(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6064065
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】無人航空機
(51)【国際特許分類】
B64C 3/56 20060101AFI20170106BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
B64C3/56
B64C39/02
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-57420(P2016-57420)
(22)【出願日】2016年3月22日
【審査請求日】2016年3月22日
(31)【優先権主張番号】1514386.0
(32)【優先日】2015年8月13日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516085155
【氏名又は名称】ワース リサーチ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Wirth Research Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ワース,ニコラス ジェイ.ピー.
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0146716(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0225072(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0102155(US,A1)
【文献】
国際公開第2015/057286(WO,A1)
【文献】
特開平8−226798(JP,A)
【文献】
特開2015−74444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 3/00
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体と、
前記胴体に枢動可能に設けられる中央翼領域および前記中央翼領域に枢動可能に設けられる一対の外方翼領域を備える翼と、を有し、
前記翼は、
前記中央翼領域および前記外方翼領域が積み重ねられ、かつ、前記中央翼領域および前記外方翼領域が、前記胴体の長手方向軸に沿って整列する折り畳み形状と、
前記中央翼領域が前記胴体に対して実質的に垂直であり、かつ、前記外方翼領域が前記中央翼領域から前記胴体に対して離れる方向に向かって延在する展開形状と、を備える無人航空機。
【請求項2】
第1の前記一対の外方翼領域の上に枢動可能に設けられた第2の一対の外方翼領域を、さらに有している、請求項1に記載の無人航空機。
【請求項3】
少なくとも一つの前記外方翼領域は、前記展開形状において前記外方翼領域が互いに一直線に整列するように、前記折り畳み形状から前記展開形状に移行する間に垂直に動作する、請求項1または請求項2に記載の無人航空機。
【請求項4】
前記外方翼領域は、前記展開形状において前記外方翼領域が互いに一直線に整列し、かつ、前記外方翼領域が前記中央翼領域と一直線に整列するように、前記折り畳み形状から前記展開形状に移行する間に垂直に動作する、請求項1または請求項2に記載の無人航空機。
【請求項5】
外方翼要素は、前記展開形状においては前記翼が上反角または下反角を有するように、前記中央翼領域に対して曲がっている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の無人航空機。
【請求項6】
前記翼は、前記展開形状となるように付勢されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の無人航空機。
【請求項7】
前記中央翼領域は、ねじりばねによって付勢されている、請求項6に記載の無人航空機。
【請求項8】
前記胴体は、前記中央翼領域の前記胴体に対する回転を規制する留め具を備える、請求項7に記載の無人航空機。
【請求項9】
前記外方翼領域のそれぞれは、引っ張りばねによって付勢されている、請求項6〜8のいずれか一項に記載の無人航空機。
【請求項10】
前記引っ張りばねは、その一端が前記中央翼領域に接続され、プーリを介してその他端が前記外方翼領域に接続されており、
前記外方翼領域の前記中央翼領域に対する回転が、前記引っ張りばねを引き延ばす、請求項9に記載の無人航空機。
【請求項11】
前記翼を付勢に抗して前記折り畳み形状に維持し、かつ、前記翼の展開を許容するように解除されるラッチをさらに有する、請求項6〜10のいずれか一項に記載の無人航空機。
【請求項12】
前記ラッチは、リモートでまたは自動で解除される、請求項11に記載の無人航空機。
【請求項13】
前記翼の前記折り畳み形状を維持する筒状体に収容される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の無人航空機。
【請求項14】
前記翼は、前記筒状体から放出された際に、前記展開形状に展開される、請求項13に記載の無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle:UAV)および無人航空機の翼型部品の折り畳み機構に関する。
【背景技術】
【0002】
UAVの設計は、近年大きく進展している。この分野は、主に、軍事的な発展を超えたところで成長している。UAVは、一般的に偵察のために用いられているが、運送や映画製作のように一般的な用途にまでさらに拡張しており、これによって、技術的研究の最前線のポジションが強化されている。UAVは、単一ロータまたはマルチロータのヘリコプターや、固定翼機のように、様々な形で進展している。これまでの低下することのない電気的なおよび機械的な部品の進化に伴い、マイクロ型のUAVおよびナノ型のUAVさえもが進展し続けている。
【0003】
UAVの進展における課題の一つは、胴体の長さに対し、長い翼長や大きなロータを備えることに利点があるということである。これらの利点は、長時間の飛行を可能とする低抵抗固定翼機を作り出す可能性を含んでいる。長い翼長の航空機は、いずれも、輸送の際に問題が生じるため、分解可能および折り畳み可能な設計が導入されることになった。
【0004】
これは、大きい航空機、船舶や潜水艦上の軍事的に使用される利用可能な倉庫にUAVを輸送するのに役に立つ。離陸工程に突入すると、別の問題が生じる。離陸装置は、ミサイルや他の軍需品に利用可能である一方、特殊なUAV設計には利用可能ではないこともあり、また、水平離陸が可能でないこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、既存の設計に関連するいくつかのまたはすべての問題点を解決するUAVを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点によれば、胴体と、前記胴体に枢動可能に設けられる中央翼領域および前記中央翼領域に枢動可能に設けられる一対の外方翼領域を備える翼と、を有し、前記翼は、前記中央翼領域および前記外方翼領域が積み重ねられ、かつ、前記中央翼領域および前記外方翼領域が、前記胴体の長手方向軸に沿って整列する折り畳み形状と、前記中央翼領域が前記胴体に対して実質的に垂直であり、かつ、前記外方翼領域が前記中央翼領域から前記胴体に対して離れる方向に向かって延在する展開形状と、を備える無人航空機が提供される。
【0007】
本発明に係る無人航空機は、第1の前記一対の外方翼領域の上に枢動可能に設けられた第2の一対の外方翼領域を、さらに有していてもよい。
【0008】
少なくとも一つの前記外方翼領域は、前記展開形状において前記外方翼領域が互いに一直線に整列するように、前記折り畳み形状から前記展開形状に移行する間に垂直に動作してもよい。
【0009】
前記外方翼領域は、前記展開形状において前記外方翼領域が互いに一直線に整列し、かつ、前記外方翼領域が前記中央翼領域と一直線に整列するように、前記折り畳み形状から前記展開形状に移行する間に垂直に動作してもよい。
【0010】
外方翼要素は、前記展開形状においては前記翼が上反角または下反角を有するように、前記中央翼領域に対して曲がっていてもよい。
【0011】
前記翼は、前記展開形状となるように付勢されていてもよい。
【0012】
前記中央翼領域は、ねじりばねによって付勢されていてもよい。
【0013】
前記胴体は、前記中央翼領域の前記胴体に対する回転を規制する留め具を備えていてもよい。
【0014】
前記外方翼領域のそれぞれは、引っ張りばねによって付勢されていてもよい。
【0015】
前記引っ張りばねは、その一端が前記中央翼領域に接続され、プーリを介してその他端が前記外方翼領域に接続されており、前記外方翼領域の前記中央翼領域に対する回転が、前記引っ張りばねを引き延ばしてもよい。
【0016】
本発明に係る無人航空機は、前記翼を付勢に抗して前記折り畳み形状に維持し、かつ、前記翼の展開を許容するように解除されるラッチをさらに有していてもよい。
【0017】
前記ラッチは、リモートでまたは自動で(例えば、離陸の直後または離陸から所定時間経過後に)、解除可能であってもよい。
【0018】
本発明に係る無人航空機は、前記翼を前記折り畳み形状に維持する筒状体に収容されてもよい。
【0019】
前記翼は、前記筒状体から放出されると、展開形状に展開してもよい。
【0020】
本発明をより良く理解するために、どのように効果を発揮するのかをより明確にするために、例として、折り畳み翼を備えるUAVを示す添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るUAVを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、外方翼の枢動メカニズムを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、胴体を含む中央翼の枢動メカニズムを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、翼が収容された位置にある状態におけるUAVの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るUAV2を示す図である。UAV2は、一般的に、翼6が設けられた胴体4を有している。
【0023】
図に示すように、胴体4は、半円筒形状の前方領域8と、円筒形状の後方領域10と、を備えている。胴体4の少なくとも一部は、電子機器やUAV2のエンジンを収容することができるように中空であってもよい。
【0024】
翼6は、前方領域8の長手方向における中間において、胴体4の前方領域8に設けられている。翼6は、中央翼領域12と、第1外方翼領域14aおよび第2外方翼領域14bと、を備えている。中央翼領域12および外方翼領域14a、14bのそれぞれは、UAV2に揚力を付与するために翼形状を備えている。外方翼領域14a、14bは、UAV2を制御するための補助翼16も備えている。
【0025】
中央翼領域12の中央部分は、胴体4の前方領域8に枢動可能に接続されている。また、外方翼領域14a、14bは、中央翼領域12に枢動可能に接続されている。具体的には、第1外方翼領域14aは、その一端を介して、中央翼領域12の自由端である中央翼領域12の末端またはその近辺に接続されている。同様に、第2外方翼領域14bは、その一端を介して、中央翼領域12の自由端である中央翼領域12の末端またはその近辺に接続されている。
【0026】
特に、
図2に示すように、外方翼領域14a、14bのそれぞれには、外方翼領域14a、14bの底面側に対して突出するシャフト18が設けられている。シャフト18は、中央翼領域12に対する外方翼領域14a、14bの回転が許容されるように、中央翼領域12に配置されているベアリング20に受容されている。シャフト18は、中央翼領域12に配置されている付勢機構に接続されている。付勢機構は、一端が中央翼領域12に配置されているブラケット24に固定されている引っ張りばね22を備えている。引っ張りばね22の他端は、シャフト18に配置されたプーリにストリング26を介して連結されている(
図4参照)。このため、シャフト18の回転によって、引っ張りばね22が引き伸ばされ、張力下におかれる。
【0027】
図3に示すように、中央翼領域12は、ボス28を通り抜けて胴体4の前方領域8の内部にまで延在するシャフトを備えている。胴体4の前方領域8に配置されたシャフトの自由端は、ねじりばねに接続されたマウント30に、接続されている(図示せず)。マウント30は、アーチ状の面によって一対の放射方向の面が連結された扇形の形状を備えている。ねじりばねは、マウント30にアーチ状の面を介して取付けられている。ボス28は、フランジ32を備えている。フランジ32からは、マウント30の平面に向かって留め具34が突出している。留め具34は、(マウント30の放射方向の一の面と接触することによって)マウント30ひいては中央翼領域12の回転を規制する。
【0028】
前述したように、中央翼領域12は、胴体4に枢動可能に接続されており、外方翼領域14a、14bも、同様に、中央翼領域12に枢動可能に接続されている。このため、外方翼領域14a、14bを回転させて、外方翼領域14a、14bが中央翼領域12と重なるようにし、また、中央翼領域12を回転させて、中央翼領域12の長手方向軸を胴体の長手方向軸に沿って整列させるようにして、翼6を折り畳むことができる。
図4に示すように、中央翼領域12および外方翼領域14a、14bは、積み重ねられる。これを可能とするために、外方翼領域14a、14bは、少なくとも折り畳み形状の際には、中央翼領域12に対して垂直方向において互いに異なる距離だけオフセットされている。外方翼領域14a、14bと中央翼領域12との間の枢動連結部は、外方翼領域14a、14bが展開した際に互いに垂直方向に同じ高さとなるように構成することができる。外方翼領域14a、14bは、展開形状の際に、中央翼領域12と同じ高さとなるように構成することができる。例えば、外方翼領域14a、14bと中央翼領域12との対向する端部は、外方翼領域14a、14bが折り畳まれた際に、中央翼領域12の上に載り上がるように曲がっていてもよい。
【0029】
図4に示すように、中央翼領域12および外方翼領域14a、14bは、折り畳み形状の際には、胴体4の半円筒状の前方領域8と組み合わさり、円筒状の領域を実質的に埋める。
【0030】
ねじりばねおよび引っ張りばね22は、中央翼領域12と外方翼領域14a、14bとを、中央翼領域12および外方翼領域14a、14bが一直線となり、かつ、胴体4の長手方向軸に対して垂直となる展開形状となるように付勢する(
図1に示している)。したがって、中央翼領域12および外方翼領域14a、14bは、翼6を折り畳み形状に維持できるように、拘束されている必要がある。例えば、UAV2は、翼6が展開するのを防止する筒状体に収容されてもよい。しかしながら、一度放出されると、翼6は、自動的に展開形状に展開する。具体的には、中央翼領域12は、胴体4に対して90度回転し、外方翼領域14a、14bは、中央翼領域12に対して180度回転する。翼6の展開により、次の離陸を実行することができ、空中において広がり、飛行フェーズに移行する。
【0031】
展開形状においては、外方翼領域14a、14bは、中央翼領域12に対して一直線となると説明したが、外方翼領域14a、14bは、後退(swept backward)していてもよい。翼6は、胴体4に対して上半角または下半角を備えるように構成してもよい。これによって、横滑りする状態における安定性を向上させることができる。これは、中央翼領域12によって形成してもよいし、外方翼領域14a、14bから形成してもよい。特に、外方翼領域14a、14bは、上方に反る(上反)または下方に反る(下反)っていてもよい。外方翼領域14a、14bは、中央翼領域12に対して枢動可能であるため、折り畳み時においては、中央翼領域12に対して平行であり、展開時においては曲がる。
【0032】
他の実施形態では、翼6は、UAV2の折り畳み時の寸法に対して、翼6の長さを増加するために、追加の翼領域をさらに備えていてもよい。
【0033】
胴体4は、半円筒状の前方領域8および円筒状の後方領域10を備えると説明したが、胴体4の形状は様々にすることが可能である。特に、胴体4の断面は、全長に亘って一定であってもよい(すなわち、同じ形状および/または寸法)。また、胴体4は湾曲している必要はない。したがって、UAV2は、非円形状のハウジングに収容および/または配置してもよい。
【0034】
翼6の展開は、自動的である必要はなく、離陸の後のタイミングまたは使用者のリモートタイミングで、電気的に誘因されてもよい。例えば、UAV2は、ねじりばねおよび引っ張りばね22の付勢に抗して翼6を折り畳み形状に固定するラッチを備えていてもよく、ラッチが解除されることによって翼6が展開する。さらに、翼6は、いかなる電源を用いて展開してもよく、ばねを使用することに限定されない。具体的には、翼6は、ソレノイド、ガスばね、火工技術、電気モータ等を用いて作動することができる。翼6の展開は、空気力学的な力または慣性力を通じて開始されてもよい。
【0035】
翼6は、翼6の長さの一部において翼型断面を備えていてもよい。具体的には、中央翼領域12の一部が、翼型断面と、外方翼領域14a、14bと、を備えていてもよい。
【0036】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の範囲から離れることなく、適宜、変更または追加することができる。
【要約】 (修正有)
【課題】胴体に枢動可能に設けられる中央翼領域および中央翼領域に枢動可能に設けられる一対の外方翼領域を備える翼と、を有し、中央翼領域および外方翼領域が積み重ねられる折り畳み形状と、外方翼領域が中央翼領域から胴体に対して離れる方向に向かって延在する展開形状と、を備える無人航空機を提供する。
【解決手段】無人航空機2は、胴体4と、胴体に枢動可能に設けられる中央翼領域12および中央翼領域に枢動可能に設けられる外方翼領域14a、14bを備える翼6と、を有し、翼は、中央翼領域および外方翼領域が積み重ねられ、胴体の長手方向軸に沿って整列した折り畳み形状と、中央翼領域が、胴体4に対して実質的に垂直となり、かつ、外方翼領域が、中央翼領域から胴体に対して離れる方向に向かって延在する展開形状とを備えている。
【選択図】
図1