(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1熱交換流路の下流側に位置する前記第1流路における前記第1熱交換流路と前記1次側通流弁との間の位置に、前記第1流体の一定量を貯留できる流路延長形成体を設けてある請求項1または2に記載の熱交換システム。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、水を90℃まで加熱する熱源機として、(1)ボイラー方式 (2)電気ヒーター方式 (3)CO
2冷媒ヒートポンプ方式などのものがある。このうち(3)の熱源機はCO
2ガス排出量が少なく、夜間電力を使用して電力使用の平準化に寄与でき、しかもエネルギーコストが安いことで環境面と経済面において優位性がある。
【0003】
各々の熱源機には5〜25℃程度の水を通水して90℃まで昇温させる熱交換器が内蔵されている。この内蔵熱交換器に問題なく直接通水できる昇温対象流体は基本的に水道水やこれに準ずる水質の良質水に限られる。それ以外の昇温対象流体は、内蔵熱交換器の通流流体漏れによる熱源機損傷の大掛かりなトラブルを回避するために、内臓熱交換器に直接通流させることはしない。そのような昇温対象流体の場合には、一旦、昇温した良質水を熱源に利用して間接式熱交換器を使用した間接熱交換を行うことにより、目的の昇温対象流体の加温・昇温を行う。
【0004】
しかしながら、これらの間接熱交換方式の装置においても、熱交換効率向上の為に使われる通流部金属材に腐食孔や割れなどが生じ、通流流体漏れによるトラブルを起こす場合がある。例えば、
図4のようにCO
2冷媒ヒートポンプ方式熱源機で加温した貯湯温水(85〜65℃)を間接熱交換器の1次側に通し、2次側に通す冷温泉水(25℃未満)を所定の温度(約45℃)まで加温し、浴槽に供する冷温泉水加温・循環への上記熱源機利用システムにおいて、夜間電力を有効利用するために、1次側温水と同じ貯湯温水を別系統で食器洗浄などの用途に兼用する場合がある。この場合、間接熱交換器に腐食孔や割れが発生すると、これらの部位から冷温泉水が1次側温水に混入し、1次側温水が汚染されてしまう。そしてこの汚染水が貯湯タンクなどに流入すると、1次側温水が食器洗浄に適さなくなるなどの問題が生じる。また、汚染水が上記熱源機の内蔵熱交換器にまで達すると、その熱交換器をも腐食させ、熱源機を損傷させる可能性がある。
【0005】
さらに、熱交換器に腐食孔や割れが生じなくても、スケール付着や詰まりなどのために、熱交換効率の著しい低下によるエネルギーロスの増大や、メンテナンスコストの増大を来たす。特にスケール付着については冷温泉水などスケール成分の析出物が熱交換運転休停止の放置時間中に徐々に成長し固着する場合がある。このようなスケールの固着は、毎回の運転時の洗浄で防止することも可能である。しかし、従来の熱交換器では特にこのような洗浄運転は行われておらず、各熱源機メーカーは保証する昇温対象流体の成分に制約を設けてスケールの付着防止を図っているのが実状である。今のところ、多くの熱源機メーカーが水道水以外に保証する昇温対象流体は、特定の水質基準をクリアーする良質の井水や地下水に限定されている。ただし、結局のところ現在、十分な耐久性を保証された間接熱交換器として、冷温泉水の加温用途に用いるシステムに使用されているものはない。
【0006】
一方、最近になって約70℃以上の高温温泉水を熱源に低沸点媒体を使用して発電を行う小型バイナリー発電システムが注目を浴びている。しかし、種々の水質の高温温泉水に対し、例えば十分な耐久性をもつ間接熱交換器を用いたシステムは今のところ見当たらない。
【0007】
このような熱交換器の破損漏れ故障を診断する技術として、例えば、特許文献1に示す技術がある。この技術は、環境試験装置などに用いられる熱交換器の破損漏れを確実に検知しようとするシステムである。
【0008】
このシステムでは、熱交換器の破損を確認するために、
通常はシステムの運転を開始する前に、システムの流路のうち熱交換器を含む領域の圧力を高い状態に設定する。そのためには、まず、流路に設けた複数の弁の開閉状態を設定して熱交換器を含む領域を密閉領域とする。次に、ポンプなどを利用して当該密閉領域の圧力を一定圧力に昇圧し、その圧力を所定の時間に亘って測定する。当該圧力が変化しなければ、熱交換器には漏洩などの不都合が生じていないと判断できる。一方、圧力が低下した場合には、特に所定の閾値を超えて低下した場合に熱交換器に何らかの不都合が生じていると判断する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1の装置では、そのような確認運転を
通常は装置の運転初期の状態において行う。しかしながら、間接熱交換器を含め多くの熱交換器は、運転休停止中においても流路の内部に流体を充填したままであることが多い。よって、流路内部の腐食進行など流体に基因する熱交換器の破損漏れ故障が運転休停止中に生じた場合、次の確認運転がなされるまで熱交換器の故障が放置されてしまう。この間に、例えば熱交換器における1次側2次側双方の流体が水のような場合には一方の流体が他方の流路に混入し続け、他方の流路の汚染が進行してしまうことがある。
【0011】
また、この装置では運転初期に
、場合によっては運転途中において一時的に一定時間を割いて前記密閉領域を形成し、熱交換器の破損チェック動作の確認運転を行い、そののちの本運転の可否を判断するものである。しかし、この装置は本運転中に
リアルタイムに漏れ故障を検知するものではなく、また、本運転中に1次側流体と2次側流体の混入を防止したり、微量混入漏れ流路に対する汚染処理なども行わない。
このように確認運転機能を備えた従来の装置であっても、運転中あるいは運転休停止中に拘らず、常に熱交換器の健全性を維持することはできず、種々の環境下において高い安全性を有する熱交換システムを実現するには未だ改善すべき問題が存在していた。
【0012】
そこで本発明では、運転中および運転休停止中に、熱交換器1次側と2次側の流体の混入を防止し、微量混入漏れ汚染が生じた場合でも汚染の拡大を阻止し得る熱交換システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の熱交換システムに係る特徴構成は、互いに熱交換を行うよう隣接配置された第1熱交換流路および第2熱交換流路を備えた熱交換器と、前記第1熱交換流路に第1流体を通流させる第1流路と、前記第2熱交換流路に第2流体を通流させる第2流路と、前記第1流路のうち前記熱交換器の上流側および下流側の少なくとも何れか一方に設けた1次側圧力センサと、前記第2流路のうち前記熱交換器の上流側および下流側の少なくとも何れか一方に設けた2次側圧力センサと、前記第1流路のうち前記熱交換器の上流側および下流側に夫々設けた1次側通流弁と、前記第2流路のうち前記熱交換器の上流側および下流側に夫々設けた2次側通流弁と、前記第1熱交換流路および前記第1流路に前記第1流体を通流または通流停止させる第1ポンプと、前記第2熱交換流路および前記第2流路に前記第2流体を通流または通流停止させる第2ポンプと、前記1次側圧力センサおよび前記2次側圧力センサの少なくとも何れか一つからの検出値に基づいて、前記1次側通流弁、前記2次側通流弁、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの少なくとも何れか一つを操作可能な制御部とを備えると共に、前記夫々設けた1次側通流弁を両端部とする前記第1流路および前記第1熱交換流路を含む流路の少なくとも一部の配置高さを、前記夫々設けた2次側通流弁を両端部とする前記第2流路および前記第2熱交換流路を含む流路の何れの部位よりも高くして、前記第1熱交換流路の任意の位置での水頭圧が、それに対応する前記第2熱交換流路の位置での水頭圧よりも高くなるように設定し、運転中および運転休停止中に前記第1熱交換流路の圧力を前記第2熱交換流路の圧力より高く保持するように構成した点にある。
【0014】
本構成の熱交換システムでは、1次側通流弁を両端部とする流路の少なくとも一部の配置高さを、2次側通流弁を両端部とする流路の何れの部位よりも高くしてある。つまり、第1流路の一部は、互いに対向する第1熱交換流路および第2熱交換流路の位置よりも常に高い位置にある。よって、第1流路および第2流路に流体が存在する場合には、第1熱交換流路における水頭圧が、それに対応する位置の第2熱交換流路の水頭圧よりも常に高いものとなる。従って、運転休停止中に仮に熱交換器の内部で破損が生じた場合でも、第2流体が第1熱交換流路の側に混入するのを防止することができる。
【0015】
一方、熱交換運転中は、例えば、第1ポンプと第2ポンプの吐出圧に差を設け、1次側の流体圧力が2次側の流体圧力よりも常に大きくなるよう平均的所定差圧を持たせる。このような差圧運転を行うことで、仮に熱交換器の内部で破損が生じても第2流体が第1熱交換流路の側に混入するのを防止することができる。
【0016】
また、上記平均的所定差圧に異常があった場合、1次側圧力センサおよび2次側圧力センサの少なくとも何れかによる検知に基づき漏洩状況と判定して第1ポンプおよび第2ポンプを停止するなど直ちに熱交換システムを運転休停止状態とし、水頭圧の差により第1熱交換流路における圧力を、それに対応する位置の第2熱交換流路の圧力より高く保持する。
【0017】
本発明の熱交換システムにおいては、前記第2熱交換流路の両端のうち低い側の端部に接続してある前記第2流路における前記第2熱交換流路と前記2次側通流弁との間の最も低い位置から前記第2熱交換流路よりも下方に分岐延長させたドレン流路および当該ドレン流路の開閉を行うドレン用通流弁を設けることができる。
【0018】
本構成のごとく、ドレン流路およびドレン用通流弁を、第2熱交換流路に接続される第2流路のうち低い側に接続することで、仮に、熱交換運転において第1熱交換流路と第2熱交換流路との仕切りに破損が生じていた場合などに、1次側圧力センサおよび2次側圧力センサの少なくとも何れかによる検知に基づき漏洩状況と判定して当該ドレン用通流弁を大気開放して第2熱交換流路の流体を排出し、流体の混入を阻止することができる。当該ドレン流路は、第2熱交換流路に対して上流側に設けるか下流側に設けるかはここでは問題とならない。ドレン流路は、二つの第2流路のうち、設置高さがより低位置にあるものから分岐させる。これにより、第2熱交換流路および二つの第2流路に存在する第2流体の略全てを排出することができる。
【0019】
本発明の熱交換システムにおいては、前記第1熱交換流路に対して下流側に位置する前記第1流路のうち前記1次側通流弁のさらに下流側の位置から分岐し、前記第2流路のうち前記第2熱交換流路と前記2次側通流弁との間の位置に接続されたバイパス流路および当該バイパス流路に設けたバイパス用通流弁を備え、
前記ドレン流路を、前記バイパス流路が接続されたのとは反対側の前記第2流路に接続しておくと好適である。
【0020】
本構成のごとく、バイパス流路を、第1熱交換流路よりも下流側であって1次側通流弁よりもさらに下流側の位置から第2流路の何れか一方に接続し、これと反対の第2流路にドレン流路を設けることで、例えば、ドレン用通流弁を開放状態とし、より圧力の高い第1流体をバイパス流路から第2流路の一方を介して第2熱交換流路に供給することで第2熱交換流路を洗浄することができる。より圧力の低い第2熱交換流路には、例えば、熱を保有する温泉水などを流通させるが、このような熱源流体にはスケール成分や不純物が混入していることが多いと考えられる。よって、例えば当該バイパス流路を第2熱交換流路の下流側に接続すれば、より高圧で清浄な第1流体を通常の流れとは逆の方向に流して、第2熱交換流路を逆流洗浄することができる。このような逆流洗浄を熱交換運転開始前および終了後など適切なタイミングで実施することで、熱交換器の腐食などを防止して熱交換器の耐久性をより高めることができる。
【0021】
また、バイパス流路の分岐部を第1熱交換流路よりも下流側に設けたので、仮に、熱交換運転などにおいて熱交換器の内部で破損が生じ、第1熱交換流路と第2熱交換流路との間で微量混入漏れによる汚染が生じている場合に、1次側圧力センサおよび2次側圧力センサの少なくとも何れかによる検知に基づき漏洩状況と判定してバイパス用通流弁およびドレン用通流弁を開けることなどにより、汚染が生じている流体を第1流路の下流側には流さず、第2流路の側に確実に排出することができる。よって、第1流路の下流側における汚染の拡大を防止することができ、特に第1流路の下流側に汚染が拡大する場合の厄介な汚染漏れ水の後始末の必要もなくなる。
【0022】
本発明の熱交換システムにおいては、前記第1熱交換流路の下流側に位置する前記第1流路における前記第1熱交換流路と前記1次側通流弁との間の位置に、前記第1流体の一定量を貯留できる流路延長形成体を設けておくことができる。
【0023】
本構成のごとく、第1熱交換流路の下流側に流路延長形成体を備えることで、仮に、熱交換器において第2流体が第1流体の側に僅かに混入した場合でも、汚染された流体の一定量は当該流路延長形成体に貯留され、汚染水がさらに下流側に流れるのを一定時間にわたり阻止することができる。本システムでは、例えば、熱交換運転中に各所に設けた圧力センサの圧力計測値から第1熱交換流路の圧力と第2熱交換流路の圧力との差圧を監視し、当該圧力計測値または当該差圧値が異常を呈した場合に、第2流体が第1流体の側に混入する条件の一つと判定し、第1ポンプおよび第2ポンプを停止させるなどして運転休停止状態にする。上記流路延長形成体を設けることで、このような判定を行い、そののちに運転を停止するまでの時間を確保することができ、第1流路の側の汚染をより有効に防止することができる。
【0024】
本発明の熱交換システムにおいては、前記制御部が、前記1次側通流弁、前記2次側通流弁、前記第1ポンプ
、前記第2ポンプおよび前記ドレン用通流弁のうち少なくとも何れか一つの動作を制御して、前記第1流路の圧力と前記第2流路の圧力との圧力差を急増変化させ、前記1次側圧力センサおよび前記2次側圧力センサのうち少なくとも何れか一方の検出値に基づいて、前記第1熱交換流路と前記第2熱交換流路との連通の有無を確認するように構成することができる。
【0025】
本発明の熱交換システムでは、第1流路に1次側圧力センサを備え、第2流路には2次側圧力センサを備えて、前記第1熱交換流路と前記第2熱交換流路との連通の有無を監視することができる。しかし、通常の熱交換運転中の圧力差は、第2熱交換流路から第1熱交換流路への第2流体の混入を防止できればよいから、それほど大きな差を設ける必要はない。そのため、仮に、第1熱交換流路と第2熱交換流路との間で連通による漏洩が生じた場合でも、双方の熱交換流路の圧力が顕著に変化しない可能性がある。そこで、本構成では第2熱交換流路の圧力と第1熱交換流路の圧力との差を大きく急増変化させるよう制御部が機能することで漏れ検知診断を行わせ、上記漏洩の早期発見を可能にできる。
【0026】
双方の熱交換流路の圧力差を急増させる手法としては、例えば、熱交換運転前に第1ポンプのみを作動させたり、熱交換運転中に第1ポンプの出力を増大してもよい。また、第1熱交換流路の下流側に設けた1次側通流弁の絞り操作を行ってもよい。さらに、第2熱交換流路に係る第2ポンプを停止させたり、
前記ドレン用通流弁を開閉動作させたり、2次側の圧力を低下させてもよい。要するに、第1熱交換流路の側の圧力が第2熱交換流路の側の圧力に対して相対的に急増する操作であれば、制御部は何れの機器を制御するものであってもよい。
このような制御部の制御操作は、双方の圧力が検出可能であれば、当該熱交換システムがどのような運転状態にあっても実施可能である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る熱交換システムの実施形態を、以下、図面を参考にしつつ説明する。
【0029】
(装置構成)
本熱交換システムでは、例えば、CO
2冷媒ヒートポンプ方式熱源機などを用いて既に所定の温度に加温された水道温水を熱交換熱源として使用する。この水道温水を、熱交換器の1次側に通流させ、同時に加温対象の流体を熱交換器の2次側に通流させる。これら1次側および2次側の流体は、例えば互いに対向する方向に通流させる。これにより、2次側の流体を加熱する。このように、当該熱交換器は、上記ヒートポンプ方式などの熱源機使用システムにおいて、2次側の流体を安全かつ効率的に加熱する間接熱交換器として機能する。
【0030】
図1は本発明に係る熱交換システムの一つの実施形態を模式的に表したものである。中央に熱交換器1や各種配管を敷設した熱交換器ユニットUが設けられている。この熱交換器ユニットUの内部は、大きく三つのエリアに区分けしてある。
まず第1エリアA1には熱交換器1を設けてある。この熱交換器1は外部からのメンテナンスが容易となるよう簡易式脱着継ぎ手を備えている。
【0031】
当該第1エリアA1の側方上部に設けた第2エリアA2には、熱交換器1に接続する1次側の配管などが設けてある。具体的には、第1ポンプP1で汲み上げた貯湯タンク2からの第1流体R1を熱交換器1の第1熱交換流路LK1に供給する第1流路L1および当該第1流路L1に設けた逆止通流弁B1が設けてある。ここでの第1流体R1は例えば清浄な温水である。第1流路L1の一部は、第1熱交換流路LK1の最も高い位置に対してさらに高い位置に敷設してある。また、第1熱交換流路LK1の一方に接続した下流側の第1流路L12および1次側通流弁B2、さらに、その下流側に温度制御用の流量調節通流弁B3が同じ第1エリアA1に設けてある。そして場合により、第1熱交換流路LK1と1次側通流弁B2との間の位置に、第1流体R1の一定量を貯留できる流路延長形成体3を設ける。
この他、下流側の第1流路L12に設けた1次側通流弁B2の下流側から、後述する第2流路L2の一方側にはバイパス流路LBを接続してある。このバイパス流路LBにはバイパス用通流弁B4を備えている。これにより、後述するように1次側の第1流体R1を2次側の第2流路L2にバイパスさせ、第2熱交換流路LK2を洗浄することができる。
【0032】
一方、第2エリアA2の下方に設けた第3エリアA3には、例えば冷泉水受水槽10などから第2ポンプP2で汲み上げた第2流体R2としての冷泉水を第2熱交換流路LK2に供給する上流側の第2流路L21が設けてある。また、この第3エリアA3には、第2熱交換流路LK2のもう一方に接続した下流側の第2流路L22も設けてある。これら上流側および下流側の第2流路L2には、それぞれ2次側通流弁B5,B6が設けてある。第2流路L2のうち鉛直方向のより低位置にある側の第2流路L21において、第2熱交換流路LK2と2次側通流弁B5との間の位置からは、ドレン用通流弁B7を備えたドレン流路LDを分岐させている。これにより、第2熱交換流路LK2の第2流体R2を必要に応じて外部へ排出することができる。
【0033】
(熱交換器)
本熱交換システムSのうち主要な構成要素について以下説明する。
本システムに用いる熱交換器1は、例えばプレート式熱交換器を用いる。これにより、コンパクトな構成でありながら、流体
どうしの熱交換を行う場合に高い熱交換効率を得ることができる。熱交換器1の構造としては、例えば1mm以下の厚みの非常に薄い金属プレートを第1熱交換流路LK1および第2熱交換流路LK2の各熱交換流路の仕切り壁として一定間隔を空けて複数枚重ね合わせてある。一枚のプレートを境にして両面に接する隙間の一方に、熱を与える1次側の高温流体である第1流体R1を流通させ、他方の隙間に、熱を受ける2次側の低温流体である第2流体R2を
通流させる。これらの
通流方向は、通常、対向流とする。従って、形成される複数隙間の一つ飛びに同じ高温流体、あるいは同じ低温流体が分散されて同じ方向に平行に流れる。第1熱交換流路LK1および第2熱交換流路LK2の入口および出口は外部配管と接続できるように円形の穴が開設けてある。同じ位置に開けられた複数枚プレートの穴周りが1枚ごとにシールと非シールを繰り返す構造になっており、入り口から入る高温の第1流体R1および低温の第2流体R2は上記複数の隙間の一つ飛びに連通分散され、高温流体は全て同じ方向に、低温流体は全て逆の方向に流れ、対向流熱交換が行われる。
【0034】
ただし、このうち第2熱交換流路LK2に水質条件の悪い例えば冷温泉水を流すとき、薄いプレート表面にスケールが付着し析出固着を生じさせることがある。場合によっては、腐食孔や割れが生じて隣り合う第1流体R1と第2流体R2(冷温泉水)とが互いに混ざり合い、清浄な第1流体R1が汚染されたり、熱交換システムSの各部で機械的損傷が生じるなどのトラブルが発生する。
【0035】
なお、熱交換器1の形式は、上記プレート式のものに限られるものではなく、2重管式やシェル&チューブ式など、他方式の熱交換器であってもよい。
【0036】
(第1流路、第2流路)
本構成においては、二つの1次側通流弁B1,B2を両端部とする第1流路L11,L12および第1熱交換流路LK1を含む流路の少なくとも一部の配置高さを、二つの2次側通流弁B5,B6を両端部とする第2流路L21,L22および第2熱交換流路LK2を含む流路の何れの部位よりも高く構成してある。つまり、第1流路L1の一部は、互いに対向する第1熱交換流路LK1および第2熱交換流路LK2の位置よりも常に高い位置にある。例えば、
図1に示すように、第1流路L1の一部を逆U字状にして上方に湾曲させたり、また、第1流路L1のほぼ全体を第1熱交換流路LK1よりも高い位置に設置しておく。
【0037】
このように構成することで、第1流路L1および第2流路L2に流体が存在する場合には、第1熱交換流路LK1における水頭圧を、それに対応する位置の第2熱交換流路LK2の水頭圧よりも常に高く設定することができる。よって、熱交換システムSの運転休停止中に、仮に熱交換器1の内部で破損が生じた場合でも、第2流体R2である冷温泉水が清浄水の流通する第1熱交換流路LK1に流入するのを防止することができる。
【0038】
熱交換システムSの定常の熱交換運転中は、常に第1流路L1の流体圧力が第2流路L2の流体圧力よりも大きくなるようにする。このような平均的所定差圧を持つように制御する差圧運転を行うことで、仮に、熱交換器1の内部で破損が生じていても第2流体R2が第1熱交換流路LK1の側に混入するのを防止することができる。
【0039】
また、上記平均的所定差圧に異常があった場合、後述する圧力センサS1,S2、S3、S4のうちの少なくとも何れか一つによる検知に基づき漏洩状況と判定して第1ポンプP1および第2ポンプP2を停止させると同時に後述するドレン用通流弁B7を開くなど直ちに熱交換システムを運転休停止状態とし、水頭圧の差により第1熱交換流路LK1における圧力を、それに対応する位置の第2熱交換流路LK2の圧力より高く保持する。
【0040】
なお、この場合、第1流路L1の一部をどの程度高く配置するかは、第1流路L1、第1熱交換流路LK1および後述するドレン用通流弁B7の通流抵抗を考慮して決定する。仮に、第1熱交換流路LK1と第2熱交換流路LK2との間で流体の微量混入漏れを生じた場合でも、汚染された第1流体R1を第2熱交換流路LK2の側に確実に通流させ、ドレン用通流弁B7を介して外部へ排出させることができるように第1流路L1の一部を十分な高さに設定しておくのが好ましい。
【0041】
また、第1流路L1の一部を上方に湾曲させた逆U字状部LUを設ける場合には、例えば、1次側通流弁B1,B2などから空気が混入したような場合でも、逆U字状部LUの頂部に空気を収集し、適宜外部に放出することができ、第1流体R1に混入する空気を除去して熱交換効率を高く維持することができる。
【0042】
(1次側通流弁、2次側通流弁)
本実施形態で用いる弁としては、例えば
図1に示すように、上流側の第1流路L11に設ける1次側通流弁としては逆止通流弁B1を用い、下流側の第1流路L12に設ける1次側通流弁B2としては開閉制御可能な通流弁を、さらにその下流側に温度制御用の流量調節通流弁B3を用いることができる。また、上流側および下流側の第2流路L21,L22に設ける2次側通流弁B5,B6としては、例えば双方とも開閉制御可能な通流弁を各々設けることができる。
【0043】
(流路延長形成体)
本実施形態の熱交換システムSにおいては、第1熱交換流路LK1の下流側に位置する第1流路L12であって、第1熱交換流路LK1と1次側通流弁B2との間の位置に、第1流体R1の一定量を貯留できる流路延長形成体3を設けてもよい。
【0044】
このように、第1熱交換流路LK1の下流側に流路延長形成体3を備えることで、仮に、熱交換器1において第2流体R2が第1流体R1の側に混入した場合でも、汚染された流体の一定量は当該流路延長形成体3に貯留され、汚染水がさらに下流側に流れるのを一定時間にわたり阻止することができる。本システムでは、例えば、熱交換運転中に各所に設けた後述する圧力センサの圧力測定値から第1熱交換流路LK1の圧力と第2熱交換流路LK2の圧力との差圧を監視し、この圧力測定値または差圧値が異常を呈した場合に、第2流体が第1流体の側に混入する条件の一つと判定し、第1ポンプP1および第2ポンプP2を停止させると同時に後述するドレン用通流弁B7を開く。続いて1次側通流弁B2、流量調節通流弁B3および2次側通流弁B5、B6を閉じメンテナンス待ちの運転休停止状態にする。この場合に、微かな量の第2流体R2が第1熱交換流路LK1に混入すると予測されるが、上記流路延長形成体3を設けることで、このような判定を行う時間およびそののちに運転を停止するまでの時間を確保することができ、第1流路L1の下流側の汚染をより有効に防止することができる。
【0045】
なお、流路延長形成体3は単なる中空部をもつ密閉容器でもよいが、
図1の破線の直線で示すように容器内中空部に流路案内仕切り板を持たせたものがより有効である。その他、熱交換器ユニットU内部の各種配管の径以上の径をもつ複数の直管と折り返し部のU字管を交互につなぎ蛇行状したものでもよいし、同様の径の管を複数回巻いたコイル状にしたものでもよい。
要するに、流路延長形成体3については所定の容量があり確実に流路が延長されるものであって、熱交換器1の内部の破損で起こる混入漏れによって汚染された流体が、その入り口から入り出口に至るまでの時間を確実に長びかせて、さらに下流側に流れるのを所定の時間にわたり阻止できるものであればよい。
【0046】
(圧力センサ・温度センサ)
図1に示すように、第1熱交換流路LK1および第2熱交換流路LK2の夫々上流側および下流側には、圧力センサS1,S2,S3、S4を夫々一つずつ設けてある。また、この圧力センサは、第1熱交換流路LK1および第2熱交換流路LK2の夫々に対して、上流側あるいは下流側の位置に一つずつ設けるものであってもよい。流体が熱交換流路を通流する場合には幾分の流通抵抗を受けるから、熱交換器1の上流側と下流側とでは流路の圧力は異なるものとなる。よって、上流側と下流側との双方に設けることで、各部位の圧力測定精度が向上する。
その他、例えば第2熱交換流路LK2にスケールが付着して圧損が生ずる場合に、その圧損値を計測することにより、スケール除去メンテナンス時期を診断することができる。
【0047】
また、第1熱交換流路LK1および第2熱交換流路LK2の夫々上流側および下流側には、温度センサT1,T2,T3,T4を備えておくのがよい。当該温度センサもそれぞれの熱交換流路につき夫々少なくとも一つ設けてあればよいが、熱交換器1の上流側と下流側とに夫々設けることで、流路の温度測定精度が向上する。よって、第1ポンプP1あるいは第2ポンプP2、さらには1次側通流弁B1,B2あるいは温度制御用の流量調節通流弁B3や2次側通流弁B5,B6の制御がより的確なものとなり、熱交換システムSを精度良く運転することができる。
【0048】
(ドレン流路、ドレン用通流弁)
本実施形態の熱交換システムSにおいては、第2熱交換流路LK2の両端のうち低い側の端部に接続してある第2流路L21において、第2熱交換流路LK2と2次側通流弁B5との間の最も低い位置から第2熱交換流路LK2よりも下方に分岐延長させたドレン流路LDを設けてある。このドレン流路LDには、ドレン用通流弁B7を設けてあり、後述する制御部4によって開閉制御可能である。
【0049】
このように構成することで、仮に、熱交換運転または漏れ検知診断において第1熱交換流路LK1と第2熱交換流路LK2との仕切り壁のプレートが破損していた場合などに、圧力センサS1,S2、S3、S4のうちの少なくとも何れか一つによる検知に基づき漏洩状況と判定して例えば、第1ポンプP1および第2ポンプP2を停止したのち、ドレン流路LDを介して第2熱交換流路LK2の流体を排出し、流体の混入を阻止することができる。このドレン流路LDは、二つの第2流路L2のうち、設置高さがより低位置にあるものから分岐させる。これにより、ドレン用通流弁B7を開放したとき、第2熱交換流路LK2および二つの第2流路L21,L22に存在する第2流体R2の略全てを排出することができる。
【0050】
また、ドレン用通流弁B7を完全に開放するまでもなく、例えば、熱交換システムSの運転休停止中に、ドレン用通流弁B7を僅かにまたは短時間開放し、第2熱交換流路LK2の残圧を除去して大気圧に下げることで、第1熱交換流路LK1の圧力を第2熱交換流路LK2の圧力よりも常に高く維持することができる。
よって、熱交換システムSの運転休停止中に、仮に熱交換器1の内部で破損が生じた場合でも、第2流体R2である冷温泉水が清浄水の流通する第1熱交換流路LK1に流入するのを防止することができる。
【0051】
(制御部)
本実施形態の熱交換器ユニットUには、各圧力センサS1〜S4および温度センサT1〜T4による計測を行うと共に、その計測値を評価診断して異常時にはアラームランプ5を点灯させたり、ブザー9からアラームを発したり、第1ポンプP1や第2ポンプP2を停止させたりする信号を発するユニットコントローラ41を内蔵してある。
加えて本実施形態の熱交換システムSには、ユニットコントローラ41の他に、システムコントローラ42を備えている。これは、第1ポンプP1などの発停を行ったり、何らかの原因で1次側の圧力と2次側の圧力とが逆転する前に圧力逆転を阻止したり、その他の異常時にアラーム信号とポンプP1,P2および熱源機(CO
2冷媒ヒートポンプ方式熱源機)Eを停止するなどの制御を行う。
これら二つのコントローラ41,42は、上記のごとく個別のものであってもよいし、一つに一体化されたものであってもよい。
【0052】
(ポンプ)
本実施形態の熱交換システムSには、貯湯タンク2から第1流路L1に第1流体R1を供給する第1ポンプP1を備え、冷泉水受水槽10から第2流路L2に第2流体R2を供給する第2ポンプP2を備えている。これらのポンプP1,P2には、それぞれ逆止弁BP1,BP2を設けておくと好都合である。また、第1流路L1および第2流路L2に設けるポンプの能力や数は、所期の流体流量に応じて適宜設定可能である。これらのポンプは、例えば、インバータポンプで構成する。これにより、熱交換器1における1次側の流体圧力が常に2次側の流体圧力より大きくなるように平均的所定差圧を持たせる運転制御を行うことができる。
【0053】
なお、本熱交換システムSには、第1流路L1に対して清浄な水を供給するポンプとして第3ポンプP3を備えている。また、第2流路L2に対して浴槽8からの例えば40℃以下の循環冷温泉水を供給するポンプとして第4ポンプP4を備えている。
【0054】
熱交換システムSの定常の熱交換運転中に、第1流路L1の流体圧力を第2流路L2の流体圧力よりも大きくする圧力設定は、第1流路L1に設けた1次側圧力センサS1,S2および第2流路L2に設けた2次側圧力センサS3,S4の計測値に基づいて各ポンプP1,P2をインバータ制御するものであってもよい。また、ポンプとして上記のごとく逆止弁BP1,BP2付きの一般的なものを使用し、別途取付けた定圧調整弁などにより、第1流路L1の流体圧力を第2流路L2の流体圧力よりも高く設定するものであってもよい。
【0055】
(バイパス流路・バイパス用通流弁)
本実施形態の熱交換システムSにおいては、第1熱交換流路LK1に対して下流側に位置する第1流路L12のうち1次側通流弁B2のさらに下流側の位置から分岐し、第2流路L2のうち例えば第2熱交換流路LK2と2次側通流弁B6との間の位置に接続されたバイパス流路LBを備えてある。このバイパス流路LBにはバイパス用通流弁B4が備えられている。
【0056】
なお、前述のドレン流路LDは、当該バイパス流路LBが接続されたのとは反対側の第2流路L21に接続しておく。
【0057】
このように、バイパス流路LBを、第1熱交換流路LK1よりも下流側であって1次側通流弁B2よりもさらに下流側の位置から第2流路L2の何れか一方に接続し、これと反対の第2流路L2にドレン流路LDを設けることで、例えば、流量調節通流弁B3および2次側通流弁B5,B6を閉じてバイパス用通流弁B4およびドレン用通流弁B7を開放状態とし、より圧力の高い第1流体R1をバイパス流路LBから第2流路L2の一方を介して第2熱交換流路LK2に供給することで第2熱交換流路LK2を洗浄することができる。
なお、このとき、第2ポンプP2を停止して第1ポンプP1のみ作動させるのが好ましいが、2次側通流弁B5が閉じられるのであれば第2ポンプP2は別系統の使用に供するための運転状態であってもよい。より圧力の低い第2熱交換流路LK2には、例えば、熱を保有する温泉水などを
通流させるが、このような熱源流体にはスケール成分や不純物が混入していることが多く、第2熱交換流路LK2は常に汚染されていると考えられる。よって、この場合、例えば当該バイパス流路LBを第2熱交換流路LK2の下流側に接続すれば、より高圧で清浄な第1流体R1を、
図1における破線矢印のように通常の流れと逆の方向に流して第2熱交換流路LK2を逆流洗浄することができる。本構成であれば、汚染流路の逆流洗浄を熱交換運転開始前および終了後など適宜行うことができ、熱交換器1の腐食などを防止し、熱交換器1の耐久性をより高めることができる。
【0058】
このようなバイパス流路LBは、熱交換システムが健全な場合はもちろん、仮に、熱交換運転または漏れ検知診断において熱交換器の内部で破損が生じ、第1熱交換流路LK1と第2熱交換流路LK2との間の微量混入漏れにより、第2流体R2が第1流路L1の側に僅かに流入し汚染が生じている場合にも有効である。つまり、熱交換器1にてバイパス流路LBの分岐部は、第1熱交換流路LK1よりも下流側に設けてある。よって、仮に、圧力センサS1,S2、S3、S4のうちの少なくとも何れか一つによる検知に基づき漏洩状況と判定された場合に、例えば運転休停止状態とする前に流量調節通流弁B3および2次側通流弁B5,B6を閉じてバイパス用通流弁B4およびドレン用通流弁B7を開けることにより、汚染が生じている流体を、第1流路L1の下流側ではなく、第2流路L2の側に確実に排出することができる。このような構成であれば、第1流路の下流側において汚染が拡大し蓄積することを有効に防止することができ、特に第1流路L1の下流側に汚染が拡大する場合の厄介な汚染漏れ水の後始末の必要もなくなる。
【0059】
(運転実例)
次に、
図1および
図2に基づき、本実施形態に係る熱交換システムSの運転例を示す。
特に、
図2は、熱交換システムSの運転タイムチャートである。縦軸に圧力をとり、横軸に時間をとって、熱交換通流運転時および運転休停止時における第1熱交換流路LK1と第2熱交換流路LK2との圧力変化を示したものである。図中、全運転状態とは熱交換システムSにおけるシステムコントローラ42およびユニットコントローラ41の電源が入り状態にある状態を示す。
図2では、八つの時間帯を規定している。a〜hまでを合わせたものが全運転状態であり、bからgまでを合わせたものが圧力センサの計測による圧力監視状態である。cからeまでを合わせたものが何れかのポンプが作動している通流運転状態であり、dが熱交換運転状態である。
【0060】
より具体的には、図中aは、全運転開始後であって、流路の圧力計測を行う前の流体を通流させない状態である。bは、圧力計測を行う状態である。cは、1次側ポンプP1を稼動させ第1熱交換流路LK1の圧力を急激に上昇させた際の、第2熱交換流路LK2の圧力計測を行う状態である。dは、熱交換システムSの定常の熱交換運転状態であって、第1熱交換流路LK1の圧力と第2熱交換流路LK2の圧力の計測と、その差圧を計測する状態である。eは、熱交換運転後、2次側ポンプP2を停止して各2次側通流弁を閉じ、かつ2次側にあるドレン用通流弁B7を大気開放する状態である。fは、第1熱交換流路LK1の圧力を、再度、上昇させるために一旦、1次側ポンプP1を停止して圧力計測を行い、ドレン用通流弁B7を所定の条件に切り替える状態である。gは、再度、1次側ポンプP1を作動させ第1熱交換流路LK1の圧力を急激に上昇させた際の、第2熱交換流路LK2の圧力計測を行う状態である。hは、第2流路L2および第1流路L1への流体の通流を停止したのちの全運転終了を待つ状態である。
【0061】
以下には、本熱交換システムSの運転例を示す。
(運転開始)
運転開始時において、貯湯タンク2には、予め前記熱源機Eで昇温した水道温水が貯留されている。水道温水の温度は大よそ80℃前後である。
まず、昇温流体である冷温泉水の供給量を所期の量となるように湯はり供給栓11の開度を調節する。
【0062】
次に、熱交換器ユニットUのユニットコントローラ41にて、第2熱交換流路LK2の第2流体R2(冷温泉水)に対する昇温温度を設定する。
【0063】
第2流路L2から分岐させたドレン用通流弁B7を閉じ操作し、ユニットコントローラ41により、第1流路L1に設けた温度制御用の流量調節弁B3を通流初期開度まで開き操作すると共に、1次側通流弁B2を開き操作する。第1流路L1と第2流路L2とに流体が未だ
通流していないことを確認した上で、第1流路L1および第2流路L2の圧力値を測定する。このときの双方の差圧値を算出し、各圧力値、差圧値共に記憶させておく。
【0064】
続いて第1ポンプP1のみを作動させる。このとき第1流路L1の圧力を急激に増大させ、第2流路L2の圧力との差を増大させて、第1流路L1に設けた1次側圧力センサS1,S2および第2流路L2に設けた2次側圧力センサS3,S4の値を計測する。1次側と2次側との圧力差が所定の値以上に大きくなれば、第1熱交換流路LK1と第2熱交換流路LK2との間に連通による漏洩が無いことを確認できる。
【0065】
この熱交換システムSでは、第1流路L1に1次側圧力センサS1,S2を備え、第2流路L2には2次側圧力センサS3,S4を備えて、前記第1熱交換流路LK1と前記第2熱交換流路LK2とが仕切り壁のプレート損傷などにより連通した場合、何れか一方の流路の圧力が及ぼす他方の圧力を監視することができる。しかし、通常の熱交換運転中の圧力差は、第2熱交換流路LK2から第1熱交換流路LK1への第2流体R2の混入を防止できればよいから、それほど大きな差を設ける必要はない。そのため、仮に、第1熱交換流路LK1と第2熱交換流路LK2との間で連通による漏洩が生じた場合でも、双方の熱交換流路の圧力が顕著に変化しない可能性がある。そこで、第2熱交換流路LK2の圧力と第1熱交換流路LK1の圧力との差を大きく急増変化させるよう制御部4が機能することで、上記漏洩の早期発見を可能にしている。
例えば、第2ポンプP2として、本発明のような熱交換システムにおいてよく用いられる揚程18mのポンプを選び一方、第1ポンプP1として、互いの使用流量範囲全域に亘り差圧を持たせ、しかも省エネルギー観点からポンプ負荷を極力抑えて揚程22mのポンプを選び差圧運転を行っている場合は、熱交換器の1次側流体と2次側流体との圧力差はわずか、
ら第1熱交換流路LK1への第2流体R2の混入を防止するには十分である。この場合、第2ポンプP2を停止させ、ドレン用通流弁を一旦、開閉動作させて熱交換器1次側流体圧力を大気圧とさせ、第1ポンプP1のみ加圧運転を続けると、熱交換器の1次側流体と2次側流体との圧力差は、第1ポンプP1の揚程22m分すなわち、220kPa程度となり、その圧力差をおよそ5倍以上に急増させることができる。このような極めて大きな急増圧力差により、第1熱交換流路LK1と第2熱交換流路LK2との間のわずかな連通による漏洩でも早期発見を可能とすることができる。
【0066】
具体的には、制御部4であるシステムコントローラ42が、1次側通流弁B1,B2または温度制御用の流量調節通流弁B3および2次側通流弁B5,B6、第1ポンプP1、第2ポンプP2、ドレン用通流弁B7のうち少なくとも何れか一つの動作を制御して、第1流路L1の圧力と第2流路L2の圧力との圧力差を急増変化させる。これにより得られる1次側圧力センサS1,S2および2次側圧力センサS3,S4のうち少なくとも何れか一つの検出値に基づいて、第1熱交換流路LK1と第2熱交換流路LK2との連通の有無を確認する漏れ検知診断を行わせる。
【0067】
なお、双方の熱交換流路LK1,LK2の圧力差を急増させる手法としては、例えば、第1ポンプP1の出力を増大してもよいし、第1熱交換流路LK1の下流側に設けた1次側通流弁のうちの流量調節通流弁B3の絞り操作を行ってもよい。また、第2熱交換流路LK2に係る第2ポンプP2を停止させたり、ドレン用通流弁B7を開き操作して、2次側の圧力を低下させてもよい。要するに、第1熱交換流路LK1の側の圧力が第2熱交換流路LK2の側の圧力に対して相対的に急増する操作であれば、制御部4は何れの機器を制御するものであってもよい。
このような制御部4の制御操作は、双方の圧力が検出可能であれば、当該熱交換システムSがどのような運転状態にあっても実施可能である。
【0068】
熱交換器1などの故障がないことを確認したのち、流量調節通流弁B3を閉じ、1次側通流弁B2を開いた状態で続けて第2熱交換流路LK2の洗浄を行う。すなわち、第2流路L2に設けた二つの2次側通流弁B5,B6を閉じ操作して、第1流路L1から分岐させたバイパス流路LBのバイパス用通流弁B4とドレン用通流弁B7とを開き操作する。これにより、2次側の第2熱交換流路LK2へ通常の流れと逆の方向に、第1流体R1を流すようにして当該第2熱交換流路LK2を逆流洗浄することができる。
【0069】
洗浄運転が終了したのち、第1流路L1の圧力を通常運転圧力に戻すと共に、バイパス用通流弁B4を閉じる。これに続けて、第1熱交換流路LK1の圧力が設定値となるように第1ポンプP1を制御する。一方、2次側においてはドレン用通流弁B7を閉じ操作し、二つの2次側通流弁B5,B6を開き操作するとともに、第1ポンプP1が作動している条件の下で第2ポンプP2を作動させる。第2流路L2に設けた圧力センサS3,S4の値に基づき、第2ポンプP2を制御して、常に第1流路L1の流体圧力が第2流路L2の流体圧力に対して平均的所定差圧だけ大きくなるように第2熱交換流路LK2の圧力を所定の値に設定する。
【0070】
1次側と2次側の圧力およびその差圧が安定したら、1次側温度計T1,T2および2次側温度計T3,T4の値を計測する。
【0071】
熱交換システムSが定常の熱交換運転を開始したのちは、1次側圧力センサS1,S2の圧力と2次側圧力センサS3,S4の圧力と、その差圧を常時監視する。仮に、第1ポンプP1が不意に故障したり、1次側と2次側の圧力およびその差圧に異常が生じて、特に第1熱交換流路LK1の圧力と第2熱交換流路LK2の圧力との差が所定の閾値を下回った場合には、漏洩状況と判定して直ちに第2ポンプP2と、第1ポンプP1とを停止し、ドレン用通流弁B7を開き第2熱交換流路LK2の流体を排出する。
【0072】
続いて1次側通流弁B2、2次側通流弁B5、B6を閉じ、メンテナンス待ちの運転休止状態にして前記同様に水頭圧の差により第1熱交換流路LK1における圧力を、それに対応する位置の第2熱交換流路LK2の圧力より高く保持し、仮に熱交換器1の内部で破損が生じていても第2流体が第1熱交換流路LK1の側に混入するのを防止する。これにより水質上問題のある第2流体R2である冷温泉水が、第1流路L1において、少なくとも通流弁B1の上流側および通流弁B2の下流側に侵入するのを防止する。
【0073】
1次側と2次側の圧力およびその差圧に異常のない定常の熱交換運転においては、第2熱交換流路LK2の下流側出口の第2流体R2の温度は、予め設定した温度(例えば45℃)に対し、許容の上限温度(例えば46℃)と下限温度(例えば42℃)との間の温度となるようにコントロールされる。このコントロールは、ユニットコントローラ41が温度制御用の流量調節弁B3の開度を制御することで行う。
【0074】
定常の熱交換運転中はユニットコントローラ41により各温度計T1〜T4や圧力センサS1〜S4の計測値を常時監視して予め設けた正常範囲を外れた異常値を検出したときは、直ちにシステムコントローラ42により第1ポンプP1および第2ポンプP2を停止させると同時にドレン用通流弁B7を開く。続いて1次側通流弁B2、流量調節通流弁B3および2次側通流弁B5、B6を閉じメンテナンス待ちの運転休停止状態にすると共に、アラームランプ5を点灯させたり、ブザー9によりアラーム音を発生させたりする。
【0075】
浴槽8への湯はり供給が完了するなど、熱交換運転を終える時は、まず第2ポンプP2を停止させると共に、ドレン用通流弁B7を開き操作する。これにより、運転休停止時に第2熱交換流路LK2を大気開放して第2流体R2の残圧を除去する。
【0076】
次に、第2ポンプP2が停止していることを確認し、2次側より高い圧力設定の第1ポンプP1を継続して加圧しながらポンプ吐出流量を徐々に低減する。流量がゼロになったのちに第1ポンプP1を停止させ、二つの1次側通流弁のうち下流側の弁B2を閉じ操作する。
【0077】
第1ポンプP1および第2ポンプP2が停止している状態で、第1流路L1の圧力と第2流路L2の圧力、または、双方の差圧を計測する。
【0078】
再度、ここで漏れ検知診断を行う。つまり、ドレン用通流弁B7を閉じ、1次側通流弁B2を開き操作し、第1ポンプP1を短時間作動させて、第1熱交換流路LK1にのみ第1流体R1を通流させる。これにより、第2熱交換流路LK2との圧力差を急激に増大させて、第2熱交換流路LK2の圧力に影響が及ぶか否かを確認する。第2熱交換流路LK2の圧力が特に影響を受けないことが確認されたのち、第1ポンプP1を停止する。
【0079】
こののち、必要に応じて再度、第1ポンプP1を作動させ、上記〔0068〕段落で示したのと同様の手順により第2熱交換流路LK2の逆流洗浄を行う。例えば、長時間に亘る熱交換運転により第2熱交換流路LK2の汚れやスケール付着が顕著になっていると予測される場合や、システムを停止したのち再稼働までの休止期間が長期にわたる場合などに第2熱交換流路LK2を逆流洗浄することで、熱交換器1の性能低下や劣化を防止することができる。
【0080】
最後に第1ポンプP1を上記〔0076〕段落の要領にて停止させ、全ての状況を確認した上で、熱交換システムSの全運転を終了する。
【0081】
〔別実施形態1〕
上記実施形態では、漏れ検知診断運転を、第1流路L1には第1流体R1が満たされ、第2流路L2には第2流体R2が満たされた状態で行った。漏れ検知診断運転は1次側
と2次側との圧力差を急激に変化させるものであるが、場合によっては、当該
圧力差によって熱交換器1が破損する可能性もある。その場合に、第1流体R1と第2流体R2とが互いに隣接する状態で存在したのでは、何かの都合で、第2流体R2が第1熱交換流路LK1の側に混入する事態も生じ得る。
【0082】
そこで、このような不都合を防止するために、漏れ検知診断運転の実施に際しては上記実施形態と順序を逆にして、まず逆流洗浄を行い、第2熱交換流路LK2にも第1流体R1を満たした状態で行うのが好ましい。これにより、仮に漏れ検知診断運転が熱交換器1の破損を誘発するような場合でも、その後の第1熱交換流路LK1の側の汚染を確実に防止することができる。
【0083】
〔別実施形態2〕
上記実施形態では、高温の温水によって第2流体R2である冷温水を昇温させる例を示した。本熱交換システムSは、この他にも
図3に示すように、高温の温泉水の熱を利用して小型バイナリー発電を行う場合にも有効である。
【0084】
この場合、熱授受の関係からみれば、高温の温泉水の流路が1次側であり、熱を受ける冷水の側が2次側となる。しかし、本別実施形態においても、冷水流路側に温泉水が混入するのを防止する必要があるという点では、上記実施形態と同様であるので、本別実施形態でも説明を容易化するために冷水側を1次側とし、高温の温泉水の側を2次側とする。
【0085】
本別実施形態においては、まず前記熱源機Eを小型バイナリー発電装置6に置き換える。小型バイナリー発電装置6には冷却水を放熱させるためのクーリングタワー7および冷却ポンプP5が併設される。
また、第2流体R2である温泉水は、例えば第2ポンプP2を用いて地下からくみ上げたのち熱交換器1に導かれ、ここで第1流体R1である水などと熱交換される。熱が吸収された温泉水は、湯はり供給栓11にて水を加えて温度調節が行われ、浴槽8などに供給される。放熱後の温泉水は、当該浴槽8の他に設けた種々の施設にも供給される。
【0086】
この場合、第2流路L2に対して浴槽8からの循環冷温泉水を供給するポンプとして第4ポンプP4を備えていないが、それ以外の構成は上記実施形態と同様であり、運転の開始から停止まで同様に行うことができる。