特許第6064004号(P6064004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064004
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸ゲル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20170106BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20170106BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20170106BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20170106BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/02
   A61K8/34
   A61K8/36
   A61Q19/00
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-146211(P2015-146211)
(22)【出願日】2015年7月23日
(62)【分割の表示】特願2012-242203(P2012-242203)の分割
【原出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-187184(P2015-187184A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-149908(P2012-149908)
(32)【優先日】2012年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501296380
【氏名又は名称】コスメディ製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】米戸 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 純也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 奈穂子
(72)【発明者】
【氏名】権 英淑
(72)【発明者】
【氏名】神山 文男
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−180705(JP,A)
【文献】 特開2007−297460(JP,A)
【文献】 特開2001−064154(JP,A)
【文献】 特開2009−102228(JP,A)
【文献】 特開2001−335427(JP,A)
【文献】 特開2002−212047(JP,A)
【文献】 特開2010−082401(JP,A)
【文献】 特開平06−065048(JP,A)
【文献】 新化粧品ハンドブック,2006年10月,p.667-p.682
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が5×10〜5×10ダルトンの範囲であるヒアルロン酸100重量部に対し、多価カルボン酸若しくはオキシカルボン酸を10〜100重量部、多価アルコールを100〜8000重量部の割合で含有するヒアルロン酸ゲル。
【請求項2】
前記分子量が5×10〜5×10ダルトンの範囲のヒアルロン酸と、そのヒアルロン酸に対して10重量%以上の分子量が1×10ダルトン以下のヒアルロン酸を含む請求項1に記載のヒアルロン酸ゲル。
【請求項3】
前記多価カルボン酸若しくはオキシカルボン酸が、クエン酸、酒石酸及び乳酸からなる群より選ばれた少なくとも1種以上のカルボン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒアルロン酸ゲル。
【請求項4】
前記多価アルコールが、グリセリンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒアルロン酸ゲル。
【請求項5】
ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールからなる群より選ばれた1種以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒアルロン酸ゲル。
【請求項6】
化粧品や医薬品に用いられている成分をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒアルロン酸ゲル。
【請求項7】
分子量が5×10〜5×10ダルトンの範囲であるヒアルロン酸100重量部に対し、多価カルボン酸若しくはオキシカルボン酸を10〜100重量部、多価アルコールを100〜8000重量部の割合で含有する水溶液を調整し、その水分を乾燥させることを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なヒアルロン酸ゲルを用いる新しい化粧料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、β−D−N−アセチルグルコサミンとβ−D−グルクロン酸が交互に結合した直鎖状の高分子多糖である。ヒアルロン酸は哺乳動物の結合組織に分布するほか、鶏の鶏冠、臍帯等からの単離抽出か、ストレプトコッカス属等の微生物を用いた発酵法により調製される。
【0003】
また、ヒアルロン酸は人体中に含まれ生体適合性に優れ、保湿作用を初めいろいろな薬効を示すので、医療分野や美容分野において天然素材として注目されている。また、ヒアルロン酸のゲルは取り扱い性に優れ、医療分野や美容分野において非常に有用である。
【0004】
ヒアルロン酸ゲルは、通常ヒアルロン酸を化学修飾により架橋して調製される(特許文献1〜3)が、化学修飾された架橋ヒアルロン酸は、天然のヒアルロン酸そのものではない。また、酸を用いるヒアルロン酸ゲルの製造方法も知られている(特許文献4、5)が、工程が複雑で、医療分野や美容分野で必要なゲルシート等の形態のヒアルロン酸ゲルの製造には不適当である。また、これらのゲルは水に難溶性であることからヒアルロン酸が溶け出さず、ヒアルロン酸が皮膚に作用して皮膚に潤いやハリを与える美容分野に用いるゲルとして不向きである。
【0005】
最近シワ対策として、皮膚の加温が有効なことが科学的に知られ注目されている。皮膚温を上昇させる化粧品として、グリセリン等多価アルコールを水と混合し発熱させ温熱効果をもたらす化粧料が既に知られている(特許文献6,7)。しかし、これらの化粧料は使用時に多価アルコール含有製剤と水含有製剤とを混合させて発熱させて皮膚に塗布するものであるため取扱が煩雑である。
炭酸ガスを皮膚に吸収させて血流を改善する化粧料も知られている(特許文献8)。しかしこの化粧料も、使用時に炭酸塩を含む製剤と酸性成分を含む製剤を混合し炭酸ガスを発生させつつ顔に塗るものであり使用が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3094074号公報
【特許文献2】特開平8−143604号公報
【特許文献3】国際公開第2006/051950号
【特許文献4】特開平5−58881号公報
【特許文献5】国際公開第2001/57093号
【特許文献6】特開2002−338423号
【特許文献7】特開2006−306843号
【特許文献8】特開2002−338423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記の従来の問題点を解決し、製法が簡易で、かつ、ヒアルロン酸本来の優れた特長を生かし、化粧料として必要な柔軟性、弾性、及び引っ張り強度を有するゲルであって、皮膚面によくフィットし皮膚に密着して皮膚に潤い効果を与えるヒアルロン酸ゲルからなる化粧料を提供することにある。さらに本ヒアルロン酸ゲル化粧料を皮膚に適用後水とともにマッサージすると本ゲルが速やかに溶解し、ヒアルロン酸及び化粧料に含まれる配合成分が皮膚に吸収されることを特徴とする化粧料を提供することにある。
さらに本発明が解決しようとする課題は、皮膚に適用し抗シワ効果や美容効果の高い化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明に係るヒアルロン酸ゲル及びゲルシートは、ヒアルロン酸、多価カルボン酸若しくはオキシカルボン酸、及び多価アルコールを構成成分とすることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るヒアルロン酸ゲル及びゲルシートは、適量の水又は化粧水の添加によって速やかに溶解することを特徴とする
速やかに溶解するのは、その様に素材が選択されているためである。
【0010】
ヒアルロン酸、多価カルボン酸若しくはオキシカルボン酸、及び多価アルコールを含む水溶液を調製し、その水分を乾燥させることにより、目的とする特長を有するヒアルロン酸ゲルを簡易に調製することができる。
多価カルボン酸若しくはオキシカルボン酸は、ヒアルロン酸に対して10重量%以上400重量%以下が好ましく、10重量%以上100重量%以下がさらに好ましい。多価アルコールは100重量%以上8000重量%以下が好ましい。その中には化粧用有価成分を含有してもよい。
【0011】
本ヒアルロン酸ゲルの特徴は、本ゲルが多量の水に接する時ゲル構造が壊れてヒルロン酸が溶解することにある。本発明においてのヒアルロン酸ゲルは可逆的にゲル状態と可溶体とになり得る。それゆえ、ゲル状態で皮膚に貼付した後適量の水を加えてマッサージすることによりヒアルロン酸ゲルを可溶化してヒアルロン酸及び配合有価成分を皮膚に効果的に吸収させることが可能となる。
【0012】
本水溶性ヒアルロン酸ゲルシートを皮膚に適用すると、ゲルに含まれる多量の多価アルコールが水分と水和反応し発熱し皮膚に対し穏やかな温感を与え皮膚を癒す特徴を有する。
【0013】
ヒアルロン酸ゲルシートは、全顔面用シート、目元用シート等化粧料として適当な形状のシートに成形する。シートの厚みは30μmから1,000μmが適当である。シートの厚みが30μm以下ではシートの強度が不足し取り扱いに不便であるほか、皮膚適用時の温感が不足する。厚さが1,000μ以上では重たくやはり取り扱いに不便である。
【0014】
ヒアルロン酸ゲルシートの化粧料としての特徴は、ゲルが多量の水に接する時ゲル構造が壊れてヒルロン酸が溶解することにある。本ヒアルロン酸ゲルは可逆的にゲル状態と可溶体とになり得る。それゆえ、ゲル状態で皮膚に貼付した後適量の水を加えてマッサージすることによりヒアルロン酸ゲルを可溶化してヒアルロン酸及び配合有価成分を皮膚に効果的に吸収させることが可能となる。
【0015】
その際に水または有価成分を含む化粧水を用いてマッサージすれば温感を与えつつゲル構造が壊れて水溶性ヒアルロン酸として溶解する。炭酸塩を適量加えた水または化粧水を用いると、ヒアルロン酸ゲルがヒアルロン酸及び多価アルコールに起因して酸性であることから、炭酸塩が酸化されて炭酸ガスとなり皮膚上で発泡する。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、等を用いることができる。皮膚表面で発生した炭酸ガスは皮膚内に取り込まれて皮膚細胞の新陳代謝を促し皮膚の活性化を促すことにより美容効果をさらに高めるという特徴を有する。
【0016】
本発明において原料ヒアルロン酸は、動物組織から抽出してものでも、発酵法で生成したものでも、いずれでもよい。またヒアルロン酸は、ナトリウム塩またはカリウム塩等の金属塩であってもよい。
【0017】
本発明において原料ヒアルロン酸の分子量は、約5×10〜5×10ダルトンの範囲が好ましい。この範囲内であれば、異なる分子量の2種以上のヒアルロン酸を混合して用いてもよい。また、この範囲の分子量のものとこの範囲より分子量が小さいものを混合して用いることもできる。低分子量ヒアルロン酸(分子量1×10以下)、コラーゲン、アセチルグルコサミン等の低分子水溶性物質の添加はゲルの溶解性を早めることが可能である。
【0018】
本発明に用いられるヒアルロン酸の量は、ゲル中で0.1重量%から50重量%の範囲が好ましい。ゲル中のヒアルロン酸の量が0.1重量%よりも少ないと柔らかくなってしまい、優れた弾性体のゲルを形成できない。一方、50重量%を超えると固くなり、優れた弾性体のゲルを形成できず皮膚への密着性も悪い。
【0019】
本発明で用いられる多価カルボン酸は、分子内に2つ以上のカルボン酸基を有するものであれば特に制限されず、オキシカルボン酸は分子内にカルボン酸基と水酸基を有するものであれば特に制限されない。例えば、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸等を用いることができる。クエン酸と乳酸は特に好ましい。また、2種類以上の多価カルボン酸若しくはオキシカルボン酸を混合して用いることができる。
多価カルボン酸若しくはオキシカルボン酸の量は、ヒアルロン酸に対して10重量%以上が好ましく、20〜100重量%の範囲がより好ましい。10重量%より少ないと、優れた弾性体のゲルを形成できない。一方、ゲル形成には100重量%で十分であり、これ以上はゲルの酸性度が不必要に高くなり好ましくない。
【0020】
本発明で用いられる多価アルコールは特に制限されず、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等を用いることができる。この中でもグリセリン及びプロピレングリコールが特に好ましい。
多価アルコールの量は、ヒアルロン酸に対して100重量%以上あれば好ましく、200〜8000重量%の範囲がより好ましい。多価アルコールの量が100重量%より少ないと、優れた弾性体のゲルを形成できない。一方、8000重量%を超えると柔らかくなり、優れた弾性体のゲルを形成できない。
【0021】
本発明において、ヒアルロン酸ゲル中には、必要に応じて適量の水を含ませて硬さを調節できる。
【0022】
本発明のヒアルロン酸ゲル及びゲルシートには、本発明の目的及び効果に影響が出ない範囲で化粧料や医薬品に用いられる成分を配合できる。特に化粧品、医薬部外品としての応用に有利である。配合可能な成分として例えば、美白成分、抗シワ成分、抗炎症成分、血行促進成分、抗菌成分、抗そう痒成分、各種ビタミン及びその誘導体、抗酸化成分色素、香料等が挙げられる。
【0023】
美白成分としては、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩、アスコルビン酸グルコシド及びその塩類及びアシル化誘導体、エチルアスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビルなどのビタミンC誘導体、α−アルブナン、β−アルブチン、コウジ酸、プラセンタエキス、システイン、グルタチオン、エラグ酸、ルシノール、トラネキサム酸、バイカレイン、アデノシン及びそのリン酸ナトリム塩、アスタキサンチン、鹿角霊芝、油溶性甘草、ラベンダー、ルムプヤン、ワレモコウ、レスベラトロール、霊芝及びそれらのエキス、チンキ或いはそれらに含まれる成分等が挙げられる。
【0024】
保湿成分としては、乳酸、尿素、ソルビトール、アミノ酸、アセチルグルコサミン、等が挙げられる。
抗シワ成分としては、特に限定されないが、例えば、レチノール、レチノイン酸、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノールなどのレチノイド、クエン酸、フルーツ酸、グリコール酸、乳酸などのα−ヒドロキシ酸、α−ヒドロキシ酸コレステロール、ルチン糖誘導体、N−メチルセリン、エラスチン、コラーゲン、セリシン、ツボクサエキス、黄金エキス、等が挙げられる。
【0025】
抗炎症成分としては、特に限定されないが、例えば、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸2K,アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、アズレン、シコニン、トラネキサム酸及びオウレン、甘草、テルミナリア、セイヨウノコギリソウ、シコン、ヒレハリ草、アロエ、ブッチャーブルーム、マロニエ、モモ葉、ビワ葉及びそれらのエキス、チンキ或いはそれらに含まれる成分などが挙げられる。
【0026】
血行促進成分としては、特に限定されないが、例えば、ビタミンE類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、ニコモール、カフェイン、カプサイシン、ノナン酸バニリルアミド、ショウガオール、ジンゲロール、等が挙げられる。
【0027】
抗菌成分としては、特に限定されないが、例えば、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、トリクロカルバン、トリクロロヒドロキシフェノール、ハロカルバン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン界面活性剤、感光素、酸化亜鉛、酸化チタン、キチン、キトサン、ヒノキチオール及びアニス、等が挙げられる。
【0028】
抗そう痒成分としては、特に限定されないが、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、クロタミトン、グリチルリチン酸類、メントール、カンファー、ローズマリー油、カプサイシン、ノナン酸バニリルアミド、ジブカイン等が挙げられる。
【0029】
ビタミン類としては、特に限定されないが、例えば、油溶性ビタミン類としてビタミンA油、肝油、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチノール、デヒドロレチノール、ビタミンA、レチノイン酸、ビタミンD、ビタミンD(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミン誘導体、ビタミンE(トコフェロール)、酢酸dl−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、酪酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジルエステル、天然ビタミンE、ビタミンK、ビタミンU等が挙げられる。又、水溶性ビタミン類として、ビタミンB(サイアミン)、ビタミンB(リボフラビン酪酸エステル)、ビタミンB(ジカプリル酸ピリドキシン、ジパルミチン酸ピリドキシンなど脂肪酸エステル)、ビタミンB12(コバラミン)、ビタミンB13、ビタミンB14、ビタミンB15(パンガミン酸)、葉酸、カルニチン、チオクト酸、パントテニールアルコール、パントテニールエチルエーテル、パントテン酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、コリン、イノシトール、ビタミンC(アスコルビン酸)、ステアリン酸アスコルビル、パントテン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、ビタミンH(ビオチン)、ビタミンP(ヘスペリジン)、アプレシア、等が挙げられる。
【0030】
抗酸化成分としては、特に限定されないが、例えば、アントシアニン、カテキン、緑茶ポリフェノール、りんごポリフェノールなどのポリフェノール類、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸硫酸ナトリウム、β−カロチン、アスタキサンチンなどのカロテノイド、トコフェロール類、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、トコモノエノール、トコトリエノール、クルクミンなどのβ−ジケトン、セサミン、セサモリンなどのリグナン、オイゲノールなどのフェノール、等が挙げられる。
抗アレルギー成分としては、特に限定されないが、例えば、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸2K,などのグリチルレチン酸誘導体、甘草、クロレラ、コンフリー、ボタンピ、フユボダイジュ、エンメイソウ、セージ、シソ、ヨモギ及びそれらのエキス、チンキ或いはそれらに含まれる成分等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いる化粧水には、本発明の目的及び効果に影響が出ない範囲で化粧料や医薬品に用いられる成分を配合できる。特に化粧品、医薬部外品としての応用に有利である。配合可能な成分として例えば、美白成分、抗シワ成分、抗炎症成分、血行促進成分、抗菌成分、抗そう痒成分、各種ビタミン及びその誘導体、抗酸化成分色素、香料等が挙げられる。
【0032】
本発明のヒアルロン酸ゲル及びゲルシートに水若しくは化粧水を加えて炭酸ガスを発生させるためには、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩を添加し、水若しくは化粧水のpHを6.5〜7.5付近に調整しておくことが好ましい。この水若しくは化粧水をヒアルロン酸ゲルシートにふりかけマッサージすると、炭酸塩がヒアルロン酸ゲルシート中の酸と反応して炭酸ガスが発生する。用いる炭酸塩の水若しくは化粧水中の濃度は2〜20%が好ましく、さらに好ましくは3〜7%である。2%より低いと炭酸ガスの発生が不十分であり、20%以上であると炭酸塩が十分に反応しきれず皮膚に残り、皮膚への感触が悪化する。
【0033】
本発明において、ヒアルロン酸ゲルを製造する方法は、特に限定されるものではないが、ヒアルロン酸、多価カルボン酸若しくはオキシカルボン酸、及び多価アルコールを水に均一に溶解し、目的とする形態となるように水分を適度に乾燥させ、ヒアルロン酸ゲルを製造することができる。
例えば、ヒアルロン酸ゲルシートの形態の場合、ヒアルロン酸、多価カルボン酸若しくはオキシカルボン酸、及び多価アルコールを含む各水溶液をプロペラ式回転型撹拌装置で攪拌し均一化し調製する。この調製した水溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一の厚みになるように塗布し、温風で乾燥することにより、透明で、均一な厚みのヒアルロン酸ゲルシートを製造することができる。実使用に当たってはシートを裁断して、円形、楕円形、勾玉状、フェイス状、のシート状化粧料として用いるのが望ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明のヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸本来の優れた特長を生かす。化学架橋をしないヒアルロン酸ゲルは水溶性であり、特に美容分野に用いる材料として有用であり皮膚に適用して後少量の水若しくは化粧水を加えてマッサージするとヒアルロン酸及び配合成分が皮膚に浸透しその後多量の水で洗い流しても、ヒアルロン酸及び配合成分の効果は持続して皮膚にうるおい感とすべすべ感を与える。さらに皮膚に温感を与えて心地よい皮膚感覚を与える。
【0035】
炭酸塩入りの水若しくは化粧水を加えてマッサージするとヒアルロン酸ゲルの酸性成分により炭酸イオンが炭酸ガスとなって皮膚中に浸透する。その後多量の水で洗い流しても、ヒアルロン酸及び配合成分及び炭酸ガスの効果は持続して皮膚にうるおい感、すべすべ感、ふっくら感を与える。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ヒアルロン酸ゲル及びゲルシートの成分配合表1
図2】ヒアルロン酸ゲル及びゲルシートの成分配合表2
図3】ヒアルロン酸ゲルシートの性状、密着性、溶解性の表
図4】皮膚水分増加量の表
図5】ヒアルロン酸ゲルシートの成分配合表3
図6】試験化粧水組成の表
図7】試験結果の表
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に実施例を例示して本発明を説明するが、もとより本発明は実施例に限定されるものではない。
【0038】
(ヒアルロン酸ゲルシートの製造)
実施例1〜29及び比較例1〜9のヒアルロン酸ゲルシートは、図1及び図2に記載の配合比(重量比)により作成した。図1、2において、ヒアルロン酸の欄の下には用いたヒアルロン酸の分子量を示している。この分子量は、いずれも購入商品に示されている数値である。H200は分子量約200万のヒアルロン酸(HA−LQH、キューピー(株)製)、H80は分子量約80万のヒアルロン酸(FCH−80、キッコーマンバイオケミファ(株)製)、H10は分子量約5〜10万のヒアルロン酸(FCH−SU、キッコーマンバイオケミファ(株)製)、H1は分子量約1万のヒアルロン酸(ヒアオリゴ、キューピー(株)製)、H0.2は分子量約2000のヒアルロン酸(マイクロヒアルロン酸、キッコーマンバイオケミファ(株)製)を表す。
また、グリセリン(濃グリセリン、ミヨシ油脂(株)製)、クエン酸(ナカライテクス(株)製)、ビタミンC誘導体(アプレシエ、昭和電工(株)製)、トコフェノール(ナカライテクス(株)製)、アデノシン(ナカライテクス(株)製)、ポリエチレングリコール(ポリエチレングリコール400、和光純薬(株)製)を用いた。その他の有価成分はいずれも粧原基記載のグレードを使用した。
【0039】
ヒアルロン酸、多価アルコール、多価カルボン酸若しくはオキシカルボン酸の各水溶液をプロペラ式回転型攪拌装置で攪拌均一化し調製した。実施例15、16においてトコフェロール及びアデノシンは少量のエタノールに溶解させて添加した。調製した水溶液を厚さ26μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(DIAFOIL#130−26:三菱樹脂(株)製)上に均一の厚みとなるよう塗布し、ギアオーブンで80℃、30分間乾燥し、厚さ約200μmのヒアルロン酸ゲルシート、または、ゲル化していない粘稠状物を得た。
【0040】
(製造されたヒアルロン酸ゲルシートの性状比較)
上述の製造された実施例1〜29、及び比較例1〜9で得られたヒアルロン酸ゲルシートを次の3つの観点から評価した。その評価結果を図3にまとめる。
1.性状観察結果
肉眼及び感触により、柔軟性、弾性、引っ張り強度を観察した結果である。
2.皮膚密着性試験結果
ヒアルロン酸ゲルシート(2cm×2cm)をヒトボランティア前腕内側に適用し、皮膚への密着性を試験した結果を示す。
3.溶解性試験
ヒトボランティアの前腕部にヒアルロン酸ゲルシート(2cm×2cm)を適用し 10mlの水を滴下して3分間シート上からマッサージし、ヒアルロン酸ゲルの溶 解性を観察した。
【0041】
図3の各記号は以下の意味である。
性状観察において、Aは柔軟性、弾性及び引張強度がすべて十分であることを、Bは柔軟性及び弾性が不十分であるが引張強度は十分であることを、Cはは柔軟性及び弾性は十分であるが引張強度が不十分であることを、Dは液体であって柔軟性、弾性及び引張強度が全て不可であることを表す。
皮膚密着性試験において、Aはよく密着したことを、Bは部分的に浮いて密着したことを、Cは全く密着せずはがれたことを示す。性状観察の結果がCやDであったものは、そもそもこの試験の対象にならなかった。
溶解性試験において、Aは完全に溶解したことを、Bは部分的に溶解したことを表す。
は溶解が速く30秒以内で溶解したことを表す。性状観察の結果がCやDであったものは、そもそもこの試験の対象にもならなかった。
【0042】
(ヒアルロン酸ゲルシートの貼付試験による保湿効果評価)
ヒトボランティア5名の前腕の同一部位に朝夜2回、計7日間、以下の4つの被験サンプルを投与し、投与終了1日後(投与開始から8日後)の肌水分量についてキュートメーター(MPA580)を用いて測定した。測定結果を静電容量(単位;a.u.)として表示した。また、コントロールとして、投与前の肌水分量も測定した。投与前と比較した静電容量増加量(=水分増加量)の結果を図4にまとめた。結果は、5名の被験者の結果の平均値とその標準偏差(SD)で表示している。
【0043】
被験サンプルと投与方法は次の通りであった。
試験例1: 実施例4のヒアルロン酸ゲルシート(2cm×2cm)を前腕部に30分適用後、ゲルの上に精製水約10mLを少しずつ加えて約3分間マッサージしながら溶かしたのち、精製水で洗い流して、自然乾燥させた。
試験例2: 実施例17のヒアルロン酸ゲルシート(2cm×2cm)を前腕部に30分適用後、ゲルの上に精製水約10mLを少しずつ加えて約3分間マッサージしながら溶かしたのち、精製水で洗い流して、自然乾燥させた。
試験例3: 実施例17のゲルを調製する前の水溶液約1mLを前腕部(約2cm×2cm)に適用して30分後、約3分間マッサージしたのち、精製水で洗い流して、自然乾燥させた。
試験例4: WO 01/57093の実施例6に記載の方法に従い、ヒアルロン酸(HA−LQH:キューピー(株)製)とヒアルロン酸(ヒアロオリゴ:キューピー(株)製)をそれぞれ0.5%含有する水溶液を用いて作製したヒアルロン酸ゲルシート(2cm×2cm)を前腕部に30分投与後、ゲルの上に精製水約10mLを少しずつ加えて約10分間マッサージしたのち、精製水で洗浄して、自然乾燥させた。
【0044】
ヒアルロン酸ゲルシートは、WO01/57093の実施例6と比較して有意な肌水分量の増加が認められた。また、実施例4と実施例17のヒアルロン酸ゲルシートは、実施例17のゲルを調製する前の水溶液と同等の肌水分量の増加が認められた。更に、ヒトボランティア5名すべての官能評価において、実施例4と実施例17のヒアルロン酸ゲルシートは、皮膚に投与する際の取扱性、皮膚に投与した際の使用感が、実施例17のヒアルロン酸水溶液よりも優っていた。
【0045】
(ヒアルロン酸ゲルシートの貼付試験による温感付与、炭酸ガス発生効果評価)
実施例30〜36のヒアルロン酸ゲルシートは図5に記載の配合比(重量比)により作成した。各構成成分の水溶液をプロペラ式回転型攪拌装置で攪拌均一化し調製した。調製した水溶液を厚さ26μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(DIAFOIL #130−26:三菱樹脂(株)製)上に均一の厚みとなるよう塗布し、ギアオーブンで80℃、30分間乾燥し、厚み約200μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。本ヒアルロン酸ゲルシートを切断して、直径20cmの円形のヒアルロン酸ゲルシートを得、目と口に対応する部分に穴を開けたフェイスマスクを作成した。
比較例10、11のヒアルロン酸ゲルシートも図5に記載の配合比(重量比)により同様に作成した。そのフェイスマスクも同様に作成した。このヒアルロン酸ゲルシートのフィルム上の厚さはそれぞれ15μm及び25μmであった。
【0046】
試験用化粧水は図6に記載の成分配合比(重量比)により作成した。各成分の水溶液をプロペラ式回転型攪拌装置で混和し調製した。
【0047】
得られた各フェイスマスクを仰向けに横になったボランティアの顔面に適用し、適用した皮膚部位の温感の有無を評価した。適用部位及び非適用部位の皮膚温度を測定し、温度差を算定した。皮膚温度測定はデジタルサーモメーター(GT−07)を用いた。
次いで試験化粧水をスプレーにより約0.5mLをフェイスマスク全面に吹き付けてマッサージして炭酸ガスの発泡を評価した。本試験において実施例30〜35及び比較例10、11においては化粧水Aを使用し、実施例36においては化粧水Bを使用した。
【0048】
評価結果を図7にまとめた。約3分間のマッサージによりフェイスマスクを溶かしたのち、精製水で洗い流して、自然乾燥させた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7