特許第6064123号(P6064123)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064123
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20170116BHJP
   F04B 27/18 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   F16K31/06 305L
   F16K31/06 305S
   F16K31/06 385F
   F04B27/18 Z
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-242106(P2012-242106)
(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公開番号】特開2014-92207(P2014-92207A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(74)【代理人】
【識別番号】100120536
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 真司
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕己
(72)【発明者】
【氏名】利根川 正明
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/119380(WO,A1)
【文献】 特開2014−095463(JP,A)
【文献】 特開2012−144986(JP,A)
【文献】 特開2011−017299(JP,A)
【文献】 特開2010−249007(JP,A)
【文献】 実開昭56−142262(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を導入又は導出する導入出ポート、作動流体を導入する導入ポート、作動流体を導出する導出ポートが設けられたボディと、
前記ボディに摺動可能に支持され、前記導入ポートと前記導入出ポートとの間に形成された主弁座に着脱して主弁を開閉する一方、前記導入出ポートと前記導出ポートとを連通させる内部通路が形成された主弁体と、
前記内部通路の端部又は内部に形成された副弁座に着脱して副弁を開閉する副弁体と、
前記ボディの一端側に設けられて被感知圧力を感知し、その被感知圧力が設定圧力よりも低くなると前記主弁体を開弁方向に駆動するための駆動力を発生させる感圧部と、
前記ボディの他端側に設けられ、供給される電流量に応じて前記主弁体を閉弁方向に駆動するためのソレノイド力を発生させるソレノイドと、
前記感圧部と前記ソレノイドとの間に介装され、前記ソレノイド力を前記主弁体および前記副弁体のいずれも介することなく前記感圧部に対して直接伝達可能な作動ロッドと、
を備え、
前記副弁体は、前記作動ロッドに固定されてはおらず、所定クリアランスにて遊嵌されていることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記主弁体を前記主弁の閉弁方向に付勢する第1付勢部材と、
前記副弁体を前記副弁の閉弁方向に付勢する第2付勢部材と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記作動ロッドは、前記主弁の閉弁状態において前記副弁体を前記副弁の開弁方向に駆動するためのソレノイド力を、前記副弁体に伝達するための押圧部を有することを特徴とする請求項2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記作動ロッドは、前記主弁体に設けられた被係合部に係合することにより前記ソレノイド力を前記主弁体に直接伝達可能な係合部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制御弁。
【請求項5】
前記作動ロッドは、前記主弁体に設けられた被係合部に係合することにより前記ソレノイド力を前記主弁体に直接伝達可能な係合部を有し、
前記第1付勢部材は、前記副弁の閉弁状態において前記係合部と前記被係合部との間に所定間隔が形成されるよう、前記主弁体を前記主弁の閉弁方向に付勢することを特徴とする請求項2または3に記載の制御弁。
【請求項6】
前記第1付勢部材は、前記作動ロッドと前記主弁体との間に介装され、前記作動ロッドと一体変位可能であることを特徴とする請求項2,3,5のいずれかに記載の制御弁。
【請求項7】
前記副弁体と前記感圧部とが一体に構成され、
前記作動ロッドが、前記副弁体を貫通して前記感圧部に作動連結可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の制御弁。
【請求項8】
吸入室に導入される冷媒を圧縮して吐出室から吐出する可変容量圧縮機の吐出容量を、前記吐出室からクランク室に導入する冷媒、および前記クランク室から前記吸入室へ導出する冷媒の少なくとも一方の流量又は圧力を調整することにより変化させる可変容量圧縮機用制御弁として構成され、
前記ボディは、前記導入出ポートとして前記クランク室に連通するクランク室連通ポートと、前記導入ポートとして前記吐出室に連通する吐出室連通ポートと、前記導出ポートとして前記吸入室に連通する吸入室連通ポートとが形成され、
前記感圧部は、前記吸入室の吸入圧力または前記クランク室のクランク圧力を前記被感知圧力として感知し、その被感知圧力が設定圧力よりも低くなると前記主弁体に開弁方向の力を作用させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御弁に関し、特に共用のボディに主弁と副弁とが設けられ、単一のソレノイドにより駆動される制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、その冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する圧縮機、そのガス冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された液冷媒を断熱膨張させることで低温・低圧の冷媒にする膨張装置、その冷媒を蒸発させることにより車室内空気との熱交換を行う蒸発器等を備えている。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻され、冷凍サイクルを循環する。
【0003】
この圧縮機としては、エンジンの回転数によらず一定の冷房能力が維持されるように、冷媒の吐出容量を可変できる可変容量圧縮機(単に「圧縮機」ともいう)が用いられている。この圧縮機は、エンジンによって回転駆動される回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結され、揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整する。揺動板の角度は、密閉されたクランク室内に吐出冷媒の一部を導入し、ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることで連続的に変えられる。このクランク室内の圧力(以下「クランク圧力」という)Pcは、圧縮機の吐出室とクランク室との間に設けられた可変容量圧縮機用制御弁(単に「制御弁」ともいう)により制御される。
【0004】
このような制御弁は、駆動部としてのソレノイドに外部から電流を供給することで、その弁開度が調整される。空調装置の起動時などその空調機能を速やかに発揮させる必要があるときには、例えばソレノイドに最大電流を流すことで弁部を閉弁状態とし、クランク圧力Pcを低くして揺動板を回転軸に対して大きく傾けることで、圧縮機を最大容量で運転させることができる。車両のエンジン負荷が大きいときにはソレノイドをオフにすることで弁部を全開状態とし、クランク圧力Pcを高くして揺動板を回転軸に対してほぼ直角にすることで、圧縮機を最小容量で運転させることができる。
【0005】
このような制御弁には、吐出室とクランク室とを連通させる主通路に主弁を設ける一方、クランク室と吸入室とを連通させる副通路に副弁を設け、それらの弁を単一のソレノイドにより駆動するものがある(例えば特許文献1参照)。この制御弁によれば、空調装置の定常運転時には副弁を閉じた状態で主弁の開度が調整される。それにより、上述のようにクランク圧力Pcを制御し、圧縮機の吐出容量を制御することができる。一方、空調装置の起動時には主弁を閉じた状態で副弁が開かれ、それによりクランク圧力Pcを速やかに低下させることで、圧縮機を速やかに最大容量運転状態へ移行させることができる。また、単一のソレノイドにより複数の弁を開閉させる構成としたため、制御弁全体をコンパクトに構成することができる。
【0006】
このような制御弁は、単一のソレノイドにより主弁と副弁とを駆動する関係上、主弁体と副弁体とを同一軸線上に設け、その軸線に沿って配設された作動ロッドを介して各弁体にソレノイド力を伝達する機構を有する。制御弁のボディには主弁孔が設けられ、主弁体に副弁孔が設けられる。すなわち、副通路が主弁体を貫通するように設けられる。そして、主弁孔の開口端部に設けられた主弁座に対して主弁体が着脱することにより主弁が開閉され、副弁孔の開口端部に設けられた副弁座に対して副弁体が着脱することにより副弁が開閉される。ただし、圧縮機の定常運転時は副弁体が副弁座に押しつけられ、副弁の閉弁状態が維持される。圧縮機の起動時にはソレノイド力を最大にし、主弁体を主弁座に着座させた状態でさらに副弁体を開弁方向に付勢することにより副弁を開くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−240580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、引用文献1に具体的に開示された制御弁は、副弁体にソレノイド力を直接伝達するために、作動ロッドの一端部と副弁体とを固定した構造を有する。一方、作動ロッドの他端部はソレノイドのプランジャに固定される。すなわち、副弁体と作動ロッドとプランジャとが一体に設けられている。このため、副弁の開閉に際して副弁体が副弁座に着座するたびに、副弁座には副弁体のみならず、作動ロッドやプランジャの重量が合わさって衝撃荷重として負荷されるようになる。その結果、主弁体における副弁座の形成部分に摩耗や変形が生じ、副弁のシール性能に支障をきたす虞があった。また、副弁座に衝撃荷重を与える稼働部の重量が大きくなるため、打撃音の問題も発生する。なお、このような問題は、引用文献1に示されるような可変容量圧縮機用制御弁に限らず、主弁と副弁とを単一のソレノイドにより駆動する制御弁においては、同様に発生し得る。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、主弁と副弁とを単一のソレノイドにより駆動する制御弁において、副弁の閉弁時における摩耗や打撃音の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御弁は、作動流体を導入又は導出する導入出ポート、作動流体を導入する導入ポート、作動流体を導出する導出ポートが設けられたボディと、ボディに摺動可能に支持され、導入ポートと導入出ポートとの間に形成された主弁座に着脱して主弁を開閉する一方、導入出ポートと導出ポートとを連通させる内部通路が形成された主弁体と、内部通路の端部又は内部に形成された副弁座に着脱して副弁を開閉する副弁体と、ボディの一端側に設けられて被感知圧力を感知し、その被感知圧力が設定圧力よりも低くなると主弁体を開弁方向に駆動するための駆動力を発生させる感圧部と、ボディの他端側に設けられ、供給される電流量に応じて主弁体を閉弁方向に駆動するためのソレノイド力を発生させるソレノイドと、感圧部とソレノイドとの間に介装され、ソレノイド力を主弁体および副弁体のいずれも介することなく感圧部に対して直接伝達可能な作動ロッドと、を備える。
【0011】
この態様によれば、感圧部とソレノイドとの間に作動ロッドが介装されることにより、主弁の開弁方向と閉弁方向の駆動力のバランスが調整されるところ、ソレノイド力が主弁体および副弁体のいずれも介することなく感圧部に対して直接伝達可能とされている。このため、ソレノイドをオフにした際に副弁体が副弁座に着座するとしても、その着座に際して作動ロッドやソレノイドの重量の影響は実質的に生じない。その結果、副弁の閉弁時における摩耗や打撃音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、主弁と副弁とを単一のソレノイドにより駆動する制御弁において、副弁の閉弁時における摩耗や打撃音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
図2図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
図3】制御弁の動作を表す図である。
図4】制御弁の動作を表す図である。
図5】第2実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。
図6】第3実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。
図7】第4実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。
図8】第5実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。
図9】第6実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
図10図9の上半部に対応する部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
制御弁1は、自動車用空調装置の冷凍サイクルに設置される図示しない可変容量圧縮機(単に「圧縮機」という)の吐出容量を制御する電磁弁として構成されている。この圧縮機は、冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する。そのガス冷媒は凝縮器(外部熱交換器)にて凝縮され、さらに膨張装置により断熱膨張されて低温・低圧の霧状の冷媒となる。この低温・低圧の冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内空気を冷却する。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻されて冷凍サイクルを循環する。圧縮機は、自動車のエンジンによって回転駆動される回転軸を有し、その回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結されている。その揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより、冷媒の吐出量が調整される。制御弁1は、その圧縮機の吐出室からクランク室へ導入する冷媒流量を制御することで揺動板の角度、ひいてはその圧縮機の吐出容量を変化させる。
【0016】
制御弁1は、圧縮機の吸入圧力Psを設定圧力に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。制御弁1は、弁本体2とソレノイド3とを一体に組み付けて構成される。弁本体2は、圧縮機の運転時に吐出冷媒の一部をクランク室へ導入するための冷媒通路を開閉する主弁と、圧縮機の起動時にクランク室の冷媒を吸入室へ逃がすいわゆるブリード弁として機能する副弁とを含む。ソレノイド3は、主弁を開閉方向に駆動してその開度を調整し、クランク室へ導入する冷媒流量を制御する。弁本体2は、段付円筒状のボディ5、ボディ5の内部に設けられた主弁および副弁、主弁の開度を調整するためにソレノイド力に対抗する力を発生するパワーエレメント6等を備えている。パワーエレメント6は、「感圧部」として機能する。
【0017】
ボディ5の側部には、その上端側からポート12,14,16が設けられている。ポート12はクランク室に連通する「クランク室連通ポート」として機能し、ポート14は吐出室に連通する「吐出室連通ポート」として機能し、ポート16は吸入室に連通する「吸入室連通ポート」として機能する。ボディ5の上端開口部は端部部材13により封止され、ボディ5の下端部はソレノイド3の上端部に連結されている。ボディ5内には、ポート12とポート14とを連通させる主通路と、ポート12とポート16とを連通させる副通路とが形成されている。主通路には主弁が設けられ、副通路には副弁が設けられている。主通路には主弁孔18が設けられ、その下端開口端縁のテーパ面に主弁座20が形成されている。
【0018】
ポート14は、吐出室から吐出圧力Pdの冷媒を導入する。ポート12は、圧縮機の定常動作時に主弁を経由したクランク圧力Pcの冷媒をクランク室へ向けて導出する一方、圧縮機の起動時にはクランク室から排出されたクランク圧力Pcの冷媒を導入する。このとき導入された冷媒は、副弁に導かれる。ポート12と主弁孔18との間には、クランク圧力Pcが満たされる作動室22が形成される。パワーエレメント6は、作動室22に配置される。ポート16は、圧縮機の定常動作時に吸入圧力Psの冷媒を導入する一方、圧縮機の起動時には副弁を経由した吸入圧力Psの冷媒を吸入室へ向けて導出する。
【0019】
ポート14とポート16との間には、主弁孔18と同軸状にガイド孔24が形成されている。ガイド孔24とポート14との間には弁室26が形成され、ガイド孔24とポート16との間には圧力室28が形成されている。ガイド孔24には、円筒状の主弁体30が摺動可能に挿通されている。主弁体30は、弁室26側から主弁座20に着脱することにより主弁を開閉し、吐出室からクランク室へ流れる冷媒流量を調整する。一方、主弁体30の内部には副弁孔32が設けられ、その副弁孔32の上端開口部に副弁座34が形成されている。主弁体30の下部は圧力室28に延在し、その下端部近傍に内外を連通する連通孔35が設けられている。作動室22には、段付円板状の副弁体36が配設されている。副弁体36は、主弁体30と軸線方向に対向配置され、副弁座34に着脱することにより副弁を開閉する。
【0020】
また、ボディ5の軸線に沿って長尺状の作動ロッド38が設けられている。作動ロッド38の上端部はパワーエレメント6と作動連結可能に接続され、下端部はソレノイド3の後述するプランジャ50に作動連結可能に接続されている。作動ロッド38の上半部は主弁体30および副弁体36を貫通し、その上端部近傍に設けられた段部にて副弁体36を下方から支持する。作動ロッド38の中間部には、ばね受け部材40が設けられている。主弁体30とばね受け部材40との間には、主弁体30を主弁の閉弁方向に付勢するスプリング42(「第1付勢部材」,「弾性体」として機能する)が介装されている。一方、パワーエレメント6と副弁体36との間には、副弁体36を副弁の閉弁方向に付勢するとともに、主弁体30を主弁の開弁方向に付勢可能なスプリング44(「第2付勢部材」,「弾性体」として機能する)が介装されている。
【0021】
なお、副弁体36は、作動ロッド38に固定されてはおらず、所定クリアランスにて遊嵌されつつ下方から支持されている。一方、作動ロッド38の下端部は、プランジャ50に固定されてはおらず、所定クリアランスにて遊嵌されつつ下方から支持されている。すなわち、作動ロッド38は、パワーエレメント6とプランジャ50との間に介装されているが、いずれにも固定されてはいない。ただし、作動ロッド38の上端部はパワーエレメント6に設けられた凹部に挿通され、作動ロッド38の下端部はプランジャ50に設けられた凹部に挿通されているため、作動ロッド38がパワーエレメント6およびプランジャ50から脱落することはない。
【0022】
一方、パワーエレメント6は、クランク圧力Pcを感知して変位するベローズ45を含み、そのベローズ45の変位によりソレノイド力に対抗する力を発生させる。この対抗力は、作動ロッド38および副弁体36を介して主弁体30にも伝達される。副弁体36が副弁座34に着座して副弁を閉じることにより、クランク室から吸入室への冷媒のリリーフが遮断される。また、副弁体36が副弁座34から離間して副弁を開くことにより、クランク室から吸入室への冷媒のリリーフが許容される。
【0023】
一方、ソレノイド3は、段付円筒状のコア46と、コア46の下端開口部を封止するように組み付けられた有底円筒状のスリーブ48と、スリーブ48に収容されてコア46と軸線方向に対向配置された円筒状のプランジャ50と、コア46およびスリーブ48に外挿された円筒状のボビン52と、ボビン52に巻回され、通電により磁気回路を生成する電磁コイル54と、電磁コイル54を外方から覆うように設けられ、ヨークとしても機能する円筒状のケース56と、ケース56の下端開口部を封止するように設けられた端部部材58とを備える。なお、本実施形態においては、ボディ5、コア46、ケース56および端部部材58が制御弁1全体のボディを形成している。
【0024】
弁本体2とソレノイド3とは、ボディ5の下端部がコア46の上端開口部に圧入されることにより固定されている。コア46は、その上半部が拡径されており、ボディ5との間に吸入圧力Psを満たすための圧力室28を形成する。コア46の中央を軸線方向に貫通するように、作動ロッド38が挿通されている。作動ロッド38の下端部がプランジャ50の上半部に挿通されることにより、作動ロッド38とプランジャ50とが同軸状に接続されている。作動ロッド38は、プランジャ50により下方から支持され、主弁体30、副弁体36およびパワーエレメント6と作動連結可能に構成されている。作動ロッド38は、コア46とプランジャ50との吸引力であるソレノイド力を、一方で副弁体36に直接伝達し、他方でスプリング42を介して主弁体30に伝達する。作動ロッド38は、また、パワーエレメント6の伸縮動作による反力、つまりソレノイド力に対抗する力をプランジャ50に伝達する。なお、本実施形態では、スプリング44の付勢力が副弁体36を介して作動ロッド38に伝達され、それにより作動ロッド38がプランジャ50に押しつけられるため、作動ロッド38とプランジャ50との接続状態が安定に維持される。
【0025】
コア46の上端部にはリング状の軸支部材60が圧入されており、作動ロッド38は、その軸支部材60によって軸線方向に摺動可能に支持されている。軸支部材60の外周面の所定箇所には、軸線に平行な図示しない連通溝が形成されている。ポート16から導入出される吸入圧力Psは、その連通溝、作動ロッド38とコア46との間隙により形成される連通路62を通ってスリーブ48の内部にも導かれる。
【0026】
連通路62は、スリーブ48内をオイルダンパ室とするためのオリフィスとして機能する。すなわち、本実施形態では、制御弁1の製造工程において、圧縮機の潤滑用として冷媒に含まれるオイルと同種のオイルを予めスリーブ48内に入れておく。本実施形態では、軸支部材60に設けられた連通溝が、スリーブ48へのオイルの出入りに対して抵抗となる絞り通路として機能する。このような構成により、スリーブ48をオイルダンパ室として機能させることができ、そのスリーブ48に配置されたプランジャ50の微小振動などが抑制される。その結果、そのような微小振動による騒音の発生が防止または抑制される。なお、変形例においては、連通路62が、スリーブ48へのオイルの出入りに対して抵抗となる絞り通路として機能するようにしてもよい。すなわち、軸支部材60に設けられた連通溝および連通路62の少なくとも一方が、絞り通路として機能するようにすればよい。なお、スプリング44が、コア46とプランジャ50とを両者を互いに離間させる方向に付勢するオフばねとして機能する。スプリング44のばね荷重は、スプリング42のばね荷重よりも大きく設定されている。
【0027】
スリーブ48は非磁性材料からなる。プランジャ50の側面には軸線に平行な複数の連通溝66が設けられ、プランジャ50の下端面には半径方向に延びて内外を連通する複数の連通溝68が設けられている。このような構成により、図示のようにプランジャ50が下死点に位置しても、吸入圧力Psがプランジャ50とスリーブ48との間隙を通って背圧室70に導かれるようになっている。
【0028】
ボビン52からは電磁コイル54につながる一対の接続端子72が延出し、それぞれ端部部材58を貫通して外部に引き出されている。同図には説明の便宜上、その一対の片方のみが表示されている。端部部材58は、ケース56に内包されるソレノイド3内の構造物全体を下方から封止するように取り付けられている。端部部材58は、耐食性を有する樹脂材のモールド成形(射出成形)により形成され、その樹脂材がケース56と電磁コイル54との間隙にも満たされている。このように樹脂材がケース56と電磁コイル54との間隙に樹脂材を満たすことで、電磁コイル54で発生した熱をケース56に伝達しやすくし、その放熱性能を高めている。端部部材58からは接続端子72の先端部が引き出されており、図示しない外部電源に接続される。
【0029】
図2は、図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
主弁体30のガイド孔24との摺動面には、冷媒の流通を抑制するための複数の環状溝からなるラビリンスシール74が設けられている。主弁体30の下端開口部は内径がやや縮径されており、その縮径部の下端面が作動ロッド38と適宜係合連結可能な作動面76(「被係合部」として機能する)を構成する。作動ロッド38は、上方に向かって段階的に縮径する段付円柱状をなし、作動面76の近傍に設けられた第1の段差により係合部78が構成される。また、副弁座34の近傍に設けられた第2の段差により支持部80(「押圧部」として機能する)が構成される。
【0030】
副弁体36の中央には、軸線方向の貫通孔が形成されており、作動ロッド38の上端部を貫通させている。副弁体36は、その下端面中央が平坦に形成され、支持部80に当接するようにして下方から支持されている。副弁体36は、その下端面中央よりも外側に上方に向かって断面が大きくなるテーパ形状を有し、そのテーパ面にて副弁座34に着脱する。作動ロッド38は、図示のように副弁体36が副弁座34に着座した状態においては、係合部78が作動面76から所定間隔Lをあけて離間するように各段差の位置が設定されている。この所定間隔Lは、いわゆる「遊び」として機能する。
【0031】
ソレノイド力を大きくすると、スプリング42の付勢力に抗して作動ロッド38を主弁体30に対して相対変位させ、それにより副弁体36を副弁座34からリフトさせて副弁を開くことができる。また、係合部78と作動面76とを係合(当接)させた状態でソレノイド力を主弁体30に直接伝達することができ、スプリング42の付勢力よりも大きな力で主弁体30を主弁の閉弁方向に押圧することができる。この構成は、主弁体30とガイド孔24との摺動部への異物の噛み込みにより主弁体30がロックした場合に、それを解除するロック解除機構(連動機構)として機能することができる。なお、本実施形態では、主弁体30に「被係合部」としての作動面76を設け、作動ロッド38の係合部78が作動面76に面接触してこれを押圧する構成としたが、係合部78と被係合部との当接状態は面接触に限らず、線接触でも点接触でもよく、両者の係合によりソレノイド力が主弁体30に直接伝達できればよい。
【0032】
作動ロッド38の中間部には止輪82が嵌合され、その止輪82によって下方への移動が規制されるようにばね受け部材40が設けられている。パワーエレメント6は、ベローズ45の上端開口部を第1ストッパ84(「ベース部材」に該当する)により閉止し、下端開口部を第2ストッパ86(「ベース部材」に該当する)により閉止して構成されている。ベローズ45の内部は密閉された基準圧力室Sとなっており、第1ストッパ84と第2ストッパ86との間に、ベローズ45を伸長方向に付勢するスプリング88が介装されている。基準圧力室Sは、本実施形態では真空状態とされている。第1ストッパ84は、端部部材13と一体成形されている。したがって、第1ストッパ84は、ボディ5に対して固定された状態となる。
【0033】
一方、第2ストッパ86の下面中央には、軸線方向に沿った所定深さの嵌合溝90が設けられ、作動ロッド38の上端部が着脱可能に連結される。嵌合溝90は、その平坦な底面92にて作動ロッド38の上端面と当接する。嵌合溝90は、底面92から下方に向けて内径が拡大されるテーパ形状を有するため、作動ロッド38の上端部は嵌合溝90に対して摺動はしない。作動ロッド38は、その上端面が第2ストッパ86に係止された状態でパワーエレメント6と一体に変位可能であり、その上端面が第2ストッパ86から離間した状態でパワーエレメント6と相対変位可能となっている。
【0034】
スプリング88が第1ストッパ84と第2ストッパ86とを互いに離間させる方向に付勢するため、ベローズ45は、作動室22のクランク圧力Pcと基準圧力室Sの基準圧力との差圧に応じて軸線方向(主弁および副弁の開閉方向)に伸長または収縮する。ただし、その差圧が大きくなってもベローズ45が所定量収縮すると、第1ストッパ84と第2ストッパ86の互いの先端面が当接して係止されるため、その収縮は規制される。
【0035】
以上の構成において、主弁体30と主弁座20とにより主弁が構成され、その主弁の開度によって吐出室からクランク室へ導入される冷媒流量が調整される。また、副弁体36と副弁座34とにより副弁が構成され、その副弁の開閉によりクランク室から吸入室への冷媒の導出が許容または遮断される。すなわち、制御弁1は、主弁と副弁のいずれか一方を開弁させることにより冷媒の流れを切り替える三方弁としても機能する。
【0036】
本実施形態においては、ベローズ45の有効受圧径Aと、主弁体30の主弁における有効受圧径Bと、主弁体30の摺動部の有効受圧径Cとが等しく設定されている。このため、主弁体30とパワーエレメント6とが作動連結した状態においては、主弁体30に作用する吐出圧力Pdおよびクランク圧力Pcの影響が実質的にキャンセルされる。その結果、主弁の制御状態において、主弁体30は、圧力室28にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁1は、いわゆるPs感知弁として機能する。
【0037】
このような構成において、制御弁1の安定した制御状態においては、圧力室28の吸入圧力Psが所定の設定圧力Psetとなるよう主弁が自律的に動作する。この設定圧力Psetは、基本的にはスプリング42,44,88のばね荷重によって予め調整され、蒸発器内の温度と吸入圧力Psとの関係から、蒸発器の凍結を防止できる圧力値として設定される。設定圧力Psetは、ソレノイド3への供給電流(設定電流)を変えることにより変化させることができる。本実施形態では、制御弁1の組み付けが概ね完了した状態で端部部材13の圧入量を再調整することで、スプリングの設定荷重を微調整することができ、設定圧力Psetを正確に調整することができる。
【0038】
次に、制御弁の動作について説明する。
図3および図4は、制御弁の動作を表す図であり、図2に対応する。既に説明した図2は、制御弁の最小容量運転状態を示している。図3は、制御弁のブリード機能を動作させたときの状態を示している。図4は、比較的安定した制御状態を示している。以下においては、図1に基づき、適宜図2図4を参照しつつ説明する。
【0039】
制御弁1においてソレノイド3が非通電のとき、つまり自動車用空調装置が動作していないときには、コア46とプランジャ50との間に吸引力が作用しない。一方、吸入圧力Psは比較的高い状態にある。このため、図2に示すように、ベローズ45が縮小した状態でスプリング44の付勢力が副弁体36を介して主弁体30に伝達される。その結果、主弁体30が主弁座20から離間して主弁が全開状態となる。このとき、副弁体36は副弁座34に着座しているため、副弁は閉弁状態となる。パワーエレメント6は実質的に機能しない。
【0040】
一方、自動車用空調装置の起動時など、ソレノイド3の電磁コイル54に制御電流が供給されると、図3に示すように、ソレノイド力により作動ロッド38が駆動される。このソレノイド力は、一方でスプリング42を介して主弁体30に伝達され、他方で作動ロッド38により副弁体36に直接伝達される。その結果、主弁体30が主弁座20に着座して主弁を閉じ、その主弁の閉弁とともに副弁体36が副弁座34から離間して副弁を開弁させる。ただし、係合部78が作動面76に係止されることにより作動ロッド38の変位が規制されるため、副弁体36のリフト量(つまり副弁の開度)は、図2に示した所定間隔Lに一致する。一方、起動時は通常、吸入圧力Psが比較的高いため、ベローズ45が縮小状態を維持し、副弁の開弁状態が維持される。すなわち、ソレノイド3に起動電流が供給されると、主弁が閉じてクランク室への吐出冷媒の導入を規制すると同時に副弁が直ちに開いてクランク室内の冷媒を吸入室に速やかにリリーフさせる。その結果、圧縮機を速やかに起動させることができる。また、例えば車両が低温環境下におかれた場合のように、吸入圧力Psが低く、ベローズ45が伸長した状態においても、ソレノイド3に大きな電流を供給することで副弁を開弁させることができ、圧縮機を速やかに起動させることができる。
【0041】
そして、ソレノイド3に供給される電流値が所定値に設定された制御状態にあるときには、図4に示すように、吸入圧力Psが比較的低いためにベローズ45が伸長し、副弁体36が副弁座34に着座して副弁を閉弁させる。一方、そのように副弁が閉じられた状態で主弁体30が動作して主弁の開度を調整する。このとき、主弁体30は、スプリング44による開弁方向の力と、スプリング42による閉弁方向の力と、ソレノイド3による閉弁方向のソレノイド力と、吸入圧力Psに応じて動作するパワーエレメント6によるソレノイド力に対抗する力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。
【0042】
そして、たとえば冷凍負荷が大きくなり吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも高くなると、ベローズ45が縮小するため、主弁体30が相対的に上方(閉弁方向)へ変位する。その結果、主弁の弁開度が小さくなり、圧縮機は吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下する方向に変化する。逆に、冷凍負荷が小さくなって吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも低くなると、ベローズ45が伸長する。その結果、パワーエレメント6による付勢力がソレノイド力に対抗する方向に作用する。この結果、主弁体30への閉弁方向の力が低減されて主弁の弁開度が大きくなり、圧縮機は吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが設定圧力Psetに維持される。
【0043】
このような定常制御が行われている間にエンジンの負荷が大きくなり、空調装置への負荷を低減させたい場合、制御弁1においてソレノイド3がオンからオフに切り替えられる。そうすると、コア46とプランジャ50との間に吸引力が作用しなくなるため、ベローズ45が伸長し、スプリング44の付勢力により主弁体30が主弁座20から離間し、主弁が全開状態となる。このとき、副弁体36は副弁座34に着座しているため、副弁は閉弁状態となる。このとき、圧縮機の吐出室からポート14に導入された吐出圧力Pdの冷媒は、全開状態の主弁を通過し、ポート12からクランク室へと流れることになる。したがって、クランク圧力Pcが高くなり、圧縮機は最小容量運転を行うようになる。
【0044】
特に、このようにソレノイド3がオンからオフに切り替えられる際、ポート14から冷媒とともに侵入した異物が、主弁体30の開弁動作に合わせて主弁体30とガイド孔24との摺動部に引き込まれやすくなる。ソレノイド3のオフ直後はポート14とポート16との間の差圧(Pd−Ps)が比較的大きく、また、ガイド孔24の高圧側開口端に堆積した異物を主弁体30がその摺動部に引き込む方向に動作するからである。そして、再びソレノイド3をオフからオンに切り替えることにより主弁体30が閉弁方向に変位しようとした際に、その異物の噛み込みによるロックが発生する可能性がある。本実施形態では、このようなロックが発生した場合であっても、それを解除可能な連動機構(ロック解除機構)を提供する。
【0045】
なお、副弁体36は、スプリング44による閉弁方向の力と、スプリング42による開弁方向の力と、ソレノイド3による開弁方向のソレノイド力と、吸入圧力Psに応じて動作するパワーエレメント6によるソレノイド力に対抗する力とのバランスにより開閉状態が決まり、起動時以外等で所定の吸入圧力Ps値よりも低いときは副弁を閉弁するようにそれらのバランスが設定されている。このため、副弁が開弁するときの吸入圧力Psの設定値(開弁設定値)を、ソレノイド3へ供給する電流値によって設定変更することができる。すなわち、本実施形態の連動機構によれば、副弁の開弁設定値をソレノイド3への供給電流により変化させることが可能であるとともに、そのソレノイド力により主弁体30のロックを解除することができる。
【0046】
すなわち、ポート14から導入される吐出冷媒には金属粉等の異物が含まれることがあり、その異物が主弁体30とガイド孔24との摺動部に侵入して主弁体30の円滑な動作を妨げ、最悪の場合には主弁体30の作動をロックしてしまうことが懸念される。ポート14とポート16との間に比較的大きな差圧(Pd−Ps)があるために、ポート14から侵入した異物がガイド孔24の開口部に引き寄せられやすく、圧縮機がオンからオフに切り替えられると、主弁体30が全開状態へ向けて大きく変位するときに、その異物が摺動部に引き込まれやすくなるためである。
【0047】
このようにして、主弁の全開時に異物が摺動部に堆積して固着すると、圧縮機を再びオンにしたときに主弁体30とガイド孔24との間にその異物が噛み込み、主弁体30の動作をロックしてしまう虞がある。この場合、仮にスプリング42のみにより閉弁方向に付勢する構成では、異物を押し出して主弁体30を閉弁方向へ動作させるだけの駆動力が得られない場合がある。そうなると、仮に副弁を開くことができても主弁の開度のほうが大きいため、圧縮機を起動することは困難となる。
【0048】
そこで、本実施形態では、ソレノイド力を作動ロッド38の係合部78を介して主弁体30に直接伝達することによりロックを解除させる。また、このような構成により、定常制御のときに供給される最大電流を上回る電流供給することで、更に大きな荷重を付与してロックを解除することも可能になる。すなわち、主弁体30とガイド孔24との間にその異物が噛み込み、主弁体30の動作をロックした場合には、ソレノイド力により作動ロッド38を主弁の閉弁方向に駆動する。このとき、本来ならば副弁は閉弁状態を維持すべきところ、主弁体30がロックされているために、作動ロッド38が主弁体30に対して相対変位し、副弁体36を副弁座34からリフトさせてしまう。すなわち、副弁は主弁が閉じる前に開弁状態となってしまう。しかし、ここでは作動ロッド38をそのまま駆動し、係合部78を作動面76に突き当て、ソレノイド力を主弁体30に直接付与する。
【0049】
これにより、主弁体30にはスプリング42の付勢力のみならず、大きなソレノイド力が直接付与される。また、このときスプリング42も押し縮められるため、定常制御のために設定された設定荷重よりも大きな付勢力にて主弁体30を押圧するようになる。その結果、摺動部に噛み込んだ異物による主弁体30のロックを解除し、主弁体30を閉弁方向に動作させる過程でその異物を押し出すことも可能となる。このとき押し出された異物は、弁室26に浮遊する。一方、主弁体30のロックを解除できたことで、主弁を閉じることができる。このように主弁体30を主弁の閉弁方向に動作させる過程でロックが解除されると、スプリング42の付勢力により係合部78が作動面76から離間し、副弁が一時的に閉じた状態となる。
【0050】
そして、主弁の閉弁後にさらに作動ロッド38を駆動することで、本来のように副弁を開き、クランク室から吸入室へ冷媒を逃がすことができる。それにより圧縮機が起動し、主弁が開かれると、吐出室からクランク室へ冷媒を供給することができる。このとき、浮遊した異物を冷媒とともに主弁を介して排出することも可能となる。なお、主弁体30に対する異物の固着状況によっては、異物によるロックを破壊することはできても、固着した異物の全てを剥がすことができない場合も想定される。しかし、このようにしてロックを解除できることで、制御弁1の機能を確保することはできる。また、残留した異物についてもソレノイド3のオン・オフを繰り返す過程で徐々に除去されることが期待できる。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態においては、パワーエレメント6とプランジャ50との間に作動ロッド38が介装されることにより、主弁の開弁方向と閉弁方向の駆動力のバランスが調整される。そのような構成において、作動ロッド38が主弁体30および副弁体36を貫通してパワーエレメント6に連結されるため、ソレノイド力を主弁体30および副弁体36のいずれも介することなくパワーエレメント6に対して直接伝達可能となっている。一方、副弁体36は、作動ロッド38に圧入等により固定されてはおらず、作動ロッド38に遊嵌された状態で下方から支持される。このため、副弁体36は作動ロッド38を介して副弁の開弁方向の力は受けるものの、閉弁方向の力は受けない構成となっている。このため、ソレノイド3をオフにした際にスプリング44の付勢力により副弁体36が副弁座34に着座するとしても、その着座に際して作動ロッド38やプランジャ50の重量の影響はない。その結果、副弁の閉弁時における弁部の摩耗や打撃音の発生を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態においては、作動ロッド38が副弁体36およびプランジャ50のいずれにも固定されてはいない。すなわち、副弁の開閉時にはこれらが作動連結されるところ、互いに遊嵌されているため、副弁体36が副弁座34に着座する際に自律的に調心できるだけの余裕ができる。言い換えれば、これらの連結部の寸法精度を緩和することができ、その組立性を向上させることができる。
【0053】
さらに、本実施形態ににおいては、仮に主弁の開弁時におけるガイド孔24への異物の侵入により主弁体30がロックしたとしても、ソレノイド力によるロック解除機構が作動する。なお、定常制御の最大電流を供給してもロックを解除できない場合には、ソレノイド3への追加電流の供給により更に大きなソレノイド力を付与してロックを解除することが可能になる。それにより、作動ロッド38の駆動に伴う付勢力が、主弁体30に対して主弁を閉じる方向(つまりロックを解除する方向)に作用するとともに、副弁体36に対して副弁を開く方向(つまり副弁を機能させる方向)に作用する。すなわち、主弁体30のロックを解除するための機能と、副弁を開閉する機能(副弁の開弁設定値を電流供給値により変化させる機能)とを同時に作動させることができる。その結果、ロックを確実に解除するとともに、副弁を開いて圧縮機を正常に起動させることができる。
【0054】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。本実施形態の制御弁は、感圧部の構成や主弁体の支持構造が第1実施形態と異なる。このため、以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0055】
制御弁201は、パワーエレメント206が感圧部材としてベローズではなく、ダイヤフラムを備える点で第1実施形態とは異なる。制御弁201は、弁本体202とソレノイド203とを一体に組み付けて構成される。本実施形態においても、ボディ205、コア46、ケース56および端部部材58が制御弁201全体のボディを形成している。
【0056】
パワーエレメント206は、ボディ205の上端開口部に固定された中空のハウジング210と、ハウジング210内を密閉空間S1と開放空間S2とに仕切るように配設された薄膜状のダイヤフラム245を含んで構成される。開放空間S2は、作動室22に連通する。ダイヤフラム245は、本実施形態ではポリイミドフィルムからなるが、例えばベリリウム銅やステンレス鋼等の金属薄板からなるものでもよい。
【0057】
ハウジング210は、ともにステンレス等の金属材からなる第1ハウジング212および第2ハウジング214を有する。第1ハウジング212と第2ハウジング214との間を仕切るようにダイヤフラム245が配設されている。ダイヤフラム245の密閉空間S1側の面には円板状のディスク216が溶接され、ディスク216と第1ハウジング212との間には、ダイヤフラム245を下方(主弁の開弁方向)に付勢するスプリング88が介装されている。また、ダイヤフラム245の開放空間S2側の面にも有底円筒状のディスク218が溶接され、その下面中央に設けられた嵌合溝90にて作動ロッド238と作動連結可能となっている。
【0058】
ダイヤフラム245は、作動室22のクランク圧力Pcと密閉空間S1(基準圧力室)の基準圧力との差圧に応じて軸線方向(主弁および副弁の開閉方向)に変形する。ただし、その差圧が大きくなってもダイヤフラム245が所定量上方へ変位すると、ディスク216が第1ハウジング212に係止されるため、その変位は規制される。
【0059】
また、スプリング42を作動ロッド238により直接支持するのではなく、主弁体30とソレノイド3との間に介装している。具体的には、コア46の上端部に圧入された軸支部材260と主弁体30との間にスプリング42を介装している。
【0060】
以上の構成において、ダイヤフラム245の有効受圧径Aと、主弁体30の主弁における有効受圧径Bと、主弁体30の摺動部の有効受圧径Cとが等しく設定されている。このため、主弁体30とパワーエレメント206とが作動連結した状態においては、主弁体30に作用する吐出圧力Pdおよびクランク圧力Pcの影響が実質的にキャンセルされる。その結果、主弁の制御状態において、主弁体30は、圧力室28にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁201は、いわゆるPs感知弁として機能する。
【0061】
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。本実施形態の制御弁は、感圧部の受圧構造が第1実施形態と異なる。このため、以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0062】
制御弁301は、Ps感知弁として構成されるが、パワーエレメント6がクランク圧力Pcではなく、吸入圧力Psを直接感知している点で第1実施形態とは異なる。制御弁301は、弁本体302とソレノイド3とを一体に組み付けて構成される。なお、本実施形態においても、ボディ305、コア46、ケース56および端部部材58が制御弁301全体のボディを形成している。
【0063】
ボディ305には、その上部に設けられた区画壁306により作動室322が区画されている。作動室322にはパワーエレメント6が収容されている。区画壁306の中央には挿通孔308が設けられている。作動ロッド38は、その上端部が挿通孔308を摺動可能に貫通し、パワーエレメント6と作動連結可能とされている。ポート12は、区画壁306の下方に設けられている。スプリング44は、区画壁306と副弁体36との間に介装されている。また、ボディ305には、作動室322と圧力室28とを連通する連通路310が設けられている。圧力室28の吸入圧力Psは、この連通路310を介して作動室322にも導入される。
【0064】
本実施形態においては、主弁体30の主弁における有効受圧径Bと、主弁体30の摺動部の有効受圧径Cとが等しく設定されている。このため、主弁体30と副弁体36との結合体に作用する吐出圧力Pdの影響はキャンセルされる。パワーエレメント6の配置されている作動室322が吸入圧力Psで満たされるため、制御弁301は、いわゆるPs感知弁として機能する。なお、主弁の制御状態において主弁体30と副弁体36との結合体にはクランク圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧(Pc−Ps)が作用するため、特に吐出圧力Pdが低い場合の主弁の開弁感度が高くなる。
【0065】
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。本実施形態の制御弁は、感圧部の構成や主弁体の支持構造が第3実施形態と異なる。このため、以下では第3実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第2,3実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0066】
制御弁401は、第2実施形態と同様にダイヤフラムを感圧部材とするパワーエレメント206を備える。制御弁401は、パワーエレメント206が吸入圧力Psを直接感知して動作するPs感知弁として構成される。制御弁401は、弁本体402とソレノイド403とを一体に組み付けて構成される。本実施形態においても、ボディ405、コア446、ケース56および端部部材58が制御弁401全体のボディを形成している。
【0067】
ボディ405は、その上端開口部がパワーエレメント206により封止され、そのパワーエレメント206と区画壁306との間に作動室322が区画形成されている。圧力室28の吸入圧力Psは、連通路310を介して作動室322にも導入される。コア446の上端部には、第3実施形態のような軸支部材60は設けられていない。スプリング42は、主弁体30とコア446との間に介装されている。
【0068】
以上の構成において、第3実施形態と同様に、主弁体30の主弁における有効受圧径Bと、主弁体30の摺動部の有効受圧径Cとが等しく設定されている。このため、主弁体30と副弁体36との結合体に作用する吐出圧力Pdの影響はキャンセルされる。パワーエレメント206の配置されている作動室322が吸入圧力Psで満たされるため、制御弁401は、いわゆるPs感知弁として機能する。
【0069】
[第5実施形態]
図8は、第5実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。本実施形態の制御弁は、感圧部や各弁体の構成が第1実施形態と異なる。このため、以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0070】
制御弁501は、弁本体502とソレノイド3とを一体に組み付けて構成される。本実施形態においても、ボディ505、コア46、ケース56および端部部材58が制御弁501全体のボディを形成している。ポート12は、ボディ505の上端開口部に設けられている。ボディ505の上端開口部には端部部材513が固定されている。端部部材513の外周面に設けられた複数の連通溝15と、端部部材513の中央に設けられた連通孔515を介して冷媒が導入又は導出される。
【0071】
ポート12と主弁孔18との間には、クランク圧力Pcが満たされる作動室522が形成される。パワーエレメント506は、作動室522に配置される。ポート14には環状のストレーナ17が取り付けられている。ストレーナ17は、ボディ505の内部への異物の侵入を抑制するためのフィルタを含む。一方、ポート12には有底円筒状のストレーナ11が取り付けられている。ストレーナ11は、ボディ505の内部への異物の侵入を抑制するためのフィルタを含む。
【0072】
主弁孔18の作動室522とは反対側には弁室26が設けられ、ポート14と連通している。弁室26の主弁孔18とは反対側には、主弁孔18と同軸状にガイド孔24が形成されている。ポート16は、ガイド孔24の軸線方向中間部において内外を連通するように設けられている。ガイド孔24の弁室26とは反対側には圧力室28が形成されている。主弁体530の軸線方向中間部には隔壁576が設けられている。隔壁576は、その下面にて作動ロッド538の係合部78と適宜係合連結可能な「被係合部」として機能する。作動ロッド538は、上方に向かって段階的に縮径する段付円柱状をなし、隔壁576の中央に設けられた挿通孔を貫通する。隔壁576の挿通孔の周囲には、冷媒を通過させるための複数の連通孔532が形成されている。ポート16は、この連通孔532を介して主弁体530の内部通路535および圧力室28に連通する。スプリング42は、隔壁576と軸支部材60との間に介装されている。
【0073】
副弁体536は、段付円筒状をなし、パワーエレメント506に一体に設けられている。パワーエレメント506は、ベローズ45の上端開口部を第1ストッパ584により閉止し、下端開口部を第2ストッパ586により閉止して構成されている。第1ストッパ584は、断面T字状をなし、ボディ505に摺動可能に支持される大径部590と、ベローズ45内で軸芯を構成する小径部592を有する。大径部590の外周面には、冷媒と流通させるための複数の連通溝594が設けられている。すなわち、本実施形態においては、パワーエレメント506がボディ505に固定されておらず、軸線方向に変位可能とされている。端部部材513と第1ストッパ584との間には、パワーエレメント506を下方(主弁の開弁方向であって副弁の閉弁方向)に付勢するスプリング596(「付勢部材」として機能する)が介装されている。なお、スプリング596は、コア46とプランジャ50とを両者を互いに離間させる方向に付勢するオフばねとして機能する。スプリング596のばね荷重は、スプリング42のばね荷重よりも大きく設定されている。
【0074】
第2ストッパ586は、有底円筒状をなし、その底部にてベローズ45の下端開口部を閉止している。第2ストッパ586には、内外を連通させるT字状の連通路539が形成されている。副弁体536は、第2ストッパ586の下半部に圧入固定されている。これにより、副弁体536がベローズ45と一体動作するように構成されている。副弁体536の内方には挿通孔540が設けられ、作動ロッド538の上端部がこれを摺動可能に貫通している。作動ロッド538の上端はR形状に形成されており、第2ストッパ586の底部中央に着脱可能に当接する。このような構成により、第2ストッパ586の内部にはクランク圧力Pcが満たされるようになる。すなわち、作動ロッド538の上端部は、クランク圧力Pcを受圧するようになる。なお、作動ロッド538は、副弁体536が副弁座34に着座した状態においては、係合部78が隔壁576から所定間隔Lをあけて離間するように係合部78の位置が設定されている。この所定間隔Lは、いわゆる「遊び」として機能する。
【0075】
以上の構成において、ベローズ45の有効受圧径Aと、主弁体530の主弁における有効受圧径Bと、主弁体530の摺動部の有効受圧径Cとが等しく設定されている。このような構成において、主弁体530とパワーエレメント506とが作動連結した主弁の制御状態においては、ソレノイド力によりパワーエレメント506が端部部材513に押しつけられ、パワーエレメント506が実質的にボディ505に固定された状態となる。このとき、主弁体530に作用する吐出圧力Pdおよびクランク圧力Pcの影響が実質的にキャンセルされる。その結果、主弁の制御状態において、主弁体30は、圧力室28にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁501は、いわゆるPs感知弁として機能する。
【0076】
[第6実施形態]
図9は、第6実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。図10は、図9の上半部に対応する部分拡大断面図である。本実施形態の制御弁は、感圧部や弁体の支持構造が第5実施形態と若干異なる。このため、以下では第5実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第5実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0077】
図9に示すように、制御弁601は、弁本体602とソレノイド603とを一体に組み付けて構成される。本実施形態においても、ボディ605、コア646、ケース56および端部部材58が制御弁601全体のボディを形成している。本実施形態においては、ボディ605の上端開口部に端部部材613が固定されており、パワーエレメント606がその端部部材613に固定されている。一方、ソレノイド603におけるプランジャ50とコア646との間には、プランジャ50をコア646から離間する方向に付勢するスプリング47(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0078】
図10に示すように、パワーエレメント606の第1ストッパ684は、端部部材613に一体成形されている。主弁体630は、その下端開口部がコア646の上端面に着脱することにより、その内部通路635と圧力室28との連通状態が遮断又は開放される。すなわち、主弁体630の下端開口部とコア646の上端面とにより、内部通路635を開閉する「遮断弁部」が構成される。
【0079】
一方、作動ロッド538の上端部に円筒状の係止部材612が圧入されており、係合部78と係止部材612とにより隔壁576の相対的な移動範囲が規制される。同図には、隔壁576が係止部材612に当接し、主弁体630が作動ロッド638に対して相対的に上死点に位置した状態が示されている。
【0080】
このような構成により、ソレノイド603が非通電のときには、スプリング47の付勢力により作動ロッド538が押し下げられるが、その際、係止部材612が隔壁576に当接して主弁体630を開弁方向に付勢する。その結果、図示のように、主弁が全開状態となるとともに遮断弁部が閉弁状態となる。なお、このとき遮断弁部が確実に閉弁するように、本実施形態においてはソレノイド603がオフとなっても、プランジャ50の下面とスリーブ48の底面との間に間隙が形成されるような寸法構成とされている。
【0081】
また、このとき副弁体536はパワーエレメント606とともに主弁体630から離間して副弁が開放される。その結果、クランク圧力Pcが主弁体630の内部通路635に導入される。これにより、主弁体630および副弁体636に作用するクランク圧力Pcの影響がキャンセルされる。これにより、弁体には差圧(Pc−Ps)が作用しなくなるため、次にソレノイド3へ通電したときには主弁体630を小さなソレノイド力で閉弁方向に駆動することができる。
【0082】
以上の構成において、ベローズ45の有効受圧径Aと、主弁体630の主弁における有効受圧径Bと、主弁体630の摺動部の有効受圧径Cとが等しく設定されている。このため、主弁体630に作用する吐出圧力Pdおよびクランク圧力Pcの影響が実質的にキャンセルされる。その結果、主弁の制御状態において、主弁体630は、圧力室28にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁601は、いわゆるPs感知弁として機能する。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0084】
上記各実施形態では、制御弁として、吸入圧力Psを感知して動作するいわゆるPs感知弁を示したが、クランク圧力Pcを感知して動作するいわゆるPc感知弁として構成してもよい。その場合、ポート16をクランク室に連通させるようにする。
【0085】
上記各実施形態では、クランク室に連通するクランク室連通ポート(導入出ポート)として、単一のポート12を設ける例を示した。変形例においては、クランク室連通ポートを、作動室22,322,522の冷媒をクランク室へ導出する第1ポート(導出ポート)と、クランク室の冷媒を作動室22,322,522へ導入する第2ポート(導入ポート)とに分けて構成してもよい。
【0086】
上記実施形態では、スプリング42,44,47,88等に関し、付勢部材としてスプリング(コイルスプリング)を例示したが、ゴムや樹脂等の弾性材料、あるいは板ばね等の弾性機構を採用してもよいことは言うまでもない。
【0087】
上記実施形態では可変容量圧縮機用制御弁を例示したが、例えば他の形態の三方弁など、共用のボディに主弁と副弁とが設けられ、単一のソレノイドにより駆動される複合弁であれば、同様の実施形態を適用することができる。
【0088】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 制御弁、 2 弁本体、 3 ソレノイド、 5 ボディ、 6 パワーエレメント、 12,14,16 ポート、 20 主弁座、 22 作動室、 24 ガイド孔、 26 弁室、 28 圧力室、 30 主弁体、 34 副弁座、 36 副弁体、 38 作動ロッド、 42,44 スプリング、 45 ベローズ、 50 プランジャ、 76 作動面、 78 係合部、 238 作動ロッド、 201 制御弁、 202 弁本体、 203 ソレノイド、 205 ボディ、 206 パワーエレメント、 222 圧力室、 230 主弁体、 236 副弁体、 245 ダイヤフラム、 301 制御弁、 302 弁本体、 305 ボディ、 322 作動室、 401 制御弁、 402 弁本体、 403 ソレノイド、 405 ボディ、 501 制御弁、 502 弁本体、 505 ボディ、 506 パワーエレメント、 522 作動室、 530 主弁体、 535 内部通路、 536 副弁体、 538 作動ロッド、 601 制御弁、 602 弁本体、 603 ソレノイド、 605 ボディ、 606 パワーエレメント、 630 主弁体、 635 内部通路、 636 副弁体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10