特許第6064072号(P6064072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6064072磁気式エンコーダ用ドラム及び当該ドラムを備えたアブソリュートエンコーダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6064072
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】磁気式エンコーダ用ドラム及び当該ドラムを備えたアブソリュートエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   G01D5/245 110M
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-143312(P2016-143312)
(22)【出願日】2016年7月21日
【審査請求日】2016年7月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391019278
【氏名又は名称】和光精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大介
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−239413(JP,A)
【文献】 特開2001−333567(JP,A)
【文献】 特開2005−283404(JP,A)
【文献】 実開平06−002474(JP,U)
【文献】 特開平03−073862(JP,A)
【文献】 実開昭53−110160(JP,U)
【文献】 特開2015−132496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
5/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気式エンコーダ用ドラムであって、
ドラム外周表面には、円周方向に磁気層が配置される部分と配置されない部分を設けると共に、
前記ドラムに配置される前記磁気層は、外周面側が全て一方の極となるように配置されている
ことを特徴とする磁気式エンコーダ用ドラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記磁気層は、両面着磁の磁気シートを前記ドラムに貼付した構成とされている
ことを特徴とする磁気式エンコーダ用ドラム。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかにおいて、
前記磁気層は、等方性磁石により構成されている
ことを特徴とする磁気式エンコーダ用ドラム。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の磁気式エンコーダ用ドラムを備えた、アブソリュート
エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気式エンコーダの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機械要素の動きを回転運動として計測し、それら機械要素の運動量や運動角度等を計測するためのエンコーダは、多くの分野で幅広く利用されている。
【0003】
出願人は、以前から磁気式エンコーダの開発を行っており、磁気式エンコーダに用いられるドラム表面に配置する磁気層を特定のコード(BCDコード)に従って配置すると共に、当該コードを直接目でも読み取れるような数値を記載し、エンコーダの計測値と表示値の食い違いのないアブソリュートエンコーダの出願を行っている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、こういった磁気式エンコーダのドラムには、円周方向に順次N極とS極とが繰り返されるように磁気が埋め込まれ、この磁気の変化をセンサにより検知することにより計測を行っている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−2474号公報
【特許文献2】特開2005−283404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2で示されているように、ドラムに埋め込む磁気がN極とS極が繰り返される配列の場合、検知精度を上げるべく磁力を高めようとすれば、必然的に大きな磁石が必要となり、それに伴いドラムも大きくなり、最終的にはエンコーダ自体が大きくなるという問題があった。更に、磁力を高めれば高めるほど、その磁力の乱れを補正するための補正回路が別途必要となり、コスト増大や大型化だけでなく、耐久性の低下(余計な回路が増えれば増えるほどその分故障するリスクが増大する。)を招くという歯がゆい問題点が存在した。
【0007】
そこで本発明は、こういった問題点を解決し、コンパクト且つ耐久性に優れた磁気式エンコーダ用ドラム及び当該ドラムを備えたアブソリュートエンコーダを提供する事をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく、本願発明は、磁気式エンコーダ用ドラムであって、ドラムに配置される磁気層は、外周面側が全て一方の極となるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
発明者は、ドラムに配置される磁気層が、恰も技術常識として「N極とS極の繰り返し」となっている点に疑問を抱いた。そこで発想を根底から転換して開発に取り組んだ結果、ドラムの表面に配置する磁気層の極を一方の極(N極又はS極)で統一することにより、従来の問題点が一気に解決できることを見いだしたのである。即ち、ドラムの外側(外周側、半径方向外側)が全てN極(又はS極)になるように磁気層を配置したのである。その結果、従来と比較すれば非常に弱い磁力の磁気層であっても、磁気センサによって正確に検知できることが可能となった。磁気層の磁力が小さくても足りるので、ドラムの物理的な大きさを小さく構成できる。更に、余計な補正回路を備える必要も無いので、故障リスクが大幅に減り、極めて高い耐久性を獲得することも可能となったのである。
【0010】
ドラムへ磁気層を備える構成は特に限定されず種々の方法を採用することが可能であるが、例えば、両面着磁の磁気シートをドラムに貼付するといったシンプルな構成を採用することも可能であり、貼付前の磁気シートの段階で磁力等の調整が容易であり、何より構造がシンプルなことから耐久性向上への寄与が大きい。
【0011】
更に、敢えて「磁力の弱い」等方性磁石を用いて磁気層を構成している。これは単に最適材料を選択したというわけではない。従来は検知精度を高めるために磁力を高くすることが技術常識であるため、磁力の弱い「等方性」の磁石を採用することに対してはそこに阻害要因が存在していた。外側に位置する磁気層を一方の極だけに統一することに加えて等方性磁石を利用することで、より磁力を「弱く」しつつ、検知制度の向上を図っているのである。
【発明の効果】
【0012】
本発明を適用することで、コンパクト且つ耐久性に優れた磁気式エンコーダ用ドラム及び当該ドラムを備えたアブソリュートエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の一例に係るアブソリュートエンコーダの全体概略構成図である。
図2】本発明の実施形態の一例に係る磁気式エンコーダ用ドラム単体の斜視図である。
図3】本発明の実施形態の一例に係る磁気式エンコーダ用ドラムの磁気層の配置図である。
図4】発明の実施形態の一例に係る磁気式エンコーダ用ドラムの磁気層をドラムの軸方向から見た概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例であるアブソリュートエンコーダ100について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の製品と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0015】
〈アブソリュートエンコーダの構成〉
図1に示されている通り、本発明の実施形態の一例に係るアブソリュートエンコーダ100は、金属製のケーシング内に配置された軸上に、磁気層を備えた5つのドラム(第1のドラム110、第2のドラム120、第3のドラム130、第4のドラム140、第5のドラム150)を備える。なお、図示していないが、各ドラム110、120、130、140、150には、それぞれに対応する磁気センサが設けられており、各ドラムの表面に配置されている磁気層をこの磁気センサにより読み取り可能となっている。
【0016】
第1〜第5のドラムはギヤにより連結されている。第1のドラム110が10回転すると第2のドラム120が1回転し、第2のドラム120が10回転すると第3のドラム130が1回転し、第3のドラム130が10回転すると第4のドラム140が1回転し、第4のドラム140が10回転すると第5のドラム150が1回転するようにギヤの歯合により連結されている。即ち、第1のギヤ110の1回転を「1」とすれば第5のドラム150の1回転は「10000」に相当する。なお、ここではドラム数が5のアブソリュートエンコーダを例に説明しているが、これに限定されるものではない。必要に応じて、5未満若しくは6以上のドラム数のアブソリュートエンコーダとすることも可能である。
【0017】
また、各ドラムは、当該ドラムの厚み方向に略等間隔に分割されて4つの磁気トラック(第1磁気トラック111、第2磁気トラック112、第3磁気トラック113、第4磁気トラック114)を有している。図2を参照しつつ、第1のドラム110を例に説明するが、第2〜第5のドラムの構成も同一のため、重複説明は省略する。
【0018】
図2に示されている通り、4つの磁気トラック(第1磁気トラック111、第2磁気トラック112、第3磁気トラック113、第4磁気トラック114)には、BCDコード(2進化10進法)を表すために、トラック毎の異なる位置に磁気層Mを備える。
【0019】
図3は、磁気トラック毎の磁気層Mの配置図である。ドラム一周を1〜10の10のエリアに分割し、そのエリア毎に所定のルールに従って磁気層Mが配置されている。その結果、ドラムの1/10回転単位での計測が可能となっている。
【0020】
また、これら磁気層Mは全て、外周面側(半径方向外側:表面側)がN極となるように構成される(図4参照)。例えば、両面着磁(等方性磁石)のマグネットシート素材がトラック幅サイズに切断され、それがBCDコードに従ってドラム表面に全てN極が外側となるように貼付されて構成される。
【0021】
〈アブソリュートエンコーダの作用・機能〉
本発明に係る磁気式エンコーダ用ドラム110、120、130、140、150及び当該ドラムを備えたアブソリュートエンコーダ100は、外側が全てN極となるように磁気層Mが配置されているので、磁気層Mの磁力が従来のものと比べて弱い磁力の磁気層であっても、磁気センサによって正確に検知できることが可能となっている。磁気層Mの磁力が小さくても足りるので、ドラムの物理的な大きさを小さく構成できるため、アブソリュートエンコーダ全体を小さくコンパクトに構成できる。更に、磁気層Mの磁力が小さくても磁気センサによる正確な検知ができるため、余計な補正回路を備える必要も無い。即ち、故障リスクを大幅に減らすことができ、極めて高い耐久性を獲得することも可能となった。
【0022】
特に、記憶回路により検知量を記憶しておかずとも、BCDコード読み取りで直接検知量を読み取ることができる(ドラム表面に数字等を記載すれば目視での読み取りも可)アブソリュートエンコーダという性質と、本発明の磁気層単一極ドラムを採用した結果としての耐久性及びコンパクト性を活かすことによって、従来広く利用されてきた機械分野のみならず、風力発電や津波災害対応装置など、今まで以上の幅広い分野での利用に耐えることができる。
〈その他の構成例〉
上記では、磁気層Mは、ドラムの外周面側(半径方向外側)が全てN極となるように構成されていたが、S極に統一されていてもよい。
【符号の説明】
【0023】
100・・・アブソリュートエンコーダ
110・・・第1のドラム
111・・・第1磁気トラック
112・・・第2磁気トラック
113・・・第3磁気トラック
114・・・第4磁気トラック
120・・・第2のドラム
130・・・第3のドラム
140・・・第4のドラム
150・・・第5のドラム
M・・・磁気層
【要約】
【課題】
コンパクト且つ耐久性に優れた磁気式エンコーダ用ドラム及び当該ドラムを備えたアブソリュートエンコーダを提供する。
【解決手段】
磁気式エンコーダ用ドラム110の磁気層Mを、外周面側が全て一方の極(N極又はS極)となるように配置する。具体的には、例えば、両面着磁の磁気シートをドラムに貼付する際に、外周面側が全て一方の極となるように貼付する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4