特許第6063969号(P6063969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063969
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】不燃性化粧下地材及び不燃性化粧材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20170106BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   E04B1/94 V
   B32B9/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-14928(P2015-14928)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-137669(P2016-137669A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 崇
(72)【発明者】
【氏名】川邊 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 将之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大悟
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−073291(JP,A)
【文献】 特開2011−068853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
B32B 13/00−13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機材料からなる基材と、
上記基材の表面に設けられ、気体遮蔽効果を有する不燃性塗膜と、
上記不燃性塗膜の上に積層されたプライマー層と、
上記プライマー層の上に設けられ、樹脂および該樹脂よりも組成比が多い無機粉体を有する表面塗膜と
上記表面塗膜の上に設けられ、該表面塗膜に固定された表面化粧層と、を備え
上記表面化粧層の燃焼に伴い上記表面塗膜が燃えて、該表面化粧層の燃焼により上記不燃性塗膜が影響を受ける前の段階で該表面化粧層が剥がれるように構成されていることを特徴とする不燃性化粧下地材。
【請求項2】
請求項1において、
基材は火山性ガラス質複層板からなることを特徴とする不燃性化粧下地材。
【請求項3】
請求項1又は2において、
不燃性塗膜は、塗料化に伴って水中で膨潤する膨潤性を有する層状粘土鉱物と樹脂とを備えてなることを特徴とする不燃性化粧下地材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つにおいて、
不燃性塗膜、プライマー層及び表面塗膜は同じ又は同系の樹脂を含有していることを特徴とする不燃性化粧下地材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つにおいて、
表面塗膜での樹脂の組成比は15〜30重量%であることを特徴とする不燃性化粧下地材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの不燃性化粧下地材の表面に表面化粧層が設けられていることを特徴とする不燃性化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に施工される不燃性化粧、及びその下地となる不燃性化粧下地材に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部の建物が密集する地域では、火災が発生すれば延焼によって大きな被害が生じる可能性が高く、このような地域は防火地域や準防火地域とされ、建物はその階数や延べ面積に応じて要求される耐火性能を備えた基準による建築が義務付けられている。
【0003】
このような軒の耐火性を向上させるための建材の1つとして、従来、特許文献1に示されるように、基材の表面に、膨潤性無機化合物、水膨潤性物質及び接着剤が含有された不燃性の塗料組成物によって不燃性塗膜を形成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5550432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のものでは、基材の不燃化に対しては有効な効果が得られる。ところが、その反面、不燃性塗膜の表面に塗装等を行ったり接着剤によって化粧材を接着したりして表面化粧層を設けようとしても、その表面化粧層の不燃性塗膜に対する密着性が不足し、そのため、表面化粧層を設けることが困難となり、改良の余地がある。尚、不燃性塗膜に直接に化粧加工を行ってもよいが、その不燃性塗膜自体が割れて不燃性能が低下するので、良好な解決策とはなり得ない。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、基材の表面に不燃性塗膜が形成されている場合に、その不燃性塗膜に対し表面化粧層を密着させて、不燃性を有する化粧材が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成すべく、この発明では、基材表面の不燃性塗膜に順にプライマー層及び表面塗膜を形成し、その表面塗膜上に表面化粧層を設けるようにようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、燃性化粧下地材であって、無機材料からなる基材と、この基材の表面に設けられ、気体遮蔽効果を有する不燃性塗膜と、この不燃性塗膜の上に積層されたプライマー層と、このプライマー層の上に設けられ、樹脂および該樹脂よりも組成比が多い無機粉体を有する表面塗膜と、表面塗膜の上に設けられ、該表面塗膜に固定された表面化粧層と、を備えている。そして、表面化粧層の燃焼に伴い表面塗膜が燃えて、該表面化粧層の燃焼により不燃性塗膜が影響を受ける前の段階で該表面化粧層が剥がれるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
この第1の発明では、不燃性化粧下地材の表面塗膜上に表面化粧層が設けられて不燃性化粧材が得られる。そして、不燃性化粧下地材は、その基材表面に、気体遮蔽効果を有する不燃性塗膜が設けられているので、火災等の炎に不燃性化粧材の表面が曝されて、高温のガスが不燃性化粧材(不燃性化粧下地材)の表面から不燃性化粧材を直接的に透過して裏面に進入しようとしても、その高温ガスは基材の表面側において不燃性塗膜によって遮蔽されることとなる。このことで高温のガスの裏面側への進入が抑制され、その裏面側の温度の上昇を抑えて、不燃性を得ることができる。また、表面塗膜における無機粉体の組成比が樹脂よりも多いので、表面塗膜の表面に無機粉体によって多数の凹部が形成され、この凹部に表面化粧層が投錨効果によって強固に密着する。このことで、表面化粧層を不燃性塗膜に密着させることができる。さらに、第1の発明では、表面化粧層の燃焼に伴い表面塗膜が燃えて、該表面化粧層の燃焼により不燃性塗膜が影響を受ける前の段階で該表面化粧層が剥がれるように構成されているため、基材側の不燃性塗膜が基材から剥がれるのを防止して、その不燃性をより有効に確保することができる。
【0010】
しかも、仮に不燃性化粧材の最表面の表面化粧層が燃えたとしても、それに伴い表面塗膜も燃えて、表面化粧層が早い段階で剥がれるので、不燃性塗膜が基材から剥がれるのを防止して、その不燃性を確保することができる。
【0011】
さらに、不燃性化粧下地材は、基材表面の不燃性塗膜にプライマー層が積層され、その上に、表面化粧層を固定するための表面塗膜が設けられているので、この表面塗膜上に表面化粧層を形成することで、その表面化粧層が表面塗膜及びプライマー層を介して不燃性塗膜に密着するようになり、このことによって表面化粧層の不燃性塗膜への密着性を確保することができる。すなわち、基材表面に不燃性塗膜が形成されていても、その不燃性塗膜に表面化粧層を設けることができることとなる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、基材は火山性ガラス質複層板からなることを特徴とする。
【0013】
この第2の発明では、火山性ガラス質複層板はセメント系や珪酸カルシウム系の板材とは異なり、後者の板材が自由水や結合水を含んでいて、それら自由水や結合水が火災時の加熱に伴って蒸発し急速に収縮することにより、板材に割れが発生するのに対し、火山性ガラス質複層板はそのような割れの発生が生じ難く、熱による収縮も小さいので、割れや収縮等に起因して表面側の不燃性塗膜に亀裂が入ったり剥がれ落ちたりする可能性が極めて低くなる。よって上記不燃性塗膜による気体遮蔽効果を確実にかつ安定して発揮させることができる。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、不燃性塗膜は、塗料化に伴って水中で膨潤する膨潤性を有する層状粘土鉱物と樹脂とを備えてなることを特徴とする。
【0015】
この第3の発明では、層状粘土鉱物が塗料化に伴い水中で膨潤して層間が広がり、その状態で層同士が噛み合って樹脂により固定され、気体遮蔽効果が得られる。このことにより気体遮蔽効果を有する強固な不燃性塗膜が容易に得られる。
【0016】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、不燃性塗膜、プライマー層及び表面塗膜は同じ又は同系の樹脂を含有していることを特徴とする。
【0017】
この第4の発明では、不燃性塗膜、プライマー層及び表面塗膜に含まれている樹脂が同じ又は同系の樹脂であるので、それらは樹脂同士で馴染みが良くなり、よって表面化粧層の不燃性塗膜への密着性をさらに高めることができる。
【0018】
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれか1つにおいて、表面塗膜での樹脂の組成比は15〜30重量%であることを特徴とする。
【0019】
この第5の発明では、表面塗膜での樹脂の組成比は15〜30重量%であることから、表面塗膜の強度を保ちつつ、不燃性を担保することができる。
【0020】
第6の発明は不燃性化粧材に係り、この不燃性化粧材は、第1〜第5の発明のいずれか1つの不燃性化粧下地材の表面に表面化粧層が設けられていることを特徴とする。この第5の発明でも、第1の発明と同様の作用効果が得られる
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によると、不燃性化粧下地材又はその表面に表面化粧層が設けられる不燃性化粧材として、無機材料からなる基材の表面に、気体遮蔽効果を有する不燃性塗膜を設け、その不燃性塗膜の上にプライマー層を積層して、プライマー層上に、表面化粧層を固定するための表面塗膜を設けたことにより、火災等の炎に不燃性化粧材の表面が曝された際に、高温のガスが不燃性化粧材の表面からそれを直接的に透過して裏側に進入しようするのを基材表面側で不燃性塗膜によって遮蔽して、裏側の温度の上昇を抑えることができるとともに、表面化粧層を表面塗膜及びプライマー層を介して不燃性塗膜に密着させて、表面化粧層の不燃性塗膜への密着性を確保することができ、よって、不燃性化粧材の不燃性と不燃性塗膜に対する表面化粧層の密着性とを併せ図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態に係る不燃性化粧材の断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る不燃性化粧下地材の断面図である。
図3図3は、不燃性塗膜による気体遮蔽メカニズムを概略的に示す図である。
図4図4は、コーンカロリーメータによる発熱試験の結果を示す図である。
図5図5は、密着性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0024】
図1は本発明の実施形態に係る不燃性化粧材Aを示し、この不燃性化粧材Aは、図2に示す不燃性化粧下地材A1の表面に化粧加工を施したものである。不燃性化粧材Aは、建物において、不燃性に加えて表面化粧が必要な箇所に施工される例えば板状の建材として用いられる。
【0025】
図2に示すように、上記不燃性化粧材Aは、無機材料からなる矩形板状の基材1と、この基材1の表面に塗布により設けられた不燃性塗膜3とを有する。さらに、不燃性塗膜3の上にプライマー層7が積層され、このプライマー層7の上に表面塗膜8(上塗り塗膜)が設けられており、以上により不燃性化粧下地材A1が構成される。そして、この不燃性化粧下地材A1の表面塗膜8に表面化粧層10が設けられて、不燃性化粧材Aが構成されている。
【0026】
(基材)
上記基材1は、火山性ガラス質複層板(例えば大建工業(株)製の商品名「ダイライト」)からなることが望ましいが、その他に珪酸カルシウム板、スラグ石膏板を用いてもよい。基材1は、密度が例えば0.5〜1.5g/cm、厚さが3〜18mmのものが用いられる。
【0027】
(不燃性塗膜)
上記不燃性塗膜3は、気体遮蔽効果(ガスバリア効果)を有し、同効果を有する不燃性塗料を基材1の表面に塗布することによって形成される。尚、不燃性塗膜3の基材1への密着性を高めるために、基材1の表面に、下塗り塗料による下塗り塗膜を形成した後、その下塗り塗膜上に不燃性塗膜3を形成することが望ましい。
【0028】
上記不燃性塗膜3(不燃性塗料)は、例えば塗料化に伴って水中で膨潤する膨潤性を有する層状粘土鉱物と、その固定用の樹脂とを備えてなる。すなわち、層状粘土鉱物としては、例えばバーミキュライトやベントナイト等の高い膨潤性を有する層状粘土鉱物(珪酸塩鉱物)が用いられる。この層状粘土鉱物の膨潤性は、例えば第十五改正日本薬局方の膨潤力試験で20ml/2g以上のものであることが望ましい。
【0029】
不燃性塗料における層状粘土鉱物の組成比は、20〜80重量%であることが望ましい。20重量%を下回ると、不燃性能が低下して機能が発揮されない一方、80重量%を超えると、相対的に樹脂が入り難くなるためである。
【0030】
一方、樹脂は、例えばアクリル系、ウレタン系、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系等の樹脂が用いられる。この樹脂の組成比は、20〜50重量%であることが望ましい。20重量%を下回ると、塗膜の強度が低くなり過ぎて塗膜が剥がれる一方、50重量%を超えると、相対的に可燃物としての樹脂が増え過ぎ、不燃性を担保できなくなるためである。
【0031】
その他、不燃性塗料には、増量剤や着色剤として、炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の無機粉体を0〜60重量%程度加えてもよい。
【0032】
不燃性塗料の塗布量は、例えば固形分で30〜150g/m程度であればよく、設計に応じて適宜選択することができる。この塗布量が少な過ぎると、不燃性の効果が得られなくなり、多過ぎると塗布が困難になる。
【0033】
この不燃性塗膜3(不燃性塗料)が気体やガスを遮蔽するメカニズムについて概略的に図3により説明すると、図3(a)に示すように、粘土鉱物の粒子4は多数の薄片成分が層状に重なっており、塗料化する際に水が加えられると、図3(b)に示すように、塗料中で粘土鉱物粒子4が吸水して膨潤し、薄片成分5の層間が広がり、混合に伴って薄片成分5(層)が他の薄片成分5,5間(層間)に入り込むようになる。この塗料を基材1の表面(及び裏面)に塗布してドライヤーで乾燥すると、図3(c)に示すように、薄片成分5,5間(層間)が収縮して狭くなり、粒子4,4,…同士の薄片成分5が入り込んで噛み合うようになり、その状態が樹脂により固定され、図3(c)に矢印にて示すように可燃性の高温ガスが粒子4,4間を透過しようとしても、噛み合わさった薄片成分5,5,…により遮蔽され、気体遮蔽効果が得られるようになる。この不燃性塗膜3は水がかかっても破壊されることはない。
【0034】
(プライマー層)
プライマー層7は上記不燃性塗膜3の上に積層され、プライマー塗料の塗布によって形成される。プライマー層7は不燃性塗膜3の樹脂と表面塗膜8の樹脂との仲立ちをする機能を有する。プライマー層7としては、不燃性塗膜3(不燃性塗料)と密着性良い樹脂が選択でき、不燃性塗膜3の樹脂と同様に、例えばアクリル系、ウレタン系、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系等の樹脂が用いられる。不燃性塗膜3(不燃性塗料)の樹脂と同じ又は同系の樹脂を使用すれば、塗布した樹脂同士の結合が良好に行われて密着性が高くなるので好ましい。
【0035】
プライマー層7としては樹脂単体で使用することもできるが、不燃性能を加味して無機粉体を併用してもよい。
【0036】
プライマー層7での樹脂の組成比は20〜100重量%、無機粉体は0〜80重量%であることが望ましい。樹脂が少な過ぎると、プライマーとしての役割を果たさなくなる。
【0037】
プライマー塗料の塗布量は、例えば固形分で10〜30g/m程度であればよく、設計に応じて適宜選択することができる。この塗布量が少な過ぎると、プライマーの役割がなくなり、多過ぎると、燃えた場合に不燃性塗膜3にダメージを与える可能性が生じる。
【0038】
(表面塗膜)
表面塗膜8は、上記プライマー層7の上に設けられる上塗り塗膜であり、上塗り塗料の塗布によって形成され、不燃性化粧材A表面の表面化粧層10を固定するための機能を有する。
【0039】
表面塗膜8としては、樹脂にそれよりも組成比が多い無機粉体を加えた塗料を用いる。樹脂は、不燃性塗膜3及びプライマー層7の樹脂と同様に、例えばアクリル系、ウレタン系、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系等の樹脂が用いられる。不燃性塗膜3(不燃性塗料)及びプライマー層7の樹脂と同じ又は同系の樹脂を使用すれば、塗布した樹脂同士の結合が良好に行われて密着性が高くなるので好ましい。
【0040】
表面塗膜8での樹脂の組成比は15〜30重量%であることが望ましい。樹脂が15重量%を下回ると、表面塗膜8の強度が低くなって塗膜が剥がれる一方、30重量%を超えると、相対的に可燃物としての樹脂が増え過ぎ、不燃性を担保できなくなるためである。
【0041】
一方、無機粉体としては、例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、珪酸塩鉱物等が増量剤や着色剤としても用いられる。
【0042】
この無機粉体については、70〜85重量%であることが望ましい。70重量%よりも少ないと、表面化粧層10の密着性が不十分となり、85重量%を超えると、相対的に樹脂の割合が少なくなり、塗膜としての性能がなくなるためである。
【0043】
表面塗料の塗布量は、例えば固形分で30〜150g/m程度であればよく、設計に応じて適宜選択することができる。この塗布量が少な過ぎると、塗膜に欠点が出易く、その効果が出ない可能性が生じる一方、多過ぎると、塗装が困難になる。
【0044】
このように、表面塗膜8における無機粉体の組成比が樹脂よりも多いので、表面塗膜8の表面に無機粉体によって多数の凹部が形成され、この凹部に表面化粧層10の樹脂が投錨効果によって強固に密着する。このことで、表面塗膜8に表面化粧層10が固定され、その表面化粧層10が表面塗膜8ないし不燃性塗膜3に密着するようになっている。
【0045】
(表面化粧層)
表面化粧層10は、通常一般の化粧板の表面に加工されるものであり、例えば化粧塗料を表面塗膜8に塗布すること等によって形成される。
【0046】
したがって、上記実施形態において、不燃性化粧材Aは、不燃性化粧下地材A1の表面塗膜8上に表面化粧層10を設けることによって製造される。そして、不燃性化粧下地材A1の基材1表面に設けられている不燃性塗膜3は、塗料化に伴って水中で膨潤する膨潤性を有する層状粘土鉱物と樹脂とを備え、層状粘土鉱物が塗料化に伴い水中で膨潤して層間が広がり、その状態で層同士が噛み合って樹脂により固定され、気体遮蔽効果が得られる。このことにより気体遮蔽効果を有する強固な不燃性塗膜3が容易に得られる。
【0047】
このような気体遮蔽効果を有する不燃性塗膜3が不燃性化粧材Aの基材1の表面に設けられているので、その不燃性化粧材Aが建物に建材として施工された場合、火災等の炎に不燃性化粧材Aの表面が曝されて、高温のガスが不燃性化粧材Aの表面からそれを直接的に透過して裏側に進入しようとしても、その高温ガスは基材1(不燃性化粧材A)の表面側で不燃性塗膜3によって遮蔽されることになる。その結果、高温のガスの不燃性化粧材Aの裏側への進入が抑制され、その裏側の空間の温度の上昇を抑えることができ、不燃性を確保することができる。
【0048】
また、不燃性化粧材Aの最表面の表面化粧層10が燃えたとしても、それに伴い表面塗膜8が燃えて、表面化粧層10が早い段階で剥がれ、その不燃性塗膜3に対する影響が低下する。このことで、基材1側の不燃性塗膜3が基材1から剥がれるのを防止して、その不燃性をより有効に確保することができる。
【0049】
そして、不燃性化粧材Aは、基材1の表面に不燃性塗膜3を形成しただけでよいので、そのコストが高くなることはなく、施工も容易となる。
【0050】
さらに、不燃性化粧下地材A1は、基材1表面の不燃性塗膜3にプライマー層7が積層され、その上に、表面化粧層10を固定するための表面塗膜8が設けられているので、この表面塗膜8上に表面化粧層10を形成することで、その表面化粧層10が表面塗膜8及びプライマー層7を介して不燃性塗膜3に密着するようになる。具体的には、例えば表面塗膜8の表面に、樹脂よりも組成比の多い無機粉体によって多数の凹部が形成され、この凹部に表面化粧層10の樹脂が投錨効果によって強固に密着する。このことで、表面化粧層10が表面塗膜8ないし不燃性塗膜3に密着して、表面化粧層10の不燃性塗膜3への密着性を確保することができる。すなわち、基材1表面に不燃性塗膜3が形成されていても、その不燃性塗膜3に表面化粧層10を設けることができる。
【0051】
しかも、不燃性塗膜3、プライマー層7及び表面塗膜8は同じ又は同系の樹脂を含有しているので、それらは樹脂同士で馴染みが良くなり、上記密着性をさらに高めることができる。すなわち、気体遮蔽効果を有する不燃性塗膜3は気体が透過し難い膜構造を有し、表面に設けられる樹脂の投錨効果もさほど期待できないので、密着性が悪くなっているのに対し、不燃性塗膜3、プライマー層7及び表面塗膜8の樹脂を同じ又は同系とすることで、樹脂同士の馴染みが良くなることを期待することができ、密着性が向上する。
【0052】
また、不燃性化粧材Aの基材1が火山性ガラス質複層板であると以下の作用効果が得られる。すなわち、この基材1がセメント系や珪酸カルシウム系の板材であると、これらの板材は、自由水や結合水を含んでいるので、それら自由水や結合水が火災時の加熱に伴って蒸発し急速に収縮することで、割れが発生する可能性がある。これに対し、火山性ガラス質複層板はセメント系や珪酸カルシウム系の板材とは異なり、熱収縮に強いロックウール繊維を主成分とし、自由水や結合水も少ないため、割れの発生、或いは収縮が生じ難くなる。このことで、割れや収縮等に起因して表面側の不燃性塗膜3に亀裂が入ったり剥がれ落ちたりする可能性が極めて低くなり、不燃性塗膜3による気体遮蔽効果を確実にかつ安定して発揮させることができる。
【0053】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、表面化粧層10を化粧塗料の塗布によって形成するようにしているが、接着剤によって化粧シート等の表面化粧材を接着して表面化粧層10としてもよい。その場合、化粧塗料と同様に接着剤の不燃性塗膜3に対する密着効果があるので、同様の作用効果が得られる。
【実施例】
【0054】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0055】
(実施例)
膨潤性を有する層状粘土鉱物(珪酸塩鉱物)として、ベントナイト及びバーミキュライト50重量%と、固定用の樹脂としてアクリル樹脂を35重量%とに、無機粉体として炭酸カルシウムを15重量%添加し、水を加えて塗料(不燃性塗料)を調合した。この調合した不燃性塗料を、基材としての厚さ6mmで密度0.75g/cmの火山性ガラス質複層板(大建工業(株)製の商品名「ダイライト」)の表面にフローコーターを用いて固形分で40g/m塗布して不燃性塗膜を形成した。この不燃性塗膜の上に、プライマー層として、アクリル樹脂を単体で固形分20g/mとなるように塗布した。さらに、樹脂としてアクリル樹脂を20重量%と、無機粉体としての炭酸カルシウムを80重量%とを混ぜて上塗り塗料を調合し、この上塗り塗料をプライマー層の上にフローコーターにより固形分で75g/m塗布して表面塗膜を形成した。この表面塗膜に表面化粧層として、秤量70g/mのポリサンドシートを接着し、実施例(不燃性化粧材)のサンプルを得た。
【0056】
(比較例1)
また、実施例の不燃性塗膜に直接に同様のポリサンドシートを接着して化粧加工を施したものを比較例1のサンプルとした。
【0057】
(比較例2)
また、実施例の不燃性塗膜にプライマー層を形成せずに表面塗膜のみを形成し、その上に同様のポリサンドシートを接着して化粧加工を施したものを比較例2のサンプルとした。
【0058】
(コーンカロリーメータによる発熱試験)
上記実施例及び比較例1の各サンプルに対し、コーンカロリーメータによる20分の発熱試験を行った。この試験は、ISO5660基準による試験であり、判定基準として、総発熱量8MJ/m以下となる時間が不燃材料、準不燃材料及び難燃材料のレベルに応じてそれぞれ20分、10分及び5分とされている。その結果を図4に示す。
【0059】
この試験結果を見ると、比較例1は、コーンカロリーメータによる20分の発熱試験で総発熱量8MJ/mを超えていて、不燃材料に合格していない。
【0060】
これに対し、実施例は、総発熱量5.6MJ/mで不燃材料の基準を満たしており、不燃性能を得ることができることが判る。すなわち、層状粘土鉱物が基材表面にガスバリア性の高い不燃性塗膜を形成するため高温ガスが基材を透過して裏面に抜け難くなり、このことによって総発熱量が抑えられていることが裏付けられている。
【0061】
(密着性試験)
上記実施例、比較例1及び比較例2について5枚ずつ煮沸試験を行い、その後の剥離の有無を判別して密着性を調べた。その結果を図5に示す。
【0062】
この結果を見ると、不燃性塗膜にポリサンドシートを直接に接着した比較例1は、5枚全部に不燃性塗膜とポリサンドシートの間で剥離が見られた。また、不燃性塗膜に直接に上塗り塗料を塗布して表面塗膜を形成した比較例2は、5枚中3枚が剥離し、それらは不燃性塗膜と表面塗膜との間で剥離していた。
【0063】
これに対し、プライマー層を形成してプライマー処理した実施例は、剥離が全く見られなかった。このことで、表面化粧層の不燃性塗膜に対する密着性が高いことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、火災時に高温のガスが不燃性化粧材の表面からそれを直接的に透過して裏側に進入しようするのを基材表面側で不燃性塗膜により遮蔽できるとともに、密着性の低い不燃性塗膜に対し表面化粧層を強固に密着させることができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0065】
A 不燃性化粧材
A1 不燃性化粧下地材
1 基材
3 不燃性塗膜
7 プライマー層
8 表面塗膜
10 表面化粧層
図1
図2
図3
図4
図5