【実施例】
【0041】
(実施例1)
この実施例では、アルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0042】
1.前処理:
1mmの厚みを有する市販のA5052アルミニウム合金プレートを15mm×80mm長方形シートに切断し、その後、それらを研磨機で研磨し、無水エタノールでクリーニングし、その後、40g/L NaOH水溶液に浸漬した。2分後、それらの長方形シートを水で洗浄し、乾燥させて、前処理されたアルミニウム合金シートを得た。
【0043】
2.表面処理1:
20重量%H
2SO
4溶液が入っている陽極酸化浴内に各アルミニウム合金シートを陽極として配置し、そのアルミニウム合金を20Vの電圧で、18℃で、10分間電気分解し、その後、そのアルミニウム合金シートをブロー乾燥させた。
【0044】
表面処理1後のアルミニウム合金シートの断面を金属顕微鏡によって観察して、5μmの厚みを有する酸化アルミニウム層がその電気分解されたアルミニウム合金シートの表面に形成されることを発見した。表面処理1後のアルミニウム合金シートの表面を電子顕微鏡によって観察して(
図2参照)、約40nmから約60nmの平均孔径および1μmの深さを有するナノ孔が前記酸化アルミニウム層内に形成されることを発見した。
【0045】
3.表面処理2
10重量%Na
2CO
3を含有する100mL水溶液(pH=12.2)をビーカーの中で調製した。工程(2)後のアルミニウム合金シートを20℃のその炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、5分後に取り出し、水が入っているビーカーに入れて1分間浸漬した。5サイクル後、最終回の水浸漬後に、アルミニウム合金シートをブロー乾燥させた。
【0046】
表面処理2後のアルミニウム合金シートの表面を電子顕微鏡によって観察して(
図3aおよび3b参照)、300nmから1000nmの平均孔径および4μmの深さを有する腐食孔がその浸漬されたアルミニウム合金シートの表面に形成されることを発見した。
図1に示されている構造に類似した酸化アルミニウム層中の二重層三次元細孔構造があること、および腐食孔がナノ孔と連通していることも観察された。
【0047】
4.成形:
乾燥させたアルミニウム合金片を射出成形用金型に挿入した。ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂と30重量%繊維ガラスとを含有する樹脂組成物を射出成形した。堅固な結合のアルミニウム合金と樹脂の複合材であるアルミニウム合金樹脂複合材を、成形品の取り出しおよび冷却後に得た。
【0048】
(実施例2)
この実施例では、以下のことを除いて、実施例1の方法と実質的に同じである方法によってアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0049】
表面処理1の工程において、20重量%H
2SO
4溶液が入っている陽極酸化浴内に各アルミニウム合金シートを陽極として配置し、そのアルミニウム合金を15Vの電圧で、18℃で、10分間電気分解し、その後、そのアルミニウム合金シートをブロー乾燥させた。
【0050】
約5μmの厚みを有する酸化アルミニウム皮膜の層が電気分解後に形成されること、および20〜40nmのサイズを有するナノ孔がその酸化アルミニウム層内に形成されることが観察された。そして、表面処理2後、300〜1000nmのサイズおよび4μmの深さを有する腐食孔が、その浸漬されたアルミニウム合金シートの表面内に形成されることが観察された。
図1に示されている構造に類似した酸化アルミニウム層中の二重層三次元細孔構造があること、および腐食孔がナノ孔と連通していることも観察された。そしてアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0051】
(実施例3)
この実施例では、以下のことを除いて、実施例1の方法と実質的に同じである方法によってアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0052】
表面処理1の工程において、20重量%H
2SO
4溶液が入っている陽極酸化浴内に各アルミニウム合金シートを陽極として配置し、そのアルミニウム合金を40Vの電圧で、18℃で、10分間電気分解し、その後、そのアルミニウム合金シートをブロー乾燥させた。
【0053】
約5μmの厚みを有する酸化アルミニウム皮膜の層が電気分解後に形成されること、および60〜80nmのサイズおよび1μmの深さを有するナノ孔がその酸化アルミニウム層内に形成されることが観察された。そして、表面処理2後、300〜1000nmのサイズおよび4μmの深さを有する腐食孔が、その浸漬されたアルミニウム合金シートの表面内に形成されることが観察された。
図1に示されている構造に類似した酸化アルミニウム層中の二重層三次元細孔構造があること、および腐食孔がナノ孔と連通していることも観察された。そしてアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0054】
(実施例4)
この実施例では、以下のことを除いて、実施例1の方法と実質的に同じである方法によってアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0055】
表面処理1の工程において、20重量%H
2SO
4溶液が入っている陽極酸化浴内に各アルミニウム合金シートを陽極として配置し、そのアルミニウム合金を20Vの電圧で、18℃で、15分間電気分解し、その後、そのアルミニウム合金シートをブロー乾燥させた。
【0056】
約7μmの厚みを有する酸化アルミニウム皮膜の層が電気分解後に形成されること、および40〜60nmのサイズおよび3μmの深さを有するナノ孔がその酸化アルミニウム層内に形成されることが観察された。そして、表面処理2後、300〜1000nmのサイズおよび4μmの深さを有する腐食孔が、その浸漬されたアルミニウム合金シートの表面内に形成されることが観察された。
図1に示されている構造に類似した酸化アルミニウム層中の二重層三次元細孔構造があること、および腐食孔がナノ孔と連通していることも観察された。そしてアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0057】
(実施例5)
この実施例では、以下のことを除いて、実施例1の方法と実質的に同じである方法によってアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0058】
表面処理1の工程において、20重量%H
2SO
4溶液が入っている陽極酸化浴内に各アルミニウム合金シートを陽極として配置し、そのアルミニウム合金を15Vの電圧で、18℃で、15分間電気分解し、その後、そのアルミニウム合金シートをブロー乾燥させた。
【0059】
約7μmの厚みを有する酸化アルミニウム皮膜の層が電気分解後に形成されること、および20〜40nmのサイズおよび3μmの深さを有するナノ孔がその酸化アルミニウム層内に形成されることが観察された。そして、表面処理2後、300〜1000nmのサイズおよび4μmの深さを有する腐食孔が、その浸漬されたアルミニウム合金シートの表面内に形成されることが観察された。
図1に示されている構造に類似した酸化アルミニウム層中の二重層三次元細孔構造があること、および腐食孔がナノ孔と連通していることも観察された。そしてアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0060】
(実施例6)
この実施例では、以下のことを除いて、実施例1の方法と実質的に同じである方法によってアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0061】
表面処理1の工程において、20重量%H
2SO
4溶液が入っている陽極酸化浴内に各アルミニウム合金シートを陽極として配置し、そのアルミニウム合金を40Vの電圧で、18℃で、15分間電気分解し、その後、そのアルミニウム合金シートをブロー乾燥させた。
【0062】
約7μmの厚みを有する酸化アルミニウム皮膜の層が電気分解後に形成されること、および60〜80nmのサイズおよび3μmの深さを有するナノ孔がその酸化アルミニウム層内に形成されることが観察された。そして、表面処理2後、300〜1000nmのサイズおよび4μmの深さを有する腐食孔が、その浸漬されたアルミニウム合金シートの表面内に形成されることが観察された。
図1に示されている構造に類似した酸化アルミニウム層中の二重層三次元細孔構造があること、および腐食孔がナノ孔と連通していることも観察された。そしてアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0063】
(実施例7)
この実施例では、以下のことを除いて、実施例2の方法と実質的に同じである方法によってアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0064】
5重量%Na
2CO
3を含有するpH=11.9の100mL水溶液をビーカーの中で調製した。工程(2)後のアルミニウム合金シートをその炭酸ナトリウム溶液に浸漬し、5分後に取り出し、水が入っているビーカーに入れて1分間浸漬した。5サイクル後、最終回の水浸漬後に、アルミニウム合金シートをブロー乾燥させた。
【0065】
約5μmの厚みを有する酸化アルミニウム皮膜の層が電気分解後に形成されること、および20〜40nmのサイズおよび3μmの深さを有するナノ孔がその酸化アルミニウム層内に形成されることが観察された。そして、表面処理2後、300〜600nmのサイズおよび2μmの深さを有する腐食孔が、その浸漬されたアルミニウム合金シートの表面に形成されることが観察された。
図1に示されている構造に類似した酸化アルミニウム層中の二重層三次元細孔構造があること、および腐食孔がナノ孔と連通していることも観察された。そしてアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0066】
(実施例8)
この実施例では、以下のことを除いて、実施例2の方法と実質的に同じである方法によってアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0067】
15重量%NaHCO
3を含有するpH=10の100mL水溶液をビーカーの中で調製した。工程(2)後のアルミニウム合金シートをそ
の溶液に浸漬し、5分後に取り出し、水が入っているビーカーに入れて1分間浸漬した。5サイクル後、最終回の水浸漬後に、アルミニウム合金シートをブロー乾燥させた。
【0068】
約5μmの厚みを有する酸化アルミニウム皮膜の層が電気分解後に形成されること、および20〜40nmのサイズおよび3μmの深さを有するナノ孔がその酸化アルミニウム層内に形成されることが観察された。そして、表面処理2後、300〜600nmのサイズおよび2μmの深さを有する腐食孔が、その浸漬されたアルミニウム合金シートの表面内に形成されることが観察された。
図1に示されている構造に類似した酸化アルミニウム層中の二重層三次元細孔構造があること、および腐食孔がナノ孔と連通していることも観察された。そしてアルミニウム合金樹脂複合材を調製した。
【0069】
(比較例1)
1.前処理
1mmの厚みを有する市販のA5052アルミニウム合金プレートを15mm×80mm長方形シートに切断し、その後、それらを研磨機で研磨し、無水エタノールでクリーニングし、その後、2重量%NaOH水溶液に浸漬した。2分後、それらの長方形シートを水で洗浄し、乾燥させて、前処理されたアルミニウム合金シートを得た。
【0070】
2.表面処理:
5重量%の濃度を有するpH=11.2のヒドラジン水和物水溶液に各アルミニウム合金シートを浸漬した。50℃で2分後、そのアルミニウム合金シートを取り出し、脱イオン水で洗浄した。30サイクル後、取り出し、60℃の乾燥オーブンで乾燥させた。
【0071】
3.成形
乾燥させたアルミニウム合金片を射出成形用金型に挿入した。ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂と30重量%繊維ガラスとを含有する樹脂組成物を射出成形した。堅固な結合のアルミニウム合金と樹脂の複合材であるアルミニウム合金樹脂複合材を、成形品の取り出しおよび冷却後に得た。
【0072】
(比較例2)
1.前処理:
1mmの厚みを有する市販のA5052アルミニウム合金プレートを15mm×80mm長方形シートに切断し、その後、それらを研磨機で研磨し、無水エタノールでクリーニングし、その後、2重量%NaOH水溶液に浸漬した。2分後、それらの長方形シートを水で洗浄し、乾燥させて、前処理されたアルミニウム合金シートを得た。
【0073】
2.表面処理:
20重量%H
2SO
4溶液が入っている陽極酸化浴内に各アルミニウム合金シートを陽極として配置し、そのアルミニウム合金を15Vの圧力で10分間電気分解し、その後、そのアルミニウム合金シートをブロー乾燥させた。
【0074】
3.成形
乾燥させたアルミニウム合金片を射出成形用金型に挿入した。ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂と30重量%繊維ガラスとを含有する樹脂組成物を射出成形した。堅固な結合のアルミニウム合金と樹脂の複合材であるアルミニウム合金樹脂複合材を、成形品の取り出しおよび冷却後に得た。
【0075】
性能試験
アルミニウム合金と樹脂の連結性:実施例1〜8および比較例1〜2で調製したアルミニウム合金樹脂複合材を汎用材料試験機に固定して、引張試験を行った。最大荷重下での試験結果を、アルミニウム合金と樹脂間の連結力値と考えることができ、それらの試験結果を表1に要約した。
【0076】
【表1】
【0077】
本開示のアルミニウム合金樹脂複合材中の樹脂とアルミニウム合金間の結合は、1211Nまでに達することができること、したがってその結合が卓越していることを、表1から見てとることができる。その一方で、既存のアルミニウム合金樹脂複合材中の樹脂とアルミニウム合金間の結合は、ほんの数十または数百ニュートンである。本開示におけるアルミニウム合金樹脂複合材の性能は、既存のものと比較して有意に向上されており、樹脂成形がより容易である。本開示におけるアルミニウム合金は、より強い強度を有する樹脂に堅固に結合するために追加の部分を必要とせず、金属基板のサイズおよびアルミニウム合金の外観に殆ど影響を及ぼさない。同時に、より大きい表面を有する腐食穴に直接樹脂を射出成形することがより容易である。合成樹脂に関する特別な要件もないので、その応用範囲は、より広い。また環境汚染がなく、大規模生産により適している。
【0078】
説明のための実施形態を示し、説明したが、上記実施形態が本開示を制限するとみなされるはずがないこと、ならびに本開示の精神、原理および範囲を逸脱することなくそれらの実施形態の変更、代替および修飾をなすことができることは、当業者には理解されよう。