【実施例】
【0066】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の「%」は、特に断りのない限り「重量%」を示す。
【0067】
<実施例1> 高温高圧処理した麦芽中のリグニン系フェノール化合物の分析
高温高圧処理には高温湿熱処理試験装置(株式会社日阪製作所製:HTS-25/140-8039)、蒸気ボイラ(三浦工業株式会社製:FH-100)を用いた。SUS316合金製12Lのバスケットに欧州産二条大麦麦芽6kgを入れ、SUS316合金製耐熱耐圧容器(30L)内にて密閉した。脱酸素装置(三浦工業株式会社製:DOR−1000P)により除酸素した水(酸素濃度0.3μg/ml)を用いて発生させた高温高圧飽和蒸気(2.7MPa、230℃)を約1秒間送り込むことにより容器内の空気を置換した後、200℃、1.4MPaにて60秒間高温高圧状態を保持した。脱気後、反応容器が80℃以下になった時点で容器を開放し、麦芽を取り出し、一昼夜風乾して、本発明にかかる麦芽加工品を得た。
【0068】
麦芽、本発明による高温高圧処理を施した麦芽およびメラノイジン麦芽ないしカラメル麦芽である特殊麦芽に存在するリグニン系フェノール化合物の量を比較した。これらの麦芽をそれぞれ粉砕した後、麦芽粉末20gに水80mlを加え、65℃にて15分間および75℃にて15分間、温水抽出した抽出液中のリグニン系フェノール化合物を測定した。リグニン系フェノール化合物の測定は、温水抽出液20gに等量の酢酸エチルを加え、10分間振とう後、酢酸エチル層を回収した。この操作を3回繰り返して得た酢酸エチル層をロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固し、得られた濃縮物をメタノール1mlに溶解し、そのうちの10μlをHPLCに供し、280nmの吸光度を測定した。測定は、高速液体クロマトグラフィーシステムCLASS−VPシリーズ(株式会社島津製作所製)およびDeverosil−C30カラム(野村化学株式会社製 4.6x150mm)を用い、水−アセトニトリル系の溶媒を用いて行った。分析条件は、A液を0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)水溶液、B液を0.05%TFA、90%アセトニトリル水溶液とし、流速1ml/minにて、B液0%から20%までの100分間の直線グラジエントとした。化合物の同定は、市販の各標準物質とのNMR、UV吸収曲線、リテンションタイムの比較により行った。化合物の定量は各標準物質のUV吸収強度から算出した。
【0069】
その結果を下記表に示す。表中の値は麦芽100gあたりの各化合物の重量(mg)である。
【0070】
【表1】
【0071】
高温高圧処理によって麦芽に含まれるリグニンが分解され、通常の麦芽ではごく微量しか含有されておらず、ほとんど検出されることのないバニリンや、少量しか含有されていないp−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物を麦芽中に大量に生成させることができた。このことから、リグニンを含有する穀物を高温高圧処理することにより低分子のフェノール化合物を増加させることができることが明らかとなった。上表から明らかなように、穀類として麦芽を用いて200℃、1.4MPaにて60秒間、高温高圧処理を行った場合は、未処理麦芽より得られるバニリン量の約180倍ものバニリンを生成させることができ、これは穀物総重量の0.007%に相当する。高温高圧処理によるリグニン系フェノール化合物の生成は麦芽に限らず、例えば、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、キビ、ソバ、ハトムギなどの穀類、または、それらの発芽させた種子、発芽していない種子、葉、茎や根などの植物体の一部分などにおいても、得られるリグニン系フェノール化合物の量や組成に若干の違いが見られるものの、同様の結果を得ることができる。
【0072】
通常の麦芽以外にもメラノイジン麦芽やカラメル麦芽などがあるが、それらの特殊麦芽でも、リグニン系フェノール化合物はごく微量ないし少量含有されているのみである。本発明の高温高圧処理によれば、通常の麦芽中のリグニンを分解することによって、バニリンなどのリグニン系フェノール化合物を大幅に増加させることができた。これにより従来にはない物質組成をもつ新規な植物加工品を製造することができた。
【0073】
<実施例2> 高温高圧処理した麦芽穀皮中のリグニン系フェノール化合物の分析
高温高圧処理には株式会社AKICO製高温高圧反応器を用いた。SUS316合金製耐熱耐圧容器(400ml)に、脱酸素装置(三浦工業株式会社製:DOR−1000P)により除酸素した水(酸素濃度0.3 μg/ml)を40g入れ、SUS316合金製200mlのバスケットに麦芽穀皮30gを入れ、水に触れないように設置した。なお、麦芽穀皮は欧州産二条大麦麦芽を乾式粉砕した麦芽粉末を篩(0.7mm)で分画して得た。窒素を約5秒間程度送り込むことにより容器内の空気を置換した後、140℃で0.25MPa、200℃で1.4 MPa、250℃で4.5MPaというそれぞれの条件で60秒間高温高圧状態を保持し、水熱反応を行った後、容器を冷却し、反応容器が80℃以下になった時点で容器を開放し、麦芽穀皮をとりだした。このようにして本発明にかかる麦芽穀皮を得た。
【0074】
得られた高温高圧処理麦芽穀皮20gに水80mlを加え、65℃にて15分間および75℃にて15分間、温水抽出した。温水抽出液中のリグニン系フェノール化合物の量を、実施例1のリグニン系フェノール化合物測定法に従い測定した。下記表にその結果を示す。表中の値は麦芽穀皮100gあたりの各化合物の重量(mg)である。
【0075】
【表2】
【0076】
従来、穀類の穀皮は、ビールや発泡酒の製造工程において、廃棄物として処理されていた。しかし、穀類のリグニンは、その多くが穀皮に局在しているので、穀類の穀皮部分に本発明にかかる高温高圧処理を施せば穀物全粒の場合と同等かそれ以上のリグニン系フェノール化合物が得られる。第2表に示すように、穀類の穀皮あるいは穀皮を含む画分に本発明にかかる高温高圧処理を施した場合も、リグニン分解物であるバニリンなどのリグニン系フェノール化合物を著量生成することができた。
【0077】
これらのリグニン系フェノール化合物は、バニリン類に代表されるような芳香性をもち、それらの特徴的な芳ばしい香りを当該穀類加工品に与える。さらに、リグニン含有率の高い穀類穀皮のみを処理した場合、処理物の全重量に対するリグニン系フェノール化合物の割合が増加するため、これらの芳ばしい香りが増大した。
【0078】
<実施例3> 脂質酸化抑制の検討
本発明の高温高圧処理によれば、処理中の高温高圧状態を密閉系で行うため、穀類などのリグニン含有植物を開放下にて焙燥することにより製造する従来の特殊麦芽などの原料とは異なる効果が得られる。すなわち、低酸素状況における化学反応の結果、脂質などの酸化が抑制された低酸化穀類加工品を製造することができる。本発明によって、穀類の処理時に酸素との接触を最低限に抑えることができ、その結果、穀類などに内在する脂質の酸化を抑制することができる。
【0079】
実施例1に記載の方法に従って高温高圧処理麦芽を得た。
第1図は、麦芽、3つの条件(180℃、0.9MPa;190℃、1.1MPa;210℃、1.8MPa)で実施例1と同一の処理をした高温高圧処理麦芽、及びメラノイジン麦芽ないしカラメル麦芽である各特殊麦芽の遊離脂肪酸分析の結果である。脂肪酸分析は、麦芽、高温高圧処理麦芽、各特殊麦芽を粉砕後、麦芽粉末20gに水80mlを加え、65℃で15分間および75℃で15分間、温水抽出した抽出液100μlに0.02Mの2−ニトロフェニルヒドラジン塩酸塩−エタノール溶液200μlおよび0.25Mの1−エチル−3−(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド゛塩酸塩−エタノール溶液200μlを添加し、60℃で20分反応させた。反応後10%水酸化ナトリウム−メタノール溶液200μlを添加し、60℃にて15分間反応させ、冷却後0.5M塩酸−0.03Mリン酸水溶液4mlを加え、ついでn−ヘキサン5mlを加えヘキサン抽出を行った。ヘキサン層を回収後、ヘキサンを蒸発させ、残渣を0.5mlのメタノールに溶解し、HPLCにて脂肪酸を分析した。HPLCは高速液体クロマトグラフィーシステムCLASS−VPシリーズ(株式会社島津製作所製)を用いた。分離はYMC−PAC−FAカラム(6x250mm)を用い、水−アセトニトリル系の溶媒を用いて行った。分析条件は、流速1.2 ml/minにて、90%アセトニトリル(pH 4.5)にて25分間溶出し、400nmの吸光度で測定した。物質の同定は、市販の各標準物質のリテンションタイムとの比較により行った。
【0080】
第2図は、本発明において、麦芽、第1図と同様3つの条件で処理をした高温高圧処理麦芽、各特殊麦芽における共役ジエン型脂肪酸量、すなわち脂肪酸過酸化度を示す。脂肪酸過酸化度の測定は、麦芽粉末0.5gに(メタノール:エーテル=1:3)混合液5mlを添加し、5分間振とう後、234nmにて吸光度を測定した。不飽和脂肪酸酸化物である共役ジエンは、234nmに強い吸収をもつことを利用して測定した。
【0081】
第3図は、本発明において、麦芽、第1図と同様3つの条件で処理をした高温高圧処理麦芽、各特殊麦芽のアルデヒド類測定の結果である。アルデヒド類の測定は以下のように行った。麦芽粉末5gを50ml酢酸エチルにて抽出し、100μlまで濃縮後、エタノール400μlおよび10mM亜硫酸水素ナトリウム溶液500μlを加え、室温にて60分間反応させた。反応液をHPLCにて分離し、ポストカラムにてオルトフタルアルデヒドとアンモニアを反応させ、生成したイソインドール−2−スルホン酸を蛍光検出により測定した(特開平4−208855)。
【0082】
第1図、第2図、第3図より、本発明における高温高圧処理麦芽においては、従来の特殊麦芽に比べ、脂質酸化が抑えられていることがわかる。従来のメラノイジン麦芽では、脂質からの脂肪酸の遊離も多く、脂質の酸化によって生ずる過酸化脂肪酸やアルデヒド類の生成量も非常に大きい値を示した。またカラメル麦芽においても過酸化脂質の生成量が通常麦芽の2倍程度と非常に高い値を示しており、アルデヒド類の生成量も多かった。これに対し、本発明による高温高圧処理麦芽においては、遊離長鎖脂肪酸、過酸化脂質、アルデヒド類のいずれにおいても低い値を示しており、脂質の酸化反応を抑制できていることが確認された。従って本発明にかかる高温高圧処理を施すことにより、従来のメラノイジン麦芽やカラメル麦芽などの酒類の穀物原料の製造工程でおこっていた脂質などの酸化劣化をおこすことなく穀類を酒類の原料化することができ、すなわち酸化劣化物の少ない低酸化穀類を製造することが可能となった。
この低酸化ビール原料、発泡酒原料を使用することにより、従来のメラノイジン麦芽等の特殊麦芽を用いて醸造したビールおよび発泡酒よりも、脂質の酸化した嫌な臭いを著しく低減することができ、また脂質酸化物のもつ舌に残るエグミをかなりの程度低減することができた。また、ビール発泡酒製品の泡持ちや香味安定性を向上させることができ、総じてビールおよび発泡酒品質を飛躍的に向上させることが可能となった。すなわち本発明は、穀類の脂質などの酸化反応を簡便に制御することより、酒類の穀物原料の質を高め、その結果、香味や泡持ちなどのビールおよび発泡酒の品質を飛躍的に向上せしめるものである。
【0083】
<実施例4> 麦芽を用いた発泡酒の製造
本発明における麦芽加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を、水を除く全使用原料(以下単に使用原料という。)の2.5%使用して、発泡酒(製品B)を得た。具体的には、麦芽27kgに高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を3kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、糖化スターチを麦芽比率25%になるように加えて撹拌し、ホップ約100gを投入して100℃で約1時間煮沸した。12℃に冷却した後、ビール醸造用酵母約300gを添加し2週間12℃で発酵させ、発泡酒(製品B)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品A)、従来技術としてメラノイジン麦芽を使用原料の10%使用した発泡酒(製品C)も全く同様に作成した。
【0084】
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理麦芽の使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、バニリン酸、p−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。
【0085】
【表3】
【0086】
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。
【0087】
【表4】
【0088】
また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。
【0089】
【表5】
【0090】
<実施例5> 麦芽を用いたビールの製造
本発明における麦芽加工品を原料とし、ビールを製造した例を示す。実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を使用原料の5%使用して、ビール(製品E)を得た。具体的には、麦芽25kgに高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を5kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、ホップ約100gを投入し100℃で約1時間煮沸した。12℃に冷却した後、ビール醸造用酵母約300gを添加し2週間12℃で発酵させ、ビール(製品E)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いたビール(製品D)も全く同様に作成した。
【0091】
ビール中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理麦芽の使用により、通常醸造におけるビールにおいては検出できないバニリンが検出され、プロトカテキュアルデヒド、バニリン酸、p−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。
【0092】
【表6】
【0093】
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。
【0094】
【表7】
【0095】
また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。
【0096】
【表8】
【0097】
<実施例6> イネ種子を用いた発泡酒の製造
本発明におけるイネ種子加工品を原料とし、発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにイネ種子を用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理イネ種子(200℃、1.4MPa)を、使用原料の2.5%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒(製品G)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品F)も全く同様に作成した。
【0098】
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理イネ種子の使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、バニリン酸、p−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。
【0099】
【表9】
【0100】
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。
【0101】
【表10】
【0102】
また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。
【0103】
【表11】
【0104】
<実施例7> 麦芽穀皮を用いた発泡酒の製造
本発明における麦芽穀皮加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。200℃、1.4MPaの条件で実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽穀皮を、使用原料の2.5%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒(製品I)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品H)も全く同様に作成した。
【0105】
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理麦芽穀皮の使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、バニリン酸、p−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。
【0106】
【表12】
【0107】
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。
【0108】
【表13】
【0109】
また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。
【0110】
【表14】
【0111】
<実施例8> 高温高圧処理麦芽穀皮を用いた発泡酒の製造
本発明における麦芽穀皮加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。400℃、25MPaの条件で実施例2に記載した方法に従って高温高圧処理麦芽穀皮を得た。反応容器から取り出した麦芽穀皮を凍結乾燥により乾固させ、コゲ臭を揮発させた超臨界流体処理麦芽穀皮を、使用原料の2.5%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒(製品K)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品J)も全く同様に作成した。
【0112】
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。超臨界流体処理麦芽穀皮の使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、プロトカテキュアルデヒド、バニリン酸、p−クマル酸、シリンガアルデヒド、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。
【0113】
【表15】
【0114】
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。
【0115】
【表16】
【0116】
また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。
【0117】
【表17】
【0118】
<実施例9> ホワイトオークを用いた発泡酒の製造
本発明におけるホワイトオーク加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにホワイトオークを用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理オーク(200℃、1.4MPa)を、粉砕機RETSCH(日本精機製作所社製:ZM100Japan)を用いて粉砕した。前記粉砕物を使用原料の2%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒(製品M)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品L)も全く同様に作成した。
【0119】
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理オークの使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、シリンガアルデヒド、バニリン酸、p−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物量が増加した。
【0120】
【表18】
【0121】
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。
【0122】
【表19】
【0123】
また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。
【0124】
【表20】
【0125】
<実施例10> タケを用いた発泡酒の製造
本発明におけるタケ加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにタケを用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理タケ(200℃、1.4MPa)を、粉砕機RETSCH(日本精機製作所社製:ZM100Japan)を用いて粉砕した。前記粉砕物を使用原料の2%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒(製品O)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品N)も全く同様に作成した。
【0126】
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理タケの使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、バニリン酸、p−クマル酸、シリンガアルデヒド、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。
【0127】
【表21】
【0128】
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。
【0129】
【表22】
【0130】
また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。
【0131】
【表23】
【0132】
以上の結果から明らかなように、本発明にかかる植物加工品の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りを発泡酒やビールに付与することができた。また香り成分の増加によって、発泡酒やビールにおいて香味バランスに変化を加えることができ、それにより発泡酒やビールの香味に厚みを増すことができ、コクやウマミなどを増強できた。また製品に色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む高温高圧処理麦芽使用による発泡酒またはビールの組成変化も大きく寄与していると考えられる。また、本発明にかかる植物加工品の使用により、麦芽などの植物に内在する物質の酸化を抑えることができた。特に酸化しやすい脂質などの酸化が抑制され、舌触りの悪さが改善されたことから飲みやすさが向上し、また脂質酸化臭などの嫌なにおいが著しく減少しており、発泡酒やビールの香味が格段に向上した。
【0133】
<実施例11> ムギワラを用いた発泡酒の製造
本発明におけるムギワラ加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにオオムギの茎部(ムギワラ)を用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理ムギワラ(200℃、1.4MPa)を、粉砕機RETSCH(日本精機製作所社製:ZM100Japan)を用いて粉砕した。前記粉砕物を使用原料の2%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒を得た。
【0134】
本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを発泡酒に付与することができた。また香り成分の増加によって、発泡酒の香味バランスに変化を加えることができ、それにより発泡酒の香味に厚みを増すことができ、コクを増強できた。また製品に色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む処理原料使用による発泡酒の組成変化も大きく寄与していると考えられる。本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物などによる芳ばしい香りやコクなどを製品に付与でき、芳香を有する新規な香味を創生できた。
【0135】
<実施例12> 麦芽の高温高圧処理加工品
2軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX30F)を用いて欧州産2条麦芽を温度200℃、圧力0.6MPa、1分の条件で高温高圧処理を行い、本発明にかかる麦芽加工品を得た。この麦芽加工品は、さらなる粉砕等を行わなくても水(温水等含む)に容易に溶解させることができた。
実施例1に記載された方法で各種分析を行った結果、実施例1に記載された麦芽加工品と同等のリグニン系フェノール化合物の生成、脂質酸化の抑制がみられた。
【0136】
【表24】
【0137】
実施例1に記載された高温高圧処理の効果を保持したまま、麦芽の連続処理が行え、効率よく麦芽加工品を得ることができた。また本発明は、高温高圧処理と同時に粉砕、成形加工や乾燥を行うことができ、したがって本発明にかかる植物加工品は、乾燥工程、粉砕工程等の、さらなる加工工程を必要とせず、そのまま水(温水等含む)に均一に溶解させることができ、酒類や食品の原料としての利便性が高まるという効果があった。
【0138】
<実施例13> 麦芽を用いた発泡酒の製造
本発明における麦芽加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。実施例12に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽を、水を除く全使用原料(以下単に使用原料という。)の2.5%使用して、発泡酒を得た。具体的には、麦芽27kgに実施例12で得られた高温高圧処理麦芽を3kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、糖化スターチを麦芽比率25%になるように加えて攪拌し、ホップ約100gを投入して100℃で約1時間煮沸した。12℃に冷却した後、ビール醸造用酵母約300gを添加し2週間12℃で発酵させ、発泡酒を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒も全く同様に比較例として作成し、本発明にかかる麦芽加工品の効果を比較検討した。
【0139】
【表25】
【0140】
その結果、本発明にかかる植物加工品の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りを発泡酒に付与することができた。また香り成分の増加によって、発泡酒の香味バランスに変化を加えることができ、それにより発泡酒の香味に厚みを増すことができ、コクやウマミなどを増強できた。また発泡酒に色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。
【0141】
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。
【0142】
【表26】
【0143】
また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。
【0144】
【表27】
【0145】
これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む高温高圧処理麦芽使用による発泡酒の組成変化も大きく寄与していると考えられる。また、本発明にかかる植物加工品の使用により、麦芽などの植物に内在する物質の酸化を抑えることができた。特に酸化しやすい脂質などの酸化が抑制され、舌触りの悪さが改善されたことから飲みやすさが向上し、また脂質酸化臭などの嫌なにおいが著しく減少しており、発泡酒の香味が格段に向上した。
【0146】
<実施例14> 麦芽を用いたビールの製造
本発明における麦芽加工品を原料とし、ビールを製造した例を示す。実施例12に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽を、使用原料の5%使用して、ビールを得た。具体的には、麦芽25kgに実施例12に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽を5kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、ホップ約100gを投入し100℃で約1時間煮沸した。12℃に冷却した後、ビール醸造用酵母約300gを添加し2週間12℃で発酵させ、ビールを得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いたビールも全く同様に比較例として作成し、本発明にかかる麦芽加工品の効果を比較検討した。
【0147】
【表28】
【0148】
その結果、本発明にかかる植物加工品の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りをビールに付与することができた。また香り成分の増加によって、ビールの香味バランスに変化を加えることができ、それによりビールの香味に厚みを増すことができ、コクやウマミなどを増強できた。またビールに色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。
【0149】
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。
【0150】
【表29】
【0151】
また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。
【0152】
【表30】
【0153】
これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む高温高圧処理麦芽使用によるビールの組成変化も大きく寄与していると考えられる。また、本発明にかかる植物加工品の使用により、麦芽などの植物に内在する物質の酸化を抑えることができた。特に酸化しやすい脂質などの酸化が抑制され、舌触りの悪さが改善されたことから飲みやすさが向上し、また脂質酸化臭などの嫌なにおいが著しく減少しており、ビールの香味が格段に向上した。
【0154】
<実施例15> イネ種子を用いた発泡酒の製造
本発明におけるイネ種子加工品を原料とし、発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにイネ種子を用いて実施例12に記載した方法に従って得た高温高圧処理イネ種子を、使用原料の2.5%使用して、実施例13に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒も全く同様に比較例として作成し、本発明にかかるイネ種子加工品の効果を比較検討した。
【0155】
【表31】
【0156】
その結果、本発明にかかる植物加工品の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りを発泡酒に付与することができた。また香り成分の増加によって、発泡酒の香味バランスに変化を加えることができ、それにより発泡酒の香味に厚みを増すことができ、コクやウマミなどを増強できた。また発泡酒に色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。
【0157】
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。
【0158】
【表32】
【0159】
また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。
【0160】
【表33】
【0161】
これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む高温高圧処理イネ種子使用による発泡酒の組成変化も大きく寄与していると考えられる。また、本発明にかかる植物加工品の使用により、イネ種子などの植物に内在する物質の酸化を抑えることができた。特に酸化しやすい脂質などの酸化が抑制され、舌触りの悪さが改善されたことから飲みやすさが向上し、また脂質酸化臭などの嫌なにおいが著しく減少しており、発泡酒の香味が格段に向上した。
【0162】
実施例12〜15は、本発明者らによって新たに開発されたシリンダ内を高温高圧に保持した2軸押出機(エクストルーダ)を使用することにより、▲1▼原料を連続的に加工でき、▲2▼高温高圧処理と同時に、粉砕・乾燥が同時に行える、植物の新しい高温高圧処理加工方法である。本発明にかかる植物加工品は、さらなる粉砕等を行わなくても水(湯)に容易に溶解させることができる。これにより実施例1〜11に記載された高温高圧処理の効果を保持したまま、連続加工が実現でき、原料の粉砕工程や、高温高圧処理後の乾燥工程が不要になり、生産効率が極めて向上する。
【0163】
<実施例16> ムギワラを用いた発泡酒の製造
本発明におけるムギワラ加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにオオムギの茎部(ムギワラ)を用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理ムギワラ(200℃、1.4MPa)を、粉砕機RETSCH(日本精機製作所社製:ZM100Japan)を用いて粉砕した。前記粉砕物を使用原料の2%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒を得た。
【0164】
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理タケの使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、バニリン酸、p―クマル酸、シリンガアルデヒド、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。
【0165】
【表34】
【0166】
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。
【0167】
【表35】
【0168】
また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。
【0169】
【表36】
【0170】
本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを発泡酒に付与することができた。また香り成分の増加によって、発泡酒の香味バランスに変化を加えることができ、それにより発泡酒の香味に厚みを増すことができ、コクを増強できた。また製品に色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む処理原料使用による発泡酒の組成変化も大きく寄与していると考えられる。本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物などによる芳ばしい香りやコクなどを製品に付与でき、芳香を有する新規な香味を創生できた。
【0171】
<実施例17> 麦芽を用いたウィスキーの製造
本発明における麦芽加工品を原料とし、ウィスキーを製造した例を示す。実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を、使用原料の5%使用して、ウィスキーを得た。具体的には、麦芽25kgに高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を5kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、蒸留によって得たニューポット(蒸留液)をホワイトオーク製の樽に詰めて3年間貯蔵し、ウィスキーを得た。
【0172】
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをウィスキーに付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む処理原料を使用したことによるウィスキーの組成変化も大きく寄与していると考えられる。
【0173】
<実施例18> 麦芽穀皮を用いたウィスキーの製造
本発明における麦芽穀皮加工品を原料とし、ウィスキーを製造した例を示す。実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽穀皮(200℃、1.4MPa)を、使用原料の5%使用して、ウィスキーを得た。具体的には、麦芽25kgに高温高圧処理麦芽穀皮(200℃、1.4MPa)を5kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、蒸留によって得たニューポット(蒸留液)をホワイトオーク製の樽に詰めて3年間貯蔵し、ウィスキーを得た。
【0174】
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをウィスキーに付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を使用したことによるウィスキーの組成変化も大きく寄与していると考えられる。
【0175】
<実施例19> オオムギ種子を用いた焼酎の製造
本発明におけるオオムギ種子加工品を原料とし、焼酎を製造した例を示す。麦芽の代わりにオオムギ種子を用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理オオムギ種子(200℃、1.4MPa)を使用して、焼酎を得た。具体的には、乾燥コウジ2.5kgに乾燥酵母100mgと水3Lを加え攪拌して25℃にて4日間静置した。その後粉砕した高温高圧処理オオムギ種子(200℃、1.4MPa)を5kgと水7.5Lを加えて攪拌し、25℃で2週間静置後、蒸留によって焼酎を得た。
【0176】
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを焼酎に付与することができた。甘くて芳ばしい香りの付与とともに口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を使用したことによる焼酎の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
【0177】
<実施例20> イネ種子穀皮を用いたスピリッツ類の製造
本発明におけるイネ種子穀皮加工品を原料とし、スピリッツ類を製造した例を示す。麦芽穀皮の代わりにイネ種子穀皮を用いて、実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理イネ種子穀皮(200℃、1.4MPa)を、使用原料の10%使用して、スピリッツ類を得た。具体的には、麦芽45kgに高温高圧処理イネ種子穀皮(200℃、1.4MPa)を5kg混合し、65℃の水200Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、連続式蒸留によってスピリッツ類を得た。
【0178】
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをスピリッツ類に付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を使用したことによるスピリッツ類の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
【0179】
<実施例21> ホワイトオーク材を用いたスピリッツ類の製造
本発明におけるホワイトオーク材加工品を用いて、スピリッツ類を製造した例を示す。麦芽の代わりにホワイトオーク材を用いて実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理ホワイトオーク材(200℃、1.4MPa)を1センチ角の立方体形に加工し、グレーンスピリッツに0.1%添加し浸漬することにより、スピリッツ類を得た。
【0180】
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをスピリッツ類に付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を浸漬したことによるスピリッツ類の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
【0181】
<実施例22> オオムギ種子とサクラ材を用いたスピリッツ類の製造
本発明におけるオオムギ種子加工品を原料とし、スピリッツ類を製造した例を示す。麦芽の代わりにオオムギ種子を用いて、実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理オオムギ種子(200℃、1.4MPa)を、使用原料の10%使用して、スピリッツ類を得た。具体的には、麦芽45kgに高温高圧処理オオムギ種子(200℃、1.4MPa)を5kg混合し、65℃の水200Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、連続式蒸留によってスピリッツ類を得た。麦芽の代わりにサクラ材を用いて実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理サクラ材(200℃、1.4MPa)を1センチ角の立方体形に加工し、得られたスピリッツ類に0.1%添加し浸漬することにより、スピリッツ類を得た。
【0182】
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをスピリッツ類に付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を使用したことによるスピリッツ類の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
【0183】
<実施例23> 麦芽を用いたリキュール類の製造
本発明における麦芽加工品を原料とし、リキュール類を製造した例を示す。実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を、グレーンスピリッツに5%添加して浸漬することにより、リキュール類を得た。
【0184】
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、高温高圧処理麦芽の浸漬により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをリキュール類に付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を使用したことによるリキュール類の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
【0185】
<実施例24> 茶葉を用いたリキュール類の製造
本発明における茶葉加工品を原料とし、リキュール類を製造した例を示す。麦芽穀皮の代わりに茶葉を用い、実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理茶葉(200℃、1.4MPa)を、グレーンスピリッツに5%添加して浸漬することにより、リキュール類を得た。
【0186】
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、高温高圧処理茶葉の浸漬により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをリキュール類に付与することができた。香りの伸びがきれいで芳ばしく、口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を浸漬したことによるリキュール類の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
【0187】
<実施例25> 茶葉を用いた茶飲料の製造
本発明における茶葉加工品を用いて茶飲料を製造した例を示す。麦芽穀皮の代わりに生茶葉を用い、実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理茶葉(200℃、1.4MPa)を、90℃の熱水に浸漬することにより、茶飲料を得た。
【0188】
官能評価は5名のパネリストにより行い、茶飲料の香味について特徴を調べたところ、高温高圧処理茶葉の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを付与することができた。甘酸っぱくて芳ばしい香りの伸びがきれいで、口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミ・適度な酸味を感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理茶葉を使用したことによる茶飲料の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
【0189】
<実施例26> オオムギ種子を用いた茶飲料の製造
本発明におけるオオムギ種子加工品を原料とし、茶飲料を製造した例を示す。麦芽の代わりにオオムギ種子を用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理オオムギ種子(200℃、1.4MPa)を使用茶葉の10%を茶葉に混合し、90℃の熱水に浸漬することにより、茶飲料を得た。
【0190】
官能評価は5名のパネリストにより行い、茶飲料の香味について特徴を調べたところ、高温高圧処理オオムギ種子の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを付与することができた。甘酸っぱくて芳ばしい香りの伸びがきれいで、口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミ・適度な酸味を感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理茶葉を使用したことによる茶飲料の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
【0191】
<実施例27> 麦芽、イネ種子穀皮、タケ材を用いた茶飲料の製造
本発明における麦芽加工品、イネ種子穀皮加工品、タケ材加工品を用いて混合茶飲料を製造した例を示す。実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)、麦芽穀皮の代わりにイネ種子穀皮を用い、実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理イネ種子(200℃、1.4MPa)をそれぞれ使用茶葉の3%を茶葉に混合し、麦芽穀皮の代わりにタケを用いて、実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理タケ材(200℃、1.4MPa)を約1センチ角の大きさに切断したものとともに、90℃の熱水にて浸漬することにより混合茶飲料を得た。
【0192】
官能評価は5名のパネリストにより行い、茶飲料の香味について特徴を調べたところ、高温高圧処理麦芽、高温高圧処理麦芽穀皮と高温高圧処理タケ材の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを付与することができた。甘くて芳ばしい香りに加え、タケの華やかな香りも付与でき、口あたりをまろやかにする効果や味わい・ウマミを感じさせる効果があった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理茶葉を使用したことによる茶飲料の組成変化も大きく寄与していると考えられる。