(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
定義
用語「アルカリ土類金属」はカルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウムまたはその混合物を表す。
【0022】
用語「アルキル」は直鎖状および分枝鎖状アルキル基を表す。
【0023】
用語「金属」はアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属またはその混合物を表す。
【0024】
用語「金属対基質比」(Metal to Substrate ratio)は当量の基質に対する金属の総当量の比を表す。過塩基性スルホネート洗剤は代表的に、12.5:1〜40:1の金属比を有し、一態様では13.5:1〜40:1、もう一つの態様では14.5:1〜40:1、さらにもう一つの態様では15.5:1〜40:1、およびさらにもう一つの態様では16.5:1〜40:1の金属比を有する。
【0025】
TBN数は強いアルカリ性生成物を表し、従って大きいアルカリ度を保有する。試料のTBNはASTM Test No.D2896またはいずれかその他の均等な方法によって測定することができる。一般的用語として、TBNは当量中和をもたらす水酸化カリウムのmgに等しい数値として表される潤滑性組成物1mgの中和能力である。従って、10のTBNは当該組成物が水酸化カリウム10mgに等しい中和能力を有することを意味する。活性成分のTBNを測定しなければならない。
【0026】
用語「低度の過塩基性」または「LOB」は活性物質が約0〜約60の低いTBNを有する過塩基性洗剤を表す。
【0027】
用語「中程度の過塩基性」または「MOB」は活性物質が約60より大きく約200までの中程度のTBNを有する過塩基性洗剤を表す。
【0028】
用語「高度の過塩基性」または「HOB」は活性物質が約200より大きく約400までの高いTBNを有する過塩基性洗剤を表す。
【0029】
上記したように、本発明はエンジン油に使用される少なくとも1種のカルボキシレート洗剤および少なくとも2種のフェナート洗剤を含む潤滑油組成物に関する。
【0030】
潤滑油添加剤組成物
本発明による潤滑油添加剤組成物は、約60より大きく約200までのTBNを有する少なくとも1種のカルボキシレート洗剤; 第一フェナート洗剤が約60より大きく約200までのTBNを有し、第二フェナートが約200より大きく約400までのTBNを有する少なくとも2種のフェナート洗剤;およびポリアルケニルスクシンイミドを含む。潤滑油添加剤組成物には別種の添加剤を使用することもできる。
【0031】
カルボキシレート洗剤
一例において、約60より大きく約200までのTBNを有する少なくとも1種のカルボキシレート洗剤を潤滑油添加剤組成物に使用する。
【0032】
代表的に、適当なカルボキシレート洗剤は、これらに制限されないものとして、米国公開特許第2007/0105730号および米国公開特許第2007/0027043号に記載されている方法を包含する当技術で周知の方法に従い製造される。
【0033】
単環型カルボキシレート
一例において、本発明の潤滑油添加剤組成物に使用することができるカルボキシレート洗剤は約60より大きく約200までの活性成分全塩基数(TBN)を有する単環型カルボキシレートである。
【0034】
単環型カルボキシレートは下記構造を有する:
【化1】
式中、Rは線状ヒドロカルビル基、分枝状ヒドロカルビル基またはその混合物である。
【0035】
好ましくは、Rは線状ヒドロカルビル基である。さらに好ましくは、Rは炭素原子12〜40個を有するアルキル基である。
【0036】
単環型カルボキシレートは下記方法に従い製造される。
【0037】
第一工程において、ヒドロカルビルフェノールを促進剤の存在下に中和する。一例において、ヒドロカルビルフェノールを少なくとも1種のC
1〜C
4カルボン酸の存在下にアルカリ土類金属塩基を用いて中和する。好ましくは、この反応はアルカリ塩基の不存在下に、およびジアルコールまたはモノアルコールの不存在下に行う。
【0038】
ヒドロカルビルフェノールは100%までの線状ヒドロカルビル基、100%までの分枝状ヒドロカルビル基または線状ヒドロカルビル基および分枝状ヒドロカルビル基の両方を含有することができる。好ましくは、存在する場合、線状ヒドロカルビル基はアルキルであり、この線状アルキル基は炭素原子12〜40個を含有し、さらに好ましくは炭素原子18〜30個を含有する。分枝状ヒドロカルビル基は存在する場合、好ましくは、アルキルであり、少なくとも9個の炭素原子を含有し、好ましくは炭素原子9〜24個を含有し、さらに好ましくは炭素原子10〜15個を含有する。一例において、ヒドロカルビルフェノールは、少なくとも15%の分枝状ヒドロカルビル基との混合物中に85%までの線状ヒドロカルビルフェノール(好ましくは、少なくとも35%のヒドロカルビルフェノール)を含有する。
【0039】
少なくとも35%の長直鎖状アルキルフェノール(炭素原子18〜30個)を含有するアルキルフェノールの使用は特に魅力的である。これは長直鎖状アルキルフェノールが潤滑油中における添加剤との適合性および溶解性を促進するからである。しかしながら、アルキルフェノール中に比較的重質の線状アルキル基が存在すると、分枝状アルキルフェノールに比較しアルキルフェノールの反応性を低下させることがあり、従ってアルカリ土類金属による中和の実行に一層厳格な反応条件を使用することが必要になる。
【0040】
分枝状アルキルフェノールはフェノールと一般にプロピレンに由来する分枝状オレフィンとの反応によって得ることができる。これはモノ置換異性体の混合物からなり、その置換基の大部分はパラ位置にあり、オルト位置の存在は非常に少なく、またパラ位置にはほとんど存在しない。これにより当該化合物をアルカリ土類金属塩基に対し、比較的より反応性にされる。これはフェノール官能性が実際に、立体干渉に欠けていることによる。
【0041】
他方、線状アルキルフェノールはフェノールと一般的にエチレンに由来する線状オレフィンとの反応によって得ることができる。これらは、その線状アルキル置換基のオルト、パラおよびメタ位置の割合が一層均一に分布している一置換異性体の混合物からなる。フェノール官能性は著しい立体干渉により、隣接する存在により、および一般に重質のアルキル置換基により、ほぼ受容性を有していないことから、これらよってアルカリ土類金属塩基に対する反応性は比較的に低下される。勿論のこととして、線状アルキルフェノールはパラ置換基の量を増加し、若干の分枝を有するアルキル置換基を含有することができ、その結果としてアルカリ土類金属塩基に対する相対的反応性を増大させることもできる。
【0042】
この工程の実施に使用することができるアルカリ土類金属塩基はカルシウム、マグネシウム、バリウムまたはストロンチウムの酸化物または水酸化物、特に酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、およびその混合物を包含する。一例において、消石灰(水酸化カルシウム)は好適である。
【0043】
この工程で使用される促進剤は中和を増強させる全ての物質であることができる。一例として、促進剤は多価アルコール、ジアルコール、モノアルコール、エチレングリコールまたは全てのカルボン酸であることができる。好ましくは、カルボン酸を使用する。さらに好ましくは、この工程において、 例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸を包含するC
1〜C
4カルボン酸を使用し、これらは単独でまたは混合物として使用することができる。好ましくは、酸の混合物を使用し、最も好ましくはギ酸/酢酸混合物を使用する。ギ酸/酢酸のモル比は0.2:1〜100:1であるべきであり、好ましくは0.5:1〜4:1、最も好ましくは1:1である。これらのカルボン酸は転移剤として作用し、鉱物反応剤から有機反応剤へのアルカリ土類金属塩基の転移を助長する。
【0044】
中和操作は少なくとも200℃、好ましくは少なくとも215℃、最も好ましくは少なくとも240℃の温度で行う。圧力は反応水を留去するために大気圧以下に徐々に減少させる。従って、中和は水と共沸物質を生成する全ての溶媒の不存在下に行われるべきである。好ましくは、圧力は7,000Pa(70mbars)を超えないように低下させるべきである。
【0045】
使用する反応剤の量は下記モル比に相当するようにすべきである:(1)0.2:1〜0.7:1、好ましくは0.3:1〜0.5:1のアルカリ土類金属塩基/アルカリ土類金属塩基ドロカルビルフェノール;および(2)0.01:1〜0.5:1、好ましくは0.03〜0.15:1のカルボン酸/ヒドロカルビルフェノール。
【0046】
好ましくは、この中和工程の終了時点で、得られたヒドロカルビルフェノールは少なくとも215℃の温度および5000〜10
5Pa(0.05〜1.0bar)の絶対圧力において15分間を越えない時間、保持する。さらに好ましくは、この中和工程の終了時点で、得られたヒドロカルビルフェノールは10,000〜20,000Pa(0.1〜0.2bar)の絶対圧力において2〜6時間にわたり保持する。
【0047】
操作を充分に高い温度で行い、および反応器内の圧力を大気圧以下に徐々に低下させるかぎり、中和反応はこの反応中に生成される水と共沸体を生成する溶媒の添加を必要とせずに行われる。
【0048】
B.カルボキシル化工程
カルボキシル化工程は先行の中和工程に由来する反応媒質中に二酸化炭素を単純に泡立てて供給することによって、出発ヒドロカルビルフェノールの少なくとも20モル%がヒドロカルビルサリチレートに変換されるまで行う(電位差測定によりサリチル酸として測定して)。この工程は生成されるアルキルサリチレートの全部の脱カルボキシル化を回避するために、加圧下に行わなければならない。
【0049】
好ましくは、180℃〜240℃の温度および大気圧以上から15x10
5Pa(15bar)の範囲内の圧力において1〜8時間の期間かけて出発ヒドロカルビルフェノールの少なくとも22モル%をヒドロカルビルサリチレートに変換させる。
【0050】
変法の一つに従う場合、200℃に等しいか、またはそれ以上の温度において、4x10
5Pa(4bar)の圧力下に二酸化炭素を用いて出発ヒドロカルビルフェノールの少なくとも25モル%をヒドロカルビルサリチレートに変換させる
【0051】
C.濾過工程
カルボキシル化工程の生成物は濾過すると有利であることがある。この濾過工程の目的は副生成物、特に結晶炭酸カルシウムを除去することにある。この副生成物は先行工程中に生成されることがあり、また潤滑油回路に設置されるフィルターを塞ぐことがある。
【0052】
D.分離工程
出発ヒドロカルビルフェノールの少なくとも10%をカルボキシル化工程の生成物から分離する。好ましくは、この分離は蒸留を用いて行う。さらに好ましくは、蒸留は約150℃〜約250℃の温度および約0.1〜4mbarの圧力において、さらに好ましくは、約190℃〜約230℃の温度および約0.5〜3mbarの圧力において、最も好ましくは約195℃〜約225℃の温度および約1〜2mbarの圧力において、ふき取り式薄膜蒸発器で行なう。出発ヒドロカルビルフェノールの少なくとも10%を分離する。さらに好ましくは、出発ヒドロカルビルフェノールの少なくとも30%を分離する。さらに好ましくは、55%までの出発ヒドロカルビルフェノールを分離する。分離されたヒドロカルビルフェノールは次いで再循環し、新規方法または他の全ての方法における出発材料として使用することができる。
【0053】
無硫化カルボキシレート含有添加剤
本発明の方法により生成される無硫化カルボキシレート含有添加剤の特徴は他の経路により生成される組成物に比較し、より多量のアルカリ土類金属単環型芳香族ヒドロカルビルサリチレートおよびより少量のヒドロカルビルフェノールを含有するその特異な組成にあるということができる。ヒドロカルビル基がアルキル基である場合、無硫化カルボキシレート含有添加剤は下記組成を有する:(a)40%未満のアルキルフェノール、(b)10%〜50%のアルカリ土類金属アルキルフェナート、および(c)15%〜60%のアルカリ土類金属単環型芳香族アルキルサリチレート。
【0054】
他の方法によって生成されるアルカリ土類金属アルキルサリチレートとは異なり、この無硫化カルボキシレート含有添加剤組成物の特徴は僅かな量のアルカリ土類金属二環型芳香族アルキルサリシレートを含有するのみであることにある。二環型芳香族アルキルサリチレートに対する単環型芳香族アルキルサリチレートのモル比は少なくとも8:1である。
【0055】
赤外分光計による生成物の特徴付け
本発明による無硫化カルボキシレート含有添加剤の特徴を表わすために、アウト−オブ−芳香族環−プレーンC−H曲がり振動(out-of-aromatic-ring-plane C−H bending vibration)を使用した。芳香族環の赤外スペクトルは、置換基の数および位置にしばしば正確に対応する675〜870cm
−1領域に強力なアウト−オブ−プレーンC−H曲がり透過帯を示す。オルト二置換化合物の場合、透過帯は735〜770cm
−1に生じる。パラ二置換化合物の場合、透過帯は810〜840cm
−1に生じる。
【0056】
本発明に対する対照化学物質の赤外スペクトルはアウト−オブ−プレーンC−H曲がり帯がオルト−アルキルフェノールの場合に750±3cm
−1に、サリチル酸の場合に760±2cm
−1に、およびパラ−アルキルフェノールの場合に832±3cm
−1に生じることを示す。
【0057】
当技術で公知のアルカリ土類アルキルフェナートは750±3cm
−1および832±3cm
−1に赤外線アウト−オブ−プレーンC−H曲がり透過度を有する。当技術で公知のアルカリ土類アルキルサリチレートは763±3cm
−1および832±3cm
−1に赤外線アウト−オブ−プレーンC−H曲がり透過帯を有する。
【0058】
本発明による無硫化カルボキシレート含有添加剤は基本的に763±3cm
−1にアウト−オブ−プレーンC−H曲がり振動を示すが、アルキルサリチレートが存在する別の証拠も有する。この特別の特徴は充分に説明されていない。しかしながら、単環型芳香族アルキルサリチレートの特定の構造がこのアウト−オブ−プレーンC−H曲がり振動を或る方法で防止するという仮説をたてることができる。この構造において、カルボン酸官能性は環状構造で約束され、従って近隣水素原子の自由な動きを制限し、芳香族環付近における立体干渉の増大を生じさせることができる。この仮説は酸性化された生成物(この場合、カルボン酸官能性がもはや環状構造内で約束されておらず、従って回転することができる)の赤外スペクトルは763±3cm
−1にアウト−オブ−プレーンC−H透過帯を有する。
【0059】
従って、本発明による無硫化カルボキシレート含有添加剤は、0.1:1未満の約832±3cm
−1におけるアウト−オブ−プレーンC−H曲がり赤外透過帯に対して約763±3cm
−1にアウト−オブ−プレーンC−H曲がり赤外透過帯の比を有することを特徴とすることができる。
【0060】
この方法によって生成される、無硫化カルボキシレート含有添加剤は硫化された生成物に優る改善された高温沈着制御性能を提供する。アルカリ金属を含有していないことから、この添加剤は、アルカリ金属の存在が有害な作用を示すマリーンエンジン油などの用途で洗剤−分散剤として使用することができる。
【0061】
追加のカルボキシレート添加剤
本発明による潤滑油添加剤組成物に使用することができる別種のカルボキシレート添加剤は下記方法によって製造することができる。
【0062】
本発明による過塩基性アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエート(すなわち、カルボキシレート)は代表的に、下記式(I)で示される構造を有する。
【化2】
式中、Rは線状脂肪族基、分枝状脂肪族基または線状脂肪族基と分枝状脂肪族基との混合物である。好ましくは、Rはアルキルまたはアルケニル基である。さらに好ましくは、Rはアルキル基である。
【0063】
Mはカルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウムからなる群から選択されるアルカリ土類金属である。カルシウムおよびマグネシウムは好適なアルカリ土類金属である。カルシウムはさらに好ましい。
【0064】
Rが線状脂肪族基である場合、この線状脂肪族基は代表的に、炭素原子約12〜40個、さらに好ましくは炭素原子約18〜30個を含む。
【0065】
Rが分枝状脂肪族基である場合、この分枝状脂肪族基は代表的に、炭素原子少なくとも9個、好ましくは9〜40個、さらに好ましくは炭素原子9〜24個、最も好ましくは炭素原子10〜18個を含む。このような分枝状脂肪族基は好ましくは、プロピレンまたはブテンのオリゴマーから誘導される。
【0066】
Rはまた、線状脂肪族基と分枝状脂肪族基との混合物を表すこともできる。好ましくは、Rは炭素原子20〜30個を含有する線状脂肪族基と炭素原子約12個を含有する分枝状脂肪族基との混合物を表す。
【0067】
Rが脂肪族基の混合物を表す場合、本発明で使用されるアルカリ土類金属アルキルヒドロキシ安息香酸は線状基の混合物、分枝状基の混合物、または線状基と分枝状基との混合物を含有することができる。従って、Rは線状脂肪族基、好ましくはアルキル基、例えばC
14−C
16、C
16−C
18、C
18−C
20、C
20−C
22、C
20−C
24およびC
20−C
28アルキル,およびその混合物からなる群から選択され、正アルフアオレフィンから誘導されるアルキル基の混合物であることができる。有利には、これらの混合物は少なくとも95モル%、好ましくは98モル%の量でアルキル基であって、エチレンの重合から誘導されるアルキル基を包含する。
【0068】
Rがアルキル基の混合物を表す本発明のアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートは線状アルファオレフィンカット、例えばNormal Alpha Olefine C
26−C
28またはNormal Alpha Olefine C
20−C
24の商品名でChevron Phillips Chemical Companyにより市販されている商品、C
20−C
26 Olefineの商品名でBritish Petroleumから市販されている商品、SHOP C
20−C
22の商品名でShell Chimieから市販されている商品または炭素原子約20〜28個を有するこれらの会社からのカットまたはオレフィンの混合物から製造することができる。
【0069】
式(I)の−COOM基はヒドロキシル基に対してオルト、メタ、またはパラ位置に存在することができる。
【0070】
本発明のアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートはオルト、メタ、またはパラ位置に−COOM基を有するアルカリ土類金属アルキルヒドロキシ安息香酸の全ての混合物であることができる。
【0071】
本発明のアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートは一般に下記試験によって特徴付けられるように油溶性である。
【0072】
混合物の総重量に基づき10重量%の含有量のアルキルヒドロキシベンゾエートおよび600Neutral稀釈油の混合物を60℃の温度で30分かけて遠心分離する。この遠心分離は標準ASTM D2273により規定されている条件下に行う(遠心分離は稀釈することなく、すなわち溶媒を添加することなく行うことに留意されるべきである)。遠心分離後に直ちに、生成される沈着物の容積を測定する;沈着物が0.05容積/容積%未満である場合(混合物の容積に基づく沈着物の容積)、生成物は油に溶解するものと考える。
【0073】
有利には、本発明による高度過塩基性アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートのTBNは、250より大きく、好ましくは約250〜450、さらに好ましくは約300〜400であり、粗製沈着物は一般に3容積%未満、好ましくは2容積%未満、さらに好ましくは1容積%未満である。本発明による中程度過塩基性アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートの場合、そのTBNは、約100〜250、好ましくは約140〜230であり、粗製沈着物は一般に1容積%未満、好ましくは0.5容積%未満である。
【0074】
方法
本発明の第一の態様において、過塩基性アルカリ土類金属アルキルドロキシベンゾエートの製造方法は、アルカリ土類金属アルキルドロキシベンゾエートまたはアルカリ土類金属アルキルドロキシベンゾエートおよびアルキルヒドロキシベンゾエートとアルキルフェノールの総混合物に基づき50モル%までのアルキルフェノールとの混合物を、モル過剰量のアルカリ土類金属塩基および少なくとも1種の酸性過塩基性物質を用い、少なくとも1種の炭素原子1〜4個を有するカルボン酸および芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、モノアルコールおよびその混合物からなる群から選択される溶媒の存在下に過塩基性化することを包含する。
【0075】
アルカリ土類金属アルキルドロキシベンゾエートまたはアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートとアルキルフェノールとの混合物の過塩基性化は、過塩基性アルカリ土類金属アルキルドロキシベンゾエートを製造するための当業者に公知の方法のいずれかによって行うことができる。しかしながら、この工程で少量のC
1〜C
4カルボン酸を存在させると、過塩基性化工程の終了時点で粗製沈着物が少なくとも3倍減少されることが驚くべきことに見出された。
【0076】
この中和工程に使用されるC
1〜C
4カルボン酸はギ酸、酢酸、プロピオン酸、および酪酸を包含し、これらは単独または混合物として使用することができる。このような酸の混合物、例えばギ酸:酢酸が約0.1:1〜100:1、好ましくは約0.5:1〜4:1、さらに好ましくは0.5:1〜2:1、最も好ましくは約1:1であるギ酸と酢酸の混合物を使用すると好ましい。
【0077】
一般に、過塩基性化反応は約10重量%〜70重量%のアルキルドロキシ安息香酸、約1重量%〜30重量%のアルキルフェノール、約0重量%〜40重量%の稀釈油、約20重量%〜60重量%の芳香族溶媒の存在下に行う。反応混合物は攪拌する。芳香族溶媒、モノアルコールおよび二酸化炭素とともにアルカリ土類金属を、約20℃〜80℃の温度を維持しながら反応に添加する。
【0078】
過塩基性化の程度はアルカリ土類金属、二酸化炭素および反応混合物に添加される反応剤の量および炭酸塩化処理期間中に使用される反応条件によって制御することができる。
【0079】
使用される反応剤(メタノール、キシレン、消石灰およびCO
2)の重量比は次の重量比に相当する:約1.5:1〜7:1、好ましくは約2:1〜4:1のキシレン:消石灰。約0.25:1〜4:1、好ましくは約0.4:1〜1.2:1のメタノール:約0.5:1〜1.3:1、好ましくは約0.7:1〜1.0:1のモル比の二酸化炭素:消石灰;約0.02:1〜1.5:1、好ましくは約0.1:1〜0.7:1のモル比のC
1〜C
4カルボン酸:アルキルヒドロキシ安息香酸。
【0080】
石灰はスラリーとして、すなわち、石灰、メタノール、キシレン、およびCO
2の予備混合物として、約20℃〜65℃の温度で1時間〜4時間の時間をかけて導入する。
【0081】
石灰およびCO
2の量は性能に対し如何なる有害な作用も伴うことなく、高度過塩基性化物質(TBN>250)および0.4〜3容積%の範囲、好ましくは0.6〜1.8容積%の範囲の粗製沈着物が得られるように調整する。C
1−C
4カルボン酸を省略すると、このような低レベルの粗製沈着物を達成することはできない。代表的に、C
1−C
4カルボン酸を使用しない場合の粗製沈着物は約4〜8容積%の範囲になる。
【0082】
中程度の過塩基性化物質の場合(約100〜250のTBN)、石灰およびCO
2の量は粗製沈着物が0.2〜1容積%の範囲で得られるように調整する。C
1−C
4カルボン酸を使用しない場合の粗製沈着物は約0.8〜3容積%の範囲になる。
【0083】
本発明の第二の態様において、過塩基性アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートは下記工程に従い製造することができる。
【0084】
A.アルカリ金属塩基アルキルフェナートの生成
第一工程において、アルキルフェノールを好ましくは軽質溶媒、例えばトルエン、キシレン異性体、軽質アルキルベンゼンなどの存在下にアルカリ金属塩基を用いて中和し、アルカリ金属塩基アルキルフェナートを生成する。一例において、溶媒は水と共沸物質を形成する。もう一つの例において、溶媒はまた、2−エチルヘキサノールなどのモノアルコールであることができる。この場合、2−エチルヘキサノールはカルボキシル化の前に蒸留によって除去する。溶媒を用いる目的は水の除去を促進することにある。
【0085】
ヒドロキシカルビルフェノールは100重量%までの線状ヒドロカルビル基、100重量%までの分枝状ヒドロカルビル基または線状ヒドロカルビル基および分枝状ヒドロカルビル基の両方を含有することができる。好ましくは、存在する場合、線状ヒドロカルビル基はアルキルであり、この線状アルキル基は炭素原子約12〜40個、さらに好ましくは炭素原子約18〜30個を含有する。存在する場合、分枝状ヒドロカルビル基は好ましくはアルキルであり、このアルキル基は炭素原子約9〜40個、さらに好ましくは炭素原子約9〜24個、最も好ましくは炭素原子約10〜18個を含有する。一例において、ヒドロカルビルフェノールは、85重量%までの線状ヒドロカルビルフェノール(好ましくは、少なくとも35重量%の線状ヒドロカルビルフェノール)を少なくとも15重量%の分枝状ヒドロカルビルフェノールとの混合物中に含有する。一例において、ヒドロカルビルフェノールは100%線状アルキルフェノールである。
【0086】
長い線状アルキル鎖が潤滑油中で添加剤の適合性および溶解性を促進することから、少なくとも35重量%の長い線状アルキルフェノール(炭素原子約18〜30個)は特に有利である。
【0087】
分枝状アルキルフェノールは一般的に、プロピレンに由来する分枝状オレフィンとフェノールとの反応によって得ることができる。
【0088】
これらは大部分の置換基がパラ位置に存在し、非常に僅かがオルト位置に存在し、メタ位置にはほとんど存在しない一置換異性体の混合物からなる。
【0089】
他方、線状アルキルフェノールはフェノールと一般にエチレンに由来する線状オレフィンとの反応によって得ることができる。これらはオルト、メタおよびパラ位置における線状アルキル置換基の比が均一に分布している一置換異性体の混合物からなる。勿論のこととして、線状アルキルフェノールはパラ置換基の量を増加する若干の分枝を有するアルキル置換基を含有することができ、これによりアルカリ金属塩基に対する相対的反応性を増大させることができる。
【0090】
この工程の実施に使用することができるアルカリ金属塩基はリチウム、ナトリウムまたはカリウムの酸化物または水酸化物を包含する。好適な態様において、水酸化カリウムが好ましい。別の好適な態様において、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0091】
この工程の目的は2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、さらに好ましくは500ppm未満の水を含有するアルキルフェナートを得ることにある。
【0092】
この点に関し、第一工程は水の排除に充分に高い温度で行う。一例において、生成物はさらに低い反応温度が必要である僅かな減圧下におく。
【0093】
一例において、キシレンを溶媒として使用し、反応は130℃〜155℃の温度で800mbar(8x10
4Pa)の絶対圧力下に行う。
【0094】
もう一つの例において、2−エチルヘキサノールを溶媒として使用する。2−エチルヘキサノールの沸点(184℃)はキシレン(140℃)よりも格別に高いことから、反応は少なくとも150℃の温度で行う。
【0095】
圧力は大気圧以下に徐々に減少させ、水反応の蒸留を完了させる。好ましくは、圧力は70mbar(7x10
3Pa)より高くならないように低下させる。
【0096】
操作を充分に高い温度で行ない、および反応器内の圧力を大気圧以下に徐々に減少させて行なうかぎり、アルカリ金属塩基アルキルフェネートの生成は溶媒を添加する必要なく行われ、この反応中に生成される水と共沸物質を生成する。一例として、温度は200℃まで加熱し、次いで圧力は大気圧以下に徐々に減少させる。好ましくは、圧力は70mbar(7x10
3Pa)より高くない圧力に減少させる。
【0097】
水の排除は少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3時間かけて行う。
【0098】
使用する反応剤の量は下記モル比に対応すべきである:アルカリ金属塩基:アルキルフェノール約0.5:1〜1.2:1、好ましくは、約0.9:1〜1.05:1;溶媒:アルキルフェノール(重量/重量)約0.1:1〜5:1、好ましくは約0.3:1〜3:1。
【0099】
B.カルボキシル化
このカルボキシル化工程は先行の中和工程から派生する反応媒質中に二酸化炭素(CO
2)を泡立てて供給することによって行い、出発アルキルフェノールの少なくとも50モル%がアルキルヒドロキシ安息香酸に変換されるまで行う(電位差測定によって、ヒドロキシ安息香酸として測定)。
【0100】
出発アルキルフェノールの少なくとも50モル%、好ましくは75モル%、さらに好ましくは85モル%が二酸化炭素を使用し、約110℃〜200℃の温度においてほぼ大気圧から15bar(15x10
5Pa)、好ましくは1bar(1x10
5Pa)の範囲内の圧力で約1〜8時間の期間をかけてアルキルヒドロキシベンゾエートに変換されるまで行う。
【0101】
カリウム塩を用いる変法の一つにおいて、温度は約125℃〜165℃、好ましくは130℃〜155℃の温度であり、および圧力はほぼ大気圧から15bar(15x10
5Pa)、好ましくはほぼ大気圧から4bar(4x10
5Pa)である。
【0102】
もう一つの変法において、温度を好ましくは約110℃〜155℃に劇的に低下する。温度はさらに好ましくは約120℃〜140℃であり、および圧力は約1bar〜20bar(1x10
5〜20x10
5Pa)、好ましくは3bar〜15bar(3x10
5Pa〜15x10
5Pa)である。
【0103】
カルボキシル化は通常、炭化水素またはアルキレート、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの溶媒中に稀釈して行う。この場合、溶媒:ヒドロキシベンゾエートの重量比は約0.1:1〜5:1、好ましくは約0.3:1〜3:1である。
【0104】
もう一つの変法において、溶媒は使用しない。この場合、カルボキシル化は粘性すぎる材料を回避するために稀釈油の存在下に行う。
【0105】
稀釈油:ヒドロキシベンゾエートの重量比は約0.1:1〜2:1、好ましくは約0.2:1〜1:1、さらに好ましくは約0.2:1〜0.5:1である。
【0106】
C.酸性化
この工程の目的は溶媒中に稀釈されているアルキルヒドロキシベンゾエートを酸性化することにある。アルキルヒドロキシベンゾエートに比較して強い酸の全部を使用することができる。通常、塩酸または水性硫酸を使用する。
【0107】
酸性化工程は、少なくとも5H
+当量%、好ましくは10H
+当量%、さらに好ましくは20H
+当量%の水酸化カリウムに対しH
+当量過剰の酸を用いて行い、酸性化を完了させる。
【0108】
一例において、硫酸を使用する。硫酸は約5容積%〜50容積%、好ましくは10容積%〜30容積%に稀釈する。ヒドロキシベンゾエート塩基1モルあたりでヒドロキシベンゾエート(サリチレート)に対し使用する硫酸の量は硫酸少なくとも0.525モル、好ましくは0.55モル、さらに好ましくは0.6モルである。
【0109】
酸性化反応は攪拌下に、またはいずれか適当な混合手段を用いてほぼ室温から95℃、好ましくは約50℃〜70℃の温度において混合の効率に依存する期間にわたり行う。一例として、攪拌機付反応器を使用する場合、この期間は約15分〜300分、好ましくは約60〜180分である。静的混合機を使用する場合、この期間はさらに短くすることができる。
【0110】
この期間の終了時点で、攪拌を停止し、水性相の分離前に良好な相分離を可能にする。相分離が完了した後、有機層を次いで、中和し、過塩基性化し、遠心分離し、夾雑物を除去し、次いで蒸留して溶媒を除去する。水性相は廃棄物質として処理する。一例において、有機相はコアレッサーに通し、残留する水および結果として生じる水溶解性夾雑物、例えば硫酸および硫酸カリウムのレベルを減少させる。
【0111】
D.カルボン酸との接触
工程Cのアルキルヒドロキシ安息香酸を炭素原子1〜4個を有する少なくとも1種のカルボン酸と接触させる。
【0112】
E.中和
工程Dからのアルキルヒドロキシ安息香酸および少なくとも1種のカルボン酸の混合物をアルカリ土類金属塩基および芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、モノアルコールおよびその混合物からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒により中和し、アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートおよびアルカリ土類金属カルボン酸塩を生成する。
【0113】
F.過塩基性化
アルキルヒドロキシ安息香酸とアルキルフェノールとの混合物の過塩基性化はアルキルヒドロキシベンゾエートの生成について当業者に公知である全ての方法によって行うことができる。しかしながら、この工程に少量のC
1〜C
4カルボン酸を添加すると過塩基性化の終了時点で得られる沈着物を少なくとも3倍減少されることが驚くべきことに見出された。
【0114】
この中和工程に使用されるC
1〜C
4カルボン酸はギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸を包含し、これらの酸は単独で、または混合物として使用することができる。このような酸の混合物、例えばギ酸:酢酸モル比でギ酸:酢酸約0.1:1〜100:1、好ましくは約0.5:1〜4:1、さらに好ましくは約0.5:1〜2:1で使用すると好ましい。
【0115】
一般に、過塩基性化反応はアルキルヒドロキシ安息香酸約10重量%〜70重量%、アルキルフェノール約1重量%〜30重量%、稀釈油約0重量%〜40重量%、芳香族溶媒約20重量%〜60重量%が存在する反応器で行う。この反応混合物を攪拌する。約20℃〜80℃の温度を維持しながら芳香族溶媒、モノアルコールおよび二酸化炭素と共にアルカリ土類金属を反応に添加する。
【0116】
過塩基性化の程度は反応混合物に添加されるアルカリ土類金属、二酸化炭素および反応剤の量および炭酸ガス飽和プロセス期間中に使用される反応温度によって制御することができる。
【0117】
使用される反応剤(メタノール、キシレン、消石灰およびCO
2)の重量比は下記重量比に対応する:キシレン:消石灰約1.5:1〜7:1、好ましくは約2:1〜4:1;メタノール:消石灰約0.25:1〜4:1、好ましくは約0.4:1〜12:1。二酸化炭素:消石灰モル比約0.5:1〜1.3:1、好ましくは約0.7:1〜1.0:1。C
1〜C
4カルボン酸:アルキルヒドロキシ安息香酸モル比約0.02:1〜1.5:1、好ましくは約0.1:1〜0.7:1。
【0118】
消石灰はスラリーとして添加する。すなわち消石灰、メタノール、キシレンおよびCO
2の予備混合物を約20℃〜65℃の温度において1時間〜4時間の期間をかけて導入する。
【0119】
消石灰およびCO
2の量は、性能に如何なる有害な作用を及ぼすことなく、高度過塩基性生成物(TBN>250)および0.4〜3容積%の範囲、好ましくは0.6〜1.8容積%の範囲の粗製沈着物が得られるように調整する。C
1〜C
4カルボン酸を省略すると、粗製沈着物の低レベルを達成することはできない。代表的に、C
1〜C
4カルボン酸を使用しない場合の粗製沈着物は約4〜8容積%の範囲になる。
【0120】
中程度の過塩基性化の場合(約100〜250のTBN)、消石灰およびCO
2の量は、0.2〜1容積%の範囲の粗製沈着物が得られるように調整する。C
1〜C
4カルボン酸を使用しない場合の粗製沈着物は約0.8〜3容積%の範囲になる。
【0121】
本発明の第三の態様において、過塩基性アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートは上記工程A〜Cに続いて下記工程を有する方法によって得ることができる。
【0122】
D.中和
工程Cからのアルキルヒドロキシ安息香酸の混合物をモル過剰量のアルカリ土類金属塩基および芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、モノアルコール、およびその混合物からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒により中和し、アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートを生成する。
【0123】
E.カルボン酸との接触
工程Dで生成されたアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートを炭素原子約1〜4個を有する少なくとも1種のカルボン酸と接触させ、アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートと少なくとも1種のアルカリ土類金属カルボキシレートの混合物を生成する。
【0124】
F.過塩基性化
アルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートは次いで、前記説明に従い過塩基性化する。
【0125】
場合により、予備蒸留、遠心分離および蒸留をまた使用し、溶媒および粗製沈着物を除去することもできる。水、メタノールおよびキシレンの一部分は約110℃〜134℃に加熱することによって排除することができる。これに引続いて遠心分離を行い、未反応消石灰を除去することができる。最後に、キシレンはASTM D93に記載されているPensky−Martens Closed Cup(PMCC)で測定して少なくとも約160℃の引火点に到達させるために、減圧で加熱することによって除去することができる。
【0126】
フェナート洗剤
本発明の態様の一つにおいて、潤滑油添加剤組成物は少なくとも1種のフェナート洗剤を含有する。第一フェナート洗剤は約60より大きく、約200までの活性成分TBNを有する中程度過塩基性洗剤である。第二フェナート洗剤は約200より大きく、約400までの活性成分TBNを有する高度過塩基性洗剤である。
【0127】
代表的にフェナートは米国特許第3,801,507号(この特許の記載を引用してここに組入れる)および米国特許第5,677,270号(この特許の記載を引用してここに組入れる)に記載されている方法に従い製造することができる。
【0128】
これらの方法は所望のアルキルフェノールを低級アルカン酸および金属塩基の存在下に反応条件において、好ましくは不活性適合性液状炭化水素稀釈剤中で硫黄と接触させることによって容易に行うことができる。好ましくは、反応は不活性気体、代表的に窒素下で行う。理論的に、この中和は硫化に先立つ別の工程で行うことができるが、実用的には一般に、硫化と中和とを単独操作工程において一緒に行うと都合がよい。また、低級アルカン酸の代わりに、アルカン酸の塩または酸と塩との混合物を使用することもできる。塩または塩と酸との混合物を使用する場合、塩は好ましくは、アルカリ土類金属塩、最も好ましくはカルシウム塩である。しかしながら、酸が好ましく、従ってこの方法を低級アルカン酸の使用に係わり以下で説明する。しかしながら、これらの教示は酸の全部または一部の代わりに塩および塩混合物を使用する場合にも適用することができるものと理解されるべきである。この組合せ中和および硫化反応は代表的に、使用される特定の金属およびアルカン酸に応じて115℃〜300℃の範囲、好ましくは135℃〜230℃の範囲の温度で行う。ギ酸を単独で使用する場合、最良の結果は一般に、約150℃〜200℃の範囲の温度を用いることによって得られる。ギ酸を別種のアルカン酸(酢酸、プロピオン酸、または酢酸/プロピオン酸)と共に使用することによって、より高い温度を有利に使用することができ、より高度の塩基保有および減少されたピストン沈着物を得ることができる。一例として、これらの混合物を使用する場合、約180℃〜250℃の範囲、特に約200℃〜235℃の温度を使用することができる。2種または3種の低級アルカン酸もまた、使用することができる。正常または中程度の過塩基性生成物が望まれる場合、ギ酸5〜25重量%および酢酸75〜95重量%を含有する混合物が特に有利である。アルキルフェノール1モルに基づき、代表的に0.8〜3.5モル、好ましくは1.2〜2モルの硫黄および約0.025〜2モル、好ましくは0.1〜0.8モルの低級アルカン酸を使用する。代表的に、アルキルフェノール1モル当たり約0.3〜1モル、好ましくは0.5〜0.8モルの金属塩基を使用する。中和に充分な量の金属塩基に加え、低級アルカン酸を使用することもできる。従って総合的に、低級アルカン酸を中和するのに要する塩基を包含して、アルキルフェノール1モル当たり約0.3〜2モルの金属塩基を使用する。好適な場合、低級アルカン酸対アルキルフェノールおよび金属塩基対アルキルフェノールの比を使用し、アルキルフェノール1モル当たり約0.55〜1.2モルの金属塩基の総金属塩基対アルキルフェノールの比範囲を使用することができる。明白なように、この追加の金属塩基は、酸の代わりにアルカン酸の塩が使用される場合には不必要である。反応はまた代表的に、好ましくは適合性液状稀釈剤、好ましくは低粘度の鉱物油または合成油中で行うこともできる。反応は好ましくは、硫黄の完全な反応を確保するのに充分な長さの時間をかけて行う。このような生成物の合成では一般に、ポリオール促進剤と共に二酸化炭素を使用する必要があることから、このことは高度TBN生成物が望まれる場合に特に重要である。従って、反応混合物中に残留する全ての未反応硫黄は過塩基性化工程中にポリオール促進剤の有害な酸化生成物の生成を触媒する。
【0129】
中和を別の工程として行う場合、中和および引続く硫化の両方は前記と同一の条件下に行う。場合により、特定の硫化触媒、例えば米国特許第4,744,921号(この特許全体の記載を引用してここに組入れる)に記載の触媒を低級アルカン酸と共に中和−硫化反応に使用することができる。硫化触媒の使用は一般にいずれか有利な結果、例えば反応時間の短縮をもたすらすが、触媒が招く価格の増加および/またはハライド触媒または硫化アルカリの場合に望ましくない残留物の存在により相殺される。特に、酢酸および/またはプロピオン酸を単純にギ酸と共に使用し、および反応温度を高めることによって優れた反応速度を得ることができる。
【0130】
一例において、硫化操作は操作全体を通して水の存在下に行う。これは粗製沈着物の減少(より効果的な濾過)、少ない薄煙、および改善された水安定性をもたらす。
【0131】
好ましくは、少なくとも50重量%の促進剤を少なくとも130℃の温度で反応に添加する。これは一層効果的な濾過をもたらす。
【0132】
高度TBN生成物が望まれる場合、硫化フェノレート生成物は炭酸塩化により過塩基性化することができる。このような炭酸塩化は硫化フェナート生成物にポリオール促進剤、代表的にアルキレンジオール、例えばエチレングリコール、および二酸化炭素を添加することによって都合よく行うことができる。追加の金属塩基をこの時点で添加することができ、および/または過剰量の金属塩基を中和工程に使用することができる。好ましくは、アルケニルスクシンイミドまたは中性または過塩基性第II族金属ヒドロカルビルスルホネートを中和−硫化反応混合物または過塩基性化反応混合物のどちらかに添加する。このスクシンイミドまたはスルホネートはアルキルフェノールおよびフェナート反応生成物の両方の溶解を助長し、従って使用する場合、初期反応混合物に添加すると好ましい。過塩基性化は代表的に、中程度のTBN生成物が望まれるか、または中程度のTBN生成物が望まれるかに応じて、160℃以上から190℃、好ましくは170℃〜180℃の範囲の温度において約W0.1〜4時間かけて行う。好ましくは、反応は反応混合物に気体状二酸化炭素を泡立てて通す単純な方法で行う。過剰の稀釈剤および過塩基性化反応中に生成される全部の水は反応期間中または反応後に蒸留によって除去すると好ましい。
【0133】
二酸化炭素は過塩基性化生成物を生成するための金属塩基と組合わせて反応系に使用し、代表的にアルキルフェノール1モル当たり約1〜3モルの範囲、好ましくはアルキルフェノール1モルあたり約2〜約3モルの範囲で使用する。好ましくは、過塩基性硫化アルキルフェナート中に配合されるCO
2の量は、約0.65:1〜約0.73:1のCO
2対金属重量比を提供する量である。過塩基性化に使用される過剰量を包含する金属塩基の全部を中和工程で添加するか、または第II族塩基の一部分は炭酸塩化に先立ち添加することができる。
【0134】
中程度のTBN生成物(TBN約150〜225)が望まれる場合、化学量論量または僅かに過剰量の金属塩基を中和工程で使用する;例えば低級アルカン酸を中和するのに要する量に加えて、アルキルフェノール1モル当たり塩基約0.5〜1.3モルを使用することができる。高度TBN生成物は代表的に、約1〜2.5、好ましくは約1.5〜2の金属塩基対アルキルフェノール、アルキルフェノール1モル当たり約0.2〜2、好ましくは0.4〜1モルの二酸化炭素の二酸化炭素モル比およびアルキレングリコール約0.2〜2、好ましくは0.4〜1.2モルを使用することによって生成される。それらの塩と比較し、低級アルカン酸が使用される場合、低級アルカン酸を中和するのに充分な追加量の金属塩基を使用しなければならない。前記したように、高度TBN生成物の製造に要する過剰量の金属塩基の全部を中和−硫化工程で添加することができ、またはアルキルフェノールを中和するのに要する以上の過剰量を中和工程で添加することができ、またはこれら2工程間にいずれかの割合で分割して添加することもできる。代表的に、非常に高度のTBN生成物が望まれる場合、金属塩基の一部分は過塩基性化工程で添加する。中和反応混合物または過塩基性化反応混合物は好ましくはまた、アルキルフェノールの重量に基づき約1〜20、好ましくは5〜15重量%の中性または過塩基性スルホネートおよび/またはアルケニルスクシンイミドを含有する。(一般に、高度TBNが望まれる場合、約250〜300の範囲のTBNが好ましい。)
【0135】
代表的に、これらの方法は僅かな圧力までの減圧下、すなわち、約25mmHg絶対圧〜850mmHg絶対圧の範囲の圧力下に行い、大気圧まで発泡を減少させる減圧下、例えば約40mmHg絶対圧〜760mmHg絶対圧で行う。
【0136】
硫化フェナートの一般的製法にかかわる追加の詳細はこの技術に係わる各種刊行物および特許を引用することができ、例えば米国特許第2,680,096号、同第3,178,368号および同第3,801,507号を引用することができる。関連記載およびこれらの特許を引用してその全体をここに組入れる。
【0137】
ここで詳細に本発明の方法で使用される反応剤および助剤について考察する。先ず、硫黄は全部の同素体を使用することができる。硫黄は溶融硫黄として、または固体として(例えば、粉末または顆粒)、または適合性炭化水素液体中の固体懸濁液としてのいずれかの形態で使用することができる。
【0138】
使用する金属塩基は、例えばカルシウム酸化物に比較してその取り扱いが容易であり、およびまた優れた結果をもたらすことから水酸化カルシウムが好ましい。別種のカルシウム塩基、例えばカルシウムアルコキシドもまた、使用することができる。
【0139】
一例において、金属塩基の混合物を使用する。例えば、実質的にカルシウムを含有するフェナートをアルカン促進剤を中和するのに正確に充分なリチウム塩基を用いて製造する。
【0140】
もう一つの例において、使用する金属塩基は、優れた結果をもたらすことから水酸化リチウムである。別種のリチウム塩基、例えばリチウムアルコキシドを使用することもできる。
【0141】
本発明において使用することができる適当なアルキルフェノールは、そのアルキル置換基が生成する過塩基性硫化アルキルフェナート組成物を油溶性にするのに充分な炭素原子数を含有する化合物である。油溶性は1個の長鎖アルキル置換基により、またはアルキル置換基の組合せにより付与することができる。代表的に、本方法で使用されるアルキルフェノールは相違するアルキルフェノール、例えばC
1〜C
24アルキルフェノールの混合物であることができる。275またはそれ以下のTBNを有するフェナート生成物が望まれる場合、100%ポリプロピニル置換フェノールを使用すると経済的に有利である。これはポリプロピニル置換フェノールが市販されており、また一般に安価であることによる。さらに高度のTBNフェナート生成物が望まれる場合、好ましくはアルキルフェノールの約25〜100モルパーセントが炭素原子15〜35個を有する直鎖状アルキル置換基を有し、およびその約75〜0モル%がそのアルキル基が炭素原子9〜18個を有するポリプロペニルである。さらに好ましくは、アルキルフェノールの約35〜100モル%において、そのアルキル基は炭素原子15〜35個を有する直鎖アルキルであり、およびアルキルフェノールの約65〜0モル%において、そのアルキル基は炭素原子9〜18個を有するポリプロペニルである。主要な直鎖状アルキルフェノールの量を増加して使用すると、一般に低い粘度を特徴とする高度TBN生成物が得られる。他方で、ポリプロペニルフェノールは一般に、主要直鎖状アルキルフェノールに比較してより経済的であるが、過塩基性硫化アルキルフェナート組成物の製造にポリプロペニルフェノールを75モル%より多い量で使用すると、一般に望ましくない高粘度の生成物が生成される。しかしながら、炭素原子9〜18個を有するポリプロペニルフェノールを75モル%またはそれ以下の量で使用し、および炭素原子15〜35個を有する直鎖アルキルフェノールを25モル%またはそれ以上の量で使用すると、許容できる粘度を有する一層経済的な生成物が可能になる。
【0142】
好ましくは、アルキルフェノールはパラ−アルキルフェノールまたはオルト−アルキルフェノールである。パラ−アルキルフェノールは過塩基性生成物が望まれる場合、高度に過塩基性の硫化アルキルフェナートの製造を促進するものと信じられることから、アルキルフェノールは好ましくは、主としてパラ−アルキルフェノールであって、アルキルフェノールの約45モル%より多くない量がオルト−アルキルフェノールである;さらに好ましくはアルキルフェノールの約35モル%より多くない量がオルト−アルキルフェノールである。アルキル−ヒドロキシトルエンまたはキシレン、ならびに少なくとも1個の直鎖状アルキル置換基に加えて1個または2個以上のアルキル置換基を有する別種のアルキルフェノールもまた、使用することができる。
【0143】
一般に、本発明の方法はアルキルフェノールの選択に新しい因子または臨界点を導入するものではなく、従ってアルキルフェノールの選択は潤滑油組成物に望まれる性質、特にTBNおよび油溶性および従来技術および類似の1種および/または2種以上の硫化過塩基性化操作に用いられる臨界点に基づくことができる。一例として、実質的に直鎖状アルキル置換基を有するアルキルフェノールの場合、アルキルフェナート組成物の粘度はそのフェニル環に結合しているアルキル鎖の位置、例えば末端結合であるか、または中央結合であるかによって影響される。このことおよび適当なアルキルフェノールの選択および製造に係わる追加の情報は、例えば米国特許第5,024,773号、同第5,320,763号、同第5,318,710号および同第5,320,762号から得ることができ、これら全部をそれら全体を引用することによってここに組入れる。
【0144】
補助的硫化触媒、例えば米国特許第4,744,921号で望まれているような触媒を使用する場合、アルキルフェノールに対して代表的に約0.5〜10重量%、好ましくは約1〜2重量%の量で使用する。好適な例において、硫化触媒は反応混合物に液体として添加する。これは硫化触媒を溶融硫黄に溶解するか、または反応へのプレミックスとしてアルキルフェノールに溶解することによって達成することができる。
【0145】
本発明による高度TBN過塩基性硫化アルキルフェナート組成物の製造に使用される過塩基性化方法はポリオール促進剤、代表的にC
2〜C
4アルキレングリコール、好ましくはエチレングリコールを過塩基性化工程でまた使用する。
【0146】
適当な第II族金属中性または過塩基性ヒドロカルビルスルホネートは天然または合成ヒドロカルビルスルホネート、例えば石油スルホネート、合成アルキル化芳香族スルホネートまたはポリイソブチレンから誘導されるもののような脂肪族スルホネートを包含する。これらのスルホネートは当技術で周知である(フェナートとは異なり、「正」スルホネートは中性であり、従って中性スルホネートと称される)。ヒドロカルビル基はスルホネート分子を油溶性にするのに充分な炭素原子を有していなければならない。好ましくは、ヒドロカルビル部分は少なくとも20個の炭素原子を有し、芳香族または脂肪族であることができるが、通常アルキル芳香族である。性質として芳香族であるカルシウム、マグネシウムまたはバリウムスルホネートを使用すると最も好ましい。このようなスルホネートはカルシウム塩基を溶液中に保持することによって過塩基性化の促進に容易に使用することができる。
【0147】
本発明の方法で使用するのに適するスルホネートは代表的に、芳香族基を有する、通常モノ−またはジ−アルキルベンゼン基を有する石油フラクションをスルホネート化し、スルホン酸物質の金属塩を生成する。これらのスルホネートは任意に、過剰量の第II族金属水酸化物または酸化物および任意に二酸化炭素を添加することによって過塩基性化し、約400またはそれ以上の全塩基数を有する生成物を得ることができる。カルシウム水酸化物または酸化物は基本の過塩基性スルホネートの生成に最も汎用される。
【0148】
使用する場合、第II族金属中性または過塩基性ヒドロカルビルスルホネートはアルキルフェノールに対し約1〜20重量%、好ましくは約1〜10重量%の量で使用する。生成物を船舶クランクケース用潤滑油組成物として使用しようとする場合、前記第II族金属中性または過塩基性ヒドロカルビルスルホネートの使用は、スルホネートを過塩基性硫化アルキルフェノールアルキルフェナートと組合わせてこのような組成物に使用すると有利であることから特に魅力的である。
【0149】
別様に、第II族金属中性または過塩基性ヒドロカルビルスルホネートの代わりに、またはこれと組合わせて使用する場合、アルケニルスクシンイミドを使用することができる。アルケニルスクシンイミドは当技術で周知である。アルケニルスクシンイミドはポリオレフィンポリマー−置換無水コハク酸とアミン、好ましくはポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である。ポリオレフィンポリマー−置換無水コハク酸はポリオレフィンポリマーまたはその誘導体と無水マレイン酸との反応によって得られる。このようにして得られた無水コハク酸をアミン化合物と反応させる。アルケニルスクシンイミドの製造は当技術で度々開示されている。例えば米国特許第3,390,082号、同第3,219,666号および同第3,172,892号を参照することができ、これら記載を引用してここに組入れる。アルキルスクシンイミドは「アルケニルスクシンイミド」の用語の範囲に包含されるものとする。無水アルケニルコハク酸のアルケニル基はアルケン、好ましくはポリイソブテンから誘導され、アルケン(例えば、イソブテン)を重合させ、その組成が広く変化していることができるポリアルケンを生成することによって得られる。ポリアルケン中、すなわち無水コハク酸のアルケニル置換基の炭素原子の平均数は30またはそれ以下〜250またはそれ以上の範囲であることができ、約400またはそれ以下〜3,000またはそれ以上の数平均分子量が得られる。好ましくは、ポリアルケンは約600〜約1,500の数平均分子量を有すると共に、ポリアルケン分子当たりの炭素原子の平均数は約50〜約100の範囲である。さらに好ましくは、ポリアルケン分子中の炭素原子の平均数は約60〜約90の範囲であり、および数平均分子量は約800〜1,300の範囲である。アルケニルスクシンイミドおよび無水コハク酸先駆化合物の製造に係わる追加の情報は、例えば米国特許第4,744,921号およびでそこに引用されている刊行物に見出すことができる。
【0150】
本方法に少量の不活性炭化水素稀釈剤を使用し、反応混合物および生成物の混合および取り扱いを容易にすると一般に有利である。代表的に、潤滑油組合せ中の生成物の使用に対するその明白な適応性から、この目的には鉱油が使用される。使用することができる適当な潤滑油稀釈剤は、例えば精製100N、すなわちCit−Con 100Nおよび水素処理した100N、すなわちRLOP 100Nなどを包含する。不活性炭化水素稀釈剤は好ましくは、100℃で約1〜約cStの粘度を有する。
【0151】
過塩基性硫化アルキルフェナートの一般的製造において、解乳化剤をしばしば添加し、過塩基性硫化アルキルフェナートの水素分解に対する安定性を高めることができ、所望により、本方法でも同様に使用することができる。使用することができる適当な解乳化剤は、例えば非イオン性洗剤、例えば商標名Triton X−45およびTriton X−100としてRohm and Hass(Philadelphia、Pa)により販売されている洗剤およびエトキシル化p−オクチルフェノールなどを包含する。別種の適当に市場で入手することができる解乳化剤はGAF Corporation(New York、N.Y.)から入手することができるIgepal CO−610を包含する。使用する場合、解乳化剤は一般に、アルキルフェノールに対し0.1〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%の量で添加される。
【0152】
本発明において使用されるフェナートはまた、以下に記載するとおりにして製造することもできる。硫化金属フェナートは2工程操作計画によって製造される。この2工程法の単工程法に優る或る利点は硫黄反応剤と相溶性溶媒との望ましくない副反応を減少させ、塩基保有性を改善することを包含する。
【0153】
第一工程において、アルキル基中に炭素8〜35個を有するアルキル化フェノールを硫黄および少量のアルカリ土類金属酸化物または水酸化物および相溶性溶媒、好ましくはエチレングリコールと接触させる。アルキルフェノール、金属塩基および硫黄の反応は実質的に、下記化学式に示されているように進行する:
【0155】
式中、Rは炭素8〜35個を有するアルキル基であり、xは1〜5の整数であり、nは0〜15の整数であり、YはHまたは
〜Mから選択される同一または相違する成分であり、ここでH対
〜Mの比はM対反応されるアルキルフェノールの比に比例し、およびMはアルカリ土類金属である。上記式はアルキルフェノール、硫黄および金属塩基間の反応および硫化された中間反応生成物の両方の広くかつ単純化された変化を示す。この中間体は唯一の構造のみを有する純粋な化合物ではなく、むしろ多数の硫化化合物の混合物であり、数種の変数を有する。上記式は金属原子が中間体の各分子中の少なくとも1個のフェノール基に結合しているか、または会合していることを表している。しかしながら、組成物は化合物の混合物であることから、若干の硫化アルキルフェノール分子は金属原子に結合することができないか、または会合することはできないものと認識される。これとは逆に、別の分子が金属塩基により中和されたフェノール基の全部を有することもある。金属原子は共有結合によってフェノール基に結合するか、またはイオン化することができ、中間体生成物混合物中にカチオンとして存在することもできる。従って、上記化学式は反応および中間反応生成物の一般的説明を示すものであって、本発明は示されている正確な構造に制限されるものではない。
【0156】
反応期間中の不活性反応稀釈剤内のアルキルフェノール、アルカリ土類金属、硫黄および相溶性溶媒の濃度は重要ではなく、反応剤、操作条件などの選択によって変えることができる。しかしながら、一般に、不活性反応媒質内の各種成分の濃度は下記表Iに示されているように変えられる。
【0158】
1.反応稀釈剤の除去
各種成分のモル比は本発明の実施において重要な観点であり、最終硫化金属フェナートにおける臨界的硫黄対金属比を実現するために従わなければならない。この比は下記のとおりに維持されるべきである:アルキルフェノール1モル当たり、硫黄1〜5モル、好ましくは1.5〜3モル、アルカリ土類金属塩基0.03〜1.5モル、好ましくは0.2〜1モル、および相溶性溶媒0.1〜4モル、好ましくは0.2〜1モル。優れた結果は、アルキルフェノール1モル当たり、硫黄2モル、アルカリ土類金属塩基0.3モルおよび相溶性溶媒0.2モルの場合に実現することができる。好適な第一工程の操作法において、硫黄、アルキルフェノールおよびアルカリ土類金属塩基をベントラインおよび減圧ポンプを備えた反応容器に供給する。この反応器内容物を大気圧下に250〜285F°に加熱し、次いで反
応に相溶性溶媒を16〜30分かけて供給する。この期間中に、硫化水素および水を蒸発させ、ベントラインを経て反応系から除去する。反応は1〜2時間の期間にわたり265〜285F°に維持し、次いでさらに3〜5時間にわたり350〜365F°の温度に加熱する。この期間の終了時点で、反応器内容物を冷却させ、次いで反応稀釈剤を反応器に供給する。
【0159】
この時点で、硫化中間体は或る種の元素またはボリスルフィド硫黄(一般に、2〜10重量パーセント)を含有し、第二操作工程において使用する準備ができている。しかしながら、濾過によりいずれか特定の物質を除去することができ、または別の精製工程に付すことができ、または後刻の使用にあてて保存することができる。
【0160】
上記操作工程は連続法またはバッチ式操作法のどちらによっても行うことができるが、説明のために下述する。
【0161】
第二操作工程において、硫化中間体を追加量のアルカリ土類金属塩基および相溶性溶媒と接触させる。第一工程と同様に、この工程はバッチ式または連続式操作方法により行うことができる。例示の目的で、好適なバッチ式操作を行う。硫化中間体を反応溶媒、通常稀釈油、アルカリ土類金属塩基と共に反応器に供給する。これら3種の成分を激しく撹拌し、金属塩基を混合物全体に分散させる。その後、相溶性溶媒を混合物中に導入し、発熱反応を触媒させる。反応媒質と接触すると、硫化水素および水蒸気が蒸発し始める。これらは直ちに、頭頂部から排除する。硫化水素および水蒸気の除去の遅延は相溶性溶媒、例えばエチレングリコールの一部分のグリコール酸、シュウ酸などへの酸化を引き起こす。これらは次いで、金属塩基と反応し、生成物の塩基性保留を低下させる。
【0162】
この工程に使用することができる反応条件は250〜450F°、好ましくは275〜400F°の温度および2〜15p.s.i.a、好ましくは2〜10p.s.i.aの圧力を含むことができる。硫化中間体の金属塩基による中和に要する時間は選択される反応剤および相溶性溶媒、使用される濃度、反応条件などに応じて変わる。しかしながら、一般に、反応は約4〜10時間後に完了する。反応の終了時点または引続く時点において、相溶性溶媒は生成物から留去すると好ましい。
【0163】
反応混合物内の硫化中間体、アルカリ土類金属塩基および相溶性溶媒の濃度は本発明の実施にとって臨界的ではないが、ただし生成物の混合および押出しを容易にするために使用すると好ましい。他方、成分比は重要であり、下記範囲内で存在すべきである、すなわち使用する原料アルキルフェノール1モル当たりアルカリ土類金属塩基0〜1.45モル、好ましくは0.2〜0.6モルおよび総相溶性溶媒0.5〜4モル、好ましくは0.5〜2モルの範囲である。下記表2は使用する成分の比を例示するものである:
【0165】
1.反応稀釈剤の除去
2.SIは硫化中間体を表す。
【0166】
最終生成物は0.5〜15重量%の範囲の金属含有量および3.5〜10重量%の硫黄含有量を有する。硫黄対金属のモル比は10:4から変化し、好ましくは1.1〜4,さらに好ましくは1.1〜2である。硫化フェナートのアルカリ度値(ASTM 試験D−2896)はポンプ操作などにより35〜200mgKOH/グラム、さらに通常90〜150mgKOH/グラムの範囲にある。鉱物潤滑油は好適である。
【0167】
アルキル化フェノール
本発明に有用なアルキル化フェノールは下記式で表される:
【化4】
【0168】
式中、Rは炭素原子8〜35個、好ましくは炭素原子10〜30個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基であることができる。R基またはアルキル基は芳香族フェノール環のすべての位置、すなわちオルト、メタまたはパラに存在することができる。好ましくは、R基は主としてメタまたはパラに存在する。すなわち、R基の40%未満がオルト位置に存在し、好ましくはR基の15%未満がオルト位置に存在する。特に好ましいアルキル化フェノールはポリプロピレン基に炭素原子9〜20個を有するポリプロピレン基である。適当なアルキル基の例は、オクチル、デシル、ドデシル、エチルヘキシル、トリアコンチルなどを包含し、これらの基は石油炭化水素、例えばホワイトオイル、ワックス、オレフィンポリマー(例えば、ポリプロピレン、ポリブチレンなど)などから誘導される。
【0169】
特定の構造式の一つは上記式で表されるが、アルキル化フェノールの混合物を本発明の実施に成功裏に使用することができるものと認識されるべきである。
【0170】
アルカリ土類金属塩基
数種のアルカリ土類金属水酸化物または酸化物を本発明で使用することができる。化合物例は水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化バリウムなどを包含する。相違するアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物の組合せは、処理反応にとって適当であり、処理反応を干渉しないか、または反応しない水不溶性有機媒質であることもできる。特に適当な反応稀釈剤は100F°において約100SUSの粘度を有する精製ミッド−コンチネンタル中性油である。
【0171】
別法として、フェナート洗剤は当技術で知られている別の方法であって、60〜200および200〜400の範囲のフェナート洗剤TBNをもたらす方法によって製造することができる。本発明の潤滑油添加剤組成物はまた、下記のその他の添加剤を含むことができる。これらの添加剤成分はいずれかの順序で配合することができ、また諸成分の組合せとして配合することもできる。
【0172】
その他の添加剤成分
下記添加剤成分は本発明で使用することができる成分の若干の例である。これらの添加剤の例は本発明を例示するものであって、本発明を制限しようとするものではない。
【0173】
A.金属洗剤
硫化または無硫化アルキルまたはアルケニルフェナート、合成または天然原料から誘導されるスルホネート、カルボキシレート、サリチレート、フェナレート、多ヒドロキシアルキルまたはアルケニル芳香族化合物の硫化または無硫化金属塩、アルキルまたはアルケニル芳香族スルホネート、硫化または無硫化アルキルまたはアルケニルナフテネート、アルカン酸の金属塩、アルキルまたはアルケニル多酸の金属塩、およびその化学的および物理的混合物。
【0174】
B.酸化防止剤
酸化防止剤は鉱物油の動作中の劣化傾向を減少させる。この劣化は金属表面上のワニス様沈着物およびスラッジなどの酸化生成物によるか、または粘度の増加により明白になる。酸化防止剤は、これらに制限されないものとして、フェノール型(フェノール系)酸化抑制剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチルデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−1,4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、2,6−ジ−tert−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)などを包含することができる。ジフェニルアミン型酸化防止剤は、これらに制限されないものとして、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミンおよびアルキル化アルファ−ナフチルアミンを包含する。別の種類の酸化防止剤は金属ジチオカルバメート(例えば、アエンジチオカルバメート)、およびメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)を包含する。酸化防止剤は一般に、エンジン油の総量当たり約0〜約10重量%、好ましくは0.05〜約3.0重量%の量で油中に配合する。
【0175】
C.抗磨耗/極限圧剤
それらの名前が意味するように、これらの助剤は移動する金属部分の磨耗を減少させる。このような助剤の例は、これらに制限されないものとして、ホスフェート、ホスファイト、カルバメート、エステル、硫黄含有化合物、モリブデン複合化合物、アエンジアルキルジチオホスフェート(一級アルキル、二級アルキルおよびアリール型)、硫化油、硫化イソブチレン、硫化ポリブテン、ジフェニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、および鉛ナフテネートを包含する。
【0176】
D.錆抑制剤(錆防止剤)
1)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
2)その他の化合物:ステアリン酸およびその他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分的カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0177】
E.解乳化剤
アルキルフェノールおよびエチレンオキサイドの付加生成物、ポリエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0178】
F.摩擦改質剤
脂肪アルコール、1,2−ジオール、ホウ酸化1,2−ジオール、脂肪酸、アミン、脂肪酸アミド、ホウ酸化エステル、およびその他のエステル。
【0179】
G.多官能性添加剤
硫化オキシモリブデニウムジチオカルバメート、硫化オキシモリブデニウム有機ホスホロジチオエート、オキシモリブデニウムモノグリセライド、オキシモリブデニウムジエチレートアミド、アミン−モリブデニウム複合化合物、および硫黄含有モリブデニウム複合化合物。
【0180】
H.粘度指数改良剤または増粘剤
ポリメタクリレート型ポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、水素添加されたスチレン−イソプレンコポリマー、ポリイソブチレン、および分散剤型粘度指数改良剤。
【0181】
I.流動点分散剤
ポリメチルメタアクリレート。
【0182】
J.発泡抑制剤
アルキルメタアクリレートポリマーおよびジメチルシリコーンポリマー。
【0183】
K.金属脱活性化剤
ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、メルカプトベンゾチアゾール、チアジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾール。
【0184】
L.分散剤
アルケニルスクシンイミド、別種の有機化合物で修飾されているアルケニルスクシンイミド、エチレンカーボネートまたはホウ酸により後処理することによって修飾されているアルケニルスクシンイミド、ポリアルコールおよびポリイソブテニル無水コハク酸のエステル、フェナートサリチレートおよびそれらの後処理された類縁化合物、アルカリ金属または混合アルキル金属、ホウ酸アルカリ土類金属ボレート、水和アルカリ金属ボレートの分散物、アルカリ土類金属ボレートの分散物、ポリアミド無灰分散剤など、またはこのような分散剤の混合物。好ましくは、アルケニルスクシンイミドはポリアルケニルスクシンイミドである。さらに好ましくは、そのポリイソブテニル基が約1000〜約2300の分子量を有するポリイソブテニルスクシンイミド。アルケニルスクシンイミドは当技術で周知の方法に従い製造される。
【0185】
潤滑油組成物
態様の一つにおいて、本発明は前記潤滑油添加剤組成物および潤滑性粘度を有する油を含む潤滑油組成物に関する。
【0186】
潤滑性粘度の油
前記潤滑油添加剤組成物は一般に、動く部品、例えば内燃エンジン、ギア、およびトランスミッションに充分である基油に添加する。代表的に、本発明による潤滑油組成物は主要量の潤滑性粘度を有する油および少量の潤滑油添加剤組成物を含む。
【0187】
使用する基油は潤滑性粘度を有する広く種々の油の全部であることができる。このような組成物中に使用される潤滑性粘度を有する基油は鉱物油または合成油であることができる。40℃において少なくとも2.5cStの粘度および20℃以下、好ましくは0℃またはそれ以下の流動点を有する基油が望ましい。基油は合成または天然供給源に由来することができる。
【0188】
本発明における基油として使用する鉱物油は、例えばパラフィン系、ナフテン系および潤滑油組成物に常用されるその他の油を包含する。合成油は、例えば望ましい粘度を有する炭化水素合成油および合成エステルの両方、ならびに所望の粘度を有するその混合物を包含する。炭化水素合成油は、例えばエチレンの重合から生成される油、ポリアルファオレフィンまたはPAO油、またはフィッシャー−トロプッシュ(Fisher-Tropsch)法におけるような一酸化炭素と水素ガスを用いる炭化水素合成法から調製される油を包含することができる。有用な合成炭化水素油は、適当な粘度を有するアルファオレフィンの液状ポリマーを包含する。1−デセントリマーのようなC
6〜C
12アルファオレフィンの水素添加された液状オリゴマーは特に有用である。同様に、適当な粘度を有するアルキルベンゼン、例えばジドデシルベンゼンを使用するもできる。有用な合成エステルはモノカルボン酸およびポリカルボン酸のエステル、ならびにモノヒドロキシアルカノールおよびポリオールを包含する。代表的な例には、ジドデシルアジペート、ペンタエリスリトールテトラカプリエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジラウリルセバケートなどがある。モノおよびジカルボン酸およびモノおよびジヒドロキシアルカノールの混合物から生成される複合エステルを使用することもできる。鉱物油と合成油との配合物もまた、有用である。
【0189】
従って、基油は精製パラフィン系基油、精製ナフテン系基油、または潤滑性粘度を有する炭化水素油または非炭化水素油であることができる。基油はまた、鉱物油と合成油との混合物であることもできる。
【0190】
添加剤パッケージ
もう一つの態様において、本発明はカルボキシレート洗剤、第一フェナート洗剤、第二フェナート洗剤およびポリアルケニルスクシンイミドを含有するエンジン油用の添加剤コンセントレートに関する。もう一つの態様において、本発明は約60〜約200のTBNを有するカルボキシレート洗剤、約60〜200のTBNを有する第一フェナート洗剤、約200〜400のTBNを有する第二フェナート洗剤およびポリアルケニルスクシンイミドを含有するエンジン油用の添加剤コンセントレートに関する。前記のとおりの潤滑油添加剤組成物コンセントレートは実質的に不活性であって、通常液状の有機稀釈剤、例えば鉱物油、ナフサ、ベンゼン、トルエンまたはキシレン中に配合され、添加剤コンセントレートを形成しているコンセントレートまたは添加剤パッケージとして提供することができる。これらのコンセントレートは通常、このような稀釈剤を約1%〜約99重量%、一例では、約10%〜約90重量%の量で含有する。代表的に、稀釈剤としては100℃において約4〜約8.5cStの粘度、好ましくは100℃において約4〜約6cStの粘度を有する中性油を使用するが、合成油、ならびにその他の添加剤および最終潤滑油に適合することができる有機液体を使用することもできる。
【0191】
本発明の態様の一つは、ディーゼル機関車エンジンの操作方法に関し、この方法は主要量の潤滑性粘度を有する油および前記潤滑油添加剤パッケージを含む潤滑油組成物を用いてディーゼルエンジンを潤滑することを含み、このパッケージはカルボキシレート洗剤、第一フェナート洗剤、第二フェナート洗剤およびポリアルケニルスクシンイミドを含有する。
【0192】
本発明の態様の一つは、インランドマリーンエンジンの操作方法に関し、この方法は主要量の潤滑性粘度を有する油および前記潤滑油添加剤パッケージを含む潤滑油組成物を用いてインランドマリーンエンジンを潤滑することを含み、このパッケージはカルボキシレート洗剤、第一フェナート洗剤、第二フェナート洗剤およびポリアルケニルスクシンイミドを含有する。
【0193】
本発明の態様の一つは、TBN保留率の改良方法に関し、潤滑油組成物が主要量の潤滑性粘度を有する油および前記潤滑油添加剤パッケージを含み、このパッケージはカルボキシレート洗剤、第一フェナート洗剤、第二フェナート洗剤およびポリアルケニルスクシンイミドを含有する。
【実施例】
【0194】
基礎潤滑油組成物
潤滑油組成物は、そのポリイソブテニル基が2,300の分子量を有するポリイソブテニルスクシンイミド、フェナート洗剤の263TBN油コンセントレート、フェナート洗剤の114TBN油コンセントレート、マンニッヒ塩基アルキルフェノールのカルシウム塩、少なくとも1種の酸化防止剤、発泡抑制剤およびグループI基油を配合することによって製造した。
【0195】
比較例1〜8は基本的に基礎潤滑油組成物(Base Lubricating Oil Composition)(表1参照)を含んでいた。実施例1〜4(本発明の例)は基礎潤滑油組成物を含んでおり、少なくとも1種の単環型カルボキシレートの140TBN油コンセントレートまたはカルボキシレート洗剤の150TBN油コンセントレート(表2参照)を含んでいた。
【0196】
比較例の油および本発明による油はそれぞれ、B2−7で試験した。この試験は別名Union Pacific Oxidation Testとして知られている。この試験方法は下記で説明する。
【0197】
B2−7 Test/Union Pacific Oxidation Test
B2−7 Testは下記条件を伴う酸化試験である。
【0198】
【表3】
【0199】
B2−7 Testに従い被験油を300F°において96時間にわたり酸素を泡立てて通しながら加熱する。銅、鉄および鉛を油中に懸濁する。試料50mlを48時間、72時間および96時間の時点で採取する。48時間目および72時間目の試料に新鮮な油を補給する。油被験試料を塩基価、酸価、pHおよび鉛について評価する。
【0200】
【表4】
【0201】
【表5】
【0202】
【表6】
【0203】
【表7】
【0204】
【表8】
【0205】
比較例(比較例1−8)の試料および本発明の例の試料(実施例1−4)を全塩基数(TBN)減少について評価し、および油中に見出される鉛を部/百万(すなわち、Pbppm)で評価した。
【0206】
TBN減少の数値が高いほど、油中の塩基の枯渇は大きいことを示し、好ましくないものと考える。同様に、Pb(ppm)の数値が高いほど、鉛腐食が大きいことを示し、好ましくないものと考える。機関車エンジンに延長された期間にわたり使用するための油は、理想的なTBNを保留し、および鉛に対する腐食を示さない。
【0207】
B2−7 結果
試験結果に基づき、本発明による実施例1−4の潤滑油組成物がTBN減少について低い数値を示し、従って潤滑油中の塩基が比較例におけるほど大きく枯渇しないことを示すことは明白である。
【0208】
さらに、鉛腐食は実施例1−4である油の試料で減少されている。比較例1−8である油の鉛腐食結果と比較した場合、鉛腐食の量は特に低い。特に、実施例1−4(本発明による)の鉛腐食測定値は比較例における数値の10〜15%である鉛腐食測定値を示す。
【0209】
少なくとも2種のフェナート洗剤および少なくとも1種のカルボキシレート洗剤を含む潤滑油組成物はTBN保留および鉛腐食の両方の観点で本発明では使用されるカルボキシレートを含有しない油に優る有意の改善を示す。