(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064201
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】油中における水の有無判定装置
(51)【国際特許分類】
F23K 5/08 20060101AFI20170116BHJP
F23K 5/14 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
F23K5/08 A
F23K5/14 501Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-6830(P2015-6830)
(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公開番号】特開2016-133236(P2016-133236A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】592010139
【氏名又は名称】株式会社大森
(74)【代理人】
【識別番号】100069903
【弁理士】
【氏名又は名称】幸田 全弘
(74)【代理人】
【識別番号】100101166
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100157509
【弁理士】
【氏名又は名称】小塩 恒
(72)【発明者】
【氏名】平林 充治
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−181040(JP,A)
【文献】
実公昭47−008926(JP,Y1)
【文献】
特開2005−075394(JP,A)
【文献】
特開平09−236247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/08
F23K 5/14
F24C 5/18
B01D 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にフィルタが設けられる透明なケース部材と、このケース部材の開口部に結合部材を介して着脱自在に装着される油供給部材とから構成されるものであって、
前記透明なケース部材は、その内部に水溶性色素を担持させた判定部材、もしくは水との接触によって変色する素材で構成された判定部材を有し、
前記判定部材は、前記フィルタの外側面の、下端から3分の1以下の範囲に設けられること
を特徴とする油中における水の有無判定装置。
【請求項2】
前記判定部材は、
色素を含んだ担体からなること
を特徴とする請求項1に記載の油中における水の有無判定装置。
【請求項3】
前記担体は、
濾材、シート状の不織布又はペレットからなること
を特徴とする請求項2に記載の油中における水の有無判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料油中に水が混在しているか否かを判定することができる、油中におけ
る水の有無判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、灯油などの燃料油を用いた暖房装置が多く利用されている。
特に、寒冷地においては、より高い燃焼エネルギーを必要とするため、屋外に大型の燃料油タンクを設置し、配管を介して屋内の暖房装置などに燃料油を供給する形式のものが多く利用されている。
【0003】
このような屋外設置型の燃料油タンクにおいては、燃料油を充填する際に、給油口近辺に積もった雪の一部が混入したり、あるいは水滴が一部混入したりする可能性が高く、タンクの構造上からも、この水の混入を完全に防止することは事実上不可能である。
しかも、水は燃料油に比較して比重が大きいため、混入した水は、タンクの底部に溜まることになる。
このように混入した水が燃焼装置に送られると、燃焼装置の異常燃焼あるいは燃焼停止などの不都合を生じるおそれがある。
【0004】
かかる現状に鑑み、屋外設置型の燃料油タンク内に混在する水を、検知する方法の一例が特許文献1に開示されている。
【0005】
例えば、特開2005−075394号公報(特許文献1)には、給油タンクへの水の流入を防止するとともに、補給した灯油に水が混入していた場合でも、これを検知して、石油燃焼機器の損傷及び給油タンクの錆発生を未然に防ぐことができる、石油燃焼機器の給油タンクが提案されている。
【0006】
この特許文献1に記載の給油タンクは、燃料を貯める給油タンクであって、該給油タンクに燃料を補給する補給口を備え、前記補給口に設けたフィルタに、水を検知する水検知部を一体に形成したことを特徴としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−075394号公報(請求項1,
図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載の給油タンクは、具体的には、特許文献1の
図1で明らかなように、その上部斜面部に燃料を補給する補給口を備えるものであって、この補給口内に設けたフィルタの下方部に、水を検知する水検知部(水溶性塗料の塗布部)を一体に形成したものである。
しかしながら、灯油中に混在する水は、灯油に比較して比重が大きく、タンクの底部に溜まるので、前記水検知部によって混在する水の検知は、容易ではない。
【0009】
この発明はかかる現状に鑑み、燃料油タンク内の燃料油中に、水が混在しているか否かを容易に判定することができる、油中における水の有無判定装置の提供を目的とするもの
である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、この発明の油中における水の有無判定装置は、
内部にフィルタが設けられる透明なケース部材と、このケース部材の開口部に結合部材を介して着脱自在に装着される油供給部材とから構成されるものであって、
前記透明なケース部材は、
その内部に水溶性色素を担持させた判定部材、もしくは水との接触によって変色する素材で構成された判定部材を有
し、
前記判定部材は、
前記フィルタの外側面の、下端から3分の1以下の範囲に設けられること
を特徴とするものである。
【0011】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の油中における水の有無判定装置において、
前記判定部材は、
色素を含んだ担体からなること
を特徴とするものである。
【0012】
この発明の請求項
2に記載の発明は、
前記担体は、
濾材、シート状の不織布又はペレットからなること
を特徴とするものである。
【0013】
なお、この発明には、下記の発明が含まれる。
(1)請求項1に記載の油中における水の有無判定装置において、
前記油供給部材は、
上面部に燃料油の流入口を有し、一端側を調整バルブの装着部とし、他端側を燃料油の供給部としたパイプ部材からなるもので、
その底面部の中央に上下が開口したフィルタ装着部を、その上部開口部が前記供給部内に、下部開口部が前記ケース部材内に位置するよう形成し、
前記調整バルブ側のパイプ部材の底面には、燃料油の油導入
口を形成するとともに、前記パイプ部材内には、前記流入口から供給された燃料油を、前記油導入口側にのみ供給する隔壁を有し、
前記油導入口に供給する燃料油を、前記調整バルブで制御するよう構成されていること
を特徴とするもの
。
【0014】
(2)上記(1)に記載の油中における水の有無判定装置において、
前記調整バルブは、
その先端部に、前記油導入口に流れる燃料油を阻止もしくは燃料油の流量を制御する阻止部が設けられていること
を特徴とするもの
。
【0015】
(3)請求項1に記載の油中における水の有無判定装置において、
前記油供給部材は、
パイプ部材の裏面部に短筒状の取付け部を有し、この取付け部に前記ケース部材の開口部を挿入させ、両者を結合部材で一体化させるよう構成されていること
を特徴とするもの
。
【発明の効果】
【0016】
この発明にかかる油中における水の有無判定装置は、燃料油タンク、特に、屋外設置型の灯油タンクの底部に配設されるものであって、前記燃料油タンクと連結するための油供給部材と、前記油供給部材の下部に着脱自在に取り付けられる、上方が開口した透明の樹脂素材からなるケース部材と、前記ケース部材内に配設されるフィルタとで構成され、前記ケース部材内に、水溶性色素を担持したか、もしくは水との接触によって変色する素材で構成された、燃料油中に水が混在しているか否かを判別するための判定部材を備えている。
したがって、前記ケース部材内に流入した燃料油は、前記判定部材と接触し、燃料油中に水が混在している場合には、混在している水のみが水溶性色素によって着色されるか、もしくは混在している水と接触した判定部材が変色する。
よって、燃料油中に水が混在していることを、前記ケース部材を介して目視により容易に確認することができ、燃料油中に含まれる水による燃焼装置の異常燃焼や燃焼停止の危険性がない。
また、前記フィルタは、水を含むとフィルタとしての効果を十分に発揮することができない傾向にあるが、この発明にかかる油中における水の有無判定装置によれば、前記着色又は変色の有無によってフィルタが水を含むか否かを判定することができるので、フィルタの交換時期が明瞭に分かる。
【0017】
なお、この発明において、前記判定部材は、前記フィルタの外側面の、下端から3分の1以下の範囲に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明にかかる油中における水の有無判定装置が配設される、燃料油タンクの一例を示す正面図である。
【
図2】この発明にかかる油中における水の有無判定装置の一例を示す正面図である。
【
図3】
図2に示す油中における水の有無判定装置の縦断面図である。
【
図4】この発明にかかる油中における水の有無判定装置に使用されるフィルタの他の例を示す正面図である。
【
図5】この発明にかかる油中における水の有無判定装置に使用されるフィルタの他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明にかかる油中における水の有無判定装置の実施例を、添付の図面に基づいて具体的に説明する。
なお、この発明は、以下の実施例にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を変更しない範囲内で種々変更を加えることができるものである。
【0020】
この発明にかかる油中における水の有無判定装置(以下、「判定装置」という。)2は、屋外に設置される燃料油タンク1の底部に配設されるものである。
前記燃料油タンク1は、
図1に示すように、例えば、側面視逆Y字状の支持体Pに両側面が支承されたタンク主体Tの上部に、給油口1aと、油量計1bおよび通気管1cとを有し、底部の送油口1dに、水抜きアダプター1eを介して、この発明にかかる判定装置2を備えたものである。
【0021】
前記判定装置2は、特に、
図3で明らかなように、内部にフィルタ3が内装される上部が開口した筒状のケース部材4と、このケース部材4の上部開口部に装着される油供給部材5と、前記油供給部材5をケース部材4に固定するための結合部材6とから構成されている。
【0022】
前記ケース部材4は、上部が開口した有底円筒状の透明な部材からなるものであって、前記油供給部材5の下部を支持するためのフランジ4aが、開口部近傍の外周に一体的に形成されたものである。
なお、このケース部材4は、有底でかつ透明な素材であれば、その形状については特段の制限はない。
【0023】
前記ケース部材4は、その中心部にフィルタ3を有するものである。
前記フィルタ3は、濾材からなるエレメントを円筒状に形成し、その上部をトッププレート3aで、下部をボトムプレート3bによって固定したもので、後述する油供給部材5の底部の中央に設けられるフィルタ装着部7に、前記トッププレート3aを係着させることによって、前記ケース部材4内の中央部に保持するものである。
【0024】
前記油供給部材5は、
図2で明らかなように、平面が円形状をなし、その上面の直径方向に、パイプ部材を一体的に装着し、一端側を調整バルブ10の装着部5aとし、他端側を燃料油の供給部5bとするとともに、当該パイプ部材の上部に燃料油の流入口5dを設けたものである。
【0025】
かかる油供給部材5は、その底面の中央部に、上部の開口部を前記供給部5bと連通させ、下部の開口部を、前記底面を貫通して下方に突出させた筒状のフィルタ装着部7が形成され、前記供給部5bと反対側の、前記短筒部5cの内側壁に接して油導入口8が形成されている。
【0026】
さらに、前記フィルタ装着部7の上部開口部の前記調整バルブ10側は、前記流入口5dから供給される燃料油が、前記油導入口8のみからケース部材4に供給され、前記供給部5b側に流れないよう隔壁9によって完全に区画されている。
したがって、前記流入口5dから供給された燃料油は、油導入口8を介して前記ケース本体4に供給され、しかるのち、フィルタ3を介してのみ前記供給部5bに供給されるものである。
【0027】
前記調整バルブ10は、
図3で明らかなように、ナット10aによって前記装着部5aに固定されるもので、当該調整バルブ10の先端部には、前記油導入口8への燃料油の供給を阻止する阻止部10bが付設され、矢印方向に移動させることによって、油導入口8への燃料油の供給を阻止するものである。
【0028】
さらに、前記調整バルブ10の装着側の内底面上に油導入口8の開口度合いを、前記調整バルブ10の先端部によって調節し、供給される燃料油の量を制御するよう構成されている。
【0029】
前記油供給部材5は、
図3で明らかなように、供給された燃料油が前記液導入口8側にのみ流れ、直接供給部5b側に流入しないよう隔壁9によって区画されている。
その際、前記調整バルブ10の先端側の開口部を、中心に透孔を有する隔壁(図示せず)で閉止し、前記調整バルブ10の先端部を前記透孔に当接させることによって、燃料油の供給をストップさせるよう構成してもよい。
【0030】
一方、前記供給部5bは、前記フィルタ3の前記装着部7と連通しているもので、前記フィルタ3を構成する、内部が中空のエレメントの側面または/および底部の開口部を介して、送られる燃料油を受け入れ、室内の暖房装置(図示せず)に供給するものである。
【0031】
前記油供給部材5は、裏面の中央部に垂設したフィルタ装着部7にフィルタ3の上部のエンドプレート3aを外嵌させることによってフィルタ3を固定し、しかるのち、短筒部5cの先端を、Oリングを介してケース部材4のフランジ4aに当接させ、結合部材6によって判定装置2を構成するものである。
【0032】
その際、前記フィルタ3のボトムプレート3bの下面に、水溶性の色素を担持させた判定部材11が取付けられる。
この判定部材11は、水溶性の色素を担持させたシート状のもので、水が混在した燃料油に接触すると、混在している水のみが水溶性の色素によって着色されるので、燃料油中の水の存在を目視によって簡単かつ容易に確認することができる。
【0033】
この実施例においては、前記判定部材11は、前記フィルタ3のボトムプレート3bの裏面に装着しているが、装着位置はフィルタ3の外側面、好ましくはその下端から3分の1以下の範囲である。
具体的には、
図4に示すように、前記フィルタ3の外側面の下端から3分の1以下の範囲に、判定部材として、水溶性の色素を担持させたシート状の濾材11aを巻き付けてもよい。
あるいは、
図5に示すように、前記フィルタ3の外側面の適当な位置に、判定部材として、水溶性の色素を担持させた濾材11bを、鉛直方向に沿って1または複数設けてもよい。
さらに、この実施例においては、前記判定部材11は、水溶性の色素を担持させたものとしたが、水との接触によって変色する素材で構成されたものであっても、同様の効果が得られる。このような素材としては、例えば、リトマス紙が挙げられる。
【0034】
なお、この発明においては、前記判定部材11は、不織布に水溶性の色素を担持させているが、前記のように、濾材に水溶性の色素を担持させて、これを前記フィルタ3の外側面に設ける他、前記判定部材11にペレットなどの素材を選択し、これをケース部材4の底部に設けてもよい。
さらに、前記フィルタ3を交換する場合には、前記手順を逆に行えばよい。
【0035】
以下、かかる油中混在水判定装置2を使用して、燃料油タンク内の燃料油中に水が混在しているか否かを判定する方法について説明する。
【0036】
燃料油タンク内の燃料油は、適宜手段によって前記流入口5dを介して判定装置2内に入り、前記油導入口8からケース部材4内に流入し、前記フィルタ3の外側面もしくはエンドプレート3bの開口部から内部空洞内を介して前記フィルタ装着部7、前記供給部5bおよびパイプからなる連結部材(図示せず)を介して室内の燃焼装置に供給される。
【0037】
したがって、燃料油タンクから前記判定装置2内に供給された燃料油中に、水が混在している場合には、混在する水が前記判定部材11と接触することによって、特定の色に着色されるか又は前記判定部材11が特定の色に変色するので、直ちに燃料油の供給を中止することで、燃焼装置の異常をストップさせることができる。
さらに、前記着色又は変色が認められた場合には、フィルタが水を含んだ状態にあることを視認することができるので、前記フィルタは、フィルタとしての効果を十分に発揮することができず、フィルタを交換すべきことが明瞭に分かる。
【0038】
特に、この発明における油中における水の有無判定装置2は、前記透明なケース部材4内に、燃料油内に含まれる水の有無を判別する判定部材11が設けられているので、燃料油中の水の有無を目視によって的確に判断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明にかかる油中における水の有無判定装置は、油中に水が混入しているか否かを目視で判定することができるので、屋外設置型の燃料油タンクなどに適用できる判定装置として幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 燃料油タンク
1a 給油口
1b 油量計
1c 通気管
1d 送油口
1e 水抜きアダプター
2 油中における水の有無判定装置
3 フィルタ
3a トッププレート
3b ボトムプレート
4 ケース部材
4a フランジ
5 油供給部材
5a 装着部
5b 供給部
5c 短筒部
5d 流入口
6 結合部材
7 フィルタ装着部
8 油導入部
9 隔壁
10 調整バルブ
10a ナット
10b 阻止部
11 判定部材
P 支持体
T タンク主体