(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートクッションと、シートバックと、前記シートバックの少なくとも一部を動かすことで前記シートバックの向きを左右に変えることが可能なアクチュエータと、当該アクチュエータを制御する制御装置とを備える乗物用シートであって、
前記制御装置は、乗物の旋回中に、前記アクチュエータを制御して、前記シートバックの少なくとも一部を初期位置から第1位置に動かすことで前記シートバックの向きを旋回方向に向けるシート姿勢制御を実行する姿勢制御手段を備え、
前記姿勢制御手段は、前記シート姿勢制御の実行時間が実行時間閾値以上となった場合、前記アクチュエータを制御して、前記シートバックの少なくとも一部を前記第1位置から第2位置に動かすことで前記シートバックの向きを戻すように構成され、
前記第2位置は、前記初期位置と前記第1位置との間の位置であることを特徴とする乗物用シート。
前記姿勢制御手段は、前記シート姿勢制御中に前記横加速度取得手段が取得した横加速度の大きさが前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となった場合、前記アクチュエータを制御して、前記シートバックの少なくとも一部を前記初期位置に動かして前記シート姿勢制御を終了するように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
シートクッションと、シートバックと、前記シートバックの少なくとも一部を動かすことで前記シートバックの向きを左右に変えることが可能なアクチュエータと、当該アクチュエータを制御する制御装置とを備える乗物用シートであって、
前記制御装置は、横加速度を取得する横加速度取得手段と、乗物の旋回中に前記横加速度取得手段が取得した横加速度の大きさが第1閾値以上となった場合に、前記アクチュエータを制御して、前記シートバックの少なくとも一部を初期位置から第1位置に動かすことで前記シートバックの向きを旋回方向に向けるシート姿勢制御を実行する姿勢制御手段とを備え、
前記姿勢制御手段は、前記シート姿勢制御の実行時間が実行時間閾値以上となった場合に、前記アクチュエータを制御して、前記シートバックの少なくとも一部を前記第1位置から第2位置に動かすことで前記シートバックの向きを戻し、前記シート姿勢制御中に前記横加速度取得手段が取得した横加速度の大きさが前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となった場合に、前記アクチュエータを制御して、前記シートバックの少なくとも一部を前記初期位置に動かして前記シート姿勢制御を終了するように構成されたことを特徴とする乗物用シート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、乗物用シートの一例としての車両用シートの機械的構成を説明した後、姿勢制御機構の制御のための構成を説明することとする。
【0016】
<車両用シートの機械的構成>
図1に示すように、車両用シートSは、自動車の運転席に使用されるシートであり、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを主に備えている。シートバックS2は、乗員の背中が当たる中央部S21と、シートバックS2の中央部S21の左右両側に配置されて中央部S21よりも前側に張り出した側部S22とを有している。なお、車両用シートSは、運転席に限らず、助手席または後部座席など、任意のシート位置に設置することができる。
【0017】
シートクッションS1およびシートバックS2には、
図2に示すようなシートフレームFが内蔵されている。シートフレームFは、シートクッションS1のフレームを構成するシートクッションフレームF1と、シートバックS2のフレームを構成するシートバックフレームF2とから主に構成されている。シートクッションS1は、シートクッションフレームF1に、ウレタンフォームなどのクッション材からなるシートクッションパッドP1と、合成皮革や布地などからなる表皮材U1を被せることで構成され、シートバックS2は、シートバックフレームF2に、クッション材からなるシートバックパッドP2と、合成皮革や布地などからなる表皮材U2を被せることで構成されている(
図1も参照)。
【0018】
シートバックフレームF2は、その下部がシートクッションフレームF1の後部にリクライニング機構RLを介して回動自在に連結されている。これにより、シートバックS2は、シートクッションS1に対し前後に傾動可能となっている。
なお、本明細書において、前後、左右および上下は、リクライニング機構RLによってシートバックS2が倒されていない状態の車両用シートSに着座した乗員を基準とする。
【0019】
シートバックフレームF2は、上部フレーム10と、左右のサイドフレーム20と、下部フレーム30とを主に有して構成され、上部フレーム10、左右のサイドフレーム20および下部フレーム30が溶接などによって一体に結合された枠状に形成されている。
上部フレーム10は、金属製のパイプ材を略U字形状に屈曲して形成され、横パイプ部11に、ヘッドレストS3を取り付けるためのサポートブラケット12が固定されている。また、左右の縦パイプ部13は、その下部がサイドフレーム本体部21の上部に結合され、サイドフレーム本体部21とともにサイドフレーム20を構成している。
サイドフレーム本体部21は、金属板をプレス加工するなどして形成されている。サイドフレーム本体部21は、その下部に上部よりも前側に張り出し、シートバックS2の側部S22を形成する張出部22を有している。
【0020】
枠状のシートバックフレームF2の内側には、乗員の背中を支持する受圧部材40と、受圧部材40の向きを左右に変えるための姿勢制御機構50が配置されている。
受圧部材40は、樹脂などからなる弾性変形可能な板状の部材であり、左右のサイドフレーム20の間で乗員の後方に配置されている。詳しくは、受圧部材40は、シートバックパッドP2などを介して乗員の背中を支持する受圧部41と、受圧部41の上部における左右両端から左右方向外側および前方に延出した支持部42とを有している。受圧部41は、シートバックS2の中央部S21の後ろに位置し、支持部42は、側部S22の後ろに位置している。支持部42は、乗員の上体上部を側方から支持するように機能する。
【0021】
受圧部材40は、その後側に配置された上部連結ワイヤW1および下部連結ワイヤW2と係合してこれらにより支持されている。上部連結ワイヤW1は、その両端部が姿勢制御機構50に係合して支持され、下部連結ワイヤW2は、その両端部がサイドフレーム20の左右内側に設けられたワイヤ取付部23に係合して支持されている。
【0022】
姿勢制御機構50は、受圧部材40の左右両側に配置され、後述する制御装置100(
図6参照)により制御されてシートバックS2の一部である受圧部材40を動かすことで、シートバックS2の向きを左右に変えることができるように構成されている。
【0023】
図3に示すように、姿勢制御機構50は、主に、アクチュエータ51と、保持ブラケット52(52A,52B)と、第1リンク部材53と、第2リンク部材54と、トーションバネ55とを備えて構成されている。
アクチュエータ51は、第1リンク部材53および第2リンク部材54を回動させるための駆動源であり、正転および逆転が可能なステッピングモータ51Aと、ギヤボックス51Bと、出力軸51Cとを備え、出力軸51Cが上下方向に沿うように配置されている。アクチュエータ51は、保持ブラケット52によりサイドフレーム20に固定されている。そして、ステッピングモータ51Aからの駆動力がギヤボックス51Bで減速されて出力軸51Cに伝達されることで、出力軸51Cが回動するようになっている。
【0024】
第1リンク部材53は、長尺状に形成される板状部材であり、その一端部がアクチュエータ51の出力軸51Cに固定されることで、他端部が出力軸51Cを中心に前後方向に揺動可能となっている。
第2リンク部材54は、一端部が第1リンク部材53の他端部にピン54Aを介して第1リンク部材53に回動可能に連結されている。第2リンク部材54の他端部には、前記した上部連結ワイヤW1の先端が回動可能に係合する連結孔54Bが形成されている。
トーションバネ55は、一端が第1リンク部材53に係合し、他端が第2リンク部材54に係合しており、これにより、第1リンク部材53に対し第2リンク部材54を上から見て時計回りに付勢している。
【0025】
なお、ここでの説明では、
図3に示した右側の姿勢制御機構50について説明したが、左側の姿勢制御機構50は、右側の姿勢制御機構50と左右対称に構成されている。
【0026】
図4に示すように、受圧部材40は、通常時には、前を向いた初期位置に位置している。このとき、シートバックS2の乗員を支持する支持面S23も前を向いている。
【0027】
そして、例えば、車両(乗物)が左に旋回するときには、制御装置100による制御によって、右側の姿勢制御機構50のステッピングモータ51Aが正転することで、第1リンク部材53が前方に回動し、かつ、第2リンク部材54が回動して、受圧部材40の右端部が初期位置から前に向けて移動する。これにより、受圧部材40は、右端部が、
図5(a)に示す第2位置の一例としての中間位置を経て、
図5(b)に示す第1位置の一例としての前進位置に移動し、全体として旋回方向である左を向く。そして、受圧部材40の右端部によってシートバックパッドP2が押し出されることで、シートバックS2の支持面S23も左を向く。このとき、シートバックS2の中央部S21と右の側部S22との間に形成される段差は、受圧部材40が初期位置にあるときよりも小さくなる。
【0028】
一方、シートバックS2の向きを戻すときには、制御装置100による制御によって、右側の姿勢制御機構50のステッピングモータ51Aが逆転することで、第1リンク部材53が後方に回動し、かつ、第2リンク部材54が回動して、受圧部材40の右端部が前進位置から後ろに向けて移動する。これにより、受圧部材40は、右端部が、
図5(a)に示す中間位置を経て、
図4に示す初期位置に移動し、全体として前を向く。その結果、シートバックS2の支持面S23も前を向く。
【0029】
受圧部材40は、制御装置100による制御によってステッピングモータ51Aの回転が途中で停止することで、
図5(a)に示す中間位置に維持されるようにもなっている。中間位置は、
図4に示す初期位置と
図5(b)に示す前進位置との間の位置である。本実施形態では、一例として、初期位置と中間位置との間のアクチュエータ51の作動量が、初期位置と前進位置との間のアクチュエータ51の作動量の略半分に設定されている。受圧部材40の右端部が中間位置にあるとき、シートバックS2の中央部S21と右の側部S22との間に形成される段差は、受圧部材40が初期位置にあるときよりは小さいが、受圧部材40が前進位置にあるときよりは大きくなる。
【0030】
車両が右に旋回するときには、制御装置100による制御によって、左側の姿勢制御機構50のステッピングモータ51Aが正転する。その後の動作については、左旋回の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0031】
<姿勢制御機構の制御のための構成>
図6に示すように、制御装置100は、アクチュエータ51の駆動を制御して受圧部材40を動かしシートバックS2の向きを左右に変えるため、主に、横加速度取得手段110と、姿勢制御手段130と、記憶装置190とを備えている。制御装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有し、記憶装置190に予め記憶されているプログラムを読み出して実行することで、これらの各手段を実現している。
【0032】
横加速度取得手段110は、車両に掛かる横加速度を取得する手段であり、本実施形態においては、車両の速度と、操舵角とに基づいて、横加速度を計算により取得するように構成されている。具体的に、横加速度取得手段110は、車輪速センサ91から取得した車輪速度と、操舵角センサ92から取得した操舵角とに基づいて横加速度GCを計算により算出する。一例として、横加速度GCは、車輪速度から公知の方法により車体速度Vを決定し、車両固有の定数であるスタビリティファクタA、車両のホイールベースL、操舵角φ、旋回半径Rを用いて、以下の式により計算することができる。
R=(1+AV
2)/(L/φ)
GC=V
2/R
なお、本実施形態において、操舵角φは、ステアリングホイールの操舵の角度とするが、定数を変更すれば、例えば、車輪の操舵の角度で計算してもよい。また、横加速度GCは、右を正、左を負とする。
【0033】
姿勢制御手段130は、車両の旋回中に、横加速度取得手段110が取得した横加速度GCに基づいてアクチュエータ51を制御して、受圧部材40を動かすことでシートバックS2の支持面S23の向きを旋回方向に向けるシート姿勢制御を実行する手段である。具体的に、姿勢制御手段130は、横加速度GCの大きさ(絶対値)が第1閾値GCth1以上となった場合に、アクチュエータ51を制御してステッピングモータ51Aを正転させ、受圧部材40を
図4に示す初期位置から
図5(b)に示す前進位置に動かしてシート姿勢制御を開始するように構成されている。
【0034】
なお、本実施形態において、各閾値は、走行試験やシミュレーションなどにより、予め設定されている。また、本実施形態では、GCth1を正の値とし、右旋回時のように左向きに発生する横加速度GCを負で扱う場合においては、横加速度GCの大きさが第1閾値GCth1以上であるということをGC≦−GCth1と表すこととする。
【0035】
姿勢制御手段130は、シート姿勢制御の実行時間が所定時間以上と長い場合に、シートバックS2の支持面S23の向きを戻すように構成されている。具体的に、姿勢制御手段130は、シート姿勢制御の実行時間TE(本実施形態では、一例として、横加速度GCの大きさが第1閾値GCth1以上となったときからの経過時間とする。)が実行時間閾値TEth以上となった場合に、アクチュエータ51を制御してステッピングモータ51Aを逆転させ、受圧部材40を
図5(b)に示す前進位置から
図5(a)に示す中間位置に動かす。これにより、シートバックS2の支持面S23の向きが、通常時の向きに近づくように戻ることとなる。詳しくは、支持面S23の向く方向が前後方向に対してなす角度が、受圧部材40が初期位置にあるとき(角度0)よりは大きいが、受圧部材40が前進位置にあるときよりは小さくなる。実行時間閾値TEthは、車両の特性などに応じて適宜設定することができるが、一例として、3.0sec程度に設定することができる。
【0036】
また、姿勢制御手段130は、シート姿勢制御中において、横加速度GCの大きさが第2閾値GCth2以下となった場合には、アクチュエータ51を制御してステッピングモータ51Aを逆転させ、受圧部材40をそのときの位置(前進位置または中間位置)から
図4に示す初期位置に動かしてシート姿勢制御を終了するように構成されている。
なお、本実施形態では、GCth2を正の値とし、横加速度GCを負で扱う場合においては、横加速度GCの大きさが第2閾値GCth2以下であるということをGC≧−GCth2と表すこととする。第2閾値GCth2は、第1閾値GCth1よりも小さい値に設定されている。一例として、第1閾値GCth1は、2.0m/s
2程度、第2閾値GCth2は、1.0m/s
2程度に設定することができる。
【0037】
記憶装置190は、各センサから取得した値や、横加速度取得手段110が計算した横加速度の値、各閾値などの設定値を記憶する装置である。
【0038】
次に、制御装置100で実行される処理の一例について、
図7および
図8を参照して説明する。なお、
図7および
図8のフローチャートは、車両が左に旋回する場合(横加速度GCを正で扱う場合)を示しており、スタートからエンドまでの処理が所定の制御サイクル(時間TU)ごとに繰り返し実行される。また、第1フラグFL1は、シート姿勢制御を行っていない通常時が0であり、シート姿勢制御を行っているときが1である。また、第2フラグFL2は、受圧部材40が中間位置にあるときが1であり、それ以外の位置にあるときが0である。受圧部材40は、通常時には初期位置に位置しており、第1フラグFL1および第2フラグFL2は、初期値が0である。
【0039】
図7に示すように、横加速度取得手段110は、車輪速センサ91および操舵角センサ92から値を取得し(S101)、取得した車輪速度と操舵角から横加速度GCを計算する(S102)。そして、姿勢制御手段130は、第1フラグFL1が1であるか否かを判定する(S111)。
【0040】
第1フラグFL1が1でない場合(シート姿勢制御を行っていない場合)(S111,No)、姿勢制御手段130は、横加速度GCの大きさが第1閾値GCth1以上であるか否かを判定する(S121)。そして、横加速度GCの大きさが第1閾値GCth1以上でない場合(S121,No)、姿勢制御手段130は、今回の制御サイクルを終了する。
【0041】
一方、ステップS121において、横加速度GCの大きさが第1閾値GCth1以上である場合(S121,Yes)、姿勢制御手段130は、右のアクチュエータ51(ステッピングモータ51A)を正転させて、受圧部材40を初期位置(
図4参照)から前進位置(
図5(b)参照)へ移動させる(S122)。そして、前進位置への移動が完了した場合(S123,Yes)、姿勢制御手段130は、第1フラグFL1を1にして(S124)、ステップS151へ進む。
【0042】
また、ステップS111において、第1フラグFL1が1である場合(シート姿勢制御を行っている場合)(S111,Yes)、
図8に示すように、姿勢制御手段130は、第2フラグFL2が1であるか否かを判定する(S131)。
【0043】
第2フラグFL2が1でない場合(受圧部材40が前進位置にある場合)(S131,No)、姿勢制御手段130は、シート姿勢制御の実行時間TEが実行時間閾値TEth以上であるか否かを判定する(S141)。そして、実行時間TEが実行時間閾値TEth以上でない場合(S141,No)、姿勢制御手段130は、実行時間TEに時間TUを加算することで実行時間TEをカウントアップし(S142)、ステップS151へ進む。一方、ステップS141において、実行時間TEが実行時間閾値TEth以上である場合(S141,Yes)、姿勢制御手段130は、右のアクチュエータ51(ステッピングモータ51A)を逆転させて、受圧部材40を前進位置(
図5(b)参照)から中間位置(
図5(a)参照)へ移動させる(S143)。そして、中間位置への移動が完了した場合(S144,Yes)、姿勢制御手段130は、第2フラグFL2を1にするとともに、実行時間TEを0にリセットして(S145)、ステップS151へ進む。
【0044】
ステップS131において、第2フラグFL2が1である場合(受圧部材40が中間位置にある場合)(S131,Yes)、姿勢制御手段130は、ステップS151へ進む。
【0045】
図7に戻り、ステップS151において、姿勢制御手段130は、横加速度GCの大きさが第2閾値GCth2以下であるか否かを判定する(S151)。そして、横加速度GCの大きさが第2閾値GCth2以下でない場合(S151,No)、姿勢制御手段130は、今回の制御サイクルを終了する。
【0046】
一方、横加速度GCの大きさが第2閾値GCth2以下である場合(S151,Yes)、姿勢制御手段130は、右のアクチュエータ51を逆転させて、受圧部材40を前進位置または中間位置から初期位置へ移動させる(S152)。そして、初期位置への移動が完了した場合(S153,Yes)、姿勢制御手段130は、第1フラグFL1および第2フラグFL2を0にリセットして(S154)、今回の制御サイクルを終了する。
【0047】
なお、車両が右に旋回する場合(横加速度GCを負で扱う場合)は、上記した左旋回の場合とは、正負およびアクチュエータ51の左右が逆となる。すなわち、ステップS121においては、GC≦−GCth1である場合が、横加速度GCの大きさが第1閾値GCth1以上である場合となり、GC≦−GCth1でない場合が、横加速度GCの大きさが第1閾値GCth1以上でない場合となる。また、ステップS151においては、GC≧−GCth2である場合が、横加速度GCの大きさが第2閾値GCth2以下である場合となり、GC≧−GCth2でない場合が、横加速度GCの大きさが第2閾値GCth2以下でない場合となる。また、右旋回の場合には、左のアクチュエータ51を正転または逆転させる。
【0048】
次に、以上説明した本実施形態の作用効果について、図面を参照しながら説明する。
図9に示すように、受圧部材40が初期位置(
図4参照)にある通常時の状態から、例えば、車両が左に旋回し始めると、横加速度GCが右向きに発生し、増加していく(時刻t1)。そして、横加速度GCの大きさが第1閾値GCth1以上となると(時刻t2)、制御装置100は、右のアクチュエータ51を正転させて、受圧部材40の右端部を初期位置から前進位置(
図5(b)参照)に移動させ(時刻t2〜t3)、シートバックS2の支持面S23の向きを旋回方向である左に向けるシート姿勢制御を開始する。これにより、旋回中における乗員のホールド性を保つことができる。
【0049】
その後、シート姿勢制御の実行時間TEが実行時間閾値TEth以上となると(時刻t4)、制御装置100は、右のアクチュエータ51を逆転させて、受圧部材40の右端部を前進位置から中間位置(
図5(a)参照)に移動させ(時刻t4〜t5)、シートバックS2の支持面S23の向きを戻す。これにより、車両の旋回時間が長くなった場合であっても、通常時と大きく異なるシート形状の状態が長く続くことがないので、乗員に違和感を与えることを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、受圧部材40が
図5(b)に示す前進位置から
図5(a)に示す中間位置に移動してシートバックS2の支持面S23の向きが戻ると、シートバックS2の中央部S21と右の側部S22との間に形成される段差が受圧部材40が前進位置にあったときよりも大きくなる(段差が復活する)ので、この段差で乗員の上体を良好に支えることができる。これにより、旋回中(シート姿勢制御中)における乗員の上体の安定性を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、中間位置が初期位置と前進位置との間の位置であるので、シート姿勢制御の実行時間TEが長い場合に受圧部材を前進位置から初期位置に移動させてシートバックの向きを戻すような構成と比較して、旋回中における乗員のホールド性を保ちつつ、乗員に違和感を与えることを抑制することができる。
【0052】
図9に戻り、車両が旋回状態から直進状態に戻っていくと、横加速度GCが減少していく。そして、横加速度GCの大きさが第2閾値GCth2以下となると(時刻t6)、制御装置100は、右のアクチュエータ51を逆転させて、受圧部材40の右端部を中間位置から初期位置に移動させ(時刻t6〜t7)、シートバックS2の支持面S23の向きを前に向けてシート姿勢制御を終了する。
【0053】
なお、アクチュエータ51を駆動させて受圧部材40を動かす時間(ステッピングモータ51Aの回転速度)は、車両の特性などに応じて適宜設定することができるが、前進位置から中間位置への移動は、初期位置から前進位置への移動(シート姿勢制御開始時の移動)や、前進位置または中間位置から初期位置への移動(シート姿勢制御終了時の移動)よりも時間をかけて、つまり、遅い速度で行うことが望ましい。さらに言えば、シート姿勢制御開始時や終了時の移動は受圧部材40の向きを速やか変えるように行うことが望ましく、前進位置から中間位置への移動は受圧部材40の向きを徐々に戻すように行うことが望ましい。
【0054】
以上、発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0055】
前記実施形態では、横加速度取得手段110が、車輪速度と操舵角とに基づいて横加速度GCを計算により算出して取得していたが、これに限定されるものではない。例えば、横加速度取得手段は、横加速度センサから横加速度を取得してもよい。また、車両が備える電子制御ユニットが横加速度を提供可能である場合には、横加速度取得手段は、電子制御ユニットに問い合わせて横加速度を取得してもよい。
【0056】
前記実施形態では、姿勢制御手段130が横加速度GCの大きさが第1閾値GCth1以上となった場合に受圧部材40を初期位置から前進位置に動かしてシート姿勢制御を開始するように構成されていたが、シート姿勢制御の開始条件は、前記実施形態の条件に限定されるものではない。シート姿勢制御の終了条件についても同様である。例えば、姿勢制御手段は、横加速度を計算することなく、操舵角と車体速度の組み合わせに基づいて、シート姿勢制御を実行するように構成されていてもよい。
【0057】
前記実施形態では、第2位置としての中間位置が、初期位置と前進位置(第1位置)との間の位置であったが、これに限定されず、例えば、第2位置は、初期位置と同じ位置であってもよい。また、第2位置は、初期位置と第1位置との間の複数の位置であってもよい。すなわち、姿勢制御手段は、シート姿勢制御の実行時間に応じて、シートバックの向きを段階的に戻すように構成されていてもよい。例えば、初期位置と前進位置との間に、前から順に、第1中間位置および第2中間位置が設定されている場合、姿勢制御手段は、シート姿勢制御の実行時間が第1実行時間閾値以上となった場合、受圧部材を前進位置から第1中間位置に動かし、シート姿勢制御の実行時間が第1実行時間閾値よりも長い第2実行時間閾値以上となった場合、受圧部材を第1中間位置から第2中間位置に動かすように構成されていてもよい。中間位置が3つ以上設定されている場合も同様である。
【0058】
前記実施形態では、姿勢制御機構50(アクチュエータ51)は、シートバックS2の一部としての受圧部材40を動かすことでシートバックS2の向き(支持面S23の向き)を左右に変えることができるように構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、アクチュエータは、シートバックの一部としてのシートバックの左右の側部(
図1のS22参照)を動かすことでシートバックの向き(側部の向き)を左右に変えることができるように構成されていてもよい。また、アクチュエータは、シートバック全体を動かすことでシートバックの全体の向きを左右に変えることができるように構成されていてもよい。また、アクチュエータは、車両用シート全体を動かすことで車両用シートの全体の向きを左右に変えるように構成されていてもよい。
【0059】
前記実施形態では、乗物用シートとして、自動車で使用される車両用シートSを例示したが、これに限定されず、乗物用シートは、自動車以外の乗物、例えば、スノーモービルや船舶、航空機などで使用されるシートであってもよい。