特許第6063954号(P6063954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063954
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】前縁構造、及び、前縁構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 3/20 20060101AFI20170106BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B64C3/20
   B64C1/00 B
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-543968(P2014-543968)
(86)(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公表番号】特表2015-502883(P2015-502883A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】GB2012052888
(87)【国際公開番号】WO2013079918
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2014年8月22日
(31)【優先権主張番号】1120707.3
(32)【優先日】2011年12月1日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510286488
【氏名又は名称】エアバス オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AIRBUS OPERATIONS LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】311014956
【氏名又は名称】エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ リリフォン
(72)【発明者】
【氏名】ソールズベリー ロス
(72)【発明者】
【氏名】ラフラ マーカス
(72)【発明者】
【氏名】シオボールド ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】ペイン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】マコーミック ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン ヘインズ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ ティモシー
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02427065(US,A)
【文献】 特表2006−512240(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0181427(US,A1)
【文献】 特開2003−072691(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0055349(US,A1)
【文献】 特開2003−220428(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01338506(EP,A1)
【文献】 米国特許第03135486(US,A)
【文献】 特表2009−539701(JP,A)
【文献】 特開2003−291895(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0136815(US,A1)
【文献】 英国特許出願公告第00615275(GB,A)
【文献】 英国特許出願公告第00615284(GB,A)
【文献】 独国特許出願公開第04417889(DE,A1)
【文献】 特開2004−010021(JP,A)
【文献】 特開平03−208797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造であって、
前縁構造が、
翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、
それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、
を具備し、
前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、
前記構造部材が小骨であり、各小骨が、セルによる格子構造を含むことを特徴とする前縁構造。
【請求項2】
前記小骨の格子セルの少なくとも一部が三角形であることを特徴とする請求項1に記載の前縁構造。
【請求項3】
前記小骨のセルの少なくとも一部を横切って延びるウェブを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の前縁構造。
【請求項4】
前記ウェブの少なくとも一部は、1つ以上の貫通孔を有することを特徴とする請求項3記載の前縁構造。
【請求項5】
前記小骨のセル壁の少なくとも一部の上に、押湯箇所があることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の前縁構造。
【請求項6】
2つ以上の前記小骨のセル壁の頂点に、押湯箇所があることを特徴とする請求項5に記載の前縁構造。
【請求項7】
航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造であって、
前縁構造が、
翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、
それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、
を具備し、
前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、
前記外皮構造が、前記内面上に外板補強部である格子を含み、
前記外板補強部の少なくとも一部の頂点に押湯箇所があることを特徴とする前縁構造。
【請求項8】
前記構造部材が、前記外皮構造を補強するための補強部材または小骨であることを特徴とする請求項に記載の前縁構造。
【請求項9】
前記構造部材が前記外皮構造の前記内面と一体に形成されたフランジであり、前記前縁構造が前記外皮構造を補強するための複数の小骨をさらに含み、各小骨が、前記外皮構造の下方に所定の深さをもって延び、翼弦方向に延在し、一体形成されたフランジに接続されることを特徴とする請求項に記載の前縁構造。
【請求項10】
前記外皮構造は、前記空気力学的外面と前記内面との間の厚さが、翼弦方向および/または翼幅方向において変化することを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の前縁構造。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の前縁構造を含む航空機の主翼、航空機の水平尾翼または垂直安定板。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の主翼、水平尾翼、垂直安定板または前縁構造を含む航空機。
【請求項13】
航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造の製造方法であって、
翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、
それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、
を具備し、
前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、
前記構造部材が小骨であり、各小骨が、セルによる格子構造を含むことを特徴とする前記前縁構造において、
前記外皮構造および前記構造部材が、単一のビレットから機械加工されるか、または一体の複合材料構造として製造されることを特徴とする前縁構造の製造方法
【請求項14】
航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造の製造方法であって、
翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、
それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、
を具備し、
前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、
前記構造部材が小骨であり、各小骨が、セルによる格子構造を含むことを特徴とする前記前縁構造において、
前記外皮構造および前記構造部材が、型を用いて一体に成形されることを特徴とする前縁構造の製造方法。
【請求項15】
航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造の製造方法あって、
翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、
それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、
を具備し、
前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、
前記外皮構造が、前記内面上に外板補強部である格子を含み、
前記外板補強部の少なくとも一部の頂点に押湯箇所があることを特徴とする前記前縁構造において、
前記外皮構造および前記構造部材が、単一のビレットから機械加工されるか、または一体の複合材料構造として製造されることを特徴とする前縁構造の製造方法
【請求項16】
航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造の製造方法であって、
翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、
それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、
を具備し、
前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、
前記外皮構造が、前記内面上に外板補強部である格子を含み、
前記外板補強部の少なくとも一部の頂点に押湯箇所があることを特徴とする前記前縁構造において、
前記外皮構造および前記構造部材が、型を用いて一体に成形されることを特徴とする前縁構造の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は前縁構造に関する。特に本発明は、航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造であって、外皮構造と外皮構造を補強するための複数の小骨および/または副桁を含む前縁構造に関する。ただしこれに限ることはない。
【背景技術】
【0002】
航空機の翼の設計では、できるだけ長時間、翼上の気流が層流状態であるように翼を設計することが重要である。このため、翼の前縁構造は、前縁構造全体の上方の波動を良好に制御し、かつ前縁構造上の段差や凹凸(例えば留め具等)を最小限として気流中での外乱の影響を最小限にするよう、できるだけ正確に設計され製造される必要がある。更に、前縁構造は、航空機への使用に適するように堅固で軽量でなければならない。特に、商用輸送機に適用するには、例えば1日に18時間、層流状態を損なわずに飛ぶことが可能でなければならない。さらに、前縁構造は、前縁フラップやスラットのような高揚力装置を支持することができなければならない。
【0003】
前縁構造は一般に滑らかな空気力学的先端を有し、(接近する気流に対して)翼の最先端を形成する。前縁構造は後方に延び、先端から外に向かって拡がる上下の空気力学的表面が形成される。また前縁構造は、一般に、主翼構造の前部に取り付けられる最後端部を有し、これにより翼構造全体が形成される。
【0004】
翼構造の一部ではないが航空機の構造部材の一部である他の前縁構造にも、同様の課題の一部が当てはまることが注目されるべきである。例えば、層流状態を達成するという構想は、尾翼面のような航空機の他の表面にも当てはまる。
【0005】
前縁構造は、通常、外板およびサブ構造で構築される。
【0006】
外板は、前縁から主翼ボックスに荷重を伝達する外皮構造とできる。通常、外板は、金属(例えば、アルミニウムやチタンの合金や鋼)や複合材料(例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP))からなる。外皮構造は、従来、本質的に一体であり、各外板は素材の単一片で形成される。外皮構造には、外皮構造の(機内と機外を結ぶ)翼幅方向に沿ったストリンガや補強部材(stiffener)がしばしば配置される。
【0007】
別のタイプの外皮構造はパネルである。これらのパネルは一般に主翼の荷量を負わず、代わりに、空気力学的形状を単に維持する。上記と同じく、これらのパネルは、金属または複合材料から作ることができる。パネルは一体式でもよいが、通常、2枚の表面板に挟まれた(ハニカムや独立気泡フォームのような)コア材料の層を用いたサンドイッチパネルで形成される。
【0008】
既知の先行技術のサブ構造は、すべて小骨を含んでいる。ほとんどの小骨はアルミニウム合金から構築され、ビレットから機械加工できるか、部材から組み立てることができる。小骨が複合材料で作られる場合もあるが、これは、一般的に近傍の構成要素も複合材料からなる場合に行われる。
【0009】
先行技術のサブ構造のなかには、翼幅方向に延びる副桁をさらに含むものもある。これらの副桁は、一般に、外板や小骨と組み立てられ、小骨と同じ材料で作られる。
【0010】
前縁構造の様々な構成要素は、通常、(例えば、リベットを使用して)機械的に結合されるが、接着したり、熱可塑性物質により溶接することもできる。
【0011】
先行技術の典型的な前縁構造1を、典型的な主翼ボックス構造9に取り付けたものとして図1に示す。前縁構造1は、副桁2および小骨3a、3b、3c、3dを有するサブ構造を含む。副桁2および小骨3は、リベット5を使用して、前縁外板4に機械的に結合される。さらに、外板4は、外板4に沿った翼幅方向のストリンガ6を有する。継目板7およびもう一つのリベット8は前縁構造1を外板10および主翼ボックス構造9の前主桁11に取り付けるために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11-034993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この先行技術例では、前縁外板4を貫通する様々なリベット5、8がある。このことは、前縁外板表面上に凸部を形成し、層流状態にマイナスの影響をもたらす。
【0014】
本発明の目的は、前縁構造の層流特性を改善し、かつ前縁構造が十分に堅固であり前縁の高揚力装置を支持できることを保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様によれば、本発明は、航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造であって、前縁構造が、翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、を具備し、前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、前記構造部材が小骨であり、各小骨が、セルによる格子構造を含む。
【0016】
外皮構造の内面に一体に形成された構造部材を有することは、外皮構造に構造部材を取り付けるために個別の留め具が不要であることを意味する。これは、例えば、外皮構造を貫通するリベットがより少なくなること、それにより、前縁外皮構造の空気力学的外面上の凸部がより少なくなることを意味する。これは、前縁構造上における層流状態を促進する。また、格子構造は小骨を強い構造とする。これにより、小骨が浅くなり、成形による製造がより容易になる。
【0017】
好ましくは、小骨の格子セルの少なくとも一部は三角形である。
【0018】
好ましくは、少なくとも小骨のセルの一部を横切って延びるウェブを有する。ウェブは、成形工程において、型の中で材料の流動を促進する。
【0019】
より好ましくは、ウェブの少なくとも一部は、少なくとも1つの貫通孔を有する。材料を除去することにより、特にウェブの薄い部分において、成形中の材料流動や冷却の不足が防がれる。
【0020】
好ましくは、小骨のセル壁の少なくとも一部の上に押湯箇所(riser node)があることが望ましい。さらに、2つ以上の小骨のセル壁の頂点に押湯箇所があることが望ましい。これらの押湯箇所は成形工程において押湯として機能する。
【0021】
第2の態様によれば、本発明は、航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造であって、前縁構造が、翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、を具備し、前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、前記外皮構造が、前記内面上に外板補強部である格子を含み、前記外板補強部の少なくとも一部の頂点に押湯箇所がある。
外皮構造の内面に一体に形成された構造部材を有することは、外皮構造に構造部材を取り付けるために個別の留め具が不要であることを意味する。これは、例えば、外皮構造を貫通するリベットがより少なくなること、それにより、前縁外皮構造の空気力学的外面上の凸部がより少なくなることを意味する。これは、前縁構造上における層流状態を促進する。また、外板補強部である格子は、外皮構造および前縁構造を全体として堅固にする。また、これらの押湯箇所は成形工程において押湯として機能する。
【0022】
好ましくは、構造部材は、外皮構造を補強するための補強部材あるいは小骨である。
【0023】
好ましくは、構造部材は、外皮構造の内面と一体に形成されたフランジであり、前縁構造は、外皮構造を補強するための複数の小骨をさらに含み、各小骨が、外皮構造の下方に所定の深さをもって延び、翼弦方向に延在し、一体形成されたフランジに接合される。外皮構造の内面に一体に形成されたフランジを有すること、フランジに接合された小骨を有することは、小骨が、外皮構造を貫通するリベットをより少なくしつつ外皮構造に接合でき、前縁構造外皮の空気力学的外面上の凸部がより少なくなることを意味する。これは、前縁構造上における層流状態を促進する。加えて、外板/フランジ構造と別に形成された小骨を有することによって、外板/フランジ構造を、固体のビレットをより容易に無駄なく機械加工して製造することが可能となる。
【0024】
好ましくは、外皮構造は、空気力学的外面と内面との間の厚さが、翼弦方向および/または翼幅方向において変化する。厚さは剛性(および波形)が最適となるように変えることができる。
【0025】
本発明はまた、前述の発明の態様による、前縁構造含む航空機の翼、水平尾翼または垂直安定板を提供する。
【0026】
本発明はまた、前述の発明の態様による、翼、水平尾翼、垂直安定板または前縁構造を含む航空機を提供する。
【0027】
第3の態様によれば、本発明は、航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造の製造方法であって、翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、を具備し、前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、前記構造部材が小骨であり、各小骨が、セルによる格子構造を含むことを特徴とする前記前縁構造において、前記外皮構造および前記構造部材が、単一のビレットから機械加工されるか、または一体の複合材料構造として製造されることを特徴とする前縁構造の製造方法である。
【0028】
第4の態様によれば、本発明は、航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造の製造方法であって、翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、を具備し、前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、前記構造部材が小骨であり、各小骨が、セルによる格子構造を含むことを特徴とする前記前縁構造において、前記外皮構造および前記構造部材が、型を用いて一体に成形されることを特徴とする前縁構造の製造方法である。
【0029】
第5の態様によれば、本発明は、航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造の製造方法あって、翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、を具備し、前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、前記外皮構造が、前記内面上に外板補強部である格子を含み、前記外板補強部の少なくとも一部の頂点に押湯箇所があることを特徴とする前記前縁構造において、前記外皮構造および前記構造部材が、単一のビレットから機械加工されるか、または一体の複合材料構造として製造されることを特徴とする前縁構造の製造方法である。
【0030】
第6の態様によれば、本発明は、航空機の空気力学的表面を提供するための前縁構造の製造方法であって、翼弦方向および翼幅方向に延びる空気力学的外面および内面を提供する外皮構造と、それぞれ前記外皮構造の前記内面に接続され、前記内面に沿って翼弦方向に延びる複数の構造部材と、を具備し、前記構造部材が、前記外皮構造の前記内面と一体に形成され、前記外皮構造が、前記内面上に外板補強部である格子を含み、前記外板補強部の少なくとも一部の頂点に押湯箇所があることを特徴とする前記前縁構造において、前記外皮構造および前記構造部材が、型を用いて一体に成形されることを特徴とする前縁構造の製造方法である。
【0075】
本発明の1つの態様に関して記述された特徴は、勿論本発明の他の態様に組み入れられてもよい。例えば、いくつかの態様の中で言及された小骨に関する特徴は、他の態様の閉鎖小骨にも同様に適用されたり、いずれか一方に適用されたりしてもよく、逆も同様である。別の例として、1つの態様の外皮構造が、他の態様の内側外板および外側外板を有する外板を含んでもよい。さらに別の例として、1つの態様の前縁構造が、別の態様に関する主翼ボックス構造あるいは翼構造に取り付けられてもよい。さらに別の例として、1つの態様の構造部材(例えば小骨、補強部材、内部の突出部あるいはフランジ)が、別の態様に関する外皮構造の内面に形成されたり接続されたりしてもよい。
【0076】
本発明の実施の形態は、添付の概要図のみを参照して記述するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】先行技術の典型的な前縁構造を示す図
図2a】本発明の第1の態様の第1の実施の形態による前縁構造を含む翼構造の一部の側面の断面図
図2b図2aの前縁構造の小骨構造の一部の斜視図
図3a】本発明の第1の態様の第2の実施の形態による前縁外皮構造の頂部の一部の斜視図
図3b図3aの外皮構造の下側の図
図4a】本発明の第2の態様の第1の実施の形態による前縁構造の一部の内部の図
図4b図4aの前縁構造の側面の断面図
図5a】本発明の第3の態様の第1の実施の形態による前縁構造を含む翼構造の一部の側面の斜視図
図5b図5aの前縁構造の部分断面図
図6】本発明の第2の態様の第2の実施の形態による前縁構造の内部の断面図
図7a】本発明の第4の態様の第1の実施の形態による前縁構造を含む翼構造の側面の断面図
図7b図7aの前縁構造の部分斜視図
図8】本発明の第3の態様の第2の実施の形態による前縁構造を含む翼構造の側面の部分断面図
図9a】本発明の第4の態様の第2の実施の形態による前縁構造を含む翼構造の側面の断面図
図9b図9aの前縁構造の部分的な内部の下側の図
【発明を実施するための形態】
【0078】
図2aは、本発明の第1の態様の第1の実施の形態による、主翼ボックス構造110および前縁構造120を含む翼構造100の一部を示す図である。
【0079】
主翼ボックス構造110は、それに取り付けられた、加工済み取付部品(machined
fitting)112を備えた前主桁(front main spar)111を含む。加工済み取付部品112には2つの前方延伸部113および114がある。1つ目の下部の前方延伸部113は、桁111の底部から延びる。2つ目の上部の前方延伸部114は、桁111の頂部から延びる。
【0080】
前縁構造120は、翼の前部の先端部120aを形成する上部外板121を含む。上部外板121の下には、様々な小骨(1つは122に示される)がある。各小骨122は、上部外板121と一体形成され、下部補強フランジ129を有する。さらに、上部外板121は一体式補強部材を備え、厚さが変化する(図示せず)。
【0081】
各小骨122は、先端部120aの近くの中実部分である前部124を有し、前部124には軽量化のための様々な「切抜き」125がある。もちろん、これらの孔125は実際に材料を切抜くことによって形成する必要はなく、例えば、型を用いて成形してもよい。「切抜き」125は、システムの装備や運転に使用してもよい。各小骨は、小骨122が格子パターンを有する後部123も有する。この格子パターンについては、図2bにより詳細に示されており、これについては後述する。
【0082】
各小骨122の後部123は、主翼ボックス構造110の上部の前方延伸部114の前面116とおよそ同じ深さを有する。前縁部の後部は、主翼ボックス構造110の上部の前方延伸部114の前面116に当接する後部当接面128となっている。少なくとも一部の小骨122の下に、支持フランジ126がある。支承部材127はこのフランジ126にボルト結合され、主翼ボックス構造110の下部の前方延伸部113の上面115に設置される。これは浅い小骨122を補強する。
【0083】
図2bに示すように、各小骨122の後部123の格子パターンは、壁123bとウェブ123cを有する複数の三角形のセル123aを含む。ウェブ123cは、壁123b同士の間でセル123aを横切って延びる。ウェブ123cは「切抜き」123dを有する。前記と同様、ウェブにおけるこれらの孔123dは実際に材料を切抜くことによって形成する必要はなく、例えば、型を用いて成形してもよい。セル壁123bの頂点には、押湯箇所(riser node)123eがある。
【0084】
製造時には、上部外板121および小骨122は、型を用いて一体に成形される。型は、成形工程において材料流動を促進するために小骨のセルのウェブ123cを備える。型は、成形工程における不十分な材料流動および不要な冷却を防ぐために、さらにウェブ123cの中央の「切抜き」部123dを取り除く。さらに、型は、成形工程中に押湯として機能する押湯箇所123eを備える。また、型は、小骨122の下面の様々な支持フランジ126を備えることができる。さらに、型は、前縁構造上の様々なシステムの取付箇所(図示せず)を提供することができる。
【0085】
小骨122および上部外板121の構成要素は、それぞれ(翼幅方向に)およそ4mの長さで成形できる。構成要素の(翼弦方向の)幅と深さは、1m×1mから450mmまで、また150mmまでの範囲とできる(from 1m x 1m to 450mm to 150mm)。成形後、重要な部分で所要のトレランスを達成するために機械加工が行われる。
【0086】
あるいは、上部外板121および小骨122は、一体の複合材料要素として製造してもよいし、固体の金属合金ビレットから機械加工してもよい。
【0087】
組立において、加工済み取付部品112は、主翼ボックス構造の前主桁111に取り付ける。その後、機械加工済みの様々な支承部材127が、下部の前方延伸部113の上面115へ取り付けられる。その後、一体の小骨122と上部外板121の構成要素が、前面116に取り付けられ、様々な支承部材127は様々な支持フランジ126にボルト結合される。
【0088】
メンテナンス中、システムの取り外しや設置のために支承部材127を取り外してもよい。さらに、前縁構造120は、前主桁111により形成された翼の中の燃料タンクのまわりのシールを破損することなく、加工済み取付部品112から取り外すことができる。
【0089】
図3aおよび図3bは、本発明の第1の態様の第2の実施の形態による、前縁120’の外皮構造121’の一部を示す図である。
【0090】
外皮構造121’は、外皮構造121’の内部に沿って先端120a’から翼弦方向に延びる様々なフランジ130a’、130b’を含む。これらのフランジ130a’、130b’、130c’、130d’は、例えば、型による成形によって外皮構造121’と一体に形成される。組立において、小骨はこれらのフランジ130’に取付けられる。
【0091】
加えて、外皮構造121’は厚さが変化し、また、外皮構造121’の内面のフランジ130’の各々の間に形成された格子パターン131’を有する。格子パターン131’は、セル壁131b’と押湯箇所131e’を有する三角形のセル131a’を含む。
【0092】
型による成形はもちろん、外皮構造121’は、一体の複合要素として製造してもよいし、あるいは固体の金属合金ビレットから機械加工してもよい。
【0093】
図4aおよび図4bは、本発明の第2の態様の第1の実施の形態による前縁構造220の一部を示す図である。
【0094】
前縁構造220は、外側(上部)外板221aおよび内側(下部)外板221bの両方を有する上部外皮構造220を含む。外側外板221aおよび内側外板221bは、通常互いに隣接している。しかしながら、翼幅方向の様々な位置で、内側外板221bは「シルクハット(top hat)型」の断面を形成するように内側へ折り曲げられる。これらの「シルクハット型」断面は、2つの側縁221c、221dと、上縁221eによって形成される。2つの側縁221c、221dは、2枚の外板の平面に対してほぼ垂直(約5度以内)に内側へ延び、上縁221eは、2枚の外板の平面から内側に間隔をおいて配置され、2枚の外板と実質的に平行に延びる。各「シルクハット型」断面の上縁221eは、それに取付けられた小骨222を有する。「シルクハット型」断面は、外皮構造221を補強する。
【0095】
加えて、外側外板221aの内部は、一部の領域にフライス加工や化学エッチングを施して形成され、強度が調整される。
【0096】
図4bは、前縁構造の先端部の端面を示す。ここでは、外側外板221aを180度の折り部分221fで内側外板221bの周りで折り曲げることにより、外側外板221aと内側外板221bとが一緒に固定されることがわかる。この折り部分221fは、前縁構造220の翼幅方向に沿って延びる。また、外板221a、221bは、接着されることもある。さらに、外板221a、221bは、接着、固定、機械的締結を組み合わせて互いに接続してもよい。但し、機械的締結は、層流状態が重要にならない部位のみに使用される。
【0097】
製造時には、外側外板221aは(層流のために)高いトレランスをもって製造される。アルミニウム合金を用いる場合、外側外板221aは引張成形あるいは超塑性成形を使用して製造できる。また内側外板221bは、アルミニウム合金を用いる場合、超塑性成形を使用して製造できる。チタン合金を用いる場合、外板221a、221bは、上記に加えて、拡散接合と超塑性成形を組み合わせて製造できる。結果、上記と同じ作業で形成され互いに結合された板材221a、221bとなる。
【0098】
図5a、図5bは、本発明の第3の態様の第1の実施の形態による、主翼ボックス構造310および前縁構造320を含む翼構造300の一部の図を示す。
【0099】
主翼ボックス構造310は、前主桁311および主翼の外板314を含む。主翼ボックス構造310は、主翼の下部の外板および副桁(図示せず)も含む。
【0100】
前縁構造320は、先端320aから翼弦方向に延びる複数の小骨を含む。前縁構造320は、外側外板321aおよび内側外板321bを含む外皮構造を有する。2つの外板は、いずれも、炭素繊維強化プラスチック、アルミニウム合金あるいはチタン合金からなる。2つの外板の間には、コア材料321gがある。このコア材料321gは、ハニカムや独立気泡フォーム、アルミニウムハニカムを用いることができ、両外板に接合される。2つの外板間には、翼弦方向に延びる複数の補強部材321hも備わる。これらは、コア材料321gと同時に外板に接合される。内側外板321bは、前縁構造320の後部に向けて、外側外板321aから離れて延び、2つの外板間により広い隙間が形成される。前縁構造320の後端では、2つの外板321a、321bの間に延びる端面328が形成される。
【0101】
図5bは、貫通孔329aを備えた端面328を示す。さらに、内側外板321bの後部には、対応する複数の孔329bがある。これらの孔329a、329bは、主翼ボックス構造310の副桁(図示せず)に前縁構造を取り付けるためのバレルナット用にある。
【0102】
組立において、バレルナットは各孔329bと、主翼ボックス310の副桁の対応する孔(図示せず)に挿入される。その後、ボルトを個々の対応する孔329aに通してバレルナットへ挿入し、バレルナットを適所に固定する。あるいは、(孔329bでなく)ネジ孔329aを使用してもよいし、アンカーナットを使用してもよい。
【0103】
図6は、本発明の第2の態様の第2の実施の形態による前縁構造220’の一部の内面の断面図を示す。
【0104】
前縁構造220’は、下部外板229’、および翼弦方向に延びる複数の小骨222’を含む。下部外板229’には、外板に沿って縦に延び、補強部材として機能する複数の内向隆起部229a’が形成される。これらの内向隆起部229a’はU字型である。各小骨222’は、対応する1つのU字型のくぼみ222a’を下面に有し、各小骨222’は対応する隆起部229a上に設置される。
【0105】
各小骨222’は、翼弦方向の2つ(またはそれ以上)の箇所で、隆起部229a’の適切な位置にピン接合される。小骨222’はピン接合により翼幅方向に若干変動できる状態となり、内向隆起部229a’の変形が防がれる。外板229’は、外板229’に沿って翼幅方向に延びる2つの折り部分230a’、230b’を有する。
【0106】
製造時において、外板は、機械加工や成形によって、内向隆起部229a’と一体に形成できる。アルミニウム合金を用いる場合、外板229’は引張成形あるいは超塑性成形を使用して製造できる。チタン合金を用いる場合、外板229’は、さらに、(外板229’への)拡散接合と超塑性成形とを組み合わせて製造できる。小骨222’は、アルミニウム合金ビレットから機械加工できる。その他、小骨222’は、熱可塑性物質から作ってもよく、MMC(金属マトリックス複合体)の小骨でもよい。MMCの小骨は、より高い強度を得るために、(溶融アルミニウム中に)炭化ケイ素粒子を加えたアルミニウム母材から作ることができる。これらの選択肢は、いずれも軽量化を実現する。
【0107】
図7a、図7bは、本発明の第4の態様の第1の実施の形態による、主翼ボックス構造410と前縁構造420とを含む翼構造400の図を示す。
【0108】
主翼ボックス構造410は、前主桁411、主翼ボックスの上部外板414、主翼ボックスの下部外板415を含む。
【0109】
前縁構造420は、外側外板421aおよび間隔をおいて配置された内側外板421bとを有する上部外皮構造421と、縁部外板部429とを含む。前縁構造の先端部420aには、先端420aで前縁構造の内面に接する「丸面状の(bullnose)」補強部材430がある。「丸面状の」補強部材430は、U字形前部、後部板、発泡コアを有する。
【0110】
「切抜き」422aを備えた複数の小骨422は、前縁構造420内で主桁411の前から丸面材430のちょうど前まで翼弦方向に延びる。もちろん、これらの孔422aは、実際に材料を切抜いて形成する必要はなく、例えば、成形用の型から形成してもよい。重要な点は、外皮構造421は、隙間431によって小骨422の頂部から間隔をおいて配置され、隙間431は丸面補強部材430を用いて維持されることである。この隙間は深さおよそ5〜10mmである。
【0111】
小骨422は、留め具432を用いて、前縁の縁部外板部429に固定される。小骨422は、接合部材440にも取り付けられる。接合部材440は、T形の断面を有し、前主桁411の前かつ前縁外皮構造420の後面428の後ろで下方に延びる第1部分440aと、主桁411の前部の上方で後方に延びる第2部分440bと、小骨422の頂部の後部の上を横切って延びる第3部分440cとを有する。接合部材440は、構造を横切って翼幅方向に延び、主翼ボックスの上部外板と(CFRPで)一体に硬化される。
【0112】
前縁外皮構造421、小骨422および接合部材440は、小骨と接合部材440と外皮構造421のそれぞれを貫通して延びる留め具441を用いて一体に取り付けられる。
【0113】
図7b中で示されるように、前縁構造420は、さらに、各外皮構造421のパネルの翼弦方向の端部に、閉鎖小骨425を含む。各パネルは、翼幅方向におよそ4mである。ここで、外側外板421aおよび内側外板421bは互いに隣接し、各閉鎖小骨425の頂部のくぼみ426の中へと下方に折り込まれる。
【0114】
外皮構造421は、アルミニウム合金、チタン合金、炭素強化プラスチックあるいはMMC材料を使用して製造することができる。組立時には、前縁外皮構造421が構造に接続される前に、サブ構造(小骨422を含む)が主翼ボックス構造410に接続される。各外皮構造421のパネルは、構造への接続に先立って防除氷システム(図示せず)を備えた状態で用意される。各外皮構造パネルを一旦接続すれば、防除氷システムを航空機システムの残りに接続することができる。
【0115】
図8は、本発明の第3の態様の第2の実施の形態による、主翼ボックス構造310’および前縁構造320’を含む翼構造300’の図を示す。
【0116】
主翼ボックス構造310’は、前主桁311’(図示せず)、下部外板(図示せず)、主翼ボックス上部外板314’を含む。
【0117】
前縁構造320’は、前縁構造320’の前部の上を延びる上部外板321’と、下部外板329’とを含む。下部外板329’は、アクセスパネル340’を有する。上部外板321’の下には、複数の前縁小骨322’がある。上部外板321’は、小骨322’の後面に接する、後部内向フランジ321a’を有する。
【0118】
外板321’のフランジ321a’の後ろには、フランジ321a’の頂部から下部外板329’まで延びる第1部分331’を有する副桁330’がある。さらに、副桁330’は、下部外板329’の翼弦方向に沿って後方へに延びる第2部分332’も有する。最後に、副桁330’は、第1部分331’に接続され、第1部分331’から前縁構造320’の先端部に向かって小骨322’の下側に沿って前方に延びる第3部分333’を有する。この独立した第3部分333’は、軽量構造を備えた閉鎖パネルである。
【0119】
副桁330’の第1部分331’の後ろには、それぞれが小骨322’に対応する複数のスタブ小骨370’がある。これらのスタブ小骨370’は、システムの通信路360’および高揚力装置の駆動軸350’のための「切抜き」を有する。もちろん、これらの孔は、実際に材料を切抜くことで形成される必要はなく、例えば型による成形により形成されてもよい。副桁330’の第2部分332’は、スタブ小骨370’の下面の下を翼弦方向に延びる。主翼ボックス上部外板314’は、スタブ小骨370’の上面を覆うために、主翼ボックス構造から前方に延び、前端が前縁構造321’に当接する。
【0120】
主翼ボックス上部外板314’は、炭素繊維強化プラスチックから製造され、スタブ小骨370’と一体に硬化される。副桁330’は、アルミニウム合金から製造される。副桁330’は、炭素繊維強化プラスチックから作ることもできる。しかしながら、副桁330’の利点は、それが炭素繊維強化プラスチック製の前主桁311’を異物による損傷から保護するということであり、金属合金から作られるのが最良である。
【0121】
組立時には、前縁上部外板321’と小骨322’が互いに接続される。スタブ小骨370’と主翼ボックス外板314’も互いに接続される。その後、副桁330’が、スタブ小骨370’の前に配置され、前縁構造321’と小骨322’が、前縁構造321’の内向フランジ321a’と副桁330’とスタブ小骨370’とを貫通して延びる留め具(図示せず)によって副桁330’およびスタブ小骨370’に接続される。
【0122】
図9a、図9bは、本発明の第4の態様の第2の実施の形態による、主翼ボックス構造410’と前縁構造420’とを含む翼構造400’の図を示す。
【0123】
主翼ボックス構造410’は、前主桁411’、主翼ボックス上部外板414’、主翼ボックス下部外板429’を含む。
【0124】
前縁構造420’は、上部外板421’を含む。前縁構造の先端部420a’には、先端420a’で前縁構造の内面に当接する「丸面状の」補強部材430’がある。この「丸面状の」補強部材は、図7aおよび図7bに示す「丸面状の」補強部材420aと同様の部材である。
【0125】
複数の補強部材450’が、上部外板421’の下面に接続され、構造に沿って翼弦方向に延びる。これらの補強部材450’は、外板421’に接着されるか、溶接されるか、一体成形される。外板421’は、ビレットから機械加工することができる。
【0126】
複数の小骨422’が、前主桁411’の前面から「丸面状の」補強部材430’のちょうど前まで、前縁構造420'内を翼弦方向に延びる。重要な点は、外皮構造421’が、隙間431’によって小骨422’の頂部から間隔をおいて配置され、隙間431’が丸面状補強部材430’によって維持されることである。この隙間は深さおよそ5〜10mmである。
【0127】
小骨422’は、留め具432’を用いて、主翼ボックス下部外板429’に固定される。小骨422’は、接合部材440’にも接続される。接合部材440’は、図7aに示す接合部材440と同様の部材である。
【0128】
小骨422’は、斜め支柱460’によって前縁上部外板421’に固定される。各小骨422’は2つの対応する補強部材450’を有する。補強部材450’は、小骨422’の両側方に1つずつ配置され、上側外板421’に一体に接続される。各小骨422’は、小骨422’の各面の上部で回動可能に接続463’された2つの斜め支柱460’を有する。斜め支柱460’は、小骨422’の当該面に対応する補強部材450’にも回動可能に接続462’される。このようにして、小骨422’は、前縁上部外板421’に接続される。斜め支柱460’は、長さ方向のほぼ中ほどに、長さ調整ネジ461’を有する。
【0129】
外皮構造421’は、アルミニウム合金、チタン合金、MMC材料、あるいは斜め支柱460’用の金属製のブッシュを含む複合材料を使用して製造することができる。サブ構造(小骨422’を含む)は、アルミニウム合金を使用して製造してもよいし、熱可塑性材料から製造してもよい。
【0130】
組立時に、サブ構造(小骨422’を含む)は、前縁外皮構造421’と補強部材450’全体が構造に接続される前に、主翼ボックス構造410’に接続される。その後、小骨422’が、斜め支柱460’を使用して、対応する補強部材450’に接続される。斜め支柱460’の長さは、ねじ461’を使用して調節される。
【0131】
本発明は、特定の実施の形態に関して記述および説明されたが、本発明が特にここで説明されない様々な変更例に適用されることは、その技術分野における通常の知識を有する者によって理解される。ここでは、確実に考え得る変更例のみを説明している。
【0132】
様々な構成要素および構造は、機械加工、成形、溶接、ボルト接合、その他の適切な方法で製造され得る。使用される材料は、アルミニウム合金やチタン合金のような金属の合金や、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)のような複合材料である。
【0133】
いずれの実施の形態の特徴も、他の実施の形態と組み合わせることができる。例えば、図2aおよび図2bの実施の形態の一体の小骨122の特徴は、図7aおよび図7bの実施の形態の閉鎖小骨425、図8の実施の形態の小骨322’のいずれか、あるいは図9aおよび図9bの実施の形態の閉鎖小骨に使用できる。
【0134】
さらに、図3aおよび図3bの実施の形態の一体の補強部材130a’の特徴は、図7aおよび図7bの実施の形態の閉鎖小骨425、図8の実施の形態の小骨322’のいずれか、あるいは図9aおよび図9bの実施の形態の補強部材450’に使用できる。
【0135】
さらに、図4aおよび図4bの実施の形態の2層の前縁外板221の特徴は、図7aおよび図7bの実施の形態の外板421、図8の実施の形態の外板321’、あるいは図9aおよび図9bの実施の形態の外板421’に使用できる。
【0136】
さらに、図5aおよび図5bの実施の形態のバレルナット孔329a、329bの特徴は、図8の実施の形態で主翼ボックス構造310’に前縁構造320’を接合するために使用できる。
【0137】
さらに、図6の実施の形態で補強部材として機能する内向隆起部229a’の特徴は、図7aおよび図7bの実施の形態の閉鎖小骨425、図8の実施の形態の小骨322’のいずれか、あるいは図9aおよび図9bの実施の形態の補強部材450’に使用できる。
【0138】
先の記述では、知り得た、明確な、あるいは予測可能な完成品や構成要素が言及されているが、これと同等の物は、個々に明らかにされたならば、本発明に組込まれる。そのような同等物を包含するように解釈されるべき本発明の適正な範囲を決定するためには、請求項を参照されたい。
【0139】
望ましい、有益な、利便性を有する等として記述された本発明に係る完成品や特徴点は随意的なものであり、独立請求項の範囲を制限しないことも理解される。
【0140】
さらに、そのような随意的な完成品や特徴点が、発明の一部の実施の形態において利点を有する一方、望ましくないかもしれず、それゆえ、他の実施の形態では適用されない可能性があることが理解されるべきである。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図8
図9a
図9b