
さらに、上記で例示したマスキング剤の中に例示されている還元性を示さない糖類(非還元糖)は、水分を保有した状態で硬化体の分子鎖内空間に入り込むため、硬化物に弾性を付与し、しかも、水分の乾燥も抑制される為、硬化体の弾性を、例えば乳頭パックに要求される程度の期間にわたって維持することができる。従って、このような非還元糖の使用は、乳頭パックの用途にも極めて有効であり、感染予防すべき程度の期間、乳頭に良好に密着する乳頭パック(硬化皮膜)を形成することができる。
【0051】
尚、還元性を示さない糖(非還元糖)とは、アルカリ性水溶液中で、銀や銅等の重金属イオンに対して還元作用を示さない性質を意味する。即ち、還元性を有する糖類は、重金属イオンに対する還元作用を利用したトレンス試薬、ベネジクト試薬あるいはフェーリング試薬によって検出されるが、非還元糖は、これら試薬で検出できない。例えば、前述したマスキング剤の中では、オリゴ糖や二糖類(例えばトレハロースやスクロース)などが該当する。特に、トレハロースは、乳頭パックの用途にも最適である。
このような乳頭パックの用途に好適な非還元糖の使用量は、アルギン酸塩100質量部当り、100〜2000質量部、特に400〜1200質量部の量で使用する範囲内であること好ましい。
【0052】
上述したマスキング剤や非還元糖は、硬化材ペースト及び基材ペーストのどちらか一方、或いは双方に配合してもよいが、水に対する溶解性の観点から基材ペーストに配合する方が好ましい。
【0053】
さらに、マスキング剤や非還元糖以外の他の添加剤としては、ゲル化調整剤や充填剤を挙げることができる。
これら添加剤は、基材ペーストおよび硬化材ペーストのいずれか一方、または、双方に適宜添加することができる。しかしながら、これらの中で充填剤は、基材ペーストおよび硬化材ペーストの双方に添加することが好ましく、ゲル化調整剤は、硬化材ペーストに添加されることが好ましい。
【0054】
ゲル化調整剤は、アルギン酸塩とゲル化剤との反応速度(硬化速度)を調節(遅延)させることができる。このため、歯科用印象材の用途では、硬化材ペーストと基材ペーストとの混練物であるアルジネート硬化性組成物(印象材)を調製してから口腔内での印象採取までに要する作業時間を確保し得るように、硬化時間を調整することができる。また、乳頭パックの用途では、家畜の乳頭に塗布するまでの作業時間を確保し得るように、硬化時間を調整することができる。
【0055】
ゲル化調整剤としては、公知のゲル化調整剤を制限なく使用することができる。例えば、代表的なゲル化調整剤は、
a)リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸ナトリウム、
トリポリリン酸ナトリウム等のアルカリ金属を含むリン酸塩、
b)蓚酸ナトリウム、蓚酸カリウム等のアルカリ金属を含む蓚酸塩、
c)炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属を含む炭酸塩、
などであり、これらは、1種単独或いは2種類以上の組み合わせで使用される。
【0056】
ゲル化調整剤の配合量は、他の配合成分や要求される硬化時間等に応じて適宜選択できるが、一般的には、アルギン酸塩100質量部当り、1〜30質量部、特に3〜15質量部の範囲内がより好ましい。ゲル化調整剤の配合量を上記範囲内とすることにより、硬化体(印象型や乳頭パック)形成までの作業時間に略対応させて硬化時間を調整することが容易となり、しかも硬化不良を有効に防止することができる。
【0057】
また、充填剤は、硬化物の物性を調整するために使用される。
このような充填剤としては、珪藻土、タルク等の粘度鉱物が代表的であるが、シリカ、アルミナ等の酸化物も用いることができる。充填剤の配合量は特に制限されるものではないが、アルギン酸塩100質量部当り50〜2000質量部の範囲内が好ましく、100〜1000質量部の範囲内がより好ましい。
【0058】
また、印象材の用途において、硬化体の強度調節、印象採取時や石膏模型製造時の石膏模型の表面荒れを防ぐ観点からは、フッ化チタンカリウム、ケイフッ化カリウム等の無機フッ素化合物や、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、アミノ酸/ホルムアルデヒド縮合体等のアミノ酸化合物を使用することができる。また、これらの添加剤は、乳頭パックの用途においても、硬化体の強度調節のために使用することができる。
このような添加剤も、基材ペースト及び硬化材ペーストの何れにも配合することができる。
【0059】
また、基材ペーストと硬化材ペーストとを混合・練和した際、粘度の変化速度の制御を容易とするために、不飽和カルボン酸重合体を配合することが好ましい。また、香料、着色料、pH調整剤、抗菌剤、防腐剤等から選択されるいずれか1種または複数種の添加剤を必要に応じて配合することができる。
さらに、上記の添加剤以外にも、香料、着色料、抗菌剤、防腐剤、pH調整剤等を適宜配合することができる。
これらの添加剤もまた、基材ペースト及び硬化材ペーストの何れにも配合することができる。
【0060】
上述した硬化材ペースト及び基材ペーストは、それぞれ、ペースト製造に利用できる公知の攪拌混合機を用いて製造することができる。このような撹拌混合機としては、例えば、ボールミルのような回転容器型混合混練機;リボンミキサー、コニーダー、インターナルミキサー、スクリューニーダー、ヘンシェルミキサー、万能ミキサー、レーディゲミキサー、バタフライミキサー等の水平軸または垂直軸を有する固定容器型の混合混練機;を利用することができる。
【0061】
<硬化性組成物調製用キット>
本発明の硬化材ペーストは、使用直前に基材ペーストと混練し、この混練物(アルジネート硬化性組成物)が印象材や乳頭パックの用途に適用され、混練時に、適宜の量の水(E)を補充することができる。
【0062】
しかるに、一般的には、硬化材ペーストを収容した包装容器と基材ペーストを収容した包装容器とに分け、硬化性組成物調製用キットとして販売し、使用される。即ち、一般のユーザーは、用途に応じて、これらの包装容器から所定量の硬化材ペーストと基材ペーストとを取り出して混練し、用途に応じたアルジネート硬化性組成物を調製し、該組成物を所定の部位に施して用途に応じた硬化体を形成する。
【0063】
このような硬化性組成物調製用キットにおいて、一般に、基材ペースト(X)と硬化材ペースト(Y)との混合比Rm(X/Y)は、一般に質量基準で1〜4の範囲に設定しておくことが好ましい。即ち、このような混合比Rmで基材ペーストと硬化材ペーストとを混練したとき、各成分の量比、例えば硫酸カルシウム(A)とアルギン酸塩(D)との量比が前述した所定の範囲内となるように、硬化材ペーストや基材ペーストの配合組成が設定されることとなる。
尚、当然のことながら、上記の混合比Rmは、製品パッケージや使用説明書などにより、使用者に情報表示しておかなければならない。
【0064】
基本ペーストと硬化材ペーストとの混練は、それ自体公知の混合攪拌機を用いて行うこともできるが、一般的には、2ペーストを一定の量比で自動的に混練することができるペースト自動混練装置を用いることが好ましい。即ち、本発明の硬化材ペーストは、チキソトロピー性が高く、大きな負荷がかかったときには高い流動性を示すため、その吐出量等を精度よくコントロールすることができ、しかも、基材ペーストとの混練も容易に行うことができるからである。
【0065】
上記のようなペースト自動混練装置は、株式会社トクヤマデンタルにより「トクヤマAPミキサー」の商品名で市販されているものが代表的であり、さらに、特開平4−250838号、特開平5−103967号、特開平8−24273号、特開平8−140998号、特開平9−276295号、特開2000−116675号、特開2001−112785号、実開平6−57422号、実開平6−61246号、実開平6−18684号、特開2000−140600号、特開2001−299778号等により提案されている自動混練装置も使用することができる。
【0066】
上記のようにして得られる基材ペーストと硬化材ペーストとの混練物、即ちアルジネート硬化性組成物は、用途に応じて、所定の部位に施され、この状態で硬化が完了する。混練時から硬化完了までの時間(硬化時間)は、用途に応じて、前述したゲル化調整剤などの使用により適宜の時間に設定されるが、一般的には、1〜10分、特に2〜8分程度である。
【0067】
例えば、混練物を印象材として用いる場合には、この混練物(アルジネート硬化性組成物)を専用のトレーに盛りつけ、トレーに盛りつけられた混練物を歯牙等の目的物に圧接することで該混練物に印象を採取する。その後、採取された印象を有する混練物が硬化し、この硬化物を基に石膏模型を作製する等の後工程が実施される。
【0068】
混練物の盛り付けに使用されるトレーとしては、特に制限されないが、一般的には金属製またはレジン製のものが利用される。この金属としては、ステンレス、錫合金、アルミニウム、メッキ処理あるいは樹脂コーティングされた黄銅等が使用され、またレジンとしては、ポリメタクリル酸エステルが代表的である。
【0069】
一方、上記混練物を乳頭パックに適用する場合には、この混練物を、浸漬法、刷毛塗り法、噴霧法などにより家畜の乳頭に塗布し、硬化させて硬化皮膜を形成すればよい。
これにより、牛やヤギ等の搾乳用家畜について、乳頭からの乳房炎などへの感染を有効に防止することができる。
【実施例】
【0070】
本発明の優れた効果を、以下の実験例により説明する。
尚、以下の実験例において、実験Iは、歯科用印象材についての評価であり、実験IIは、家畜用乳頭パックについての評価である。
【0071】
<原料の略称>
後述する実験例に使用されている各種原料の略称は以下の通りである。
1.アルギン酸塩;
Alg−K:
アルギン酸カリウム
(1%水溶液粘度(20℃) 600mPa・sec)
Alg−Na:
アルギン酸ナトリウム
(1%水溶液粘度(20℃) 120mPa・sec)
【0072】
2.ポリグリセリン脂肪酸エステル;
HGSE:
ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル(HLB=2.5)
DGSE:
デカグリセリンペンタステアリン酸エステル(HLB=3.5)
DGISE:
デカグリセリンペンタイソステアリン酸エステル(HLB=3.5)
DGOE:
デカグリセリンペンタオレイン酸エステル(HLB=3.5)
DIGMOE:
ジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=5.5)
DGMRE:(比較)
デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=15.5)
DGTOE:(比較)
デカグリセリントリオレイン酸エステル(HLB=7.0)
DGTSE:(比較)
デカグリセリントリステアリン酸エステル(HLB=7.5)
【0073】
3.難水溶性分散媒;
流動パラフィン
粘度(20℃) 150mPa・sec
水への溶解度 < 0.001mg/L(殆ど溶解しない)
沸点 450℃(1気圧)
SO:
シリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン)
粘度(20℃) 300mPa・sec
水への溶解度 < 0.001mg/L(殆ど溶解しない)
沸点 250℃(1気圧)
【0074】
4.非還元糖;
Cdex−α:
α−シクロデキストリン
Cdex−β:
β−シクロデキストリン
【0075】
5.その他;
P3Na:
リン酸三ナトリウム
FTK:
フッ化チタンカリウム
MT−10:
粒径0.02μmの非晶質シリカ(メチルトリクロロシラン処理物)
SG:
ステアリン酸グリセリル(HLB=3.0)
MSPG:
モノステアリン酸プロピレングリコール(HLB=3.5)
【0076】
<測定或いは評価方法>
以下の実験例で調製されたサンプルについての各種物性の測定或いは評価は、以下の方法により行った。
【0077】
(1)硬化材ペースト粘度;
ガラス製ビーカー(容量:300ml)に、調製後の硬化材ペースト(約240ml)を投入した後、このビーカーを、温度を25℃に設定したインキュベーター内に1時間程度放置した。
その後、インキュベーター内にて回転式粘度計(RION社製 ビスコテスター VT−04F)を用いて硬化材ペーストの粘度(初期粘度V、Poise)を測定した。
次に、調製した硬化材ペーストをアルミ製のペーストパックに充填し、ペースト取り出し口を下方に向けて直立させた状態で、温度を25℃に設定したインキュベーター内に保管した。所定の期間(1年後、2年後)が経過した時に、ペースト取り出し口から、硬化材ペーストを取り出し(約240ml)、上記と同様の方法にて、硬化材ペーストの粘度(保管後の粘度V1、V2、Poise)を測定した。
【0078】
(2)チキソトロピー指数TI;
コーンプレート型粘度計(BOHLIN社製CSレオメーター CVO120HR)に、調整後の硬化材ペーストを適量載せ、25℃で保持しながら粘度の測定を開始し、せん断速度0.1/sでの測定開始から60秒後の粘度(η
A)を測定した。次に、同様の方法で、せん断速度1.0/sでの測定開始から60秒後の粘度(η
B)を測定した。なお、粘度の測定条件は、コーンの直径が2cm、コーンの傾斜角度は1°とした。粘度を下記式(1)に代入し、チキソトロピー指数(TI)を算出した。
TI=η
A/η
B (1)
【0079】
(3)硬化材ペースト10秒吐出量;
ペースト自動混練装置として、トクヤマデンタル社製「APミキサーII」を用意した。
この混練装置に、調製後の硬化材ペーストを充填したパック(ペーストパック)をセットし、しばらくポンプを稼働し、装置内のミキサー内部にペーストを充填した後、硬化材ポンプを10秒間起動し、その間に吐出される硬化材ペーストの重量(硬化材ペースト初期10秒吐出量)を測定した。
一方、上記ペーストパックを、ペースト取り出し口を下方に向けて直立させた状態で、温度を25℃に設定したインキュベーター内に保管した。所定の期間(1年後、2年後)が経過した時に、上記と同様の方法にて、保管後の硬化材ペースト10秒吐出量を測定した。
【0080】
(4)印象精度(細線再現性);
上記のペースト自動混練装置に、調製後の硬化材ペースト或いは基材ペーストが充填された硬化材ペーストパック及び基材ペーストパックをそれぞれセットした。
この混練装置から得られた混練物(印象材ペースト)について、JIST6513に記載された方法に準拠して細線再現性試験を行った。
すなわち、幅50μm及び幅20μmの細線が施された細線再現性試験用金型に印象材ペーストを盛り付け、35℃水中に6分放置後、印象材硬化体を撤去し、印象面に石膏を盛り付け、100%湿度中に1時間保持し、硬化した石膏の印象面に、幅50μm及び幅20μmの細線が再現されているかどうか顕微鏡を用いて観察し、以下に示す評価基準により評価した。
細線再現性評価基準;
◎:幅20μmの細線が途切れる事無く、再現されている。
○:幅50μmの細線が途切れる事無く、再現されている。
△:幅50μmの細線が確認されるが、ところどころ途切れている。
×:幅50μmの細線が確認できない。
【0081】
次に、硬化材ペーストパックを、ペースト取り出し口を下方に向けて直立させた状態で、温度を25℃に設定したインキュベーター内に保管した。
所定の期間(1年後、2年後)が経過した時に、硬化材ペーストを再びペースト自動混練装置にセットし、同様の方法にて、保管後の硬化材ペーストの印象精度(細線再現性)を評価した。
【0082】
(5)苦味・渋みに対する緩和性の評価
上記のペースト自動混練装置に、硬化材ペーストパック及び基材ペーストパックをそれぞれセットした。
硬化材ペーストと基材ペーストとが混練されたペーストを、上顎印象採得用のメタルトレー上に吐出し、被験者10名の上顎の印象を通常の方法にて、採得した。印象採得処置の間、苦味・渋みの程度を下記判定基準により評価した。
苦味・渋み判定基準;
○:苦味・渋みが気になったと答えた被験者が1人も確認されなかった。
△:苦味・渋みが気になったと答えた被験者が1〜3名存在した。
×:苦味・渋みが気になったと答えた被験者が5名以上存在した。
【0083】
<実験I>
(実施例1)
硫酸カルシウム(A)として、25gの硫酸カルシウム無水塩(無水石膏)及び10gの硫酸カルシウム二水塩(二水石膏)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、3.5gのHGSE、難水溶性分散媒(C)として、20gの流動パラフィンを量りとり、小型混練器(アイコー産業社製アイコーミキサー)を用いて1時間混練し、硬化材ペーストを調製した。
得られた硬化材ペーストに関して、粘度、チキソトロピー指数TIおよび10秒吐出量の評価を行った。
【0084】
また、アルギン酸塩(D)として、10gのAlg−K、水(E)として、180gの蒸留水を量りとり、小型混練器を用いて1時間攪拌し、基材ペーストを調製した。
この基材ペースト及び上記硬化材ペーストの全量を、前述したペースト自動混練装置を用いて混練し、得られた混練物について、印象精度(細線再現性)の評価を行った。
また、調製後、25℃インキュベーター内に1年、及び2年保管した硬化材ペーストに関しても、それぞれ同様の評価を行った。
【0085】
(実施例2〜11)
硬化材ペースト或いは基材ペーストの組成を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして硬化材ペースト、基材ペースト及び混練物を調製し、各種の測定を行った。
【0086】
(比較例1〜6)
硬化材ペーストの組成を、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして硬化材ペースト、基材ペースト及び混練物を調製し、各種の測定を行った。
【0087】
実施例1〜11および比較例1〜6について、硬化材ペースト及び基材ペーストの組成、基材ペーストと硬化材ペーストとの混合比Rmについては表1或いは表2に示し、硬化材ペースト粘度、硬化材10秒吐出量、及び印象精度(細線再現性)の評価結果を表3、及び表4に示す。
また、各実施例及び比較例での硬化材ペーストのチキソトロピー指数TIは、以下のとおりであった。
実施例1: 1.56
実施例2: 2.12
実施例3: 2.13
実施例4: 2.20
実施例5: 1.55
実施例6: 2.01
実施例7: 2.08
実施例8: 1.93
実施例9: 2.89
実施例10: 3.81
実施例11: 1.82
比較例1: 1.02
比較例2: 1.04
比較例3: 1.34
比較例4: 1.14
比較例5: 1.08
比較例6: 1.09
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
実施例1〜11の硬化材ペーストは、本発明の要件すべてを満足するものであるが、基材ペーストと混練することにより、良好な初期印象精度を得ることができた。
更に、これらの硬化材ペーストは粘度が非常に高いにもかかわらず、ペーストのチキソトロピー性が高く(チキソトロピー指数が1.5以上)、良好な流動性(10秒吐出量)を有している事がわかる。また、これらの硬化材ペーストを長期間保管した後も、粘度及び流動性(10秒吐出量)の大きな変動は認められず、初期の値が維持されており、良好な印象精度が得られている。
【0093】
尚、実施例7では、トレハロースがアルギン酸塩100質量部当り550質量部配合されているが、印象精度が他の印象材と比較して更に良好な結果が得られている。また、苦味・渋みについては十分緩和されていた。
【0094】
これに対して比較例1は、HLBが2.0〜6.0であるポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されていない。このため、硬化材ペーストを長期間放置すると、硬化材ペースト中の粉成分が沈降分離することにより、硬化材ペーストの粘度が高くなるとともに流動性(10秒吐出量)が大きく減少し、印象精度が得られなくなっている。
【0095】
また、比較例2〜4の硬化材ペーストにはポリグリセリンエステルが配合されているが、何れもHLBが2.0〜6.0の範囲外である。このため、何れの硬化材ペーストも十分なチキソトロピー性を得る事ができず、長期間放置した場合に、その粘度が高くなるとともに、流動性(10秒吐出量)が大きく減少し、印象精度が得られなくなっている。
【0096】
比較例5及び6は、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の界面活性剤を用いた場合であるが、何れの場合においても、十分なチキソトロピー性を得る事ができず、硬化材ペーストを長期間放置した場合に、粘度が上昇し且つ流動性(10秒吐出量)が大きく減少し、印象精度が得られなくなっている。
【0097】
(実施例12〜14及び参考例1、2)
硬化材ペースト或いは基材ペーストの組成を、表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして基材ペーストおよび硬化材ペーストを調整し、印象採得時の苦味・渋み評価を行った。印象材の組成及び結果を表5に示す。
【0098】
【表5】
【0099】
実施例12〜14は、基材ペーストに、マスキング剤(トレハロース或いはキシリトール)が配合されている例であるが、印象採得時に、苦味・渋みを感じることがなかった。
【0100】
これに対し、参考例1、参考例2では、マスキング剤が全く配合されているため、印象採取時に、苦味・渋みを感じる人が見られた。
【0101】
<実験II>
以下の実験は、本発明の硬化材ペーストから得られるアルジネート硬化性組成物を乳頭パックに適用したときの効果を示すために行われたものである。
この実験において、各種の測定及び評価は、以下の方法により行った。
【0102】
(1)過硬化性評価(目視評価、寸法歪)
硬化材ペーストと基材ペーストとを練和用のカップに量りとり、ヘラを用いて、気泡が混入しないように練和して混合ペースト(硬化性組成物)を調製する。
この混合ペーストを、アクリル板上に載せたテフロン(登録商標)製モールドに充填し、さらに、充填された混合ペーストの上面にアクリル板を圧接し、クリップを用いて圧接したアクリル板を固定し、3分放置後、硬化物(ゲル化物)をモールドから撤去することにより、サンプル片(横:57mm、縦:19mm、高さ:3mm)を作製した。
サンプル片作製直後に、サンプル片の寸法(横、縦、高さ)を、測定顕微鏡(オリンパス社製
「STM6」)を用いて計測し、サンプル片の初期体積(V1/mm
3)を算出した。
【0103】
次に、サンプル片を、乳液(搾りたての生牛乳)をしみ込ませた布で包みこみ、25℃インキュベーター内に保管後、1日経過後にサンプル片を取り出し、表面の状態を下記評価基準に従って目視評価した。
過硬化性目視評価基準;
○:しわやひび割れが全く見られず、初期の状態と見分けがつかない状
態。
△:しわが確認でき、初期の状態と異なっている。
×:無数のしわが確認でき、ひび割れも確認され、明らかに初期の状態
と異なっている。
【0104】
また、サンプル片の寸法(横、縦、高さ)を初期と同様の方法にて計測し、1日経過後の体積(V2/mm
3)を算出した。下記式により、寸法歪を算出した。
寸法歪(%)=(V1−V2)/V1×100
サンプル片を再び、乳液(搾りたての生牛乳)をしみ込ませた布で包みこみ、25℃インキュベーター内に保管し、1日経過毎に、同様の方法にて、過硬化性(目視評価、寸法歪)評価を行った。
【0105】
(2)硬化体弾性評価(弾性歪);
(2−1)初期弾性歪の測定
過硬化性評価の場合と同様にして、硬化材ペーストと基材ペーストとの混合ペースト(硬化性組成物)を調製する。
アクリル板(縦45mm×横45mm)の上面にプラスチックリングA(内径31mm、外径38mm、高さ16mm)を配置した後、プラスチックリングA内に、上記の混合ペーストを充填し、この充填と同時に時間の計測を開始した。
さらに、プラスチックリングA内に混合ペーストを充填した後、直ちに、このプラスチックリングAに、小さなプラスチックリングB(内径13mm、外径25mm、高さ20mm)をさらに挿入することにより、プラスチックリングB内部に、上記の混合ペーストを充填した。
【0106】
次いで、プラスチックリングBの上面を別のアクリル板で圧接した後、プラスチックリングBとその両端に配置された2枚のアクリル板とを小型の万力で挟んで固定した。
そして時間の計測を開始してから30秒後に、万力によって両端がアクリル板により圧接固定されているプラスチックリングB(内部に混合ペーストが充填されている)を、25℃のインキュベーター内に入れ、インキュベーターに入れてから15分後(時間の計測開始から15分30秒後)に、プラスチックリングBを取り出した。これによりプラスチックリングB内において硬化した円柱状の硬化物サンプルを得た。
【0107】
次いで、圧縮試験機(株式会社日本メック社製、印象材弾性比較試験機 A−002)を用意する。
上記で得られた円柱状の硬化物サンプルを、該サンプルの中心軸方向から荷重が加わるように圧縮試験機にセットし、時間の計測開始から16分経過後に、以下の手順で圧縮試験を実施した。
【0108】
まず、硬化物サンプルに対して100gf/cm
2の荷重を加えると同時に、この時点(圧縮試験開始時)から時間の計測を開始する。
圧縮試験開始時から30秒を経過した後のダイヤルゲージの値A(mm)を読み取った。また、圧縮試験開始時から60秒〜70秒までの間に、硬化物サンプルに対して印加する荷重を100gf/cm
2から1000gf/cm
2へと増大させ、さらに、70秒〜100秒経過する間では、硬化物サンプルに対して印加する荷重を1000gf/cm
2に保持し続けた。
そして、圧縮試験開始から100秒経過した時点でのダイヤルゲージの値B(mm)を読み取った。
【0109】
読み取ったダイヤルゲージの値A,Bから、下式により弾性歪(εe)を算出した。
弾性歪(εe)=(A−B)/20×100(%)
そして、同一の硬化物サンプルについて同様の評価を3回実施して得られた各々の弾性歪の平均値を硬化物の弾性歪(初期)とした。
【0110】
(2−2)所定期間保管後の弾性歪の測定
初期弾性歪の測定方法と同様の方法により、硬化材ペーストと基材ペーストとの混合ペースト(硬化性組成物)から、円柱状の硬化物サンプルを得た。この硬化物サンプルを25℃インキュベーター内に所定の期間保管した。
所定期間経過後に、硬化物サンプルをインキュベーター内から取り出し、初期弾性歪と同様の測定方法により、所定期間経過後の弾性歪(εe)を求めた。そして、同一のゲル化物サンプルについて同様の評価を3回実施して得られた各々の弾性歪の平均値を硬化物の弾性歪(保管後)とした。
【0111】
(実施例1)
アルギン酸塩(D)として100gのAlg−K、水(E)として1500gの蒸留水、非還元糖(F)として600gのトレハロース、その他成分として珪藻土295gを量りとり、小型混練器(アイコー産業社製アイコーミキサー)を用いて1時間練和し、基材ペーストを調製した。
一方、下記処方により各成分を、上記小型練和器を用いて1時間練和し、硬化材ペーストを調製した。
硬化材ペースト処方;
硫酸カルシウム(A):400gの無水石膏
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B):40gのDGSE
難水溶性分散媒(C):200gの流動P1
その他の成分:
60gのMgO
40gのFTiK
40gのZnO
8gのP3Na
55gの珪藻土
30gのMT−10
【0112】
尚、得られた硬化材ペーストのチキソトロピー指数TIは2.14であった。
【0113】
上記の基材ペースト及び硬化材ペーストを、混練比Rm=2.86で自動練和器(トクヤマデンタル社製「APミキサーIII」吐出レンジ3を使用)によって混練し、乳頭パック用硬化性組成物を調製し、この硬化性組成物について、過硬化性評価及び硬化体弾性評価を行った。
基材ペースト及び硬化材ペーストの組成については表6に示し、硬化組成物の評価結果は表7に示した。
【0114】
(実施例2〜6)
硬化材ペースト及び基材ペーストの組成、或いは両ペーストの混練比を表6に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、乳頭パック用硬化性組成物を調製し、過硬化性評価及び硬化体弾性評価を行い、その結果を表7に示した。
【0115】
【表6】
【0116】
【表7】
【0117】
本発明の硬化材ペーストを基材ペーストと混練して得られるこれら実施例における乳頭パック用硬化性組成物では、カルシウムイオンを含む水溶液と接触した際の硬化体表面の過硬化が抑制されており、4日以上良好な状態が保たれた。また、硬化体の弾性も、5日以上良好な状態が保たれていた。