(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064144
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】硬表面洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/22 20060101AFI20170116BHJP
C11D 7/12 20060101ALI20170116BHJP
C11D 7/14 20060101ALI20170116BHJP
C11D 7/06 20060101ALI20170116BHJP
C11D 7/10 20060101ALI20170116BHJP
B60S 3/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
C11D7/22
C11D7/12
C11D7/14
C11D7/06
C11D7/10
B60S3/00
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-290505(P2011-290505)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2013-122032(P2013-122032A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095153
【弁理士】
【氏名又は名称】水口 崇敏
(72)【発明者】
【氏名】高島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】滝下 勝久
【審査官】
磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−168729(JP,A)
【文献】
特開2003−206478(JP,A)
【文献】
特開2003−026922(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0075858(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0084402(US,A1)
【文献】
特開2011−178941(JP,A)
【文献】
特表2004−532300(JP,A)
【文献】
特表2002−544324(JP,A)
【文献】
特開平11−217586(JP,A)
【文献】
特開2006−316201(JP,A)
【文献】
特開2010−125950(JP,A)
【文献】
特開2003−003198(JP,A)
【文献】
特開昭56−065100(JP,A)
【文献】
特開2001−342497(JP,A)
【文献】
特開2001−031995(JP,A)
【文献】
特開2003−176497(JP,A)
【文献】
特開昭51−083608(JP,A)
【文献】
特開平05−093200(JP,A)
【文献】
特開2002−348597(JP,A)
【文献】
特開平05−222397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/22
C11D 7/06
C11D 7/10
C11D 7/12
C11D 7/14
B60S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及びオルソケイ酸ナトリウムの中から選ばれた少なくとも1種のアルカリビルダー、アルカリビルダーに対し質量基準で1〜20%の範囲であるポリエーテル変性シリコーン及び水からなることを特徴とする車両用硬表面洗浄剤組成物。
【請求項2】
スプレーガンによる塗布又は手洗い洗車において用いられる請求項1記載の車両用硬表面洗浄剤組成物。
【請求項3】
洗車機による洗車において用いられる請求項1記載の車両用硬表面洗浄剤組成物。
【請求項4】
洗車機が門型洗車機、スプレー洗車機である請求項3記載の車両用硬表面洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
車両用硬表面洗浄剤組成物に関し、例えば自動車等の車両、特にそのボディ等の車体、中でもその塗装面への洗浄性に優れ、環境負荷の低い
車両用硬表面洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでの硬表面洗浄剤組成物、例えば洗車剤組成物等は、界面活性剤を主成分とし、表面に付着した油汚れなどを除去するものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
かかる洗浄剤の主成分である界面活性剤は、その洗浄性を向上させるために多量に配合されるため、排液による環境への負荷が問題視されている。
【0003】
また、洗浄によって発生した洗浄廃液には油分と水分が含まれるのが一般的であり、該廃液について油水分離処理を施すことにより、回収した水を洗浄剤用に再利用したり、排液を油分について相当取り除かれた状態にして、排液による環境への負荷を低減させたりしうるところ、かかる観点から、油水分離性に優れた洗浄剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−121588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、このような事情の下、従来の硬表面洗浄剤組成物よりも高い洗浄性を示す上に、CODやBOD、ノルマルヘキサン抽出量値などの環境値が低減され、しかも油水分離性に優れ、排水として放出された場合にも環境負荷を低減させることができる
車両用硬表面洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記した良好な特性を有する洗浄剤組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のビルダーと特定のレベリング剤を含有してなるものが、課題解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
(1)
炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及びオルソケイ酸ナトリウムの中から選ばれた少なくとも1種のアルカリビルダー、
アルカリビルダーに対し質量基準で1〜20%の範囲であるポリエーテル変性シリコーン及び水からなることを特徴とする車両用硬表面洗浄剤組成物。
(2)スプレーガンによる塗布又は手洗い洗車において用いられる前記(
1)記載の車両用硬表面洗浄剤組成物。
(3)洗車機による洗車において用いられる前記(
1)記載の車両用硬表面洗浄剤組成物。
(4)洗車機が門型洗車機、スプレー洗車機である前記(
3)記載の車両用硬表面洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の
車両用硬表面洗浄剤組成物は、自動車等の車両の表面処理に好適に用いられ、これを用いての自動車等の車両の表面の洗浄処理が好適に行え、特に洗車、中でも洗車機による洗車の工程に有利に用いられ、洗浄済の廃液において、環境値を低減させ、環境負荷の低下に寄与することができるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の車両用硬表面洗浄剤組成物は、洗浄成分の
上記所定アルカリビルダーとレベリング剤としてのポリエーテル変性シリコーンを含有する。
【0010】
アルカリビルダー
は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム
である。
【0011】
ポリエーテル変性シリコーンは、変性シリコーンとして、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性のものなど
も挙げられるが、水への溶解性および低表面張力、低臨界ミセル濃度を考慮した場合、とりわけ好ましい。
【0012】
本発明の車両用硬表面洗浄剤組成物において、ポリエーテル変性シリコーンは、アルカリビルダーに対し、質量基準で1〜20%の範囲で含有させるのがよい。
【0013】
本発明の
車両用硬表面洗浄剤組成物は、これら有効成分に加え、バランス量の水を含有させるのがよく、さらには有効成分濃度が好ましくは1〜10重量%の範囲になるように水を含有させるのがよく、使用時において、このような好適有効成分濃度の原液を、水で好ましくは10〜100倍に希釈するのがよい。
【0014】
また、本発明の
車両用硬表面洗浄剤組成物には、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で、キレート化剤、有機溶剤、紫外線吸収剤、染料、防錆剤、防腐剤などの任意の添加成分を配合することができる。
キレート化剤は特に制限されず、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロトリ酢酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン塩、カルボキシメチルタルトロン酸塩、カルボキシメチルオキシコハク酸塩などが挙げられる。
【0015】
本発明の
車両用硬表面洗浄剤組成物は、
自動車、鉄道車両等の車両、特に自動車の車体に適用する。
【0016】
とりわけ、本発明の
車両用硬表面洗浄剤組成物は、洗車剤組成物として、洗車、中でも門型洗車機やスプレー式洗車機による洗車に好ましく用いられ、また、スプレーガンによる塗布又は手洗い洗車にも用いられる。
【実施例】
【0017】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0018】
実施例1〜4
ビルダー5wt%(実施例1:炭酸水素ナトリウム、実施例2:炭酸ナトリウム、実施例3:オルソケイ酸ナトリウム、実施例4:水酸化ナトリウム)、TSF4440[モメンティブ社製、ポリエーテル変性シリコーン:表面張力(0.005%)29.0mN/m]0.5wt%および残余の水からなる硬表面洗浄剤組成物を調製した。
【0019】
比較例1〜2
界面活性剤20wt%{比較例1:XL−80[第一工業製薬社製、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル:表面張力(0.005%)49.6mN/m]、比較例2:Hostapur3754[クラリアント社製、アルカンスルホン酸ナトリウム:表面張力(0.005%)56.9mN/m]}、および残余の水からなる硬表面洗浄剤組成物を調製した。
【0020】
各洗浄剤組成物について、pH、COD、BOD、ノルマルヘキサン抽出量を常法にて求め、また、洗浄性、油水分離性を以下の評価試験により求めた。その結果を表1に示す。
<洗浄性>
自動車の車体用めっき鋼板材片に、アクリル−メラミン系樹脂からなる自動車用塗料をベースコートとトップコートの積層形態で焼付け塗装して塗装板を作成した後、これをけいそう土で研磨し、水洗風乾して試験片を作製した。この試験片に、ロウ、油脂を主成分とした洗車用ワックス剤およびアミノ変性シリコーンを主成分とした洗車用撥水コーティング剤を処理した後、塗膜表面の水に対する接触角を、測定機に協和界面DropMasterを用いて求めた。次に、各洗浄剤組成物を10倍に希釈した液にその処理済試験片を浸漬し、5分間攪拌する洗浄試験後、水洗風乾し、再度水の接触角を測定した。試験前後の接触角の値の変化を用いて、洗浄性を評価した。なお、数値の変化については、洗浄試験前の値から洗浄試験後の値を差引いた値が大きいほど、ワックスやコーティング剤が洗浄されていることを示すことから、以下のように分類した。
○:2°以上
△:1°以上〜2°未満
×:0°以上〜1°未満
<油水分離性>
10倍に希釈した各洗浄剤組成物と大豆油を試験管に入れ、キャップをした後、激しく20回振り各洗浄剤組成物と大豆油を完全に乳化させた。その後、10分間静置し、水層と油層の状態を確認し、以下のように分類した。
○:水層と油層との境界線がはっきり分かる。
△:僅かに境界線が確認できるが、全体的に乳化している。
×:全体が乳化しており、境界線は確認できない。
【0021】
【表1】
【0022】
これより、実施例の洗浄剤組成物は、比較例のそれに比べ、洗浄性は高いレベルを示しているにも関わらず、環境値は格段に低い数値を示していることが分かる。また、油水分離性に優れており、例えば排水ピットでの油分と水との分離操作が低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の
車両用硬表面洗浄剤組成物は、従来のそれよりも高い洗浄性を示す上に、環境値が低減され、しかも油水分離性に優れ、排水として放出された場合にも環境負荷を低減させることができるので、産業上大いに有利である。