【課題を解決するための手段】
【0007】
この必要性は、独立請求項に係る主題により満たすことができる。本発明の有利な実施形態は、従属クレームにより説明する。
【0008】
本発明の例示的な態様によれば、通信ネットワークにおいて第1のネットワーク要素から第2のネットワーク要素へ基準信号を送信する方法が、フレームの第1のリソースを使用して、第1の通信システムに関連する第1のタイプの基準信号を送信するステップと、フレームの第2のリソースを使用して、第2の通信システムに関連する第2のタイプの基準信号を送信するステップとを含む。
【0009】
詳細には、第1の通信システムは、3GPP LTEシステムなどのセルラーシステムとすることができる。GPP LTEシステムの例は、LTEリリース8標準規格によるシステムとすることができる。第2の通信システムも、いわゆるadvancedリリース8通信システム又はLTE Advanced通信システムなどのセルラーシステムとすることができる。詳細には、第1のタイプ及び第2のタイプの基準信号を共通基準信号、及び/又はCOOPA基準信号とすることができる。送信された基準信号を使用してチャネル状態情報を生成し、すなわち協調データの送信を実施するために必要となり得るチャネルの実際の性能を推定することができる。
【0010】
本発明の例示的な態様によれば、基準信号を送信するための、特に協調通信ネットワークのための通信ネットワーク要素が提供され、このネットワーク要素は、フレームの第1のリソースを使用して、第1の通信システムに関連する第1のタイプの基準信号を送信するようにされた第1の送信ユニットと、フレームの第2のリソースを使用して、第2の通信システムに関連する第2のタイプの基準信号を送信するようにされた第2の送信ユニットとを含む。
【0011】
詳細には、このネットワーク要素を、拡張Node B(eNB)、ユーザ装置、基地局、及び中継ノードから成るネットワーク要素群の1つとすることができる。第1及び第2の送信ユニットは、単一のユニットにより、或いは1又はそれ以上のアンテナなどの異なるユニットにより形成することができ、制御ユニットの制御下で動作することができる。なお、基地局などのネットワーク要素は、主に優先行列インデックス(PMI)又はチャネル品質インジケータ(CQI)のような情報を受け取ることができるが、ダウンリンクにおいて何らかの制御情報を提供することもできる。
【0012】
また、複数の通信ネットワーク要素を含む通信ネットワークシステムを提供することもでき、この複数の通信ネットワーク要素は、少なくとも2つの基地局及び少なくとも2つのユーザ装置を含み、少なくとも1つの通信ネットワーク要素は、本発明の例示的な態様による通信ネットワーク要素であり、複数の通信ネットワーク要素は、データの、特にデータパケットの協調送信を行うようにされる。
【0013】
本発明の例示的な態様によれば、プロセッサによる実行時に、本発明の例示的な態様による方法を制御又は実施するようにされたプログラム要素が提供される。
【0014】
本発明の例示的な態様によれば、コンピュータ可読媒体が、プロセッサによる実行時に、本発明の例示的な態様による方法を制御又は実施するようにされたコンピュータプログラムを記憶する。
【0015】
「リソース」という用語は、特定の通信システム内の通信ネットワークの、データがペイロードデータであるか、基準データであるか、制御データであるか、又は同様のものであるかに関わらずデータを送信するためのあらゆる種類の能力を意味する。例えば、異なるリソースが同じフレームの異なるサブフレーム及び/又は異なる周波数に関連するという事実により、これらを互いに区別することができ、例えば、2つのリソースが同じサブフレームに関連するものの異なる周波数に関連することもあり、すなわち2つのリソースを使用することにより送信されるデータを異なる周波数で送信することができる。一般に、リソースは、フレーム番号、サブフレーム番号、使用する周波数バンド、コーディングスキームなどのいずれかの適当なパラメータにより互いに区別することができる。
【0016】
本発明の例示的な態様による方法により、新たな標準規格に関連する通信システムの下位互換性を保証することができ、例えば、2つの異なるタイプの基準信号を使用して、一方のタイプをリリース8通信システム又は送信スキームで使用できるようにする一方で、他方をadvanced LTE標準規格で使用できるようにすることにより、リリース8標準規格をLTE advanced標準規格と組み合わせることができる。この2つの基準信号の各々を共通基準信号とすることができ、例えば全てのチャネルに共通のものとすることができる。両方のタイプの基準信号を1つの標準規格に明確に適応させることができるので、チャネル状態推定(CSI)精度を確実に高めることができ、これにより、COOPAシステムのもう1つの重要な要素としてとらえることができるとともに質の高いCSI推定に依存できる干渉除去結合(IRC)を容易にすることさえもできる。
【0017】
例示的な態様の主旨を、協調データ送信スキームのための基準信号を送受信する方法の提供に見出すことができ、この方法は、以前のスキームに下位互換性を与えるとともに、マルチセルチャネル推定の改善を可能にすることができる。基本的概念として、マルチセルチャネル推定のために、LTEリリース8無線フレームなどの通信システムフレーム又は通信スキームフレームの1つのサブフレームを、LTE advanced共通基準信号(CRS)の送信のために完全に又は部分的に取っておくことができる。本発明の例示的な態様による方法を使用した場合、データ信号を制御できないことによりデータ送信が原因でCRSの干渉フロアを生じる可能性のある、異なるセルからのデータ及びCRSの重複を低減することができる。
【0018】
次に、データ送信方法のさらなる例示的な実施形態について説明する。しかしながら、これらの実施形態は、通信ネットワーク要素、通信ネットワークシステム、プログラム要素、及びコンピュータ可読媒体にも当てはまる。
【0019】
本方法の別の例示的な実施形態によれば、第1のタイプの基準信号及び第2のタイプの基準信号が、異なるサブフレームで送信される。
【0020】
すなわち、第1のリソース及び第2のリソースが、異なるサブフレームに関連することができる。例えば、リリース8に関連する第1のタイプの基準信号を、リリース8標準規格により規定されるリソースを使用して送信できる一方で、advancedリリース8システム又はLTE Advanceなどに関連する第2のタイプの基準信号は、第1サブフレームなどの特定のサブフレーム中にのみ送信することができる。
【0021】
本方法の別の例示的な実施形態によれば、第1のタイプの基準信号及び第2のタイプの基準信号が共通のサブフレームで送信される。
【0022】
詳細には、第1のタイプ及び第2のタイプの基準信号を、第1の又はその他のいずれかの適当なサブフレームなどの特定のサブフレーム中にのみ送信できる一方で、他のサブフレーム中には基準信号を送信することができない。当然ながら、2又はそれ以上のサブフレーム中に基準信号を送信することもできる。すなわち、LTE advanced CRSなどの第2のタイプの基準信号を搬送するサブフレームにおいても、eNBなどのそれぞれのネットワーク要素が、LTEリリース8標準規格などの別の標準規格により定義される基準グリッドなどの基準信号を送信することができる。
【0023】
本方法の別の例示的な実施形態によれば、第1のリソースが、サブフレームの第1の周波数バンドに関連する。
【0024】
なお、当然ながら、第2のリソースも第1の周波数バンド又はその他の特定の周波数バンドなどの特定の周波数バンドに関連することができる。
【0025】
本方法の別の例示的な実施形態によれば、第1のフレームでは、第1の基準信号が第1の周波数バンドを使用して送信され、第2のフレームでは、第1の基準信号が別の周波数バンドを使用して送信される。
【0026】
すなわち、連続する個々のフレームごとに、基準信号を送信するために別の周波数バンドを割り当てることができる。詳細には、LTE advanced通信システムの基準信号の割り当てを変更することができる。なお、当然ながら、周波数バンドの割り当てを所定の回数変更した後に、第1のフレームで割り当てられた周波数バンドを再度使用することができる。例えば、第1のフレームでは第1の周波数バンドを使用することができ、第2のフレームでは第2の周波数バンドを使用することができ、第3のフレームでは第3の周波数バンドを使用することができるが、第4のフレームでは第1の周波数サブバンドを再度使用することができる。
【0027】
本方法の別の例示的な実施形態によれば、第1のタイプ及び/又は第2のタイプの基準信号が、アダマールシーケンスにより生成される。
【0028】
詳細には、通信ネットワークの異なるセルのCRSにアダマールシーケンスを適用することができる。アダマールシーケンスを使用することにより、異なるセルからの基準信号間のセル間漏話を低減又は最小化することができる。例えば、サブフレームは、LTEリリース8基準信号によって占められていないリソースにおいてLTEリリース8 CRSとLTE advanced基準信号との組み合わせを搬送することができる。さらに、第1のタイプの基準信号及び/又は第2のタイプの基準信号などの基準信号の送信に使用するリソースの割り当てを、短いシーケンス長に関しては既に直交しているシーケンスをeNB又はUEなどの隣接する干渉物に割り当てるようにして行うことができる。通常、隣接する干渉物はさらなる干渉を生み出すので、短いシーケンス長に関して既に直交しているシーケンスを隣接する干渉物に確実に割り当てておくことは有利となり得る。例えば、LTEリリース8 CRSに、アダマール又はウォルシュ・アダマールシーケンスを乗じることができる。
【0029】
本方法の別の例示的な実施形態によれば、第2の基準信号がフレームの特定の帯域幅に割り当てられる。
【0030】
詳細には、共通LTE advanced基準信号などの第2の基準信号が、全スペクトル帯域幅の所定の部分でのみ送信される。すなわち、第2の基準信号は、特定の周波数サブバンドなどの特定のリソースを使用してのみ送信される。このようにして、スペクトルのこの部分などの特定のサブバンドに相当する特定の帯域幅に協調を制限することにより、基準信号の送信によって生じるオーバーヘッドを低減又は制限することができる。当然ながら、この特定のサブバンド又はこれらの特定のサブバンドは、送信中に変更することができる。詳細には、この周波数サブバンド又はこれらの周波数サブバンドの位置及びサイズをeNBが準静的に割り当てることができる。例えば、使用する周波数サブバンド数の準静的定義、すなわち使用する周波数サブバンドを定義する構成の変更を使用することができ、これが異なる無線条件への適応に有用となり得る。詳細には、無線条件が悪化した場合、第1の基準信号及び/又は第2の基準信号の送信に使用する周波数サブバンドの数を増やすことができ、その逆も同様である。
【0031】
本方法の別の例示的な実施形態によれば、第1の基準信号タイプを第1のフレームで送信するために第1のサブバンドを使用し、及び/又は第2の基準信号タイプを第1のフレームで送信するために第2のサブバンドを使用し、第1の基準信号タイプを第2のフレームで送信するために第3のサブバンドを使用し、及び/又は第2の基準信号タイプを第2のフレームで送信するために第4のサブバンドを使用する。
【0032】
すなわち、第1及び/又は第2の基準信号の送信に使用するサブバンドをフレームごとに変更することにより、全周波数バンドを協調に使用できるようにすることができる。この場合、スケジューラは、スペクトルのいくつかの部分、すなわち全周波数バンドが、スペクトルの他の部分よりも古いCSI情報を有していることを考慮することができる。特に、第3のサブバンド及び/又は第4のサブバンドは、所定の期間にわたって基準信号(第1又は第2のタイプ)の送信に使用されなかった(単複の)サブバンド、及び所定の期間にわたって推定されなかったチャネルに相当する(単複の)サブバンドなどの所定の基準を満たすサブバンドとすることができる。このようにして、全てのチャネルが平等に又は少なくともより平等に推定されることを確実にすることができる。
【0033】
本方法の別の例示的な実施形態によれば、第1のタイプ及び/又は第2のタイプの基準信号の送信にサブフレームの一部のみが使用される。
【0034】
詳細には、サブフレームの他の部分をペイロードデータの送信に使用することができる。ペイロードデータは、サブフレーム内で送信される基準信号が第1のタイプであるか又は第2のタイプであるかに関係なく、第1の通信システムに基づいて、又は第2の通信システムに基づいて送信することができる。
【0035】
本方法の別の例示的な実施形態によれば、第1のタイプの基準信号と第2のタイプの基準信号が結合される。
【0036】
例えば、LTE advanced CRSを送信するサブフレーム内でリリース8 UEの共通CRSを共通LTE advanced CRSと結合することができる。詳細には、場合によってはLTE advancedマルチセルチャネル推定が古くなっている可能性を考慮して、すなわちLTE advanced通信スキームの最後に実行されたチャネル推定に関する情報を考慮して、いわゆる最大比合成(MRC)法を使用することができる。LTEリリース8による共通CRSの異なる構造及びプロパティ、及びLTE Advanced基準信号の構造及びプロパティを考慮したより巧みな合成スキームを可能にすることができる。例えば、共通リリース8 CRSの性能がマルチセル干渉の影響を受けている間、LTE advanced基準信号は、より低い時間ローカリゼーションを有するようになる。高速反復デコーディング技術により、両方のタイプのチャネル推定の合成から最大性能が引き出されるようにすることができる。このような合成を行うことにより、全体のチャネル推定精度を高めることができる。
【0037】
本方法の別の例示的な実施形態によれば、第1のタイプ及び/又は第2のタイプの基準信号を使用して、通信ネットワークのネットワーク要素の移動を追跡する。
【0038】
詳細には、リリース8基準信号などの第1のタイプの基準信号を使用して、UE、携帯電話、ラップトップ、PDAなどの移動するネットワーク要素を追跡することができ、これによりチャネル推定の性能、したがって、UEが移動している場合、特にUEが多少高速で移動している場合のデータ送信の性能を向上させることができる。
【0039】
別の例示的な実施形態によれば、方法が、送信される第1及び/又は第2のタイプの基準信号の利用可能性、及び/又は位置、及び/又は密度に関して第2のネットワーク要素に通知する制御メッセージを送信するステップをさらに含む。
【0040】
「チャネル」という用語は、詳細にはデータパケットの送信に使用できる、他の送信経路と区別できるあらゆる種類の送信経路を意味することができる。すなわち、個々の「チャネル」は、他のリソースとは独立してデータを送信するために使用できる通信ネットワークのリソースを形成することができる。このような「チャネル」は、いくつかのサブキャリアを含むリソースブロック(RB)によって形成することができる。例えば、RBを、12個のサブキャリア、14個のOFDMシンボルで構成することができる。
【0041】
本出願では、「データパケット」という用語は、詳細にはケーブル又は回線又は無線のいずれかを介して送信できるあらゆる種類のデータを意味することができる。詳細には、「データ」という用語は、通話、或いはプログラム、写真、音楽タイトルなどの、コンピュータ通信に関連して使用されるデータの送信に関連するデジタル又はアナログデータを含むことができる。詳細には、1又はそれ以上のデータパケットにより特定のデータを形成することができる。
【0042】
本発明の例示的な態様を要約すると、マルチセルチャネル推定のために、LTE無線フレームの10個のサブフレームのうちの1つをLTE Advanced CRSのために完全に又は部分的に取っておくことにより、完全な下位互換性と組み合わせたマルチセルチャネル推定の改善を可能にする方法を提供することができる。この方法により、LTE AdvancedのためのマルチセルCRSに設計上の完全な柔軟性をもたらすことができる。同時に、AP0、...、3及びAP5上でリリース8対応基準信号を連続送信することにより、完全な下位を保証することができる。LTE Advanced CRSを搬送するサブフレームにおいても、eNBが、現行の標準規格で定義されるような基準信号グリッドを送信することができる。
【0043】
その後、LTE Advancedの新しいCRSのために、本来であればR8データ信号を搬送する他のリソース要素を使用できるようになる。具体的には、異なるセルのCRSにアダマールシーケンスを適用して、異なるセルからの基準信号間のセル間漏話を最小化することができる。単純なスキームでは、特定のサブフレームが、R8 RSによって占められていない他のREにおいて、LTEリリース8 CRSとLTE Advanced基準信号との組み合わせを搬送することができる。この場合、この特定のサブフレーム内では、eNBがリリース8 UEを単純にスケジューリングしないので、リリース8 UEは、新たに定義されたこれらの基準信号を認識することができない。結果として生じる付加的オーバーヘッドは10%程度(10個のサブフレームのうちの1つ)となり得る。さらに、LTE Advanced CRSのためのより多くの又はより少ないサブフレームによる他の構成の準静的定義が、異なる無線条件への適応に有用となり得る。
【0044】
本発明の上記で定義した例示的な態様及び例示的な実施形態、並びにさらなる態様は、以下で説明する実施形態例から明らかとなり、実施形態例を参照しながらこれらについて説明する。以下、実施形態例を参照しながら本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。