(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6063970
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】排気ガス再処理装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
F01N3/28 311J
F01N3/28 301U
F01N3/28 311M
F01N3/28 311D
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-15279(P2015-15279)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2015-161302(P2015-161302A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2015年1月30日
(31)【優先権主張番号】10 2014 203 495.7
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513212291
【氏名又は名称】エーバーシュペッヒャー・エグゾースト・テクノロジー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】ペーター カスト
【審査官】
山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−073322(JP,U)
【文献】
特開昭59−215914(JP,A)
【文献】
特開昭63−090612(JP,A)
【文献】
実開平02−126016(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0278265(US,A1)
【文献】
米国特許第05068637(US,A)
【文献】
特開平06−264734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
B01J 33/00−35/12
B01D 46/00−46/54,53/00−83/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス再処理用の少なくとも1つのセラミック基板体(3)を管状のハウジング(2)内に設けた排気ガス再処理装置(1)を製造する製造方法であって、
第1基板体(3)と第1ベアリングマット(8)とを、排気ガスの流れ方向(7)とは逆となる挿入方向(27)から、前記ハウジング(2)に軸方向に挿入し、前記第1ベアリングマット(8)により前記第1基板体(3)を周方向に囲み、前記第1基板体(3)と前記ハウジング(2)との間で径方向に前記第1ベアリングマット(8)に予荷重をかけて、前記第1基板体(3)を前記第1ベアリングマット(8)によりハウジング(2)に取り付ける工程と、
周方向において中断されて、径方向への押付が可能に弾性変形する中断箇所(17)を有する支持リング(14)と、前記第1基板体(3)に対向する部分を開放した状態で前記支持リング(14)により保持されて軸方向に弾性を有する環状の支持エレメント(15)とを有する軸方向支持部(13)を、前記第1基板体(3)及び第1ベアリングマット(8)の挿入後に、前記挿入方向(27)から前記ハウジング(2)に軸方向に挿入する工程と、
前記支持エレメント(15)が前記第1基板体(3)に接触し、予め定められた軸方向の力(28)が前記支持エレメント(15)の弾性により前記第1基板体(3)に伝達される位置において、前記中断箇所(17)による弾性変形で前記支持リング(14)が前記ハウジング(2)に対して径方向に押し付けられた状態として、前記軸方向支持部(13)を前記ハウジング(2)に対して位置決めする工程と、
前記軸方向支持部(13)を前記位置に位置決めした状態で前記支持リング(14)を前記ハウジング(2)に溶接して、前記軸方向支持部(13)をハウジング(2)に固定する工程とを有する、排気ガス再処理装置(1)を製造する製造方法。
【請求項2】
前記支持リング(14)が、前記支持エレメント(15)を保持する保持領域(23)と、前記ハウジング(2)への溶接用に設けられる固定領域(22)とを有するものとし、前記固定領域(22)により前記ハウジング(2)に対する前記軸方向支持部(13)の前記位置決めを行い、
前記軸方向支持部(13)が、前記ハウジング(2)と前記第1基板体(3)との間で径方向に形成される環状の空隙(24)を形成するものとし、前記固定領域(22)を、
前記空隙(24)内で前記軸方向に前記第1基板体(3)側にオフセットさせて配置し、このオフセットにより配置した位置で、前記固定領域(22)を前記ハウジング(2)に溶接することで、前記ハウジング(2)に対する前記支持リング(14)の溶接を行う請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記軸方向支持部(13)に面する前記第1ベアリングマット(8)の軸方向の端部(25)を、前記支持エレメント(15)に面する前記第1基板体(3)の軸方向の端面(26)から軸方向にオフセット配置し、
前記第1ベアリングマット(8)の前記端部(25)により、前記固定領域(22)が軸方向に入り込んだ状態の前記径方向空隙(24)を軸方向に制限する請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
第2基板体(4)を、前記挿入方向(27)から前記ハウジング(2)に軸方向に挿入し、当該第2基板体(4)を第2ベアリングマット(11)により前記ハウジング(2)に取付け、前記第2ベアリングマット(11)により前記第2基板体(4)を周方向に囲んで、前記第2基板体(4)とハウジング(2)との間で径方向に予荷重をかけて、前記軸方向において前記第1基板体(3)と前記第2基板体(4)との間に軸方向空隙(31)を形成し、前記軸方向空隙(31)において前記支持リング(14)により前記支持エレメント(15)を位置決めする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記軸方向支持部(13)を固定するための溶接は、前記ハウジング(2)の外側(29)からハウジング(2)を径方向に貫いて行われる請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記溶接は、レーザーウォブル溶接である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ハウジング(2)は、前記軸方向支持部(13)の領域において孔が開けられておらず、孔が開いていない状態で前記支持リング(14)に溶接される請求項5又は請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記支持エレメント(15)として、前記軸方向支持部(13)が軸方向の予荷重を受けている間に弾性的に変形する金網が用いられる請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記支持リング(14)は、前記支持エレメント(15)を径方向に位置決めするための外辺(19)及び内辺(20)と、支持エレメント(15)を軸方向の位置決めするための、前記外辺(19)を前記内辺(20)に接続したベース(21)とからなるU字形部(18)であり、外辺(19)が、内辺(20)を超えて軸方向に突出して、前記ハウジング(2)に溶接される請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
軸方向空隙(31)における前記軸方向支持部(13)の軸方向寸法(30)を、前記軸方向空隙(31)の軸方向空隙幅(32)より小さくし、前記空隙幅(32)は、軸方向の前記空隙(31)における前記軸方向支持部(13)の軸方向寸法(30)より、50%大きく又は100%大きく設定する請求項4に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第1基板体(3)と、前記軸方向支持部(13)と、前記第2基板体(4)とを、前記ハウジング(2)の同一軸方向の開口部を通じて、前記挿入方向(27)から前記ハウジング(2)に挿入する請求項4に記載の製造方法。
【請求項12】
前記各基板体(3、4)は、その排気の端面(26)において前記軸方向支持部(13)により軸方向に支持される請求項4に記載の製造方法。
【請求項13】
排気ガス再処理用の少なくとも1つのセラミック基板体(3)を管状のハウジング(2)内に設けた排気ガス再処理装置(1)であって、
第1基板体(3)が第1ベアリングマット(8)により周方向に囲まれ、前記第1基板体(3)と前記ハウジング(2)との間で径方向に前記第1ベアリングマット(8)に予荷重がかかった状態で、前記第1基板体(3)が前記第1ベアリングマット(8)によりハウジング(2)に取り付けられており、
周方向において中断されて、径方向への押付が可能に弾性変形する中断箇所(17)を有する支持リング(14)と、前記第1基板体(3)に対向する部分が開放された状態で前記支持リング(14)により保持されて軸方向に弾性を有する環状の支持エレメント(15)とを有する軸方向支持部(13)が、前記支持エレメント(15)と前記第1基板体(3)とが接触し、予め定められた軸方向の力(28)が前記支持エレメント(15)の弾性により前記第1基板体(3)に伝達される位置において、前記中断箇所(17)による弾性変形で前記支持リング(14)が前記ハウジング(2)に対して径方向に押し付けられた状態で、前記支持リング(14)が前記ハウジング(2)に溶接されることにより、前記ハウジング(2)に固定されている排気ガス再処理装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス再処理装置の製造方法に関する。さらに、本発明は、その製造方法により製造される排気ガス再処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス再処理装置は、例えば、触媒コンバーター及び粒子フィルター等のセラミック基板体を用いて作動することが多い。触媒コンバーターの場合、基板体は、浄化用途に応じて、例えば酸化触媒コンバーター、DeNOx触媒コンバーター、三元触媒コンバーター、加水分解コンバーター、又はアンモニア遮断触媒コンバーターを構成するために触媒作用に有効な方法でコーティングされる。基板体は、一般に、均一な材料の単一部材から、すなわち単体のものから製造され、その結果、いずれの場合も一体的な構成となる。浄化用途に応じて、2つ以上のセラミック基板体に貫流を順次受けさせることができる。さらに、2つ以上の基板体を縦に並べて配置し、効率を向上させることが可能である。粒子フィルターの場合、例えば、互いに孔径が異なる2つ以上の基板体を縦に並べて配置することもできる。異なる浄化用途、すなわち特に異なる触媒コーティングを有する基板体を、共通のハウジング内に縦に並べて配置することもできる。
【0003】
コンパクト設計を実現するために、そのような排気ガス再処理装置は、排気ガス再処理装置用のどちらか1つのセラミック基板体が配置されるか、又は排気ガス再処理装置用の少なくとも2つのセラミック基板体が縦に並べて配置された管状ハウジングを備える。通常、このようなセラミック基板体は、ベアリングマットを用いて金属製のハウジング内に取付けられている。ここで、ベアリンマットは、径方向に圧縮される。ベアリングマットと共にハウジング内に基板体を挿入することは、通常「キャンニング(圧入)」と呼ばれる。軸方向のキャンニングが、ここでは対象であり、その間に、それぞれの基板体がベアリングマットと共に管状ハウジング内に軸方向に挿入される。
【0004】
それぞれの基板体が自身を軸方向に支持するハウジングにおいて、ハウジング内の基板体の位置を軸方向に安定させるために、軸方向支持部を設けることが原則として可能である。実際には、そのような軸方向支持部が各基板体の排気口側又は流出側に配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気ガス再処理装置では、少なくとも2つの基板体がハウジング内に縦に並べて配置されている場合、貫流を最初に受ける基板体の軸方向の移動、この結果として、下流側に配置される基板体との衝突、両基板体にダメージを与える危険性を防止するために、ハウジングにおいて上記軸方向支持部により上流側に配置される基板体を支持することが要求される。これは、排気ガス再処理装置の組み立て又は製造をより困難にしている。例えば、ハウジングにおいて、そのような軸方向支持部を軸方向で2つの基板体の間に配置するには、上流側に位置する基板体をハウジングの吸気口側からハウジング内に挿入しなければならず、一方、下流側に位置する基板体をハウジングの排気口側を通じてハウジング内に挿入しなければならない。このようなキャンニング方法では、そのために適切なキャンニング装置においてハウジングを方向転換させなければならない。基板体を1つだけ含む排気ガス再処理装置の場合も、ハウジングと衝突する基板体を保護するための軸方向支持部が同様に要求されているが、製造中に同様の問題が発生する。
【0006】
本発明は、このような排気ガス再処理装置、又は特に各基板体にダメージを与える危険性を低減し、更には簡単化された製造が可能な製造方法について、改善した実施の形態又は少なくとも別の実施の形態を示すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、本課題は、独立請求項の主題を通じて解決される。好ましい実施の形態は、従属請求項の主題である。
【0008】
本発明は、まず基板体をベアリングマットと共にハウジングに挿入し、この後に軸方向支持部を、ハウジングに挿入して第1基板体を軸方向に支持するために予め定められた方法でハウジングに位置決めし、最後に軸方向支持部を、望ましい位置にかつ基板体と軸方向支持部の間の望ましい軸方向の予荷重を伴ってハウジングに固定するように、キャンニングを行う一般概念に基づいている。これにより、ハウジングにおける所定の関連位置での基板体の軸方向の位置決めが改善され、排気ガス再処理装置の作動中に基板体が移動するという危険性が低減する。基板体とハウジングの間の軸方向の移動は、基板体へのダメージの危険性
を引き起こすので、上記予荷重、位置決め、及び固定により、基板体へのダメージの危険性を低減させることができる。
【0009】
選択肢として、少なくとも2つの基板体が設けられる一実施の形態では、第1基板体を第1ベアリングマットと共に挿入し、軸方向支持部の挿入、位置決め、及び固定の後、第2基板体を第2ベアリングマットと共にハウジングに挿入し、軸方向支持部を軸方向で第1基板体と第2基板体との間に配置する。この設計により、3つの上記部品、すなわち2つの基板体及び軸方向支持部をハウジングの同一軸方向の開口部を通じて挿入することが可能であり、特にキャンニングプロセス中のハウジングの方向転換を回避できる。
【0010】
さらに、予荷重を受けて、ハウジングに配置固定される第2基板体及び更なるそれぞれの基板体にも、そのような軸方向保護部材(軸方向支持部)を設けることが選択肢として可能である。ここで、それぞれの基板体については、異なる軸方向の予荷重の調整が考えられる。
【0011】
好ましくは、各基板体が、軸方向の一方側のみで、すなわち主に排気口側又は流出側で、また各所定の軸方向の予荷重を伴って、そのような軸方向保護部材により軸方向に支持されるように、組み立てが行われる。
【0012】
好ましくは、各軸方向支持部は、支持リング、及び支持リングにより保持される環状支持エレメントから構成される。好ましくは、予め定められた軸方向の力が支持エレメントを通じて前もってハウジングに挿入された第1基板体に伝達されるように、ハウジング内の軸方向支持部が位置決めされる。例えば、軸方向支持部の挿入のときに、該軸方向支持部が第1基板体に押付けられることにより発生する軸方向の力を測定して、予め定められた値に調整することができる。
【0013】
そして、軸方向に予荷重がかけられた位置で軸方向支持部をハウジングに固定する方法の更なる開発が特に有利である。例えば、そのために支持リングをハウジングに溶接する。この処置により、軸方向支持部と第1基板体との間の調整された所定の軸方向の力をほぼ留めることができる。このため、第1基板体の後にのみ軸方向支持部がハウジングに挿入されるが、軸方向支持部上の第1基板体に軸方向の予荷重をかけた組み立てが実現される。これにより、上流側に位置する基板体が軸方向に移動する危険性が減少するので、軸方向に予荷重をかけた組み立てが好ましい。
【0014】
そのために必要とされるキャンニング装置は、位置決め装置を備える。この位置決め装置は、軸方向支持部を、ハウジングに挿入して、所定の軸方向の力で第1基板に押付けて支持する。また、そのために、位置決め装置に、軸方向の力の測定装置を装備することができる。さらに、実際には、この位置決め装置は、溶接作業中であっても、軸方向支持部を、望ましい予荷重を伴ってハウジングに位置決めできるように構成されている。
【0015】
さらに好ましい製造方法の開発によると、支持リングを、溶接前のハウジングに対して径方向に押し付けることができ、またその押し付けた状態でハウジングに溶接することができる。この処置のために、支持リングを、隙間や空隙なしで径方向にハウジングに固定し、その結果、非常に効率が良く、耐久性がある溶接接続を実現することができる。そして、これに関連する位置決め装置は、特に、溶接作業のためにハウジングに対して支持リングを径方向に押し付けることができるように、支持リングを膨張させる構成とされている。
【0016】
更なる開発によると、支持リングは、ハウジングに対する径方向の押し付けのために、直径に関し弾性変形するように周方向に中断箇所を有する。周方向の一箇所で中断された支持リングは、ハウジングに対する支持リングの径方向の押し付けを簡単化する。支持リングが周方向に中断されているのに対して、支持エレメントは、周方向に閉じられるか又は中断なしのものである。支持エレメントは、第1基板体を軸方向に支持するために軸方向に所定の弾性を有する。この場合、支持エレメントは、支障なく支持リングの拡大に弾性的に追従するように、軸方向の弾性に周方向の適切な弾性を伴う。
【0017】
別の実施の形態によると、支持リングは、支持エレメントを保持する保持領域と、ハウジングへの溶接用に設けられる固定領域とを有する。実際には、固定領域は、保持領域及び支持エレメントを越えて軸方向に突出している。ハウジングにおける軸方向支持部の位置決めの間に、固定領域がハウジングと第1基板体との間で径方向に形成された径方向空隙に導入され、この径方向空隙において、固定領域がハウジングに溶接される。このため、各溶接部は、支持エレメントに対して軸方向にオフセット(ずらされて)配置される。この処置は、軸方向の力が伝達されている間に発生する各溶接部の曲げ負荷を減少させる軸方向支持部の応力中心距離(レバーアーム)をもたらし、そのため、各溶接部は、剪断力、すなわちハウジングの縦中心軸と平行に延びる張力だけを伝達しなければならない。これは、各溶接部を特に耐久性のあるものにする。
【0018】
さらに好ましい開発によると、軸方向支持部に面する第1ベアリングマットの軸方向の端部を、軸方向支持部に面する第1基板体の軸方向の端面に対して軸方向にオフセット(ずらして)配置することができ、その結果、前記第1ベアリングマットの端部は、上記固定領域が軸方向に入り込んでいる径方向の空隙を軸方向に制限する。第1ベアリングマットと第1基板体との間の軸方向のオフセットを通じて、支持リングの固定領域を、ベアリングマットにダメージを与えることなく、径方向の空隙に導入することができる。
【0019】
別の実施の形態では、ハウジングに軸方向支持部を固定するための溶接を、ハウジングの外側からハウジングを径方向に貫いて行うことができる。これは、製造を簡単化する。何故なら、軸方向支持部は、ハウジングの内側において上記位置決め装置により望ましい方法で位置決めすることができ、その一方で外側での軸方向支持部の固定が適切な溶接装置により行われるからである。
【0020】
例えば、ハウジングへの軸方向支持部の溶接は、レーザーウォブル溶接で行うことができる。あるいは、スポット溶接を採用することもできる。レーザーウォブル溶接の間に、不連続の溶接継目、すなわち、長手方向に制限された溶接継目がレーザー溶接により作られる。溶接継目の長手方向は、実際には、ハウジングの周方向に延びている。したがって、複数の溶接継目が、周方向に分布して互いに間隔を置いて、軸方向支持部をハウジングに固定するために形成される。
【0021】
さらに好ましい開発によると、ハウジングは、軸方向支持部の領域において孔が開けられずに、孔が開いていない状態で支持リングに溶接される。このため、例えば溶接スポットを作成するべく、前もってハウジングに開口を設ける必要がなく、ハウジングに対する軸方向支持部の固定が簡単化される。溶接は、ハウジング又はハウジングの材料を貫いて形成される。
【0022】
別の好ましい実施の形態によると、支持エレメントとして、軸方向支持部が軸方向の予荷重を受けている間に弾性的に変形する金網が用いられる。このような金網は、高温においても耐久的な弾性を有する特性を持つ。
【0023】
別の好ましい実施の形態によると、支持リングは、支持エレメントを径方向に位置決めするための外辺及び内辺と、支持エレメントを軸方向の位置決めするための、外辺を内辺に接続したベースとからなるU字形部である。この場合、U字形部を有する支持リングの断面は、ハウジングの縦中心軸を含む断平面に位置している。U字形部は、支持リングの周方向に延びている。U字形部により、支持エレメントが支持リングに安定して位置決めされている。
【0024】
好ましい実施の形態では、外辺が、内辺、好ましくは、支持エレメントをも超えて軸方向に突出して、ハウジングに溶接される。特に、外辺は、上記支持リングの固定領域を形成する。したがって、溶接部は、支持エレメントに対して軸方向に離れて形成されている。
【0025】
軸方向における第1基板体と第2基板体との間に、支持リングが支持エレメントを位置決めする軸方向空隙が形成されている。好ましい実施の形態によると、軸方向空隙における軸方向支持部の軸方向寸法は、軸方向空隙の軸方向空隙幅より小さくされている。このため、第2基板体が、軸方向支持部から、特に軸方向支持部の支持リングから軸方向に間隔を置いて配置される。ここで、空隙幅は、軸方向空隙における軸方向支持部の軸方向寸法より最大100%、好ましくは最大50%大きい。
【0026】
別の好ましい実施の形態によると、第1基板体と、軸方向支持部と、第2基板体とが、ハウジングの同一軸方向の開口部を通じてハウジング内に挿入される。このため、特にハウジングの方向転換が省略されて、キャンニングプロセスが簡単化される。
【0027】
本発明に係る排気ガス再処理装置は、上記製造方法にしたがって製造されることを特徴としている。特に、そのような排気ガス再処理装置は、排気ガス再処理装置が非利用であっても、軸方向支持部と各基板体との間に存在する軸方向の予荷重により判別することができる。さらに、2つ以上の基板体を含むような本発明に係る排気ガス再処理装置は、基板体及び軸方向支持部を挿入するのに適している2つの軸方向体の一方のみにより判別することができる。
【0028】
本発明のさらに重要な特徴及び効果は、従属請求項、図面、図面を用いた関連の説明から理解される。
【0029】
上記及び以下の特徴は、前述各組み合わせで使用できるだけでなく、本発明の範囲を逸脱しない限り、他の組み合わせ又は単独で使用することもできることを理解されたい。
【0030】
本発明の好ましい実施例は、図面に示され、下記で詳細に説明され、同じ参照符号は、同一、類似、又は機能的に同一の構成要素に関連している。各図を概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】製造方法の異なる各工程における排気ガス再処理装置の軸方向断面図である。
【
図2】製造方法の異なる各工程における排気ガス再処理装置の軸方向断面図である。
【
図3】製造方法の異なる各工程における排気ガス再処理装置の軸方向断面図である。
【
図4】製造方法の異なる各工程における排気ガス再処理装置の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1から
図4に示すように、排気ガス再処理装置1は、例えば、触媒コンバーター又は粒子フィルターであって、管状ハウジング2を備えており、管状ハウジング2には、好ましい実施例として少なくとも2つのセラミック基板体、すなわち第1基板体3及び第2基板体4が配置されている。
【0033】
この場合、2つの基板体3、4は、図中の両方向矢印で示される軸方向5に並べて配置されている。この軸方向5は、ハウジング2の縦中心軸6に対して平行に延びている。排気ガス再処理装置1は、好ましくは自動車の図示しない内燃機関の排気システムに設置されて用いられる。排気システム又は排気ガス再処理装置1の作動中、排気ガス流が、ハウジング2を通じて流れ方向7に流れてハウジング2内に存する。この流れ方向7は、図中矢印で示される。この流れ方向7に対して、第1基板体3が第2基板体4の上流側に配置されている。
【0034】
第1基板体3は、ハウジング2内に、第1ベアリングマット8により取付けられている。第1ベアリングマット8は、そのために周方向に第1基板体3を囲み、第1基板体3とハウジング2との間で径方向に予荷重がかけられているか又は圧縮されている。ここで、第1ベアリングマット8は、第1基板体3の外側9に対して直接的にかつハウジング2の内側10に対して直接的に配置される。第2基板体は、第2ベアリングマット11と共にハウジング2内に取付けられている。第2ベアリングマット11は、周方向に第2基板体4を囲み、第2基板体4とハウジング2との間で径方向に圧縮されるか又は予荷重がかけられる。ここで、第2ベアリングマット11は、第2基板体4の外側12に対して直接的にかつハウジング2の内側10に対して直接的に配置される。
【0035】
排気ガス再処理装置1は、ハウジング2内に軸方向支持部13を備えている。軸方向支持部13は、支持リング14と、支持リング14により保持されている環状支持エレメント15とを有している。軸方向支持部13は、少なくとも1つの溶接部16によりハウジング2に固定されている。第1基板体3は、支持エレメント15で軸方向に支持されている。排気ガス再処理装置1の作動中、第1基板体3を通過する排気ガスの流れは、第1基板体3での流動流れ抵抗の為に流れ方向7に向いた推力(軸方向の力)を発生させ、これは、第1基板体3をハウジング2に対して流れ方向7に押す。そして、これらの軸方向の力は、第1基板体3から支持エレメント15を通じて支持リング14に、そして後者からハウジング2に伝達される。別の実施の形態では、排気ガス再処理装置1が単一の基板体3、4のみを有し、これを、同様に軸方向支持部13によりハウジング2に軸方向に支持することができる。更なる実施の形態では、2つを超える基板体3、4を、ハウジング2内に配置することもできる。さらに、第2基板体4及び特に更なる各基板体をハウジング2に軸方向に支持するために、2つ以上の軸方向支持部13を設け、2つ以上の基板体3、4をハウジング2に入れた実施の形態が考えられる。
【0036】
実際の実施の形態では、各基板体3、4には、いずれの場合も、単一の軸方向支持部13のみが割り当てられ、各基板体3、4がそれの排気口側又は流出側に配置される。
図1〜
図4において、流れ方向7は、左を指している。したがって、各基板体3、4の軸方向の排気口側が左側に位置し、基板体3のそれが右側に26で示されている。好ましくは、各基板体3、4は、特に排気ガス再処理装置1を通過する流れがない場合であっても、予め定められた予荷重により、その排気の端面26において軸方向支持部13に対向する。
【0037】
周方向において、支持リング14は、中断箇所17を有し、その結果、支持リング14は、ある程度の弾性を径方向に有する。これとは対照的に、支持エレメント15は、周方向に中断箇所がないように構成されることが好ましい。例えば、支持エレメント15は、金網で形成される。
【0038】
支持リング14は、縦中心軸6を含む断面においてU字形部18を有し、このU字形部18が、半径方向に外側に位置する外辺19と、半径方向内側に位置する内辺20と、ベース21とを備える。ベース21は、外辺19を内辺20に接続する。外辺19及び内辺20は、支持リング14に対して支持エレメント15を径方向に位置決めする。ベース21は、支持リング14に対して支持エレメント15を軸方向に位置決めする。ここに示す実施の形態では、外辺19は、内辺20より軸方向に突出している。このため、外辺19は、支持リング14の固定領域22を形成し、そこを介して支持リング14がハウジング2に固定される。特に、上記各溶接部16は、固定領域22上または固定領域22内に形成されている。この固定領域22に続いて、U字形部18の残り部分は、支持リング14の保持領域23を形成し、そこで支持エレメント15が支持リング14に結果的に保持又は固定される。
【0039】
固定領域22は、ハウジング2と第1基板体3との間で径方向に形成された径方向空隙24に軸方向に突出している。この径方向空隙24の領域には、各溶接部16が設けられている。第1ベアリングマット8は、軸方向支持部13に面する軸方向の端部25を有している。この端部25は、軸方向支持部13に面する第1基板体3の軸方向の端面26から軸方向にオフセット(ずらされて)配置されており、第1ベアリングマット8の端部25が上記径方向空隙24を軸方向に制限する。
【0040】
さらに、とりわけ、支持リング14の領域においては、ハウジングに孔が開けられていない。したがって、各溶接部16は、ハウジング2を貫いて支持リング14にまで延在している。
【0041】
ここで紹介する排気ガス再処理装置1の製造方法は、次の工程で特徴づけられている。
【0042】
図1に示すような製造方法の第1工程では、第1基板体3がハウジングに軸方向に挿入され、第1ベアリングマット8によりハウジング2に取付けられる。この場合、実際には、第1基板体3の挿入は、流れ方向7とは逆方向の図では矢印で示される挿入方向27に行われる。こうして第1基板体3の挿入が行われ、引き続いて第1基板体3がハウジング2の所定の関連位置に配置される。
【0043】
図2に示すような製造の第2工程では、軸方向支持部13が、ハウジング2に、同様の挿入方向27に挿入される。さらに、軸方向支持部13は、所定の軸方向の力28が支持エレメント15を介して第1基板体3に伝達されるように、ハウジング2に軸方向で位置決めされる。ここで、軸方向の力28は、矢印で示される。したがって、軸方向支持部13は、まず、支持エレメント15が第1基板体3の軸方向の端面26と接触するまでハウジング2に挿入される。支持エレメント15が弾性的に圧縮されると、軸方向の力28が増大する。ここで、軸方向の力28は、ハウジング2において第1ベアリングマット8が第1基板体3を軸方向に位置決めするための軸方向の保持力よりも小さい。
【0044】
次に、
図3に示すように製造方法の第3工程において、軸方向支持部13は、第2工程の軸方向に予荷重がかけられた位置で、ハウジング2に固定される。このために、支持リング14がハウジング2に溶接される。その過程で、少なくとも1つの溶接部16が設けられる。この場合、溶接部16は、外辺19又は固定領域22に位置している。いずれにしても、溶接部16は、支持エレメント15の外側に配置された支持リング14の領域内に位置している。この場合、軸方向支持部13をハウジング2に固定するための溶接は、各溶接部16がハウジング2を貫くように、ハウジング2の外側29から行われる。この溶接は、レーザーウォブル溶接方法で実現することができる。そして、溶接部16は、周方向に延びる複数の溶接継目からなり、各溶接継目が周方向に互いに間隔を置いて配列される。このようなレーザー溶接方法を、溶接継目の領域でハウジング2に孔を開けることなく、ハウジング2を貫いて実現することができる。
【0045】
支持リング14は、軸方向の力28により押付けられた状態でハウジング2に固定されることが好ましく、この軸方向の力28が溶接部16の設定後にも存在する。
【0046】
溶接前の支持リング14が、ハウジング2に対して径方向に押付けられ、この押付けられた状態でハウジング2に溶接されるように、ハウジング2に対する支持リング14の溶接を実現することができる。支持リング14は、中断箇所17により径方向に所定の弾性を有し、この結果、これを、非常に簡単な方法でハウジング2に対して径方向に押し付けることができる。
【0047】
次に、
図4に示すように、製造方法の第4工程では、第2基板体4を、ハウジング2に軸方向に挿入して、第2ベアリングマット11により取付けることができる。この場合、第2基板体4は、ハウジング2に挿入方向27に挿入される。したがって、2つの基板体3、4及び軸方向支持部13は、ハウジング2の同一軸方向の開口部(図示せず)を通じてハウジング内に挿入される。
【0048】
図4で明らかなように、2つの基板体3、4の間で軸方向に形成された軸方向空隙31に軸方向支持部13が配されており、軸方向支持部13の軸方向寸法30がその軸方向空隙31の軸方向空隙幅32よりも小さい。例では、空隙幅32は、軸方向空隙31に配された軸方向支持部13の軸方向寸法30よりも50%大きい。