(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷凍サイクルに設けられ、外部熱交換器を経て流入した冷媒を内部の弁部を通過させることにより絞り膨張させてエバポレータへ供給し、前記エバポレータから戻ってきた冷媒の圧力と温度を感知して前記弁部の開度を制御するとともに、その冷媒をコンプレッサへ向けて導出する膨張弁において、
ボディを貫通するように形成され、一端側に前記外部熱交換器からの冷媒を導入するための第1導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒を前記エバポレータへ導出するための第1導出ポートが設けられた第1冷媒通路と、
前記第1冷媒通路の中間部に設けられた弁孔と、
前記第1冷媒通路の前記弁孔と前記第1導入ポートとの間に設けられた弁室と、
前記弁室に配設され、前記弁孔に接離して前記弁部を開閉する弁体と、
前記第1冷媒通路とは別に前記ボディを貫通するように形成され、一端側に前記エバポレータから戻ってきた冷媒を導入するための第2導入ポートが設けられる一方、他端側に冷媒を前記コンプレッサへ導出するための第2導出ポートが設けられた第2冷媒通路と、
前記ボディの前記第2冷媒通路に対して前記第1冷媒通路とは反対側に設けられ、前記第2冷媒通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知して動作するパワーエレメントと、
一端側が前記第2冷媒通路を横断して前記パワーエレメントに接続されるとともに、他端側が前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路との隔壁および前記弁孔を貫通して前記弁体に接続され、前記パワーエレメントの駆動力を前記弁体に伝達する作動ロッドと、
前記ボディにおける前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路との間の高さ位置に中心軸を有し、前記第1導出ポートと前記第2導入ポートが開口する第1側面と、その第1側面の背面側に位置する第2側面とを貫通するように設けられ、前記エバポレータ側の取付部材と前記ボディとを締結するためのねじを前記第2側面側から挿通させるための取付孔と、
前記第2側面に形成され、前記コンプレッサおよび前記外部熱交換器側のプレートと前記ボディとを締結するためのスタッドボルトを植設可能なねじ穴と、
を備え、
前記取付孔は、その内部に前記ねじの頭部を挿通方向に係止するための係止面を有し、その係止面が前記作動ロッドの中心軸よりも前記第1側面側に位置し、前記ねじが取り付けられた際にその頭部よりも前記第2側面側に前記ねじの部分が存在しない空隙が形成されるように構成され、
前記取付孔は、前記ねじの頭部が挿通方向において前記作動ロッドの中心軸の位置とオーバラップするよう前記係止面が位置決めされ、
前記取付孔は、前記作動ロッドを挟む両側に一対設けられ、
前記一対の取付孔のそれぞれの前記係止面よりも前記第2側面側の内径が、前記一対の取付孔の間の距離よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする膨張弁。
前記ボディにおける前記取付孔の中心軸よりも前記第2冷媒通路側において、前記隔壁の前記第2冷媒通路側の端部と前記作動ロッドとの間に介装され、前記作動ロッドを付勢して摺動抵抗を与える防振ばねを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の膨張弁。
前記ボディにおける前記取付孔の中心軸よりも前記第2冷媒通路側において、前記隔壁の前記第2冷媒通路側の端部と前記作動ロッドとの間に介装される可撓性を有するシール部材を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の膨張弁。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置の冷凍サイクルには一般に、循環する冷媒を圧縮するコンプレッサ、圧縮された冷媒を凝縮するコンデンサ、凝縮された冷媒を気液に分離するレシーバ、分離された液冷媒を絞り膨張させて霧状にして送出する膨張弁、その霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却するエバポレータが設けられている。
【0003】
膨張弁としては、エバポレータから導出された冷媒が所定の過熱度を有するように、エバポレータの出口側の冷媒の温度および圧力を感知して弁部を開閉し、エバポレータへ送出する冷媒の流量を制御する温度式膨張弁が用いられる。膨張弁のボディには、レシーバからエバポレータへ向かう冷媒を通過させる第1の通路と、エバポレータから戻ってきた冷媒を通過させてコンプレッサへ導出する第2の通路とが形成される。第1の通路の中間部には弁孔が形成され、その弁孔に着脱してエバポレータへ向かう冷媒の流量を調整する弁体が配設されている。ボディの端部には、第2の通路を流れる冷媒の温度および圧力を感知して弁部の開度を制御するパワーエレメントが設けられる。パワーエレメントの駆動力は、長尺状のシャフトを介して弁体に伝達される。シャフトは、第2の通路を横断して第1の通路に到るように延在するが、ボディにおいて第1の通路と第2の通路とを区画する隔壁に設けられた挿通孔に摺動可能に支持される。
【0004】
このような膨張弁は、車両のエンジンルーム、車室内またはそれらを仕切る隔壁に設置され、プレート状の継ぎ手を介して複数の配管が接続される(例えば引用文献1参照)。すなわち、膨張弁のボディにおける第1の通路の入口ポートにはレシーバから延びる配管が接続され、出口ポートにはエバポレータへ向かう配管が接続される。また、第2の通路の入口ポートにはエバポレータから延びる配管が接続され、出口ポートにはコンプレッサへ向かう配管が接続される。各配管は、例えばボディに貫通形成された取付孔に長尺状のボルトを挿通し、そのボディに上記継ぎ手を締結することにより、膨張弁に固定される。
【0005】
ところで、このような膨張弁のボディには、軽量化や加工のし易さ等に優れるアルミニウム素材等が用いられることが多いため、その熱伝導率も比較的高い。このため、第1の通路における弁孔よりも上流側の高温冷媒の温度、あるいは第1の通路における弁孔よりも下流側の低温冷媒の温度がボディを介してパワーエレメントに伝わり、その作動に影響を与えることが懸念される。すなわち、第1の通路側の温度が伝達されることにより、パワーエレメントに感温エラーを生じさせる可能性がある。そこで、例えば第1の通路と第2の通路との間に別途空隙を加工することで第1の通路側からパワーエレメントへの熱伝導を抑制する技術も提案されている(例えば引用文献2参照)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略することがある。
【0014】
[第1実施形態]
本実施形態は、本発明の膨張弁を自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される温度式膨張弁として具体化している。この冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮するコンプレッサ、圧縮された冷媒を凝縮するコンデンサ(「外部熱交換器」として機能する)、凝縮された冷媒を気液に分離するレシーバ、分離された液冷媒を絞り膨張させて霧状にして送出する膨張弁、その霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却するエバポレータが設けられているが、膨張弁以外の詳細な説明については省略する。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る膨張弁の正面図である。
図2は、
図1のA−A矢視断面図である。
図3は、
図2のB−B矢視断面図である。(A)はボルトが挿通された状態を示し、(B)はボルトが挿通される前の状態を示している。
図1に示すように、膨張弁1は、アルミニウム合金からなる素材を押出成形して得た部材に所定の切削加工を施して形成されたボディ2を有する。このボディ2は角柱状をなし、その内部には冷媒の絞り膨張を行う弁部が設けられている。ボディ2の長手方向の端部には、感温部として機能するパワーエレメント3が設けられている。
【0016】
ボディ2の正面(「第2側面」に該当する)の下部には導入ポート6(「第1導入ポート」として機能する)が開口し、上部には導出ポート9(「第2導出ポート」として機能する)が開口している。導入ポート6と導出ポート9との間には、図示しない配管取付用のスタッドボルトを植設可能とするためのねじ穴10が形成されている。導入ポート6と導出ポート9との間には一対の取付孔12が横並びに穿設され、ボディ2を貫通している。図示しないボディ2の背面(「第1側面」に該当する)の下部には導出ポート7(「第1導出ポート」として機能する)が開口し、上部には導入ポート8(「第2導入ポート」として機能する)が開口している(
図2参照)。
【0017】
すなわち、
図2に示すように、ボディ2の側部には、レシーバ側(コンデンサ側)から高温・高圧の液冷媒を導入する導入ポート6、膨張弁1にて絞り膨張された低温・低圧の冷媒をエバポレータへ向けて導出する導出ポート7、エバポレータにて蒸発された冷媒を導入する導入ポート8、膨張弁1を通過した冷媒をコンプレッサ側へ導出する導出ポート9が設けられている。
【0018】
膨張弁1においては、導入ポート6、導出ポート7およびこれらをつなぐ冷媒通路により第1冷媒通路13が構成されている。第1冷媒通路13は、その中間部に弁部が設けられており、導入ポート6から導入された冷媒をその弁部にて絞り膨張させて霧状にし、導出ポート7からエバポレータへ向けて導出する。一方、導入ポート8、導出ポート9およびこれらをつなぐ冷媒通路により第2冷媒通路14が構成されている。第2冷媒通路14は、ストレートに延びており、導入ポート8から冷媒を導入して導出ポート9からコンプレッサへ向けて導出する。
【0019】
すなわち、ボディ2における第1冷媒通路13の中間部には弁孔16が設けられ、その弁孔16の導入ポート6側の開口端縁により弁座17が形成されている。弁座17に導入ポート6側から対向するように弁体18が配置されている。弁体18は、弁座17に着脱して弁部を開閉する球状のボール弁体と、ボール弁体を下方から支持する弁体受けとを接合して構成されている。
【0020】
ボディ2の下端部には、第1冷媒通路13に直交するように内外を連通させる連通孔19が形成されており、その上半部により弁体18を収容する弁室40が形成されている。弁室40は、その上端部にて弁孔16に連通し、側部にて小孔42を介して導入ポート6に連通しており、第1冷媒通路13の一部を構成している。小孔42は、第1冷媒通路13の通路断面が局部的に狭小化されて形成され、弁室40に開口している。
【0021】
連通孔19の下半部には、その連通孔19を外部から封止するようにアジャストねじ20(「アジャスト部材」に該当する)が螺着されている。弁体18(正確には弁体受け)とアジャストねじ20との間には、弁体18を閉弁方向に付勢するスプリング23が介装されている。アジャストねじ20のボディ2への螺入量を調整することで、スプリング23の荷重を調整することができる。アジャストねじ20とボディ2との間には、冷媒の漏洩を防止するためのOリング24が介装されている。
【0022】
一方、ボディ2の上端部には、第2冷媒通路14に直交するように内外を連通させる連通孔25が形成されており、その連通孔25を封止するようにパワーエレメント3が螺着されている。パワーエレメント3は、アッパーハウジング26とロアハウジング27との間に金属薄板からなるダイヤフラム28を挟むように介装し、そのロアハウジング27側にディスク29を配置して構成されている。アッパーハウジング26とダイヤフラム28とによって囲まれる密閉空間には感温用のガスが封入されている。パワーエレメント3とボディ2との間には、冷媒の漏洩を防止するためのOリング30が介装されている。第2冷媒通路14を通過する冷媒の圧力および温度は、連通孔25とディスク29に設けられた溝部を通ってダイヤフラム28の下面に伝達される。
【0023】
ボディ2の中央部には、第1冷媒通路13と第2冷媒通路14とを区画する隔壁が設けられ、その隔壁に段付孔34が設けられている。段付孔34の小径部44には長尺状のシャフト33(「作動ロッド」として機能する)が摺動可能に挿通されている。シャフト33は、ディスク29と弁体18との間に介装されている。これにより、ダイヤフラム28の変位よる駆動力が、ディスク29およびシャフト33を介して弁体18へ伝達され、弁部が開閉される。段付孔34の大径部には、シャフト33に外挿されるようにシール用のOリング36が配置され、第1冷媒通路13と第2冷媒通路14との間の冷媒の漏洩が防止されている。
【0024】
シャフト33の上半部は、第2冷媒通路14を横切るように配置された円筒状のホルダ37に内挿されている。ホルダ37は、その下端部が段付孔34の大径部に圧入されており、その下部端面によりOリング36の移動を規制している。シャフト33の上端部は、ディスク29の下面に設けられた凹部に挿通されつつ当接し、シャフト33の下端部は、弁孔16に挿通されつつ弁体18に当接している。ホルダ37とシャフト33との間には、シャフト33に所定の横荷重を与えるスプリング39が介装されている。この横荷重により、冷媒圧力の変動によるシャフト33の振動が抑制される。
【0025】
図3に示すように、ボディ2には、ホルダ37を挟む両側に一対の取付孔12が穿設されている。
図1および
図2にも示したように、取付孔12は、ボディ2における第1冷媒通路13と第2冷媒通路14との間の高さ位置に中心軸を有し、第1側面S1から第2側面S2にかけてボディ2を貫通するように設けられている。一対の取付孔12には、一対のボルト62(「ねじ」として機能する)がそれぞれ第2側面S2側から挿通される。
【0026】
これらのボルト62は、エバポレータ側の取付部材であるプレート(図示せず)とボディ2とを締結するためのものである。取付孔12は、第2側面S2から第1側面S1に向けて一段小径化される段付孔となっており、その小径部71と大径部72との境界となる段部に係止面70が形成されている。係止面70は、座ぐり加工により形成される。係止面70は、ボルト62が取付孔12に挿通されたときに、そのボルト62の頭部66を挿通方向に係止する。ボルト62のねじ部64は、小径部71を貫通してプレートのねじ孔に螺合される。
【0027】
なお、本実施例では、ボルト62として六角穴付ボルトを採用しており、その頭部66の端面には六角穴68が形成されている。ボルト62を締結する際には、六角レンチを用いることで難なく作業することができる。このような構成から、一対のボルト62の頭部66をボディ2の第3側面S3および第4側面S4のそれぞれに近接した位置に配置することができる。言い換えれば、ボディ2における第3側面S3と第4側面S4との間の幅を極力小さくすることもでき、熱伝導の遮断と軽量化を図るのに都合がよい。なお、ボルト62としては、例えばすりわり付ボルト等その他のねじを採用することもできる。
【0028】
ここで、係止面70は、シャフト33の中心軸よりも第1側面S1側に位置するように形成され、かつボルト62の頭部66が挿通方向においてシャフト33の中心軸の位置とオーバラップするように位置決めされている。その結果、ボルト62を締結した際には、大径部72における頭部66よりも第2側面S2側に空隙を大きく形成することができる。また、ボルト62の頭部66の外面と大径部72の内面との間にも空隙があり、断熱効果が得られる。この部分の空隙によって、導出ポート7のうち、弁部直後の低温の冷媒が接触する部分からの断熱を効率的に実現ことができる。また、大径部72の内径Dが一対の取付孔12間の距離Lよりも大きくなるように構成されているため、図示の横断面において空隙部分を大きく形成することができる。この空隙により、第1冷媒通路13側から第2冷媒通路14側への熱伝導を抑制することができ、パワーエレメント3の感温エラーを防止することができる。
【0029】
一方、ボルト62の頭部66の位置を、シャフト33の中心軸の位置とオーバラップする程度に留めたため、ボディ2内のボルト62の締結位置をシャフト33に近い位置、すなわち、ボディ2の重心に近い位置とすることができ、エバポレータ側に固定された際に膨張弁1の安定した支持状態を維持できるようになる。また、ボルト62の頭部66の位置を取付孔12の奥方に設定して取付孔12による空隙を大きくすることで、ボディ2の軽量化を実現できるとともにボルト62についても短いものを使用すればよく、膨張弁1を含む空調装置全体として軽量化と低コスト化を図ることができる。取付孔12の成形の際には座ぐり加工の深さを大きくすることで、アルミニウム合金の切り屑が増加することになるが、再利用させることでもコスト低減が可能となる。また、ボルト62として従来のように膨張弁用の比較的長いものを用いる必要がなくなり、冷凍サイクルの外部熱交換器など他の部分の配管の締結に用いられている短いボルトを共用できるようになる点でメリットがある。
【0030】
以上のように構成された膨張弁1は、次のように製造される。すなわち、まず所定の金型を用いた押出加工によりアルミニウム合金製のビレットが一方向(つまりボディ2の正面と背面とをつなぐ方向)に押し出され、ボディ2の素材となる部材がその正面の輪郭に沿った形で成形される。そして、その部材を押出方向に対して直角な方向に切り落とすことによりボディ2の半製品が形成される。この半製品に孔あけ加工等の所定の切削加工を施すことによりボディ2を得ることができる。
【0031】
第1冷媒通路および第2冷媒通路は、それぞれ半製品の第1側面S1または第2側面S2にドリルを用いて穴を穿設することにより形成される。一対の取付孔12は、第2側面S2から第1側面S1に向けてドリルを用いて貫通孔を形成し、その後、エンドミル等で座ぐり加工を施すことにより形成される。
【0032】
膨張弁1は、ボディ2の第1側面S1にてエバポレータにつながる配管と図示しないプレートを介して接続される。そのプレートには、ボディ2に組み付けた際に導出ポート7に対向する位置と導入ポート8に対向する位置に支持孔が設けられ、各取付孔12に対向する位置にねじ穴がそれぞれ形成される。各支持孔にはエバポレータの入口につながる配管とエバポレータの出口につながる配管の接続部分がそれぞれ挿通され、脱落しないように支持される。そして、各配管の先端部をそれぞれOリング等のシール部材を介して導出ポート7,導入ポート8に挿入するようにしてプレートとボディ2とを突き合わせる。そして、ボディ2の第2側面S2側からボルト62を一対の取付孔12にそれぞれ挿入してプレートのねじ穴に螺合することにより、プレートとボディ2とを締結する。
【0033】
また、膨張弁1は、レシーバにつながる配管およびコンプレッサにつながる配管と図示しないプレートを介して接続される。そのプレートには、ボディ2に組み付けた際に導入ポート6に対向する位置と導出ポート9に対向する位置に支持孔が設けられ、ねじ穴10に対向する位置に挿通孔が設けられる。各支持孔にはレシーバの出口につながる配管とコンプレッサの入口につながる配管の接続部分がそれぞれ挿通され、脱落しないように支持される。そして、各配管の先端部をそれぞれOリング等のシール部材を介して導入ポート6,導出ポート9に挿入するようにしてプレートとボディ2とを突き合わせる。そして、所定のボルトをプレートの挿通孔に挿通してねじ穴10に螺合することにより、プレートとボディ2とを締結する。
【0034】
以上のように構成された膨張弁1は、エバポレータから導入ポート8を介して戻ってきた冷媒の圧力及び温度をパワーエレメント3が感知してそのダイヤフラム28が変位する。このダイヤフラム28の変位が駆動力となり、ディスク29およびシャフト33を介して弁体18に伝達されて弁部を開閉させる。一方、レシーバから供給された液冷媒は、導入ポート6から導入され、弁部を通過することにより絞り膨張されて、低温・低圧の霧状の冷媒になる。その冷媒は導出ポート7からエバポレータへ向けて導出される。
【0035】
[変形例]
図4は、第1実施形態の変形例に係る取付孔の構造およびボルトの取付構造を示す横断面図である。同図は
図3に対応する。本変形例においては、取付孔112の係止面170がボルト162の挿入方向に向けて半径方向内向きに傾斜するテーパ面として形成されている。また、挿入されるボルト162もその頭部166の先端面がテーパ形状となっている。このような構成とすることで、ボルト162を締結する際の締付けトルクの伝達効率を高め、安定した固定を実現することができる。このため、図示のようにボルト162を短くしてもボディ2を安定に固定することができる。
【0036】
[第2実施形態]
本実施形態の膨張弁は、ボディにおける取付孔の高さ位置とシャフトの支持構造が異なる点を除き、第1実施形態と同様の構成を有する。このため、第1実施形態との相異点を中心に説明する。
図5は、第2実施形態に係る膨張弁の正面図である。
図6は、
図5のA−A矢視断面図である。
図7は、
図6のB−B矢視断面図である。(A)はボルトが挿通された状態を示し、(B)はボルトが挿通される前の状態を示している。
【0037】
図5に示すように、膨張弁201は、ボディ202における一対の取付孔12の高さ位置が第1実施形態よりも低位置となっている。
図6に示すように、本実施形態ではシャフト233の中間部が第1実施形態のシャフト33よりもやや太くされ、剛性が高められている。一方、シャフト233を挿通するためのホルダは設けられていない。シャフト233の上半部は第2冷媒通路14を横断し、下半部が段付孔34の小径部44を摺動可能に貫通している。段付孔34の大径部46、つまりボディ202における隔壁の第2冷媒通路14側の端部とシャフト233との間には、シャフト233に軸線方向と直角な方向の付勢力、つまり横荷重(摺動荷重)を付与するための防振ばね50が配設されている。シャフト233がその防振ばね50の横荷重を受けることにより、冷媒圧力の変動によるシャフト233や弁体18の振動が抑制されるようになっている。
【0038】
第1冷媒通路13における弁孔16の下流側通路は、導出ポート7を含む大径部207と、その奥方の小径部208からなる段付構造を有するが、小径部208の中心軸は、大径部207の中心軸よりも弁孔16側に偏っている。それにより、その下流側通路と取付孔12とが互いに干渉しないようにしている。
【0039】
図7に示すように、本実施形態では第1実施形態のようなホルダ37が設けられないため、ボディ202には、シャフト233に近接するように一対の取付孔12が穿設されている。その結果、大径部72の内径Dは第1実施形態と等しくなっているものの、一対の取付孔12間の距離L2が第1実施形態における距離Lよりも小さくなっている。その分、第3側面S3と第4側面S4との間の幅を小さくでき、同じ横断面における空隙の割合が第1実施形態よりも大きくなっている。その結果、第1冷媒通路13側から第2冷媒通路14側への熱伝導を第1実施形態よりもさらに抑制することができる。
【0040】
図8は、防振ばねの構造を示す図である。(A)は防振ばねの全体構造を示す斜視図である。(B)は防振ばねが段付孔に挿通された状態を示す平面図であり、(C)は防振ばねの無負荷状態を示す平面図である。
【0041】
図8(A)および(B)に示すように、防振ばね50は、弾性度が高い金属、例えばステンレスからなる帯状の板材をその延在方向に沿った複数箇所にて曲げ加工することにより形成されている。具体的には、いわゆるフォーミング加工により、長尺な長方形状の板材の中間に円弧状の丸みをもたせて概ね環状としつつ、その中間部52の二等分線(一点鎖線参照)に対して対称となるよう両端部を内側に折り返すようにして形成されている。
【0042】
すなわち、
図8(B)および(C)に示すように、防振ばね50は、段付孔34の大径部46とほぼ同じ曲率を有する中間部52と、その中間部52の両側にそれぞれ直線状に延出する外側ばね部54と、外側ばね部54の先端がその内側に折り返された折り返し部56を有する。折り返し部56には直線状の内側ばね部58が連設されている。防振ばね50は、大径部46に挿入される前の無負荷状態においては、
図8(C)に示すように、外側ばね部54がほぼ直線となる。
【0043】
防振ばね50を大径部46に挿入する際には、例えばピンセットのような工具60の先端を一対の折り返し部56の内側に差し込み、両折り返し部56を近づけるように負荷をかけ(図中矢印参照)、図中点線のように環状に近い状態にしたうえで挿入する。すなわち、一対の折り返し部56は、防振ばね50を大径部46に挿入する際のつかみ部として機能する。このとき、工具60の先端が防振ばね50の外接円の内方に配置されるようになるため、つまり防振ばね50の外側からつかむ必要がなくなるため、挿入の際に工具が大径部46の縁に引っ掛かることもなく、作業が非常に容易となる。なお、このとき、一対の内側ばね部58は互いにほぼ平行となる。
【0044】
防振ばね50は、無負荷状態から弾性変形した状態で大径部46に挿入されるため、
図8(B)に示すように、一対の内側ばね部58がシャフト233を挟む方向の横荷重を生成する。一方、外側ばね部54もやや撓んだ状態となり、折り返し部56の一部を大径部46の内面に押しつける荷重を生成する。防振ばね50は、このようにしてシャフト233と2点で接触して摺動荷重を付与する一方、その弾性反力により大径部46(つまりボディ2)にしっかりと固定されるようになる。
【0045】
このような構成により、防振ばね50によりシャフト233に適度な摺動抵抗を与えることができ、その結果、冷媒の圧力変動に伴うシャフト233や弁体18の振動を抑制することができる。また特に、その防振ばね50を、一枚の帯状の板材を延在方向に沿って曲げ加工するという簡易な工程で得ることができるため、その板材をより大きな板材から切り抜いて得るとしても材料の無駄が発生し難く、製造コストを抑制することができる。
【0046】
また、防振ばね50の板幅全体にて外側ばね部54および内側ばね部58を構成するため、その幅方向にコンパクトに構成することが可能となる。さらに、一対の折り返し部56を設け、工具60の先端を防振ばね50の内方に配置できるようにしたため、ボディ202への取付作業が非常に容易となる。特に膨張弁201を小型化する場合には大径部46および防振ばね50の双方が小さくなるところ、防振ばね50をつかみ易く、しかも省スペースにて作業できるため、作業効率が格段に向上する。
【0047】
[第3実施形態]
本実施形態の膨張弁は、ボディにおける取付孔の高さ位置とシール部材の位置が異なる点を除き、第1実施形態と同様の構成を有する。このため、第1実施形態との相異点を中心に説明する。
図9は、第3実施形態に係る膨張弁の断面図である。
図10は、
図9のB−B矢視断面図である。(A)はボルトが挿通された状態を示し、(B)はボルトが挿通される前の状態を示している。
【0048】
図9に示すように、膨張弁301は、ボディ302における一対の取付孔12の高さ位置が第2実施形態と同様に低位置となっている。そして、段付孔34の大径部が比較的浅く形成されており、Oリング36が取付孔12と干渉しないよう、取付孔12の中心軸よりも第2冷媒通路14側に配置されている。すなわち、ボディ302における隔壁の第2冷媒通路14側の端部とシャフト33との間にOリング36が配置されている。このような構成により、ホルダ37およびOリング36と取付孔12が干渉することもない。
【0049】
その結果、
図10に示すように、ボディ302には、シャフト33に近接するように一対の取付孔12が穿設されている。その結果、大径部72の内径Dは第1実施形態と等しくなっているものの、一対の取付孔12間の距離L3が第1実施形態における距離Lよりも小さくなっている。すなわち、第2実施形態と同様に、第3側面S3と第4側面S4との間の幅を小さくでき、同じ横断面における空隙の割合が第1実施形態よりも大きくなっている。その結果、第1冷媒通路13側から第2冷媒通路14側への熱伝導を第1実施形態よりもさらに抑制することができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。例えば、上記実施形態および変形例において一部の構成要素を組み合わせてもよいし、各実施形態および変形例から一部の構成要素を削除してもよい。
【0051】
上記実施形態の膨張弁は、冷媒として代替フロン(HFC−134a)など使用する冷凍サイクルに好適に適用されるが、本発明の膨張弁は、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いる冷凍サイクルに適用することも可能である。その場合には、冷凍サイクルにコンデンサに代わってガスクーラなどの外部熱交換器が配置される。その際、パワーエレメント3を構成するダイヤフラムの強度を補うために、例えば金属製の皿ばね等を重ねて配置してもよい。あるいは、ダイヤフラムに置き換えて皿ばね等を配置してもよい。