(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
[第1実施形態]
本実施形態は、本発明の電磁弁をハイブリッド車や電気自動車の冷凍サイクルに適用する開閉弁として具体化したものである。この冷凍サイクルは、車室内を空調するための第1冷媒循環回路と、車載バッテリを冷却するための第2冷媒循環回路とを並列に接続して構成される。具体的には、共用の冷媒循環通路に圧縮機、凝縮器、レシーバが設けられ、分岐された個別の冷媒循環通路の一方に第1膨張装置と空調用蒸発器が設けられ、他方に第2膨張装置とバッテリ冷却用蒸発器が設けられている。
【0013】
圧縮機にて圧縮された高温・高圧の冷媒は、凝縮器に送られて車室外の空気と熱交換され、凝縮される。凝縮された冷媒は、レシーバにて気液分離され、その液冷媒が第1膨張装置および第2膨張装置の少なくとも一方に送られる。第1膨張装置は、導入された液冷媒を絞り膨張させて低温・低圧の気液二相冷媒にし、空調用蒸発器に送出する。空調用蒸発器は、第1膨張装置から送られた冷媒を車室内の空気と熱交換させることにより蒸発させ、蒸発したガス冷媒を圧縮機に戻す。このとき、第1膨張装置は、空調用蒸発器の出口における冷媒温度を検出してその出口における冷媒が所定の過熱度を有するように空調用蒸発器へ送出する冷媒の流量を制御する。
【0014】
同様に、第2膨張装置は、導入された液冷媒を絞り膨張させて低温・低圧の気液混合冷媒にし、バッテリ冷却用蒸発器に送出する。バッテリ冷却用蒸発器は、第2膨張装置から送られた冷媒をバッテリと熱交換させることにより蒸発させ、蒸発したガス冷媒を圧縮機に戻す。このとき、第2膨張装置は、バッテリ冷却用蒸発器の出口における冷媒温度を検出してその出口における冷媒が所定の過熱度を有するようにバッテリ冷却用蒸発器へ送出する冷媒の流量を制御する。
【0015】
各膨張装置は、図示略の膨張弁(温度式膨張弁)と、その膨張弁の弁部の下流側で冷媒の流れを許容または遮断するシャットオフバルブとを組み付けた複合弁として構成される。本実施形態の電磁弁は、そのシャットオフバルブとして機能する。すなわち、本実施形態の電磁弁は、第1膨張装置および第2膨張装置のそれぞれに設けられる。空調装置のみを機能させる場合には、第1膨張装置の電磁弁は開弁され、第2膨張装置の電磁弁は閉弁される。逆に、バッテリの冷却装置のみを機能させる場合には、第1膨張装置の電磁弁は閉弁され、第2膨張装置の電磁弁は開弁される。
【0016】
次に、本実施形態の電磁弁の具体的構成について説明する。本実施形態の電磁弁は、いわゆるパイロット作動式の常閉弁として構成される。
図1は、第1実施形態に係る電磁弁の具体的構成を表す断面図である。電磁弁1は、弁本体2とソレノイド4とを組み付けて構成される。電磁弁1は、対応する膨張弁と共用のボディ5を備える。ボディ5の上端開口部を封止するようにソレノイド4が組み付けられている。
【0017】
ボディ5とソレノイド4との間には弁室10が画成されている。弁室10は、上流側の導入通路12と下流側の導出通路14とを連通させる。なお、導入通路12は、図示の断面の奥方に設けられている(破線参照)。導出通路14は、主弁孔16を介して弁室10と連通する。主弁孔16の上流側開口端部に主弁座18が形成されている。弁室10には、段付円柱状の主弁体20が配設されている。その主弁体20が主弁座18に着脱することにより主弁が開閉される。また、ソレノイド4側から弁室10に向けて段付円筒状のガイド部22が延設され、主弁体20がガイド部22に内挿されている。ガイド部22は、シール用のOリング23を介してボディ5と連結されている。
【0018】
主弁体20とガイド部22は、主弁孔16と同軸状に(同一軸線上に)配設されている。主弁体20は、ガイド部22との間に背圧室24を区画する。主弁体20は、その外周面がガイド部22の内周面に摺動可能に支持され、軸線方向(主弁の開閉方向)に安定に動作する。また、主弁体20の中央を軸線方向に貫通する小径のパイロット弁孔26が設けられている。ガイド部22の下端部と主弁体20との間には、主弁体20を開弁方向に付勢するスプリング28(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0019】
一方、ソレノイド4は、非磁性のスリーブ30と、スリーブ30の上端開口部を封止するように固定されたコア32と、スリーブ30内でコア32に対向配置されたプランジャ34と、スリーブ30およびコア32に外挿嵌合されたボビン36と、ボビン36に巻回された電磁コイル38とを含む。プランジャ34は、コア32と主弁体20との間に配設されている。そして、電磁コイル38を上下に挟むように一対の端部材40が設けられている。端部材40は、磁気回路を構成するヨークとしても機能する。端部材40からは通電用のハーネス42が引き出されている。ソレノイド4は、シールリング44を介してボディ5と連結されている。
【0020】
スリーブ30は段付円筒状をなし、その下半部が拡径されてガイド部22と連設されている。コア32は段付円柱状をなし、その下端部がスリーブ30の上端部に嵌合し、スリーブ30の上端開口部を封止する。プランジャ34は有底円筒状をなし、側部に内外を連遊する連通路46が設けられる。プランジャ34とコア32との間の空間は、その連通路46と、プランジャ34の外周面に形成された連通溝(図示せず)を介して背圧室24と連通している。
【0021】
プランジャ34の下端中央部には細径のパイロット弁体50が一体に設けられている。パイロット弁体50は、下部が下方に向かって小径化するテーパ状をなす。パイロット弁体50は、背圧室24に延出し、パイロット弁孔26に接離してパイロット弁を開閉する。コア32の下面中央部には、弾性体(例えばゴム)からなるばね受け52が設けられ、ばね受け52とプランジャ34との間には、パイロット弁体50を閉弁方向に付勢するスプリング54(「付勢部材」として機能する)が介装されている。なお、本実施形態においては、スプリング54のほうがスプリング28よりもばね荷重が大きくなるように設定されている。
【0022】
そして、スリーブ30の側面を半径方向内向きに押圧するように伝搬規制部材60が設けられている。伝搬規制部材60は、主弁の開閉時に発生した衝突音の大気側への伝搬をスリーブ30の位置にて遮断又は減衰させるための部材であり、弾性体(本実施形態ではゴム)からなる。伝搬規制部材60は、リング状をなし、所定の締め代をもってスリーブ30の外周面に嵌着される。なお、この衝突音の伝搬規制構造の詳細については後述する。
【0023】
図2は、
図1のA部拡大図である。(A)は主弁の閉弁状態を示し、(B)は主弁の開弁状態を示している。
図2(A)に示すように、主弁体20は、円筒状の本体62の内方に円柱状の弾性体(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やゴム)からなる弁部材64を固定したものであり、その弁部材64が主弁座18に着脱することにより主弁を開閉する。弁部材64の軸線に沿ってパイロット弁孔26が貫通している。パイロット弁孔26の背圧室24側の端部にはパイロット弁座66が形成されている。
【0024】
本体62の周縁部近傍には、背圧室24の内外を連通する小径のオリフィス68(「リーク通路」として機能する)が形成されている。また、本体62の下端部には、半径方向外向きにフランジ状に延出する遮蔽壁70が設けられている。主弁体20におけるガイド部22との摺動部と遮蔽壁70との間には凹部72が設けられている。凹部72は、
図2(B)に示す主弁の全開時にガイド部22の摺動面との間に空隙Sを形成する。遮蔽壁70および凹部72は、冷媒中の異物が主弁体20とガイド部22との摺動部に噛み込むことを防止または抑制する。
【0025】
すなわち、
図2(A)に示す主弁の閉弁時に冷媒に含まれる金属粉等の異物が遮蔽壁70を回り込んで凹部72に付着したとしても、開弁時に主弁体20がガイド部22に対して相対変位する過程で空隙Sに収まるようになり、その異物が両者の摺動部に噛み込むといった事態を防止または抑制することができる。すなわち、可動側である主弁体20に凹部72を設け、開弁作動により主弁体20がガイド部22の内方に引き込まれたとしても、付着した異物が摺動面に接触し難い構成としている。その結果、異物の噛み込みによる弁部の作動不良を防止または抑制することができる。
【0026】
一方、伝搬規制部材60は、図示のように、ボビン36と下側の端部材40との間に挟まれるように組み付けられている。伝搬規制部材60は、その内周面に向けて小幅となるテーパ状をなし、スリーブ30の側面に対して局所的な押圧力を付与可能な構成とされている。このような構成により、ガイド部22からスリーブ30へ振動が伝達されたとしても、これを減衰させることができる。
【0027】
図1に戻り、以上のように構成された電磁弁1は、ソレノイド4がオフ(非通電状態)の状態では、コア32とプランジャ34との間に吸引力が作用しない。このため、スプリング54の付勢力によりパイロット弁体50が付勢され、
図2(A)に示すように、パイロット弁体50がパイロット弁座66に着座してパイロット弁を閉じる。このとき、導入通路12の冷媒がオリフィス68を介して背圧室24に導入されるため、主弁体20に閉弁方向の差圧が作用する。その結果、主弁は閉弁状態を維持する。
【0028】
一方、ソレノイド4がオン(通電状態)にされると、コア32とプランジャ34との間に吸引力が作用するため、
図2(B)に示すように、パイロット弁体50がパイロット弁座66から離間し、パイロット弁が開く。この結果、背圧室24内の冷媒がパイロット弁孔26を介して導出通路14に導出され、背圧室24の圧力が低下する。ここで、オリフィス68の通路断面はパイロット弁孔26の通路断面よりも小さいため、主弁体20には一時的に開弁方向の差圧が作用する。この差圧による力とスプリング28の付勢力により主弁体20が押し上げられ、主弁が速やかに開放される。このとき、上流側の図示しない膨張弁から導入通路12を介して導入された気液二相冷媒は、弁室10および主弁孔16を経て導出通路14に導出され、下流側の蒸発器へ供給される。
【0029】
次に、本実施形態の電磁弁における衝突音の伝搬規制構造について説明する。
図3は、衝突音の伝搬規制構造を表す部分断面図である。(A)はソレノイド4のオン直後の状態を示し、(B)はソレノイド4のオフ直後の状態を示している。図中の矢印は、衝突音の伝搬状態を表している。
【0030】
図3(A)に示すように、ソレノイド4がオフからオンにされると、その吸引力によりプランジャ34が引き上げられ、コア32に衝突する(B部参照)。しかし、ばね受け52が緩衝部材として機能し、プランジャ34とコア32とは互いの剛体部分が衝突しないため、その衝突音の発生が抑制される。また、ばね受け52が弾性体からなるため、仮に衝突音が発生したとしてもその伝搬が減衰される。
【0031】
また、プランジャ34により主弁体20を下方へ付勢する付勢力が解除されるため、主弁体20がスプリング28により押し上げられ、遮蔽壁70がガイド部22に衝突する(C部参照)。この衝突音は、ガイド部22からスリーブ30に伝達されるが、伝搬規制部材60の位置にて遮断又は減衰される。このため、いずれにしても衝突音はその伝播経路において遮断又は減衰されて縁切りされ、大気側、つまり上側の端部材40の外方に伝搬することが抑制される。
【0032】
一方、
図3(B)に示すように、ソレノイド4がオンからオフにされると、その吸引力がなくなるため、スプリング54の付勢力によりプランジャ34が押し下げられ、パイロット弁体50がパイロット弁座66に着座する(D部参照)。またその後、主弁体20が主弁座18に着座する(E部参照)。このとき、パイロット弁および主弁の閉弁による衝突音が発生するが、その伝播は図示のように減衰される。
【0033】
すなわち、それらの衝突音は、一方でプランジャ34を介してスプリング54に伝達されるが、ばね受け52によりその伝搬が遮断又は減衰される。また、それらの衝突音は、他方で主弁体20およびガイド部22を介してスリーブ30に伝達されるが、伝搬規制部材60の位置にて遮断又は減衰される。このため、いずれにしても衝突音はその伝播経路において遮断又は減衰されて縁切りされ、大気側、つまり上側の端部材40の外方に伝搬することが抑制される。
【0034】
以上に説明したように、本実施形態によれば、弁本体2において弁部の開閉に伴い衝突音を発生させる衝突部と、ソレノイド4において大気へ露出する露出部との間に形成される少なくとも一つの音伝搬経路に対し、その音伝搬経路と交わる方向の弾性力を付与することによりその衝突音の伝搬を遮断又は減衰させるための伝搬規制部材60が配設されている。すなわち、弁部周辺で発生した衝突音の伝搬経路となるスリーブ30を押さえる伝搬規制部材60が配設される。このため、閉弁直後又は開弁直後に発生する衝突音の伝搬がスリーブ30の位置で遮断又は減衰される。特に、伝搬規制部材60がスリーブ30におけるプランジャ34側に配置されることで、コア32への伝搬が規制されるため、衝突音が拡散される形で大気に漏れることを効果的に抑制できる。また、音の伝搬経路が狭まったスリーブ30の位置において音振動を減衰させる構成としたため、その減衰効果も相対的に大きくなる。さらに、伝搬規制部材60を衝突部ではないスリーブ30の部分に設けることにより、その伝搬遮断減衰効果を長く維持することができる。
【0035】
[第2実施形態]
本実施形態の電磁弁は、常閉弁である点で第1実施形態と相異する。このため、以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。
図4は、第2実施形態に係る電磁弁の具体的構成を表す断面図である。同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0036】
電磁弁201は、弁本体2とソレノイド204とを組み付けて構成される。ソレノイド204においては、スリーブ230が有底円筒状をなし、その底部近傍が端部材40を貫通して大気に露出している。また、コア232がガイド部22と一体に設けられている。プランジャ234は、コア232に対して主弁体20とは反対側、つまりスリーブ230の底部側に配設されている。
【0037】
コア232は段付円筒状をなし、その下半部が拡径されてガイド部22と連設されている。プランジャ234は段付円筒状をなし、コア232とは反対側に背圧室224を形成する。背圧室224は、プランジャ234の側部に設けられた連通路46、プランジャ234の外周面に形成された連通溝(図示せず)、コア232とプランジャ234との間の空間、およびコア232と作動ロッド240(「作動連結部」として機能する:後述する)との間のクリアランスを介して背圧室24と連通している。
【0038】
コア232とプランジャ234の内方には作動ロッド240が同軸状に挿通されている。作動ロッド240は、その上端部にやや拡径された係止部242を有し、下端部がテーパ状のパイロット弁体50となっている。パイロット弁体50は、コア232を貫通して背圧室24に延出する。スリーブ230の底部には、弾性体(例えばゴム)からなる緩衝部材250が設けられている。緩衝部材250と係止部242との間には、パイロット弁体50を閉弁方向に付勢するスプリング254(「付勢部材」として機能する)が介装されている。ばね受け52は、プランジャ234の下端部に設けられている。ばね受け52とコア232との間にスプリング54が介装されている。なお、本実施形態においては、スプリング54のほうがスプリング254よりもばね荷重が大きくなるように設定されている。
【0039】
このような構成により、パイロット弁体50は、基本的にプランジャ234と一体に動作するが、パイロット弁体50がパイロット弁座66に着座した際には、プランジャ234と相対変位可能となる。これにより、ソレノイド204をオンにしたときにその吸引力がパイロット弁体50に直接作用しない、つまりスプリング254の付勢力のみでパイロット弁を閉じることができるため、パイロット弁座66へのダメージ(変形やつぶれなど)を低減でき、衝突音を抑制できる。また、緩衝部材250を設けたことにより、ソレノイド204をオフにしたときにプランジャ234がスリーブ230に衝突するときの衝突音を抑えることができる。
【0040】
そして、スリーブ230の側面を半径方向内向きに押圧するように伝搬規制部材260が設けられている。伝搬規制部材260は、図示のように、ボビン36と上側の端部材40との間に挟まれるように組み付けられている。伝搬規制部材260は、リング状をなし、所定の締め代をもってスリーブ30の外周面に嵌着される弾性体(本実施形態ではゴム)からなる。伝搬規制部材260は、半径方向内向きに凸形状の断面を有し、スリーブ230の側面に対して局所的な押圧力を付与可能な構成とされている。このような構成により、ガイド部22からスリーブ230へ振動が伝達されたとしても、これを減衰させることができる。伝搬規制部材260は、主弁の開閉時に発生した衝突音の大気側への伝搬をスリーブ230の位置にて遮断又は減衰させる。
【0041】
以上のように構成された電磁弁201は、ソレノイド204がオンにされると(通電状態)、コア232とプランジャ234との間に吸引力が作用するため、作動ロッド240はスプリング254の付勢力により閉弁方向に変位可能となり、パイロット弁体50がパイロット弁座66に着座してパイロット弁を閉弁させる。このとき、弁室10の冷媒がオリフィス68を介して背圧室24に導入されるため、主弁体20に閉弁方向の差圧が大きく作用し、スプリング28の付勢力に抗して主弁を閉弁させる。ソレノイド204がオンに維持される状態においては、主弁およびパイロット弁の双方が閉弁状態を維持するため、背圧室24の圧力は維持される。その結果、主弁の閉弁状態も安定に維持される。
【0042】
一方、ソレノイド204がオンからオフ(非通電状態)にされると、コア232とプランジャ234との間の吸引力がなくなるため、パイロット弁体50が吊り上げられてパイロット弁座66から離間し、パイロット弁が開弁状態となる。この結果、背圧室24内の冷媒がパイロット弁孔26を介して下流側に導出され、背圧室24の圧力が低下する。オリフィス68の通路断面はパイロット弁孔26の通路断面よりも小さいため、主弁体20には一時的に開弁方向の差圧が作用する。この差圧による力とスプリング28の付勢力により主弁体20が押し上げられ、主弁が速やかに開放される。
【0043】
次に、本実施形態の電磁弁における衝突音の伝搬規制構造について説明する。
図5は、衝突音の伝搬規制構造を表す部分断面図である。(A)はソレノイド204のオン直後の状態を示し、(B)はソレノイド204のオフ直後の状態を示している。図中の矢印は、衝突音の伝搬状態を表している。
【0044】
図5(A)に示すように、ソレノイド204がオフからオンにされると、その吸引力によりプランジャ234が引き下げられ、コア232に衝突する(B部参照)。しかし、ばね受け52が緩衝部材として機能するため、その衝突音の発生が抑制される。仮に衝突音が発生したとしてもその伝搬が減衰される。
【0045】
また、プランジャ234により作動ロッド240を上方へ付勢する付勢力が解除されるため、作動ロッド240がスプリング254により押し下げられ、パイロット弁体50がパイロット弁座66に着座する(D部参照)。またその後、主弁体20が主弁座18に着座する(E部参照)。このとき、パイロット弁および主弁の閉弁による衝突音が発生するが、その伝播は図示のように減衰される。
【0046】
すなわち、それらの衝突音は、一方で作動ロッド240を介してスプリング254に伝達されるが、緩衝部材250によりその伝搬が遮断又は減衰される。また、それらの衝突音は、他方で主弁体20およびガイド部22を介してスリーブ230に伝達されるが、伝搬規制部材260の位置にて遮断又は減衰される。このため、いずれにしても衝突音はその伝播経路において遮断又は減衰されて縁切りされ、大気側、つまり上側の端部材40の外方に伝搬することが抑制される。
【0047】
一方、
図5(B)に示すように、ソレノイド204がオンからオフにされると、その吸引力がなくなるため、スプリング54の付勢力によりプランジャ234が押し上げられ、プランジャ234が緩衝部材250に衝突する(F部参照)。しかし、プランジャ234とスリーブ230の互いの剛体部分が衝突しないため、その衝突音の発生が抑制される。また、緩衝部材250が弾性体からなるため、仮に衝突音が発生したとしてもその伝搬が減衰される。また、パイロット弁体50が引き上げられるため、スプリング28の付勢力により主弁体20が押し上げられ、遮蔽壁70がガイド部22に衝突する(C部参照)。この衝突音は、ガイド部22からスリーブ230に伝達されるが、伝搬規制部材260の位置にて遮断又は減衰される。
【0048】
[第3実施形態]
本実施形態の電磁弁は、衝突音の伝搬規制構造が第2実施形態と若干相異する。このため、以下では第2実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
図6は、第3実施形態に係る電磁弁の構成を表す断面図である。
【0049】
電磁弁301は、弁本体2とソレノイド304とを組み付けて構成される。本実施形態では、スリーブ230の底部中央に伝搬規制部材350が設けられる。伝搬規制部材350と作動ロッド240との間にスプリング254が介装されている。一方、プランジャ334の上端部には、環状の緩衝部材352が嵌着されている。緩衝部材352は、弾性体(本実施形態ではゴム)からなり、ソレノイド304をオフにしたときにプランジャ334がスリーブ230に衝突するときの衝突音を抑える。すなわち、本実施形態は、第2実施形態の緩衝部材250を分割し、その一方を伝搬規制部材350としてスリーブ230に配置し、他方を緩衝部材352としてプランジャ334に配置した態様となっている。なお、変形例においては、緩衝部材352を伝搬規制部材350とは別体にてスリーブ230に配置してもよい。
【0050】
また、本実施形態の伝搬規制部材360は、Oリングからなり、所定の締め代をもってスリーブ230の外周面に嵌着されている。ただし、通常用いられるシール専用のOリングとは異なり、スリーブ230を外方から弾性的に締め付けられる程度の締め代(圧入代)が設定されている。伝搬規制部材360は、主弁の開閉時に発生した衝突音の大気側への伝搬をスリーブ230の位置にて遮断又は減衰させる。
【0051】
次に、本実施形態の電磁弁における衝突音の伝搬規制構造について説明する。
図7は、衝突音の伝搬規制構造を表す部分断面図である。(A)はソレノイド304のオン直後の状態を示し、(B)はソレノイド304のオフ直後の状態を示している。図中の矢印は、衝突音の伝搬状態を表している。
【0052】
図7(A)に示すように、ソレノイド304がオフからオンにされると、その吸引力によりプランジャ334が引き下げられ、コア232に衝突する(B部参照)。しかし、第2実施形態と同様に、ばね受け52が緩衝部材として機能するため、その衝突音の発生が抑制される。仮に衝突音が発生したとしてもその伝搬が減衰される。
【0053】
また、プランジャ334により作動ロッド240を上方へ付勢する付勢力が解除されるため、作動ロッド240がスプリング254により押し下げられ、パイロット弁体50がパイロット弁座66に着座する(D部参照)。またその後、主弁体20が主弁座18に着座する(E部参照)。このとき、パイロット弁および主弁の閉弁による衝突音が発生するが、その伝播は図示のように減衰される。
【0054】
すなわち、それらの衝突音は、一方で作動ロッド240を介してスプリング254に伝達されるが、伝搬規制部材350によりその伝搬が遮断又は減衰される。また、それらの衝突音は、他方で主弁体20およびガイド部22を介してスリーブ230に伝達されるが、伝搬規制部材360の位置にて遮断又は減衰される。このため、いずれにしても衝突音はその伝播経路において遮断又は減衰されて縁切りされ、大気側、つまり端部材40の外方に伝搬することが抑制される。
【0055】
一方、
図7(B)に示すように、ソレノイド304がオンからオフにされると、その吸引力がなくなるため、スプリング54の付勢力によりプランジャ334が押し上げられ、プランジャ334の緩衝部材352がスリーブ230の底部に衝突する(F部参照)。しかし、プランジャ334とスリーブ230の互いの剛体部分が衝突しないため、その衝突音の発生が抑制される。また、緩衝部材352が弾性体からなるため、仮に衝突音が発生したとしてもその伝搬が減衰される。また、パイロット弁体50が引き上げられるため、スプリング28の付勢力により主弁体20が押し上げられ、遮蔽壁70がガイド部22に衝突する(C部参照)。この衝突音は、ガイド部22からスリーブ230に伝達されるが、伝搬規制部材360の位置にて遮断又は減衰される。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0057】
上記実施形態では、伝搬規制部材60,260,360をスリーブ30,230の外部に設ける構成を示した。変形例においては、伝搬規制部材をスリーブの内方に設け、スリーブに対して半径方向外向きに弾性的な押圧力を付与する構成としてもよい。その場合、伝搬規制部材60をプランジャと緩衝しない位置に配置する。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。