特許第6064133号(P6064133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6064133荷電制御樹脂及び荷電制御樹脂の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064133
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】荷電制御樹脂及び荷電制御樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20170116BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20170116BHJP
   C08F 212/32 20060101ALI20170116BHJP
   C08F 212/04 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   G03G9/08 346
   G03G9/08 381
   C08F212/32
   C08F212/04
【請求項の数】18
【全頁数】115
(21)【出願番号】特願2014-138994(P2014-138994)
(22)【出願日】2014年7月4日
(62)【分割の表示】特願2013-515196(P2013-515196)の分割
【原出願日】2012年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-222356(P2014-222356A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2015年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-111796(P2011-111796)
(32)【優先日】2011年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000103895
【氏名又は名称】オリヱント化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】特許業務法人眞久特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088306
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮 良雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126343
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 浩之
(72)【発明者】
【氏名】安松 雅司
(72)【発明者】
【氏名】井上 香織
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 聡子
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5688624(JP,B2)
【文献】 特開平05−094018(JP,A)
【文献】 特開平04−016858(JP,A)
【文献】 特開2012−062381(JP,A)
【文献】 特開2012−256042(JP,A)
【文献】 特開2012−256044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
C08F 212/32
C07C 69/92
C09K 3/16
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTPatM
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも単量体の1成分となる下記化学式(3)
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立して同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは水素原子であり、gは1〜3の数、hは1〜3の数、Mは水素原子、アルカリ金属、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アンモニウム原子団及びそれらの混合物である)
で示されるスチレン誘導体とビニル基含有単量体とが共重合した荷電制御樹脂を有効成分として含有することを特徴とする荷電制御剤。
【請求項2】
前記化学式(3)中、水酸基が−COOM基に対して、オルト位に結合していることを特徴とする請求項1に記載の荷電制御剤。
【請求項3】
前記ビニル基含有単量体が、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロロスチレンから選ばれるビニル芳香族炭化水素系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸−3−(メチル)ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレートから選ばれる(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルトルエンから選ばれる1官能ビニル基含有単量体;ジビニルベンゼン、ジエチレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる2官能ビニル基含有単量体;少なくとも3個の反応性ビニル基を有する単量体;から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電制御剤。
【請求項4】
前記ビニル基含有単量体が、下記化学式(4)
【化2】
(式中、R、R、Rは、それぞれ同一または異なり、水素原子、炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、ハロゲン原子である)
で示されることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電制御剤。
【請求項5】
前記ビニル基含有単量体が親水性不飽和単量体であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項6】
前記親水性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸(s);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルから選ばれる(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドから選ばれる(メタ)アクリルアミド類;エチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)、プロピル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)、tert−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)から選ばれるアルキル(メタ)アクリルアミドスルホン酸またはそのエステル;スチレンスルホン酸(s)、メタリルスルホン酸(s)、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸イソブチル、イタコン酸、フマル酸から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項に記載の荷電制御剤。
【請求項7】
前記親水性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸(s)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸(s)、スチレンスルホン酸(s)から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項に記載の荷電制御剤。
【請求項8】
前記荷電制御樹脂のガラス転移温度が、70℃から150℃であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項9】
前記荷電制御樹脂が、示差熱熱重量分析において、300℃から400℃で重量減少が測定されることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項10】
前記荷電制御樹脂が、ゲル浸透クロマトグラフィー測定により、数平均分子量(Mn)を5000〜30000、重量平均分子量(Mw)を4000〜300000とすることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項11】
前記荷電制御樹脂が、ゲル浸透クロマトグラフィー測定による分子量分布(Mw/Mn)を1〜15とすることを特徴とする請求項10に記載の荷電制御剤。
【請求項12】
前記荷電制御樹脂が、体積固有抵抗率を0.1×1016〜7.0×1017Ωcmとすることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項13】
下記化学式(3)
【化3】
(式中、Rはそれぞれ独立して同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは水素原子であり、gは1〜3の数、hは1〜3の数、Mは水素原子、アルカリ金属、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アンモニウム原子団及びそれらの混合物である)
で示されるスチレン誘導体である単量体とビニル基含有単量体とを、重合開始剤の存在下で重合反応させて共重合体とし、その共重合体である荷電制御樹脂が有効成分として含まれる荷電制御剤を得る工程を有する荷電制御剤の製造方法。
【請求項14】
前記スチレン誘導体0.1〜9.5mol%と前記ビニル基含有単量体とを、前記重合開始剤の存在下で重合反応させることを特徴とする請求項13に記載の荷電制御剤の製造方法。
【請求項15】
前記ビニル基含有単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロロスチレンから選ばれるビニル芳香族炭化水素系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸−3−(メチル)ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレートから選ばれる(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルトルエンから選ばれる1官能ビニル基含有単量体;ジビニルベンゼン、ジエチレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる2官能ビニル基含有単量体;少なくとも3個の反応性ビニル基を有する単量体;から選ばれる少なくとも一つが、含まれていることを特徴とする請求項13又は14に記載の荷電制御剤の製造方法。
【請求項16】
前記ビニル基含有単量体として、下記化学式(4)
【化4】
(式中、R、R、Rは、それぞれ同一または異なり、水素原子、炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、ハロゲン原子である)
で示される単量体が含まれていることを特徴とする請求項1315の何れかに記載の荷電制御剤の製造方法。
【請求項17】
前記ビニル基含有単量体として、親水性不飽和単量体が含まれていることを特徴とする請求項1316の何れかに記載の荷電制御剤の製造方法。
【請求項18】
前記親水性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸(s);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルから選ばれる(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドから選ばれる(メタ)アクリルアミド類;エチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)、プロピル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)、tert−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)から選ばれるアルキル(メタ)アクリルアミドスルホン酸またはそのエステル;スチレンスルホン酸(s)、メタリルスルホン酸(s)、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸イソブチル、イタコン酸、フマル酸から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項17に記載の荷電制御剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用のトナーや静電粉体塗装用の粉体塗料の荷電制御に用いられ、特定のスチレン誘導体やその単量体から得られる構成単位を有する重合体を有効成分とする荷電制御樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からスチレン系樹脂は、価格と透明性、機械的強度や成形性とのバランスが優れていることから、一般に広く使用され、例えば、家庭電気器具、事務機器、家庭用品、食品容器、包装材料、玩具などに用いられている。またスチレン系樹脂は、一般に、種々の成形法を使用することができ、例えば、射出成形、押出成形、中空成形、真空成形、注入成形などの方法によって成形される。スチレン系樹脂は主として熱重合または開始剤を用いたラジカル重合法により製造されている。主な製造プロセスには塊状重合法及び懸濁重合法があるが、分散剤などの不純物が混入しにくいことや、コスト的に有利なことから塊状重合法が主流となっている。
【0003】
スチレン系樹脂の原料となるスチレンモノマーは、多くの合成樹脂原料としても広く利用され、工業的に重要な単量体である。例えば、電子写真の分野であるトナー用の結着樹脂に用いられる、ポリスチレン;ポリ−p−クロロスチレン;ポリビニルトルエン;スチレン−p−クロロスチレン共重合体;スチレン−ビニルトルエン共重合体;スチレン−ビニルナフタレン共重合体;スチレン−アクリル酸エステル共重合体;スチレン−メタクリル酸エステル共重合体;スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体;スチレン−アクリロニトリル共重合体;スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体;スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体;スチレン−ビニルメチルケトン共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体;スチレン−イソプレン共重合体;スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体;スチレンモノマーと、アクリルアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、エチレン、プロピレン、ブチレン、ビニルメチルエーテル、及びビニルイソブチルエーテルから選ばれる少なくとも何れかのコモノマーとのスチレン系共重合体などが挙げられる。
【0004】
更に電子写真式トナーには、トナーの帯電の立ち上がり速度を速めたり、トナーを十分に帯電させその荷電量を適切に制御しつつ安定化して帯電特性を高めたり、静電潜像の現像速度を早めつつ鮮明な画像を形成したりするため、予めトナーに荷電制御剤が添加される。現在、当該技術分野で知られている荷電制御剤としては、負帯電性荷電制御剤として、モノアゾ染料の金属錯塩、ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、芳香族ジオールの如き金属錯塩、酸成分を含む樹脂が知られている。また、正帯電性荷電制御剤として、ニグロシン染料、アジン染料、トリフェニルメタン系染顔料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩を側鎖に有するポリマーなどが知られている。前記の荷電制御剤は、画像濃度とカブリとのバランスを取り難かったり、高湿環境下で十分な画像濃度を得難かったり、樹脂への分散性が悪かったり、保存安定性、定着性及び耐オフセット性に悪影響を与えたりするという問題があり、それらの改善の余地を有している。
【0005】
このような改善の試みとして、トナー樹脂との相溶性が改善され、荷電制御特性を有する樹脂を静電荷像現像用トナーに用いる取り組みが行われている。例えば、特許文献1には、置換基を有するサリチル酸の縮合物を電荷制御剤として含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。また、特許文献2には、サリチル酸樹脂を少なくとも含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。また、特許文献3には、少なくともスチレン誘導体とカルボキシル基及び水酸基を有するスチレン誘導体とからなる共重合体を含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。また、特許文献4には、カルボキシル基で置換されていてもよいジフェニル基を有するラジカル重合性モノマーを含有する重合性組成物の重合体からなる負帯電性電荷調整剤を含有する負帯電性トナーが記載されている。また、特許文献5には、特定の化学式で表わされるスルホアルキル(メタ)アクリル酸モノマー類の1〜30重量%と、これと共重合可能な他のビニル系モノマーの99〜70重量%とからなる電荷制御剤を、結着剤100重量部に対して0.1〜10重量部含有している電子写真用負帯電トナーが記載されている。また、特許文献6には、ビニル芳香族炭化水素と(メタ)アクリレートとスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドとを共重合して得られる、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドの共重合割合が0.1〜1.8重量%で、重量平均分子量が2,000〜15,000のスルホン酸基含有共重合体である荷電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーが記載されている。
【0006】
近年の複写機やプリンターにおいて、複写機やプリンターの画像の解像度が向上することなどの高性能化や電子写真システムでの高速現像のみならず低速現像などのシステムの拡大が起こっている。更にトナーの帯電の立ち上がりをより良好に調節し、一層優れた帯電特性を発現させ、鮮明で高解像度の画像を形成させることができ、簡便に製造できる荷電制御剤が求められていた。また、構造体表面の電荷に、静電気帯電した粉体塗料を引き付け、焼き付ける静電粉体塗装に使用される粉体塗料にも用いることができる、良好な荷電制御剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−190869号公報
【特許文献2】特開平03−105355号公報
【特許文献3】特開平04−016858号公報
【特許文献4】特開2000−298379号公報
【特許文献5】特開平08−179564号公報
【特許文献6】特開平11−184165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、トナー樹脂に対する相溶性が高く、帯電の立ち上がりが速く、優れた帯電特性を発現させ、簡便に製造できる荷電制御剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた、本発明の荷電制御剤は、少なくとも単量体の1成分となる下記化学式(3)
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立して同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは水素原子であり、gは1〜3の数、hは1〜3の数、Mは水素原子、アルカリ金属、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アンモニウム原子団及びそれらの混合物である)で示されるスチレン誘導体とビニル基含有単量体とが共重合した荷電制御樹脂を有効成分として含有するものである。
【0012】
前記化学式(3)中、水酸基が−COOM基に対して、オルト位に結合していることが好ましい。
【0013】
前記ビニル基含有単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロロスチレンなどのビニル芳香族炭化水素系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸−3−(メチル)ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルトルエンなどの1官能ビニル基含有単量体;ジビニルベンゼン、ジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの2官能ビニル基含有単量体;少なくとも3個の反応性ビニル基を有する単量体が挙げられる。
【0014】
前記ビニル基含有単量体が、下記化学式(4)
【化2】
(式中、R、R、Rは、それぞれ同一または異なり、水素原子、炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、ハロゲン原子である)で示されるものであることが好ましい。
【0015】
前記ビニル基含有単量体が、親水性不飽和単量体であることが好ましい。
【0016】
前記親水性不飽和単量体として、(メタ)アクリル酸(s);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;エチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)、プロピル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)、tert−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)などのアルキル(メタ)アクリルアミドスルホン酸またはそのエステル;スチレンスルホン酸(s)、メタリルスルホン酸(s)、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸イソブチル、イタコン酸、フマル酸が挙げられる。
【0017】
前記親水性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸(s)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸(s)、スチレンスルホン酸(s)から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0018】
前記荷電制御樹脂のガラス転移温度が、70℃から150℃であることが好ましい。
【0019】
前記荷電制御樹脂が、示差熱熱重量分析において、300℃から400℃で重量減少が測定されることが好ましい。
【0020】
前記荷電制御樹脂が、ゲル浸透クロマトグラフィー測定により、数平均分子量(Mn)を5000〜30000、重量平均分子量(Mw)を4000〜300000とすることが好ましい。
【0021】
前記荷電制御樹脂が、ゲル浸透クロマトグラフィー測定による分子量分布(Mw/Mn)を1〜15とすることが好ましい。
【0022】
前記荷電制御樹脂が、体積固有抵抗率を0.1×1016〜7.0×1017Ωcmとすることが好ましい。
【0023】
本発明の荷電制御剤の製造方法は、下記化学式(3)
【化3】
(式中、Rはそれぞれ独立して同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基であり、Rは水素原子であり、gは1〜3の数、hは1〜3の数、Mは水素原子、アルカリ金属、炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アンモニウム原子団及びそれらの混合物である)で示されるスチレン誘導体である単量体とビニル基含有単量体とを、重合開始剤の存在下で重合反応させて共重合体とし、その共重合体である荷電制御樹脂が有効成分として含まれる荷電制御剤を得る工程を有するものである。
【0024】
前記スチレン誘導体0.1〜9.5mol%と前記ビニル基含有単量体とを、前記重合開始剤の存在下で重合反応させることが好ましい。
【0025】
前記ビニル基含有単量体に含まれる単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロロスチレンなどのビニル芳香族炭化水素系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸−3−(メチル)ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルトルエンなどの1官能ビニル基含有単量体;ジビニルベンゼン、ジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの2官能ビニル基含有単量体;少なくとも3個の反応性ビニル基を有する単量体が挙げられる。
【0026】
前記ビニル基含有単量体として、下記化学式(4)
【化4】
(式中、R、R、Rは、それぞれ同一または異なり、水素原子、炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、ハロゲン原子である)で示される単量体が含まれていることが好ましい。
【0027】
前記ビニル基含有単量体として、親水性不飽和単量体が含まれていることが好ましい。
【0028】
前記親水性不飽和単量体として、(メタ)アクリル酸(s);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;エチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)、プロピル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)、tert−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)などのアルキル(メタ)アクリルアミドスルホン酸またはそのエステル;スチレンスルホン酸(s)、メタリルスルホン酸(s)、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸イソブチル、イタコン酸、フマル酸が挙げられる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の荷電制御剤は、荷電制御性が良好で、特に帯電の立ち上がりが速く、負電荷に帯電し均一で、高い荷電量のまま長時間安定して維持できる。そのため、出力された画像が安定して、鮮明で高解像度得られる。荷電制御剤は、低速複写から高速複写に至る幅広いトナー用途に、有効に使用される。また、荷電制御剤は、静電粉体塗装に使用される粉体塗料にも使用できる。
【0030】
荷電制御樹脂の有効成分となる共重合体は、荷電制御機能と重合機能とを有する前記化学式(3)で示されるスチレン誘導体とビニル基含有単量体とから得られる。共重合体は、繰返単位中のフェニル骨格(ベンゼン環骨格)と−COOM基とを、特にフェニル骨格とカルボキシル基(−COOM)と水酸基(−OH)とを共に有することにより、帯電付与性、荷電制御性により荷電制御樹脂の有効成分として用いることができ、荷電制御樹脂として使用することができる。また、共重合体の繰返単位となるスチレン誘導体は、カルボキシル基及び水酸基を含有する荷電制御樹脂(スチレン系樹脂)の共重合体を構成する荷電制御単量体として用いることができる。さらに、単独で荷電制御剤としても用いることができる。
【0031】
本発明の荷電制御剤は、トナー樹脂への相溶性が高く、均一に分散させることができ、帯電能力を十分に発揮することができると共に、堅牢性に優れており、安定的にその帯電能力を維持することができる。
【0032】
本発明の荷電制御樹脂の製造方法によれば、簡便に良好な荷電制御機能を有するスチレン系樹脂を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明を適用する荷電制御樹脂に用いられる実施例A1のスチレン誘導体の核磁気共鳴スペクトルのチャートを示す図である。
図2】本発明を適用する荷電制御樹脂に用いられる実施例A1のスチレン誘導体の核磁気共鳴スペクトルによる核オーバーハウザー効果のチャートを示す図である。
図3】本発明を適用する荷電制御樹脂に用いられる実施例A1のスチレン誘導体の赤外吸収スペクトルのチャートを示す図である。
図4】本発明を適用する荷電制御樹脂に用いられる実施例A1のスチレン誘導体の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
図5】本発明を適用する荷電制御樹脂に用いられる実施例A1のスチレン誘導体の液体クロマトグラフ−質量分析のチャートを示す図である。
図6】本発明を適用する荷電制御樹脂に用いられる実施例A2のスチレン誘導体の核磁気共鳴スペクトルのチャートを示す図である。
図7】本発明を適用する荷電制御樹脂に用いられる実施例A2のスチレン誘導体の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
図8】本発明を適用する荷電制御樹脂に用いられる実施例A5のスチレン誘導体の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
図9】本発明を適用する荷電制御樹脂に用いられる実施例A14のスチレン誘導体の赤外吸収スペクトルのチャートを示す図である。
図10】本発明を適用する荷電制御樹脂に用いられる実施例A14のスチレン誘導体の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
図11】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B1の共重合体の核磁気共鳴スペクトルのチャートを示す図である。
図12】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B1の共重合体の赤外吸収スペクトルのチャートを示す図である。
図13】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B1の共重合体の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
図14】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B1の共重合体の分子量分布のチャートを示す図である。
図15】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B1の共重合体のガラス転位温度のチャートを示す図である。
図16】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B2の共重合体の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
図17】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B2の共重合体の分子量分布のチャートを示す図である。
図18】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B3の共重合体の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
図19】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B3の共重合体の分子量分布のチャートを示す図である。
図20】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B12の共重合体の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
図21】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B13の共重合体の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
図22】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B18の共重合体の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
図23】本発明を適用する荷電制御樹脂として用いられる実施例B23の共重合体の示差熱−熱重量分析のチャートを示す図である。
図24】本発明を適用する荷電制御剤及び本発明を適用外の荷電制御剤の帯電性試験Aにおける帯電量を示す図である。
図25】本発明を適用する荷電制御剤及び本発明を適用外の荷電制御剤の帯電性試験Bにおける帯電量を示す図である。
図26】本発明を適用する荷電制御樹脂及び本発明を適用外の荷電制御樹脂の帯電性試験Aにおける帯電量を示す図である。
図27】本発明を適用する荷電制御樹脂及び本発明を適用外の荷電制御樹脂の帯電性試験Aにおける帯電量を示す図である。
図28】本発明を適用する荷電制御樹脂及び本発明を適用外の荷電制御樹脂の帯電性試験Aにおける帯電量を示す図である。
図29】本発明を適用する荷電制御樹脂及び本発明を適用外の荷電制御樹脂の帯電性試験Bにおける帯電量を示す図である。
図30】本発明を適用する荷電制御樹脂及び本発明を適用外の荷電制御樹脂の帯電性試験Bにおける帯電量を示す図である。
図31】本発明を適用する荷電制御樹脂及び本発明を適用外の荷電制御樹脂の帯電性試験Bにおける帯電量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0035】
本発明の荷電制御樹脂の有効成分となる重合体が有する構成単位を下記化学式(1)に示す。
【0036】
【化5】
【0037】
前記化学式(1)中、置換基Rは、それぞれ独立して同一または異なり、例えば水素原子;水酸基;F、Cl、Brなどのハロゲン原子;COOH、COOLi、COONaやCOOKなどのアルカリ金属塩、COONHまたはそれらの混合物、COOCH、COOC、COOC、COOC、COOC11、COOC17などの炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキルエステル基のようなカルボオキシ含有基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。
【0038】
が水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であることが好ましい。なかでも水素原子と、炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基とが更に好ましい。具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。
【0039】
同じく置換基Rは、例えば水素原子;水酸基;F、Cl、Brなどのハロゲン原子;COOH、COOLi、COONaやCOOKなどのアルカリ金属塩、COONHまたはそれらの混合物、COOCH、COOC、COOC、COOC、COOC11、COOC17などの炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキルエステル基のようなカルボオキシ含有基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。なかでも水素原子が好ましい。
【0040】
同じくMは、例えば水素原子;Li、Na、Kなどのアルカリ金属;CH、C、C、C、C11、C17、C1021、C1225、C1837などの炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;NHや炭素数1〜12のアルキル基を有するモノ−,ジ−,トリ−若しくはテトラアルキルアンモニウムイオンで例示されるアンモニウム原子団、及びそれらの混合物から選ばれる何れかである。前記アルキル基は、炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基が好ましい。
【0041】
また、gは、例えば1〜3の整数であり、好ましくは1または2、より好ましくは1である。hは、例えば1〜3の整数であり、好ましくは1である。
【0042】
本発明の荷電制御樹脂は、単量体として用いる前記化学式(3)で示されるスチレン誘導体から得られた前記化学式(1)で示される構成単位の繰り返し、または、重合し、重合体合成後、反応することより、同一構造である前記化学式(1)で示される構成単位の繰り返しを有する重合体を、有効成分として含有するものである。前記化学式(1)で示される構成単位及びその構成単位となるスチレン誘導体は、同一分子内にビニル基を有するフェニル骨格(即ち、スチレン構造)、及び同一分子内に−COOM基と水酸基とを有するフェニル骨格(即ち、芳香族オキシカルボン酸の骨格構造)を共に有するものである。更にこの化学式(1)で示される繰返単位及びスチレン誘導体は、フェニル骨格同士が、−CH−O−、−CHCH−O−、−CHCHCH−O−で結合されている構造である。
【0043】
このスチレン誘導体のビニル基を有するフェニル骨格(ベンゼン環骨格)は、スチレン誘導体の重合機能を奏する重要な骨格である。更に−COOM基及び水酸基を有するフェニル骨格と−CH−O−、−CHCH−O−、または−CHCHCH−O−との組合せは、帯電付与機能を発現させる重要な骨格である。更に−COOM基及び水酸基を有するフェニル骨格は、帯電に寄与されると推測される分子内及び分子間の水素結合、並びに配位子の機能を有する骨格である。2つのフェニル骨格の相互作用によって、帯電維持性が向上する。−COOM基及び水酸基(−OH)は、オルト位の関係であることが好ましい。
【0044】
そのため、本発明に用いるスチレン誘導体は、重合体の単量体として用いられるものであり、荷電制御をコントロールできるスチレンモノマーとして有用である。このスチレン誘導体から得られた構成単位を含む重合体は、荷電制御剤用の有効成分とする荷電制御樹脂となる。この荷電制御樹脂(スチレン系樹脂)は、スチレン誘導体から得られた構成単位を有する単独重合体であってもよく、スチレン誘導体とその他の単量体と重合した共重合体であってもよい。また、荷電制御樹脂は、これらの重合体の他に別なスチレン樹脂を含んでいてもよい。この荷電制御樹脂の構成単位は、スチレン誘導体を重合または共重合した重合体が有する構成単位であって、スチレン誘導体を少なくとも1成分の単量体として、これら重合によって得られたものであってもよい。荷電制御剤として使用する場合に、スチレン誘導体の置換基効果によって、樹脂に対する構造の相似性による、樹脂への分散性が向上する。
【0045】
なかでも下記化学式(5)で示される構成単位であることが好ましい。
【0046】
【化6】
式(5)中、R、R、M、g、及びhは前記と同じである。
なお、化学式(1)及び/または化学式(5)で示される構成単位の−OH基や水酸基は、水素原子の他、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、NHや炭素数1〜12のアルキル基を有するモノ−,ジ−,トリ−若しくはテトラアルキルアンモニウムイオンで例示されるアンモニウム原子団、及びそれらの混合物に水素原子が置換されている場合も含む。
【0047】
前記化学式(1)及び/または化学式(5)で示される構成単位を有する重合体は、荷電制御機能を有し、荷電制御樹脂としての用途を有するものである。この重合体は、前記化学式(1)及び/または化学式(5)で示される構成単位のRにおけるアルキル基が長い炭素鎖を有する程、それの疎水性が向上する結果、飽和帯電性が高く環境安定性が良いという性能を有する。従って、この構成単位となる荷電制御単量体である前記化学式(3)または(6)で示されるスチレン誘導体におけるRが、ブチル基、特にtert-ブチル基であるスチレン誘導体から得られる重合体は、より良好な帯電性を示すことができる。
【0048】
前記重合体は、前記スチレン誘導体から得られる構成単位が0.01〜20mol%含まれている共重合体であることが好適である。更に帯電性を考慮すると、1〜15mol%含まれていると好ましく、2〜9.5mol%含まれているとより好ましい。
【0049】
本発明の荷電制御樹脂(スチレン系樹脂)は、前記化学式(1)及び/または化学式(5)に示される構成単位の他に、ビニル基含有単量体から得られた構成単位を有することができる。ビニル基含有単量体から得られた構成単位を有することで、帯電性を良好に制御する機能を有することができる。前記化学式(1)及び/または化学式(5)に示される構成単位とビニル基含有単量体から得られた構成単位とを有する共重合体、及びその共重合体を有する荷電制御樹脂(スチレン系樹脂)は、荷電制御剤として用いることができる。前記ビニル基含有単量体から得られた構成単位が下記化学式(2)であることが好ましい。
【0050】
【化7】
前記化学式(2)中、置換基R、R、Rは、それぞれ同一または異なり、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基である。
【0051】
この荷電制御機能は、用いる樹脂への分散性が良好であるほど、例えば、粒子が小さければ小さいほど、また、用いる樹脂に対して相溶性が高ければ高いほど、より良くは、分子レベルで樹脂へ分散させることが、その機能を最大限に発揮させることになる。
【0052】
本発明の荷電制御樹脂(スチレン系樹脂)の製造方法は、少なくとも前記化学式(1)で示される構成単位を有する重合体を製造する工程を含む方法である。更に、−COOM基のMが水素原子またはアルカリ金属であるスチレン誘導体を、公知の方法、例えば、炭素数1〜18のアルコールと反応することよって、構成単位のカルボキシル基をアルキルエステルにすることができる。前記化学式(1)で示される構成単位を有する重合体が共重合体である前記荷電制御樹脂の製造方法の具体的な一つの方法(A法)は、ビニルフェニルハロゲン化アルキレンとジヒドロキシ芳香族カルボン酸とを反応させるスチレン誘導体の合成工程、及び得られたスチレン誘導体とその他の単量体とを共重合させる重合工程を包含する方法である。更にもう一つの方法(B法)は、ビニルフェニルハロゲン化アルキレンとその他の単量体とを共重合させる重合工程、及び得られた共重合体とジヒドロキシ芳香族カルボン酸またはジヒドロキシ芳香族カルボン酸アルキルエステルとの反応工程を包含する方法である。
本明細書においては、A法を例示して下記に主に説明するが、B法においても同様に、化合物の物性によって適宜調整しながら、共重合させる工程やハロゲン化アルキレンとジヒドロキシ芳香族カルボン酸との反応を行うことができる。
【0053】
本発明の荷電制御樹脂(スチレン系樹脂)の製造方法の一つであるA法は、前記化学式(1)で示される構成単位となる、単量体としてスチレン誘導体を少なくとも有する反応系で、その単量体を重合させて重合体を得る工程を包含する方法である。但し、アルキルエステル化は、重合体を合成後に行ってもよい。すなわち、前記化学式(1)及び/または(5)に示される構成単位における−COOM基を、公知の方法、例えば、炭素数1〜18のアルコールと反応することよって、アルキルエステル化する工程を包含することができる。好ましくは、溶媒中で、前記化学式(1)で示される構成単位となるスチレン誘導体である荷電制御単量体と、重合開始剤とを混合して、その単量体を重合させて重合体を得る方法が挙げられる。
【0054】
単量体として用いられるスチレン誘導体を下記化学式(3)に示す。
【0055】
【化8】
【0056】
前記化学式(3)中、置換基Rは、それぞれ独立して同一または異なり、例えば水素原子;水酸基;F、Cl、Brなどのハロゲン原子;COOH、COOLi、COONaやCOOKなどのアルカリ金属塩、COONHまたはそれらの混合物、COOCH、COOC、COOC、COOC、COOC11、COOC17などの炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキルエステル基のようなカルボオキシ含有基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。
が水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であることが好ましい。なかでも水素原子と、炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基とが更に好ましい。具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。
【0057】
置換基Rは、例えば水素原子;水酸基;F、Cl、Brなどのハロゲン原子;COOH、COOLi、COONaやCOOKなどのアルカリ金属塩、COONHまたはそれらの混合物、COOCH、COOC、COOC、COOC、COOC11、COOC17などの炭素数1〜8で直鎖若しくは分岐鎖のアルキルエステル基のようなカルボオキシ含有基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの炭素数1〜18で直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。なかでも水素原子が好ましい。
【0058】
Mは、例えば水素原子;Li、Na、Kなどのアルカリ金属;NHや炭素数1〜12のアルキル基を有するモノ−,ジ−,トリ−若しくはテトラアルキルアンモニウムイオンで例示されるアンモニウム原子団、及びそれらの何れかの混合物と、CH、C、C、C、C11、C17、C1021、C1225、C1837などの炭素数1〜18で直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基とから選ばれるものである。前記アルキル基は、炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基が好ましい。
【0059】
また、gは、例えば1〜3の整数であり、好ましくは1または2、より好ましくは1である。hは、例えば1〜3の整数であり、好ましくは1である。
【0060】
なかでも下記化学式(6)で示されるように、水酸基が−COOM基に対してオルト位であると、−COOM基と水酸基との相乗効果が強く、帯電効果に寄与されるため、好ましい。このスチレン誘導体を重合することで、前記化学式(5)で示される構成単位となる。
【0061】
【化9】
式(6)中、R、R、g、h及びMは、それぞれ前記と同じである。
なお、化学式(3)及び/または化学式(6)で示される水酸基は、水素原子の他、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、NHや炭素数1〜12のアルキル基を有するモノ−,ジ−,トリ−若しくはテトラアルキルアンモニウムイオンで例示されるアンモニウム原子団、及びそれらの混合物に水素原子が置換されている場合も含む。
【0062】
前記化学式(3)または前記化学式(6)に示されるスチレン誘導体は、より具体的な例として、下記に挙げられる。なお、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0063】
【化10】
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【化11】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【化12】
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
【表9】
【0075】
【化13】
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】
【表12】
【0079】
【化14】
【0080】
【表13】
【0081】
【表14】
【0082】
【表15】
【0083】
【化15】
【0084】
【表16】
【0085】
【表17】
【0086】
【表18】
【0087】
前記表1〜18において、置換基Rが水素原子のみである場合をHと表記し、水素原子以外を含む場合は、水素原子以外の置換基を表記している。また、hの数値は、置換基Rが水素原子のみである場合には1とし、その他の場合は、置換基である水素原子を数えずに記載している。
【0088】
これらのスチレン誘導体は、公知の方法を用い、例えば実験化学講座第4版(日本化学会編、丸善株式会社発行)第187頁記載のWilliamson反応を用いて、容易に合成することができる。スチレン誘導体の合成工程は、例えば、溶媒中で、置換基を有するまたは有しないビニルフェニルハロゲン化アルキレンと、置換基を有するまたは有しないジヒドロキシ芳香族カルボン酸及びそのアルキルエステル、好ましくはヒドロキシサリチル酸及びそのアルキルエステルとを、反応させることによって、スチレン誘導体を合成するものである。その一例としては、下記反応式(7)に示す。また、置換基を有するまたは有しないビニルフェニルハロゲン化アルキレンと、置換基を有するまたは有しないジヒドロキシ芳香族カルボン酸とは、各成分を、1種類選択して反応させたり、または各成分を、2種類以上組合せて、混合して反応させたりすることができる。更に、−COOM基のMが、水素原子またはアルカリ金属であるスチレン誘導体を、公知の方法、例えば、炭素数1〜18のアルコールと反応することよって、スチレン誘導体のアルキルエステルを得ることができる。炭素数1〜18のアルコールとして、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert-ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−エチルヘキサノール、2−エチルヘキサノール、1−ノニルアルコール、1−デシルアルコールなどを例示することができる。その中でも入手の容易な点や反応しやすい点を考慮すると、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノールが好ましい。
【0089】
【化16】
式(7)中、R、R、M、h及びgは、前記と同じであり、Xは、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン原子である。
【0090】
置換基を有するまたは有しないビニルフェニルハロゲン化アルキレンは、具体的に、4−(クロロメチル)スチレン、4−(ブロモメチル)スチレン、3−メトキシ−4−(クロロメチル)スチレン、3−メトキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−ヒドロキシ−4−(クロロメチル)スチレン、2−ヒドロキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−ブロモ−4−(クロロメチル)スチレン、3−ブロモ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−メトキシ−4−(クロロメチル)スチレン、2−メトキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−クロロ−4−(クロロメチル)スチレン、2−クロロ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−フルオロ−4−(クロロメチル)スチレン、3−フルオロ−4−(ブロモメチル)スチレン、2−ブロモ−4−(クロロメチル)スチレン、2−ブロモ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−tert−ブチル−4−(クロロメチル)スチレン、3−tert−ブチル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−イソオクチル−4−(クロロメチル)スチレン、3−イソオクチル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−イソプロピル−4−(クロロメチル)スチレン、3−イソプロピル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−メチル−4−(クロロメチル)スチレン、3−メチル−4−(ブロモメチル)スチレン、3−エトキシ−4−(クロロメチル)スチレン、3−エトキシ−4−(ブロモメチル)スチレン、3−カルボキシ−4−(クロロメチル)スチレン、3−カルボキシ−4−(ブロモメチル)スチレンなどのp−含ハロゲンメチルスチレン誘導体;
3−(クロロメチル)スチレン、3−(ブロモメチル)スチレン、5−メチル−3−(クロロメチル)スチレン、5−メチル−3−(ブロモメチル)スチレン、5−イソプロピル−3−(クロロメチル)スチレン、5−イソプロピル−3−(ブロモメチル)スチレン、5−イソオクチル−3−(クロロメチル)スチレン、5−イソオクチル−3−(ブロモメチル)スチレン、5−メトキシ−3−(クロロメチル)スチレン、5−メトキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−エトキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−エトキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−カルボキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−カルボキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、5−ヒドロキシ−3−(クロロメチル)スチレン、5−ヒドロキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−ヒドロキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−ヒドロキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−メトキシ−3−(クロロメチル)スチレン、4−メトキシ−3−(ブロモメチル)スチレン、5−クロロ−3−(クロロメチル)スチレン、5−クロロ−3−(ブロモメチル)スチレン、4−ブロモ−3−(クロロメチル)スチレン、4−ブロモ−3−(ブロモメチル)スチレン、2−ブロモ−3−(クロロメチル)スチレン、2−ブロモ−3−(ブロモメチル)スチレン、5−tert−ブチル−3−(クロロメチル)スチレン、5−tert−ブチル−3−(ブロモメチル)スチレンなどのm−含ハロゲンメチルスチレン誘導体;
2−(クロロメチル)スチレン、2−(ブロモメチル)スチレン、3−tert−ブチル−2−(クロロメチル)スチレン、3−tert−ブチル−2−(ブロモメチル)スチレン、4−クロロ−2−(クロロメチル)スチレン、4−クロロ−2−(ブロモメチル)スチレンなどのo−含ハロゲンメチルスチレン誘導体;
4−(2’−ブロモエチル)スチレン、4−(2’−クロロエチル)スチレン、3−メトキシ−4−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−メトキシ−4−(2’−クロロエチル)スチレン、2−ヒドロキシ−4−(2’−ブロモエチル)スチレン、2−ヒドロキシ−4−(2’−クロロエチル)スチレン、3−エトキシ−4−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−エトキシ−4−(2’−クロロエチル)スチレン、3−ブロモ−4−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−ブロモ−4−(2’−クロロエチル)スチレン、3−tert−ブチル−4−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−tert−ブチル−4−(2’−クロロエチル)スチレンなどのp−含ハロゲンエチルスチレン誘導体;
3−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−(2’−クロロエチル)スチレン、5−イソプロピル−3−(2’−ブロモエチル)スチレン、5−イソプロピル−3−(2’−クロロエチル)スチレン、5−クロロ−3−(2’−ブロモエチル)スチレン、5−クロロ−3−(2’−クロロエチル)スチレン、5−ヒドロキシ−3−(2’−ブロモエチル)スチレン、5−ヒドロキシ−3−(2’−クロロエチル)スチレン、4−ヒドロキシ−3−(2’−ブロモエチル)スチレン、4−ヒドロキシ−3−(2’−クロロエチル)スチレン、4−ブロモ−3−(2’−ブロモエチル)スチレン、4−ブロモ−3−(2’−クロロエチル)スチレンなどのm−含ハロゲンエチルスチレン誘導体;
2−(2’−ブロモエチル)スチレン、2−(2’−クロロエチル)スチレン、3−tert−ブチル−2−(2’−ブロモエチル)スチレン、3−tert−ブチル−2−(2’−クロロエチル)スチレンなどのo−含ハロゲンエチルスチレン誘導体;
4−(3’−ブロモプロピル)スチレン、4−(3’−クロロプロピル)スチレン、2−メトキシ−4−(3’−ブロモプロピル)スチレン、2−メトキシ−4−(3’−クロロプロピル)スチレン、2−イソプロピル−4−(3’−ブロモプロピル)スチレン、2−イソプロピル−4−(3’−クロロプロピル)スチレン、2−イソオクチル−4−(3’−ブロモプロピル)スチレン、2−イソオクチル−4−(3’−クロロプロピル)スチレン、3−メトキシ−4−(3’−ブロモプロピル)スチレン、3−メトキシ−4−(3’−クロロプロピル)スチレンなどのp−含ハロゲンプロピルスチレン誘導体;
3−(3’−ブロモプロピル)スチレン、3−(3’−クロロプロピル)スチレン、5−イソオクチル−3−(3’−ブロモプロピル)スチレン、5−イソオクチル−3−(3’−クロロプロピル)スチレン、5−メトキシ−3−(3’−ブロモプロピル)スチレン、5−メトキシ−3−(3’−クロロプロピル)スチレン、2−(3’−ブロモプロピル)スチレンなどのm−含ハロゲンプロピルスチレン誘導体;
2−(3’−クロロプロピル)スチレンなどのo−含ハロゲンプロピルスチレン誘導体;などが挙げられる。
【0091】
置換基を有するまたは有しないジヒドロキシ芳香族カルボン酸は、具体的に、
2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−メチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−エチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソプロピル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−n−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−tert−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−sec−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソヘプチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソヘキシル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソオクチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−フルオロ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−クロロ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−ブロモ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−フルオロ−4−メトキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、4−エチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、4−メトキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、4−エトキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、4−フルオロ−5−メトキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、6−イソプロピル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸、6−ブトキシ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸などの2,3−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステル;
2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−メチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−エチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−イソプロピル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−tert−ブチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−sec−ブチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−イソヘキシル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−イソヘプチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−イソオクチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−メトキシ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−ブトキシ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−クロロ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−ブロモ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−ヨード−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−n−プロピル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−エトキシ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−クロロ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−メチル−2,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、5,6−ジ−tert−ブチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−tert−ブチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソオクチル−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−フルオロ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸などの2,4−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステル;
2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−メチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−エチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソプロピル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−tert−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−sec−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソヘキシル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソヘプチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソオクチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−tert−ブトキシ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−ヨード−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−フルオロ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、6−メトキシ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、6−エトキシ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−メチル−2,5,6−トリヒドロキシ安息香酸、6−フルオロ−4−メトキシ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジイソプロピル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジ−tert−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、4−クロロ−3−tert−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸、4−フルオロ−2,5−ジヒドロキシ安息香酸などの2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステル;
2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、4−ブロモ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、5−ブロモ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、4−クロロ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、5−クロロ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3−イソプロピル−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、4−tert−ブチル−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、5−メチル−2,6−ジヒドロキシ安息香酸などの2,6−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステル;
3−メチル−4,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−tert−ブチル−4,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−tert−オクチル−4,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−エトキシ−4,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−メトキシ−4,5−ジヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−4,5−ジヒドロキシ安息香酸などの4,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステル;
3,5−ジヒドロキシ安息香酸、4−メチル−3,5−ジヒドロキシ安息香酸、4−イソプロピル−3,5−ジヒドロキシ安息香酸、4−tert−ブチル−3,5−ジヒドロキシ安息香酸、4−エトキシ−3,5−ジヒドロキシ安息香酸、4−ブトキシ−3,5−ジヒドロキシ安息香酸などの3,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステル;
3,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、6−フロロ−3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5−メチル−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−イソプロピル−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−tert−ブチル−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−tert−オクチル−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−メトキシ−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−エトキシ−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−ブロモ−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−クロロ−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−メトキシ−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−n−プロピル−3,4−ジヒドロキシ安息香酸、6−n−ブチル−3,4−ジヒドロキシ安息香酸などの3,4−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、及びその炭素数1〜18のアルキルエステルなどが挙げられる。
【0092】
反応溶媒としては、具体的に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのような、アルコール系、エーテル系、及びグリコール系有機溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;トリクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類などの有機溶媒が挙げられる。
【0093】
また、本発明に用いるスチレン誘導体の合成反応では、反応の促進とエーテル結合形成の際に、副生するハロゲン化水素を捕捉するために、塩基を添加することが好ましい。
【0094】
この合成で用いることのできる塩基としては、溶媒や基質と反応し、反応系を複雑化させないものであれば、特に限定されない。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ルビジウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属の水素化物を挙げることができる。
【0095】
本発明の荷電制御樹脂の製造方法の一つであるA法は、前記化学式(3)で示されるスチレン誘導体である荷電制御単量体と共に、単量体としてビニル基含有単量体を用いることができる。好ましくは、溶媒中で、荷電制御単量体と前記化学式(2)で示される構成単位となるビニル基含有単量体とを少なくとも含む単量体、及び重合開始剤を有する反応系で、それらの単量体同士を重合させて重合体を得る方法が挙げられる。この反応系の一例を下記反応式(8)に示す。
【0096】
【化17】
式(8)中、単量体α,β,γはそれぞれ、化学式(3)に示すスチレン誘導体以外の単量体で、互いに異なるビニル基含有単量体である。
【0097】
ビニル基含有単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロロスチレンなどのビニル芳香族炭化水素系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸−3−(メチル)ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルトルエンなどの1官能ビニル基含有単量体;ジビニルベンゼン、ジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの2官能ビニル基含有単量体;3個以上の反応性ビニル基を有する単量体などが挙げられる。これらの単量体を単独で、または2種類以上を併用して使用することができる。
【0098】
ビニル基含有単量体として、好ましくは、下記化学式(4)で示されるビニル芳香族炭化水素系単量体が挙げられる。ビニル芳香族炭化水素系単量体としては、例えば、下記化学式(4)に示される化合物が挙げられる。このビニル基含有単量体を重合することで、前記化学式(2)で示される構成単位となる。
【0099】
【化18】
式(4)中、R、R、Rは、それぞれ同一または異なり、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基である。
【0100】
置換基R、R、Rの炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
【0101】
置換基R、R、Rの炭素数1〜8で直鎖または分岐鎖のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプトキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。
【0102】
置換基R、R、Rのハロゲン原子としては、例えば、F、Cl、Brなどが挙げられる。
【0103】
ビニル芳香族炭化水素の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2−プロピルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、2−イソプロピルスチレン、3−イソプロピルスチレン、4−イソプロピルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2−メチル−α−メチルスチレン、3−メチル−α−メチルスチレン、4−メチル−α−メチルスチレン、2−エチル−α−メチルスチレン、3−エチル−α−メチルスチレン、4−エチル−α−メチルスチレン、2−プロピル−α−メチルスチレン、3−プロピル−α−メチルスチレン、4−プロピル−α−メチルスチレン、2−イソプロピル−α−メチルスチレン、3−イソプロピル−α−メチルスチレン、4−イソプロピル−α−メチルスチレン、2−クロロ−α−メチルスチレン、3−クロロ−α−メチルスチレン、4−クロロ−α−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,3−ジエチルスチレン、3,4−ジエチルスチレン、2,4−ジエチルスチレン、2,5−ジエチルスチレン、2−メチル−3−エチルスチレン、2−メチル−4−エチルスチレン、2−クロロ−4−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジエチル−α−メチルスチレン、3,4−ジエチル−α−メチルスチレン、2,4−ジエチル−α−メチルスチレン、2,5−ジエチル−α−メチルスチレン、2−エチル−3−メチル−α−メチルスチレン、2−メチル−4−プロピル−α−メチルスチレン、2−クロロ−4−エチル−α−メチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−エトキシスチレン、4−エトキシスチレン、2−イソプロキシスチレンなどが挙げられる。これらのビニル芳香族炭化水素単量体は、単独であっても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
前記ビニル芳香族炭化水素系単量体として、スチレンが好ましい。このスチレンから得られた構成単位を下記化学式(9)に示す。
【0105】
【化19】
【0106】
更に本発明に用いるビニル基含有単量体として、親水性不飽和単量体が挙げられる。親水性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(s);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;エチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)、プロピル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)、tert−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸(s)などのアルキル(メタ)アクリルアミドスルホン酸またはそのエステル;スチレンスルホン酸(s)、メタリルスルホン酸(s)、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸イソブチル、イタコン酸、フマル酸などが挙げられる。これらの単量体を単独用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの単量体のうち、(メタ)アクリル酸(s)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸(s)、スチレンスルホン酸(s)などであることが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸またはメタクリル酸(アクリル酸のα−メチル誘導体であるα−メチルアクリル酸)を示す。これらの酸(s)とはこれらの遊離の酸またはこられの酸の金属塩、アンモニウム塩、また、アルキルエステルなどを示す。
【0107】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル類や、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸(アクリル酸のα−メチル誘導体であるα−メチルアクリル酸)及びその塩、並びにその親水性基置換アルキルエステルをビニル基含有単量体として用いることができる。これらの化合物を、下記化学式(10)に示す。
【0108】
【化20】
式(10)中、Rはメチル基または水素原子を示し、Rは水酸基または置換基を有してもよいアルコキシ基を示す。
【0109】
の置換基を有してもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、ヘキシル基、ヘプトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、ステアリルオキシ基などが挙げられる。また、この置換基として、例えば、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0110】
前記化学式(10)に示される化合物から得られた構成単位を下記化学式(11)に示す。
【0111】
【化21】
式(11)中、R及びRは、前記と同じである。
【0112】
前記化学式(3)または化学式(6)に示されるスチレン誘導体を単量体として得られた構成単位と、更にビニル基含有単量体から得られた構成単位とを、少なくとも有する重合体例について、具体的に表19に示す。本発明の範囲はこれらの例に限定されるものではない。
【0113】
【表19】
【0114】
前記表19において、スチレン誘導体並びに単量体α,β,γはそれぞれ異なるビニル基含有単量体である。また、式(1)及び式(1')、(2)及び式(2')と式(11)及び式(11')とは、それぞれ前記化学式(1)、(2)及び(11)に示される化合物であって、各化学構造の置換基が異なるものを示す。また式(1’’)と式(5’’)は、COOM基がアルキルエステル化したものを示す。
【0115】
この重合法としては、公知の溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合などのいずれの方法を用いることも可能であり、特に限定されるものではない。
【0116】
溶液重合としては、前記化学式(3)で示されるスチレン誘導体のようなビニル基をもつモノマーのラジカル重合を行う際に用いられる方法の一つである。生成するポリマーが可溶な溶媒にモノマー及び重合開始剤を溶解させて、加熱して重合を行う方法である。重合開始剤としては、モノマーまたは溶媒に可溶な過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリルなどが用いられる。溶液重合の特徴は、塊状重合に比べて重合度及び重合速度が小さく、重合系において発生する重合熱が、周囲の溶媒に除かれるので、重合温度の調節が容易である。溶液重合は重合終了後そのままポリマー溶液として使用する場合は極めて有用であるが、ポリマーを固体として取出すには、溶媒を除去し、ポリマーを回収する必要がある。
【0117】
塊状重合としては、前記化学式(3)で示されるスチレン誘導体のようなビニル基をもつモノマーのラジカル重合重合開始剤を行う際に用いられる方法の一つである。溶媒を用いないで、ビニルモノマー同士だけをそのまま、または少量の重合開始剤を加えて、加熱して重合を行う方法である。開始剤としては、モノマーに可溶な過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリルなどが用いられる。塊状重合の特徴は、重合速度が大きく、比較的純粋なポリマーが塊状で得られることである。この反応の問題点としては、重合熱を取り除くことが困難であるため、局部加熱が生じるなど重合温度の制御がむずかしく、また、生成ポリマーが固化して容器に付着するなど、後処理が面倒であるというような欠点がある。塊状重合は、工業的には、本願の様なスチレン系樹脂である、スチレンモノマーからの連続塊状重合によるポリスチレンのペレットの成形、ポリメタクリル酸メチルの有機ガラスの作製、ガラス繊維強化不飽和ポリエステルの硬化、金型の中での重合―成形(注型重合)などに塊状重合が採用されている。
【0118】
沈殿重合としては、前記化学式(3)で示されるスチレン誘導体のようなビニル基をもつモノマーのラジカル重合を行う際に用いられる方法の一つである。モノマー及び開始剤が可溶で、生成するポリマーが溶解せず、膨潤し難い溶媒を使用して、加熱して重合を行う方法である。開始剤としては、モノマーまたは溶媒に可溶な過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリルなどが用いられる。重合が開始して、ポリマーが生成すると溶媒に不溶なために析出してくる。沈殿重合の特徴は、重合が開始し、析出したポリマーは本質的には塊状重合に近いので、溶液重合に比べて重合度及び重合速度が大きいが、重合系において発生する重合熱が、周囲の溶媒に除かれるので重合温度の調節が比較的容易である。沈殿重合は重合終了後単離、乾燥すればポリマー単体を得ることができ、懸濁重合や乳化重合のような懸濁安定剤や乳化剤を使用しないため、純粋なポリマーを得ることができる。
【0119】
懸濁重合としては、前記化学式(3)で示されるスチレン誘導体のようなビニル基をもつモノマーのラジカル重合を行う際に用いられる方法の一つである。媒体(主として水)に不溶なモノマーを媒体中で激しくかき混ぜると分散、懸濁し、0.01〜1mmの大きさの液滴となる。これにモノマーに可溶な重合開始剤(例:過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリルなど)を加えて行う重合が懸濁重合である。また、ポリウレタンのような重付加反応を懸濁状態で行う場合もある。この重合方法では、モノマーの液滴中で進行し、粒子状のポリマーが得られる。例えば、モノマーとして、酢酸ビニル、スチレン、メタクリル酸メチルなどを用いて懸濁重合させると、真球状の粒子が得られるので、このような場合はパール重合と呼ばれる。液滴内での重合は、本質的には塊状重合と同じであり、重合速度及び重合度は大きい。懸濁重合では、重合が進行すると、モノマーの液滴はモノマーを溶媒とするポリマーの濃厚な溶液となり、液滴同士が粘着しやすくなる。そのため重合は、よく分散するように激しく攪拌しながら行う必要があり、また液滴を安定化するために、ゼラチン、デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースのような水溶性ポリマーや、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの不溶性粉末を加える。また、生成ポリマーの粒子の大きさは、攪拌速度によっても変化する。また、重合中に発生する重合熱は、周囲の媒体によって除かれるので局部過熱が起こらず、温度の調節が容易である。懸濁重合は、重合度の大きいポリマーが得られ、また生成ポリマーの単離が容易であるので、成形材料用のポリマー、例えばポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルなどを得る目的で、工業的製造法として多く利用されている。本願に用いる重合法としては、溶液重合、沈殿重合、塊状重合が好ましい。また、スチレンを単量体だけではなく、溶媒として、用いる重合反応や溶媒を加えず塊状重合も例示できる。
【0120】
重合反応後の後処理工程として公知の精製工程や分離抽出工程を行うことができる。例えば、有機溶剤を用いた分離や濾過して得る工程や、良溶媒と貧溶媒を組合せた溶剤精製、再沈殿するなどの精製工程をもうける方が好ましい。
【0121】
前記単量体を重合する際に用いることのできる重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤、レドックス系開始剤など様々なものが適宜使用できる。また、重合開始剤を加えなくとも加熱などで重合(自然重合)させてもよい。
【0122】
過酸化物系重合開始剤としては、有機系として、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドが挙げられ、無機系として、過硫酸塩、過酸化水素などが挙げられる。具体的には、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシアセテート、tert−ヘキシルパーオキシラウレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシイソブチレート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパー2−エチルヘキシルオキシモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、ビス(tert−ブチルパーオキシ)イソフタレート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシッド、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−tert−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−tert−ブチルパーオキシブタンなどのパーオキシケタール;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド;その他としてtert−ブチルパーオキシアリルモノカーボネートなどが挙げられる。
【0123】
アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。
【0124】
レドックス系開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩開始剤とメタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤との組み合わせ;有機過酸化物と第3級アミンとの組み合わせ、例えば過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンとの組み合わせ、クメンハイドロパーオキサイドとアニリン類との組み合わせ;有機過酸化物と遷移金属との組み合わせ、例えばクメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートとの組み合わせなどが挙げられる。
【0125】
これらの重合開始剤は、単独で用いてもよく、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対し、0.1〜20重量部であることが好ましく、1〜10重量部が更に好ましい。
【0126】
重合反応に用いる溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、スチレン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;トリクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;メチラール、ジエチルアセタールなどのアセタール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコール、モノブチルエーテルなどのエーテルアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、ニトロプロペン、ニトロベンゼンなどの硫黄含有及び/または窒素含有有機化合物が挙げられ、これらを単独で、または2種類以上混合して用いることができる。
【0127】
前記化学式(3)または(6)に示されるスチレン誘導体、異なるビニル基含有単量体である単量体α,β,γ、重合開始剤、及び溶媒の各組合せによる重合反応例について具体的に表20〜表26に示す。本発明の範囲はこれらの例に限定されるものではない。
【0128】
【表20】
【0129】
【表21】
【0130】
【表22】
【0131】
【表23】
【0132】
【表24】
【0133】
【表25】
【0134】
【表26】
【0135】
表20〜表26において、スチレン誘導体は、前記(表1〜18)に例示した化合物例である。また、tert−をt−、テトラヒドロフランをTHF、N,N−ジメチルホルムアミドをDMFとして略記する。
【0136】
本発明の荷電制御樹脂(スチレン系樹脂)の製造方法のもう一つの方法であるB法は、ビニルフェニルハロゲン化アルキレンとその他の単量体とから重合体を得る工程と、その後、ジヒドロキシ芳香族カルボン酸またはジヒドロキシ芳香族カルボン酸アルキルエステルを反応して、前記化学式(1)で示される構成単位を得る工程とを少なくとも包含する方法である。好ましくは、化学式(1)で示される構成単位となる元の単量体として、ビニルフェニルハロゲン化アルキレンと、重合開始剤とを溶媒中で混合して、その単量体を重合させて重合体を得る。その後に、ジヒドロキシ芳香族カルボン酸またはジヒドロキシ芳香族カルボン酸アルキルエステルを反応して、化学式(1)で示される構成単位を合成する方法が挙げられる。
【0137】
ビニルフェニルハロゲン化アルキレンとしては、前記A法で例示したビニルフェニルハロゲン化アルキレンを同様に用いることができる。B法で用いることのできるその他の単量体としては、前記A法で例示したビニル基含有単量体を用いることができる。具体的な反応例として、ビニルフェニルハロゲン化アルキレンと前記化学式(4)に示されるビニル芳香族炭化水素系単量体とを重合して、共重合体を得て、更に、ジヒドロキシ芳香族カルボン酸誘導体を反応させる方法について、下記反応式(12)及び(13)に示し説明する。なお、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0138】
B法の第1反応は、先ず、ジヒドロキシ芳香族カルボン酸誘導体に対して、反応性基をもつ、ビニルフェニルハロゲン化アルキレンを、前記反応式(8)に示すような化学式(3)のスチレン誘導体と同様に、異なるビニル含有単量体である単量体α、β、γと重合し、重合体を得る。この重合反応において、重合開始剤を使う方が好ましい。下記反応式(12)においては、前記化学式(4)に示されるビニル芳香族炭化水素系単量体が単量体αに該当する。またこの重合反応において、公知の溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合などのいずれの方法を用いることも可能であり、特に限定されるものではない。重合反応における単量体、重合開始剤、反応溶媒、反応条件などは、前記A法で例示したものを同様に用いることができる。
【0139】
【化22】
式(12)中、Xは、例えば、F、Br、Clなどハロゲン原子であり、R、R、R、R、gは前記と同じである。
【0140】
B法の第2反応は、第1の重合体反応において得られた重合体、すなわち、ビニルフェニルハロゲン化アルキレンから得られた、重合体中の構成単位とジヒドロキシ芳香族カルボン酸誘導体とを反応させることにより、本発明に用いる前記化学式(1)で示される構成単位を合成することである。ジヒドロキシ芳香族カルボン酸誘導体は、前記A法で例示したものを同様に用いることができる。また反応溶媒、反応条件などは、A法のスチレン誘導体の合成に記載した反応条件、A法のスチレン誘導体の合成に記載した及び重合反応に記載した反応溶媒を同様に用いることができる。前記化学式(4)に示されるビニル芳香族炭化水素系単量体を用いた場合を下記反応式(13)に示す。
【0141】
【化23】
式(13)中、X、R、R、R、R、R、g、hは前記と同じである。
【0142】
本発明の荷電制御樹脂は、ガラス転移温度が70℃〜150℃であることが好ましい。更に80℃〜130℃がより好ましい。このスチレン系樹脂を含有する静電荷像現像用トナーや高分子化合物を溶融混練にて作成する場合、荷電制御樹脂の流動性が増加するガラス転移温度以上で溶融混練することにより、バインダー樹脂(例えば、トナー用樹脂)への相溶性がより高くなり、荷電制御樹脂を均一に分散させることができるため、帯電能力をより効率的に発揮させることができる。
【0143】
荷電制御樹脂の数平均分子量(Mn)は、3000〜50000、重量平均分子量(Mw)は、4000〜500000の範囲になり、更に重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除算する分子量分布としての目安となるMw/Mnは、1〜25であることが好ましい。更に数平均分子量(Mn)が5000〜30000、重量平均分子量(Mw)は4000〜300000の範囲になり、更に分子量分布(Mw/Mn)は、1〜15であることがより好ましい。Mw/Mnの値が1.0に近ければ、より単分散であり、バインダー樹脂への相溶性がより高くなる。そのため、荷電制御樹脂を均一に分散させることができるため、帯電能力をより効率的に発揮させることができる。
【0144】
荷電制御樹脂は、示差熱熱重量分析(TG−DTA)測定において、200℃から450℃の範囲に発熱及び重量減少が測定されることが好ましい。更に250℃から400℃の範囲に発熱及び重量減少が測定されることが好ましい。発熱と重量減少が同時に観測される温度は、荷電制御樹脂が燃焼分解する温度であり、バインダー樹脂への添加後の加熱分散処理する時の温度以上の必要がある。
【0145】
荷電制御樹脂の体積固有抵抗率は、0.1×1016〜7.0×1017Ωcmであることが好ましい。荷電制御樹脂を含有するバインダー樹脂は、体積固有抵抗率がこの範囲よりも小さいと、せっかく発生させた電荷をリークしてしまい、一方、体積固有抵抗率がこの範囲よりも大きいと、発生した電荷が溜まり過ぎ、安定性に欠けてしまう。体積固有抵抗率が、0.5×1016〜1.5×1017Ωcmであり、0.6×1016〜0.5×1017Ωcmと更に好ましい。このような体積固有抵抗率を有する荷電制御樹脂を含有するバインダー樹脂は、十分に帯電が保持されたものとなり、また優れた帯電の立ち上がりと優れた経時安定性とを奏する。なお、体積固有抵抗値は、JIS規格(K6911)に基づいて測定する。
【0146】
本発明の荷電制御樹脂の有効成分である重合体の構成単位となるスチレン誘導体は、荷電制御樹脂に用いる単量体として用いるだけでなく、荷電制御剤としての用途を有する。
【0147】
本発明に用いられるスチレン誘導体は、用途に用いる樹脂に対して、良好な相溶性を示す構造部分をもたせることにより、樹脂へ分子レベルで均一に分散させることができる。このことにより、スチレン誘導体の持つ帯電能力を、最小添加量で最大限に発揮することが可能である。更に、スチレン誘導体を単量体とする重合体、並びに、その共重合体を有するスチレン系樹脂を用いることよって、同様または類似の組成で構成されている樹脂が、使用される各用途において、樹脂への相溶性が改善され、均一に分散させ、良好な組成物が得られる。
【0148】
このため、荷電制御剤として用いられた場合、より格段に高く、帯電能力をいままでの荷電制御剤と比較して、大きく発揮することが可能である。また、帯電制御性が安定し、堅牢性が向上する。
【0149】
荷電制御剤としてのスチレン誘導体(荷電制御剤)並びに、荷電制御樹脂(スチレン系樹脂)は、静電荷像現像用トナーや粉体塗料などに含有させるものである。スチレン誘導体(荷電制御単量体)または荷電制御樹脂が、用いられる樹脂100重量部に対して、0.1乃至10重量部配合されたものであることが望ましい。更にスチレン誘導体(スチレン単量体)及び荷電制御樹脂のより好ましい配合量は、用いられる樹脂100重量部に対して0.5乃至7重量部である。
【0150】
トナー用樹脂の例としては、次のような公知のトナー用樹脂(結着樹脂)を挙げることができる。すなわち、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ビニルメチルエーテル樹脂、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂である。これらの樹脂は、単独で、または数種をブレンドして用いることができる。
【0151】
なお、本発明に用いられるスチレン誘導体(荷電制御剤)または荷電制御樹脂は、静電粉体塗料に含有させて樹脂粉体の電荷の制御(増強)のために用いることもできる。その場合の塗料用樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、またはポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂、並びに、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱硬化性樹脂を挙げることができ、これらを単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0152】
トナーに用い得る着色剤として種々の染料や顔料を、それぞれ単独でまたは2種類以上を配合して使用することができる。用い得る着色剤としては、例えば、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、アゾメチンイエロー、キノフタロンイエロー、キノリンイエロー、イソインドリノンイエロー、ペリノンオレジン、ペリノンレッド、ペリレンマルーン、ローダミン6Gレーキ、キナクリドンレッド、アンスアンスロンレッド、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系顔料などの有機顔料;カーボンブラック、チタンホワイト、チタンイエロー、群青、コバルトブルー、べんがら、アルミニウム粉、ブロンズなどの無機顔料及び金属粉;アゾ染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、インドフェノール系染料、インドアニリン系染料などの各種の油溶性染料や分散染料の他、ロジン、ロジン変性フェノール、ロジン変性マレイン酸などの樹脂により変性されたトリアリールメタン系染料及びキサンテン系染料などが挙げられる。これらを単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0153】
トナーは、一般の公知の製造方法を用いて製造できる。例えば、静電荷像現像用トナーの製造方法は、前記のようなトナー用樹脂、着色剤、及び本発明のスチレン誘導体(荷電制御剤)及び/または荷電制御樹脂、並びに必要に応じて磁性材料(例えば、鉄、コバルト、フェライトなどの強磁性材料製の微粉体)、流動性改質剤(例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン)、オフセット防止剤(例えば、ワックス、低分子量のオレフィンワックス)、分散安定剤、光安定剤などをボールミルその他の混合機により十分混合する。その後、その混合物を加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどの熱混練機を用いて溶融混練する。その後、その混練物を冷却固化させた後、その固化物を粉砕及び分級することにより、所望に応じて平均粒径1〜20μmのトナーを得ることができる。
【0154】
本発明に用いられるスチレン誘導体(荷電制御剤)または荷電制御樹脂を、荷電制御または増強の目的で増強剤として、また前記増強剤及び樹脂を含んでなる静電塗装用粉体塗料として提供できる。前記増強剤を1種類含むものであってもよく、複数種含むものであってもよい。増強剤の好ましい配合量は、樹脂100重量部に対し、0.1乃至10重量部、そのより好ましい配合量は、樹脂100重量部に対し、0.5乃至5重量部である。この静電塗装用粉体塗料に使用し得る樹脂並びに着色剤は、前記トナーで記載したものを例示することができる。
【0155】
この静電塗装用粉体塗料は、耐環境性と耐久性に優れ、この粉体塗料によれば、塗着効率がほぼ100%に近く、しかも塗膜性能が向上し、塗膜欠陥のない厚膜を形成することができる。増強剤が無色または淡色であるため、塗膜の色調障害が生じ難い。
【0156】
この静電塗装用粉体塗料は、一般の公知の製造方法を用いて製造することができる。例えば、静電塗装用粉体塗料の製造方法は、本発明の増強剤及び樹脂、並びにその用途・目的に応じ、着色剤、流動性改質剤、静電塗装用粉体塗料、充填剤、硬化剤及び可塑剤などを添加し、ボールミルその他の混合機で均一に混合する。その後、その混合物を、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどの熱混練機を用いて溶融混練する。その後、冷却固化後、粉砕及び分級することにより、粒度範囲10乃至250μm等の所要粒径の静電塗装用粉体塗料を得ることができる。
【0157】
この静電塗装用粉体塗料による塗装は、コロナ印荷方式、摩擦帯電方式、及びハイブリッド方式のような一般の静電粉体塗装法を用いて塗装することができる。
【実施例】
【0158】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0159】
本発明の荷電制御樹脂へ誘導するためのスチレン誘導体の合成例を実施例A1〜A15に示す。
【0160】
(実施例A1)
2,5−ジヒドロキシ安息香酸100.0gをメタノール2Lに撹拌しながら溶解させ、炭酸カリウム88.3gを加えて67℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン102.0gを22分間で滴下し、67℃にて12時間反応させた。この反応液を冷却後、減圧下メタノールを留去し、ヘキサンにて洗浄し濾過した。残渣をメタノールに溶解させ、更に水に滴下し再沈殿させ、析出物を濾過した。この再沈殿操作を2回繰り返し、残渣を80℃にて48時間乾燥させ、下記化学式(A1)に示すスチレン誘導体(化合物例a1−1)を48.7g得た。
【0161】
【化24】
【0162】
得られたスチレン誘導体(A1)の純度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC 株式会社島津製作所製 検出器:SPD−M20A、カラムオーブン:CTO−20A、ポンプ:LC−20AT、デガッサー:DGU−20A3)により、以下の測定条件にて測定を行い、純度94.6%を確認した。
HPLC測定条件:サンプル3mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLに溶解させ、30分超音波し、ポア径が0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過してサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
カラム:L−Column ODS (4.6×250mm)、カラムオーブン温度:40℃、流速:1.0mL/分、試料注入量:3μL、検出波長:254nm、
溶離液−(1):THF:0.05M−CHCOONH4水溶液=4:6
溶離液−(2):THF:0.05M−CHCOONH4水溶液=6:4
溶離液−(1):溶離液−(2)=100:0→(20分)→0:100
【0163】
得られたスチレン誘導体(A1)について、1H−核磁気共鳴装置(NMR 日本電子株式会社製 FT−NMR JNM−AL300)を用い、共鳴周波数:300MHz、測定核種:H、使用溶媒:重DMSO、測定温度:室温の条件で測定した。1H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A1)で示す構造を支持する。1H−NMRの測定結果を図1に示す。
δ(ppm)=5.06(2H、s、−CH2−)、5.27(1H、d、C−H)、5.84(1H、d、C−H)、6.74(1H、d−d、−CH=)、6.91(1H、d、Ar−H)、7.23(1H、d−d、Ar−H)、7.35(1H、d、Ar−H)、7.41(1H、d、Ar−H)、7.49(2H、d、Ar−H)
前記1H−NMRにおいて、5.06ppm(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.35(1H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに16.9%の核オーバーハウザー効果(NOE)が観測された。NOEの測定結果を図2に示す。
【0164】
得られたスチレン誘導体(A1)を、元素分析測定器(パーキンエルマー社製 2400II 全自動元素分析装置 CHNS/O分析)にて炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の重量比率を測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:71.61 H:4.90 N:0.00
理論値C:71.10 H:5.22 N:0.00
【0165】
得られたスチレン誘導体(A1)を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR 日本電子株式会社製 JIR−SPX60S)を使用し、KBr法にて測定したところ、
ν(cm−1)=3132、3088、2924、2877、1680、1614、1593、1516、1487、1471、1443、1408、1379、1250、1196、1011、906、860、831、808、789、775、744、715、675、559、492、472を観測した。FT−IRの測定結果を図3に示す。
【0166】
得られたスチレン誘導体(A1)を、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 TG−DTA6200 EXSTAR6000)を用い、昇温条件:30℃から550℃、昇温速度:10℃/分で測定した。熱重量分析−示差熱分析(TG−DTA)の測定結果を図4に示す。その測定の結果、融点:168℃、発熱温度:551℃、重量減少温度:210℃、404℃、521℃を観測した。
【0167】
得られたスチレン誘導体(A1)を、液体クロマトグラフ質量分析装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 LC/3DQMSシステム M−8000)にて、以下の条件にて測定した。
LC/MS測定条件:
イオン化源:ESIイオン化源(FI法により測定) キャリア:電子工業用メタノール
試料の調整方法:試料各1mgを電子工業用メタノールにて溶解した。なお、完全に溶解しなかった試料に関してはテトラヒドロフランを溶解するまで加えた。
第一細孔温度:120℃、第二細孔温度:100℃、脱溶媒温度:150℃、補助ガス温度:150℃、フォーカス電圧:20V、ドリフト電圧:20V
液体クロマトグラフ質量分析の測定結果を図5に示す。また、質量分析の理論値及び実測値を以下に示す。
実測値:LC/MS m/z=269.00 [M−H]
理論値:m/z=270.09
【0168】
(実施例A2)
2,5−ジヒドロキシ安息香酸100gと80%硫酸1441gとを50℃に加熱混合し、この分散液にtert−ブタノール144gを加えて、50℃で30分間撹拌した。その後、分散液にtert−ブタノール144gを加え、30分間撹拌する操作を3回行った。反応液を室温まで冷却し、氷水1kgに徐々に注ぎ、析出物を濾過、水洗し、更にヘキサン洗浄した。得られた析出物をメタノール200mLに溶解させ、水3.6Lに再沈殿させた。濾過後、得られた析出物を80℃にて24時間乾燥させtert−ブチル化されたサリチル酸中間体74.9gを得た。
得られたサリチル酸中間体25.0gをメタノール150mLに撹拌しながら溶解させ、炭酸カリウム36.9gを加えて65℃に加熱した。4−(クロロメチル)スチレン18.7gとメタノール100mLに混合溶解させた溶解液をこの反応液に滴下し、65℃にて3時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
得られた析出物をpH=2に調製した水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、その溶液を分離後、水を加えて水洗し、酢酸エチル層を分離後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、濾過した。その析出物をトルエンと酢酸エチルの混合溶液を用い、再結晶した。80℃で40時間乾燥して、下記化学式(A2)に示すスチレン誘導体(化合物例a1−2)を20.1g得た。
【0169】
【化25】
【0170】
得られたスチレン誘導体(A2)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ、98.6%だった。
【0171】
得られたスチレン誘導体(A2)について、測定溶媒をCDCl3に変えた以外は、実施例A1と同様の条件でH−NMRを測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A2)で示す構造を支持する。H−NMRの測定結果を図6に示す。
δ(ppm)=1.41(9H、s、−C(CH)、5.00(2H、s、−OCH−)、5.26(1H、d、C−H)、5.76(1H、d、C−H)、6.73(1H、d−d、−CH=)、7.25(1H、d、Ar−H)、7.31(1H、d、Ar−H)、7.40(1H、d、Ar−H)、7.44(1H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.00(2H、s、−OCH2−)のプロトンに照射したところ、7.25(1H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに8.1%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0172】
得られたスチレン誘導体(A2)について、FT−IRを実施例A1と同様の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3419、3093、3005、2964、2866、2710、2619、1894、1819、1788、1774、1753、1660、1630、1608、1570、1514、1483、1470、1429、1406、1394、1373、1362、1331、1290、1277、1225、1200、1180、1117、1066、1016、985、970、958、908、889、850、833、818、806、795、721、681、658、606、528、515、494、465、428、420を観測した。
【0173】
得られたスチレン誘導体(A2)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定した結果を図7に示す。その測定の結果、融点:183℃、発熱温度:517℃、563℃、重量減少温度:161℃、386℃、489℃、553℃を観測した。
【0174】
得られたスチレン誘導体(A2)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:74.29 H:6.71 N:0.00
理論値C:73.60 H:6.79 N:0.00
【0175】
得られたスチレン誘導体(A2)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1に記載の条件で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=324.86[M−H]
理論値:m/z=326.15
【0176】
(実施例A3)
2,4−ジヒドロキシ安息香酸78.63gをメタノール400mLに撹拌しながら溶解させ、炭酸カリウム152.03gを加えて60℃に加熱した。4−(クロロメチル)スチレン87.88gとメタノール100mLに混合溶解させた溶解液をこの反応液に滴下し、60℃にて2.5時間反応させた。得られた反応液を冷却後、析出物を濾過し、メタノールで洗浄した。
残渣を塩酸によりpH=1に調製したの水1Lに分散させた。その後、濾過水洗し、80℃で乾燥し、白色の下記化学式(A3)に示すスチレン誘導体(化合物例b1−1)を55.71g得た。
【0177】
【化26】
【0178】
得られたスチレン誘導体(A3)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ、97.7%だった。
【0179】
得られたスチレン誘導体(A3)について、H−NMRを実施例A1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A3)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.09(2H、s、−CH−)、5.27(1H、d、C−H)、5.85(1H、d、C−H)、6.38−6.41(2H、m、Ar−H)、6.74(1H、d−d、C=H)、7.41(2H、d、Ar−H)、7.49(2H、d、Ar−H)、7.61(1H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.09(2H、s、−OCH2−)のプロトンに照射したところ、6.38−6.41(2H、m、Ar−H)の芳香族プロトンに17.2%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0180】
得られたスチレン誘導体(A3)について、FT−IRを実施例A1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3086、3005、1639、1589、1514、1502、1450、1379、1288、1254、1182、1157、1105、1095、1014、904、827、779、729、698、649、596、532、471を観測した。
【0181】
得られたスチレン誘導体(A3)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定して、その測定の結果、融点:184℃、発熱温度:571℃、重量減少温度:216℃、430℃、554℃を観測した。
【0182】
得られたスチレン誘導体(A3)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:64.65 H:4.23 N:0.00
理論値C:71.10 H:5.22 N:0.00
【0183】
得られたスチレン誘導体(A3)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1の条件で測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=269.07 [M−H]
理論値:m/z=270.09
【0184】
(実施例A4)
2,6−ジヒドロキシ−4−メチル安息香酸25.0gをメタノール450mLに撹拌しながら溶解させ、炭酸カリウム40.5gを加えて65℃に加熱した。4−(クロロメチル)スチレン23.4gとメタノール100mLに混合溶解させた溶解液をこの反応液に滴下し、65℃にて5時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
得られた析出物をpH=2に調製した水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、その溶液を分離後、水を加えて水洗し、酢酸エチル層を分離後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄し、濾過した。得られた析出物をトルエンと酢酸エチルの混合溶液を用い再結晶し、80℃にて47時間乾燥後、下記化学式(A4)に示すスチレン誘導体を27.3g得た。
【0185】
【化27】
【0186】
得られたスチレン誘導体(A4)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ93.7%だった。
【0187】
得られたスチレン誘導体(A4)について、測定溶媒をCDCl3に変えた以外は、実施例A1と同様の条件でH−NMRを測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A4)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=3.28(3H、s、−CH)、4.39(2H、s、−OCH−)、5.25(1H、d、−C=C−H)、5.83(1H、d、−C=C−H)、6.73(1H、d−d、−CH=)、7.17(1H、d、Ar−H)、7.24(1H、d、Ar−H)、7.29(1H、d、Ar−H)、7.45(1H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、4.39ppm(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.29(2H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに15.3%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0188】
得られたスチレン誘導体(A4)について、FT−IRを実施例A1と同様の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3417、3097、3007、2969、2863、2621、1664、1611、1516、1434、1371、1333、1295、1279、1228、1202、1114、1064、973、911、854、836、809、805、724、684、496、467を観測した。
【0189】
得られたスチレン誘導体(A4)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定した結果、融点:156℃、発熱温度:509℃、559℃、重量減少温度:163℃、390℃、476℃、549℃を観測した。
【0190】
得られたスチレン誘導体(A4)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:69.93 H:5.33 N:0.00
理論値C:71.82 H:5.67 N:0.00
【0191】
得られたスチレン誘導体(A4)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1に記載の条件で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=283.2[M−H]
理論値:m/z=284.1
【0192】
(実施例A5)
5−tert−ブチル−2,3−ジヒドロキシ安息香酸5.53gをメタノール30mLに撹拌しながら溶解させ、炭酸カリウム8.02gを加えて65℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン4.12gを15分間で滴下し、65℃にて3時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過した。得られた濾液中のメタノールを減圧留去して、析出物を得た。得られた析出物をpH=2に調製した水に分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、その溶液を分離後、水を加えて水洗し、酢酸エチル層を分離後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去した。析出物をトルエン洗浄後、濾過した。その残渣を80℃で40時間乾燥後、下記化学式(A5)に示すスチレン誘導体(化合物例c1−2)を4.55g得た。
【0193】
【化28】
【0194】
得られたスチレン誘導体(A5)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ、99.3%だった。
【0195】
得られたスチレン誘導体(A5)について、H−NMRを実施例A1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A5)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=1.22(9H、s、−C(CH)、5.14(2H、s、−CH−)、5.25(1H、d、=C−H)、5.83(1H、d、=C−H)、6.73(1H、d−d、=C−H)、7.28(1H、d、Ar−H)、7.32(1H、d、Ar−H)、7.43(1H、d、Ar−H)、7.49(1H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.14(2H、s、−CH−)のプロトンに照射したところ、7.28(1H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに8.5%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0196】
得られたスチレン誘導体(A5)について、FT−IRを実施例A1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3093、3052、2964、2866、2632、1654、1616、1513、1483、1450、1406、1304、1277、1238、1198、1120、1080、1016、982、958、920、893、858、829、818、793、710、687、644、490を観測した。
【0197】
得られたスチレン誘導体(A5)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定した結果を図8に示す。その測定の結果、融点:142℃、発熱温度:592℃、重量減少温度:201℃、411℃、555℃を観測した。
【0198】
得られたスチレン誘導体(A5)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:73.92 H:6.64 N:0.00
理論値C:73.60 H:6.79 N:0.00
【0199】
得られたスチレン誘導体(A5)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1の条件にて測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=324.73[M−H]
理論値:m/z= 326.15
【0200】
(実施例A6)
メタノール100mLに5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸23.8gを撹拌しながら溶解させ、これに炭酸カリウム30.4gを加え、加熱し、62℃で30分間分散した。これに4−クロロメチルスチレン17.6gを1時間で滴下し、還流下、2.5時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、濾過した。得られた析出物をメタノールで洗浄し、次いで水300mLに加え、塩酸にてpH=1に調整し、30分間分散し、濾過水洗した。残渣を80℃で48時間乾燥させ白色固体で下記化学式(A6)に示すスチレン誘導体(化合物例b1−21)13.5gを得た。
【0201】
【化29】
【0202】
得られたスチレン誘導体(A6)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ、96.7%だった。
【0203】
得られたスチレン誘導体(A6)について、H−NMRを実施例A1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A6)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.27(2H、s、−OCH−)、5.30(1H、d、−C=C−H)、5.87(1H、d、−C=C−H)、6.75(1H、d−d、−C=C−H)、6.79(1H、s、Ar−H)、7.45(2H、d、Ar−H)7.53(2H、d、Ar−H)、7.90(1H、s、Ar−H)、11.54(1H、broad、OH)
前記H−NMRにおいて、5.27(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、6.79(1H、s、Ar−H)の芳香族プロトンに8.9%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0204】
得られたスチレン誘導体(A6)について、FT−IRを実施例A1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3005、2557、1651、1612、1514、1454、1439、1383、1354、1257、1192、1117、1049、1016、1005、985、904、895、842、822、787、715、683、606、496、455を観測した。
【0205】
得られたスチレン誘導体(A6)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定して、その測定の結果、融点:232℃、発熱温度:257℃、560℃、重量減少温度:227℃、510℃を観測した。
【0206】
得られたスチレン誘導体(A6)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:55.35 H:3.41 N:0.00
理論値C:55.04 H:3.75 N:0.00
【0207】
得られたスチレン誘導体(A6)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1の条件にて測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=348.80[M−H]
理論値:m/z=348.0
【0208】
(実施例A7)
80%硫酸1201gに2,5−ジヒドロキシ安息香酸とイソプロパノール210gを加え、75℃にて8時間撹拌した。放冷し、氷水2Lとヘキサン140mLを加え氷浴下、撹拌した。析出している結晶を濾過し、残渣をヘキサンで洗浄した。更にメタノール:水=6:4の混合液に分散し、濾過した。60℃にて48時間乾燥し、イソプロピル化されたサリチル酸中間体65.4gを得た。
イソプロピル化されたサリチル酸中間体22.5gをメタノール450mLに撹拌しながら溶解させ、炭酸カリウム60gを加えて65℃に加熱した。この反応液にPolymer Bulletin 19,111−117(1988)に記載の方法で合成した4−(2−クロロエチル)スチレン96.8gを滴下し、65℃にて3時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過した。得られた濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。得られた析出物をpH=2に調製した水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、その溶液を分離後、水を加えて水洗し、酢酸エチル層を分離後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。
更に、得られた析出物をヘキサン洗浄後、濾過した。その残渣をトルエンと酢酸エチルの混合用溶液を用いて再結晶し、濾過後、残渣を80℃で44時間乾燥させ下記化学式(A7)に示すスチレン誘導体(化合物例a1−20)を26.3g得た。
【0209】
【化30】
【0210】
得られたスチレン誘導体(A7)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ、96.6%だった。
【0211】
得られたスチレン誘導体(A7)について、H−NMRを実施例A1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A7)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=1.24(6H、d、−(CH)、2.88(1H、m、−CH−(CH)、4.07(2H、t、−O−CH−)、2.77(2H、t、−O−CH−CH−)、5.25(1H、d、−C=C−H)、(1H、d、―CH=CH)、6.73(1H、d−d、―CH=CH)、6.94(1H、d、Ar−H)、7.26(1H、d、Ar−H)、7.32(2H、d、Ar−H)、7.46(2H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、4.07(2H、t、−O−CH−)のプロトンに照射したところ、6.94(1H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに9.1%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0212】
得られたスチレン誘導体(A7)について、FT−IRを実施例A1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3431、3018、2878、1679、1620、1455、1345、1236、1132、1078、930、810、740、700、506を観測した。
【0213】
得られたスチレン誘導体(A7)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:75.60 H:6.57 N:0.00
理論値C:73.60 H:6.79 N:0.00
【0214】
得られたスチレン誘導体(A7)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1の条件で測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=325.8[M−H]
理論値:m/z=326.1
【0215】
(実施例A8)
2,3−ジヒドロキシ安息香酸53.9gをメタノール280mLに撹拌しながら溶解させ、これにK2CO3 106gを加え、65℃で、30分間撹拌した。これに4−クロロメチルスチレン61.7gを1時間で滴下した。その後、還流下、3時間反応した。反応液を室温まで放冷し、濾過後、ろ液中のメタノールを減圧下除去し、茶色半固体を得た。この茶色半固体をpH=1に調製した水2Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、酢酸エチル層を分離し硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を除去し、淡黄色固体124.3gを得た。この淡黄色固体をトルエンで再結晶し、析出物を濾過後、80℃にて40時間乾燥させ、淡黄色固体で下記化学式(A8)に示すスチレン誘導体(化合物例c1−1)を54.5g得た。
【0216】
【化31】
【0217】
得られた化学式(A8)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ95.0%だった。
【0218】
得られたスチレン誘導体(A8)について、H−NMRを実施例A1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A8)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.11(2H、s、−OCH−)、5.25(1H、d、−C=C−H)、5.83(1H、d、−C=C−H)、6.72(1H、d−d、−C=C−H)、6.80(1H、t、Ar−H)、7.25(1H、d、Ar−H)、7.34−7.49(5H、m、Ar−H)
前記、H−NMRにおいて、5.11(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.25(1H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに9.9%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0219】
得られたスチレン誘導体(A8)について、FT−IRを実施例A1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3236、3032、2879、2719、2594、1666、1612、1581、1464、1443、1385、1306、1246、1234、1178、1162、1087、1026、1018、908、862、837、827、781、748、696、653、607、480を観測した。
【0220】
得られたスチレン誘導体(A8)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定して、その測定の結果、融点:177℃、発熱温度:613℃、重量減少温度:181℃、413℃、593℃を観測した。
【0221】
得られたスチレン誘導体(A8)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:71.66 H:4.75 N:0.00
理論値C:71.10 H:5.22 N:0.00
【0222】
得られたスチレン誘導体(A8)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=268.8[M−H]
理論値:m/z=270.09
【0223】
(実施例A9)
p−クロロメチルスチレンとm−クロロメチルスチレンの混合クロロメチルスチレン試薬を用い、4−(4’−ビニルベンジロキシ)−2−ヒドロキシ安息香酸と4−(3’−ビニルベンジロキシ)−2−ヒドロキシ安息香酸との混合物の合成を例示する。
2,4−ジヒドロキシ安息香酸78.6gをメタノール400mLに撹拌しながら溶解させ、これに炭酸カリウム152.0gを加え、60℃で30分間撹拌した。これに、メタノール50mLに溶解したp−クロロメチルスチレンとm−クロロメチルスチレンとの混合クロロメチルスチレン(AGCセイケミカル株式会社製、商品名:CMS−P)83.5gを1時間で滴下した。還流下、3時間反応後、室温まで放冷し、析出物を濾過後、メタノールで洗浄した。得られた残渣を水1Lに加え、塩酸にてpH=1にして、30分間撹拌後、濾過、水洗した。80℃で48時間乾燥し、白色固体で下記化学式(A9)に示すスチレン誘導体(化合物例b1−1と化合物例b2−1との混合物)76.2gを得た。
【0224】
【化32】
【0225】
得られたスチレン誘導体(A9)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ、混合物として97.7%だった。
【0226】
得られたスチレン誘導体(A9)について、H−NMRを実施例A1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A9)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.14(2H、s、−CH−)5.25−5.30(1H、dX2、C−H)、5.81−5.88(1H、dX2、C−H)、6.53−6.57(2H、m、Ar−H)、6.68−6.79(1H、dX2、C−H)、7.32−7.54(4H、m、Ar−H)、7.67−7.70(1H、dX2、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.14(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、6.53−6.57の芳香族プロトンに16.8%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0227】
得られたスチレン誘導体(A9)についてFT−IRを実施例A1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3448、3007、2864、2551、2362、1655、1622、1514、1454、1437、1383、1350、1250、1192、1151、1095、1036、1014、991、980、910、852、835、823、793、777、681、648、606、532、496、461を観測した。
【0228】
得られたスチレン誘導体(A9)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定して、その測定の結果、吸熱温度157℃、発熱温度:440℃、570℃、重量減少温度:216℃、434℃、542℃を観測した。
【0229】
得られたスチレン誘導体(A9)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:71.71 H:5.01 N:0.00
理論値C:71.10 H:5.22 N:0.00
【0230】
得られた化学式(A9)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1の条件にて測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=269.0[M−H]
理論値:m/z=270.09
【0231】
(実施例A10)
3,4−ジヒドロキシ安息香酸157.3gをメタノール1200mLに撹拌しながら溶解させ、これにK2CO3 304.1gを加え、65℃で、30分間撹拌した。これに4−クロロメチルスチレン175.8gを1時間で滴下した。還流下、1時間反応後、室温まで放冷した。得られた析出物を濾過後、メタノールで洗浄した。残渣をpH=1に調製した水2Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、酢酸エチル層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を除去した。得られた結晶を酢酸エチルにて再結晶し、析出物を濾過した。80℃にて40時間乾燥させ、白色固体で下記化学式(A10)に示すスチレン誘導体(化合物例d1−1)52.9gを得た。
【0232】
【化33】
【0233】
得られた化学式(A10)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ96.2%だった。
【0234】
得られたスチレン誘導体(A10)について、H−NMRを実施例A1に記載の条件で測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A10)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=5.17(2H、s、−OCH−)、5.27(1H、d、−C=C−H)、5.85(1H、d、−C=C−H)、6.74(1H、d−d、−C=C−H)、7.05(1H、d、Ar−H)、7.35−7.38(2H、m、Ar−H)、7.44(2H、d、Ar−H)、7.50(2H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.17(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.05(1H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに12.8%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0235】
得られたスチレン誘導体(A10)について、FT−IRを実施例A1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3550、2931、2877、2823、2557、1884、1801、1678、1620、1593、1560、1516、1473、1462、1421、1379、1362、1311、1286、1273、1223、1188、1130、1093、1003、991、943、895、866、837、825、766、749、730、650、598、563、478、438、403を観測した。
【0236】
得られたスチレン誘導体(A10)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定して、その測定の結果、融点:197℃、発熱温度:611℃、重量減少温度:175℃、230℃、410℃、570℃を観測した。
【0237】
得られたスチレン誘導体(A10)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:73.97 H:6.92 N:0.00
理論値C:73.60 H:6.79 N:0.00
【0238】
得られたスチレン誘導体(A10)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=268.93[M−H]
理論値:m/z=270.09
【0239】
(実施例A11)
3,4−ジヒドロキシ安息香酸157.3gと80%硫酸1532.2gとを60℃に加熱混合し、この分散液にtert−ブタノール890.5gを45分間で加えて65℃で30分間撹拌した。その後、氷水2kgに徐々に注ぎ、トルエン1Lを加え、析出物を濾過、水洗し、得られた析出物を80℃にて乾燥させtert−ブチル化されたサリチル酸中間体160.0gを得た。
得られたサリチル酸中間体63.1gをメタノール250mLに撹拌しながら溶解させ、炭酸カリウム91.21gを加えて62℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン52.6gを45分間で加え67℃にて3時間反応させた。得られた反応液を冷却後、析出物を濾過し、メタノールで洗浄した。
得られた濾過後の残渣をpH=2に調製した水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、その溶液を分離後、水を加えて水洗し、酢酸エチル層を分離し硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をトルエンにて再結晶し、析出物を濾過後、80℃にて44時間乾燥させ、下記化学式(A11)に示すスチレン誘導体(化合物例f1−1)を47.5g得た。
【0240】
【化34】
【0241】
得られたスチレン誘導体(A11)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ、97.9%だった。
【0242】
得られたスチレン誘導体(A11)について、実施例A1と同様の条件でH−NMRを測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A11)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=1.37(9H、s、−C(CH)、5.21(2H、s、−OCH−)、5.26(1H、d、−C=C−H)、5.85(1H、d、−C=C−H)、6.73(1H、d−d、Ar−H)、7.41−7.49(5H、s、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.21(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.41(1H、s、Ar−H)の芳香族プロトンに8.3%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0243】
得られたスチレン誘導体(A11)について、FT−IRを実施例A1と同様の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3518、2956、2598、1678、1630、1605、1516、1489、1427、1387、1360、1302、1255、1215、1171、1117、1047、1018、993、943、918、858、841、829、808、769、762、735、698、652、555、490を観測した。
【0244】
得られたスチレン誘導体(A11)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定した結果、融点:175℃、発熱温度:579℃、重量減少温度:139℃、221℃、300℃、413℃を、544℃を観測した。
【0245】
得られたスチレン誘導体(A11)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:74.00 H:6.92 N:0.00
理論値C:73.60 H:6.79 N:0.00
【0246】
得られたスチレン誘導体(A11)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1に記載の条件で測定した。その質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=325.20[M−H]
理論値:m/z=326.15
【0247】
(実施例A12)
2,5−ジヒドロキシ安息香酸46.23gと80%硫酸460gとを70℃に加熱混合し、この分散液に2−オクタノール78.15gを10分間で加えて70℃で30分間撹拌した。その後、分散液に2−オクタノール78.15gを加え30分間撹拌する操作を2回行った。30分間撹拌後、反応液を室温まで冷却し、氷水3kgに徐々に注ぎいだ。得られた析出物をヘキサン洗浄、メタノール500mLに溶解させ、水4.5Lに再沈殿させた。濾過後、80℃にて24時間乾燥させ、反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、ヘキサン:トルエン留分にて、オクチル化されたサリチル酸中間体29.3gを得た。
得られたサリチル酸中間体25.0gをメタノール150mLに撹拌しながら溶解させ、炭酸カリウム29.1gを加えて65℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン14.7gとメタノール100mLに混合溶解させた溶解液を滴下し、65℃にて3時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
得られた析出物をpH=2に調製した水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、その溶液を分離後、水を加えて水洗し、酢酸エチル層を分離し硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をヘキサン洗浄後、濾過し、残渣をトルエンと酢酸エチルの混合溶液にて再結晶した。析出物を濾過後、80℃にて45時間乾燥させ、下記化学式(A12)に示すスチレン誘導体(化合物例a1−3)を24.1g得た。
【0248】
【化35】
【0249】
得られたスチレン誘導体(A12)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ、96.2%だった。
【0250】
得られたスチレン誘導体(A12)について、測定溶媒をCDCl3に変えた以外は、実施例A1と同様の条件でH−NMRを測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A12)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=0.95(3H、t、−CH)、1.18−1.51(16H、broad、−(CH)6−、−CH)、3.79(1H、m、−CH−)、5.02(2H、s、−OCH−)、5.24(1H、d、C−H)、5.78(1H、d、C−H)、6.69(1H、d−d、−CH=)、7.24(1H、d、Ar−H)、7.32(1H、d、Ar−H)、7.42(1H、d、Ar−H)、7.44(1H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.02(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.24(1H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに8.1%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0251】
得られたスチレン誘導体(A12)について、FT−IRを実施例A1と同様の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3425、3111、3004、2966、2932、2875、2866、2734、2654、1911、1824、1801、1766、1715、1659、1624、1611、1610、1521、1497、1459、1463、1411、1411、1378、1365、1320、1290、1278、1227、1201、1178、1156、1069、1040、986、965、941、900、893、847、844、822、808、795、722、685、660、610、524、522、499、468、422を観測した。
【0252】
得られたスチレン誘導体(A12)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定して、その測定の結果、融点:166℃、発熱温度:514℃、557℃、重量減少温度:377℃、537℃を観測した。
【0253】
得られたスチレン誘導体(A12)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:74.10 H:7.85 N:0.00
理論値C:75.36 H:7.91 N:0.00
【0254】
得られたスチレン誘導体(A12)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1に記載の条件で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=379.9[M−H]
理論値:m/z=382.5
【0255】
(実施例A13)
p−クロロメチルスチレンとo−クロロメチルスチレンの混合クロロメチルスチレン試薬を用い、5−(4’−ビニルベンジロキシ)−3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ安息香酸と5−(2’−ビニルベンジロキシ)−3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ安息香酸の混合物の合成を例示する。
実施例A2で得られたサリチル酸中間体である3−tert−ブチル−2,5−ジヒドロキシ安息香酸25.0gをメタノール150mLに撹拌しながら溶解させ、これに炭酸カリウム40.0gを加え、65℃で1時間撹拌した。これに、メタノール100mLに溶解したp−クロロメチルスチレンとo−クロロメチルスチレンとの混合クロロメチルスチレン(CHANGZHOU WUJIN LINCHUAN CHEMICAL社製、商品名:4−Chloromethyl styrene)23.4gとメタノール100mLに混合溶解させた溶解液を滴下し、65℃にて3時間反応させた。得られた反応液を室温まで放冷し、析出物を濾過後、メタノールで洗浄した。濾過残渣を水1Lに加え、塩酸にてpH=1にして、30分間撹拌後、濾過、水洗した。80℃で48時間乾燥し、白色固体で下記化学式(A13)に示すスチレン誘導体(化合物例a1−2と化合物例a3−2との混合物)を23.2g得た。
【0256】
【化36】
【0257】
得られたスチレン誘導体(A13)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ、97.7%だった。
【0258】
得られたスチレン誘導体(A13)について、測定溶媒をCDCl3に変えた以外は、実施例A1と同様の条件でH−NMRを測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A13)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=1.51−1.55(9H、s×2、−C(CH)、5.22−5.29(1H、dX2、C−H)、5.80−5.87(1H、d×2、C−H)、6.55−6.60(2H、m、Ar−H)、6.70−6.81(1H、d×2、C−H)、7.36−7.58(4H、m、Ar−H)、7.62−7.71(1H、m、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.22−5.29(1H、d×2、C−H)のプロトンに照射したところ、6.55−6.60の芳香族プロトンに15.5%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0259】
得られたスチレン誘導体(A13)について、FT−IRを実施例A1と同様の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3420、3004、2966、2709、2622、1893、1822、1790、1778、1756、1655、1633、1612、1511、1487、1470、1421、1411、1396、1377、1365、1322、1300、1280、1200、1188、1115、966、957、910、890、832、811、804、795、723、678、659、604、525、514、467、422を観測した。
【0260】
得られたスチレン誘導体(A13)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定した結果、吸熱温度151℃、発熱温度:433℃、549℃、重量減少温度:209℃、444℃、543℃を観測した。
【0261】
得られたスチレン誘導体(A13)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:69.57 H:5.61 N:0.00
理論値C:71.82 H:5.67 N:0.00
【0262】
得られたスチレン誘導体(A13)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1に記載の条件で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=283.86[M−H]
理論値:m/z=284.31
【0263】
本発明のエステル化されたスチレン誘導体の合成例を実施例A14〜A15に示す。
【0264】
(実施例A14)
2,4−ジヒドロキシ安息香酸メチルエステル50.44gをメタノール300mLに撹拌しながら溶解させ、炭酸カリウム62.2gを加えて60℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン53.0gを滴下し、65℃にて4.5時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
得られた析出物をpH=2に調製した水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、その溶液を分離後、水を加えて水洗し、酢酸エチル層を分離し硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をメタノールで再結晶した。析出物を濾過後、80℃にて20時間乾燥させ、下記化学式(A14)に示すスチレン誘導体(化合物例b1−23)を17.2g得た。
【0265】
【化37】
【0266】
得られたスチレン誘導体(A14)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ、98.0%だった。
【0267】
得られたスチレン誘導体(A14)について、測定溶媒をCDCl3に変えた以外は、実施例A1と同様の条件でH−NMRを測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A14)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=3.86(3H、s、−OCH)、5.16(2H、s、−OCH−)、5.28(1H、d、C−H)、5.85(1H、d、C−H)、6.58−6.62(2H、m、Ar-H)、6.74(1H、d−d、−CH=)、7.42(2H、d、Ar−H)、7.50(2H、d、Ar−H)、7.72(1H、d、Ar−H)、10.77(1H、s、−OH)
前記H−NMRにおいて、5.16(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.24(2H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに12.5%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0268】
得られたスチレン誘導体(A14)について、FT−IRを実施例A1と同様の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3180、3091、2954、1907、1824、1668、1620、1579、1514、1504、1489、1468、1439、1408、1383、1346、1298、1258、1215、1178、1144、1095、1005、985、978、958、945、910、862、843、827、785、735、702、650、634、588、532、486、463を観測した。FT−IRの測定結果を図9に示す。
【0269】
得られたスチレン誘導体(A14)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定した結果を図10に示す。その測定の結果、融点:85.5℃、発熱温度:450℃、569℃、重量減少温度:196℃、369℃、445℃、568℃を観測した。
【0270】
得られたスチレン誘導体(A14)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:72.03 H:5.70 N:0.00
理論値C:71.82 H:5.67 N:0.00
【0271】
得られたスチレン誘導体(A14)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1に記載の条件で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=283.1[M−H]
理論値:m/z=284.1
【0272】
(実施例A15)
2,5−ジヒドロキシ安息香酸ブチルエステル50.0gをメタノール200mLに撹拌しながら溶解させ、炭酸カリウム73.2gを加えて60℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン37.0gを滴下し、65℃にて5.0時間反応させた。得られた反応液を冷却後、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。
得られた析出物をpH=2に調製した水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、その溶液を分離後、水を加えて水洗し、酢酸エチル層を分離し硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。得られた析出物をメタノールで再結晶した。析出物を濾過後、80℃にて20時間乾燥させ、下記化学式(A15)に示すスチレン誘導体(化合物例a1−28)を15.2g得た。
【0273】
【化38】
【0274】
得られたスチレン誘導体(A15)について、HPLC純度を実施例A1に記載の条件で測定したところ、97.7%だった。
【0275】
得られたスチレン誘導体(A15)について、測定溶媒をCDCl3に変えた以外は、実施例A1と同様の条件でH−NMRを測定した。H−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、前記化学式(A15)で示す構造を支持する。
δ(ppm)=1.12(3H、t、−CH)、1.23−1.44(2H、m、−CH−)、1.56−1.95(2H、m、−CH−)、4.21(2H、t、−CH−)、5.15(2H、s、−OCH−)、5.25(1H、d、C−H)、5.86(1H、d、C−H)、6.38−6.41(2H、m、Ar-H)、6.71(1H、d−d、−CH=)、7.40(2H、d、Ar−H)、7.48(2H、d、Ar−H)、7.63(1H、d、Ar−H)
前記H−NMRにおいて、5.15(2H、s、−OCH−)のプロトンに照射したところ、7.40(2H、d、Ar−H)の芳香族プロトンに13.8%の核オーバーハウザー効果が観測された。
【0276】
得られたスチレン誘導体(A15)について、FT−IRを実施例A1と同様の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3177、3086、2946、1911、1832、1670、1622、1581、1522、1493、1477、1428、1400、1375、1343、1301、1261、1209、1169、1146、1099、1004、978、936、910、858、837、789、732、699、647、629、584、536、458を観測した。
【0277】
得られたスチレン誘導体(A15)について、TG−DTAを実施例A1に記載の条件で測定して、その測定の結果、融点:73.8℃、発熱温度:443℃、549℃、重量減少温度:176℃、349℃、558℃を観測した。
【0278】
得られたスチレン誘導体(A15)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の理論値及び実測値を示す。
実測値C:72.78 H:6.71 N:0.00
理論値C:73.60 H:6.79 N:0.00
【0279】
得られたスチレン誘導体(A15)について、液体クロマトグラフ質量分析を実施例A1に記載の条件で測定した。質量分析の理論値及び実測値を示す。
実測値:LC/MS m/z=325.5[M−H]
理論値:m/z=326.1
【0280】
本発明の荷電制御樹脂(共重合体)の合成例をそれぞれ実施例B1〜B26に示す。
【0281】
(実施例B1)
(化学式(A2):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
実施例A2で得られたスチレン誘導体(A2)9.91gとスチレン60.09gとをトルエン42mLに溶解させ、1時間撹拌した。その後、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)4.62gの混合液を22分間で滴下した。更に110℃にて4時間反応した後、冷却し、メタノール1Lに滴下し、白色析出物を得た。この反応液を濾過後、得られた析出物をテトラヒドロフラン300mLに溶解した。その後、メタノール1.5Lに滴下し、白色析出物を析出させ、濾過した。得られた残渣を減圧下90℃にて乾燥させ、スチレン誘導体とスチレンとから得られた共重合体(B1)57.56gを得た。
【0282】
得られた共重合体(B1)について、H−NMR(核磁気共鳴装置:日本電子株式会社製 FT−NMR JNM−AL300)を用い、共鳴周波数:300MHz 測定核種:1H、使用溶媒:CDCl3、測定温度:室温の条件で測定した。そのH−NMRの測定結果を図11に示す。
【0283】
共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A2)で示されるスチレン誘導体(A2)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体A2由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.9(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A2)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.69%含有されていることを確認した。
【0284】
得られた共重合体(B1)を、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計(日本電子株式会社製、JIR−SPX60S))を使用し、KBr法にて測定したところ、
ν(cm−1)=3455、3082、3061、3026、2922、2850、1942、1867、1799、1741、1674、1601、1493、1452、1362、1265、1201、1155、1030、906、798、756、698、540を観測した。そのFT−IRの測定結果を図12に示す。
【0285】
得られた共重合体(B1)は、化合物例a1−2から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるAユニット及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている。
【0286】
【化39】
【0287】
得られた共重合体(B1)を、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示差熱熱重量同時測定装置TG−DTA6200 EXSTAR6000を用い、昇温条件:30℃から550℃ 昇温速度:10℃/分で測定した。熱重量分析−示差熱分析(TG−DTA)の測定結果を図13に示す。その測定の結果、重量減少温度:345℃、513℃、発熱温度:337℃、535℃を観測した。
【0288】
得られた共重合体(B1)の分子量分布を、GPC(株式会社島津製作所製 検出器:RID−10A、カラムオーブン:CTO−20A、ポンプ:LC−20AT、デガッサー:DGU−20A5)により、以下の測定条件にて測定を行い、分子量分布、数平均分子量、重量平均分子量を確認した。
GPC測定条件としては、測定対象サンプル5mgをテトラヒドロフラン5mLに溶解させ、ポア径が0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過してサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
カラム:超高速SEC(サイズ排除)セミミクロGPCカラム 排除限界分子量:ポリスチレン 4×106(東ソー株式会社製 TSKgel SuperHM−M) 2本、
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン(昭和電工株式会社製 Shodex STANDARD SM−105 (S−3730、S−2480、S−1230、S−579、S−197、S−551、S−31.4、S−12.8、S−3.95、S−1.20))により作成した分子量校正曲線を使用した。
【0289】
前記条件により測定された共重合体(B1)の分子量分布の測定結果を図14に示す。その測定の結果、共重合体(B1)の数平均分子量(Mn)は16160、重量平均分子量(Mw)は66496であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=4.1であることを確認した。
【0290】
元素分析に於いては、原料モノマーの元素分析の測定結果と共重合体の元素分析の測定結果から、共重合体中の特定モノマーの存在比率を推定することができる。得られた共重合体(B1)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:89.45 H:7.69 N:0.00 O:2.86
理論値C:89.60 H:7.62 N:0.00 O:2.78
ここで、酸素(O)は、炭素(C)と水素(H)及び窒素(N)の値の合計値100%より除算して算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A2)が共重合体中に5%含まれている場合の推定理論値と一致した。
【0291】
得られた共重合体(B1)のガラス転移温度を、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示差走査熱量計DSC6200 EXSTAR6000により、以下の測定条件にて測定を行い、ガラス転移温度を確認した。
ガラス転位測定条件としては、測定対象サンプルを170℃まで加熱後、急冷した後、昇温条件:30−170℃、昇温速度:10℃/分で測定した。ガラス転移温度の測定結果を図15に示す。その測定の結果、共重合体(B1)のガラス転位温度は104.0℃だった。
【0292】
得られた共重合体(B1)の体積固有抵抗率をアドバンテスト社製、デジタル超高抵抗:微少電流計R8340A型により、以下の測定条件にて測定を行い、体積固有抵抗率を確認した。
体積固有抵抗率の測定条件としては、JIS規格(K6911)に基づいて以下の条件で測定した。
印加電圧と時間:500V、1分間、電極:主電極38mmφ、荷重:2000kg、試験雰囲気:温度23±2℃、湿度50±5RH。測定の結果、共重合体(B1)の体積固有抵抗率は、1.3×1016Ωcmを確認した。
【0293】
(実施例B2)
(化学式(A2):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A2)9.91g、スチレン60.09gをトルエン42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)4.62gの混合液を3分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール1Lに滴下し、白色析出物を析出させ、濾過し、残渣を減圧下60℃で10時間乾燥させ、共重合体(B2)を29.5g得た。
【0294】
得られた共重合体(B2)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A2)で示されるスチレン誘導体(A2)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A2)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.9(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A2)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.38%含有されていることを確認した。
【0295】
得られた共重合体(B2)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3425、3081、3061、3025、2922、2850、1942、1869、1801、1741、1673、1603、1493、1452、1363、1265、1201、1155、1030、906、756、698、540を観測した。
【0296】
得られた共重合体(B2)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。そのTG−DTAの測定結果を図16に示す。その測定の結果、発熱温度:388℃、538℃、重量減少温度:330℃、513℃を観測した。
【0297】
得られた共重合体(B2)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。前記条件により測定された共重合体(B2)の分子量分布測定結果を図17に示す。その測定の結果、共重合体(B2)の数平均分子量(Mn)は6861、重量平均分子量(Mw)は14225であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=2.1であることを確認した。
【0298】
得られた共重合体(B2)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B2)のガラス転移温度は、99.02℃であることを確認した。
【0299】
(実施例B3)
(化学式(A2):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A2)9.91g、スチレン60.09gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)4.62gとの混合液を36分間で滴下した。更に110℃で1.5時間反応した後、冷却した。得られた反応液をテトラヒドロフラン300mLに溶解させ、メタノール1Lに滴下し沈殿させた。反応液を濾過後、残渣を減圧下90℃で20時間乾燥させ、共重合体(B3)を14.89g得た。
【0300】
得られた共重合体(B3)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A2)で示されるスチレン誘導体(A2)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A2)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.91(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A2)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.59%含有されていることを確認した。
【0301】
得られた共重合体(B3)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3435、3082、3061、3026、2922、2850、1942、1871、1741、1678、1601、1583、1493、1452、1437、1363、1265、1201、1180、1155、1099、1030、906、798、756、698、540を観測した。
【0302】
得られた共重合体(B3)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定結果を図18に示す。測定の結果、発熱温度:358℃、537℃、重量減少温度:343℃、515℃を観測した。
【0303】
得られた共重合体(B3)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。前記条件により測定された共重合体(B3)の分子量分布測定結果を図19に示す。その測定の結果、共重合体(B3)の数平均分子量(Mn)は22178、重量平均分子量(Mw)は437142であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=19.7であることを確認した。
【0304】
得られた共重合体(B3)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B3)のガラス転移温度は、102.7℃であることを確認した。
【0305】
得られた共重合体(B3)について、体積固有抵抗率を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B3)の体積固有抵抗率は、1.1×1017Ωcmを確認した。
【0306】
(実施例B4)
(化学式(A2):スチレン=1.0mol:99.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A2)1.07g、スチレン33.93gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を17分間で滴下した。更に110℃で4.0時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール500mLに沈殿させ、粘性の高い白色物を析出させた。上澄みのメタノールを除去し、テトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液を加えてメタノール2Lに沈殿させ、濾過した。その後、メタノール200mLで2回振り掛け洗浄し、残渣を、減圧下80℃で30時間乾燥させ、共重合体(B4)を32.66g得た。
【0307】
得られた共重合体(B4)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A2)で示されるスチレン誘導体(A2)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A2)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.90(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A2)から得られる構成単位は、ピークの積分値から0.48%含有されていることを確認した。
【0308】
得られた共重合体(B4)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3433、3082、3061、3026、3001、2922、2848、1944、1871、1803、1741、1601、1583、1493、1452、1375、1327、1263、1200、1182、1155、1068、1028、980、964、906、841、756、698、621、540を観測した。
【0309】
得られた共重合体(B4)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:345℃、重量減少温度:339℃、512℃を観測した。
【0310】
得られた共重合体(B4)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B4)の数平均分子量(Mn)は11184、重量平均分子量(Mw)は28845であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=2.6であることを確認した。
【0311】
得られた共重合体(B4)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:91.43 H:7.76 N:0.00 O:0.81
理論値C:91.67 H:7.73 N:0.00 O:0.60
酸素(O)は、実施例B1と同様に算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A2)が共重合体中に1%含まれている場合の推定理論値と一致した。
【0312】
得られた共重合体(B4)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B4)のガラス転移温度は、92.57℃であることを確認した。
【0313】
得られた共重合体(B4)について、体積固有抵抗率を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B4)の体積固有抵抗率は、0.67×1016Ωcmを確認した。
【0314】
(実施例B5)
(化学式(A2):スチレン=10.0mol:90.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A2)9.04g、スチレン25.96gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を20分間で滴下した。更に110℃で4.0時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに沈殿させ、粘性の高い白色物を析出させた。上澄みのメタノールを除去し、テトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液を加えて、メタノール2Lに沈殿させ、濾過した。その後、メタノール200mLで2回振り掛け洗浄し、残渣を、減圧下90℃で10時間乾燥させ、共重合体(B5)を19.03g得た。
【0315】
得られた共重合体(B5)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定しようとしたが、測定溶媒としての重クロロホルム、DMSO(ジメチルスルホキシド)d−6などに溶解しなかった為、測定することができなかった。
【0316】
得られた共重合体(B5)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3427、3103、3082、3061、3026、3001、2922、2852、1944、1871、1803、1741、1680、1659、1603、1543、1512、1493、1452、1435、1392、1363、1271、1201、1182、1155、1099、1041、1032、1018、964、906、843、820、798、758、698、619、598、540を観測した。
【0317】
得られた共重合体(B5)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:355℃、535℃、重量減少温度:244℃、342℃、514℃を観測した。
【0318】
得られた共重合体(B5)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B5)の数平均分子量(Mn)は16750、重量平均分子量(Mw)は61867であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=3.7であることを確認した。
【0319】
得られた共重合体(B5)について、元素分析を実施例A1に記載の条件で測定した。以下に、元素分析の実測値を示す。
実測値C:86.49 H:7.46 N:0.00 O:6.05
理論値C:86.29 H:7.45 N:0.00 O:6.26
酸素(O)は、実施例B1と同様に算出した。前記測定結果は、スチレン誘導体(A2)が共重合体中に13%含まれている場合の推定理論値と一致した。
【0320】
得られた共重合体(B5)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B5)のガラス転移温度は、118.5℃であることを確認した。
【0321】
得られた共重合体(B5)について、体積固有抵抗率を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B5)の体積固有抵抗率は、0.98×1016Ωcmを確認した。
【0322】
(実施例B6)
(化学式(A3):スチレン=5.0mol:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A3)4.21g、スチレン30.79gをDMF21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、DMF21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を18分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をメタノール500mLに滴下し、ゴム状の白色物を析出させた。デカンターションにより上澄み液を除去した後、テトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液を加えてメタノール2Lに沈殿させ、濾過した。残渣を減圧下90℃で20時間乾燥させ、共重合体(B6)を29.56g得た。
【0323】
得られた共重合体(B6)について実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A3)で示されるスチレン誘導体(A3)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A3)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.97(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A3)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.68%含有されていることを確認した。
【0324】
得られた共重合体(B6)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3427、3059、3026、2922、2848、1941、1873、1805、1741、1674、1622、1601、1583、1493、1452、1371、1244、1182、1151、1092、1028、978、962、906、839、758、698、540を観測した。
【0325】
得られた共重合体(B6)は、化合物例b1−1から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるCユニット及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている。
【0326】
【化40】
【0327】
得られた共重合体(B6)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:367℃、539℃、重量減少温度:213℃、344℃、517℃を観測した。
【0328】
得られた共重合体(B6)についてGPCを実施例B1に記載の条件で測定した。前記条件により測定された共重合体(B6)の分子量分布測定の結果、共重合体(B6)の数平均分子量(Mn)は7088、重量平均分子量(Mw)は18085であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=2.6であることを確認した。
【0329】
得られた共重合体(B6)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B6)のガラス転移温度は、105.2℃であることを確認した。
共重合体(B6)の体積固有抵抗率は、0.61×1016Ωcmを確認した。
【0330】
(実施例B7)
(化学式(A1):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A1)8.41g及びスチレン61.60gをDMF42mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、DMF42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)4.62gの混合液を24分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。得られた反応液をテトラヒドロフラン300mLに加え、溶解液を加えてメタノール3.5Lに沈殿させ、濾過した。残渣をメタノール200mLで2回洗浄し、減圧下90℃で30時間乾燥し、共重合体(B7)を59.19g得た。
【0331】
得られた共重合体(B7)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前の原料としてのスチレン及び前記化学式(A1)に示されるスチレン誘導体(A1)由来のビニル基のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A1)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.9(−CH−O−)付近のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A1)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.73%含有されていることを確認した。
【0332】
得られた共重合体(B7)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3433、3059、3026、2922、2848、1944、1873、1801、1741、1678、1616、1601、1493、1452、1265、1215、1155、1070、1028、906、758、698、540を観測した。
【0333】
得られた共重合体(B7)は、化合物例a1−1から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるDユニット及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている。
【0334】
【化41】
【0335】
得られた共重合体(B7)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:347℃、542℃、重量減少温度:329℃、393℃、520℃を観測した。
【0336】
得られた共重合体(B7)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。測定の結果、共重合体(B7)の数平均分子量(Mn)は10118、重量平均分子量(Mw)は48190であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=4.8であることを確認した。
【0337】
得られた共重合体(B7)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B7)のガラス転移温度は、104.6℃であることを確認した。
【0338】
(実施例B8)
(化学式(A6):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A6)5.25g及びスチレン29.75gをDMF21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、DMF21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を18分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、緑色物を析出させた。この析出物をテトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液を加えてメタノール1.5Lに沈殿させ、濾過した。更にメタノール50mLで2回振り掛け洗浄を行い、残渣を減圧下90℃で15時間乾燥させ、共重合体(B8)を31.71g得た。
【0339】
得られた共重合体(B8)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前の原料としてのスチレン及び前記化学式(A6)に示されるスチレン誘導体(A6)由来のビニル基のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A6)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.04(−CH−O−)付近のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A6)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.82%含有されていることを確認した。
【0340】
得られた共重合体(B8)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3427、3082、3059、3026、2921、2848、1940、1872、1805、1741、1678、1612、1601、1583、1493、1452、1371、0、1182、1155、1095、1070、1030、906、837、756、698、620、540、449を観測した。
【0341】
得られた共重合体(B8)は、化合物例b1−21から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるEユニット及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている。
【0342】
【化42】
【0343】
得られた共重合体(B8)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:347℃、540℃、重量減少温度:221℃、324℃、513℃を観測した。
【0344】
得られた共重合体(B8)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B8)の数平均分子量(Mn)は10220、重量平均分子量(Mw)は38008であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=3.7であることを確認した。
【0345】
得られた共重合体(B8)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B8)のガラス転移温度は、110.1℃であることを確認した。
【0346】
(実施例B9)
(化学式(A2):アクリル酸:スチレン=5.0:5.0:90.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A2)5.03g、スチレン28.87g、アクリル酸1.11g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.75gをテトラヒドロフラン21mLに溶解させ、2時間撹拌した。これとは別にテトラヒドロフラン21mLを窒素気流下(50mL/min)で66℃で1時間撹拌した。このテトラヒドロフランに先のモノマー溶液を37分間で滴下し、4時間撹拌した後、冷却した。その後、反応液をヘキサン500mLに滴下し、粘性の高い黄色析出物を得た。上澄みの液を除去し、70℃減圧下48時間乾燥させた後、固体を酢酸エチル100mLに溶解し、溶解液をヘキサン1.5Lに滴下し白色の固体を得た。これを濾過後、ヘキサン100mLで2回洗浄後、残渣を減圧下90℃で15時間乾燥させ、共重合体(B9)を18.24g得た。
【0347】
得られた共重合体(B9)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A2)で示されるスチレン誘導体(A2)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体A2由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.92(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A2)から得られる構成単位は、ピークの積分値から2.31%含有されていることを確認した。
【0348】
得られた共重合体(B9)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3439、3103、3082、3061、3026、3001、2924、2850、1944、1871、1803、1745、1686、1603、1583、1512、1493、1452、1437、1392、1363、1311、1275、1221、1201、1182、1155、1099、1030、1018、964、906、843、818、800、758、698、540を観測した。
【0349】
得られた共重合体(B9)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定結果、発熱温度:356℃、534℃、重量減少温度:334℃、514℃を観測した。
【0350】
得られた共重合体(B9)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B9)の数平均分子量(Mn)は6976、重量平均分子量(Mw)は11333であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=1.6であることを確認した。
【0351】
得られた共重合体(B9)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B9)のガラス転移温度は、107.7℃であることを確認した。
【0352】
(実施例B10)
(化学式(A3):アクリル酸:スチレン=4.5:15.3:80.2のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A3)4.27g、スチレン29.60g、アクリル酸1.14g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.75gをテトラヒドロフラン21mLに溶解させ、2時間撹拌した。これとは別にテトラヒドロフラン21mLを窒素気流下(50mL/min)で66℃で1時間撹拌した。このテトラヒドロフランに先のモノマー溶液を43分間で滴下し、4時間撹拌した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、粘性の高い白色析出物を得た。上澄みの液を除去し、減圧下70℃にて48時間乾燥後、固体を酢酸エチル100mLに溶解し、溶解液をヘキサン1.5Lに滴下後、白色の固体を得た。これを濾過後、残渣をヘキサン100mLで2回洗浄後、減圧下90℃で15時間乾燥させ、共重合体(B10)を17.73g得た。
【0353】
得られた共重合体(B10)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A3)で示されるスチレン誘導体(A3)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A3)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.97(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A3)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.88%含有されていることを確認した。
【0354】
得られた共重合体(B10)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3439、3103、3082、3061、3026、3001、2924、2850、1944、1871、1801、1743、1680、1649、1624、1603、1583、1493、1452、1369、1244、1182、1151、1093、1072、1028、978、962、943、906、839、822、758、698、540、457を観測した。
【0355】
得られた共重合体(B10)は、化合物例b1−1から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるCユニット、前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニット、及び前記化学式(11)に含まれる構成単位であるFユニットから構成されている。
【0356】
【化43】
【0357】
得られた共重合体(B10)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定した結果、発熱温度:352℃、538℃、重量減少温度:230℃、337℃、517℃を観測した。
【0358】
得られた共重合体(B10)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B10)の数平均分子量(Mn)は7612、重量平均分子量(Mw)は13037であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=1.7であることを確認した。
【0359】
得られた共重合体(B10)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B10)のガラス転移温度は、106.6℃であることを確認した。
【0360】
(実施例B11)
(化学式(A5):スチレン=4.2:95.8のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A5)4.21g及びスチレン30.80gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を21分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、粘性のある薄茶色物を析出させた。上澄みのメタノールを除去し、析出物をテトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液を加えてメタノール2.0Lに沈殿させ、濾過した。更にメタノール200mLで2回振り掛け洗浄を行い、残渣を減圧下90℃で10時間乾燥させ、白色の共重合体(B11)を32.40g得た。
【0361】
得られた共重合体(B11)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前の原料としてのスチレン及び前記化学式(A5)に示されるスチレン誘導体(A5)由来のビニル基のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A5)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.09(−CH−O−)付近のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A5)から得られる構成単位は、ピークの積分値から3.27%含有されていることを確認した。
【0362】
得られた共重合体(B11)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3425、3082、3059、3026、2922、2848、1940、1805、1741、1687、1681、1601、1583、1493、1452、1365、1273、1232、1203、1180、1153、1107、1028、906、841、823、796、756、698、540を観測した。
【0363】
得られた共重合体(B11)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:539℃、重量減少温度:232℃、337℃、514℃を観測した。
【0364】
得られた共重合体(B11)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B11)の数平均分子量(Mn)は10371、重量平均分子量(Mw)は28805であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=2.8であることを確認した。
【0365】
得られた共重合体(B11)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B11)のガラス転移温度は、99.83℃であることを確認した。
【0366】
(実施例B12)
(化学式(A9):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A9)4.21g及びスチレン30.80gをトルエン21mLに溶解させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を20分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、粘性のある薄茶色物を析出させた。上澄みのメタノールを除去し、析出物をテトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液を加えてメタノール2.0Lに沈殿させ、濾過した。更にメタノール200mLで2回振り掛け洗浄を行い、残渣を減圧下90℃で10時間乾燥させ、白色の共重合体(B12)を32.87g得た。
【0367】
得られた共重合体(B12)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前の原料としてのスチレン及び前記化学式(A9)に示されるスチレン誘導体(A9)由来のビニル基のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A9)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.97及び4.82(−CH−O−)付近のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A9)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.83%含有されていることを確認した。
【0368】
得られた共重合体(B12)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3435、3082、3059、3026、2922、2848、1942、1873、1803、1741、1678、1651、1622、1601、1583、1493、1452、1373、1244、1182、1151、1130、1093、1081、1028、978、962、906、839、756、698、540、455を観測した。
【0369】
得られた共重合体(B12)は、化合物例b1−1から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるCユニット、化合物例b2−1から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるGユニット、及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている。
【0370】
【化44】
【0371】
得られた共重合体(B12)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果を図20に示す。測定の結果、発熱温度:405℃、536℃、重量減少温度:342℃、510℃を観測した。
【0372】
得られた共重合体(B12)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B12)の数平均分子量(Mn)は、11905、重量平均分子量(Mw)は44906であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=3.8であることを確認した。
【0373】
得られた共重合体(B12)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B12)のガラス転移温度は、100.7℃であることを確認した。
【0374】
(実施例B13)
(化学式(A8):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A8)4.21g及びスチレン30.80gをトルエン21mLに溶解させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を19分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、粘性のある薄茶色物を析出させた。上澄みのメタノールを除去し、析出物をテトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液を加えてメタノール2.0Lに沈殿させた。濾過し、更にメタノール200mLで2回振り掛け洗浄を行い、残渣を減圧下90℃で10時間乾燥させ、薄茶色の共重合体(B13)を32.26g得た。
【0375】
得られた共重合体(B13)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前の原料としてのスチレン及び前記化学式(A8)に示されるスチレン誘導体(A8)由来のビニル基のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A8)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.07(−CH−O−)付近のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A8)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.21%含有されていることを確認した。
【0376】
得られた共重合体(B13)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3427、3082、3059、3026、2922、2848、1942、1867、1803、1741、1684、1660、1601、1583、1493、1452、1373、1257、1234、1180、1153、1140、1070、1028、906、837、820、754、698、621、540を観測した。
【0377】
得られた共重合体(B13)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果を図21に示す。測定の結果、発熱温度:539℃、重量減少温度:341℃、515℃を観測した。
【0378】
得られた共重合体(B13)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B13)の数平均分子量(Mn)は、10442、重量平均分子量(Mw)は52933であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=5.1であることを確認した。
【0379】
得られた共重合体(B13)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B13)のガラス転移温度は、99.25℃であることを確認した。
【0380】
(実施例B14)
(化学式(A2):スチレン=0.1:99.9のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A2)0.11g、スチレン34.89gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を21分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、粘性のある白色物を析出させた。上澄み液を除去し、析出物をテトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液を加えてメタノール2Lに再沈殿させた。析出物を濾過し、メタノール200mLで2回洗浄し、残渣を80℃で30時間乾燥させ、共重合体(B14)を32.18g得た。
【0381】
得られた共重合体(B14)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A2)で示されるスチレン誘導体(A2)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されなかった。
【0382】
得られた共重合体(B14)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3439、3103、3082、3061、3026、3001、2922、2848、1942、1871、1801、1741、1601、1583、1541、1493、1452、1373、1329、1311、1263、1182、1155、1068、1028、1003、980、964、943、906、841、756、698、621、538を観測した。
【0383】
得られた共重合体(B14)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定した結果、重量減少温度:316℃、517℃を観測した。
【0384】
得られた共重合体(B14)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B14)の数平均分子量(Mn)は7968、重量平均分子量(Mw)は20110であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=2.5であることを確認した。
【0385】
得られた共重合体(B14)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B14)のガラス転移温度は、89.05℃であることを確認した。
【0386】
(実施例B15)
(化学式(A12):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A12)5.67g、スチレン29.93gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を28分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール1Lに滴下し、粘性の高い白色析出物を析出させた。上澄み液を除去し、テトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液をメタノール2Lに滴下し再沈精製した。析出物を濾過し、メタノール200mLで2回洗浄後、残渣を減圧下60℃で24時間乾燥させ、共重合体(B15)を27.3g得た。
【0387】
得られた共重合体(B15)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A12)で示されるスチレン誘導体(A12)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A12)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.10(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A12)から得られる構成単位は、ピークの積分値から3.99%含有されていることを確認した。
【0388】
得られた共重合体(B15)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3460、3078、3069、3033、2966、2930、2922、2875、2859、2733、1944、1887、1800、1715、1678、1611、1470、1464、1458、1437、1373、1322、1245、1226、1193、1147、1134、1123、1069、1040、976、943、911、841、801、766、701、544を観測した。
【0389】
得られた共重合体(B15)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:329℃、529℃、重量減少温度:335℃、510℃を観測した。
【0390】
得られた共重合体(B15)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B15)の数平均分子量(Mn)は12071、重量平均分子量(Mw)は52749であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=4.4であることを確認した。
【0391】
得られた共重合体(B15)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B15)のガラス転移温度は、89.5℃であることを確認した。
共重合体(B15)の体積固有抵抗率は、2.7×1016Ωcmを確認した。
【0392】
(実施例B16)
(化学式(A2):2−エチルヘキシルアクリレート:スチレン=5.0:5.0:90.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A2)4.79g、スチレン27.51g、及び2−エチルヘキシルアクリレート2.70gをメタノール1.1gとテトラヒドロフラン4.4gとの混合溶液に溶解させ、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.05gを加えた。この溶液を、窒素気流下(50mL/min)65℃まで加熱したメタノール16.4gとテトラヒドロフラン70gとの混合溶液に24分かけて滴下した。更に65℃で6時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール2Lに滴下し、白色固体を析出させた。濾過後、残渣をメタノールで洗浄し、残渣を減圧下90℃で10時間乾燥させ、白色の共重合体(B16)を10.72g得た。
【0393】
得られた共重合体(B16)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前の原料としてのスチレン及び前記化学式(A2)に示されるスチレン誘導体(A2)由来のビニル基のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A2)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.92(−CH−O−)付近のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A2)から得られる構成単位は、ピークの積分値から5.01%、また、2−エチルヘキシルアクリレートから得られる構成単位は、5.80%含有されていることを確認した。
【0394】
得られた共重合体(B16)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3435、3082、3061、3026、2924、2872、2854、1940、1874、1865、1728、1687、1678、1659、1651、1643、1603、1583、1493、1452、1439、1392、1377、1309、1275、1198、1180、1155、1101、1030、964、906、843、800、758、698、540を観測した。
【0395】
得られた共重合体(B16)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:541℃、重量減少温度:350℃、513℃を観測した。
【0396】
得られた共重合体(B16)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B16)の数平均分子量(Mn)は、6720、重量平均分子量(Mw)は10466であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=1.6であることを確認した。
【0397】
得られた共重合体(B16)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B16)のガラス転移温度は、84.0℃であることを確認した。
【0398】
(実施例B17)
(化学式(A2):n−ブチルアクリレート:スチレン=5.0:5.0:90.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A2)4.90g、スチレン28.17g、及びn−ブチルアクリレート1.93gをメタノール3.35gとトルエン2.50g及びメチルエチルケトン4.15gの混合溶液に溶解させ、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.75gを加えた。この溶液を、窒素気流下(50mL/min)65℃まで加熱したメタノール20.10gとトルエン17.15g及びメチルエチルケトン24.90gの混合溶液に25分かけて滴下した。更に65℃で6時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール2Lに滴下し、白色固体を析出させた。濾過後、残渣をテトラヒドロフラン150mLに溶解させた。溶解液を加えてメタノール2Lに沈殿させ、濾過した。更にメタノール200mLで2回振り掛け洗浄を行い、残渣を減圧下70℃で15時間乾燥させ、白色の共重合体(B17)を8.41g得た。
【0399】
得られた共重合体(B17)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前の原料としてのスチレン及び前記化学式(A2)に示されるスチレン誘導体(A2)由来のビニル基のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A2)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.93(−CH−O−)付近のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A2)から得られる構成単位は、ピークの積分値から6.35%、また、2−エチルヘキシルアクリレートから得られる構成単位は、6.09%含有されていることを確認した。
【0400】
得られた共重合体(B17)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3429、3082、3061、3026、3001、2924、2850、1942、1873、1799、1730、1682、1603、1583、1493、1452、1437、1392、1363、1309、1273、1200、1180、1155、1030、906、843、800、758、698、540を観測した。
【0401】
得られた共重合体(B17)は、化合物例a1−2から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるAユニット、前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニット、及び前記化学式(11)に含まれる構成単位であるHユニットから構成されている。
【0402】
【化45】
【0403】
得られた共重合体(B17)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:356℃、532℃、重量減少温度:246℃、341℃、512℃を観測した。
【0404】
得られた共重合体(B17)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B17)の数平均分子量(Mn)は、10750、重量平均分子量(Mw)は16359であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=1.5であることを確認した。
【0405】
得られた共重合体(B17)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B17)のガラス転移温度は、95.5℃であることを確認した。
【0406】
(実施例B18)
(化学式(A2):メチルメタクリレート:n−ブチルアクリレート:スチレン=5.0:5.0:5.0:85.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A2)4.94g、スチレン26.81g、メチルメタクリレート1.30g及びn−ブチルアクリレート1.94gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液を、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gを溶解させたトルエン21mL溶液に17分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール2Lに滴下し、粘性の高い白色固体を析出させた。上澄みのメタノールを除去し、テトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液を加えてメタノール2Lに沈殿させ、上澄み液を除去後、濾過した。更にメタノール200mLで2回振り掛け洗浄を行い、残渣を減圧下90℃で20時間乾燥させ、白色の共重合体(B18)を28.32g得た。
【0407】
得られた共重合体(B18)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前の原料としてのスチレン及び前記化学式(A2)に示されるスチレン誘導体(A2)由来のビニル基のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A2)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.92(−CH−O−)付近のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A2)から得られる構成単位は、ピークの積分値から5.03%、また、メチルメタクリレートから得られる構成単位は、5.18%、n−ブチルアクリレートから得られる構成単位は、3.37%含有されていることを確認した。
【0408】
得られた共重合体(B18)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3437、3082、3061、3026、3001、2924、2850、1940、1873、1805、1730、1687、1680、1601、1493、1452、1435、1392、1362、1265、1219、1201、1180、1155、1101、1064、1030、964、906、840、800、758、698、540を観測した。
【0409】
得られた共重合体(B18)は、化合物例a1−2から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるAユニット、前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニット、前記化学式(11)に含まれる構成単位であるIユニット、及び前記化学式(11)に含まれる構成単位であるHユニットから構成されている。
【0410】
【化46】
【0411】
得られた共重合体(B18)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。そのTG−DTAの測定結果を図22に示す。その測定の結果、発熱温度:348℃、528℃、重量減少温度:334℃、511℃を観測した。
【0412】
得られた共重合体(B18)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B18)の数平均分子量(Mn)は、18602、重量平均分子量(Mw)は72809であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=3.9であることを確認した。
【0413】
得られた共重合体(B18)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B18)のガラス転移温度は、103.8℃であることを確認した。
【0414】
(実施例B19)
(化学式(A7):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A7)4.21g及びスチレン30.80gをトルエン21mLに溶解させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を19分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、粘性のある白色物を析出させた。上澄みのメタノールを除去し、析出物をテトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液を加えてメタノール2.0Lに沈殿させた。濾過し、更にメタノール200mLで2回振り掛け洗浄を行い、残渣を減圧下90℃で10時間乾燥させ、白色の共重合体(B19)を29.81g得た。
【0415】
得られた共重合体(B19)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前の原料としてのスチレン及び前記化学式(A7)に示されるスチレン誘導体(A7)由来のビニル基のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A7)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.95付近のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A7)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.32%含有されていることを確認した。
【0416】
得られた共重合体(B19)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3455、3435、3081、3061、3025、2922、2850、1941、1866、1779、1741、1673、1600、1492、1452、1361、1265、1201、1155、1029、906、756、698、540を観測した。
【0417】
得られた共重合体(B19)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B19)の数平均分子量(Mn)は、15388、重量平均分子量(Mw)は58200であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=3.8であることを確認した。
【0418】
得られた共重合体(B19)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B19)のガラス転移温度は、83.2℃であることを確認した。
【0419】
(実施例B20)
(化学式(A10):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A10)4.21g、スチレン30.79gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、DMF21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を22分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、白色析出物を析出させ、濾過した。白色析出物をテトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液をメタノール2Lに滴下し、白色の析出物を析出させた。濾過後、残渣をメタノール200mLで2回洗浄し、残渣を減圧下90℃で15時間乾燥させ、共重合体(B20)を29.37g得た。
【0420】
得られた共重合体(B20)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A10)で示されるスチレン誘導体(A10)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A10)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.03(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A10)から得られる構成単位は、ピークの積分値から3.84%含有されていることを確認した。
【0421】
得られた共重合体(B20)について、IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3523、3446、3103、3082、3059、3026、3001、2922、2848、1942、1873、1803、1732、1686、1616、1601、1583、1510、1493、1452、1410、1375、1354、1277、1217、1198、1182、1155、1132、1119、1093、1070、1028、1003、964、941、906、868、841、820、758、698、623、540、432を観測した。
【0422】
得られた共重合体(B20)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定した結果、発熱温度:333℃、410℃、537℃、重量減少温度:335℃、395℃、515℃を観測した。
【0423】
得られた共重合体(B20)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B20)の数平均分子量(Mn)は9371、重量平均分子量(Mw)は25826であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=2.8であることを確認した。
【0424】
得られた共重合体(B20)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B20)のガラス転移温度は、108.8℃であることを確認した。
【0425】
(実施例B21)
(化学式(A2):スチレン=5.0:90.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A2)4.96g、スチレン30.04gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を21分間で滴下した。更に110℃で撹拌を強め2.5時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、粘性の高い白色析出物を析出させた。上澄み液を除去後、テトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液をメタノール2Lに滴下して再沈精製した。析出物を濾過し、メタノール200mLで2回洗浄し、残渣を減圧下90℃で15時間乾燥させ、共重合体(B21)を32.47g得た。
【0426】
得られた共重合体(B21)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A2)で示されるスチレン誘導体(A2)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体A2由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.00(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A2)から得られる構成単位は、ピークの積分値から3.67%含有されていることを確認した。
【0427】
得られた共重合体(B21)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3491、3103、3082、3061、3026、3001、2922、2848、1942、1871、1803、1726、1684、1639、1601、1583、1547、1512、1493、1452、1431、1363、1348、1300、1255、1221、1180、1153、1105、1066、1043、1028、1018、980、964、943、906、843、822、758、698、669、619、607、596、540、417を観測した。
【0428】
得られた共重合体(B21)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:351℃、409℃、536℃重量減少温度:330℃、389℃、515℃を観測した。
【0429】
得られた共重合体(B21)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B21)の数平均分子量(Mn)は16557、重量平均分子量(Mw)は100309であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=6.1であることを確認した。
【0430】
得られた共重合体(B21)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B21)のガラス転移温度は、109.0℃であることを確認した。
【0431】
(実施例B22)
(化学式(A13):スチレン=5.0mol:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A13)4.21g、スチレン30.79gをDMF21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、DMF21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を18分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、ゴム状の白色物を析出させた。デカンターションにより上澄み液を除去した後、テトラヒドロフラン150mLに溶解させた。溶解液を加えてメタノール2Lに沈殿させ、濾過し、残渣を減圧下90℃で20時間乾燥させ、共重合体(B22)を27.21g得た。
【0432】
得られた共重合体(B22)について実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A13)で示されるスチレン誘導体(A13)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A13)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.02(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A13)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.77%含有されていることを確認した。
【0433】
得られた共重合体(B22)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3522、3062、3028、2921、2847、1945、1880、1797、1737、1670、1619、1600、1588、1489、1466、1367、1250、1179、1149、1100、1023、975、966、902、843、760、701、537を観測した。
【0434】
得られた共重合体(B22)は、化合物例a1−2から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるAユニット、化合物例a3−2から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるJユニット、及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている。
【0435】
【化47】
【0436】
得られた共重合体(B22)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:376℃、541℃、重量減少温度:222℃、356℃、528℃を観測した。
【0437】
得られた共重合体(B22)についてGPCを実施例B1に記載の条件で測定した。前記条件により測定された共重合体(B22)の分子量分布測定の結果、共重合体(B22)の数平均分子量(Mn)は8327、重量平均分子量(Mw)は12245であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=1.5であることを確認した。
【0438】
得られた共重合体(B22)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B22)のガラス転移温度は、107.2℃であることを確認した。
【0439】
(実施例B23)
(化学式(A14):スチレン=5.0mol:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A14)8.63g、スチレン60.09gをトルエン42mLに溶解させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)4.54gとの混合液を20分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、ゲル状の白色物を析出させた。デカンターションにより上澄み液を除去した後、テトラヒドロフラン300mLに溶解させた。溶解液を加えてメタノール1.5Lに沈殿させ、濾過し、残渣を減圧下80℃で14時間乾燥させ、共重合体(B23)を43.12g得た。
【0440】
得られた共重合体(B23)について実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A14)で示されるスチレン誘導体(A14)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A14)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.94(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A14)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.30%含有されていることを確認した。
【0441】
得られた共重合体(B23)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3163、3103、3082、3059、3026、3001、2922、2848、1942、1869、1801、1741、1670、1622、1601、1583、1493、1452、1441、1375、1348、1298、1255、1223、1182、1140、1097、1070、1028、1016、978、962、951、906、839、820、758、698、654、621、540、459を観測した。
【0442】
得られた共重合体(B23)は、化合物例b1−23から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるLユニット及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている。
【0443】
【化48】
【0444】
得られた共重合体(B23)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果を図23に示す。測定の結果、発熱温度:419℃、532℃、重量減少温度:326℃、405℃、516℃を観測した。
【0445】
得られた共重合体(B23)についてGPCを実施例B1に記載の条件で測定した。前記条件により測定された共重合体(B23)の分子量分布測定の結果、共重合体(B23)の数平均分子量(Mn)は9383、重量平均分子量(Mw)は36313であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=3.9であることを確認した。
【0446】
得られた共重合体(B23)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B23)のガラス転移温度は、91.2℃であることを確認した。
【0447】
(実施例B24)
(化学式(A15):スチレン=5.0mol:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(A15)9.91g、スチレン60.09gをトルエン42mLに溶解させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン42mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)4.54gとの混合液を22分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール500mLに滴下し、ゲル状の白色物を析出させた。デカンターションにより上澄み液を除去した後、テトラヒドロフラン300mLに溶解させた。溶解液を加えてメタノール1.5Lに沈殿させ、濾過し、残渣を減圧下80℃で14時間乾燥させ、共重合体(B24)を42.8得た。
【0448】
得られた共重合体(B24)について実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前のスチレン及び前記化学式(A15)で示されるスチレン誘導体(A15)の原料としてのビニル基由来のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン及びアルキル鎖が観測され、更にスチレン誘導体(A15)由来のブロードな水酸基及びδ(ppm)=5.01(−CH−O−)のブロードなプロトンが観測された。得られた共重合体中にスチレン誘導体(A15)から得られる構成単位は、ピークの積分値から4.27%含有されていることを確認した。
【0449】
得られた共重合体(B24)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3159、3105、3092、3032、3005、2931、2855、1945、1871、1779、1737、1659、1627、1598、1499、1449、1439、1381、1301、1249、1225、1180、1138、1100、1073、1030、1027、1020、981、943、902、844、814、749、700、617、535、454を観測した。
【0450】
得られた共重合体(B24)は、化合物例a1−28から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるMユニット及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている。
【0451】
【化49】
【0452】
得られた共重合体(B24)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、発熱温度:423℃、544℃、重量減少温度:319℃、508℃を観測した。
【0453】
得られた共重合体(B24)についてGPCを実施例B1に記載の条件で測定した。前記条件により測定された共重合体(B24)の分子量分布測定の結果、共重合体(B23)の数平均分子量(Mn)は10430、重量平均分子量(Mw)は43356であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=4.2であることを確認した。
【0454】
得られた共重合体(B24)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B24)のガラス転移温度は、89.7℃であることを確認した。
【0455】
(実施例B25)
実施例B7で得られた共重合体と実施例B24で得られた共重合体とを70:30の重量比で混合して、実施例B25の共重合体を得た。
【0456】
得られた共重合体(B25)は、化合物例a1−1から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるDユニット及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている共重合体と、化合物例a1−28から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるMユニット及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている共重合体との混合物である。
【0457】
【化50】
【0458】
(実施例B26)
(化学式(A1):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
4−クロロメチルスチレン4.63g及びスチレン60.09gをトルエン36.3gに溶解させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン33.7gとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)4.27gとの十分に窒素置換された混合液を20分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をメタノール1Lに加えデカンテーションした。重合反応物をテトラヒドロフラン150mLに溶解させ、溶解液を加えてメタノール1Lに沈殿させ、濾過した。残渣をメタノール100mLで4回洗浄し、減圧下60℃で10時間乾燥し、共重合中間体を64.1g得た。
【0459】
得られた共重合中間体について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、共重合反応前の原料としてのスチレン及び4−クロロメチルスチレンのビニル基のピークは観測されず、ブロードな芳香族プロトン、アルキル鎖及び4−クロロメチルスチレン由来のベンジルプロトンδ(ppm)=4.5(−CH−Cl)が観測された。得られた共重合中間体中に4−クロロメチルスチレンは、ピークの積分値から4.33%含有されていることを確認した。
【0460】
得られた共重合中間体について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3103、3082、3059、3026、3001、2976、2924、2848、1942、1869、1801、1741、1601、1583、1506、1493、1452、1423、1385、1373、1363、1352、1329、1313、1263、1182、1155、1105、1070、1028、1003、980、964、943、906、839、758、698、621、540を観測した。
【0461】
得られた共重合中間体は、下記の構成単位を有している。
【0462】
【化51】
【0463】
得られた共重合中間体について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。測定の結果、共重合中間体の数平均分子量(Mn)は8287、重量平均分子量(Mw)は20482であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=2.5であることを確認した。
【0464】
共重合中間体10.0gをテトラヒドロフラン60mLに溶解させ、水素化ナトリウム4.3gを加えて分散させ、70℃で1時間撹拌した。その後、2,5−ジヒドロキシ安息香酸3.3gを加え、70℃で5時間反応した後、室温まで冷却し、氷水1kgに徐々に加え分散させ、クロロホルムを加えて抽出した。その後、水洗し、クロロホルム層を分離後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、クロロホルムを留去した。析出物を減圧下、80℃で24時間乾燥し、共重合体(B26)を7.6g得た。
【0465】
得られた共重合体(B26)について、実施例B1に記載の条件でH−NMRを測定したところ、反応前の原料としてのベンジルプロトンδ(ppm)=4.5(−CH−Cl)はピークの積分比から0.90%含有されていることを確認した。更に、ブロードな水酸基及びδ(ppm)=4.9(−CH−O−)付近のブロードなプロトンが観測され、得られた共重合体中にジヒドロキシ安息香酸ユニットは、ピークの積分値から4.02%含有されていることを確認した。
【0466】
得られた共重合体(B26)について、FT−IRを実施例B1に記載の条件で測定したところ、
ν(cm−1)=3435、3060、3027、2922、2848、1944、1873、1800、1741、1678、1616、1601、1577、1493、1455、1265、1215、1155、1069、1028、906、758、698、540を観測した。
【0467】
得られた共重合体(B26)は、化合物例a−1から得られる構成単位である前記化学式(5)に含まれるDユニットと、前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットと、共重合体中間体から由来するSユニットから構成されている。
【0468】
【化52】
【0469】
得られた共重合体(B26)について、TG−DTAを実施例B1に記載の条件で測定した結果、発熱温度:345℃、539℃、重量減少温度:317℃、389℃、512℃を観測した。
【0470】
得られた共重合体(B26)について、GPCを実施例B1に記載の条件で測定した。測定の結果、共重合体(B26)の数平均分子量(Mn)は8157、重量平均分子量(Mw)は19775であり、更に分子量分布(Mw/Mn)=2.4であることを確認した。
【0471】
得られた共重合体(B26)について、ガラス転移温度を実施例B1に記載の条件で測定した。その測定の結果、共重合体(B26)のガラス転移温度は、101.6℃であることを確認した。
【0472】
(比較例1)
化学式(X1)に示すスチレン誘導体の合成
2,5−ジヒドロキシ安息香酸90.0gをメタノール1200mLに溶解させ、炭酸カリウム159.0gを加えて50℃に加熱した。この反応液にアリルブロミド72.6gを90分間で滴下し、60℃にて12時間反応させた。この反応液を冷却後、減圧下メタノールを留去し、ヘキサンにて洗浄した。濾過後、残渣をpH=2に調製した水3Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗し、酢酸エチル層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。この析出物をメタノールに溶解させ水に滴下し、再沈殿させ析出物を濾過した。この再沈殿操作を2回繰り返し、残渣を80℃にて48時間乾燥させ、下記化学式(X1)に示すスチレン誘導体を26.5g(収率=23.8%)得た。
【0473】
【化53】
【0474】
化学式(X1)に示すスチレン誘導体とスチレンとの2種類の重合体(Y1)
(化学式(X1):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(X1)4.68g、スチレン60.09gをトルエン39mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン39mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)4.27gとの混合液を25分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却した。その後、反応液をテトラヒドロフラン150mLに溶解させた。この溶液をメタノール滴下し反応物を沈殿させ、濾過し、減圧下90℃で20時間乾燥させ、共重合体(Y1)を47.3g得た。
また、体積固有抵抗率を実施例B1に記載の条件で測定し、共重合体(Y1)の体積固有抵抗率は、3.7×1014Ωcmであった。
【0475】
得られた共重合体(Y1)は、下記構成単位であるKユニット及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている。
【0476】
【化54】
【0477】
(比較例2)
化学式(X2)に示すスチレン誘導体の合成
p−クレゾール50.0gをアセトン450mLに溶解させ、炭酸カリウム94.5gを加えて、56℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン72.7gを30分間で滴下し、56℃にて12時間反応させた。この反応液を冷却後、濾過し、濾液のアセトンを減圧下留去し、出てきた残渣をヘキサンにて洗浄した。濾過後、残渣をトルエンにて再結晶した。濾過後、残渣を80℃にて48時間乾燥させ、下記化学式(X2)に示すスチレン誘導体を43.2g(収率=42.5%)得た。
【0478】
【化55】
【0479】
化学式(X2)に示すスチレン誘導体とスチレンとの2種類の重合体(Y2)
(化学式(X2):スチレン=5.0:95.0のmol比の仕込み)
スチレン誘導体(X2)3.56g、スチレン31.44gをトルエン21mLに分散させ、窒素気流下(50mL/min)110℃まで加熱した。この溶液に、トルエン21mLとtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI)2.31gとの混合液を17分間で滴下した。更に110℃で4時間反応した後、冷却し、テトラヒドロフラン150mLに溶解させた。この溶液をメタノール滴下し反応物を沈殿させ、濾過し、減圧下90℃で20時間乾燥させ、共重合体(Y2)を27.9g得た。
【0480】
得られた共重合体(Y2)は、下記構成単位であるNユニット及び前記化学式(9)で示される構成単位であるBユニットから構成されている。
【0481】
【化56】
【0482】
(比較例3)
特開平06−95435号公報記載の化合物例No.1−1である下記化学式(Y3)で示される市販品のポリパラビニルフェノール(丸善石油化学株式会社製、商品名:マルカリンカーM、グレード名:H−2、Mw=19800〜24200、Mn=3600〜4400)を用いた。
【0483】
【化57】
【0484】
(比較例4)
特開平06−95435号公報記載の化合物例No.1−3である下記化学式(Y4)で示される、市販品のビニルフェノールとメタクリル酸メチルとの共重合化合物(丸善石油化学株式会社製、商品名:マルカリンカーCMM、Mw=8000〜12000、Mn=3000〜5000)を用いた。
【0485】
【化58】
【0486】
(比較例5)
特開平06−95435号公報記載の化合物例No.1−4である下記化学式(Y5)で示される、市販品のビニルフェノールとスチレンとの共重合化合物(丸善石油化学株式会社製、商品名:マルカリンカーCST、Mw=3000〜5000、Mn=1900〜3300)を用いた。
【0487】
【化59】
【0488】
(実施例C1) 荷電制御剤の帯電性試験Aにおける荷電制御特性の評価
前記実施例で得られたスチレン誘導体(A1)1重量部、スチレン−アクリル共重合樹脂(三井化学株式会社製、商品名:CPR−100)100重量部を予備混合したのち、加熱ロール(株式会社栗本鐵工所製、商品名:S−1、KRCニーダ)で溶融混練した。冷却後、超遠心粉砕機(株式会社Retsch製、商品名:ULTRA CENTRIFUGAL MILL、スクリーン目開き1.5mm)で粗粉砕し、分級機付きエアージェットミル(株式会社セイシン企業製、商品名:CO−JET)により、平均粒径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:Partica LA−950)にて測定し、9.5〜10.5μmになるよう微粉砕を行った。この樹脂粒子2.5重量部と、鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部とを100mLの軟膏瓶にいれ、ボールミル回転架台(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台AV−1)で100rpmにて回転させながら、設定した時間毎に得られる混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。得られた負帯電性確認データの結果を表27及び図24に示した。
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0489】
更に、実施例で得られたスチレン誘導体A2、A4、A5、A8、A10、A12、A13、A14と比較化合物例X1、X2とを、スチレン誘導体A1と同様に帯電性試験Aを行った。その結果を表27と図24に示した。
【0490】
【表27】
【0491】
(実施例C2) 実施例C1で得られた樹脂粒子である荷電制御剤の環境安定性評価
実施例で得られたスチレン誘導体A1、A2、A4、A5、A8、A10、A12、A13、A14と比較化合物例X1、X2との実施例C1で得られた樹脂粒子を用い、下記の環境安定性評価を行った。表28に結果を示した。
鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部と前記帯電性試験Aの条件にて作成した各樹脂粒子を100mL軟膏瓶にいれ、中央に1cmの穴の空いた蓋をした。これを恒温恒湿器(東京理化機械株式会社製、商品名:エンビロスKCL−2000W)中のボールミル機(株式会社アサヒ理化製作所製、ボールミル回転架台)にセットし、各設定された温度と湿度の環境下で24時間放置した。24時間後、100mL軟膏瓶を100rpmにて回転させながら、15分間撹拌後、混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0492】
【表28】
ここで、LLは低温低湿、HHは高温高湿を示すものとする。
【0493】
(実施例C3) 荷電制御剤の帯電性試験Bにおける荷電制御特性の評価
前記実施例で得られたスチレン誘導体(A1)1重量部、ポリエステル樹脂(三菱レーヨン株式会社製 商品名:ER−508)100重量部を予備混合したのち、加熱ロール(株式会社栗本鐵工所製、商品名:S−1、KRCニーダ)で溶融混練した。冷却後、超遠心粉砕機(株式会社Retsch製、商品名:ULTRA CENTRIFUGAL MILL、スクリーン目開き1.5mm)で粗粉砕し、分級機付きエアージェットミル(株式会社セイシン企業製、商品名:CO−JET)により、平均粒径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:Partica LA−950)にて測定し、9.5〜10.5μmになるよう微粉砕を行った。この樹脂粒子2.5重量部と、鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部とを100mLの軟膏瓶にいれ、ボールミル回転架台(株式会社アサヒ理化製作所製、商品名:小型ボールミル回転架台AV−1)で100rpmにて回転させながら、設定した時間毎に得られる混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。得られた負帯電性確認データの結果を表29及び図25に示した。
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0494】
更に、実施例から得られたスチレン誘導体A2、A4、A5、A8、A10、A12、A13、A14と比較化合物例X1、X2とを、スチレン誘導体A1と同様に帯電性試験Bを行った。その結果を表29及び図25に示した。
【0495】
【表29】
【0496】
(実施例C4) 実施例C3で得られた樹脂粒子である荷電制御剤の環境安定性評価
実施例で得られたスチレン誘導体A1、A2、A4、A5、A8、A10、A12、A13、A14と比較化合物例X1、X2の実施例C3で得られた樹脂粒子を用い、下記の環境安定性評価を行った。表30に結果を示した。
鉄粉キャリア(パウダーテック株式会社製、商品名:TEFV200/300)50.0重量部と前記帯電性試験Bの条件にて作成した各樹脂粒子を100mL軟膏瓶にいれ、中央に1cmの穴の空いた蓋をした。これを恒温恒湿器(東京理化機械株式会社製、商品名:エンビロスKCL−2000W)中のボールミル機(株式会社アサヒ理化製作所製、ボールミル回転架台)にセットし、各設定された温度と湿度の環境下で24時間放置した。24時間後、100mL軟膏瓶を100rpmにて回転させながら、15分間撹拌後、混合物を採取し、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル株式会社製、商品名:TB−200)を使用して、以下の条件にて帯電量を測定した。
測定条件:金属メッシュ目開き34μm 圧力10.0kPa 吸引力10.0kPa 吸引時間10.0秒
【0497】
【表30】
【0498】
(実施例C5) 荷電制御樹脂の帯電性試験Aにおける荷電制御特性の評価
実施例で得られた荷電制御樹脂例(スチレン系樹脂)B1、B4、B5、B7、B9、B10、B11、B12、B14、B15、B21、B22、B23、B25と比較樹脂例Y1、Y2、Y3、Y4、Y5を、実施例C1と同様にして樹脂粒子を得て、荷電制御特性の評価を行った。得られた負帯電性確認データの結果を表31、表32及び表33と、図26図27及び図28に示した。
【0499】
【表31】
【0500】
【表32】
【0501】
【表33】
【0502】
(実施例C6) 実施例C5で得られた樹脂粒子の環境安定性評価
実施例で得られた荷電制御樹脂例(スチレン系樹脂)B1、B4、B5、B7、B9、B10、B11、B12、B14、B15、B21、B22、B23、B25と比較樹脂例Y1、Y2、Y3、Y4、Y5を、実施例C5の樹脂粒子を用いて、実施例C2と同様に、環境安定性評価の評価を行った。その結果を表34に示した。
【0503】
【表34】
【0504】
(実施例C7) 荷電制御樹脂の帯電性試験Bにおける荷電制御特性の評価
実施例で得られた荷電制御樹脂例(スチレン系樹脂)B1、B4、B5、B7、B9、B10、B11、B12、B14、B15、B21、B22、B23、B25と比較樹脂例Y1、Y2、Y3、Y4、Y5を、実施例C3と同様にして樹脂粒子を得て、荷電制御特性の評価を行った。得られた負帯電性確認データの結果を表35、表36及び表37と図29図30及び図31に示した。
【0505】
【表35】
【0506】
【表36】
【0507】
【表37】
【0508】
(実施例C8) 実施例C7で得られた樹脂粒子の環境安定性評価
実施例で得られた荷電制御樹脂例(スチレン系樹脂)B1、B4、B5、B7、B9、B10、B11、B12、B14、B15、B21、B22、B23、B25と比較樹脂例Y1、Y2、Y3、Y4、Y5を、実施例C7の樹脂粒子を用いて、実施例C4と同様に、環境安定性評価の評価を行った。その結果を表38に示した。
【0509】
【表38】
【0510】
図から明らかなとおり、本発明のスチレン誘導体及び共重合体を有効成分とする荷電制御樹脂である荷電制御剤は、高速回転であるか低速回転であるかに関わらず、帯電の立ち上がりが速く、更に荷電量が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0511】
本発明の荷電制御剤は、その有効成分となる重合体であるスチレン系樹脂が好適な荷電制御機能を有する構成単位で構成されているため、帯電付与剤、荷電制御剤及び増強剤として利用することができる。また、耐熱性、帯電特性、環境安定性に優れているので、各種の電荷や帯電を利用する産業、例えば静電粉体塗料、電子写真トナー、静電インクジェット記録用途、電子ペーパー、感圧複写紙、顕色剤などで使用することができる。このスチレン系樹脂の構成単位となる荷電制御単量体として用いられるスチレン誘導体は、荷電制御剤として使用することができる。本発明の荷電制御剤の製造方法によれば、帯電付与剤、荷電制御剤及び増強剤の荷電制御有効成分である荷電制御樹脂を、調製することができる。
図1
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