(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
不使用時の下側位置と使用時の上側位置との間で昇降可能で、かつ、不使用時の前側位置と使用時の後側位置との間で下部が回動するようにした下振り式のヘッドレストであって、
少なくとも一方が中空パイプからなる左右一対のヘッドレストステーと、
左右一対のヘッドレストステーの上端部を連結する状態で固定された固定部材と、
固定部材に対して回動可能に支持される回動プレートと、
固定部材に対して回動プレートを回動可能な状態で結合する第一結合軸と、
回動プレートを格納方向に常時付勢するための回動プレート付勢バネと、
下端側に係合部D1を有し、上端側にカム部C2を有する棒状部材からなり、下端側がヘッドレストステー内に挿通されるロック解除ピンと、
シートバック内となる箇所に係合部D2を有するロック解除ピン規制手段と、
を備え、
ロックプレート又は回動プレートにカム部C1が設けられるとともに、
不使用時で下側位置かつ前側位置にある状態から上昇させていくと、ヘッドレストステーとともにロック解除ピンが上昇していき、
所定高さに達した際に、係合部D1と係合部D2とが係合して、ヘッドレストステーに対してロック解除ピンが上昇しない状態となり、
さらに上昇させると、カム部C1とカム部C2とが互いに作用して、回動プレートが後方回動する
ようにすることによって、
ヘッドレストを上昇させる動作に伴って、ヘッドレストの下部を前側位置から後側位置へと自動的に回動させることができるようにした
ことを特徴とするヘッドレスト。
上記のロック解除ピン規制手段が、シートバック上部でヘッドレストステーの外周部を保持するステーホルダ、又は、ステーホルダの下側に接続された筒状ソケットとされ、
上記の係合部D1が、ロック解除ピンの下端部に設けられた鉛直断面逆「V」字状の拡径部とされ、
上記の係合部D2が、ステーホルダの下端又は筒状ソケットの下端とされ、
不使用時で下側位置かつ前側位置にある状態から上昇させていき、前記所定高さに達した際に、係合部D1である拡径部が、係合部D2であるステーホルダの下端又は筒状ソケットの下端に係合されるようにした
請求項1〜3いずれか記載のヘッドレスト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した昇降型下振り回動式のヘッドレストは、不使用時の状態から適切に使用できる状態とするためには、ヘッドレストを下側位置から上側位置へと上昇させる操作(上昇操作)と、ヘッドレストの下部が格納姿勢をなす前側位置から使用姿勢をなす後側位置へと後方回動させる操作(後方回動操作)との2段階の操作が必要であった。このため、操作が煩わしいという欠点を有していた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、昇降型下振り回動式のものでありながら、後方回動操作を行うことなく、上昇操作のみによって、不使用時の状態から適切に使用できる状態にすることのできるヘッドレストを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
不使用時の下側位置と使用時の上側位置との間で昇降可能で、かつ、不使用時の前側位置と使用時の後側位置との間で下部が回動するようにした下振り式のヘッドレストであって、
少なくとも一方が中空パイプからなる左右一対のヘッドレストステーと、
左右一対のヘッドレストステーの上端部を連結する状態で固定された固定部材と、
固定部材に対して回動可能に支持される回動プレートと、
固定部材に対して回動プレートを回動可能な状態で結合する第一結合軸と、
回動プレートを格納方向に常時付勢するための回動プレート付勢バネと、
下端側に係合部D
1を有し、上端側にカム部C
2を有する棒状部材からなり、下端側がヘッドレストステー内に挿通されるロック解除ピンと、
シートバック内となる箇所に係合部D
2を有するロック解除ピン規制手段と、
を備え、
ロックプレート又は回動プレートにカム部C
1が設けられるとともに、
不使用時で下側位置かつ前側位置にある状態から上昇させていくと、ヘッドレストステーとともにロック解除ピンが上昇していき、
所定高さに達した際に、係合部D
1と係合部D
2とが係合して、ヘッドレストステーに対してロック解除ピンが上昇しない状態となり、
さらに上昇させると、カム部C
1とカム部C
2とが互いに作用して、回動プレートが後方回動する
ようにすることによって、
ヘッドレストを上昇させる動作に伴って、ヘッドレストの下部を前側位置から後側位置へと自動的に回動させることができるようにした
ことを特徴とするヘッドレスト
を提供することによって解決される。
【0007】
このように、ヘッドレストを上昇操作する際に、ロック解除ピンの上昇が規制されて、カム部C
1とロック解除ピンのカム部C
2とが互いに作用し、ロックプレートをロック解除方向に回動するようにしたことによって、回動プレートは、回動プレート付勢バネの付勢力によって自動的に後方回動するようになる。このため、昇降型下振り回動式のヘッドレストでありながら、後方回動操作を行うことなく、上昇操作のみによって、不使用時の状態から適切に使用できる状態にすることが可能になる。したがって、操作の簡単な昇降型下振り回動式のヘッドレストを提供することが可能になる。
【0008】
本発明のヘッドレストにおいて、カム部C
1を設ける部材は、回動プレートの回動に影響を及ぼし得る可動部材であれば特に限定されない。カム部C
1は、回動プレートそのものに設ける場合だけでなく、回動プレート以外の部材に設ける場合もある。
【0009】
回動プレート以外の部材にカム部C
1を設ける態様としては、例えば、以下のようなものがある。すなわち、
回動プレートに設けられた係合部B
1に係合して回動プレートの後方回動をロックするための係合部B
2を有するロックプレートと、
固定部材に対してロックプレートを回動可能な状態で結合する第二結合軸と、
ロックプレートをロック方向に付勢するためのロックプレート付勢バネと、
をさらに備えるとともに、
上記のカム部C
1が、ロックプレートに設けられた
ことによって、
不使用時で下側位置かつ前側位置にあるときには、係合部B
1と係合部B
2とが係合して、ヘッドレストの後方回動が規制された状態となり、
下側位置から上昇させていくと、ヘッドレストステーとともにロック解除ピンが上昇していき、
所定高さに達した際に、係合部D
2と係合部D
1とが係合され、ヘッドレストステーに対してロック解除ピンが上昇しない状態となり、
さらに上昇させると、カム部C
1とカム部C
2とが互いに作用して、ロックプレートがロック解除方向に回動し、係合部B
1と係合部B
2との係合が解除された状態となり、回動プレートが後方回動する
ようにすることによって、
ヘッドレストを上昇させる動作に伴って、ヘッドレストの下部を前側位置から後側位置へと自動的に回動させることができるようにする態様である。
以下においては、このヘッドレストのように、回動プレート以外の部材にカム部C
1を設けたヘッドレストを「カムC
1間接型のヘッドレスト」と呼ぶことがある。
【0010】
一方、回動プレートそのものに、カム部C
1を設ける態様としては、例えば、以下のようなものがある。すなわち、
上記のカム部C
1が、回動プレートに設けられたカム孔とされ、
上記のカム部C
2が、ロック解除ピンの上端側に設けられたカム突起とされ、
不使用時で下側位置かつ前側位置にある状態から上昇させていくと、ヘッドレストステーとともにロック解除ピンが上昇していき、
所定高さに達した際に、係合部D
1と係合部D
2とが係合して、ヘッドレストステーに対してロック解除ピンが上昇しない状態となり、
さらに上昇させると、カム孔であるカム部C
1内をカム突起であるカム部C
2が一側に移動する
ようにすることによって、
ヘッドレストを上昇させる動作に伴って、ヘッドレストの下部を前側位置から後側位置へと自動的に回動させることができるようにするとともに、
使用時で上側位置かつ後側位置にある状態から下降させていくと、カム孔であるカム部C
1内をカム突起であるカム部C
2が他側に移動し、回動プレートが前方回動する
ようにすることによって、
ヘッドレストを下降させる動作に伴って、ヘッドレストの下部を後側位置から前側位置へと自動的に回動させることができるようにする態様である。
この構成のヘッドレストは、ヘッドレスト上昇時の後方回動だけでなく、ヘッドレスト下降時の前方回動も自動的に行われるという利点を有している。以下においては、このヘッドレストのように、回動プレートそのものにカム部C
1を設けたヘッドレストを「カムC
1直接型のヘッドレスト」と呼ぶことがある。
【0011】
本発明のヘッドレストにおいて、係合部D
1と係合部D
2との係合態様は、特に限定されないが、例えば、以下のものがある。
【0012】
第一に、
中空パイプからなるヘッドレストステーの下端側の外周面に、開口部A
1が設けられ、
上記の係合部D
1が、ロック解除ピンの下端側の外周面に設けられた
ことによって、
不使用時で下側位置かつ前側位置にある状態から上昇させていき、前記所定高さに達した際に、係合部D
2が開口部A
1からヘッドレストステー内に挿入されて係合部D
1に係合されるようにする態様が挙げられる。
この係合態様は、ヘッドレストの高さを複数段階で調節できるようにしたい場合等に好適に採用することができる。以下においては、このヘッドレストのように、係合部D
2が横方向(ヘッドレストステーに垂直な方向)に係合する態様のヘッドレストを、「係合部D
2横移動型のヘッドレスト」と呼ぶことがある。
【0013】
第二に、
上記のロック解除ピン規制手段が、シートバック上部でヘッドレストステーの外周部を保持するステーホルダ、又は、ステーホルダの下側に接続された筒状ソケットとされ、
上記の係合部D
1が、ロック解除ピンの下端部に設けられた拡径部とされ、
上記の係合部D
2が、ステーホルダの下端又は
筒状ソケットの下端とされ、
不使用時で下側位置かつ前側位置にある状態から上昇させていき、前記所定高さに達した際に、係合部D
1である拡径部が、係合部D
2であるステーホルダの下端又は
筒状ソケットの下端に係合されるようにする態様が挙げられる。
係合部D
1である拡径部は、鉛直断面逆「V」字状を為すものであると好ましい。これにより、上記の拡径部の外径は、ロック解除ピンの下端側をステーホルダの上端から挿通する際にはステーホルダの内径よりも小さくなる一方、ステーホルダ(又は筒状ソケット)の下端から出ると広がってステーホルダ(又は筒状ソケット)の内径よりも大きく、かつ、ステーホルダの下端又は筒状ソケットの下端に引っ掛かることが可能な状態まで拡大するようにすることができる。したがって、シートバックに対するヘッドレストの組み付け作業を容易に行うことが可能になる。以下においては、このヘッドレストのように、係合部D
2が縦方向(ヘッドレストステーに平行な方向)に係合する態様のヘッドレストを、「係合部D
2縦移動型のヘッドレスト」と呼ぶことがある。
【0014】
本発明のヘッドレストは、その形態を特に限定されない。例えば、
ヘッドレストにおける使用者の頭部を受ける頭受け部分が鞍状を為すヘッドレスト(以下においては、「鞍型のヘッドレスト」と呼ぶことがある。)においても、本発明の構成を好適に採用することができる。この鞍型のヘッドレストにおいては、
当該頭受け部分における不使用時にシートバックの前面に沿う部分が当該前面から前方へ迫り出した状態となるようにすれば、ヘッドレストの不適切な使用を防止することができる。また、
ヘッドレストにおける使用者の頭部を受ける頭受け部分が枕状を為すヘッドレスト(以下においては、「枕型のヘッドレスト」と呼ぶことがある。)においても、本発明の構成を好適に採用することができる。この枕型のヘッドレストにおいては、不使用時に
当該頭受け部分の下端部がシートバックの上部から前方斜め下向きに迫り出した状態となるようにすれば、ヘッドレストの不適切な使用を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によって、昇降型下振り回動式のものでありながら、後方回動操作を行うことなく、上昇操作のみによって、不使用時の状態から適切に使用できる状態にすることのできるヘッドレストを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のヘッドレストの好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、第一実施態様、第二実施態様、第三実施態様、第四実施態様及び第五実施態様の5つの実施態様を例に挙げて、本発明のヘッドレストを説明する。ただし、本発明のヘッドレストの技術的範囲は、これらの実施態様のものに限定されない。本発明のヘッドレストは、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0018】
1.第一実施態様のヘッドレスト
まず、第一実施態様のヘッドレストについて説明する。第一実施態様のヘッドレスト10は、上述した「カムC
1間接型のヘッドレスト」に相当し、かつ、上述した「係合部D
2横移動型のヘッドレスト」に相当するものである。
【0019】
図1は、第一実施態様のヘッドレスト10を分解した状態を示した斜視図である。以下においては、説明の便宜上、
図1における、x軸方向正側を「左」側と呼び、x軸方向負側を「右」側と呼び、y軸方向正側を「前」側と呼び、y軸方向負側を「後」側と呼び、z軸方向正側を「上」側とし、z軸方向負側を「下」側と呼ぶことがある。
図2は、第一実施態様のヘッドレスト10を、(a)前方から見た状態と、(b)側方から見た状態とを、それぞれ示した図である。
図2(a)においては、樹脂カバー130の内部を透視した状態で描いており、
図2(b)においては、その一部を断面として描いている。
【0020】
図3は、第一実施態様のヘッドレスト10が、(a)不使用状態にあるときと、(b)不使用状態から上昇してロック解除ピン規制開始高さになったときとを、側方から見た状態を示した図である。
図4は、第一実施態様のヘッドレスト10が、(a)ロック解除ピン規制開始高さからさらに上昇して第一使用高さになったときと、(b)第一使用高さからさらに上昇して第二使用高さになったときとを、側方から見た状態を示した図である。
図5は、第一実施態様のヘッドレスト10が、第二使用高さからさらに上昇して抜け止め高さになったときを、側方から見た状態を示した図である。
【0021】
図3〜5においては、シートバック200の内部については、ヘッドレストステー21の中心線を含む鉛直面で切断した断面として描いているが、ヘッドレスト10の本体の内部については、その内部を透視した状態で描いている。また、
図3〜5においては、α部とβ部とを拡大して描いている。α部は、シートバック200の内部におけるロック解除ピン規制手段110の周辺部であり、β部は、シートバック200の上部におけるステーホルダ140の周辺部である。ただし、α部は、左右一対のヘッドレストステー21,22のうち、左側のヘッドレストステー21を示しており、β部は、右側のヘッドレストステー22(右側のステーホルダ140の周辺部)を示している。また、α部とβ部は、いずれも、当該部分を前方から見た状態を示している。
【0022】
第一実施態様のヘッドレスト10は、不使用時における下側位置(
図3(a)を参照)と、使用時における上側位置(
図4(a),(b)を参照)との間で、上下方向に昇降可能なものとなっている。また、第一実施態様のヘッドレストは、その下部が、不使用時における前側位置(
図3(a)を参照)と、使用時における後側位置(
図4(a),(b)を参照)との間で、前後方向に回動可能な下振り式のものとなっている。
【0023】
第一実施態様のヘッドレスト10は、
図1に示すように、左右一対のヘッドレストステー21,22と、固定部材30と、回動プレート40と、第一結合軸50と、回動プレート付勢バネ60と、ロックプレート70と、第二結合軸80と、ロックプレート付勢バネ90と、ロック解除ピン100と、ロック解除ピン規制手段110(
図3を参照)と、補強フレーム120と、樹脂カバー130と、ステーホルダ140(
図3を参照)とを備えている。これらの部材のほか、ヘッドレストは、ヘッドレストの外面を形成する表皮や、表皮と樹脂カバー130との間に配されるクッション材等の部材も備えるが、
図1等においては、表皮やクッション材等の一部の部材を省略している。以下、第一実施態様のヘッドレスト10を構成する各部材について、説明する。
【0024】
1.1 ヘッドレストステー
ヘッドレストステー21,22は、ヘッドレスト10をシートバック200の上部に支持するための部材である。第一実施態様のヘッドレスト10において、ヘッドレストステー21,22は、いずれも中空パイプからなるが、ロック解除ピン100を挿通する側のヘッドレストステー21を中空パイプとすれば、他方のヘッドレストステー22は、特に中空パイプとする必要はない。
【0025】
図1に示すように、左右一対のヘッドレストステー21,22のうち、ロック解除ピン100が挿通される左側のヘッドレストステー21の下端部近傍の外周面には、開口部A
1が形成されている。この開口部A
1は、後述するロック解除ピン規制手段110における係合部D
2(
図3を参照)をヘッドレストステー21内に導き入れるための部分となっている。また、他方のヘッドレストステー22の下端部近傍の外周面には、係合部E
1と係合部E
2と係合部E
3とが形成されている。これらの係合部E
1,E
2,E
3はいずれも、ステーホルダ140に設けられた係合部E
4(
図4及び
図5を参照)が係合するための部分となっている。係合部E
1,E
2,E
3は、その一部又は全部を、ロック解除ピン100が挿通される側のヘッドレストステー21に設けることもできる。
【0026】
1.2 固定部材
固定部材30は、
図1に示すように、左右一対のヘッドレストステー21,22の上端部を連結する状態で固定される。第一実施態様のヘッドレスト10において、固定部材30は、金属板に折り曲げ加工及び打ち抜き加工を施したものとなっている。これらの加工は、ファインブランキング等の特殊プレスではなく、一般的なプレスで行うことができる。固定部材30の左右両端部には、左右一対の突出部が前方に突出した状態に設けられており、それぞれの突出部には、貫通孔F
1と貫通孔G
1とを設けている。
【0027】
1.3 回動プレート
回動プレート40は、その下部が前方に位置する前側位置(
図3(b)を参照)と後方に位置する後側位置(
図4(a)を参照)との間で回動(揺動)する部材となっている。この回動プレート40の下部が前後方向に回動することによって、ヘッドレスト10の下振りが実現される。第一実施態様のヘッドレスト10において、回動プレート40は、上述した固定部材30と同様の方法で加工することができる。
図1に示すように、回動プレート40の上部には、左右一対の突出部が後方に突出した状態に設けられており、それぞれの突出部には、係合部B
1と貫通孔F
2とを設けている。
【0028】
1.4 第一結合軸
第一結合軸50は、
図1に示すように、固定部材30に設けられた貫通孔F
1と、回動プレート40に設けられた貫通孔F
2とに挿通され、固定部材30に対して回動プレート40を回動可能(前後方向に揺動可能)な状態で結合するためのものとなっている。第一結合軸50は、長めに形成しておき、その両端部を、左側の樹脂ケース131の内壁部と右側の樹脂ケース132の内壁部とに固定すると好ましい。これにより、左側の樹脂ケース131と右側の樹脂ケース132とを第一結合軸50で連結し、ヘッドレストの剛性を高めることができる。
【0029】
1.5 回動プレート付勢バネ
回動プレート付勢バネ60は、回動プレート40を格納方向(回動プレート40の下部が後方に移動する向き)に常時付勢するための部材となっている。回動プレート付勢バネ60は、板バネ等を使用してもよいが、第一実施態様のヘッドレスト10においては、コイルバネを使用しており、第一結合軸50に外嵌した状態に設けている。
【0030】
1.6 ロックプレート
ロックプレート70は、不使用時のヘッドレストがシートバックの前面に押し付けられた状態とならないように、回動プレート40の後方回動を規制するための部材となっている。第一実施態様のヘッドレスト10において、ロックプレート70は、上述した固定部材30と同様の方法で加工することができる。
図1に示すように、ロックプレート70の前部下面側には、係合部B
2を設けており、ロックプレート70の後部上面側には、カム部C
1を設けている。また、ロックプレート70の中間部には、左右一対の突出部が下向きに設けられており、それぞれに突出部には、貫通孔G
2を設けている。
【0031】
1.7 第二結合軸
第二結合軸80は、
図1に示すように、固定部材30に設けられた貫通孔G
1と、ロックプレート70に設けられた貫通孔G
2とに挿通され、固定部材30に対してロックプレート70を回動可能(上下方向に揺動可能)な状態で結合するためのものとなっている。
【0032】
1.8 ロックプレート付勢バネ
ロックプレート付勢バネ90は、ロックプレート70の係合部B
2が回動プレート40の係合部B
1に対して係合する向き(ロック方向)にロックプレート70を付勢するための部材となっている。ロックプレート付勢バネ90は、板バネ等を使用してもよいが、第一実施態様のヘッドレスト10においては、コイルバネを使用している。第一実施態様のヘッドレスト10において、ロックプレート付勢バネ90は、固定部材30とロックプレート70との間に配されて、ロック解除ピン100の上部における下向きに折り曲げられた部分に外嵌された状態で組み付けられる。このため、ロックプレート70の後部は、ロックプレート付勢バネ90によって常時押し上げられるようになっており、ロックプレート70の前部に設けられた係合部B
1が下側に常時付勢された状態となるようになっている。
【0033】
1.9 ロック解除ピン
ロック解除ピン100は、係合部B
1に対する係合部B
2の係合を解除するためのものとなっている。第一実施態様のヘッドレスト10において、ロック解除ピン100は、
図1に示すように、その上部が逆「U」字状に折り曲げられた棒状部材によって形成されている。ロック解除ピン100の下部は、ヘッドレストステー21の上端開口からヘッドレストステー21内に挿入され、ロック解除ピン100の上部における下向きに折り曲げられた部分は、ロックプレート70の後部に設けられた開口部に挿入される。ロック解除ピン100の上部における水平方向に折り曲げられた部分は、カム部C
2となっている。また、ロック解除ピン100の下部における外周面には、係合部D
1(
図2を参照)が形成されている。
【0034】
1.10 ロック解除ピン規制手段
ロック解除ピン規制手段110は、
図3に示すように、シートバック200の内部に固定される。ロック解除ピン規制手段110は、ロック解除ピン100の下部に設けられた係合部D
1に係合するための係合部D
2を有している。係合部D
2は、図示省略の付勢手段によって、ヘッドレストステー21側に突出する向きに常時付勢された状態となっている。このため、ヘッドレストステー21の開口部A
1が係合部D
2に重なる高さにあるときには、
図3(b)に示すように、係合部D
2がヘッドレストステー21の内部に突出してくる一方、ヘッドレストステー21の開口部A
1が係合部D
2に重なる高さにないときには、
図3(a)に示すように、係合部D
2がヘッドレストステー21の外周面に当接した状態(突出できない状態)となるようになっている。
【0035】
1.11 補強フレーム
補強フレーム120は、ヘッドレスト10の本体に強度を付与するための部材となっている。第一実施態様のヘッドレスト10において、補強フレーム120は、
図1に示すように、鋼線材を「U」字状に折り曲げたものとしている。補強フレーム120の上部は、回動プレート40に溶接等によって固定される。
【0036】
1.12 樹脂カバー
樹脂カバー130は、ヘッドレスト10を構成する各部材のうち、固定部材30や回動プレート40や第一結合軸50や回動プレート付勢バネ60やロックプレート70や第二結合軸80やロックプレート付勢バネ90等、ヘッドレスト10を動作させるための部材(機構部)の外面を覆うための部材となっている。樹脂カバー130は、前後方向に分割可能な前後分割式のものとしてもよいが、第一実施態様のヘッドレスト10においては、
図1に示すように、左側カバー131と右側カバー132とに分割可能な左右分割式のものとしている。左側カバー131と右側カバー132は、その内端部に設けられた係合構造によって結合されるほか、第一結合軸50によっても結合されるようになっている。このため、樹脂カバー130は、低コストながらも、高い強度を発揮できるものとなっている。
【0037】
1.13 ステーホルダ
ステーホルダ140は、
図3に示すように、ヘッドレストステー21,22の外周部を保持するための部材となっており、シートバック200の上部に固定される。第一実施態様のヘッドレスト10においては、右側のヘッドレストステー22を保持するためのステーホルダ140(右側のステーホルダ140)には、係合部E
4が設けられている。この係合部E
4は、ヘッドレストステー22の外周部に設けられた係合部E
1、係合部E
2又は係合部E
3に係合するための部材となっている。
【0038】
係合部E
4は、ロック解除ピン規制手段110の係合部D
2と同様、図示省略の付勢手段によって、ヘッドレストステー22側に常時付勢された状態となっている。このため、ヘッドレストステー22の係合部E
1、係合部E
2又は係合部E
3のいずれかが係合部E
4に重なる高さにあるときには、
図4(a)、
図4(b)及び
図5に示すように、係合部E
4が、係合部E
1、係合部E
2又は係合部E
3のいずれかに係合する一方、ヘッドレストステー22の係合部E
1、係合部E
2又は係合部E
3のいずれもが係合部E
4に重なる高さにないときには、
図3に示すように、係合部E
4がヘッドレストステー22の外周面に当接した状態(突出できない状態)となるようになっている。また、左側のステーホルダ140は、図示省略の操作手段(押ボタン等)を備えている。このため、係合部E
4が係合部E
1、係合部E
2又は係合部E
3のいずれかに係合した状態であっても、当該操作手段を操作することで、係合部E
4を強制的に退避した状態とし、その係合を解除させることができるようになっている。
【0039】
1.14 第一実施態様のヘッドレストの動作
続いて、第一実施態様のヘッドレストの動作について説明する。
【0040】
第一実施態様のヘッドレスト10は、不使用時(格納状態)においては、
図3(a)に示すように、シートバック200の上部付近まで下降した下側位置に位置するとともに、その下部が前方へ突き出した前側位置に位置するようになっている。第一実施態様のヘッドレスト10は、その側面視形状が逆「L」字状を為すいわゆる鞍状のものとなっているが、格納状態にあるときには、ヘッドレスト10におけるシートバック200の前面に沿う部分(ヘッドレスト10の下部)が、シートバック200の前面から前方へ迫り出すようになっている。このため、ヘッドレスト10の不適切な使用を防止することができるようになっている。
【0041】
図3(a)に示す格納状態においては、ロックプレート70の係合部B
2が回動プレート40の係合部B
1に係合した状態となっている。このため、ヘッドレスト10は、その後方回動が規制された状態となっている。したがって、ヘッドレスト10の下部の後面が、シートバック200の前面に押し付けられないようになっており、シートバック200がヘッドレスト10によって痛んだり傷ついたりしないようになっている。また、格納状態においては、ロック解除ピン規制手段110の係合部D
2及びステーホルダ140の係合部E
4は、ヘッドレストステー21,22の外周面に当接して押し込まれた状態(退避した状態)となっている。このため、ヘッドレスト10は、上昇させることが可能な状態となっている。
【0042】
図3(a)に示す格納状態からヘッドレスト10を上昇させていくと、
図3(b)に示す状態(ロック解除ピン規制開始状態)となる。
図3(b)に示すロック解除ピン規制開始状態において、ヘッドレストステー21の下端からシートバック200の上端までの高さa
1は、格納状態における高さa
0(
図3(a)を参照)よりも短くなる一方、ロック解除ピン規制開始状態におけるヘッドレストステー21の上端からロックプレート70の後端までの高さb
1(
図3(b)を参照)は、格納状態における高さb
0(
図3(a)を参照)と等しいままとなっている。これは、格納状態からロック解除ピン規制開始状態までの間においては、ヘッドレストステー21の内部に挿入されているロック解除ピン100が、ヘッドレストステー21とともに上昇したからである。
【0043】
また、
図3(b)に示すロック解除ピン規制開始状態においては、ヘッドレストステー21における開口部A
1が、ロック解除ピン規制手段110と同じ高さまで上昇している。このため、ヘッドレストステー21側に付勢されていた係合部D
2が、開口部A
1を通じてヘッドレストステー21の内部に挿入され、ロック解除ピン100の係合部D
1に係合した状態となっている。このときの係合部D
2は、その上面側及び下面側の双方が係合部D
1に係合された状態となっている。このため、それまではヘッドレストステー21とともに上昇していたロック解除ピン100は、係合部D
2が係合部D
1に係合されて以降、上昇できない状態となる。
【0044】
図3(b)に示すロック解除ピン規制開始状態からさらにヘッドレスト10を上昇させていくと、
図4(a)に示す状態(第一使用状態)となる。
図4(a)に示す第一使用状態において、ヘッドレストステー21の下端からシートバック200の上端までの高さa
2、及び、ヘッドレストステー21の上端からロックプレート70の後端までの高さb
2は、それぞれ、格納状態における高さa
1(
図3(b)を参照)及び高さb
1(
図3(b)を参照)よりもさらに短くなっている。これは、ロック解除ピン規制開始状態以降においては、ヘッドレスト10を昇降させても、ヘッドレストステー21が、ロック解除ピン100を残して上昇したからである。
【0045】
また、
図4(a)に示す第一使用状態においては、ステーホルダ140の係合部E
4がヘッドレストステー22の係合部E
1に係合された状態となっている。このとき、係合部E
1は、係合部E
4の上面側には係止されるものの、係合部E
1における係合部E
4が係合されるよりも下側部分は、傾斜したカム面となっている。このため、第一使用状態では、ステーホルダ140に設けられた押ボタン等を操作して係合部E
1を強制的に後退させない限りは、ヘッドレスト10を下降させることができない一方、ステーホルダ140の押ボタン等を操作しなくても、ヘッドレスト10を上昇させることができるようになっている。
【0046】
また、
図3(b)に示すロック解除ピン規制開始状態から、
図4(a)に示す第一使用状態へ移行する間には、ロックプレート70が第二結合軸80を中心としてロック解除方向(ロックプレート70の前端側が上側に移動する向き)に回動するようになっている。これは、ロックプレート70の後部上面側に設けられたカム部C
1が、ロック解除ピン100のカム部C
2によって下向きに押さえ付けられた状態となっているからである。ロックプレート70がロック解除方向に回動すると、係合部B
1と係合部B
2との係合が解除され、回動プレート40が固定部材30に対して第一結合軸50を中心として回動できる状態となる。既に述べた通り、回動プレート40は、回動プレート付勢バネ60によって、その下部が後向きに回動する向きに常時付勢された状態となっている。このため、ヘッドレスト10の本体は、
図3(b)に示す前側位置から、
図4(a)に示す後側位置へと回動し、ヘッドレスト10は、使用することが可能な状態となる。
【0047】
第一実施態様のヘッドレスト10においては、ヘッドレスト10の下部後面がヘッドレストステー21,22に当接することによって、ヘッドレスト10のそれ以上の後方回動が規制されるようにしている。しかし、第一使用状態等の使用状態におけるヘッドレスト10の後方回動を規制する態様は、これに限定されない。例えば、ロックプレート70の所定箇所(例えば係合部B
2)が回動プレート40における所定箇所(例えば係合部B
1から所定間隔を隔てた箇所に設けた他の係合部)に係合するようにすることで、使用状態におけるヘッドレスト10の後方回動が規制されるようにしてもよい。
【0048】
ところで、
図4(a)に示す第一使用状態から、
図3(a)に示す格納状態に戻したい場合には、次の操作を行う。すなわち、ヘッドレスト10を前方回動させ、かつ、ステーホルダ140の押ボタン等を操作して係合部E
4を強制的に後退させた状態で、ヘッドレスト10を押し下げると、第一使用状態から格納状態へと戻すことができる。ヘッドレストステー21の開口部A
1が設けられた箇所よりも上側に連続する部分には、
図4(a)に示すように、カム面A
2が設けられている。このため、ヘッドレスト10を押し下げると、カム面A
2によって係合部D
2が強制的に後退され、係合部D
1と係合部D
2との係合が解除された状態となる。すなわち、ロック解除ピン100の規制が解除された状態となる。
【0049】
一方、
図4(a)に示す第一使用状態からさらにヘッドレスト10を上昇させていくと、
図4(b)に示す状態(第二使用状態)となる。
図4(b)に示す第二使用状態において、ヘッドレストステー21の下端からシートバック200の上端までの高さa
3は、第一使用状態における高さa
2(
図4(a)を参照)よりもさらに短くなっている。一方、
図4(b)に示す第二使用状態において、ヘッドレストステー21の上端からロックプレート70の後端までの高さb
3は、第一使用状態における高さb
2(
図4(a)を参照)と略等しくなっている。
【0050】
図4(b)に示す第二使用状態においては、ステーホルダ140の係合部E
4がヘッドレストステー22の係合部E
2に係合された状態となっている。係合部E
2が、係合部E
4の上面側に係止されること、及び、係合部E
2における係合部E
4が係合されるよりも下側部分が傾斜したカム面となっていることについては、上記の係合部E
1と同様である。このため、第二使用状態においては、ステーホルダ140に設けられた押ボタン等を操作して係合部E
1を強制的に後退させない限りは、ヘッドレスト10を下降させることができない一方、ステーホルダ140の押ボタン等を操作しなくても、ヘッドレスト10を上昇させることができるようになっている。
【0051】
また、第二使用状態においては、係合部D
2が係合部D
1から脱落して後退した状態となっている。これは、ヘッドレストステー21の開口部A
1が設けられた箇所よりも下側に連続する部分にカム面A
3が形成されており、このカム面A
3によって係合部D
2が後退する向きに強制的に移動されたからである。このため、第二使用状態以降は、ロック解除ピン100の規制が解除された状態となる。
【0052】
ところで、
図4(b)に示す第二使用状態から、
図4(a)に示す第一使用状態へと戻したい場合には、次の操作を行う。すなわち、ステーホルダ140に設けられた押ボタン等を操作して、係合部E
4を強制的に後退させ、ヘッドレスト10を押し下げると、第二使用状態から第一使用状態へと戻すことができる。また、
図4(b)に示す第二使用状態から
図3(a)に示す格納状態へと戻したい場合に行うべき操作は、第一使用状態から格納状態へと戻す場合の操作と同様である。
【0053】
図4(b)に示す第二使用状態からさらにヘッドレスト10を上昇させていくと、
図5に示す状態(抜け止め状態)となる。
図5に示す抜け止め状態において、ヘッドレストステー21の下端からシートバック200の上端までの高さa
4は、第二使用状態における高さa
3(
図4(b)を参照)よりもさらに短くなっている。一方、
図5に示す抜け止め状態において、ヘッドレストステー21の上端からロックプレート70の後端までの高さb
4は、第二使用状態における高さb
3(
図4(b)を参照)と略等しくなっている。
【0054】
図5に示す抜け止め状態においては、ステーホルダ140の係合部E
4がヘッドレストステー22の係合部E
3に係合された状態となっている。このときの係合部E
4は、その上面側及び下面側の双方が係合部E
3に係合された状態となっている。このため、抜け止め状態にあるときには、ステーホルダ140に設けられた押ボタン等を操作しない限りは、ヘッドレスト10は、上昇も下降もできない状態となっている。
図5に示す抜け止め状態から、
図4(b)に示す第二使用状態や、
図4(a)に示す第一使用状態や、
図3(a)に示す格納状態へと戻したい場合に行うべき操作は、既に述べた操作と同様である。
【0055】
1.15 小括
以上のように、第一実施態様のヘッドレスト10は、ヘッドレスト10を上昇操作する際に、ロック解除ピン100の上昇が規制されて、ロック解除ピン100のカム部C
2がロックプレートのカム部C
1に作用し、ロックプレート70が、回動プレート付勢バネ60の付勢力によってロック解除方向に自動的に回動するようになっている。このため、第一実施態様のヘッドレスト10は、昇降型下振り回動式のヘッドレストでありながら、後方回動操作を行うことなく、上昇操作のみによって、不使用時の状態(格納状態)から適切に使用できる状態(第一使用状態又は第二使用状態)にすることが可能となっている。
【0056】
第一実施態様のヘッドレスト10は、その高さを第一使用高さ(第一使用状態)と第二使用高さ(第二使用状態)との2段階で調節できるようにしていたが、ヘッドレストステー22に設ける係合部E
1,E
2の数を増やすこと等によって、3段階以上で調節できるようにすることもできる。また、第一実施態様のヘッドレスト10は、その前後位置を
図4に示す1段階のみで調節できるようにしていたが、回動プレート40に設ける係合部B
1の数や配置を変更すること等によって、2段階以上で調節できるようにすることもできる。
【0057】
2.第二実施態様のヘッドレスト
続いて、第二実施態様のヘッドレストについて説明する。第二実施態様のヘッドレスト10は、上述した「カムC
1間接型のヘッドレスト」に相当し、かつ、上述した「係合部D
2横移動型のヘッドレスト」に相当するものである。
【0058】
図6は、第二実施態様のヘッドレスト10が、(a)不使用状態(格納状態)にあるときと、(b)不使用状態から上昇して使用高さ(使用状態)になったときとを、側方から見た状態を示した図である。
図6においては、
図3〜5と同様、シートバック200の内部については、ヘッドレストステー21の中心線を含む鉛直面で切断した断面として描いているが、ヘッドレスト10の本体の内部については、その内部を透視した状態で描いている。
【0059】
上述した第一実施態様のヘッドレスト10は、その全体形状が鞍状を為す鞍型のものとなっていたが、第二実施態様のヘッドレスト10は、
図6に示すように、その全体形状が枕状を為す枕型のものとなっている。第二実施態様のヘッドレスト10は、
図6(a)に示すように、格納状態において、その下端部がシートバック200の上部から前方斜め下向きに大きく迫り出した状態となるようになっており、ヘッドレストの不適切な使用をより確実に防止することができる。第二実施態様のヘッドレスト10のように、枕型のヘッドレストにおいても、第一実施態様のヘッドレスト10で述べたものと同様の構成を採用すれば、昇降型下振り回動式でありながら、後方回動操作を行うことなく、上昇操作のみによって、不使用時の状態(格納状態)から適切に使用できる状態(使用状態又は第二使用状態)にすることが可能な構造とすることができる。
【0060】
3.第三実施態様のヘッドレスト
続いて、第三実施態様のヘッドレストについて説明する。第三実施態様のヘッドレスト10は、上述した「カムC
1間接型のヘッドレスト」に相当し、かつ、上述した「係合部D
2縦移動型のヘッドレスト」に相当するものである。
【0061】
図7は、第三実施態様のヘッドレスト10が、(a)不使用状態にあるときと、(b)不使用状態から上昇して使用高さになったときとを、側方から見た状態を示した図である。
図7においては、
図3〜5と同様、シートバック200の内部については、ヘッドレストステー21の中心線を含む鉛直面で切断した断面として描いているが、ヘッドレスト10の本体の内部については、その内部を透視した状態で描いている。
【0062】
上述した第一実施態様のヘッドレスト10では、
図3に示すように、ロック解除ピン規制手段110が、横方向(ヘッドレストステー21に垂直な方向)に移動可能な係合部D
2を有するものとなっており、この係合部D
2が、ロック解除ピン100の外周面に設けられた係合部D
1に対して、ヘッドレストステー21の外周面に設けられた開口部A
1を通じて横方向に係合される「係合部D
2横移動型のヘッドレスト」のものとなっていた。
【0063】
これに対し、第三実施態様のヘッドレスト10では、
図7に示すように、ロック解除ピン100側の係合部D
1が、ロック解除ピン100の下端部から外方に突出して設けられた拡径部となっており、ロック解除ピン規制手段110側の係合部D
2が、ステーホルダ140の下端となっている。すなわち、第三実施態様のヘッドレスト10は、係合部D
1(拡径部の上面)が係合部D
2(ステーホルダ140の下端面)に対して縦方向(ヘッドレストステー21に平行な方向)に係合される「係合部D
2縦移動型のヘッドレスト」となっている。このように、「係合部D
2縦移動型のヘッドレスト」においても、ヘッドレスト10がロック解除ピン規制開始高さに到達したときにロック解除ピン100の上昇を規制し、ヘッドレスト10を上昇させる動作に伴って、ヘッドレスト10の下部を前側位置から後側位置へと自動的に回動させることができる。第三実施態様のヘッドレスト10においては、ロック解除ピン100の下端部に設けた抜け止め突起101の上側にワッシャ102(拡径部)を配し、このワッシャ102を係合部D
1として利用している。
【0064】
ところで、第三実施態様のヘッドレスト10においては、ヘッドレスト10を上昇させる際には、係合部D
1と係合部D
2とが係合して以降、ステーホルダ140に上向きの力が加えられるようになる。このため、第三実施態様のヘッドレスト10においては、シートバック200のシートフレーム等(図示省略)に固定された取付ブラケット180に対してステーホルダ140を固定するようにしている。ステーホルダ140には、切り起こし部141を上向きに設けており、この切り起こし部141の上端が取付ブラケット180の下端に係止されるようにしている。したがって、係合部D
1と係合部D
2とが係合した後に、ヘッドレスト10に上向きの力を加え続けた場合であっても、ステーホルダ140がシートバック200の上部から上方に抜けないようになっている。
【0065】
係合部D
2縦移動型である第三実施態様のヘッドレスト10において、係合部D
1又は係合部D
2の構造は、
図7に示したものに限定されない。
図8は、「係合部D
2縦移動型のヘッドレスト」における係合部D
1又は係合部D
2の他の態様を示した断面図である。
図8は、ヘッドレストステー21の中心線を含む鉛直面で切断した断面で示している。
【0066】
図7に示したヘッドレスト10では、ステーホルダ140の下端を係合部D
2として利用したが、
図8(a)に示すように、ステーホルダ140の下側に筒状ソケット170を接続し、この筒状ソケット170の下端を係合部D
2として利用することもできる。
【0067】
ロック解除ピン100をステーホルダ140に直接的に係合させるのではなく、上記のように、ワッシャ102や筒状ソケット170を介して間接的に係合させる構造を採用することによって、ヘッドレスト10の仕様が変更されてロック解除ピン規制開始高さを変更する必要が生じた場合等であっても、ステーホルダ140やロック解除ピン100の仕様を変更することなく、ワッシャ102の厚さや枚数、又は、筒状ソケットの長さや本数を変更するだけで対応することが可能になる。
【0068】
また、
図7や
図8(a)に示したヘッドレスト10では、係合部D
1が剛性を有する構造となっていたが、
図8(b)に示すように、係合部D
2は、弾性を有する構造とすることもできる。
図8(b)においては、ロック解除ピン100の下端部に設けられた抜け止め突起101の上側に、鉛直断面逆「V」字状の弾性リング103(拡径部)が配されている。この弾性リング103の上端が係合部D
1となり、ステーホルダ140(
図8(a)に示すように筒状ソケット170を設ける場合には筒状ソケット170)の下端(係合部D
2)に係合するようになっている。
【0069】
この弾性リング103は、その外周部に何ら外力が加えられていないときには、その外径がステーホルダ140の内径よりも大きくなる一方、その外周部に外力を加えたときには、その外径がステーホルダ140の内径よりも小さくなるように弾性変形するものとなっている。このため、弾性リング103は、
図8(b)における拡大部εで示すように、ステーホルダ140の内部を下向きに通すことが可能となっている。したがって、シートバックフレーム等に固定された取付ブラケット180に対してステーホルダ140を取り付けることによって、ステーホルダ140をシートバック200に固定した後であっても、シートバック200の背面を開けることなく、ヘッドレスト10を容易に組み付けることが可能となっている。
【0070】
係合部D
2縦移動型である第三実施態様のヘッドレスト10において、ステーホルダ140の構造は、
図7や
図8に示したものに限定されない。
図9は、係合部D
2縦移動型のヘッドレストにおけるステーホルダの他の態様を示した図である。
図9(a)は、ヘッドレストステー21の中心線を含む鉛直面で切断した断面で示しており、
図9(b)は、
図9(a)における取付ブラケット180及びクリッププレート190を抜き出して示した斜視図である。
【0071】
図7や
図8に示したヘッドレスト10において、ステーホルダ140は、その全体が一体的に成形されたもの(一体成形品)となっていたが、
図9に示すように、ステーホルダ140を他部品により構成することもできる。
図9のステーホルダ140は、ステーホルダ140の上側部分(頭部)を形成する上側ステーホルダ140aと、ステーホルダ140の下側部分(脚部)を形成する下側ステーホルダ140bとに分離可能な構造となっている。上側ステーホルダ140aと下側ステーホルダ140bは、金属製のクリッププレート190を介して連結されるようになっている。クリッププレート190は、取付ブラケット180の外周部に設けられた係止孔181に挿入して係止させるための上向き係止片191を有している。
【0072】
図9のステーホルダ140も、
図8(b)に示した態様と同様、ロック解除ピン100の下端部に拡径部(係合部D
1)を設けた後に、シートバック200に対してヘッドレスト10を組み付けることができる(後からシートバック200の背面を開けて、ロック解除ピン100に拡径部(係合部D
1)を設ける必要がない)という利点を有している。すなわち、
[1] シートバック200のシートバックフレーム等に、取付ブラケット180を予め固定しておく。
[2] ロック解除ピン100が挿入された状態のヘッドレストステー21の下端側を、クリッププレート190によって連結された上側ステーホルダ140a及び下側ステーホルダ140bの上端側に挿入する。
[3] ロック解除ピン100における、ヘッドレストステー21の下端側から突き出た部分(ロック解除ピン100の下端部)に、ワッシャ102を外嵌し、抜け止め突起101を固定する。
[4] 上記[3]で得られた組立品における、ヘッドレストステー21及びロック解除ピン100の下端側を、シートバック200の上部から下向きに挿し込み、クリッププレート190の上向き係止片191を、取付ブラケット180の係止孔181に係止させる。
という工程を経て、ヘッドレスト10をシートバック200に組み付けることができるようになっている。上記[2]の段階においては、ヘッドレストステー21の上部には、ヘッドレスト10の本体部が既に組み付けられた状態となっている。
【0073】
というのも、
図7に示すように、ステーホルダ140に、上向きの切り起こし部141をステーホルダ140の外周面から外側に突き出るように設けていると、ステーホルダ140の内周面にはヘッドレストステー21の外周面が密着した状態となっているため、ヘッドレストステー21が挿入された状態のステーホルダ140を取付ブラケット180内に挿入しようとした際に、切り起こし部141が内側へと変位できず、ステーホルダ140を取付ブラケット180に対して挿入できない状態となるところ、
図9のステーホルダ140では、上向き係止片191が外側から内向きに設けられているため、そのような事態が生じないからである。
【0074】
第三実施態様のヘッドレスト10において特に言及しない構成については、上述した第一実施態様や第二実施態様のヘッドレスト10と同様の構成を採用することができる。
【0075】
4.第四実施態様のヘッドレスト
続いて、第四実施態様のヘッドレストについて説明する。第四実施態様のヘッドレスト10は、上述した「カムC
1直接型のヘッドレスト」に相当する。また、第四実施態様のヘッドレスト10は、係合部D
1及び係合部D
2として
図8(b)に示したものを採用した「係合部D
2縦移動型のヘッドレスト」となっているが、以下で述べる内容は、係合部D
1及び係合部D
2として他の構造を採用する場合(例えば、第四実施態様のヘッドレスト10を「係合部D
2横移動型のヘッドレスト」とする場合)であっても採用することができる。
【0076】
図10は、第四実施態様のヘッドレスト10が、(a)不使用状態にあるときと、(b)不使用状態から上昇してロック解除ピン規制開始高さになったときと、(c)使用高さになったときとを、側方から見た状態を示した図である。
図10においては、
図3〜5と同様、シートバック200の内部については、ヘッドレストステー21の中心線を含む鉛直面で切断した断面として描いているが、ヘッドレスト10の本体の内部については、その内部を透視した状態で描いている。また、
図10においては、図示の便宜上、回動プレート40を、網掛けハッチングでハイライトしている。
【0077】
図1〜5に示した第一実施態様のヘッドレスト10では、ロック解除ピン100の上部のカム部C
2が作用するカム部C
1が、ロックプレート70に設けられており、カム部C
2がカム部C
1に作用することで、ロックプレート70がロック解除方向に回動した結果、回動プレートが後方回動するようになっていた。
【0078】
これに対し、第四実施態様のヘッドレスト10は、
図10に示すように、ロックプレート70を備えておらず、回動プレート40に設けられたカム孔をカム部C
1として利用するものとなっている。カム部C
1を形成するカム孔(以下、「カム孔C
1」と表記する。)は、第一端部C
1.1と第二端部C
1.2とを有する弧状に形成されている。一方、ロック解除ピン100側のカム部C
2は、ロック解除ピン100の上端側に設けられたカム突起(以下、「カム突起C
2」と表記する。)となっており、カム孔C
1に挿通された状態となっている。カム突起C
2の下側には、受け板160が配されており、受け板160の下面と固定部材30の上面との隙間には、ロック解除ピン100を常時上向きに付勢するためのロック解除ピン付勢バネ150が配されている。
【0079】
第四実施態様のヘッドレスト10は、
図10(a)に示すように、不使用時で下側位置かつ前側位置にあるときには、カム突起C
2が、カム孔C
1における第一端部C
1.1に係合された状態となっている。
図10(a)に示す状態から上昇させていくと、ヘッドレストステー21とともにロック解除ピン100が上昇していき、
図10(b)に示す所定高さ(ロック解除ピン規制開始高さ)に達した際に、係合部D
1と係合部D
2とが係合して、ヘッドレストステー21に対してロック解除ピン100が上昇しない状態となる。
【0080】
図10(b)に示す状態からヘッドレスト10をさらに上昇させると、固定部材30及び回動プレート40がロック解除ピン100から独立して上昇し、ロック解除ピン100に設けられたカム突起C
2は
図10(b)の位置に留まるため、カム突起C
2は、カム孔C
1内を第二端部C
1.2(下側)に向かって移動するようになる。このときのカム孔C
1がカム突起C
2から受ける外力によって、回動プレート40が後方回動する。しばらくすると、
図10(c)に示す状態となり、ヘッドレスト10は、上側位置かつ後側位置となって使用できる状態となる。このとき、ヘッドレストステー21とヘッドレストステー22(
図2を参照)のうち少なくとも一方は、係合部E
4(
図5を参照)によって係止された状態(上下方向に移動できない状態)となっており、ロック解除ピン付勢バネ150の上向きの付勢力に抗って静止した状態となっている。
【0081】
このように、カムC
1直接型である第四実施態様のヘッドレスト10においても、ヘッドレスト10を上昇させる動作に伴って、ヘッドレスト10の下部を前側位置から後側位置へと自動的に回動させることができる。
【0082】
一方、第四実施態様のヘッドレスト10を、
図10(c)に示すように、使用時で上側位置かつ後側位置にある状態から下降させる(このときには、第一実施態様のヘッドレスト10と同様、ステーホルダ140に設けられた押ボタン等を操作する。)と、カム突起C
2がカム孔C
1内を第一端部C
1.1(上側)に向かって移動するようになる。このときのカム孔C
1がカム突起C
2から受ける外力によって、回動プレート40が前方回動する。さらにヘッドレスト10を下降し続けると、係合部D
1と係合部D
2との係合が外れ、ヘッドレスト10は、
図10(a)に示すように、下側位置かつ前側位置となって格納状態となる。
【0083】
このように、カムC
1直接型である第四実施態様のヘッドレスト10においては、ヘッドレスト10を下降させる動作に伴って、ヘッドレスト10の下部を後側位置から前側位置へと自動的に回動させることもできるようになっている。
【0084】
第四実施態様のヘッドレスト10において特に言及しない構成については、上述した第一実施態様や第二実施態様や第三実施態様のヘッドレスト10と同様の構成を採用することができる。
【0085】
5.第五実施態様のヘッドレスト
続いて、第五実施態様のヘッドレストについて説明する。第五実施態様のヘッドレスト10は、上述した「カムC
1直接型のヘッドレスト」に相当する。また、第五実施態様のヘッドレスト10は、係合部D
1及び係合部D
2として
図8(b)に示したものを採用した「係合部D
2縦移動型のヘッドレスト」となっているが、以下で述べる内容は、係合部D
1及び係合部D
2として他の構造を採用する場合(例えば、第五実施態様のヘッドレスト10を「係合部D
2横移動型のヘッドレスト」とする場合)であっても採用することができる。
【0086】
図11は、第五実施態様のヘッドレスト10が、(a)不使用状態から上昇してロック解除ピン規制開始高さになったときと、(b)使用高さになったときとを、側方から見た状態を示した図である。
図11においては、
図3〜5と同様、シートバック200の内部については、ヘッドレストステー21の中心線を含む鉛直面で切断した断面として描いているが、ヘッドレスト10の本体の内部については、その内部を透視した状態で描いている。また、
図11においては、図示の便宜上、回動プレート40を、網掛けハッチングでハイライトしている。
【0087】
上述した第四実施態様のヘッドレスト10は、
図10に示すように、回動プレート40の回動中心である第一結合軸50の中心が、ロック解除ピン100の上部のカム部C
2の中心よりも上側に位置しており、ヘッドレスト10が後方回動する前の状態(
図10(b)に示す状態)における、第一結合軸50の中心からカム部C
2の中心までの距離L
1が、ヘッドレスト10が後方回動した後の状態(
図10(c)に示す状態)における、第一結合軸50の中心からカム部C
2の中心までの距離L
2よりも短くなる(L
1<L
2となる)ようになっていた。
【0088】
これに対し、第五実施態様のヘッドレスト10は、
図11に示すように、回動プレート40の回動中心である第一結合軸50の中心が、ロック解除ピン100の上部のカム部C
2の中心よりも下側に位置しており、ヘッドレスト10が後方回動する前の状態(
図11(a)に示す状態)における、第一結合軸50の中心からカム部C
2の中心までの距離L
1が、ヘッドレスト10が後方回動した後の状態(
図11(b)に示す状態)における、第一結合軸50の中心からカム部C
2の中心までの距離L
2よりも長くなる(L
1>L
2となる)ようになっている。
【0089】
このため、第五実施態様のヘッドレスト10は、ヘッドレスト10が後方回動する前の状態(不使用時の状態)で回動プレート40が後方回動しないように支持するときの強度面において、第四実施態様のヘッドレスト10よりも有利なものとなっている。というのも、ヘッドレスト10が不使用時にあるときには、
図11(a)に示すように、カム孔C
1の第一端部C
1.1にカム部C
2が係止されることによって、回動プレート40が後方回動しないように支持されているところ、第五実施態様のヘッドレスト10では、この不使用時の状態において、第一結合軸50の中心からカム部C
2の中心までの距離L
1(回動プレート40の回動中心から力の作用点までの距離)を長く確保することができ、より大きな後向きの力に対して抗うことができるようになるからである。
【0090】
第五実施態様のヘッドレスト10において特に言及しない構成については、上述した第一実施態様や第二実施態様や第三実施態様や第四実施態様のヘッドレスト10と同様の構成を採用することができる。
【0091】
6.用途
以上で述べた第一実施態様から第五実施態様までのヘッドレスト等、本発明のヘッドレストは、各種の座席に設けることができ、その用途を特に限定されるものではないが、自動車等の車両の座席のシートバックに設けるものとして特に好適である。
に係合してヘッドレスト10の後方回動が規制された状態となり、下側位置から上昇させていくと、ヘッドレストステー21とともにロック解除ピン100が上昇していき、所定高さに達した際に、ロック解除ピン規制手段100の係合部D