特許第6064156号(P6064156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064156
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】深部体温上昇剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/906 20060101AFI20170116BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A61K36/906
   A61P3/00
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-154967(P2012-154967)
(22)【出願日】2012年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-15430(P2014-15430A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】友澤 寛
【審査官】 鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−067731(JP,A)
【文献】 特表2011−522534(JP,A)
【文献】 特開2000−144170(JP,A)
【文献】 科学研究費補助金研究成果報告書,2011年,URL,https://kaken.nii.ac.jp/pdf/2010/seika/mext/32680/21790634seika.pdf
【文献】 メルクマニュアル,1995年,第16版第3刷,p.2404
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/906
A61P 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒生姜加工物品を含有し、前記黒生姜加工物品が黒生姜の根茎のエタノール抽出物を含有し、前記エタノール抽出物は、エタノール単独又は含水エタノールによる抽出物であることを特徴とする深部体温上昇剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深部体温を上昇する剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の体温は、身体深部の温度をあらわす深部体温と、体表面の温度をあらわす体表面温の二つに大別することができる。
【0003】
体内外の温度が上昇すると、発汗や皮膚血管拡張などによって体内の熱を体外に放散し、逆に、体内外の温度が低下すると、皮膚血管が収縮したり、ふるえることによって熱を産生する。したがって、体表面温は、環境等の影響を受けて変化しやすい。これに対し、深部体温は生体の様々な生理反応が正常に機能するための基盤的な役目を担っており、ホメオスタシスの働きにより恒常性が維持されている。一方で、深部体温は、昼間高く夜には低下するという概日リズムも有する。
【0004】
通常、人間の正常な体温は36〜37℃であり、この体温であれば免疫機能が活発に働き、健康を維持することができる。しかしながら、近年、喫煙、過度のストレス、運動不足、睡眠不足、無理なダイエット、冷房などの影響から、低体温症の人も増加している。体温が低下すると、代謝機能が低下し、自覚症状としては冷えを感じ、その他、下肢の浮腫、体の倦怠感などが現れてくる。一般に、平均体温が1℃下がると、免疫力は約37%下がるといわれている。反対に、平均体温が1℃上がると、免疫力は約60%活性化するといわれている。
【0005】
なお、一般的に、冷え性とは「手足や腰などがいつも冷たく感じる症状。また、その体質。」のことであり、自律神経の乱れ、ホルモンのアンバランス、低血圧、貧血により、主に体表面温度の調整が不調となることであるが、ここでいう「低体温症」や「冷え」とは現象が異なり、また、その対処法も異なる。
【0006】
従来、深部体温を上昇して、免疫機能を改善させるため、運動の励行、マッサージや食事の改善、漢方薬の摂取等がよく試みられてきたが、副作用がなく、かつ、簡便に経口摂取できる食品添加剤や製剤の研究も多くなされている。
【0007】
例えば、酢酸トコフェロール、高麗人参、生姜、カプサイシン(唐辛子エキス由来の化合物)等の血流促進剤が挙げられるが、これらは体表面温度を一時的に上昇させることはできるものの、深部体温の変調を正常化することはできないため、体温低下の根本的な解決とはならなかった。
【0008】
そこで、特に深部体温の変調を正常化することを目的に、様々な植物から得られた抽出物を摂取する研究が行われてきた。例えば、松の樹皮から抽出されるプロアントシアニジン(特許文献1)、キヌア抽出物(特許文献2)、ハマウツボ科ホンオニク属植物の抽出物(特許文献3)などが検討されている。しかしながら、これらの働きは、いまだ十分なものとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−143654号公報
【特許文献2】特開2010−260848号公報
【特許文献3】特開2011−157302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたもので、その課題は、深部体温を上昇させる深部体温上昇剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 黒生姜加工物品を含有することを特徴とする深部体温上昇剤。
【0012】
(2)前記黒生姜加工物品が黒生姜の根茎を利用したものである(1)の深部体温上昇剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、顕著な深部体温の上昇作用を有するので、持続化する体温低下を誘引している深部体温の変調を正常化し、生体の体温を正常な状態に戻すことができる。また、本発明は、低血圧、内臓機能低下(便秘・下痢)、免疫力低下、血行不良(冷え・肩こり・腰痛・関節痛)、睡眠障害、新陳代謝低下(肥満)、うつ等の疾患であって、かつ、持続する低体温状態を原因とする疾患の治療や予防に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】マウスの耳内体温の経時変化を示す。
図2】マウスの耳内体温の曲線下面積を示す。
図3】マウスの表面体温の経時変化を示す。
図4】マウスの表面体温の曲線下面積を示す。
図5】マウスの褐色脂肪組織交感神経活動の経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
黒生姜(Kaempferia Parviflora)は東南アジアに自生するショウガ科、バンウコン属の植物で、精力増進、滋養強壮、血糖値の低下、体力回復、消化器系の改善、膣帯下、痔核、痔疾、むかつき、口内炎、関節痛、胃痛の改善などの報告がある。黒生姜は、長期にわたり人間に摂取されてきた実績のある天然植物である。本発明者らは、黒生姜の様々な生理作用を明らかにする中で、優れた深部体温上昇効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
体表面温度のみの上昇とは異なり、深部体温の上昇作用により、低血圧、内臓機能低下(便秘・下痢)、免疫力低下、血行不良(冷え・肩こり・腰痛・関節痛)、睡眠障害、新陳代謝低下(肥満)、うつ等の疾患であって、かつ、持続する低体温状態を原因とする疾患の治療や予防が可能となる。
【0018】
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0019】
本発明の組成物を得るための黒生姜の使用部位は樹皮、根、葉、茎、花または枝等が使用し得る。なかでも、好ましいのは、根茎である。具体的には、黒生姜の加工品(乾燥物、裁断物等)あるいはその粉末、絞り汁または抽出物を利用することができる。なお、ここで、抽出物とは、上記黒生姜またはその加工物を溶媒で抽出して得られる抽出液、その希釈液または濃縮液、あるいはそれらの乾燥物およびその粉末を意味する。食品または医薬品として使用する点などを考慮すると、抽出物を用いることも好ましい。本発明において、加工物品とは、これらのすべてを包含する。
【0020】
黒生姜の粉末製品は、洗浄後、スライスした黒生姜を天日、あるいは乾燥機を用いて乾燥後、そのままあるいは適当な形状または大きさに裁断して得た加工品を、粉砕装置を用いて粉砕することで得ることができる。粉砕装置としては通常使用されるものがひろく使用できるが、例えば、原料ホッパー、粉砕機、分級機及び製品ホルダー等から構成される粉砕機を用いることができる。
【0021】
黒生姜の抽出物は、黒生姜またはその加工物を溶媒で抽出することによって得られる。抽出に使用される溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコール、酢酸エチル、酢酸メチルなどの低級エステル、アセトン、およびこれらと水との混合物が挙げられる。中でも、本発明の組成物は、ヒトが摂取するものであることから、エタノール単独または水との混合物(いわゆる含水エタノール)を使用するのが好ましい。特に、40%以上の濃度で、エタノールを含む溶媒を使用するのが好ましい。
【0022】
溶媒として混合物を使用する場合は、例えば、アセトン/水(2/8〜8/2、体積比)混合物、エタノール/水(2/8〜8/2、体積比)混合物等を用いることができる。エタノール/水の場合、黒生姜の根茎に対して、その質量の2〜20倍質量の溶媒を加え、室温または加熱下で10分〜48時間抽出するのが好ましい。
【0023】
用いる抽出方法に特に制限はないが、安全性および利便性の観点から、できるだけ緩やかな条件で行うことが好ましい。例えば、原料植物部位またはその乾燥物を粉砕、破砕または細断し、これに2〜20倍質量の溶媒を加え、0℃〜溶媒の還流温度の範囲で10分〜48時間、静置、振盪、撹拌あるいは還流などの任意の条件下にて抽出を行う。抽出作業後、濾過、遠心分離などの分離操作を行い、不溶物を除去する。これに、必要に応じて希釈、濃縮操作を行うことにより、抽出液を得る。さらに、不溶物についても同じ操作を繰り返して抽出し、その抽出液を先の抽出液と合わせて用いてもよい。これらの抽出物は、当業者が通常用いる精製方法により、さらに精製して使用してもよい。
【0024】
本願発明の深部体温上昇剤は、上記した目的に応じ、非経口投与剤、経口投与剤等として、そのまま、あるいは、他の成分と混合して使用することができる。非経口投与剤としては、静脈内投与剤、筋肉内投与剤、皮下投与剤、経皮投与剤等が用いられる。皮下投与剤のひとつである、腹腔内投与剤としてもよい。また、経腸投与剤として、注射等を用い内臓へ直接投与することも好ましい。
【0025】
さらに、本願発明の深部体温上昇剤は、化粧品に適した形態として使用することもできる。例えば、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤等の種々の形態に加工され得る。具体的には、化粧水、化粧クリーム、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、ボディシャンプー、洗顔剤、石鹸、ファンデーション、育毛剤、水性軟膏、スプレー等として利用できる。
【0026】
黒生姜の成分の変性防止の観点からは非経口投与剤とする方法もあるが、黒生姜の成分は有機溶剤による抽出にも耐えられるほど丈夫で、胃液等への暴露によっても変性しにくいため、経口投与剤としても十分な効果を得ることができる。経口投与剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル等がある。カプセル化して、内臓にそのまま到達させる量を増やすことが好ましい。さらに、本発明の一剤は、錠剤、散剤、カプセル等の剤形状を有するもののほか、ドリンク剤、シロップ剤、ゼリーの形で供給され得る。
【0027】
経口投与剤としては、例えば、当業者が通常用いる添加剤(例えば、デキストリン、デンプン、糖類、リン酸カルシウムなどの賦形剤、香料、香油など)を用いて、錠剤、顆粒剤などの形状に成形してもよく、あるいは、水、飲料などに溶解して、液剤としてもよい。好ましくは、カプセル剤、顆粒剤、錠剤または飲料の形態である。
【0028】
カプセル剤の製造方法としては、内容物として上記植物または抽出物を用いること以外は、従来公知のソフトカプセルの製造方法に従えばよい。そのような製造法としては、カプセル皮膜シートを用いて、ロータリー式充填機で内容物を封入し、カプセル製剤を成型する方法、または滴下法によりシームレスカプセルを製造する方法などが挙げられる。
【0029】
また、錠剤については、上記植物または抽出物を含有する顆粒あるいは抽出物そのものに、適切な結合剤、賦形剤、崩壊剤および必要に応じて滑沢剤を添加し、公知の打錠法により調製することができる。顆粒剤については、公知の各種湿式、乾式などの造粒法が適用でき、適切な結合剤および賦形剤とともに成形する。さらに、ドリンク剤、シロップ剤、ゼリー等については、適切な糖、酸、香料などを添加して香味を調整し、公知の製法により調製することができる。
【0030】
本発明の深部体温上昇剤に含有される黒生姜加工物品の配合量としては特に制限はないが、経口投与剤であれば、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.001%以上配合されることが望ましく、化粧品等の非経口投与剤であれば、好ましくは0.00001%以上、より好ましくは0.0001%以上配合されることが望ましい。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
(体温上昇効果の確認)
(1)被験物質
黒生姜は、タイ産黒生姜の根茎をミルサーで粗粉砕したものを使用した。生姜末は、中国産の褐色粉末をそのまま使用した。いずれも、投与の際、蒸留水を溶媒として、50mg/mLおよび100mg/mLとなるように懸濁して使用した。なお、エタノールは、蒸留水を溶媒として20(v/v)%の溶液を作製して使用した。
【0033】
(2)実験動物及び飼育方法
7週齢のICR雄性マウスを6匹1群として5群用意し、5日以上の馴化期間をおいた後、実験に使用した。群分けは、試験直前に体重の平均値がほぼ均一となるようにして行った。また、試験中は被試験物質投与から、試験終了後まで絶食、絶水とした。
【0034】
(3)被験物質の投与
ICR雄性マウスの1群をコントロール(蒸留水)とした。2、3群は黒生姜末投与群とし、2群に対しては黒生姜末を500g/kgあたり、同じく3群に対しては黒生姜末を1000mg/kgの各用量で1回経口投与した。また、4、5群は生姜末投与群とし、4群に対しては生姜末を500g/kgあたり、同じく5群に対しては生姜末を1000mg/kgの各用量で1回経口投与した。表1に、各試験群と投与量を示す。なお、被験物質およびエタノールは、それぞれマウスに10mL/kgで胃ゾンデにより強制経口投与を行った。
【0035】
【表1】
【0036】
(4)体温測定
被試験物質をマウスに投与後5分後に、エタノールを4000mg/kgで腹腔内投与した。試験開始前(0分)及び投与直後(5分)に各部体温を測定し、その後は開始10分後から10分毎に60分までの体温を測定した。マウスの体温測定には、動物用耳内体温計Pet−Temp(PT−300;Advanced Monitors
Corporation)を使用し、耳内および表面(背部)体温を測定した。
【0037】
(5)結果
図1にマウスの耳内で測定した体温の径時変化、図2に得られた体温変化曲線の面積(AUC)を示す。また、図3にマウスの体表面で測定した体温の径時変化、図4に得られた体温変化曲線の面積(AUC)を示す。
【0038】
エタノールの投与は、マウスの耳内および表面の体温を低下させる。表面温度に関して、黒生姜および生姜の投与は、ともに体温低下を抑制する作用はほとんどみられない。しかしながら、耳内温度については、生姜を投与した場合(第4,5群)は体温が低下したが、黒生姜においては、生姜とは逆に、強い低下抑制作用を示し、また、その作用は長く持続した(第2,3群)。
【0039】
以上の結果から、黒生姜の摂取が深部体温を上昇させ得ることを確認することができた。一方、抹消の血管を拡張することで知られる生姜には、そのような効果は極めて低いか、あるいはないものと考えられる。
【0040】
(体温上昇原因の検討)
(黒生姜抽出液の製造)
黒生姜の根茎チップ300gを秤量し、60%エタノール3lとともに3角フラスコに入れる。途中で何回か攪拌しながら室温で24時間静置する。減圧濾過後、残ったチップに60%エタノール3lに再度浸漬して、室温で24時間静置して抽出を行う。これを減圧濾過して、2回目の抽出液を得た。前記1回目、2回目の抽出液を併せ、これを約1/6に減圧濃縮して原液とした。
【0041】
(褐色脂肪細胞組織活動評価試験)
12時間毎の明暗周期(8時〜20時まで点灯)下に24℃の恒温動物室にて1週間以上飼育した体重約300gのWistar系雄ラット(約9週齢)を使用した。実験当日は3時間絶食させた後ウレタン麻酔し、十二指腸投与用のカニューレを挿入し、その後、肩甲間褐色脂肪組織交感神経、大腿皮膚動脈交感神経の遠心枝を銀電極で吊り上げ、それら神経の電気活動を測定した。これらの測定値が落ち着いた時期(13時頃)に前記黒生姜抽出液を60%エタノールで500mg/kg投与量になるように溶解した原液を60%エタノールで100倍に希釈した液1mlを十二指腸に投与してこれらの自律神経活動の変化を電気生理学的に測定した。なお、対照実験としては溶媒である60%エタノール溶液1mlを十二指腸投与した。尚、手術開始から測定終了までチューブを気管に挿入して気道を確保し、保温装置にて体温(ラット直腸温)を35.0±0.5℃に保つようにした。自律神経活動のデータは5分間毎の5秒あたりの発火頻度(pulse/5s)の平均値にて解析し、刺激開始前の値(0分値)を100%とした百分率で表した。
【0042】
図5にマウスの肩甲間褐色脂肪組織交感神経活動(BAT−SNA)の経時変化を示す。対照実験として行なった60%エタノール溶液1mlの十二指腸投与は最初徐々にBAT−SNAを低下させ、投与25分後にBAT−SNAを最低値74.4%に減少させ、その後徐々にBAT−SNAを上昇させて投与60分後にはBAT−SNAを101.7%にまで回復させた。これに対して、原液の100倍希釈液(5mg/kg相当を含む)1mlの十二指腸投与は、BAT−SNAを最初やや低下させて投与15分後にはBAT−SNAを70.2%にまで減少させたが、その後BAT−SNAを徐々に著明に上昇させて、投与60分後には176.7%にまで増加させた。
【0043】
以上の実験結果より、黒生姜の抽出物の十二指腸投与が、対照実験として行なった60%エタノール溶液投与時と比較して、肩甲間褐色脂肪組織の活動を増加させて深部体温を上昇させることがわかった。
【0044】
さらに、上記の方法で得た黒生姜抽出液を乾燥した黒生姜エキス粉末、黒生姜粉砕物、および黒生姜抽出液を用い、下記表の処方で飲料、顆粒、ソフトカプセル、美容液、シャンプー、石鹸を作成した。
(黒生姜粉砕物の製造)
黒生姜の根茎を洗浄後、1〜10mm程度にスライスし、1日天日干しにした。その後、40〜100℃に設定したオーブン乾燥機で4〜6時間乾燥し、粗粉砕後、130〜200℃で5〜20秒間殺菌を行った。殺菌した粗粉砕物を粉砕機によって粉砕し、黒生姜粉砕物を得た。
(黒生姜の茎、葉、花粉砕物の製造)
上記と同様の方法により、黒生姜の茎粉砕物、葉粉砕物、花粉砕物を得た。
【0045】
実施例1(液剤の製造)
表2の配合割合で各成分を配合し、液剤とした。
【0046】
【表2】
【0047】
実施例2(顆粒1の製造)
表3に従い、スクラロース0.5kg、クエン酸5kg、還元麦芽糖水飴64.5kg、難消化性デキストリン67.2kg、カンゾウ抽出物0.5kg、黒生姜粉砕物16.8kg,シクロデキストリン8.4kg、ショウヤク5kgをフローコーターNFLO−200型流動層造粒機(フロイント産業(株)製)に投入し、数分間気流で混合する。これに、水60Lを1分間に2000mL噴霧することにより造粒を行った。つづいて、得られた造粒物を30メッシュの篩いにて篩別し顆粒剤とした。
【0048】
【表3】
【0049】
実施例3(顆粒2の製造)
実施例2と同様にして、表4の成分を配合し顆粒剤とした。
【0050】
【表4】
【0051】
実施例4(ソフトカプセル1の製造)
表5の配合割合で配合した内容液を調整し、表6の配合割合で配合したカプセル皮膜に充填することでソフトカプセルとした。カプセル化は、カプセル皮膜液を流延しフィルム化すると共に、内部に内容液を充填しヒートシールし、成形されたソフトカプセルを乾燥させて行った。
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
実施例5(ソフトカプセル2の製造)
表7の配合割合で配合した内容液を調整し、表8の配合割合で配合したカプセル皮膜に充填し、実施例4と同様にしてソフトカプセルとした。
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
実施例6(美容液の製造)
表9の配合割合で各成分を配合し、美容液とした。
【0058】
【表9】
【0059】
実施例7(シャンプーの製造)
表10の配合割合で各成分を配合し、シャンプーとした。
【0060】
【表10】
【0061】
実施例8(石鹸の製造)
表11の配合割合で各成分を配合し、石鹸とした。
【0062】
【表11】
図1
図2
図3
図4
図5