(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064130
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】建物補強機能を具えた貯水槽
(51)【国際特許分類】
E03B 3/03 20060101AFI20170116BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
E03B3/03 B
E04H9/02 301
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-218908(P2012-218908)
(22)【出願日】2012年9月29日
(65)【公開番号】特開2014-70446(P2014-70446A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0096390(US,A1)
【文献】
特開2004−211520(JP,A)
【文献】
特開2004−239038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 3/03
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施対象建物(M)の隅角部に当てることに依って補強用コーナー材として機能とする形状を具えかつ内部を貯水用空洞とされ、雨水取り込み用部(1)と雨水排出用部(3)を具備した補強材兼用貯水槽単体(A)を互いに連結するための緊締材(5)の取付け用たる適宜固定用金具を各補強材兼用貯水槽単体(A)に設けて成る建物補強機能を具えた貯水槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば雨水を貯めてくための貯水槽としての機能と、建物に対する耐震性付与を成すための補強材として機能とを具えた貯水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の例えば雨水の貯水用槽としては、雨水の濾過機能具えたもの(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)、または、貯水性の向上化を図ったもの(例えば、特許文献3参照。)がある。 すなわち、従来の貯水槽は貯えられた雨水の利用性の向上化を図ったもの、或いは雨水の貯水性の良化を図ったもの等、雨水に関する合理的使用、或いは収集性の良化等、雨水貯水用槽としての使用上の至便化及び向上化を図ったものに限定され、貯水とは全く別個の目的を兼備するように構成したものは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−084939号公報
【特許文献2】特開2007−262708号公報
【特許文献3】特開2002−371597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
築30年以上の殆どの建物は、耐震性に対する配慮が全くなされていないのが実情である。 そして、このような建物に対して耐震工事を施す場合、多額な費用が掛かってしまうこととなる。
【0005】
またこのような建物の場合、地震発生時には主として1階部分が崩れてしまうことが判明している。 本発明はこのような事実に着眼し、省エネ的生活すなわち、省資源的生活の実行のための例えば雨水利用の実践と、当該実践のための貯水槽を、建物に対する耐震性付与用部材としての役割を兼備させるようにし、これに依って低コストでの建物の耐震付与目的の達成化が図られるようにした新規の製品の提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は請求項1に記載のように、実施対象建物Mの隅角部に当てることに依って補強用コーナー材として機能とする形状を具えかつ内部を貯水用空洞とする補強材兼用貯水槽単体Aから成り、当該補強材兼用貯水槽単体には、雨水取り込み部1と、雨水排出用部3を形成して成る建物補強機能を具えた貯水槽に係る。
【0007】
本発明は請求項2に記載のように、建物Mの四隅にコーナー材として位置させた各補強材兼用貯水槽単体Aを互いに連結するための緊締材5の取付け用たる適宜固定用金具を各補強材兼用貯水槽単体Aに設けて成る請求項1に記載の建物補強機能を具えた貯水槽を実施の対象とする。
【0008】
本発明は請求項3に記載のように、補強材兼用貯水槽単体Aの高さを、対象建物のほぼ一階部分を覆う程度の高さとするようにした請求項1または請求項2の何れかに記載の建物補強機能を具えた貯水槽を実施の対象とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は請求項1に記載のような構成、すなわち、実施対象建物Mの隅角部に当てることに依って補強用コーナー材として機能とする形状を具えかつ内部を貯水用空洞とする補強材兼用貯水槽単体Aから成り、当該補強材兼用貯水槽単体Aには、雨水取り込み部1と雨水排出用部3を形成するように構成したから、実施対象建物Mはその隅角部に対する補強材兼用貯水槽単体Aによるコーナー的補強効果に基づき、卓越した耐震効果を得ることが出来る。 そして、このような補強を対象建物Mの四隅に施すことに依り、その耐震的効果はより一層高められる。 更に、例えば内部に貯えられた雨水が、その粘性によって地震時のエネルギーを吸収し、揺れを小さくすることができるため、所謂免震的な作用を奏することとなる。
【0010】
また、本発明における補強材兼用貯水槽単体Aの主たる目的は雨水を貯めて省資源的な役割を果たすものであり、本来下水に流してしまう雨水の有効利用が図られる。 同時に、補強材兼用貯水槽単体Aに雨水が溜まることに依って、補強材兼用貯水槽単体Aに対する重量性の増強化が図られ、その堅牢性の向上化(凹み的変形に対する強い耐性)を発揮し、建物Mに対する補強性をより一層高めることが出来る。
【0011】
更に、例えば四隅にある補強材兼用貯水槽単体Aの一部を、雨水ではなく真水を貯えておくことに依り、地震発生時に対応する飲用水確保を図ることもできる。 従って、本発明は防災用器具として利用することもできる。
【0012】
本発明は請求項2に記載のような構成、すなわち、建物Mの四隅にコーナー材として位置させた各補強材兼用貯水槽単体Aを互いに連結するための緊締材5の取付け用たる適宜固定用金具を各補強材兼用貯水槽単体Aに設けることにより、補強材兼用貯水槽単体A
よる補強効果は、単なる当材としての補強以外、四隅に位置する各補強材兼用貯水槽単体A結束的緊締圧着力として作用するための、その補強効果はより一層高められる。更に、例えば内部に貯えられた雨水が、その粘性によって地震時のエネルギーを吸収し、揺れを小さくすることができるため、所謂免震的な作用を奏することとなる。
【0013】
本発明は請求項3に記載のような構成、すなわち、補強材兼用貯水槽単体Aの高さを、対象建物のほぼ一階部分を覆う程度の高さとすことに依り、地震発生時には主として1階部分が崩れてしまう事実に即応した補強体制を採ることが出来る。
なお、これは理想的な形態であるが、本発明は建物の数階分を一括して補強する程度の高さのものを用いて実施する場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の使用状態を表した説明用正面図である。
【
図2】本発明の使用状態を表した説明用平面図である。
【
図6】本発明の他の実施例において使用するアダプター的貯水槽の一部切欠斜視図である。
【
図7】本発明の他の使用例を表した説明用平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至
図5において。Aは内部を空洞とする補強材兼用貯水槽単体であって、
図1及び
図2に示すように、実施対象建物Mの四隅に接触して補強用コーナー材として機能可能とする形状を有すると共に、その高は建物のほぼ一階部分を覆う程度の高さ(2200mm程度の高さ)を具えたものが好ましい。
【0016】
1は補強材兼用貯水槽単体Aの上面等所要箇所に形成した雨水取り込み部であって、建物の屋根等に取付けた雨樋等を連結することに依り、補強材兼用貯水槽単体A内に対する雨水の取り込みを行うためものである。
【0017】
2は補強材兼用貯水槽単体Aに設けたオバーフロー用ホースであって、当該貯水槽単体A内に溢れるほど雨水が溜まった際に、これを外に逃がすためのものである。 3は当該貯水槽単体Aの下方寄りに取付けた雨水排出用部であって、例えば内蔵雨水による例えば水撒き、トイレ用給水のような外部利用を図るためのものである。
【0018】
4は補強材兼用貯水槽単体Aの所要箇所に固設した取付け固定用金具であって、
図1及び
図2に示すように、建物Mの四隅角部に位置させた補強材兼用貯水槽単体Aの互いに連結して固定化を図るに際して用いる場合、ワイヤーロープ、或いは連結用鉄線材のような緊締材5を引掛けて締着するためのものである。
【0019】
なお、図示の実施例にあって、補強材兼用貯水槽単体Aの外面にテーパ状面としてあるのは、単なるデザイン上の問題であり、これを平坦面としても何ら差し支えは無い。 すなわち、補強材兼用貯水槽単体Aは建物の隅角部外面を覆うものであるから、そのためのデザイン性を加味した適宜な外面に形成することは任意選定事項に属する。
【0020】
本発明は主として
図1及び
図2に示すように、建物Mの四隅に当てると共に、これらをワイヤーロープその他敵機の緊締材5を介して強固に連結する。 そして、図面においては省略してあるが、各補強材兼用貯水槽単体Aの雨水取り込み用部1には雨樋等と連結して雨水を導くような配管を施しておく。
【0021】
この状態において、建物Mは補強材兼用貯水槽単体Aによるコーナー的な補強作用が奏される。 一方、例えば、当該補強材兼用貯水槽単体A内に貯えた雨水は、水撒き、トイレ用給水のような利用を図ることが出来ると同時に、貯え状態にある当該雨水は、補強材兼用貯水槽単体Aに対する重量性の増強化が図られ、その堅牢性の向上化(凹み的変形に対する強い耐性)を発揮し、建物Mに対するより一層強力なる補強性をあげることが出来る。
【0022】
ところで、
図2は戸建の木造建築に対する実施例を表したが、本発明はビル状の建物に対する実施も可能である。 そして、基本的には1階部分に対する補強を対象とするが、ビル状建物の場合は数階を一括して補強するような形態を採ることも可能である。
【0023】
なお、補強材兼用貯水槽単体Aは建物に対して単独で直接的に固定化(ボルト止め等)するような使用形態を採ることもできる。 この場合、建物に対する四隅全体の補強以外、正面側だけ等、任意の隅角部に限定した補強形態を採ることも可能化される。
【0024】
図6は本発明に用いるアダプター的貯水槽Bを表したものであって、
図7に示すように四隅の補強材兼用貯水槽単体Aの所要間隔部に介在させることに依って、補強の強化と雨水等貯水量の増加を図ることが出来る。 本発明はこのような形態で実施する場合もある。
【符号の説明】
【0025】
M 建物
A 補強材兼用貯水槽単体
1 雨水取り込み用部
2 オバーフロー用ホース
3 雨水排出用部
4 固定用金具
5 緊締材
B アダプター的貯水槽