(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外部装置が、別のリードレスペースメーカ、除細動器、従来形式のペースメーカ、植込み式のプログラミング装置、または体外のプログラミング装置であり、前記外部装置は、200kHzより大きく0.5MHz以下の周波数を有する通信パルスを送信するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のリードレスペースメーカ。
前記コントローラが、不応期の終了前に、前記情報をエンコードしたパルスの電荷均衡を提供するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のリードレスペースメーカ。
前記コントローラが、前記外部装置へ受信可能期間を知らせるベルリンガ信号を送信しかつ前記ベルリンガ信号送信後の前記受信可能期間にのみ前記外部装置からの応答を待つことによって、前記外部装置との間で情報を伝達するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のリードレスペースメーカ。
前記コントローラが、前記情報の一部の伝達を開始するべく、前記少なくとも2つの電極を介して前記外部装置へ同期信号を送信するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のリードレスペースメーカ。
前記ペースメーカが、ノイズ除去のために、前記少なくとも2つの電極により受信した信号を識別するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のリードレスペースメーカ。
前記外部装置が、別のリードレスペースメーカ、除細動器、従来形式のペースメーカ、植込み式のプログラミング装置、または体外のプログラミング装置であり、前記情報信号が、200kHz以上の周波数を有する通信パルスであることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パルス発生器は、皮下に位置しているとき、患者が目障りまたは不愉快であると感じ得るような皮膚のふくらみを呈する。患者は、この装置を操作したり「無意識に手でいじったり」する場合がある。たとえ持続的に手でいじらなくても、皮下のパルス発生器は、びらん、突出、感染、及びワイヤリードにおける断線、絶縁損傷、または導体破壊を示す場合がある。筋下または腹部に配置することでこれらの懸案事項の一部に対処することができるが、植え込み及び調整のためにより困難な外科手術が必要とされるので、患者の回復を先延ばしにしかねない。
【0008】
従来のパルス発生器は、胸部に植え込むのであれ腹部に植え込むのであれ、心臓から及び心臓へ信号を運ぶ電極リードとの接続及び取外しのためのインタフェースを有する。通常少なくとも1つの雄コネクタ成形品は、少なくとも1つの端子ピンを電極リードの近位端に有する。少なくとも1つの雄コネクタは、パルス発生器において少なくとも1つの対応する雌コネクタ成形品及び当該コネクタ成形品内の端子ブロックと結合する。通常、電気的に及び機械的に接続を確実にするために、電極リード1本当たり少なくとも1つの端子ブロックに止めねじが螺入される。コネクタ成形品間の電気的絶縁の維持に役立つように、1つ以上のOリングも通常供給される。止めねじの電気絶縁を行うために、止めねじキャップまたはスロットのついたカバーが一般的には含まれる。コネクタとリード間の複雑な接続は、誤作動の機会を多くする。
【0009】
例えば、端子ブロック内にリードピンを完全に挿入しないと、パルス発生器と電極との間の適切な接続ができないことがある。
【0010】
止めねじスロットからねじ回しを正しく挿入しないと、スロットの損傷及びその後の絶縁不良を生じさせる。
【0011】
ねじ回しを止めねじに正しく係合させないと、止めねじの損傷を生じさせ、適切な接続ができないことがある。
【0012】
止めねじを十分に締めない場合も、パルス発生器と電極との間の適切な接続を妨げることがある。しかし、止めねじを締めすぎると、止めねじ、端子ブロックまたはリードピンの損傷を生じさせ、必要であれば行うメンテナンスのための取り外しの妨げとなることがある。
【0013】
リードとパルス発生器コネクタ成形品との間、または止めねじカバーにおける流体の漏れは、適切な電気的絶縁を妨げることがある。
【0014】
リードがパルス発生器を離れる機械的応力集中点における絶縁または導体破壊もまた、故障を生じさせることがある。
【0015】
パルス発生器へのコネクタ成形品の取付部の不注意による機械的損傷によって、漏れが生じたり成形品が外れたりする場合がある。
【0016】
リード本体へのコネクタ成形品の取付部またはリード導体への端子ピンの取付部の不注意による機械的損傷によって、漏れ、開回路状態が生じたり、あるいは端子ピン及び/または成形品が外れたりすらする場合がある。
【0017】
リード本体は、道具によって手術中に不注意に切断されたり、リード本体を適所に保持するために用いられる結紮糸への繰り返し応力によって手術後に切断されたりする可能性がある。何億もの心臓周期にわたる繰り返し運動は、リード本体に沿ってどこにでもリード導体破壊または絶縁損傷を生じさせることがある。
【0018】
リードは種々の長さのものが市販されているが、過剰なリード長さが患者内に存在し、うまく扱われなければならないような場合もある。通常は過剰なリードはパルス発生器の近くで渦巻状に巻かれる(コイル化)。リードのコイル化に起因するリード本体とパルス発生器との間の繰り返し摩耗は、リードへの絶縁損傷をもたらすことがある。
【0019】
鎖骨及び第一肋骨に対するリードの摩擦は、鎖骨下圧挫として知られ、リードを損傷することがある。
【0020】
多くの用途、例えば二腔ペーシングにおいて、同一の患者に、ときには同一の血管に複数のリードが植え込まれる場合がある。何億もの心臓周期にわたるこれらのリード間の摩耗は、絶縁破壊または導体不良さえも引き起こしかねない。
【0021】
植え込まれたパルス発生器と外部のプログラミング装置との間の通信には、遠隔測定コイルまたはアンテナと、パルス発生器内の対応する回路素子とが用いられるが、それによってもたらされる複雑さにより、デバイスのサイズ及び費用が増大する。さらに、通信のためのパルス発生器電池からの消費電力は、一般的に、ペーシングのための電力を1桁以上上回り、ペーシングの別の低所要電力に対して最適な電池構成の選択を妨げかねない電池電力容量に対する要求を突きつける。
【課題を解決するための手段】
【0022】
全体として、一態様では、人間の心臓をペーシングするためのリードレスペースメーカは、密閉ハウジングと、該密閉ハウジングまたはその近傍に設けられた少なくとも2つの電極とを含む。少なくとも2つの電極は、心臓を刺激するためのエネルギー及び少なくとも1つの外部装置との間で情報を伝達するためのエネルギーを供給するように構成されている。
【0023】
この実施形態及び他の実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る。
【0024】
外部装置は、別の(第2の)リードレスペースメーカ、除細動器、従来形式のペースメーカ、植込み式のプログラミング装置、または体外のプログラミング装置であってよい。
【0025】
情報は、或る閾値未満の(sub-threshold)パルスにエンコードすることができる。
【0026】
リードレスペースメーカは、ハウジング内にパルス発生器をさらに含むことができ、パルス発生器は、少なくとも2つの電極に、心臓を刺激するためのエネルギーを供給するように構成され得る。パルス発生器はさらに、情報を少なくとも2つの電極へ伝達するためのエネルギーを外部装置に供給するように構成され得る。リードレスペースメーカは、ハウジング内に第2のパルス発生器をさらに含むことができ、第2のパルス発生器は、情報信号を外部装置へ伝達するためのエネルギーを少なくとも2つの電極に供給するようにさらに構成され得る。
【0027】
リードレスペースメーカは、密閉ハウジング内にコントローラをさらに含むことができ、コントローラは、少なくとも2つの電極を介して情報を伝達することによって外部装置と通信するように構成され得る。コントローラは、ペーシングパルス発生期間に、少なくとも2つの電極を介して情報を伝達することによって外部装置と通信するように構成され得る。コントローラは、不応期外
又はペーシングパルス発生期間外に、少なくとも2つの電極を介して情報を伝達することによって外部装置と通信するように構成され得る。コントローラは、絶対不応期にのみ、少なくとも2つの電極を介して情報を伝達することによって外部装置と通信するように構成され得る。コントローラは、不応期の終了前に情報の電荷均衡(charge balance)を提供するように構成され得る。コントローラは、外部装置へベルリンガ(bell-ringer)信号を送信しかつベルリンガ信号後の或る一定期間にのみ外部装置からの応答を待つ(リッスンする)ことによって、外部装置との間で情報を伝達するように構成され得る。コントローラは、情報の一部の伝達を開始するべく、少なくとも2つの電極を介して外部装置に同期信号を送信するように構成され得る。コントローラは、少なくとも2つの電極により受信したエンコードされた情報信号間の時間の長さを測定するように構成され得る。コントローラはさらに、測定された時間の長さを用いて外部装置のクロック周波数を推定し、情報の伝達のタイミングを最適化するように構成され得る。
【0028】
ペースメーカは、ノイズ除去のために、少なくとも2つの電極により受信した信号を識別するように構成され得る。
【0029】
全体として、一態様では、人間の心臓をペーシングするためのシステムは、リードレスペースメーカと、リードレスペースメーカに取り付けられていない外部装置とを備える。リードレスペースメーカは、密閉ハウジングと、密閉ハウジングまたはその近傍に設けられた少なくとも2つの電極とを含む。少なくとも2つの電極は、心臓を刺激するため及び外部装置との間で情報を伝達するためのエネルギーを供給するように構成される。
【0030】
この実施形態及び他の実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る。
【0031】
情報は、或る閾値未満のパルスを含むことができる。
【0032】
外部装置は、別の(第2の)リードレスペースメーカ、除細動器、従来形式のペースメーカ、植込み式のプログラミング装置、または体外のプログラミング装置であってよい。
【0033】
外部装置は、体外のプログラミング装置であってよい。プログラミング装置は、人間の皮膚に取り付けるように構成されかつさらにリードレスペースメーカとの間で情報を伝達するように構成されている少なくとも2つの皮膚電極を含み得る。外部装置は、コントローラをさらに含むことができ、コントローラは、少なくとも2つの皮膚電極を介して情報を送信することによってリードレスペースメーカと通信するように構成され得る。
コントローラは、少なくとも2つの皮膚電極を介して二相矩形波を用いて情報信号を送信するように構成され得る。二相矩形波は、約25Vのピーク振幅を有し得る。
【0034】
外部装置は、コントローラをさらに含むことができ、コントローラは、リードレスペースメーカとの間で情報を伝達することによってリードレスペースメーカと通信するように構成され得る。コントローラは、ペーシングパルス発生期間に情報信号を伝達するように構成され得る。コントローラは、不応期外
又はペーシングパルス発生期間外に情報信号を伝達するように構成され得る。コントローラは、絶対不応期にのみ情報信号を伝達するように構成され得る。コントローラは、リードレスペースメーカから伝達された情報信号間の時間の長さを測定するように構成され得る。コントローラはさらに、測定された時間の長さを用いてリードレスペースメーカのクロック周波数を推定し、情報の伝達のタイミングを最適化するように構成され得る。
【0035】
外部装置は、ノイズ除去のためにリードレスペースメーカから伝達された信号を識別するように構成され得る。
【0036】
全体として、一態様では、人間の心臓をペーシングする方法は、心臓を刺激するべく、リードレスペースメーカの少なくとも2つの電極を介して電気パルスを伝達するステップと、少なくとも2つの電極とリードレスペースメーカに取り付けられていない外部装置との間で情報信号を通信するステップとを含む。
【0037】
この実施形態及び他の実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る。
【0038】
通信ステップは、不応期にのみ行われ得る。通信ステップは、不応期外
又はペーシングパルス発生期間外に行われ得る。本方法は、不応期の終了前に情報信号を電荷均衡状態にするステップをさらに含み得る。通信ステップは、1つ以上のペーシング周期における所定の時にのみ行われ得る。本方法は、情報の一部の伝達を開始するべく、少なくとも2つの電極を介して外部装置へ同期信号を送信するステップをさらに含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1A及び
図1Bを参照すると、リードレス心臓ペースメーカ102を含む心臓ペーシングシステム100の一実施形態が示されており、
図1Aは、正確な縮尺でない、絵で表した図であり、
図1Bは概略的なブロック図である。リードレス心臓ペースメーカ102は、ハウジング110と、ハウジング110に結合された複数の電極108と、ハウジング110内に密封的に収容されかつ電極108に電気的に接続されたパルス発生器116とを備える。パルス伝達システムは、ハウジング110の内部へエネルギーを供給し、電気パルスを生成し、生成した電気パルスを電極108に伝達するように構成することができる。ハウジング110内には、パルス伝達システムの一部としてプロセッサ112を密封的に収容し、電極108と通信可能に接続させることもできる。プロセッサ112は、電気パルスの伝達を少なくとも部分的に検出した活動に少なくとも部分的に基づいて制御することができる。
【0041】
様々な実施形態において、電極108は、ハウジング110またはハウジング110から2cm以内に結合され得る。いくつかの構成では、電極108は、ハウジング110の外面に一体的に形成され得る。
【0042】
図1Bを参照すると、リードレス心臓ペースメーカ102は、密閉ハウジング110内に実質的に囲繞されている機能素子を有する。ペースメーカは、心室の筋肉へペーシングパルスを伝達しかつ心室の筋肉から電気的活動を検出するため、そして体内または体外の少なくとも1つの他のデバイスと双方向通信するための、ハウジング110内、上、または付近に配置された少なくとも2つの電極108を有する。気密フィードスルー130、131は、ハウジング110電極を介して電極信号を伝導する。ハウジング110は、ペーシング、センシング及び通信のための電力を供給するために一次電池114を含む。ハウジング110は、電極108から心臓活動を感知するための回路132と、少なくとも1つの他のデバイスから電極108を介して情報を受信するための回路134と、電極108を介して伝達されるペーシングパルスを生成しかつ電極108を介して少なくとも1つの他のデバイスに情報を送信するためのパルス発生器116とを含む。ペースメーカ102は、デバイスの調子をモニタするための回路、例えば電池電流モニタ136及び電池電圧モニタ138をさらに含む。ペースメーカ102は、所定の方法でこれらの動作を制御するためのプロセッサまたはコントローラ回路112をさらに含む。
【0043】
ペーシングシステムの別の実施形態によれば、リードレス心臓ペースメーカ102は、ハウジング110と、ハウジング110に結合された複数の電極108と、ハウジング110内に密封的に収容されかつ電極108に電気的に接続されたパルス発生器116とを備える。パルス発生器116は、電気パルスを生成し、生成した電気パルスを、ハウジング110内に完全に収容された電源114から電力を供給される電極108に伝達するように構成されている。アクティビティセンサ154は、ハウジング110内に密封的に収容され、かつ活動を検出するように適合されたものであり得る。ハウジング110内には、論理回路112、例えば、プロセッサ、コントローラ、中央演算処理装置、状態機械、プログラム可能な論理アレイなどが密封的に収容され、パルス発生器116、アクティビティセンサ154及び電極108と通信可能に接続されている。いくつかの実施形態では、論理回路112は、電気パルスの伝達を検出された活動に少なくとも部分的に基づいて制御することができるように構成される。
【0044】
いくつかの実施形態では、論理回路112は、1つ以上のプログラム可能なパラメータに基づいて、電気パルスの伝達及び/またはアクティビティセンサの使用を制御するプロセッサであってよい。プロセッサは、電極108を介して送信される通信信号によってプログラム可能である。
【0045】
図1Bにも示されているように、一次電池114は、正極端子140及び負極端子142を有する。適切な一次電池は、少なくとも3W‐h/ccのエネルギー密度、70マイクロワットの電力出力、1立方センチメートル以下の体積、5年以上の寿命を有する。
【0046】
1つの適切な一次電池は、米国テキサス州ヒューストンのベータバット社(BetaBatt Inc.)にライセンス供与され、商標名DEC(登録商標)電池の名称で展開されているベータ‐ボルタ技術を用いている。ここでは、トリチウムなどの放射性ガスが発する電子をシリコーンウェハが捕捉する。ウェハは、より多くの電子を捕捉するように3次元表面においてエッチングされる。電池は、トリチウムが発する低エネルギー粒子を完全に含む気密パッケージ内にシールされ、放射線の健康影響の見地から長期の人体植込みに対して電池が安全であるようにされる。トリチウムは、12.3年の半減期を有するので、この技術は、5年を超える寿命という設計目標にかなうのに十分以上である。
【0047】
ペーシングシステムの別の実施形態によれば、リードレス心臓ペースメーカ102は、ハウジング110と、ハウジング110に結合された複数の電極108と、ハウジング110内に密封的に収容されかつ電極108に電気的に接続されたパルス発生器116とを備える。パルス発生器116は、電気パルスを生成し、生成した電気パルスを電極108に伝達して、心収縮を発生させる。パルス発生器116はまた、ペースメーカ102の外部の1つ以上の装置106、例えば別のペースメーカや外部プログラミング装置などに情報を伝える。ペースメーカ102は、ハウジング110内に密封的に収容されかつ電極108に電気的に接続された少なくとも1つの増幅器132、134をさらに備える。増幅器132、134は、電極108から受信した信号を増幅するように、かつ心収縮を検出するように構成され、さらに1つ以上の外部装置106から情報を受信することができる。ペースメーカ102は、ハウジング110内に密封的に収容されかつパルス発生器116に接続された電源114をさらに含む。電源114は、ハウジング110の内部から電気パルスのためのエネルギーを供給する。ペースメーカ102は、ハウジング110内に密封的に収容されかつ活動を検出するアクティビティセンサ154を有する。プロセッサ112が、ハウジング110内に密封的に収容され、パルス発生器116、増幅器132、134、アクティビティセンサ154及び電極108と通信可能に接続される。プロセッサ112は、増幅器132、134から増幅された出力信号を受信し、電気パルスの伝送を少なくとも部分的に検出した活動に基づいて制御するように構成されている。
【0048】
例示的な或る実施形態では、増幅器は、消費電力が5マイクロワット以下である心臓センシング用増幅器132と、消費電力が25マイクロワット以下である通信用増幅器134と、消費電力が10マイクロワット以下である心拍応答性のセンサ増幅器156とを備える。
【0049】
或る例示的な実施形態では、調節回路(レギュレータ)146は、心拍応答性の増幅器を含む例示的なシステムにおいて、消費電力が5マイクロワット以下であるように構成し、供給電力が74マイクロワット以下であるように構成することができる。
【0050】
プロセッサ112は、1心周期の平均消費電力が5マイクロワット以下であるように構成することができる。
【0051】
一次電池114の正極端子140からの電流は、分路144を通り抜けて調整回路146へ流れ、ペースメーカ102の残りの回路素子に給電するのに適した正電圧供給148を与える。分路144は、電池電流モニタ136がプロセッサ112に電池電流ドレインの表示及び間接的にデバイスの調子の表示を与えることができるようにする。
【0052】
例示の電源は、放射能から電気エネルギーを得るベータ‐ボルタコンバータなどの一次電池114であることができる。いくつかの実施形態では、電源は、約1立方センチメートル未満の体積を有する一次電池114として選択され得る。
【0053】
例示的な或る実施形態では、一次電池114は、瞬間的に75〜80マイクロワット以下の電力を供給するように選択される。それよりも電力消費が大きいと、電池端子間の電圧を低下させかねない。例示的な一実施形態によれば、
図1Bに示されている回路は、電力消費量の合計が74マイクロワット以下になるように設計され得る。そのような設計は、スーパーキャパシタまたは充電式二次電池などの電源または他の蓄電池に対して、電池の最大瞬間電力容量を超えるピーク電力を供給するために、大型フィルタリングコンデンサ、即ち体積及び費用を追加するであろう部品を使用することを回避する。
【0054】
様々な実施形態において、本発明のシステムは、内部電池からの限られた電力を利用するように電力消費を管理し、それによって装置の容量を小さくすることができる。システム内の各回路は、より大きなピーク電流を回避するように設計することができる。例えば、心臓ペーシングは、ペーシング電極間のタンク型コンデンサ(図示せず)を放電することで達成することができる。タンク型コンデンサの再充電は、一般的には、電荷ポンプ回路によって調節される。特定の実施形態では、電池からの電力が一定でタンク型コンデンサを再充電するように、電荷ポンプ回路を調整することができる。
【0055】
様々な実施形態において、アクティビティセンサ154は、心拍応答ペーシングを制御するように構成される。アクティビティセンサ154は、任意の適切な技術を用いることができ、例えば、アクティビティセンサ154は、加速度計、温度センサ、圧力センサまたは任意の他の適切なセンサであってよい。図の実施形態では、アクティビティセンサ154は、10マイクロワット以下の所要電力で動作することができる。
【0056】
図1Eは、ペースメーカの実施形態を示す。ここでは、アクティビティセンサは、心拍応答ペーシングに対する患者の活動を検出するように構成された、加速度計154及び加速度計増幅器156を含む。加速度計増幅器の出力端子は、プロセッサ112に接続される。リードレス心臓ペースメーカ102が心筋104に取り付けられるため、加速度計154は、所望のアクティビティ信号に加えて、拍動によって生じる加速度を測定する。プロセッサ112は、加速度計の出力信号のサンプリングを、心臓センシング用増幅器132及びパルス発生器116によって決定される心周期と同期させて実施する。プロセッサ112は、次に、複数の心周期の同一の相対期間に測定された複数の加速度信号を比較することにより、患者の活動によって生じたものであって心臓壁の動作によって生じたものではない加速度信号の一部を識別する。
【0057】
他の実施形態では、
図1Bの加速度計154及び加速度計増幅器156は、プロセッサ112と接続された、サーミスタなどの温度変換装置及び信号調整増幅器と置き換えることができる。別の実施形態では、圧力変換装置及び信号調整増幅器を、プロセッサ112と接続することができる。温度は、心周期に対して反応しにくいことから、そのようなアクティビティセンサを用いた心拍応答性の心臓ペースメーカの実施形態では、心周期と同期したサンプリングをする必要がない。圧力は、心周期の周期中に変化するが、圧力波形の容易に測定される特性(例えば、ピーク振幅、最高最低振幅、ピーク変化率(デルタ)など)が、活動のレベルを示すことができる。
【0058】
また
図2に示されているように、円筒形の密閉ハウジング110が、ハウジングの端部に環状電極108を有して示されている。一実施形態では、ハウジング110は、電極間の絶縁を与えるアルミナセラミックからなることができる。電極108は、セラミック上に配置され、プラチナまたはプラチナ‐イリジウムである。
【0059】
ハウジング110を心筋104の内壁または外壁に取り付けるために幾つかの技術及び構造を用いることができる。
【0060】
へリックス226及びスロット228は、ガイディングカテーテルを介しての心内膜的または心外膜的なデバイスの挿入を可能にする。ねじ回しスタイレットを用いて、ハウジング110を回転させ、へリックス226を筋肉104に押し入れて、こうして刺激可能な組織に接触して電極108Aを取り付けることができる。電極108Bは、センシング及びペーシングのための不関電極として働き得る。へリックス226は、従来のペーシング電極リードにおいて既知であるように、電気絶縁のためにコーティングされることがあり、線維形成反応を最小にするためにへリックスの近くにステロイド溶離基質が含まれることがある。
【0061】
他の構成において、縫合穴224及び225を用いて、心臓の外面に接近できるような手順中に、結紮糸を用いて心筋に直接デバイスを取り付けることができる。
【0062】
例示の取付構造と共に、またはそれらに代えて、心室、心房または冠状静脈洞の内部において小柱を掴むための尖叉またはバーブ(鉤状部)を含む従来の心臓電極リードと共に用いられる他の取付構造を用いてもよい。
【0063】
図3を参照すると、少なくとも1つの他のペースメーカと共に心臓ペーシングシステム100内で用いられることができる1つのリードレス心臓ペースメーカ102の別の実施形態が、絵で表した図によって示されている。リードレス心臓ペースメーカ102は、環状電極108A及び第2の電極108Bを有する円筒形の金属製ハウジング310を含む。ハウジング310は、チタンまたはステンレス鋼から製作され得る。電極108Aは、金属製ハウジングから電気的に絶縁するために、プラチナまたはプラチナ‐イリジウムワイヤ及びセラミックまたはガラス製のフィードスルーを用いて製作され得る。ハウジングは、電極108Bによって画定される領域を除いて医療グレードシリコーンまたはポリウレタンなどの生体適合性ポリマーでコーティングされ得る。電極108Aと108Bとの距離は、センシング振幅及びペーシング閾値を最適化するように選択されるものとする。ガイディングカテーテルを介して心内膜的にまたは心外膜的にデバイスを挿入するために、へリックス226及びスロット228を用いることができる。それに加えて、シリコーン製の縫合スリーブ302及び303を用いて、結紮糸を用いてデバイスを心筋に直接取り付けることができる。
【0064】
ペーシングシステム100の別の実施形態によれば、リードレス心臓ペースメーカ102として構成されたペースメーカは、ハウジング110と、ハウジング110に結合された複数の電極108とを含む。ハウジング110内には、パルス発生器116が密封的に収容され、電極108に電気的に接続され、かつ電気パルスを生成し、生成した電気パルスを電極108に伝達するように構成されている。いくつかの実施形態では、アクティビティセンサ154は、ハウジング110内に密封的に収容され、かつ活動を検出するように構成されている。プロセッサ112は、ハウジング110内に密封的に収容され、かつパルス発生器116、アクティビティセンサ154及び/または電極108と通信可能に接続されている。プロセッサ112は、電気パルスの伝達を例えば検出された活動に少なくとも部分的に基づいて制御し、同じ電極108を介して伝導される信号によりペースメーカ102の外部の1つ以上の装置106と通信する。
【0066】
本明細書に記載のリードレス心臓ペースメーカは、生来の心臓の脱分極を検出し、選択された遅延間隔を測定し、情報がエンコードされたパルスを別のペースメーカまたは外部プログラミング装置に伝達するように構成することができる。当該情報は、別体をなすアンテナまたはテレメトリコイルを用いずに、通信チャネルを通じて伝送することができる。通信帯域幅は小さく、各パルスには少数のビットしかエンコードされない。
【0067】
入力通信チャネルを通って通信される情報は、ペーシングレート、パルス幅、検出閾値及び、通常のペースメーカにおいて一般的に外部からプログラミングされる他のパラメータを含み得るが、これらに限定されるものではない。出力通信チャネルを通って通信される情報は、プログラム可能なパラメータ設定、イベント数(ペーシング及びセンシング)、電源電圧、電源電流及び、一般的なペースメーカとともに用いられる外部プログラミング装置によって一般的に表示される他の情報を含み得るが、これらに限定されるものではない。出力通信チャネルは、プログラミングが間違っていないことを確認するために、入力チャネルからの情報をエコー(返送)することもできる。
【0068】
幾つかの実施形態では、情報は、例えば刺激パルスを中断する1つ以上のノッチに2進コードとしてエンコードされる。あるいは、刺激パルスにおけるペーシングパルスの幅を変えることで、情報を、選択されたまたは指定されたコードにエンコードすることができる。また、ペーシングパルス間のオフタイムの変調を使用して情報をエンコードする指定コードを持つ刺激パルスを有する電気エネルギーとして情報を伝達することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、ペーシングパルスの選択された点においてペーシングパルスを非常に短い期間でゲートする技術を使用することによって、情報をエンコードすることができる。パルスのゲート部分の間には、リードレス心臓ペースメーカの電極を電流が流れることはない。情報をエンコードするために、ゲート部分のタイミングを使用することができる。ゲート部分の特定の長さは、プログラミング装置のゲート部分検出能力に依存する。プログラミング装置の電極と皮膚との接触面、並びにリードレス心臓ペースメーカの電極と組織との接触面に固有の静電容量から、一定量の信号の平滑化または低域通過フィルタリングが期待され得る。プログラミング装置による正確な検出を可能にするために、ゲート部分の持続時間は十分に長く設定され、1ペーシングパルス中に伝送され得る情報量は制限される。したがって、通信方法は、植え込まれたペースメーカの刺激電極で刺激パルスを生成するステップと、生成された刺激パルスに情報をエンコードするステップとを含む。パルスに情報をエンコードするステップは、刺激パルスの選択されたタイミング部分において刺激パルスを選択された持続期間でゲートするステップをさらに含むことができ、ゲートによって刺激電極に電流が流れなくなり、ゲート部分のタイミングを調整することによって情報がエンコードされる。
【0070】
情報をペーシングパルスにエンコードする別の方法は、パルスシーケンスにおいて連続するペーシングパルス間のタイミングを変えるステップを含む。ペーシングパルスは、阻止またはトリガーされない限り、所定の間隔で発生する。一連のパルスに情報を与えるために、任意の2つのパルス間の間隔を僅かに変えることができる。情報量(ビットで表される)は、パルスシフトの時間分解能によって決定される。パルスは、一般的に、マイクロ秒単位でシフトされる。最大数ミリ秒でパルスをシフトしても、ペーシング療法に影響することはなく、かつ、患者が感知することはないが、マイクロ秒の範囲でパルス間隔を変えることで重要な情報を伝送することができる。パルスの多くが阻止またはトリガーされる場合には、パルスの変化で情報をエンコードする方法の効果は減少する。したがって、通信方法は、植え込まれたペースメーカの刺激電極で刺激パルスを生成するステップと、生成された刺激パルスに情報をエンコードするステップとを含み得る。前記エンコードするステップは、連続する刺激パルスの間のタイミングを選択的に変えるステップを含む。
【0071】
ゲート部分及び/またはパルス間隔に情報をエンコードする代わりに、若しくはそれに加えて、ペーシングパルスの全幅を、情報をエンコードするために使用することができる。
【0072】
ここで説明した情報をペーシングパルスにエンコードする方法は、プログラミング装置を用いて、例えば、或る心周期中に生じたR波と比較してペーシングパルスの特異的形態を認識することによって、ペーシングパルスと患者の正常な心電図を区別することができる。例えば、外部プログラミング装置は、心臓周期中に生じるR波及びペーシングパルスの比較パターン認識を行うことによって、発生した心臓ペーシングパルスを心電図において生来の心臓の脱分極と区別するように構成することができる。
【0073】
様々な実施形態において、ペースメーカは、情報、例えば、プログラム可能なパラメータ設定、イベント数、電源電圧、電源電流や、アクティビティセンサ信号を心拍応答ペーシングパラメータに変換するのに適している心拍応答制御パラメータなどを送信及び/または受信することができる。
【0074】
ペーシング周期(すなわち、心拍間の時間)中の様々な時点において、リードレスペースメーカと外部装置との間で情報を伝達することができる。例えば、ペースメーカのプロセッサ112(
図2を参照)は、ペーシングパルス発生期間、不応期及び/またはこれら以外の期間に情報を伝達するように構成することができる。
【0075】
ペーシングパルス発生期間外
又は不応期外に情報を伝達するために、情報を伝達するパルスは、心臓の刺激や不整脈の誘発を行わないように構成されている。刺激または不整脈の誘発を防止するために、情報を通信するために用いられる送信パルスは、送信パルスを刺激閾値未満に維持するような、パルス繰り返し数、パルス計数及びパルス振幅の組み合わせを有する。さらに、送信パルスは、生来の心拍を感知するペースメーカの能力を妨げないように構成される。そのような妨げを回避するために、情報を通信するために用いられる送信パルスは、パルスをペースメーカの検出閾値未満に維持するような、パルス幅、パルス繰り返し数、パルス計数及びパルス振幅の組み合わせを有することができる。あるいは、ペースメーカのセンシング増幅器入力を「ブランキング」することすなわちセンシングを止めることができる。このブランキングは、通信パルスの送信中にセンシング増幅器を電極から接続解除するか、センシング増幅器の出力をブランキングするか、またはセンシング増幅器の増幅率を低下させることによって、実現することができる。
【0076】
図4を参照すると、従来形式のペースメーカに対する一般的な出力パルス波形が示されている。ほぼ指数関数的な減衰は、電極/組織インタフェース及びリードによって表されるおよその負荷抵抗によるペースメーカ内のコンデンサの放電に起因する。一般的には、発生器出力は、正味電荷バランスを保証するために1つの電極に容量結合される。パルス幅はT0として示されており、一般的には500マイクロ秒である。
【0077】
ペースメーカがペーシングパルスを供給しているが通信用データを送信していないとき、波形は、
図4に示されている波形に似たものであり得る。
【0078】
いくつかの実施形態、形態または条件では、ペースメーカは、電気エネルギーを生成し、生成した電気エネルギーを、ペースメーカの外部の装置へ情報を伝達する少なくとも1つのノッチによって中断される刺激パルスにより伝送するように構成される。
【0079】
図5を参照すると、時間波形グラフが、通信に適した出力ペーシングパルス波形の一実施形態を示している。例示のリードレスペースメーカが任意選択で通信のためのデータを送信し、なおかつペーシングパルスを伝達しているときであって、両方の働きに対して同じパルス発生器及び電極を用いているときの、ペースメーカの出力パルス波形が示されている。
【0080】
図5は、ペースメーカのパルス発生器が出力パルスをより短いパルス501、502、503、504に分割し、それぞれがノッチ505、506及び507によって分離されていることを示している。パルス発生器102は、ノッチ505、506及び507を、符号508、509及び511がそれぞれ付されたタイミングウィンドウW1、W2及びW4に入るように調節する。ペースメーカは、符号510が付されたタイミングウィンドウW3においてノッチを形成しないことに留意されたい。タイミングウィンドウはそれぞれ時間T1(この例では約100マイクロ秒)だけ隔てられて示されている。
【0081】
ペースメーカのプロセッサによって制御される際に、パルス発生器は、ペースメーカがペーシングパルスにおける4ビットの情報をエンコードするように各タイミングウィンドウ508、509、510及び511においてノッチを選択的に生じさせるかあるいは生じさせない。それより多くのタイミングウィンドウを有する類似のスキームは、1ペーシングパルス当たりのビットをより多くまたはより少なく送信することができる。ノッチの幅は小さく、例えば約15マイクロ秒であり、それによって、ペーシングパルスにおける伝達された電荷及び全パルス幅、具体的にはより短いパルスの幅の合計は、
図4に示されているものと実質的に変わらない。従って、
図5に示されているパルスは、電気刺激の分野でよく知られているラピックの法則(the law of Lapique)に従い、
図4に示されているのとほぼ同じペーシング有効性を有することができる。
【0082】
リードレス心臓ペースメーカにおいて、ある技術を用いて、他の植え込まれたデバイスからペーシングパルスに乗って運ばれる情報を検出するときに電力を節約することができる。リードレス心臓ペースメーカは、複数の利得設定を行いかつ低利得設定を通常動作に用いるような受信増幅器を含み得る。低利得設定は、ペーシングパルス上のゲートされた情報を正確にデコードするのに感受性が不十分であるかもしれないが、ペーシングパルスの有無を検出することはできよう。低利得動作中にペーシングパルスのエッジが検出された場合には、増幅器をすぐに高利得設定に切り替えることができ、詳細なエンコードされたデータの正確な検出及びデコードが可能になる。ペーシングパルスが終わった時点で、受信増幅器を低利得に戻すことができる。デコーディング動作中に用いるために、受信増幅器は、作動させたときに迅速により正確な高利得にシフトするように構成されている。高利得設定を呼び出すことができるように最大の時間を与えるために、エンコードされたデータをペーシングパルスの最後に置くことができる。
【0083】
いくつかの実施形態、形態または条件では、リードレスペースメーカは、電気エネルギーを生成し、生成した電気エネルギーを、ペーシングパルス間のオフタイムの変調を使用して情報をエンコードする指定コードでペースメーカの外部の装置へ情報を伝達する刺激パルスにより伝送するように構成される。
【0084】
刺激パルスにおいてノッチを用いる代替として、あるいはそれに加えて、オフタイム、具体的には刺激が発生しないパルス間の時間を様々に変えて、パルスを生成することができる。オフタイムの変化量は、例えば全体で10ミリ秒以下など小さいものであることができ、所望の心拍数に基づいて予めプログラムされたオフタイムと特定のパルスのオフタイムとの差に基づき情報を付与することができる。例えば、本デバイスは、予めプログラムされたオフタイムを中心として16のオフタイムを画定することによって、各パルスに4ビットの情報を付与することができる。
図6は、可変オフタイムスキームを組み込んだパルス発生器出力の実例を示すグラフである。この図において、時間T
pは、予めプログラムされたパルスタイミングを表す。時間T
dは、パルス発生器によって送信されるデータに対する1つのビット解像度に対応するデルタ時間である。T
pによって規定される瞬間の前または後のT
d時間増分の数は、伝送された特定のデータ要素を与える。パルス発生器の通信の受信機は、時間T
pの事前情報を有する。通信スキームは、検出された拍動に基づき時間T
pが変化していないオーバードライブペーシングに主として適用できる。
【0085】
いくつかの実施形態、形態または条件では、ペースメーカは、電気エネルギーを生成し、生成した電気エネルギーを、ペーシングパルス幅で情報をエンコードする指定コードでペースメーカの外部の装置へ情報を伝達する刺激パルスにより伝送するように構成される。
【0086】
図5は、情報をペーシングパルスのノッチとしてエンコードする技術を示している。
図6は、ペーシングパルス間のオフタイムを調節して、情報を伝達する技術を示している。これら2つの例示的なコード化スキームとは別に、またはこれらに追加して、ペーシングパルスのパルス幅全体を使って情報を伝達することができる。例えば、或るペースの心房拍動は、500マイクロ秒のパルス幅を示すことがあり、このパルス幅を30マイクロ秒に減少させることによって、或る固有の心房収縮を識別することができる。絶対的なペーシングパルスのパルス幅またはパルス幅内での相対的なシフトを用いて、情報をエンコードすることができる。ペーシングパルスのパルス幅の変化は、比較的小さくすることができ、ペーシングの有効性に影響を与えない。
【0087】
リードレス心臓ペースメーカが正確に機能することを確実にするために、特定の最小内部供給電圧が維持される。ペーシング用タンク型コンデンサの充電が行われるとき、供給電圧は、事前充電レベルから低下することがあり、それは、電池の寿命が終わりに近づき、電流供給源たる能力が低下したときにより顕著になり得る。したがって、リードレス心臓ペースメーカは、供給電圧が規定レベル以下に下がったときにペーシング用タンク型コンデンサの充電を中止する能力を備えて作製することができる。充電が停止したら、供給電圧は、タンク型コンデンサの充電開始前の値に戻る。
【0088】
データを送信するための例示的なスキームは、ペースメーカの電流消費量を著しく増加するものではない。例えば、ペースメーカは、電流消費量を増やすことなく、ループ内でデータを連続的に送信することができる。
【0089】
この例示的な例では、高周波(RF)通信を用いてペーシング命令を心拍毎ベースで遠隔電極に送信し、遠隔電極にペーシングパルスを発させることが回避される。RF通信は、遠隔電極におけるアンテナ及び変調/復調ユニットの使用を必要とし、そのことが植込み装置のサイズを著しく増大させる。また、心拍毎ベースでのペーシング命令の通信は、本体及び遠隔電極に対する所要電力を増加させる。対照的に、例示のシステム及び刺激装置は、制御装置本体との心拍毎の通信を必要としない。
【0090】
例示的な実施形態−外部プログラミング装置
【0091】
いくつかの実施形態では、リードレスペースメーカと通信するデバイスは、別のリードレスペースメーカ、従来のリード付きペースメーカ、除細動器、植込み式のプログラミング装置、または外部プログラミング装置であってよい。
【0092】
図7A及び
図7Bは、装置106が外部プログラミング装置1104であるペースメーカシステムを示す。ペースメーカシステム1100A、1100Bは、1つ以上の植込み型装置102と、双方向通信経路を介して1つ以上の植込み型装置102と通信するように構成された外部プログラミング装置1104とを含む。双方向通信経路は、1つ以上の植込み型装置102によって生成されかつ体内組織を通って外部プログラミング装置1104に伝導された刺激パルスにエンコードされた情報をデコードする受信経路を含む。
【0093】
例示的な構成によれば、双方向通信経路は、2つ以上の電極1106を介して、体内組織を通る伝導により、複数のリードレス心臓ペースメーカ102との通信が可能になるように構成され得る。
【0094】
様々なペースメーカシステムの実施形態によれば、外部装置またはモジュール1104は、通信送信チャネルで接続しており、1つ以上の植え込まれた装置102と双方向に情報を交換するための送受信機能要素を有する。通信チャネルは、皮膚表面に付着させるかまたは固定することができる2つ以上の電極1106を含む。皮膚から見れば、通信送信チャネルはワイヤレスであり、細胞内体液及び細胞外体液のイオン媒体を含み、体表電極と植込み型モジュール1104との間の電解結合(electrolytic-galvanic coupling)を可能にする。
【0095】
ペースメーカシステム1100A、1100Bにおいて、双方向通信経路は、約10〜500kHz、例えば100〜300kHz、例えば約250kHzの周波数の変調信号を用いて骨格筋を刺激しない変調により、体内組織を介した直接伝導で外部プログラミング装置1104から1つ以上の植込み型装置102へ情報を送る送信経路をさらに含むことができる。
【0096】
外部プログラム1104から植え込まれた装置102に伝送された情報は、約10〜100kHzの範囲の変調信号(中高周波)によって伝達される。信号は、直接伝導で通信送信チャネルを介して伝送される。この周波数帯域の変調信号は、生体の脱分極(骨格筋の活性化及び患者に不快を生じさせる)を引き起こさないほど十分に高い周波数を有する。また、周波数は、放射線、クロストーク、及び体内組織の過剰な衰弱に関連する問題を引き起こさないほど十分に低い。それゆえ、心臓の拍動のサイクルまたは他の身体作用に関係なくいつでも情報を通信することができる。信号の減衰率が小さく、信号は体中を通過して植え込まれた装置102に受信されるので、身体における電極の設置部位に関しては、特に制限はない。
【0097】
幾つかの実施形態では、双方向通信経路は、情報信号から心電図を分離するように構成された低域通過フィルタを有する受信経路をさらに含むことができる。通信チャネルを介して情報を伝送するのに用いたのと同じ体表電極1106を、患者の心電図を検出するために用いることもできる。心電図の周波数は、一般的に1〜100Hzの間であり、通信伝送チャネルを介して情報を伝送するのに用いられる周波数範囲10〜100kHzよりもかなり低い。したがって、低域通過フィルタによって心電図を情報信号から分離することができ、任意選択でプログラミング装置1104によって心電図を表示させることができる。通信チャネルが作動しているときに通信チャネルからのノイズまたは誤信号が心電図チャネルに影響するのを防止するために、低域通過フィルタに加えて、ブランキング技術を使用することができる。
【0098】
植込み型の装置102は複数存在し得るので、プログラミング装置から通信される情報は全ての装置によって検出され、植え込まれた各装置に対する情報の送信を、同じ情報を何度も送信することなく行うことができる。
【0099】
様々な実施形態及び用途において、双方向通信経路は、共通の通信イベントにおいてプログラミング装置1104から1つ以上の植込み型装置102に情報を送信する送信経路をさらに含むことができ、それによって、1つ以上の植込み型装置102のうちの1つ以上の標的装置に対して、特定の技術を用いて情報が送信される。例えば、固有のアドレスを有する単一の植込み型装置または複数の植込み型装置のサブセットに特異的な情報を、前記単一の植込み型装置または複数の植込み型装置のサブセットに割り当て、かつ、前記情報にエンコードすることができる。別の技術では、情報は、特定の植込み型装置または特定の複数の植込み型装置のサブセットによって実行される特定の機能を指定することができる。特定の植込み型装置または特定の複数の植込み型装置のサブセット単独による実行を始動させるための個々のアドレス情報を送信することなく、情報を1つ以上の植込み型装置に伝送することができる。別の技術では、情報は、受信した情報が機能に関することを認識するように構成された機能に特定的なプログラミングを有する特定の植込み型装置または特定の複数の植込み型装置のサブセットにより実行される特定の機能を指定することができる。
【0100】
特に、単一の植え込まれた装置または複数の装置のサブセットに特異的な情報を送信することができる。各装置またはサブセットには、固有のアドレスを割り当てることができる。複数の装置に送信される情報にアドレスをエンコードすることができ、個々の装置は、前記アドレスまたは自身が属するサブセットのアドレスに適合する情報のみを使用することができる。
【0101】
別の技術では、各植込み型装置102または複数の装置102のサブセットが特定の機能(植え込まれた他の装置のものと異なる)を行う場合、グループまたは個別アドレスのオーバヘッドを加えることなく、各装置102またはサブセットに情報を送信することができる。例えば、装置102またはサブセットは、1つの特定の機能のみを行うことができる。プログラミング装置はグループ全体に情報を送信するが、その情報がそのグループの1つの装置またはサブセットにのみ関連する場合は、その情報を使用できない装置は、その情報を無視し得る。各装置は、特定の機能に特異的な固有のプログラミングを有し、受信情報がその機能に関連するか否かを認識することができる。この技術と関連して作動する装置は、一般的ではなく特定の機能のみを実行するものであっても、一般的な機能がプログラミングによって特殊化され得る一般的な装置であってもよい。したがって、装置の機能は、製造時に規定するか、植え込みまたはそれ以降に規定することができる。各装置の機能を製造時に規定し、検査時に関連機能がわかるように装置にラベルまたは印を付けることができる。
【0102】
幾つかの実施形態では、1つ以上の植込み型装置102は、心臓ペーシングパルスを生成し、生成された心臓ペーシングパルスに情報をエンコードする1つ以上のリードレス心臓ペースメーカであって、情報のエンコードが、ペーシングパルスの形態を治療効果及びペーシングパルスのエネルギーコストに好適なように選択的に変化させることによって行われるリードレス心臓ペースメーカを含むことができる。アンテナ及びテレメトリコイルを使用せずに通信すべく、心臓ペーシングパルスは、電極を介して体内組織に伝導される。植え込まれたリードレス心臓ペースメーカ102から外部プログラミング装置1104へ伝送される情報には、情報がペーシングパルスにエンコードされる通信スキームを使用することができる。ペーシングパルスの治療効果を変えることなく、パルスの形態は、エンコードされた情報を含むように変換される。ペーシングパルスによって運ばれるエネルギーは、情報がエンコードされた後も実質的には同じである。外部プログラミング装置1104は、関連する体表電極1106を介してペーシングパルスを受信する。エンコードされた情報は、ペーシングパルスから引き出され、植込み型リードレス心臓ペースメーカの状態に関する情報(電池電圧、リードのインピーダンス、検出された心電図の振幅、ペースメーカの電流ドレイン、プログラムされたパラメータ、または他のパラメータなど)を含み得る。
【0103】
例示的な外部プログラミング装置1104及び付随する操作方法又は技術によって、植え込まれたペースメーカまたはリードレス心臓ペースメーカ102から伝導通信を用いて収集された情報をユーザに提示することができる。提示される情報には、電池電圧、リードのインピーダンス、心電図の振幅、または装置の電流ドレインが含まれ得る。これらの情報に加えて、リードレス心臓ペースメーカに設定及びプログラムされるパラメータなどの他の情報も提示され得る。情報は、表示スクリーン上でユーザに提示され得る。外部プログラミング装置1104の幾つかの実施形態または構成には、例えばワイヤレスまたはケーブルを介しての、他の表示装置(携帯コンピュータまたは端末)への第2のリンクが含まれ得る。また、第2のリンクには、遠隔端末での表示のためにローカルエリアネットワークまたはインターネットを介した通信が含まれ得る。
【0104】
図7Aは、外部プログラミング装置1104及び心臓内に植え込まれた2つのリードレス心臓ペースメーカ102を含む例示的な構成を示す。外部プログラミング装置1104は、3つの機能を果たす2つの電極1106を介して皮膚表面に物理的に接続している。第1に、電極1106は、10〜100kHzの中波の変調信号を用いてプログラミング装置1104からリードレス心臓ペースメーカ102へエンコードされた情報を送信する。第2に、電極1106は、リードレス心臓ペースメーカ102のペーシングパルスにエンコードされた情報を検出することによって、個々のリードレス心臓ペースメーカ102から情報を受信する。第3に、電極1106は、プログラミング装置1104で表示及び分析するための表面心電図を受信する。
【0105】
図7Aでは、2つのリードレス心臓ペースメーカ102が心臓内に植え込まれている。したがって、ペースメーカシステム1100Aまたは1100Bでは、植込み型装置102は、心室の内壁及び外壁に隣接するように植え込むことができる1つ以上のリードレス心臓ペースメーカを含み得る。
図7Bを参照すると、2つのリードレス心臓ペースメーカ102が心臓の外面に固定された状態で植込まれている点で異なる以外は
図7Aと同様なシステムが示されている。電極1106及びプログラミング装置1104は、リードレス心臓ペースメーカ102が心臓内に植込まれていようと心臓外(心臓の外面上)に植込まれていようと
図7A及び
図7Bで示されている配置で同様に機能する。リードレス心臓ペースメーカが全て心臓内に植え込まれるか心臓外に植え込まれるかに関しては、制限はない。1つ以上のリードレス心臓ペースメーカが心臓内に植込まれるとともに、他のリードレス心臓ペースメーカが心臓の外面上に植え込まれる場合もある。プログラミング装置104の機能は、実質的に同じである。
図7A及び
図7Bに2つの電極1106が示されているが、2つという数は、一般的に、適切な伝導通信のための最低限の数である。より多くの電極を使用することもでき、それによって、より優れた分析のために複数のベクトルで心電図(ECG)を検出することが可能になる。2つ以上の電極を使用すると、リードレス心臓ペースメーカとの伝導通信のためにベクターを選択することもでき、それによって、システムのSN比を最大にすることができる。
図7A及び
図7Bは各々2つのリードレス心臓ペースメーカ102を示している。効果的な治療に適したペースメーカの数に応じて、1つか、2つかまたはそれ以上のリードレス心臓ペースメーカを植え込むことができる。
【0106】
様々な実施形態において、外部プログラミング装置1104は、1つ以上の動作を行うように構成することができる。前記動作として、心電図の検出、植え込まれたペースメーカからの状態情報の読み出し、共通の電極セットを介して伝達された情報に含まれる複数の植え込まれたペースメーカの設定パラメータの同時調整、心電図の表示、少なくとも1つの植込み型装置から受信した情報の表示などがある。
【0107】
様々な実施形態において、ペースメーカ102は、内部電池からの限られた電力を利用するように電力消費を管理し、それによって装置の容量を小さくすることができる。ペースメーカ内の各回路は、大きなピーク電流を回避するように設計することができる。例えば、心臓のペーシングは、ペーシング電極間のタンク型コンデンサ(図示せず)を放電することで達成することができる。タンク型コンデンサの再充電は、一般的には、電荷ポンプ回路によって調節される。特定の実施形態では、電池からの電力が一定でタンク型コンデンサを再充電するように、電荷ポンプ回路を調整することができる。1つ以上のリードレス心臓ペースメーカは、刺激パルスの生成に備えてタンク型コンデンサを充電するように、かつパルス生成の間に1つ以上のウィンドウを設定(time)するように、かつ設定した1つ以上のウィンドウの間にタンク型コンデンサの充電を不能にするように、かつタンク型コンデンサが不能の間に、植え込まれたペースメーカ内の受信増幅器を作動させるように構成することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、外部プログラミング装置1104は、リードレス心臓ペースメーカ102から刺激パルスを検出することができる。そして、リードレス心臓ペースメーカの受信増幅器を作動させるウィンドウと一致させるために、特定の遅延後にデータを送信することができる。
【0109】
植込み型装置102は、様々な技術(ペーシングパルス幅、ペーシングパルスにおける2進化ノッチ、ペーシングパルス間のオフタイムの変調を利用する情報エンコード技術、または他の適切なエンコード技術など)を用いて情報をエンコード及び/またはデコードすることができる。外部プログラミング装置1104は、
図9に示されているオン/オフキーイングエンコーディング及び変調技術を用いて情報をエンコード及び/またはデコードすることができる。しかしながら、中高周波数で変調ビットストリームを生成することができる他の適切な方法(例えば、周波数シフトキーイング、周波数変調または振幅シフトキーイング)を用いることができる。
【0110】
図8を参照すると、植え込まれたペースメーカシステムと伝導通信を用いて通信するように構成された外部プログラミング装置1204の一実施形態を示す概略的なブロック図が示されている。外部プログラミング装置1204は、1つ以上の植え込まれたペースメーカと通信するために体の皮膚に電気的に接触する少なくとも2つの電極206に接続するように構成されたインタフェース1208を含む。外部プログラミング装置1204は、インタフェース1208と接続し、かつ、1つ以上の植え込まれたペースメーカと双方向通信するように構成された双方向通信経路1210R及び1210Tをさらに含む。通信経路は、1つ以上の植え込まれたペースメーカによって生成され、かつ、体内組織を伝導される刺激パルスにエンコードされた情報をデコードする受信経路1210Rを含む。
【0111】
双方向通信経路1210R及び1210Tは、電極1206を介した1つ以上のリードレス心臓ペースメーカとの通信用及び体内組織を通しての伝導用に構成されている。
【0112】
外部プログラミング装置1204は、骨格筋を刺激しない変調を用いて、体内組織を通しての伝導によって、プログラミング装置1204から1つ以上の植え込まれたペースメーカへの情報を伝える送信経路1210Tをさらに含む双方向通信経路1210R及び1210Tを有し得る。
【0113】
幾つかの構成では、双方向通信経路1210R及び1210Tは、周波数が約10〜100kHzの周波数範囲の変調信号を用いて、直接伝導によってプログラミング装置1204から1つ以上の植え込まれたペースメーカへの情報を伝える伝送経路を含むようにさらに規定することができる。また、幾つかの構成では、2つ以上の電極206並びに双方向通信経路1210R及び1210Tは、双方向情報信号通信用及び心電図検出用に構成することができる。
【0114】
また、いくつかの実施形態では、双方向通信経路1210R及び1210Tは、共通の通信イベントにおいてプログラミング装置1204から複数の植え込まれた装置への情報を伝える送信経路1210Tをさらに含み得る。幾つかの実施形態または特定の操作条件では、送信経路1210Tは、共通の通信イベントにおいてプログラミング装置1204から複数の植え込まれた装置への情報を伝えるように構成することができ、その場合、単一の植え込まれた装置または植え込まれた装置のサブセットに特異的な情報は、単一の植え込まれた装置または植え込まれた装置のサブセットに割り当てられかつ情報にエンコードされた固有のアドレスを有する。送信経路1210Tは、共通の通信イベントでプログラミング装置3004から複数の植え込まれた装置へと情報を伝送するように構成することもでき、その場合、情報は、植え込まれた特定の装置または植え込まれた装置の特定のサブセットによって実行される特定の機能を指定する。特定の植え込まれた装置または特定の植え込まれた装置のサブセットだけで実行を始動させる個別のアドレス情報なしに、植え込まれた複数の装置に情報が伝送される。また、送信経路1210Tを、単独で、または他の技術と組み合わせて、共通の通信イベントでプログラミング装置1204から植え込まれた複数の装置に情報を伝送するように構成することもでき、その場合、情報は、特定の機能を指定する。当該機能は、特定の植え込まれた装置または特定の植え込まれた装置のサブセットによって実行され、受信情報が当該機能に関連することを認識するように構成された当該機能に特異的なプログラミングを含む。
【0115】
例示的な実施形態では、双方向通信経路1210R及び1210Tは、プログラミング装置1204と皮膚表面との間に伝導通信経路を形成する2つ以上の電極1206と、送信経路1210Tとを含む。送信経路1210Tは、プロセッサ1212と、コマンド/メッセージエンコーダ1230と、変調器1232と、増幅器1236とを含む。プロセッサ1212は、1つ以上の植え込まれたリードレス心ペースメーカに情報を伝達するように構成されている。コマンド/メッセージエンコーダ1230は、パラレルインタフェースを介してプロセッサ1212に接続しており、データをエンコード及びシリアル化してビットストリームにするように構成されている。情報エンコーディングは、オン/オフキーイング、周波数シフトキーイング、周波数変調、振幅シフトキーイングなどのエンコーディング技術から選択することができる。変調器1232は、コマンド/メッセージエンコーダ1230に接続しており、シリアル化されたデータを受信し、約10〜100kHzの範囲の周波数を使用して変調する。増幅器1236は、変調器1232に接続しており、信号振幅をロバストな伝導通信に適したレベルまで増加させる。
【0116】
双方向通信経路1210R及び1210Tは、心電図を情報信号から分離するように構成された低域通過フィルタ1214を有する受信経路1210Rをさらに含む。
【0117】
様々な実施形態及び構成において、双方向通信経路1210R及び1210Tは、体内組織を通しての伝導によって1つ以上の植え込まれたペースメーカから情報をプログラミング装置1204で受信する受信経路1210Rをさらに含む。受信経路1210Rは、例えばペーシングパルス幅を用いるか、2進化されたノッチを用いるか、またはペーシングパルス間のオフタイムの変調を利用するか、またはペースメーカ内でデータをエンコードするための他の適切な技術を用いるかしてエンコードされたデータをデコードすることによって、情報をデコードすることができる。
【0118】
例示的な実施形態では、双方向通信経路1210R及び1210Tは、2つ以上の電極1206に接続し、それによって、プログラミング装置1204と皮膚表面との間に伝導通信経路と、受信経路1210Rとを形成する。受信経路1210Rは、心電図(ECG)の増幅器/フィルタ1214と、AD変換器(analog-to-digital converter:ADC)(
図8には図示せず)と、プロセッサ1212とを含む。心電図(ECG)の増幅器/フィルタ1214は、周波数が約1〜100Hzの範囲の信号を選択して増幅するように構成された特定帯域通過増幅器(differential band-pass amplifier)を含む。AD変換器(ADC)は、フィルタリング及び増幅がなされた信号をデジタル化するように構成されている。プロセッサ1212は、ADCに接続しており、ECGデータを受信し、任意選択で表示するように構成され、かつ、心臓ペーシングパルスにエンコードされた情報をデコードように構成されている。
【0119】
プログラミング装置1204は、双方向通信経路に接続し、かつ、1つ以上のペースメーカ(例えば、リードレス心臓ペースメーカ)と通信するように構成されたプロセッサ1212をさらに含み得る。リードレス心臓ペースメーカは、
図7A及び
図7Bに示されているように、心室の内壁または外壁に隣接するように植込むことができる。
【0120】
図8に示されているように、外部電極1206は、プログラミング装置1204と皮膚表面との間の伝導通信経路を可能にする。心電図(ECG)の信号は、ECG増幅器/フィルタ1214(特定帯域通過増幅器が含まれ得る)に入る。ECG信号は、一般的には、1〜100Hzの間の範囲でスペクトル成分を有する。1〜100Hzの範囲で十分な信号エネルギーが通過する同時に心臓活動に関連しない他の信号をフィルタリングするように、ECG増幅器/フィルタ1214のための帯域通過フィルタポールを選択することができる。ECG信号は、AD変換器を用いることによって、増幅及びデジタル化することができる。デジタル化されると、信号は、プロセッサ(例えば、中央演算処理装置(CPU)212)に伝送される。
【0121】
いくつかの実施形態では、電極1206に関しては、心電図(ECG)を複数のベクトルで検出できるように、さらには、植え込まれたリードレス心臓ペースメーカとの伝導通信のために複数のベクトルの中から選択できるように、2つ以上の電極が使用される。それによって、システムのSN比を向上させるかまたは最大化することができる。
【0122】
CPU1212は、ECGデータを受信し、任意選択で表示インタフェース216を使用して表示する。CPU1212はまた、エンコードされたペーシングパルスを介して植え込まれたリードレス心臓ペースメーカから取得した他のデータ(バッテリー電圧、リードのインピーダンス、検出された心臓信号振幅、他のシステム状態情報など)を表示することもできる。CPU1212は、キーボード及び/またはタッチパネル式インタフェース1218を介してユーザからの入力を受信することもできる。ユーザ入力の幾つかの例は、植え込まれたリードレス心臓ペースメーカに関するペーシング速度またはペーシングパルス振幅から選択される。CPU1212はまた、ネットワークインタフェース1220を介して他のデータ入力または表示装置(携帯コンピュータまたはノートコンピュータ/デスクトップコンピュータなど)と通信することもできる。ネットワークインタフェース1220は、ケーブルで接続することもできれば、無線で接続することもでき、接続範囲がさらに大きい場合は、ローカルエリアネットワークまたはインターネットとの通信も可能である。
【0123】
プロセッサ1212は、双方向通信経路に接続しており、1つ以上の様々な動作(心電図の検出、植え込まれたペースメーカからの状態情報の検索、共通の電極セットを介して伝達された情報に含まれる1若しくは複数の心周期内での複数の植え込まれたペースメーカの設定パラメータの調整、及び他の動作)を実行するように構成されている。プロセッサ212に接続した表示インタフェース1216は、電極1206から検出された心電図を表示するように構成することができる。幾つかの構成または実施形態では、プロセッサ212に第2のリンク1220を接続することができる。第2のリンク1220は、少なくとも2つの電極から検出された心電図を表示するために及び/または、プログラミング装置及び/または少なくとも1つの植え込まれたペースメーカを制御するために、遠隔表示装置及び/またはデータ入力装置との無線またはケーブルによる一方向または双方向の通信ができるように構成され得る。
【0124】
CPU1212は、不揮発性メモリ(フラッシュ)1222に保存されたファームウェアに基づいて作動することができる。不揮発性メモリ1222は、パラメータや値を保存するために使用することもでき、電源供給を行わない状態でも記憶内容が保持される。CPU1212は、不揮発性メモリまたはランダムアクセスメモリ(RAM)1224を、情報(ECGデータ、状態情報、スワップメモリ、及び他のデータ)のための一般的な記憶装置として使用する。電源及び電源制御装置1226は、通常の作動の間にプログラミング装置1204に一定の電圧を供給する。クロックモジュール1228は、タイミングのためにCPU1212及びインタフェースブロックが使用するシステムクロック信号を生成する。
【0125】
CPU1212は、1つ以上の植え込まれたリードレス心臓ペースメーカに情報を伝達するように作動する間は、パラレルインタフェースを介してコマンド/メッセージエンコーダ1230に情報を送り、コマンド/メッセージエンコーダ1230は、データをシリアル化してビットストリームにする。シリアル化されたデータは、変調器1232に送られる。シリアル化されたビットストリームは、例えば10〜100kHzの周波数を用いて変調される。任意選択の、別体をなす変調器クロック1234が、変調器1232が使用し得る特定の搬送周波数でタイミング信号を供給する。増幅器1236は、信号振幅をロバストな伝導通信を可能にするレベルに設定する。変調されたビットストリームの例が
図9に示されている。尚、
図9の論理ハイ値は、中高周波数の正弦波として示されている。
図9に示されているエンコード及び変調技術は、オン/オフキーイングである。しかしながら、変調ビットストリームを中高周波数で生成することができる他の任意の適切な方法(例えば、周波数シフトキーイング、周波数変調、または振幅シフトキーイング)を用いてもよい。
【0126】
複数のペースメーカ装置を植え込むことができるので、プログラミング装置1204から通信される情報は全ての装置によって検出され、植え込まれた各装置に対する情報の送信を、同じ情報を何度も送信することなく行うことができる。
【0127】
通信のための情報が単一の植え込まれた装置または装置のサブセットに特異的である場合は、各装置またはサブセットに固有のアドレスを割り当てることができる。アドレスは複数の装置に送られる情報にエンコードされており、任意の個々の装置は、前記アドレスまたはこの特定の装置が属するサブセットのアドレスに合致する情報を使用することもできる。
【0128】
植え込まれた各装置または装置のサブセットが、他の植え込まれた装置とは異なる特定の機能を実行する場合は、グループまたは個々のアドレスのオーバヘッドを付加することなく、情報を特定の装置またはサブセットに送ることができる。(例えば、装置またはサブセットが1つの特定の機能のみを担う場合。)プログラミング装置1204がグループ全体に情報を送信するが、その情報がそのグループの或る装置またはサブセットのみに関連する場合は、その情報を使用できない全ての装置は、その情報を無用として無視する場合がある。この技術では、各装置がその機能に特有な独自のプログラミングを有し、受信した情報がその機能に関連するか否かを認識することができるものと仮定する。この例示的な技術を使用する装置は、一般的なものではない。各装置の機能は、製造時、または植え込み時、若しくはそれ以降に決定することができる。検査時に関連機能がわかるように、装置には標識または印が付けられている。
【0129】
リードレス心臓ペースメーカの作動時のピーク電流を減少させるためには、連続するペーシングパルスの間に(この間、リードレス心臓ペースメーカは、次のペーシングパルスに備えてペーシング用タンク型コンデンサを充電しない)、1若しくは複数のウィンドウを発生させる方法を使用することができる。その代わり、ペースメーカは、内部受信増幅器を作動させる。プログラミング装置1204は、植え込まれた装置からペーシングパルスを検出することができるので、プログラミング装置1204は、データ伝送の時間を、予め定められた1若しくは複数の同期ウィンドウと一致するように調整することができる。ピーク電流を減少させることができるのは、ともに電力を大きく消費する充電器及び受信増幅器を同時に作動させなくてよいからである。データ伝送は、一般的に、ペーシングパルス間の期間に比べて非常に短いので、前記ウィンドウ技術は、リードレス心臓ペースメーカがペーシングパルス間にペーシング用タンク型コンデンサを効率的に充電する能力をそれほど低下させることはないはずである。
【0130】
再び
図8を参照すると、プログラミング装置1204によって特定の植え込まれたリードレス心臓ペースメーカから得られたデータは、体表電極1206で受信され、増幅器/フィルタ1240に送られる。増幅器/フィルタ1240は、入力信号からノイズを除去するように働く。増幅器/フィルタ1240が行うあらゆるフィルタリングは、エンコードされたパルスをできるだけ保全するように設計される。メッセージデコーダ1238は、受信した信号が実際にペーシングパルスまたは心臓のR波などの他の信号であるか否かを決定する。
【0131】
ペースメーカの電流消費量をそれほど増加させない、植え込まれたリードレス心臓ペースメーカからプログラミング装置へデータを送信するためのスキームを実装することができる。例えば、ペースメーカは、電流消費量を増やすことなく、ループ内でデータを連続的に送信することができる。
【0132】
ペーシングパルス間のオフタイムの変調を利用してデータをエンコードする方法では、データはペースメーカで生成されたペーシングパルスによってのみ伝送されるので、パルスが阻止されると効果が少なくなる。ペーシングパルスの2進コード化されたノッチにデータがエンコードされた場合、またはペーシングパルスの幅を変更することでデータをエンコードした場合では、リードレス心臓ペースメーカは、治療用ペーシングパルスが阻止されても、鼓動が検出された後の心臓の不応期に非治療用のパルスを依然として生成することができる。ただし、ペーシングパルスは、プログラミング装置に、または任意選択で少なくとも1つの他の植え込まれたペースメーカに、データを伝送することを唯一の目的とする。
【0133】
図10A〜
図10Eを参照すると、植込み型ペースメーカシステムとの通信方法の様々な実施形態で使用できる技術を図示する概略的なフローチャートが示されている。
図10Aを参照すると、例示的な方法700は、外部プログラミング装置で体内組織を介して体表面の電極へ伝導した電気信号をモニタリングするステップ(702)と、体に植え込まれたペースメーカによって生成されたパルスを検出するステップ(704)とを含む。外部のペースメーカは、体に植え込まれたペースメーカによって生成されたパルスにエンコードされた情報をデコードする(706)。
【0134】
図10Bを参照すると、方法710は、植え込まれたリードレス心臓ペースメーカで心臓ペーシングパルスを生成するステップ(712)をさらに含む。ペーシングパルスの形態を治療効果及びペーシングパルスのエネルギーコストに好適なように選択的に変化させることによって、植え込まれたリードレス心臓ペースメーカで生成された心臓ペーシングパルスに情報をエンコードする(714)。様々な実施形態において、植え込まれたリードレス心臓ペースメーカは、1つ以上の技術(ペーシングパルス幅、ペーシングパルスにおける2進化ノッチ、及びペーシングパルス間のオフタイムの変調を利用するエンコードなど)を用いて、情報をエンコードすることができる。アンテナ及びテレメトリコイルを使用しない通信のために、心臓ペーシングパルスを、電極を介して体内組織へ伝導する(716)。生成された心臓ペーシングパルスにエンコードされた情報は、ペースメーカ状態情報、バッテリー電圧、リードのインピーダンス、検出された心臓信号振幅、ペースメーカの電流ドレイン、プログラム化されたパラメータなどを含むことができる。
【0135】
図10Cを参照すると、方法720は、植え込まれたリードレス心臓ペースメーカで心臓ペーシングパルスを生成するステップ(722)と、ペーシングパルスの形態を治療効果及びペーシングパルスのエネルギーコストに好適なように選択的に変化させることによって、植え込まれたリードレス心臓ペースメーカで生成された心臓ペーシングパルスに情報をエンコードするステップ(724)とをさらに含むことができる。植え込まれたリードレス心臓ペースメーカは、生来の心臓脱分極を検出し(726)、脱分極後の不応期に心臓ペーシングパルスを伝送するために、心臓ペーシングパルスの伝達に遅延をかけてその伝達を阻止する(728)。アンテナ及びテレメトリコイルを使用せずに通信すべく、心臓ペーシングパルスは、電極を介して体内組織に伝達される(730)。
【0136】
図10Dを参照すると、方法740の様々な実施形態は、刺激パルスの生成に備えるためにタンク型コンデンサを充電するステップ(742)を含む。植え込まれたペースメーカの刺激電極に刺激パルスを生成し(744)、生成された刺激パルスに情報をエンコードする(746)。パルス生成とパルス生成の間に1つ以上のウィンドウを設定することができる(748)。設定したウィンドウの間にタンク型コンデンサの充電を不能にされ(750)、タンク型コンデンサが不能の間に、植え込まれたペースメーカにおける受信増幅器が作動する(752)。外部プログラミング装置は、植え込まれたペースメーカによって生成された刺激パルスを感知し(754)、設定した1つ以上のウィンドウに一致させるように、外部プログラミング装置から植え込まれたペースメーカへ情報を伝送する(756)。例えば、外部プログラミング装置は、植え込まれたペースメーカから刺激パルスを検出し、選択された遅延時間を測定し、植え込まれたペースメーカの受信増幅器が有効になるウィンドウと一致させるように、前記選択された遅延時間の後にデータを伝送することができる。
【0137】
図10Eを参照すると、方法760の様々な実施形態は、外部プログラミング装置を2つ以上の体表電極を介して体表面に物理的に接続するステップ(762)と、外部プログラミング装置と1つ以上の植え込まれたリードレス心臓ペースメーカとの間で情報を通信するステップ(764)とを含み得る。エンコードされた情報は、約10〜100kHzの周波数で変調信号を用いて外部プログラミング装置から体表電極を介して植え込まれたリードレス心臓ペースメーカへ伝送される(766)。外部プログラミング装置は、生成されたペーシングパルスにエンコードされた情報を検出することによって、1つ以上の植え込まれたリードレス心臓ペースメーカから体表電極を介して情報を受信する(768)。また、外部プログラミング装置は、体表電極を介して、表示及び分析するために体表面心電図を受信することもできる(770)。
【0138】
本明細書に記載の、外部プログラミング装置1104との通信に関する通信機構は、装置106が異なるタイプのデバイスである場合にも、例えば装置106が別のペースメーカ、除細動器、植込み式のプログラミング装置、または外部プログラミング装置である場合にも用いることができることは、当業者であれば理解できよう。
【0140】
図11に示されているのは、本発明の一実施形態であって、少なくとも1つの心臓ペースメーカ102と通信する外部プログラミング装置106を含み、ペースメーカ102には第1のパルス発生器116及び第2のパルス発生器776が含まれている。第1のパルス発生器116は、電極108を介してペーシングのために用いることができ、第2のパルス発生器776は、電極108を介して外部装置106に通信パルスを伝達するために用いることができる。このようにすると、第2のパルス発生器776はペーシングプロセスに関与しない。第2のパルス発生器776は、第1のパルス発生器112とは異なる振幅で異なるパルスを生成することができる。有利に、これにより、パルスの振幅を通信用またはペーシング用に最適化することができる。
【0141】
第2のパルス発生器776は、別の機能と共有される電源から電力を取ることができる。この電源は、既に別の機能に使用されている最低電圧電源であってよい。例えば、第2のパルス発生器776は、約1.5Vで動作するアナログ及びデジタル回路用の電源を用いることができる。低電圧源を用いることにより、同じ電力消費量で送信信号当たりのパルスを多く発生させることができ、それによって、より狭い帯域の送信周波数スペクトルを与え、外部装置106の受信器におけるSN比を改善することができる。パルス発生器776用の電源を別の機能と共有することによって、部品数を少なくかつペースメーカのサイズを小さくしておくことができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、ペースメーカ102は、二乗平均平方根(RMS)送信電流が不整脈を誘発するおそれを示さないように最低周波数fで通信パルスを送信することができる。国際規格により、最大10uArms*f/1kHzの心臓電極電流が認められている。従って、心臓ペースメーカ102の送信信号の周波数を電流*10
8Hz/Aにほぼ等しくなるようにすることができる。例えば、心臓電極に典型的な負荷抵抗0.6ΚΩでピーク電圧が約1.5V(上記した電圧)の矩形波は、2.5mArmsの電流を与える。従って、国際規格を満たすためには、送信パルスの周波数は0.25MHz以上であり得る。それゆえ、一実施形態では、本明細書に記載のペースメーカ102は、0.25MHzに近い周波数、例えば0.25〜0.5MHzの通信パルスを送信することができる。本明細書に記載のように、RMS送信電流が不整脈を誘発するおそれを示さないように最低周波数信号を選択することは、設計上のメリットがある。その理由は、より低い周波数は、保護及び干渉抑制回路に関連する意図しない(parasitic)及び意図された(intended)低域通過フィルタによる影響を受けにくいからである。
【0143】
ペースメーカ102と同じように、いくつかの実施形態では、外部装置106は、RMS送信電流が不整脈を誘発または知覚するおそれを示さないように最低周波数fで通信パルスをペースメーカに送信することができる。国際規格により、0.1mArms*f/1kHzの皮膚電極電流が認められている。従って、外部装置106の送信信号の周波数を電流*10
7Hz/Aにほぼ等しくなるようにすることができる。一実施形態では、外部装置106は、ピークが約25Vの二相矩形波を用いて、ペースメーカ102に通信パルスを送信する。有利には、25Vは、安全な0.25MHzの周波数で皮膚電極を介して送ることができるほぼ最大の電圧を与える。皮膚電極に典型的な負荷抵抗0.6ΚΩでピーク電圧が25Vの矩形波は、2.5mArmsの電流を与える。従って、国際規格を満たすためには、送信パルスの周波数は0.25MHz以上であり得る。従って、一実施形態では、外部装置106は、約0.25MHz、例えば0.25〜0.5MHzの通信信号を送信することができる。有利には、この範囲でより低い周波数を用いることにより、保護及び干渉抑制回路に必要な意図しない及び意図された低域通過フィルタによる影響を通信信号が受けにくくなることを確実にする。さらに、より低い周波数信号に応答する増幅器は、通常、より少ない電流を必要とし、より長寿命またはより小型のペースメーカ102を可能にする。
【0144】
いくつかの実施形態では、外部装置106は、ペースメーカ102の送信パルスの基本周波数に集中する受信フィルタを有することができる。従って、外部装置106は、この帯域外の干渉信号、例えば、スイッチング電源からの意図的でない放射線または体表電極の接触を確認するための市販の心電計によって患者に適用された信号などを拒否することができる。
【0145】
さらに、
図12及び
図13を参照すると、200kHz以上の周波数では、種々の規格への準拠のための追加的な選択肢を与えることによって、送信振幅の増加を可能にすることができる。
図12及び
図13は、プログラミング装置の身体電極電流に適用可能な国際規格を要約したものである。これらの図は、200kHz超の搬送周波数で、国際規格によって「患者測定電流」と呼ばれるプログラミング装置の搬送電流が示す危険が、より低い周波数で起こり得る不整脈の誘発及び知覚ではなく熱的考察に限定されることを示している。それゆえ、プログラミング装置の身体電極の表面積を増加させるだけで、200kHz超での身体電極電流の限度を増加させることができる。
【0146】
最終的には、プログラミング装置の送信搬送周波数は、植え込まれたペースメーカのクロック周波数の整数倍になるように選択され得るので、プログラミング装置の搬送パルスの整数は、植え込まれたペースメーカのクロックの期間内に収まる。これにより、プログラミング装置は、植え込まれたペースメーカにおけるタイミングウィンドウへの正確な整合のために、植え込まれたペースメーカのクロックによって設定されるような、ペースメーカの送信パルスの数及びタイミングを調整することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、ペースメーカ102は、ペースメーカの絶対不応期に外部装置106へ通信パルスを送信することができる。有利には、そのようにすることにより、通信パルスの送信が心拍センシングを妨げないこと及び不整脈の誘発が防止されることが確実になる。不応期は十分に長く、ペーシングパルスまたはセンシングによってトリガーされる不応パルスにエンコードされる信号の代わりにそのような信号の完全送信を可能にするので、絶対不応期にのみ信号を送信することができる。あるいは、ペーシングパルスにエンコードされるのに加えて絶対不応期に、またはセンシングによってトリガーされる不応期に、信号を送信することができ、それによって信号のデータレートが有利に増加する。
【0148】
同様に、いくつかの実施形態では、外部装置106は、ペースメーカの絶対不応期にペースメーカ102に通信パルスを送信することができる。外部装置106は、不応期にのみ通信パルスを送信することができる。有利に、プログラミング装置が不応期にのみペースメーカ102に通信パルスを送信する場合には、ペースメーカ102は、不応期にのみ電磁干渉(EMI)に対する防御のために用いられる入力コンデンサを接続解除することができ、それによってペースメーカ102は、ペーシング周期の残りの間にEMIからの防御を維持したまま、外部装置106から高周波数通信パルスをより効果的に受信することができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、ペースメーカ102は、ペースメーカの絶対不応期の終了前に、残留不平衡電流が心拍センシングを妨げないように、送信通信パルスを電荷均衡状態にする。これを行うために、ペースメーカ102は、単相通信パルスを送信し、単相ペーシングパルスを均衡にするために既に提供されている高速放電回路を用いて電荷均衡を提供することができる。あるいは、ペースメーカ102は、二相通信パルスを、各パルスが他方のパルスと均衡するようにして送信することができる。二相通信信号の電荷均衡により、不応期に追加の平衡パルスのために時間を確保する必要がなくなるので、有利には、ペースメーカ102は、或る期間内に、単相通信パルスを用いたときよりも多くの信号を送信することが可能になる。
【0150】
いくつかの実施形態では、外部装置106と通信していないときには、ペースメーカ102は、外部装置へ「ベルリンガ(bell-ringer)」信号を送信し、ベルリンガ信号から設定した少なくとも1つのウィンドウの間に応答を待つ。例えば、植え込まれたペースメーカは、5ペーシング周期毎に1回プログラミング装置にパルスを送信し、その後、ベルリンガパルスの送信から所定の時間(例えば32ミリ秒)後に、持続時間が1ミリ秒以下などの短い(サイズの小さい)ウィンドウにおいて応答を待つことができる。ペースメーカ102は、ペーシング周期がN周期毎にペーシング周期の開始時にベルリンガを送信することができる。ここで、Nは、1〜20、例えば3〜7の範囲内で、ペースメーカの消費電力(Nとともに減少する)及び通信を開始するための待ち時間(Nとともに増加する)を最適化するように選択される。その後、ウィンドウ外において、ペースメーカの通信受信用増幅器の電源を切ることができる。この低頻度の通信信号送受信は、ペースメーカ102の電力消費量を有利に減少させ、それによって、ペースメーカ102の寿命を延ばしかつ/またはペースメーカ102の外形寸法を小さくすることができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、外部装置106と通信しているときには、ペースメーカ102は、外部装置106に同期信号を送信し、その後、当該同期信号から設定した少なくとも1つのウィンドウの間に追加の信号を送信しかつ/または応答を待つことができる。同期信号は、次回の情報の伝達の信号伝達に加えて、イベントマーカ、イベントカウンタ及びセンサ出力を含む追加情報も伝達することができる。これらの信号及びウィンドウの周波数、数及び持続時間の選択を、ペースメーカの消費電力(周波数、数及び持続時間の減少とともに減少する)及び通信されるデータの範囲(これらのパラメータとともに増加する)を最適化するように行うことができる。例えば、ペースメーカは、追加の消費電力を無視できるほど小さくするために、イベントマーカを同期パルスとともに送信することができる。さらに、最も頻繁に送信されるデータについて送信パルスを減少させかつ受信ウィンドウのサイズを縮小するように、メッセージコーディングを決めることができる。例えば、ペーシングパルスのためのイベントマーカは、データ値が0で従って送信パルスを含まない2つのビットを含むことができ、それによってペースメーカの消費電力をさらに減少させる。
【0152】
いくつかの実施形態では、ペースメーカ102または外部装置106は、受信した通信パルス間の時間を測定することができる。受信した通信パルス間の時間を測定することにより、ペースメーカ102または外部装置106は、他の装置のクロック周波数を推定することができるので、その送信パルス及び受信ウィンドウのタイミングをそれに応じて最適化することができる。
【0153】
いくつかの実施形態では、ユーザが皮膚電極を適用し、該皮膚電極を外部装置に接続したときに、ペースメーカ102または外部装置106は、自動的に通信を開始することができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、通信時に、ペースメーカ102または外部装置106は、受信信号のピーク振幅、平均振幅、積分された振幅またはフィルタリングされた振幅を測定することができ、それによりノイズ除去のための自動識別閾値を設定することができる。
【0156】
リードレス心臓ペースメーカ102で必要な作動電力に関して、分析の目的のための、持続時間が500マイクロ秒で、周期が500ミリ秒の振幅で、5ボルト及び5ミリアンペアのペーシングパルスは、所要電力が25マイクロワットである。
【0157】
リードレスペースメーカ102の或る例示的な実施形態では、プロセッサ112は、約10ミリ秒間の周期を測る低速クロックと、約1マイクロ秒間の周期を測る命令実行クロックとを有するタイマを備えている。プロセッサ112は、通常、タイマ、通信用増幅器134または心臓センシング用増幅器132によって発生するイベントに応じて、命令実行クロックを短期間だけ動作させる。また或るときには、プロセッサ112の所要電力が5マイクロワットを超えないように、低速クロック及びタイマだけを動作させる。
【0158】
上述の低速クロックとともに動作するペースメーカの場合、瞬間消費電力の規格は、市販の消費電力の小さいマイクロプロセッサであっても、電池の電力容量を超えることがあり、回路を作動させるのに必要な電圧以下に電池電圧が低下することを防止するために、追加のフィルタコンデンサを電池と交差するようにして取り付ける必要があることがある。フィルタコンデンサを追加することにより、避けられるはずのコスト、体積、及び潜在的な信頼性の低下がもたらされることがある。
【0159】
例えば、消費が100マイクロアンペア以下のマイクロプロセッサは、たとえプロセッサが5ミリ秒だけ動作する場合でも、電圧降下を0.1ボルト未満に維持するために、5マイクロファラドのフィルタコンデンサを必要とする。そのようなフィルタコンデンサが必要とならないようにするため、例示的な実施形態のプロセッサは、より低い周波数クロックから作動して、瞬間的に消費電力が大きくならないようにすることができる。あるいは、プロセッサは、より低い瞬間的なピーク電力の規格に応えるため、専用のハードウェアの状態機械を用いて実行させることもできる。
【0160】
ペースメーカでは、心臓センシング用増幅器は、5マイクロワット以下の電力消費で動作する。
【0161】
加速度計増幅器、または他の汎用信号調整増幅器は、約10マイクロワットで動作する。
【0162】
100kHzの通信用増幅器は、25マイクロワット以下で動作する。電池電流計及び電池電圧計は各々1マイクロワット以下で動作する。
【0163】
パルス発生器は、通常、電力消費量が2マイクロワット以下の、独立したレートリミッタを備えている。
【0164】
ペースメーカの総電力消費量はこのように74マイクロワットであり、開示されている75マイクロワットの電池出力よりも少ない。
【0165】
例示的な心臓ペーシングシステム100及びリードレス心臓ペースメーカ102によって達成される改良は、明らかである。
【0166】
例示的な心臓ペーシングシステム100は、ペーシングパルスにおける任意選択の出力通信のエンコードを可能にするので、出力通信の所要電力は所要ペーシング電流を超えず、約25マイクロワットである。
【0167】
例示的なリードレス心臓ペースメーカ102は、従来形式のペースメーカと同様に消費電力が10マイクロワット以下であるセンシング及び処理回路を有することができる。
【0168】
ここで説明したリードレス心臓ペースメーカ102は、トリガー信号及び任意選択で他の通信を受信するための入力通信増幅器(消費電力が25マイクロワット以下である)を有することができる。
【0169】
さらに、リードレス心臓ペースメーカ102は、少なくとも0.5ワット時/立方センチメートル(W‐h/cc)、例えば少なくとも1W‐h/cc、例えば少なくとも3W‐h/ccのエネルギー密度を示す一次電池を含み得る。
【0170】
情報の伝導通信の利用は、幾つかの態様における標準的な通信方法に比べて改善されている。例えば、例示的な伝導通信は、所要電流が実質的により少ないために電力消費量を減少させることもでき、既存の誘導及び高周波(RF)システムによって現在定められているピーク電力需要を解消することもできる。また、伝導通信技術は、通常は植え込まれたパルス発生器に既に存在している素子、例えば出入力装置として機能する治療用電極などを用いることにより、これまで通信に用いられていたコイルやアンテナをなくし、複雑さ及び部品数を著しく減らす。
【0171】
本明細書で使用される「実質的に」、「本質的に」、または「約」という用語は、本業界の許容範囲に関連するものである。そのような本業界の許容範囲は、1パーセント未満から20パーセントまでの範囲に相当し、成分値、集積回路のプロセスの種類、温度差、立ち上がりや立下り時間、及び/または熱雑音に対応するが、それらに限定されるわけではない。本明細書で使用される「接続した」という用語は、直接接続した、または他の成分、要素、回路、またはモジュールを介して間接的に接続したことを包括する。尚、間接接続の場合、介在する成分、要素、回路、またはモジュールは、信号の情報を改変しないが、電流レベル、電圧レベル、及び/または電力レベルを調節し得る。1つの要素が他の要素に接続していると推定される推定上の接続は、「接続」の場合と同様に、直接的な及び間接的な接続を含む。
【0172】
本明細書で様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態では、例示的なものであって、特許請求の範囲を制限するものではないと理解されたい。説明した実施形態に様々な変換、改変、付加、及び改善を行うことができる。例えば、当業者は、本明細書に開示されている構成及び方法を得るために必要なステップを容易に行うことができ、本明細書に記載のプロセスのパラメータ、材料、及び大きさは単なる例示でしかないと理解できるであろう。望ましい構成及びその改良型を得るために、特許請求の範囲内で、パラメータ、材料、及び大きさを変更することができる。また、特許請求の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示されている実施形態を変更及び改変することもできる。本明細書で用いられている表現及び用語は、説明の目的のためのものであり、限定的なものとみなすべきではない。構成部分に関して最適な寸法及び形状の関係を説明したが、大きさ、材料、形状、形態、機能、作動方法、組み立てを変更することは可能であり、当業者ならば、容易に実行できるであろう。従って、上記については、構造及び動作の原理の一例にすぎないと考えられる。当業者ならば、様々な改変及び変更を思いつくことができる。したがって、本発明の範囲は、記載した具体的な構造及び作動に制限されないので、適切な改変及び同等するものを包括する。