(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064116
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】院内感染防止用具
(51)【国際特許分類】
A61G 10/00 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
A61G10/00 K
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-201810(P2012-201810)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-54440(P2014-54440A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【審査官】
井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−31019(JP,A)
【文献】
特開2012−110453(JP,A)
【文献】
特開2009−201564(JP,A)
【文献】
特開平6−78959(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3053363(JP,U)
【文献】
米国特許第6209611(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 10/00
A61J 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が入れる程度の間隔を保って左右に対向させて成りかつ患者の背丈より丈高としたスタンド柱(1,1)の下端に、キャスター(3,3)を具えた移動用脚体(2,2)を取付け、
当該スタンド柱(1.1)の上端には、スタンド柱(1,1)の上端部寄り両側部に固設するための両側部水平枠(4,4)と、当該水平枠の前後部に立ち上がるように連設する先端枠(5)と後端枠(6)と、その中央部に位置する中央枠(7)とで形成した正面山型状を呈する屋根状枠体(A)を固設し、
患者の出入りを行わせるための開閉用部(8b)を後方に具えかつ患者の頭の上から膝の高さまでを被うためのシート状カバー体(8)を、前記屋根状枠体(A)に被せることに依って、当該屋根状枠体(A)の全周にわたって垂設するように構成した院内感染防止用具。
【請求項2】
スタンド柱 (1,1)として、一本の管材を逆U状に折り曲げることに依って一体的に形成したものを用い、このように折り曲げることに依って上端に形成される天管部を、屋根状枠体(A)の中央枠(7)として機能させるように構成した請求項1に記載の院内感染防止用具。
【請求項3】
両側部水平枠(4,4)の後半部を伸縮自在とすることに依り、不使用時においてはこれを引っ込ませて後端枠(6)を前方に引き寄せることに依り、不使用時コンパクト化目的の達成が図られるように構成した請求項1または請求項2の何れかに記載の院内感染防止用具。
【請求項4】
後端枠(6)を上方に跳上げるように構成することに依り、不使用時コンパクト化目的の達成が図られるように構成した請求項1または請求項2の何れかに記載の院内感染防止用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴中に病院内を移動する際、院内感染の心配が生じることなく移動できるようにするための院内感染防止用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば病室から、診察室への移動、会計のための窓口への移動、見舞客との歓談のための待合室への移動等、病院内を移動する機会は結構多いものである。 そして、これらの移動に際して他の患者や外来者との接触に基き、風邪等の病気をうつされてしまう、いわゆる院内感染の恐れが生じることを余儀なくされた。
【0003】
従来、このような感染を防止するための手段として、予防衣を着用することを通例とした(例えば第1特許文献参)。
然し乍、点滴を受けながらの移動時には、点滴用スタンド(例えば第2特許文献参照)と共に移動しなければならず、そしてこれと連なっている点滴の管の存在もあるため、上記したような予防衣の脱ぎ着は必然的に困難とされた。
【0004】
そして、このように腕部分を露出状態にあり、かつ、点滴用チューブが腕に刺し込まれている状態では、上記したような予防衣着用が出来ず、従って、その移動時に院内感染を生じてしまう確率が比較的高いものとされた。 更に、点滴を受けていると言うことは、体力的な低下が生じている場合が多く、従って、病原菌に対する耐性が弱く、院内感染の恐れがより一層強まることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−073209号公報
【特許文献2】特開2011−010682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、点滴を受けながらの移動に際しては、点滴用スタンドを含めて体全体がカバー体に覆われるようにすることによって、院内感染に対する恐れを回避させ、以って前述したような従来の問題点の解消化を図るように構成した新規の院内感染防止用具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は請求項1に記載のように、患者が入れる程度の間隔を保って左右に対向させて成りかつ患者の背丈より丈高としたスタンド柱1,1の下端に、キャスター3,3を具えた移動用脚体2,2を取付け、当該スタンド柱1.1の上端には、スタンド柱1,1の上端部寄り両側部に固設するための両側部水平枠4,4と、当該水平枠の前後部に立ち上がるように連設する先端枠5と後端枠6と、その中央部に位置する中央枠7とで形成した正面山型状を呈する屋根状枠体Aを固設し、患者の出入りを行わせるための開閉用部8bを後方に具えかつ患者の頭の上から膝の高さまでを被うためのシート状カバー体8を、前記屋根状枠体Aに被せることに依って、当該屋根状枠体Aの全周にわたって垂設するように構成した院内感染防止用具に係る。
【0008】
本発明は請求項2に記載のように、スタンド柱1,1として、一本の管材を逆U状に折り曲げることに依って一体的に形成したものを用い、このように折り曲げることに依って上端に形成される天管部を、屋根状枠体Aの中央枠7として機能させるように構成した請求項1に記載の院内感染防止用具を実施の態様とする。
【0009】
本発明は請求項3に記載のように、両側部水平枠4,4の後半部を伸縮自在とすることに依り、不使用時においてはこれを引っ込ませて後端枠6を前方に引き寄せることに依り、不使用時コンパクト化目的の達成が図られるように構成した請求項1または請求項2の何れかに記載の院内感染防止用具を実施の態様とする。
【0010】
本発明は請求項4に記載のように、後端枠6を上方に跳上げるように構成することに依り、不使用時コンパクト化目的の達成が図られるように構成した請求項1または請求項2の何れかに記載の院内感染防止用具を実施の態様とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は請求項1に記載のような構成、すなわち、患者が入れる程度の間隔を保って左右に対向させて成りかつ患者の背丈より丈高としたスタンド柱1,1の下端に、キャスター3,3を具えた移動用脚体2,2を取付け、当該スタンド柱1.1の上端には、スタンド柱1,1の上端部寄り両側部に固設するための両側部水平枠4,4と、当該水平枠の前後部に立ち上がるように連設する先端枠5と後端枠6と、その中央部に位置する中央枠7とで形成した正面山型状を呈する屋根状枠体Aを固設し、患者の出入りを行わせるための開閉用部8bを後方に具えかつ患者の頭の上から膝の高さまでを被うためのシート状カバー体8を、前記屋根状枠体Aに被せることに依って、当該屋根状枠体Aの全周にわたって垂設するように構成したから、点滴を行いながらの移動に際して、点滴用スタンドを含めて患者の体全体がカバー体8に覆われているため、身体に対する黴菌が付着することがよく防止され、いわゆる院内感染というような事態発生を未然に回避させる。
同時に、例えばカバー体を不透明材料で形成した場合、カバー体内の患者は、周りの人々の眼から遮られているため、一般人と紛れていても、点滴患者であることに基づく一種の気恥ずかしさを感じることなく移動することが出来る。
【0012】
そして、当該カバー体8はその中心寄り部分では中央枠7により、また、前端及び後端においては、先端枠5と後端枠6でそれぞれ安定した状態で支えられることとなるから、当該カバー体8が局部的に垂れ下がってしまうようなことがない。
【0013】
更に、カバー体8を支える屋根状枠体Aを、正面山型状を呈するように構成してあるから、頭部スペースが確保され、シート状カバー体8内に患者が入る際に頭をぶつけてしまうと言うような事柄を防止する。
【0014】
本発明は請求項2に記載のような構成、すなわち、スタンド柱1,1として、一本の管材を逆U状に折り曲げることに依って一体的に形成したものを用い、このように折り曲げることに依って上端に形成される天管部を、屋根状枠体Aの中央枠7として機能させるように構成したから、製造コストの低廉化と製造作業の容易化、並びに、屋根状枠体A自体のスタンド柱に対する取付け的堅牢性が図られる。
【0015】
本発明は請求項3に記載のような構成、すなわち、両側部水平枠4,4の後半部を伸縮自在とすることに依り、不使用時においてはこれを引っ込ませて後端枠6を前方に引き寄せることに依り、不使用時コンパクト化目的の達成が図られるように構成したから、不使用時並びに輸送時の管理が著しく簡便化される。
【0016】
本発明は請求項4に記載のような構成、すなわち、後端枠6を上方に跳上げるように構成することに依り、不使用時コンパクト化目的の達成が図られるように構成したから、不使用時並びに輸送時の管理が著しく簡便化される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の使用状態を表した説明用斜視図である。
【
図2】カバー体を取り外した状態を示す本発明の斜視図である。
【
図3】本発明のコンパクト化のための作動を表した説明用側面図である。
【
図4】本発明のコンパクト化のための他の実施例を表した説明用側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至
図3は本発明の1実施例を表したものである。 同図において、1,1は左右対称的に立設するスタンド柱であって、その長さは患者の背丈より丈高なものとすると共に、当該両支柱1,1の対向間隔は、患者が入れる程度の間隔を保って左右に対向させてある。 1a,1aは当該スタンド柱1,1の所要箇所に付設した引掛け鉤であって、点滴等の器具を吊り下げるためのものである。
【0019】
なお、図示の実施例にあっては、当該スタンド柱1,1を一本の管材を逆U状に折り曲げることに依って、天管部が後述する屋根状枠体Aの中央枠7として機能させるように構成してある。 然し乍、重要な点は、スタンド柱1,1が所要間隔を保って左右に並べて立設されていることにあり、その上端部において図示のように連続状に形成することは必須要件ではない。
【0020】
2,2はその上面にスタンド柱1,1を立設する移動用脚体であって、その下面にはキャスター3,3が取り付けられている。 なお、当該スタンド柱の1,1の立設は、移動用脚体2,2対して直接的固設を図る以外、脚体2,2の上面に立設した適宜鞘管を介してその立設を図るように構成しても良い。
【0021】
Aは正面山型状を呈する屋根状枠体であって、スタンド柱1,1の上端部寄り両側部に固設するための両側部水平枠4,4と、当該水平枠の前後部に立ち上がるように連設する先端枠5と後端枠6と、その中央部に位置する中央枠7とで形成してある。
【0022】
なお、図示の実施例にあっては、上記中央枠7は、スタンド柱1,1を一本の管材を逆U状に折り曲げることに依って、天管部が当該中央枠7として機能させるように構成してある。 然し乍、これを別体形成するように構成しても良い。
【0023】
また、当該屋根状枠体Aにおいて重要な点は、これを正面山型状とすることに依り上方スペースの確保を図った点にあり、これにより、
図1に示すような本発明品の使用時、使用者の頭部スペースの確保が図られるように構成したことにある。 そして、使用者の頭部が当たらないように、また、当たった際の衝撃を少なくするために、先端枠5と後端枠6並びに中央枠7の隅角部は弧状に形成してある。
【0024】
更に、
図1乃至
図3に示す実施例にあっては、両側部水平枠4,4の後半部を伸縮自在とすることに依り、不使用時においてはこれを引っ込ませて後端枠6を前方に引き寄せることに依り、不使用時コンパクト化目的の達成が図られるように構成してある(
図3参照)。
【0025】
また、当該コンパクト化の手段として、
図4に示すような後端枠6を 両側部水平枠4,4の後半部を含めて上方に跳上げるような方式(両側部水平枠4,4の後半部を起伏自在に枢支する)を採るように構成しても良い。 更に、このような不使用時コンパクト化のための構成は絶対的要件ではなく、これを省略した形態で実施する場合もある。
【0026】
8はシート状カバー体であって、上記した屋根状枠体Aに対して被せることに依って、その全周わたってカーテン状に垂下させるように取付けてある。 なお、当該シート状カバー体8は、点滴を行っている患者の頭の上から膝の高さまでを被う程度の丈幅を具えており、中に入っている患者の様子が外部から分からないようにするためのものである。
【0027】
また、上記したシート状カバー体8は不透明な材料を用いると共に、防菌性、耐消毒処理に適した材料、例えば合成樹脂製シート材等を用いることが好ましいが、布材、化学繊維材等のような軽い材質のものであっても良い。
【0028】
8aは上記患者の眼のあたりに位置するように設けた透明資材製窓部であって、歩行に際する透視用窓としての役割を果たすものである。 すなわち、シート状カバー体8内にいる患者は、シート状カバー体8が不透明素材の場合は周りの人々から見られることがないが、歩行時の視野が妨げられることとなる。 そのために、当該透明資材製窓部8aを透して当該患者の視界確保がなされるように構成してある。 なお、シート状カバー体8を透明資材で形成した場合は、このような窓部8aの形成は不要である。
【0029】
また、上記したシート状カバー体8の後方部分には、患者の出入りを行わせるために、その高さ方向全長に渡って開閉用部8bが形成してある。 当該開閉用部8bは図示のように両端縁を開閉自在に重ね合わせるように構成したもの(巻きスカート状の構成)以外、スリット状に構成したもの、若しくは、開閉用部の両端縁をファスナーまたはスナップ止めで開閉自在とするように構成したもの等、適宜形態のものであっても可とする。
【符号の説明】
【0030】
1 スタンド柱
1a 引掛け鉤
2 移動用脚体
3 キャスター
A 屋根状枠体
4 両側部水平枠
5 先端枠
6 後端枠
7 中央枠
8 シート状カバー体
8a 窓部
8b 開閉用部