(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記規制部には、前記嵌合凸部とは軸方向反対側に延出する第1の延出部および前記嵌合凸部よりも前記シリンダー側に延出する第2の延出部のうち少なくともいずれか一方、または、前記第1の延出部及び前記第2の延出部の両方が設けられている、
請求項1に記載の噴出器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなトリガー式噴出器においては、使用者によるトリガーの引き方によってトリガーが斜め姿勢とされることがある。この場合、シリンダーとピストンとの間に隙間が生じてしまい、液体が外部に漏れ出して噴出に影響を与えるという問題があった。また、トリガー式に関わらず、ポンプを備える噴出器において、噴出操作に伴う液体の漏れを防ぐ必要がある。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みてなされたものであり、操作に伴う液漏れが生じるのを防止して、良好な噴出状態を維持することのできる噴出器を提供することを目的とする。
また、近年、噴出容量が大きい噴出容器が普及しつつあるが、特に、トリガー式噴出器において上記の課題が顕著となるので、そのような容器においても液漏れを防止でき、良好な噴出状態を確保できる噴出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様における噴出器は、容器内に収容された液体組成物を噴出する噴出装置を備える噴出器であって、前記噴出器は、トリガーと、前記容器内から前記液体組成物を吸引しかつ圧送するポンプと、前記ポンプから押し出された前記液体組成物を噴出する噴出部と、前記ポンプから押し出された前記液体組成物を前記噴出部へと導く送給経路を有するボディと、を備え、前記ポンプは、噴出方向に向けて開口し前記ボディに連結されたシリンダーと、前記噴出方向とは軸方向反対側に向けて開口し、前記シリンダーとの間にシリンダー室を形成するとともに、前記シリンダーの内周面に沿って摺動するピストンと、前記シリンダーの前記開口側に設けられ、前記ピストンを前記摺動方向に移動自在に保持するとともに、前記ピストンに接することで前記ピストンの摺動方向に交差する方向の移動を規制する規制部と、を有し、前記ポンプは、前記トリガーが操作されることによって前記容器内から前記液体組成物を吸引しかつ圧送することを特徴とする。
【0007】
本発明の噴出器の一つの態様によれば、シリンダーの開口側に設けられた規制部がピストンに接することにより、シリンダーの内周面に沿ってピストンが摺動する際の姿勢を維持することができる。規制部によってピストンの摺動時の姿勢が規制されることで、シリンダーとピストンとの間に隙間が生じるのを防ぐことができる。これにより、ポンプ内の液体組成物が外部へ漏れ出すことが防止され、良好な噴出が行えることになる。
【0008】
また、トリガーを設けることによって、片手でポンプを操作することが可能となる。
また、噴出容量が大きい噴出容器においても液漏れを防止でき、良好な噴出状態を確保することができる。
【0009】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記規制部は、前記ピストンの一部を挿通させる挿通孔を有している構成としてもよい。
この構成によれば、ピストンの一部が挿通孔に接することで、摺動方向に交差する方向の移動が規制されることになる。
【0010】
また、本発明の噴出器の1つの態様において、前記規制部は、前記シリンダーの前記開口側で液密に固定されている構成としてもよい。
この構成によれば、規制部がシリンダーの開口側に液密に固定されることにより、規制部とシリンダーとの間から液体組成物が漏れ出すことがなく、良好な噴出が行える。
【0011】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記規制部には、前記シリンダーの前記開口側に設けられた嵌合凹部に液密に固定する嵌合凸部が設けられている構成としてもよい。
この構成によれば、規制部の嵌合凸部がシリンダーの嵌合凹部に嵌合して固定されることにより、規制部(嵌合凸部)がシリンダーの内周面に対して液密に接することになり、液体組成物が外部へ漏れ出すのを防止することができる。
【0012】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記規制部には、前記嵌合凸部とは軸方向反対側に延出する第1の延出部および前記嵌合凸部よりも前記シリンダー側に延出する第2の延出部のうち少なくともいずれか一方、または、前記第1の延出部及び前記第2の延出部の両方が設けられている構成としてもよい。
この構成によれば、リング部材におけるピストンに対する接触面積が広くなり、ピストンの径方向への横ズレを抑制することができる。
【0013】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記嵌合凸部には肉抜き部が設けられている、構成としてもよい。
この構成によれば、リング部材の軽量化及び材料費の削減を図ることができる。
【0014】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記規制部には、前記シリンダーの前記開口側の端面に当接するストッパー部が設けられている、構成としてもよい。
この構成によれば、トリガーの操作時に、規制部がシリンダーの内部へ引き込まれてしまうのを防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記規制部は、前記ピストンとの間に形成される空間と外部空間とを連通するエア置換部を有している構成としてもよい。
この構成によれば、エア置換部を介して上記空間内に空気が流出入することにより、ピストンの摺動時の移動がスムーズになる。
【0016】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記エア置換部が前記挿通孔に連通している構成としてもよい。
この構成によれば、エア置換部と挿通孔とを同時に形成することができる。
【0017】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記エア置換部が、前記挿通孔の周方向へ互いに所定の間隔をおいて複数設けられている構成としてもよい。
この構成によれば、複数のエア置換部を設けることで、ガタツキを防止しつつ空気の流出入が効率よく行われ、よりスムーズなピストンの摺動が可能である。
【0018】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記シリンダーは、前記開口と軸方向反対側の壁部が平面とされている、構成としてもよい。
この構成によれば、軸部がないことでトリガー操作時におけるシリンダー内の圧力が大きく低下するため、トリガーを引く力を軽くすることができる。
【0019】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記シリンダーと前記ピストンの間に配置され、前記ピストンに対して弾性力を付与する弾性部材を有し、前記シリンダーには、前記開口側とは反対側の壁部に前記弾性部材を保持する弾性部材保持部が設けられており、前記トリガーが操作される前の状態において、前記弾性部材保持部と前記ピストンとの間に軸方向で隙間が形成されている、構成としてもよい。
この構成によれば、トリガーが操作された後、弾性部材保持部の付勢力によって、トリガーを初期位置に戻すことができる。また、隙間を介して弾性部材がシリンダー内に露出しており、弾性部材の全体が何かで覆われた構成にはなっていないため、トリガー操作時におけるシリンダー内の圧力を低下させることができる。
【0020】
また、本発明の噴出器の一つの態様において前記シリンダーには、前記開口側とは反対側の壁部に前記ピストン側に向けて突出するとともに、前記ピストンと同軸をなす軸部が設けられており、前記軸部の外径は前記ピストンの内径よりも小さく、前記軸部の外周面と前記ピストンの内周面との間に前記液体組成物を流動させるための流路が形成され、前記軸部の軸方向に交差する断面積が、前記ピストンの内径面積の75%以下、好ましくは50%以下である、構成としてもよい。
【0021】
従来品にも流路はあるが、ピストンが径方向へ位置ズレしようとする際に軸部に当接することでピストンのがたつきを防止できるよう、狭い流路となっている。これに対し、本発明では、ピストンと軸部の間に液体組成物を流動させるための流路を形成するものである、トリガーの操作によってピストンが移動する際に、シリンダー内に充填された液体組成物を、軸部の外周面とピストンの内周面との間に形成された流路によって容易に流動させることができる。トリガー操作時におけるシリンダー内の圧力を下げることによって、トリガーを引く力を軽くすることができる。
【0022】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記軸部の軸方向長さは、前記壁部とは軸方向反対側の先端部が、前記トリガーが操作される前の状態において前記ピストンよりも軸方向外側に位置し、前記トリガーが操作された状態において前記ピストンの軸方向内側に位置する長さとされている構成としてもよい。
この構成によれば、軸部の長さを短くすることによっても、トリガーの操作時におけるシリンダー内の圧力を下げることが可能となり、トリガーを引く力を軽くすることができる。
【0023】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記軸部は、前記ピストンの内周面に接することによって前記シリンダーの移動を案内する案内部を有している、構成としてもよい。
この構成によれば、案内部によって、トリガーの操作時におけるピストンの軸方向への移動を案内することができ、軸方向に交差する方向への位置ズレ(横ズレ)を抑制することが可能である。これにより、ピストンの横ズレに起因する液体組成物の液漏れを防ぐことができる。
【0024】
また、本発明の噴出器の一つの態様において、前記軸部は、軸方向から見て十字形状とされており軸回りに複数の案内部を有している構成としてもよい。
この構成によれば、トリガーの操作時におけるピストンの軸方向への移動を案内することができ、軸方向に交差する方向への位置ズレ(横ズレ)を抑制することが可能である。これにより、ピストンの横ズレに起因する液体組成物の液漏れを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一つの態様によれば、操作に伴う液漏れが生じるのを防止して、良好な噴出状態を維持することのできる噴出器を提供することができる。
また、噴出容量が大きい噴出容器においても液漏れを防止でき、良好な噴出状態を確保できる噴出器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る噴出器の一例として、トリガー式噴出器の構成について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0028】
なお、説明においてはXYZ座標系を設定し、このXYZ座標系を参照しつつ各部材の位置関係を説明する。この際、鉛直方向をZ軸方向、水平方向のうちピストン30(
図1参照)の摺動する方向をY軸方向、Y軸方向及びZ軸方向と直交する方向をX軸方向とする。また、以下の説明において、噴出方向とは、液体組成物が外部に噴出される向きのうち主となる向きを意味しており、本実施形態においては、+Y向きである。
【0029】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態のトリガー式噴出器の各部について説明する。
図1は、第1実施形態のトリガー式噴出器を示す断面図である。
図2は、第1実施形態のトリガー式噴出器の往復ピストンを示す部分拡大図である。
図3Aは、リング部材の概略構成を示す正面図、
図3Bは、
図3AのA−A’断面図である。
【0030】
トリガー式噴出器(噴出器)1は、
図1に示すように、容器21と、この容器21の首部21aに取り付けられ、容器21に収容された液体組成物を噴出するためのトリガー式の噴出装置2と、を備えている。トリガー式噴出器1は、噴出装置2の内部にトリガー31で作動される往復ポンプ(ポンプ)3を内蔵しており、トリガー31の操作に連動して往復ポンプ3を作動させることにより、容器21内の液体組成物を吸い上げて噴出させる。容器21の形状は、液体組成物を収容できる範囲内において、特に限定されず、どのような形状であってもよい。
【0031】
噴出装置2は、送液チューブ23、バルブ部24、往復ポンプ3、ボディ4、液体ガイド栓体27、ノズル部材(噴出部)26、トリガー(トリガー)31を備えている。
送液チューブ23は、容器21内の液体組成物を吸引、送液するためのもので、一端が容器21内に配置され、他端側がボディ4に取り付けられたバルブ部24に接続されている。
【0032】
往復ポンプ3は、バルブ部24と接続されたシリンダー(シリンダー)29と、シリンダー29との間にシリンダー室29aを形成するとともにシリンダー29の内周面29fに沿って摺動するピストン(ピストン)30と、ピストン30の一部を挿通させピストン30をその摺動方向に移動自在に保持するリング部材(規制部)9と、を有し、ボディ4に連結されている。往復ポンプ3は、シリンダー29に隣接したトリガー31が操作されることによって、容器21内から液体組成物を吸引し、バルブ部24を介してボディ4側へ加圧、圧送する。
【0033】
ボディ4は、合成樹脂(例えば、PP、PE、Ny、PET、PS、POM、PAN、ABS等)により成形されたもので、内部にバルブ部24と往復ポンプ3とを有する。ボディ4の上部には、バルブ部24内とシリンダー29内とを連通させる通液路(送給経路)25と、通液路25が形成された筒状の通液部38と、を有する。ボディ4には、通液部38の先端に液体ガイド栓体27が嵌着されており、液体ガイド栓体27の先端にノズル部材26が装着されている。また、ボディ4の外側には、合成樹脂成型されたカバー5が被着されている。
【0034】
次に、各構成要素の具体的な構成について述べる。
【0035】
往復ポンプ3は、
図1及び
図2に示すように、噴出方向に向けて開口した円筒状のシリンダー29と、噴出方向とは軸方向反対側に向けて開口し、シリンダー29に内装されたピストン30と、を備えている。
シリンダー29の内部には、ピストン30との間に形成された環状のシリンダー室29aが設けられている。シリンダー室29aは、シリンダー29の内側だけでなくピストン30の内側にも形成され、バルブ部24を介して容器21から供給される液体組成物を収容可能となっている。シリンダー室29aの最大容積(
図1の状態における容積)は、一度のトリガー31の操作でノズル部材26から噴出する液体組成物の量以上である。
【0036】
シリンダー29のバルブ部24側(−Y側)の壁部には、ピストン30側(+Y側)に向けて突出する軸部29bが設けられている。軸部29bの外周を覆うようにして、シリンダー29内にピストン30が内装されている。また、シリンダー29の円筒状の側壁の一部である底部側には、シリンダー29内の残圧及び液体を気液導入路14へと導く、気液導入孔29cが形成されている。気液導入路14は、シリンダー29とボディ4との間に形成される空間からなり、容器21内と連通している。具体的に気液導入路14は、ボディ4の下部に形成された連通孔4aと、バルブ部24の底部に形成された連通孔24gと、を介して容器21内と連通している。
【0037】
ピストン30は、前方側が中実で後方側が中空とされた主部30aと、主部30aの開口側の外周面に設けられたフランジ部30bと、フランジ部30bの周縁に亘って設けられたシール部30cと、を有する。ピストン30は、主部30a内にシリンダー29の軸部29bを挿入させるようにして組み込まれている。
【0038】
シール部30cは、シリンダー29の内周面29fに密接した状態で設けられ、シリンダー29の内周面29fに沿って摺動する。シール部30cには、ピストン30の摺動方向(Y軸方向)中央部分に、径方向内側に凹む凹部30eが設けられている。
【0039】
凹部30eは、シリンダー室29a内からシリンダー29の内周面29fを伝わって流出してきた液体組成物を確保し、気液導入孔29cへと流出させる機能を果たす部分である。ピストン30の先端部は、トリガー31の背面側に係合されており、トリガー31と連動して前後方向(Y軸方向)に摺動できるようになっている。
【0040】
リング部材9は、シリンダー29の先端側に装着され、シリンダー29の開口側を閉塞している。リング部材9には、ピストン30の主部30aを挿通させる挿通孔9aが設けられている。挿通孔9aは、ピストン30の主部30aにおける最外径よりも若干大きい径をなし、ピストン30の摺動を阻害することのない大きさとなっている。
【0041】
挿通孔9aの径方向外側には、挿通孔9aに連通する複数のエア置換部9bが設けられている。複数のエア置換部9bは、挿通孔9aの周方向へ互いに所定の間隔をおいて配置され、ピストン30とリング部材9との間に形成される空間K(
図2)と外部空間とを連通させている。ピストン30の摺動に応じて、エア置換部9bを通じて空間K内に空気が流出入する。これにより、シリンダー29の開口側にリング部材9を設けた場合でも、ピストン30の移動がスムーズに行われる。
【0042】
エア置換部9bは、気体のみの流出入を可能にしたものであり、仮に空間K内に流入した液体組成物があったとしても、その液体組成物が外部へ漏れ出すことのない溝の深さに設定されている。すなわち
図3A、
図3Bに示すように、エア置換部9bの形状を、リング部材9の径方向における厚みtを十分に確保した凹部形状とすることにより、液体組成物が外部へ漏れ出すのを防ぐことができる。
【0043】
なお、エア置換部9bの数や位置は適宜変更が可能である。本実施形態では、複数のエア置換部9bが挿通孔9aに連通した構成となっていることから、製造時において、エア置換部9b及び挿通孔9aの双方を同時に形成することができる。また、エア置換部9bを設けることでリング部材9の樹脂量を減らすことができ、コスト削減が見込める。
【0044】
本実施形態においては、隣り合うエア置換部9b、9b間に存在しかつ挿通孔9aの内周面を部分的に構成する凸部9dが、ピストン30の主部30aに複数摺接していることが好ましい。これにより、摺動方向に交差する方向へのピストン30の移動が規制されるため、シリンダー29内においてピストン30がガタつくことなく保持される。
【0045】
リング部材9には、シリンダー29の開口側の内周面29fに設けられた嵌合凹部29dに嵌合する、嵌合凸部9cが設けられている。本実施形態では、嵌合凹部29dが開口側へ向かって拡径されたテーパー形状とされている。嵌合部材のいずれか一方をテーパー形状としておくことで、部材どうしの嵌合が容易であるとともに寸法設定も容易となる。
【0046】
本実施形態では、リング部材9の嵌合凸部9cがシリンダー29の嵌合凹部29dに嵌合することで、リング部材9がシリンダー29の内周面29fに対して液密に接して固定されている。これにより、液体組成物が外部へ漏れ出すのを防止することができる。
なお、上述したリング部材9の形状は一例であり、適宜変更が可能である。嵌合凸部9cの凹凸形状も図示した形状に限られず、シリンダー29の開口側にリング部材9が液密に固定される構成であればよい。
【0047】
ピストン30は、使用者がトリガー31を握る、または緩めるといった操作をすることにより、シリンダー29の軸部29bが突出する水平方向(Y軸方向)に沿って、摺動する。具体的には、使用者がトリガー31を握って容器21に接近させる(
図1矢印方向に動かす)ことにより、ピストン30がバルブ部24側(−Y側)に移動する。また、トリガー31を緩めることにより、ばね片13の段発力によってピストン30がトリガー31側(+Y側)に移動する。
【0048】
トリガー31は、回転軸Aを中心として揺動可能に設けられている。トリガー31は、操作されていない状態において、噴出方向(+Y向き)に向かうに従って、鉛直方向下方側(−Z側)に向かって延びている。トリガー31は、復帰バネ6を介してボディ4に連結されており、トリガー31の操作に応じて水平基板12から垂下したばね片13が弾性変形する。復帰バネ6の水平基板12は、トリガー31の操作によりばね片13が変形することで大きな力を受けるが、トリガー31の引き動作が解除されると同時にばね片13に弾発力を発揮させる機能を果たす。
【0049】
トリガー31の操作によって、シリンダー29内のピストン30をY軸方向に往復させることで、シリンダー室29aの容積を変化させ、容器21内の液体組成物をノズル部材26へと移送することができる。
【0050】
次に、トリガー式噴出器の操作時の様子について
図1及び
図4を参照して述べる。
図4は、トリガー式噴出器1のトリガーを引いた時の様子を示す図である。
図1に示すように、使用者がトリガー31を操作する前の状態では、ばね片13が復帰姿勢にあり、往復ポンプ3のピストン30はシリンダー29の開口側に位置している。
図4に示すように、使用者によってトリガー31が容器21側へと引かれると、トリガー31によってピストン30が押圧されてシリンダー29の奥へと移動し、シリンダー室29aの容積が減少する。この際、ピストン30とリング部材9との間に形成される空間Kが拡がり、リング部材9に設けられた複数のエア置換部9bを通じて空間K内に空気が流入する。
【0051】
次に、トリガー31に加える力を緩めると、復帰バネ6のばね片13の弾発力により、トリガー31とピストン30とが元の位置(
図1で示す位置)に戻され、シリンダー室29aの容積が増加する。これに伴い、空間K内の空気がリング部材9のエア置換部9bから外部へと排出される。同時に、容器21内に収容された液体組成物が送液チューブ23を介して吸い上げられて、バルブ部24を介してシリンダー室29a内に流入する。
【0052】
次に、再度トリガー31に対して容器21に接近する方向に力を加えると、上述と同様にピストン30が移動し、シリンダー室29aの容積が減少する(
図4)。そのため、シリンダー室29a内に収容されていた液体組成物が押し出され、シリンダー室29aを介して通液路25側へと流出する。通液路25内に押し出された液体組成物は、液体ガイド栓体27を介してノズル部材26に供給され、前方側(+Y側)へと噴出される。
【0053】
図5Aは、リング部材を備えていない、従来のトリガー式噴出器の一部の構成を示す斜視図である。
図5Bは、トリガーの通常引きを示す図である。
図5Cは、トリガーの斜め引きを示す図である。
【0054】
図5Aに示すような従来のトリガー式噴出器50を使用する場合、使用者が、トリガー31を引いて往復ポンプ3のピストン30を往復させることで液体組成物を噴出させる。この際、通常はピストン30に対してトリガー31を直角に引くことで液体組成物が正常に噴出される。つまり、
図5Bに示すように、正面から見て、トリガー31の延在方向がトリガー式噴出器1の上下方向に沿った姿勢のままトリガー31を引けば、液体組成物が良好な霧状となって噴出される。
【0055】
しかしながら、使用者のトリガー31の引き方によっては不具合が生じることがある。
図5Cに示すように、使用者がトリガー31を引く際にトリガー31を斜め方向へ傾けた状態で操作されることがある。このようなトリガー31の斜め引きの現象が生じると、シリンダー29とピストン30との間に隙間ができてしまい、液体組成物が外部に漏れてしまう場合がある。
【0056】
本実施形態の構成によれば、シリンダー29の開口側に、ピストン30の一部を挿通させるリング部材9を設けたことにより、ピストン30を摺動方向に移動自在に保持するとともに、使用時におけるピストン30の横ズレを抑えることができる。つまり、リング部材9にピストン30が接することで、ピストン30の摺動方向に交差する方向の移動が規制されるようになっている。
【0057】
上述したように、リング部材9にはピストン30の主部30aの最外径よりも若干大きい径を有する挿通孔9aが設けられている。トリガー31が操作される際には、挿通孔9aの内周面にピストン30の主部30aが当接することによって、ピストン30の径方向(摺動方向に交差する方向)における横移動が規制されるようになっている。
【0058】
これにより、使用者によってトリガー31が斜めに傾けられた状態で引かれた場合でも、シリンダー29に対するピストン30の横ズレが抑えられ、相互間に隙間が生じることが防止される。これにより、往復ポンプ3内の液体組成物が外部に漏れ出てしまうのを抑えることができる。
【0059】
また、本実施形態の構成によれば、仮に、シリンダー室29aからピストン30側へ液体組成物が漏れ出した場合であっても、ピストン30のシール部30cに設けられた凹部30eにおいて確保されるようになっている。そして、ピストン30の移動によってシール部30cがシリンダー29の気液導入孔29c上に到達した際に、凹部30e内の液体組成物が気液導入孔29cを通じて気液導入路14に流入するようになっている。気液導入路14に流入した液体組成物は、最終的に容器21内へと流入し得るようになっている。このため、シリンダー29内に液体組成物が残留するのを抑制できる。
【0060】
また、仮に、シリンダー室29a内から側壁を伝わってピストン30のシール部30cを超え、ピストン30とリング部材9との間に形成される空間に液体組成物が達してしまった場合でも、シリンダー29とリング部材9とは液密な嵌合状態であるためこれらの間から漏れ出すことはない。また、ピストン30とリング部材9との間に形成される空間Kに達した液体組成物は、気液導入孔29c等を介して容器21内に回収される。
【0061】
また、本実施形態のリング部材9には、挿通孔9aの周囲に複数のエア置換部9bが設けられている。トリガー31の操作によってピストン30が摺動する際、リング部材9のエア置換部9bを通じて、ピストン30とリング部材9との間に形成される空間K内に空気が流出入し、往復ポンプ3内外の空気の置換が行われるようになっている。リング部材9によってシリンダー29の開口側を完全に密閉するのではなく、任意の場所に通気部分を設けておくことによってピストン30の摺動がスムーズとなる。
【0062】
これにより、トリガー31を引く際に余計な力を必要とせず、トリガー31の操作が容易になる。使用者が無理にトリガー31を引くことがないため、トリガーの斜め引きも抑止できる。また、トリガー31の操作(ピストン30の摺動)がスムーズになることで、液体組成物が良好に噴出される。
【0063】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のトリガー式噴出器40の構成について説明する。
以下に示す本実施形態のトリガー式噴出器40の基本構成は、上記第1実施形態と略同様であるが、リング部材(規制部)41の構成が異なる。よって以下の説明では、上記実施形態と異なる点について詳しく説明し、共通な箇所の説明は省略する。また、説明に用いる各図面において、
図1〜
図5Cと共通の構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0064】
図6は、第2実施形態のトリガー式噴出器40の要部構成を示す断面図である。
図7は、第2実施形態の往復ポンプ3を部分的に拡大して示す断面図である。
図8Aは、第2実施形態のリング部材41の構成を示す正面図である。
図8Bは、
図8AのB−B’線に沿う断面図である。
【0065】
本実施形態のトリガー式噴出器40は、
図6に示すようなリング部材41を備えている。
リング部材41は、
図7に示すように、挿通部42とフランジ部43と嵌合凸部44とを有して構成され、同軸をなすこれらの中心に挿通孔41aが形成されている。リング部材41は、フランジ部43の一面側に設けられた嵌合凸部44が、シリンダー29の開口側に設けられた嵌合凹部29dに液密に固定することによってシリンダー29に対して取り付けられる。リング部材41は、アンダーカットあるいは接着材によってシリンダー29に固定されている。
【0066】
図8Aに示すように円筒状とされた挿通部42は、フランジ部43及び嵌合凸部44の軸方向両側に突出する長さを有している。挿通部42の一方の端部(第1の延出部)42Aは、フランジ部43の嵌合凸部44とは軸方向反対側に位置し、フランジ部43の面43aよりも軸方向外側(
図6に示したトリガー31側)へ延出している。また、挿通部42の他方の端部(第2の延出部)42Bは、嵌合凸部44よりも軸方向外側へ延出し、シリンダー29側へと延びている。
【0067】
フランジ部43および嵌合凸部44は、挿通部42の径方向外側に延出するとともに周方向に亘って円板状に形成されている。嵌合凸部44は、フランジ部43の面43b側に設けられている。
【0068】
フランジ部43は、面43b側に設けられた嵌合凸部44よりも直径の大きい円形状を呈し嵌合凸部44よりも径方向外側に延出した周縁部分が、シリンダー29に対するストッパー部43Aとして機能する。ストッパー部43Aは、シリンダー29の開口側の端面29gに当接し、例えばトリガー31が操作された際に、リング部材41がシリンダー29の内側に引き込まれないようにするためのものである。
【0069】
嵌合凸部44は、
図8Bに示すように外周面44aに段差44bが設けられており、シリンダー29に挿入される側の径が小さくなっている。これにより、開口側がテーパー形状とされた嵌合凹部29dに対する嵌合が容易になるとともに、嵌合凸部44が嵌合凹部29dに対して液密に接し、液漏れ防止効果が得られる。
【0070】
嵌合凸部44には、肉抜き部45が設けられている。肉抜き部45は、
図7に示す嵌合凸部44の端面44c(シリンダー29側の端面)からフランジ部43側へ窪ませて形成されている。肉抜き部45は、
図8Aに示すように、挿通孔の外側において軸回りを連続的に取り囲む環状の凹部であって、嵌合凸部44から見た平面視においてエア置換部9bを避けて形成されている。
【0071】
本実施形態の構成によれば、リング部材41にストッパー部43Aを設けることによって、トリガー31の操作時にリング部材41がシリンダー29の内側に引き込まれることがない。リング部材41のシリンダー29側への移動を規制することができれば、ストッパー部43Aの形状は図示したものに限られず、適宜変更が可能である。
また、本実施形態のリング部材41は、挿通部42の一方の端部42Aがフランジ部43の面43aよりもトリガー31側へ延出し、他方の端部42Bが嵌合凸部44よりも軸方向外側へ延出し、シリンダー29側へと延びた構成となっている。先の実施形態の構造よりも、リング部材41挿通孔41aの軸方向長さを長くしたことによって、リング部材41におけるピストン30に対する接触面積が広くなり、ピストン30の径方向への横ズレをより抑制することができる。このため、ユーザーによるトリガー31の操作具合に関わらず、液漏れを防止でき、耐久性を高めることができる。
【0072】
なお、本実施形態では、挿通部42の軸方向両側の端部42A,42Bが、フランジ部30b及び嵌合凸部44よりも軸方向外側へそれぞれ延出した構成となっているが、これに限られず、例えば、軸方向におけるいずれか一方の端部のみを延出させた構成としてもよい。トリガー操作時におけるピストン30のズレを効果的に抑制するためには、少なくともトリガー31側に延出する端部42Aを備える構成とすることが好ましい。
【0073】
また、リング部材41に肉抜き部45を設けることによって軽量化及び材料費の削減を図ることが可能である。また、ピストン30との接触によるリング部材41の変形を肉抜き部45において抑えることが可能である。これにより、トリガー31の操作具合に関わらず、シリンダー29の嵌合凹部29dに対する嵌合凸部44の液密な嵌合状態を維持することができる。
【0074】
また、本実施形態の往復ポンプ3では、シリンダー29の軸部46の外径D1がピストン30の内径D2よりも小さく、軸部46の外周面46aとピストン30の内周面30fとが互いに接しない構造となっている。
【0075】
本実施形態の往復ポンプ3には、シリンダー29の軸部46の外周面46aとピストン30の内周面30fとの間に流路48が形成されている。流路48は、トリガー31の操作時に、シリンダー室29a内において液体組成物を容易に流動させるためのものである。上述したように、往復ポンプ3は、トリガー31が操作されることによって容器21内から液体組成物を吸引しかつ圧送するものである。ユーザーは、トリガー31を操作すると、シリンダー室29a内に充填された液体組成物がピストン30で押し出される(圧送する)ことによる抵抗を感じる。第1実施形態の構造でも軸部29bの外径がピストン30の内径よりも小さくなっているが、軸部29bとピストン30との間の間隔が小さいとシリンダー29内の圧力が大きくなってしまう。
【0076】
そこで、本実施形態では、第1実施形態よりも軸部46とピストン30との間の間隔を大きく取り、より多くの液体組成物を流動させるための流路48を形成した。これにより、トリガー31の操作時におけるシリンダー29内の圧力を低くすることができ、ユーザーがトリガー31を引くときの力を弱める(軽くする)ことができる。これにより、シリンダー29の容量を大きくした場合であってもピストン30の移動がスムーズとなり、トリガー31の操作時に余計な力がかからず軽い力で行うことができる。その結果、トリガー31の横ズレを抑えることができ、液体組成物の液漏れ防止効果も高めることができる。
さらに、本実施形態の構造によれば、噴出容量が大きい噴出容器においても液漏れを防止でき、良好な噴出状態を確保することができる。
本実施形態では、軸部29bの軸方向に交差する断面の面積が、ピストン30の内径面積の75%以下であり、より好ましくは50%以下である。
【0077】
(リング部材の変形例:肉抜きタイプ)
図9は、第2実施形態におけるトリガー式噴出器の変形例を示す断面図である。
図10Aは、第2実施形態におけるリング部材の変形例を示す正面図である。
図10Bは、
図10AのC−C’線に沿う断面図である。
図9、
図10A及び
図10Bに示すように、上述した第1実施形態のリング部材9においても、嵌合凸部9cに肉抜き部45が設けられた構成であってもよい。
【0078】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のトリガー式噴出器50の構成について説明する。
以下に示す本実施形態のトリガー式噴出器50の基本構成は、上記第1実施形態と略同様であるが、軸部51の形状が異なる。よって以下の説明では、上記実施形態と異なる点について詳しく説明し、共通な箇所の説明は省略する。また、説明に用いる各図面において、
図1〜
図5Cと共通の構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0079】
図11Aは、第3実施形態のトリガー式噴出器50の要部構成を示す断面図である。
図11Bは、
図11AのD−D’線に沿う断面図である。
図11Aに示すように、本実施形態のトリガー式噴出器50は、軸方向における断面形状が十文字形状をなす軸部51を有するシリンダー29を備えている。軸部51は、軸回りに4つの突出部52を有しており、軸方向から見て互いに垂直をなす。各突出部52は、ピストン30の内周面30fに接する案内面(案内部)52aを有している。
【0080】
本実施形態の構成によれば、軸部51の軸回りに存在する4つの案内面52a(突出部52)がピストン30の内周面30fに接することで、トリガー操作時にピストン30のがたつきを抑制することができる。
【0081】
なお、軸部51の軸方向に交差する断面形状は、適宜変更することが可能である。
本実施形態では、軸部51の軸回りに4つの突出部52を設けた軸部構造としたが、これに限らない。
【0082】
また、本実施形態では、ピストン30の内周面30fに突出部52の案内面52aが面接触する構造となっているが、これに限らない。例えば、雪の結晶構造のような断面形状、あるいは星形のような断面形状であってもよく、ピストン30の内周面30fに線接触、あるいは点接触する構造であってもよい。
【0083】
軸部51及びピストン30が互いに同軸をなすようピストン30の内周面30fに接する、本発明に係る案内部を有する構造であれば、トリガー31の操作時におけるピストン30の軸方向への移動を案内することができ、軸方向に交差する方向への位置ズレ(横ズレ)を抑制することが可能である。これにより、ピストン30の横ズレに起因する液体組成物の液漏れを防ぐことができ、トリガー式噴出器50の信頼性が高まる。
【0084】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態のトリガー式噴出器60の構成について説明する。
以下に示す本実施形態のトリガー式噴出器60の基本構成は、上記第1実施形態と略同様であるが、軸部の長さが異なる。よって以下の説明では、上記実施形態と異なる点について詳しく説明し、共通な箇所の説明は省略する。また、説明に用いる各図面において、
図1〜
図5Cと共通の構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0085】
図12は、第4実施形態のトリガー式噴出器60の要部構成を示す断面図である。
図13Aは、トリガー操作前の状態を示す図である。
図13Bは、トリガー操作後の状態を示す図である。
【0086】
図12に示すように、本実施形態のトリガー式噴出器60では、シリンダー29の内部に短軸構造の軸部61が設けられている。軸部61は、先の各実施形態における軸部よりも、軸方向長さが短くなっている。ここで、シリンダー29におけるシリンダー室29aの壁部29e側を軸部61の基部61aとし、壁部29e側の基部61aとは軸方向反対側を軸部61の先端部61bとする。
【0087】
具体的に、軸部61の軸方向長さは、トリガー31が操作される前の状態において、ピストン30よりも軸方向外側に位置する(
図13A)とともに、トリガー31が操作された状態において、ピストン30の軸方向内側に位置する(
図13B)長さとされている。つまり、トリガー31が操作される前は、ピストン30の内側に軸部61は挿入されておらず、トリガー31が操作されてピストン30がシリンダー室29aの奥(壁部29e)側へと移動したときに、初めてピストン30の内側に軸部61が挿入する構造となっている。
このように、シリンダー室29a内の軸部61の長さを短くすることによって、トリガー式噴出器60の使用時においてユーザーがトリガー31を引くときのシリンダー29内の圧力を下げることができる。
【0088】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態のトリガー式噴出器70の構成について説明する。
以下に示す本実施形態のトリガー式噴出器70の基本構成は、上記第1実施形態と略同様であるが、シリンダー内部に軸部を有しない点において異なる。よって以下の説明では、上記実施形態と異なる点について詳しく説明し、共通な箇所の説明は省略する。また、説明に用いる各図面において、
図1〜
図5Cと共通の構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0089】
図14は、第5実施形態のトリガー式噴出器70の要部構成を示す断面図である。
図14に示すように、本実施形態のトリガー式噴出器70は、軸部を有しないシリンダー構造となっている。つまり、シリンダー29の開口と軸方向反対側の壁部29eが平面になっている。この構造によれば、軸部や弾性部材がないことで、ピストン30とシリンダー29との間に大容量のシリンダー室29aを形成することができた。これにより、トリガー操作時におけるシリンダー29内の圧力が大幅に低下するため、ユーザーがトリガー31を引く力を軽くすることができ、操作性の良好なトリガー式噴出器70が得られる。
【0090】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態のトリガー式噴出器80の構成について説明する。
以下に示す本実施形態のトリガー式噴出器80の基本構成は、上記第1実施形態と略同様であるが、スプリング構造とされている点において異なる。よって以下の説明では、上記実施形態と異なる点について詳しく説明し、共通な箇所の説明は省略する。また、説明に用いる各図面において、
図1〜
図5Cと共通の構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0091】
図15は、第6実施形態のトリガー式噴出器80の要部構成を示す断面図である。
図16は、
図15に示す往復ポンプ3を部分的に拡大して示す断面図である。
図15に示すように、本実施形態のトリガー式噴出器80は、シリンダー29とピストン30との間に、ピストン30に対して弾性力を付与する弾性部材81が架設されている。弾性部材81は、例えばコイルスプリング等により形成され、軸方向一端側が筒状の弾性部材保持部82内に保持され、軸方向他端側がピストン30の、拡径部30Aよりもトリガー側に設けられた弾性部材保持部30h内に保持されている。
【0092】
先の実施形態では、板ばねの弾性力によってトリガー31が初期位置に復帰する構造となっていたが、本実施形態では、シリンダー29とピストン30との間に架設された弾性部材81の弾性力を利用した構造となっている。
【0093】
弾性部材保持部82におけるシリンダー29の軸方向における突出長さは、シリンダー29との間で弾性部材81の一端側を保持するために必要な最低限の長さである。
【0094】
本実施形態では、トリガー31が操作される前の状態において、軸方向における弾性部材保持部82とピストン30との間に隙間39が形成され、この隙間39を介して弾性部材81の一部がシリンダー室29a内に露出するようになっている。これにより、トリガー31の操作時では、コイル状をなす弾性部材81を通過するように液体組成物がシリンダー室29a内を流動することになるため、トリガー31の操作時におけるシリンダー29内の圧力を抑えることができる。
【0095】
ここで、弾性部材81が鉄鋼系素材からなる場合、液体組成物に触れることによる腐食、腐食による折損等が生じるおそれがあるため、ステンレス材料の選定や予め弾性部材81の表面にメッキ処理、撥水処理を施しておくなど、防錆効果の高い表面処理を施しておくことが好ましい。
【0096】
また、本実施形態のピストン30は、拡径部30Aと、拡径部30Aよりもトリガー31側に設けられた弾性部材保持部30hと有して構成されている。拡径部30Aは、シリンダー29内に挿入される部分であり、弾性部材保持部30hよりも径方向外側に拡がった形状になっている。ピストン30は、弾性部材保持部30hが、リング部材41の挿通孔41a内に挿通されて保持されている。
【0097】
図15及び
図16に示すように、トリガー31が初期位置にある状態において、ユーザーがトリガー31を操作すると、弾性部材81の弾性力に抗してピストン30が前進し、シリンダー室29a内の液体組成物が圧送される。このとき、拡径部30A内に弾性部材保持部82が挿入され、隙間39はなくなる。
その後、ユーザーがトリガー31から手を放すと、弾性部材81の弾性復元力により、ピストン30が後方へ摺動されて、トリガー31が初期位置に復帰する。そのため、本実施形態では、先の実施形態に設けられていた、ばね片13(
図1参照)が不要になる。
【0098】
図17は、従来のトリガー式噴出器の要部構成を示す断面図である。
図17に示すように、従来の構成では、弾性部材91が、シリンダー93の軸部94とピストン92との間に収容され、シリンダー室93a内に充填される液体組成物に触れない構成となっていた。そのため、ピストン92の内側にシリンダー室93aを形成することができず、本実施形態のように、ピストンの内側をシリンダー室として利用することができない構造となっていた。従来の構成では、シリンダー室93aの容量が小さいため、噴出量を増やすことは難しい。
【0099】
これに対して、本実施形態の構成によれば、弾性部材81の全体を覆うのではなくシリンダー室29aに露出させ、弾性部材81を収容していた空間をシリンダー室29aに連通させる構成としたことにより、ピストン30とシリンダー29との間に従来の構成よりも容量の大きいシリンダー室29aを形成することができた。これによりトリガー式噴出器80における噴出量を増やすことが可能になった。
【0100】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0101】
先に述べたように、リング部材9に設けたエア置換部9bは挿通孔9aに連通した構成となっているが、これに限られない。つまり、ピストン30とリング部材9との間に形成される空間Kが密封されなければいいので、必ずしも挿通孔9aにエア置換部9bが連通している必要はなく、挿通孔9aとエア置換部9bとが個別に設けられていてもよい。
【0102】
なお、先の実施形態においては、本発明に係る規制部の一例としてリング部材9を挙げたが、規制部の形状はこれに限られない。リング形状ではなく、他の形状としても構わない。
【0103】
また、先の実施形態においては、本発明に係る噴出器の一例としてトリガー式噴出器の構成について述べたが、これに限らない。トリガーを有しない噴出器(例えば、一般的なポンプ容器)にも適用することが可能である。