【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
(体温上昇効果の確認)
(1)被験物質
黒生姜は、タイ産黒生姜の根茎をミルサーで粗粉砕したものを使用した。生姜末は、中国産の褐色粉末をそのまま使用した。いずれも、投与の際、蒸留水を溶媒として、50mg/mLおよび100mg/mLとなるように懸濁して使用した。なお、エタノールは、蒸留水を溶媒として20(v/v)%の溶液を作製して使用した。
【0033】
(2)実験動物及び飼育方法
7週齢のICR雄性マウスを6匹1群として5群用意し、5日以上の馴化期間をおいた後、実験に使用した。群分けは、試験直前に体重の平均値がほぼ均一となるようにして行った。また、試験中は被試験物質投与から、試験終了後まで絶食、絶水とした。
【0034】
(3)被験物質の投与
ICR雄性マウスの1群をコントロール(蒸留水)とした。2、3群は黒生姜末投与群とし、2群に対しては黒生姜末を500g/kgあたり、同じく3群に対しては黒生姜末を1000mg/kgの各用量で1回経口投与した。また、4、5群は生姜末投与群とし、4群に対しては生姜末を500g/kgあたり、同じく5群に対しては生姜末を1000mg/kgの各用量で1回経口投与した。表1に、各試験群と投与量を示す。なお、被験物質およびエタノールは、それぞれマウスに10mL/kgで胃ゾンデにより強制経口投与を行った。
【0035】
【表1】
【0036】
(4)体温測定
被試験物質をマウスに投与後5分後に、エタノールを4000mg/kgで腹腔内投与した。試験開始前(0分)及び投与直後(5分)に各部体温を測定し、その後は開始10分後から10分毎に60分までの体温を測定した。マウスの体温測定には、動物用耳内体温計Pet−Temp(PT−300;Advanced Monitors
Corporation)を使用し、耳内および表面(背部)体温を測定した。
【0037】
(5)結果
図1にマウスの耳内で測定した体温の径時変化、
図2に得られた体温変化曲線の面積(AUC)を示す。また、
図3にマウスの体表面で測定した体温の径時変化、
図4に得られた体温変化曲線の面積(AUC)を示す。
【0038】
エタノールの投与は、マウスの耳内および表面の体温を低下させる。表面温度に関して、黒生姜および生姜の投与は、ともに体温低下を抑制する作用はほとんどみられない。しかしながら、耳内温度については、生姜を投与した場合(第4,5群)は体温が低下したが、黒生姜においては、生姜とは逆に、強い低下抑制作用を示し、また、その作用は長く持続した(第2,3群)。
【0039】
以上の結果から、黒生姜の摂取が深部体温を上昇させ得ることを確認することができた。一方、抹消の血管を拡張することで知られる生姜には、そのような効果は極めて低いか、あるいはないものと考えられる。
【0040】
(体温上昇原因の検討)
(黒生姜抽出液の製造)
黒生姜の根茎チップ300gを秤量し、60%エタノール3lとともに3角フラスコに入れる。途中で何回か攪拌しながら室温で24時間静置する。減圧濾過後、残ったチップに60%エタノール3lに再度浸漬して、室温で24時間静置して抽出を行う。これを減圧濾過して、2回目の抽出液を得た。前記1回目、2回目の抽出液を併せ、これを約1/6に減圧濃縮して原液とした。
【0041】
(褐色脂肪細胞組織活動評価試験)
12時間毎の明暗周期(8時〜20時まで点灯)下に24℃の恒温動物室にて1週間以上飼育した体重約300gのWistar系雄ラット(約9週齢)を使用した。実験当日は3時間絶食させた後ウレタン麻酔し、十二指腸投与用のカニューレを挿入し、その後、肩甲間褐色脂肪組織交感神経、大腿皮膚動脈交感神経の遠心枝を銀電極で吊り上げ、それら神経の電気活動を測定した。これらの測定値が落ち着いた時期(13時頃)に前記黒生姜抽出液を60%エタノールで500mg/kg投与量になるように溶解した原液を60%エタノールで100倍に希釈した液1mlを十二指腸に投与してこれらの自律神経活動の変化を電気生理学的に測定した。なお、対照実験としては溶媒である60%エタノール溶液1mlを十二指腸投与した。尚、手術開始から測定終了までチューブを気管に挿入して気道を確保し、保温装置にて体温(ラット直腸温)を35.0±0.5℃に保つようにした。自律神経活動のデータは5分間毎の5秒あたりの発火頻度(pulse/5s)の平均値にて解析し、刺激開始前の値(0分値)を100%とした百分率で表した。
【0042】
図5にマウスの肩甲間褐色脂肪組織交感神経活動(BAT−SNA)の経時変化を示す。対照実験として行なった60%エタノール溶液1mlの十二指腸投与は最初徐々にBAT−SNAを低下させ、投与25分後にBAT−SNAを最低値74.4%に減少させ、その後徐々にBAT−SNAを上昇させて投与60分後にはBAT−SNAを101.7%にまで回復させた。これに対して、原液の100倍希釈液(5mg/kg相当を含む)1mlの十二指腸投与は、BAT−SNAを最初やや低下させて投与15分後にはBAT−SNAを70.2%にまで減少させたが、その後BAT−SNAを徐々に著明に上昇させて、投与60分後には176.7%にまで増加させた。
【0043】
以上の実験結果より、黒生姜の抽出物の十二指腸投与が、対照実験として行なった60%エタノール溶液投与時と比較して、肩甲間褐色脂肪組織の活動を増加させて深部体温を上昇させることがわかった。
【0044】
さらに、上記の方法で得た黒生姜抽出液を乾燥した黒生姜エキス粉末、黒生姜粉砕物、および黒生姜抽出液を用い、下記表の処方で飲料、顆粒、ソフトカプセル、美容液、シャンプー、石鹸を作成した。
(黒生姜粉砕物の製造)
黒生姜の根茎を洗浄後、1〜10mm程度にスライスし、1日天日干しにした。その後、40〜100℃に設定したオーブン乾燥機で4〜6時間乾燥し、粗粉砕後、130〜200℃で5〜20秒間殺菌を行った。殺菌した粗粉砕物を粉砕機によって粉砕し、黒生姜粉砕物を得た。
(黒生姜の茎、葉、花粉砕物の製造)
上記と同様の方法により、黒生姜の茎粉砕物、葉粉砕物、花粉砕物を得た。
【0045】
実施例1(液剤の製造)
表2の配合割合で各成分を配合し、液剤とした。
【0046】
【表2】
【0047】
実施例2(顆粒1の製造)
表3に従い、スクラロース0.5kg、クエン酸5kg、還元麦芽糖水飴64.5kg、難消化性デキストリン67.2kg、カンゾウ抽出物0.5kg、黒生姜粉砕物16.8kg,シクロデキストリン8.4kg、ショウヤク5kgをフローコーターNFLO−200型流動層造粒機(フロイント産業(株)製)に投入し、数分間気流で混合する。これに、水60Lを1分間に2000mL噴霧することにより造粒を行った。つづいて、得られた造粒物を30メッシュの篩いにて篩別し顆粒剤とした。
【0048】
【表3】
【0049】
実施例3(顆粒2の製造)
実施例2と同様にして、表4の成分を配合し顆粒剤とした。
【0050】
【表4】
【0051】
実施例4(ソフトカプセル1の製造)
表5の配合割合で配合した内容液を調整し、表6の配合割合で配合したカプセル皮膜に充填することでソフトカプセルとした。カプセル化は、カプセル皮膜液を流延しフィルム化すると共に、内部に内容液を充填しヒートシールし、成形されたソフトカプセルを乾燥させて行った。
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
実施例5(ソフトカプセル2の製造)
表7の配合割合で配合した内容液を調整し、表8の配合割合で配合したカプセル皮膜に充填し、実施例4と同様にしてソフトカプセルとした。
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
実施例6(美容液の製造)
表9の配合割合で各成分を配合し、美容液とした。
【0058】
【表9】
【0059】
実施例7(シャンプーの製造)
表10の配合割合で各成分を配合し、シャンプーとした。
【0060】
【表10】
【0061】
実施例8(石鹸の製造)
表11の配合割合で各成分を配合し、石鹸とした。
【0062】
【表11】