(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記方法は、より低い感知した温度に対して、より長い前記駆動期間又はより多数の前記駆動期間を定めるステップを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
電流は、前記位相巻線を励磁すると、少なくとも1つのスイッチを通って流れるようにされ、電流は、前記位相巻線を非励磁すると、少なくとも1つの別のスイッチを通って流れるようにされることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の方法。
電流は、前記位相巻線を励磁すると、第1のスイッチの対を通って流れるようにされ、電流は、前記位相巻線を非励磁すると、第2の異なるスイッチの対を通って流れるようにされることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
前記方法は、前記位相巻線の電流が電流制限値を超えたことに応じて前記位相巻線を非励磁するステップと、前記1つ又はそれ以上の駆動期間中、少なくとも1回、前記電流制限値を上昇させるステップと、を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の方法。
前記方法は、前記位相巻線の電流が電流制限値を超えたことに応じて前記位相巻線を非励磁するステップと、各駆動期間に対して異なる電流制限値を採用するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の方法。
前記方法は、温度を感知するステップと、感知した前記温度を用いて電流制限値を定めるステップと、前記位相巻線の電流が前記電流制限値を超えたことに応じて前記位相巻線を非励磁するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モータを予熱する手法は既知であるが、通常、1つ又はそれ以上の欠点に悩まされる。
例えば、モータは、起動前にモータを所定温度まで昇温する昇温装置を含むことができる。しかしながら、昇温装置を備えることでモータの価格は上昇する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、1つ又はそれ以上の駆動期間にわたりモータの位相巻線を連続して励磁及び非励磁することを含み、位相巻線は各駆動期間全体にわたり同じ方向に励磁され、モータの回転子を位置合わせされた位置にロックする、ブラシレスモータを予熱する方法を提供する。
【0005】
位相巻線を順次励磁すること及び非励磁することにより、電力損失(例えば、銅損、鉄損、及びスイッチ損)はモータを昇温するように作用する。結果的に、別個の昇温装置を設けることを回避することができる。回転子を位置合わせされた位置にロックする方向で位相巻線を励磁することにより、回転子を固定位置に維持しながら回転子の昇温を実行することができる。結果として、回転子が回転してしまうと生じかねない、モータの構成部品(例えば、軸受)の破損の可能性を回避することができる。
【0006】
回転子が静止する位置によって、回転子は、位置合わせされた位置において静止する前に、駆動期間の始まりに回転する場合がある。しかし、回転子のいずれの動きも比較的小さいものである。具体的には、回転子は、一回転しないようにされる。従って、回転子が自由な速度で回転してしまうと生じかねない、モータの構成要素の破損の可能性を避けることができる。
【0007】
モータは、一方向性とすることができ、位相巻線は、モータを逆転駆動する方向に励磁することができる。典型的には、ブラシレスモータの回転子は、回転子の極が固定子の極に対してわずかにずれた位置で静止する。一方向性モータにおいて、典型的に、回転子は、回転子の極が固定子の極のわずか前方の位置で静止する。モータを逆転駆動する方向で位相巻線を励磁することにより、回転子は、位置合わせされた位置において静止する前に、比較的小さい角度を動く。結果的に、予熱中の回転子の動きを最小にすることができる。
【0008】
本方法が、複数の駆動期間にわたり位相巻線を順次励磁及び非励磁することを含む場合、駆動期間は連続する、すなわち、1つの駆動期間のすぐ後に、別の駆動期間が続くとすることができる。代替的に、駆動期間は、離間されてもよい。具体的には、駆動期間の各対は、位相巻線が非励磁される一時停止期間によって離間することができる。各駆動期間中に発生した熱は、より長い期間をかけて、モータシステムに全体にわたって伝搬する。
【0009】
本方法は、温度(例えば、モータ内の温度)を感知すること、及び感知した温度を用いて、各駆動期間の長さ及び/又は駆動期間の合計数を定めることを含むことができる。具体的には、本方法は、より低い温度に対して、より長い駆動期間及び/又はより多数の駆動期間を定めることを含むことができ、逆もまた同様である。各駆動期間の長さ及び/又は駆動期間の合計数を温度の関数として定めることによって、モータを安全に起動することができるレベルまでモータの温度を上昇させるのに十分な期間全体にわたり、位相巻線を励磁及び非励磁することができる。
【0010】
電流は、位相巻線を励磁すると、少なくとも1つのスイッチを通って流れるようにすることができ、電流は、位相巻線を非励磁すると、少なくとも1つの別のスイッチを通って流れるようにすることができる。スイッチに関連付けられる電気抵抗のために、各スイッチは、電流を伝導すると熱を放散する。励磁中は電流が少なくとも1つのスイッチを通って流れ、非励磁中は電流が少なくとも1つの別のスイッチを通って流れることを保証することにより、各駆動期間中に少なくとも2つの異なる熱源が生成される。結果的に、より高速の昇温を実施することができる。電流は、位相巻線を励磁すると、スイッチの第1の対を通って流れるようにすることができ、電流は、位相巻線を非励磁すると、スイッチの第2の、異なる対を通って流れるようにすることができる。結果として、各駆動期間中に4つの熱源が生成される。結果的に、モータの昇温は、より良好に均衡し、かつより迅速になる。
【0011】
本方法は、位相巻線における電流が電流制限値を超えたことに応じて、位相巻線を非励磁することを含むことができる。この場合、各駆動期間には、異なる電流制限値を採用することができる。例えば、より高い電流制限値を各連続する駆動期間に採用することができる。代替的に、電流制限値は、1つ又はそれ以上の駆動期間中、少なくとも1回上昇させることができる。例えば、本方法は、電流制限値を定期的に上昇させることを含むことができる。両方の場合において、電流制限値は、一定量だけ、又は、例えば、モータ内の温度等の他の何らかの量に応じた量だけ、上昇させることができる。ある期間にわたって電流制限値を徐々に上昇させることにより、モータに熱衝撃を受けさせずに、比較的迅速に昇温を実行することができる。
【0012】
本方法は、温度を感知すること、感知した温度を用いて電流制限値を定めること、及び位相巻線の電流が電流制限値を超えたことに応じて位相巻線を非励磁することを含むことができる。温度(例えば、モータ内の温度)に依存する電流制限値を定めることにより、モータは、熱衝撃を回避する速度で昇温させることができる。感知温度を用いて、初期電流制限値を定め、後で、初期電流制限値を、一定量だけ又は感知温度の変化に応じた量だけ(例えば、周期的に、又は、各駆動期間の終わりに)上昇させることができる。従って、モータの温度が上昇するに伴い、電流制限値は、比較的迅速な昇温を維持するように上昇させることができる。
【0013】
本発明は、上記の段落のいずれか1つにおいて記載された方法を実施するブラシレスモータのための制御システムを提供する。
【0014】
本発明は、ブラシレスモータと上記の段落に記載された制御システムとを含むモータシステムをさらに提供する。
【0015】
本発明をより容易に理解できるようにするために、本発明の実施形態は、ここで、例示として、添付の図面を参照しながら説明される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び
図2のモータシステムは、DC電源2により電力供給され、ブラシレスモータ3と制御システム4とを含む。
【0018】
モータ3は、四極固定子6に対して回転する四極永久磁石回転子5を含む。導電ワイヤが固定子6の周りに巻かれ、互いに結合され(例えば、直列又は並列で)、単一の位相巻線7を形成する。
【0019】
制御システム4は、DCリンクフィルタ8と、インバータ9と、ゲートドライバモジュール10と、電流センサ11と、ホール効果センサ12と、温度センサ13と、コントローラ14と、を含む。
【0020】
DCリンクフィルタ8は、インバータ9の切り換えにより生じる比較的高周波の脈動を滑らかにするキャパシタC1を含む。
【0021】
インバータ9は、DCリンク電圧を位相巻線7に結合する4つの電源スイッチQ1−Q4のフルブリッジを含む。スイッチQ1−Q4の各々は、フリーホイールダイオードを含む。
【0022】
ゲートドライバモジュール10は、コントローラ14から受信した制御信号に応答して、スイッチQ1−Q4を駆動して開閉させる。
【0023】
電流センサ11は、それぞれインバータ9の下方レッグ上に配置された、一対の感知レジスタR1、R2を含む。各レジスタR1、R2にかかる電圧は、電流感知信号I_SENSE_1及びI_SENSE_2としてコントローラ14に出力される。第1の電流感知信号I_SENSE_1は、(以下でより詳細に説明されるように)右から左へ駆動されたときの位相巻線7における電流の尺度を与える。第2の電流感知信号I_SENSE_2は、左から右へ駆動されたときの位相巻線7における電流の尺度を与える。
【0024】
ホール効果センサ12は、固定子6のスロット開口部に配置され、センサ12を通る磁束の方向に応じて、論理的ハイ又はローのデジタル信号HALLを出力する。従って、HALL信号は、回転子5の角度位置の指標を与える。
【0025】
温度センサ13は、モータシステム1内に配置されるサーミスタTH1を含む。サーミスタTH1にかかる電圧は、温度信号TEMPとしてコントローラ14に出力される。
【0026】
コントローラ14は、プロセッサ15と、メモリデバイス16と、複数の周辺装置17(例えば、比較器、タイマー等)と、を有するマイクロコントローラを含む。好適な候補は、Microchip Technology Inc.社製のPIC16F690マイクロコントローラである。メモリデバイス16は、プロセッサ15による実行のための命令、並びに、モータシステム1の動作中、プロセッサ15により採用される制御パラメータ及びルックアップテーブルを格納する。制御装置14は、モータシステム1の動作の制御を担い、3つの制御信号、DIR1、DIR2及びFW#を生成する。制御信号は、ゲートドライバモジュール10に出力され、ゲートドライバモジュールは、これに応答して、インバータ9のスイッチQ1−Q4を駆動して開閉させる。
【0027】
DIR1及びDIR2は、インバータ9を通る電流、従って、位相巻線7を通る電流の方向を制御する。DIR1が論理的ハイに引き上げられ、DIR2が論理的ローに引き下げられると、ゲートドライバモジュール10は、スイッチQ1及びQ4を閉じ、スイッチQ2及びQ3を開き、これにより電流が位相巻線7を左から右に通るように駆動する。逆に、DIR2が論理的ハイに引き上げられ、DIR1が論理的ローに引き下げられると、ゲートドライバモジュール10は、スイッチQ2及びQ3を閉じ、スイッチQ1及びQ4を開き、これにより電流が位相巻線7を右から左に通るように駆動させる。従って、位相巻線7における電流は、DIR1及びDIR2を逆転することにより整流される。DIR1及びDIR2の両方を論理的ローに下げると、ゲートドライブモジュール10は、全てのスイッチQ1−Q4を開く。
【0028】
FW#は、位相巻線7をDCリンク電圧から切断し、位相巻線7における電流がインバータ9のロー側ループの周りをフリーホイールできるようにするために用いられる。従って、論理的ローにされたFW#信号に応答して、ゲートドライバモジュール10は、ハイ側のスイッチQ1、Q3の両方を開かせる。各電源スイッチQ1−Q4は、単一方向にのみ伝導する。結果的に、電流は、ロー側のスイッチQ2、Q4の一方を通り、ロー側の他方のスイッチQ2、Q4のフリーホイールダイオードを通ってフリーホイールする。特定のタイプの電源スイッチ(例えば、MOSFET)は、両方向に伝導することができる。
つまり、フリーホイールダイオードを通ってフリーホイールするのではなく、両方のロー側のスイッチQ2、Q4を閉じて、電流が両方のロー側のスイッチQ2、Q4を通ってフリーホイールさせることができ、すなわち、論理的ローのFW#信号に応答して、両方のハイ側のスイッチQ1、Q3を開くことに加えて、両方のロー側のスイッチQ2、Q4が閉じられる。
【0029】
図3は、コントローラ14の制御信号に応答したスイッチQ1−Q4の許容状態を要約したものである。以下において、用語「セット」及び「クリア」は、それぞれ、信号を論理的ハイ及び論理的ローにされることを示すのに用いられる。
【0030】
コントローラ14は、電流制限器20として構成された多数の周辺装置17を含む。電流制限器20は、位相巻線7における電流レベルを監視し、位相巻線7における電流が電流制限値を超えた場合に、電流制限信号を切り換える。
【0031】
図4に示すように、電流制限器20は、PWMモジュール21と、平滑フィルタ22と、マルチプレクサ23と、比較器24と、を含む。PWMモジュール21、マルチプレクサ23及び比較器24は、コントローラ14の周辺装置17の一部を形成する。一方、平滑フィルタ22は、コントローラ14の外部に配置される。
【0032】
PWMモジュール21は、コントローラ14により出力されるパルス電圧信号を生成する。平滑フィルタ22は、パルス電圧信号を平滑化し、標準電圧を有する基準信号を生成し、これが次いでコントローラ14に入力される。PWMモジュール21は、定常期間と、プロセッサ15により設定される可変デューティサイクルとを採用する。従って、基準信号の電圧は、プロセッサ15により設定されるデューティサイクルによって決まる。
【0033】
マルチプレクサ23は、2つの電流感知信号I_SENSE_1及びI_SENSE_2の1つを選択するための2つの入力を有する。マルチプレクサ23により行われる選択は、位相巻線7を通る電流の方向に応じてプロセッサ15によって制御される。従って、DIR1がセットされると、マルチプレクサ23はI_SENSE_1を選択し、DIR2がセットされると、マルチプレクサ23はI_SENSE_2を選択する。マルチプレクサ23の出力は比較器24に送給される。
【0034】
比較器24は、電流感知信号I_SENSE_1又はI_SENSE_2の電圧を、基準信号の電圧と比較する。電流感知信号の電圧が基準信号の電圧を超えると、比較器24は、論理的ローにされた電流制限信号を出力する。そうでない場合は、比較器24は、論理的ハイにされた電流制限信号を出力する。
【0035】
従って、電流制限器20は、電流感知信号の電圧が基準信号の電圧を超えると、電流制限信号を切り換える。電流感知信号の電圧は位相巻線7における電流と正比例するので、電流制限器20は、位相巻線7における電流が電流制限値を超えると、電流制限信号を切り換える。電流制限値は、次いで、コントローラ14のプロセッサ15によって設定されるPWMモジュール21のデューティサイクルによって定まる。
【0036】
コントローラ14のメモリデバイス16は、様々な温度に対する様々な電流制限値(すなわち、様々なデューティサイクル)を含む電流制限値ルックアップテーブルを格納する。以下に説明されるように、コントローラ14は、起動時にこの表を用いて、モータシステム1内の温度に応じた電流制限値を選択する。
【0037】
通常運転中、モータシステム1は、公称温度範囲内で動作する。しかしながら、モータシステム1は、公称温度をかなり下回る温度で起動することを要求されることがある。比較的低い温度では、モータシステム1は、モータ3を従来の方法を用いて起動するよう試みると、挙動が不安定になることがある。さらに、モータシステム1の構成要素(例えば、軸受)は、モータ3が低温で駆動されると損傷する場合がある。従って、モータシステム1は、これらの問題に解決するよう意図した起動ルーチンを採用する。
【0038】
コントローラ14により採用される起動ルーチンを
図5に示す。コントローラ14は、最初に、モータシステム1内の温度の尺度を与えるTEMP信号を感知することにより開始する(ステップS30)。モータシステム1は、下方閾値T_MINと、上限閾値T_MAXとの間に定まる温度範囲で動作する。従って、モータシステム1内の温度がT_MINより低いか、T_MAXより高い場合には(ステップS31)、コントローラ14は、モータ3を起動しようと試みない。温度が、T_MINより高く、かつ予熱閾値T_PHより低い場合には(ステップ32)、コントローラ14は、予熱ルーチンを実行する(ステップS33)。それ以外の場合は、コントローラ14は、正転駆動ルーチンを実行する(ステップS34)。
【0039】
正転駆動ルーチンを
図6に示す。コントローラ14は、最初に、電流制限値を上限閾値に設定する、すなわち、コントローラ14は、位相巻線7における電流が上限閾値を超えると電流制限信号が切り換えられるように、電流制限器20のPWMモジュール21のデューティサイクルを設定することで開始する(ステップS35)。次いで、コントローラ14は、回転子5が静止した位置を判断するためにHALL信号を感知する(ステップS36)。この情報を用いて、コントローラ14は、回転子5を正転駆動する方向で、位相巻線7を励磁する。本説明の目的のために、HALL信号が論理的ローであると、位相巻線7が左から右へ励磁されるのに応じて回転子5は正転駆動され、HALL信号が論理的ハイであると、位相巻線7が右から左へ励磁されるのに応じて回転子5は正転駆動されると仮定される。次いで、HALL信号が論理的ローであると、位相巻線7が右から左へ励磁されるのに応じて回転子5は逆転駆動され、HALL信号が論理的ハイであると、位相巻線7が左から右へ励磁されるのに応じて回転子5は逆転駆動される。
【0040】
回転子5と固定子6との間の空隙は、非対称である。その結果、回転子5は、回転子の極が固定子の極に対してわずかに(例えば、5機械角度)ずれた位置で静止する。このことにより、回転子5を正転させようと意図する方向に位相巻線7を励磁すると、回転子5が正しい方向で回転することが保証される。
【0041】
コントローラ14は、回転子を、所定の期間、正転させる(S37)。これ以降、正転期間と呼ばれるこの期間中、回転子5が期待通りに正転すれば、HALL信号にエッジが発生するはずである(ステップS38)。HALLエッジに応じて、コントローラ14は、DIR1とDIR2を逆にすることにより、位相巻線7を整流する(ステップS39)。位相巻線7が整流されると、コントローラ14は起動ルーチンを終了させ、回転子5を従来の方法により加速させるルーチンを実行する。正転期間中にHALLエッジが検出されない場合には、コントローラ14は、故障が生じたとみなし、DIR1及びDIR2をクリアすることにより、モータを停止する(ステップS40)。
【0042】
コントローラ14が回転子5を正転させると(ステップS37)、位相巻線7を通る電流の大きさは、励磁中上昇する。位相電流が電流制限値を超えると、電流制限器20は電流制限信号を切り換える。電流制限信号の変化に応じて、コントローラ14は、FW#をクリアすることにより、位相巻線7をフリーホイールさせる。コントローラ14は、位相巻線7をフリーホイール期間フリーホイールさせ、その間に位相巻線7における電流は、電流制限値を下まわるレベルまで減衰する。フリーホイール期間の終わりに、コントローラ14は、位相巻線7を再励磁する。従って、コントローラ14は、正転期間中、位相巻線7を順次励磁させ及びフリーホイールさせる。整流の時点で(すなわち、正転期間中にHALLエッジが検出されると)、位相巻線7は、フリーホイールしている場合がある。
従って、DIR1とDIR2を逆にすることに加えて、コントローラ14は、インバータ9が駆動条件に戻ることを保証するように、FW#をセットする。
【0043】
予熱ルーチンを
図7に示す。コントローラ14は、電流制限値を選択するためにTEMP信号から得られた温度を用いて、電流制限値のルックアップテーブルを選択することから開始する(ステップS41)。次いで、コントローラ14は、HALL信号を感知し、回転子5が静止する位置を決定する(ステップS42)。次いで、コントローラ14は、回転子5を逆転させる方向に位相巻線7を励磁する(ステップS43)。
【0044】
上述のように、回転子5は、回転子の極が固定子の極に対してわずかにずれた位置で静止する。結果的に、回転子5を逆転させることに応じて(ステップS43)、回転子5は、完全に位置合わせされた位置で停止する前に、小さい角度(例えば、5機械角度)だけ逆回転する。
【0045】
コントローラ14は、以下で逆転期間と呼ぶ所定の期間、回転子5を逆転駆動する(ステップS43)。この期間中、回転子5は、完全に位置合わせされた位置にロックされる。位相巻線7の励磁に応答して、位相巻線7の電流は上昇する。位相電流が電流制限値を超えると、電流制限器20は、電流制限信号を切り換える。電流制限信号の変化に応じて、コントローラ14は、位相巻線7を非励磁する。非励磁により位相巻線7がフリーホイールすることがある。しかしながら、以下に説明する理由により、非励磁は、代わりに、DIR1及びDIR2をクリアすることによりインバータ9の全てのスイッチQ1−Q4を開にさせる。コントローラ14は、非励磁期間において位相巻線7を非励磁し、その間に位相巻線7における電流は、電流制限値を下回るレベルまで減衰する。非励磁期間の終わりに、コントローラ14は、再度、位相巻線7を励磁する。結果的に、コントローラは、逆転期間中、位相巻線7を、順次励磁及び非励磁する。
【0046】
逆転期間の終わりに、コントローラ14は、一定量だけ電流制限値を上昇させる(ステップS44)。次いで、コントローラ14は、電流制限値と、上限閾値つまり正転駆動ルーチンを実行するときにコントローラ14により用いられる値とを比較する(ステップS45)。電流制限値が上限閾値と一致する場合は、コントローラ14は、DIR及びDIR2をクリアすることにより、回転子5の駆動を停止する(ステップS46)。空隙の非対称性により、回転子5は、次いで、小さい角度(例えば、5機械角度)だけ正転し、元の静止位置で静止する。次いで、コントローラ14は、予熱ルーチンを終了させ、正転駆動ルーチンを実行する(ステップS34)。電流制限値が上限閾値より小さい場合は、コントローラ14は、逆転期間に回転子を逆転させるステップを繰り返す(ステップS43)。従って、回転子5は、位置合わせされた位置でロックされ続ける。しかし、今回は、電流制限値がより大きい。逆転期間の終わりに、コントローラ14は、再度、電流制限値を上昇させ(ステップS44)、これを上限閾値と比較する(ステップS45)。従って、コントローラ14は、電流制限値を、上限閾値に達するまで定期的に上昇させ、上限閾値に達した点で、コントローラ14は予熱ルーチンを終了させ、正転駆動ルーチンを実行する(ステップS34)。
【0047】
位相巻線7を順次励磁する及び非励磁することにより、位相巻線7に関連する電力損失(銅損)、固定子6に関連する電力損失(鉄損)、及び電源スイッチQ1−Q4に関連する電力損失(伝導及びスイッチング損失)は、モータシステム1を昇温させるように作用する。各逆転期間全体を通して、回転子5は、位置合わせされた位置でロックされる。結果的に、位置合わせされた位置への初期移動を除いて、回転子5は、モータシステム1の昇温中は回転しない。結果として、回転子5が回転してしまうと生じかねない、モータ3の構成要素(例えば、軸受)の破損の可能性を避けることができる。
【0048】
コントローラ14は、1つ又はそれ以上の逆転期間について回転子5を逆転駆動する。
逆転期間の数は、モータシステム1内の初期温度に依存する。具体的には、温度がより低いと、採用される逆転期間の数は、より多くなる。従って、このことにより、モータ3を安全に起動することができるレベルまでモータシステム1の温度を上昇させるのに十分な合計期間にわたって、位相巻線7が励磁及び非励磁されることを保証する。
【0049】
予熱ルーチンの開始時に、コントローラ14は、モータシステム1の内部温度に依存する電流制限値を選択する。より特定的には、より低い温度に対しては、より小さい電流制限値が選択される。モータシステム1の初期温度に依存する電流制限値を選択することにより、モータシステム1に対する熱衝撃を避けることができる。例えば、より低い温度に対してより小さい電流制限値を採用することにより、励磁及び非励磁中に生じる電力損失がより小さくなる。結果的に、様々な熱源(例えば、位相巻線7、固定子6及び電源スイッチQ1−Q4)の温度がより低くなり、従って、モータシステム1の温度勾配がより小さくなる。結果として、熱衝撃を避けることができる。
【0050】
予熱ルーチンの実行中、コントローラ14は、上限閾値に達するまで電流制限値を定期的に上昇させる。電流制限値を上昇させることにより、励磁及び非励磁に関連する電力損失が増加する。結果として、様々な熱源の温度が上昇し、従って、より高速の昇温を実行することができる。電流制限値は、様々な熱源の温度の上昇が、モータシステム1の温度の上昇を大幅に超えないことを保証する量だけ定期的に上昇させられる。結果として、熱衝撃は避け続けられる。
【0051】
電源スイッチQ1−Q4の電気抵抗により、各電源スイッチQ1−Q4は、導電すると熱を放散する。位相巻線7の励磁中、電源スイッチの第1の対(例えば、Q1とQ4)が閉じられる。この場合、電力は、これら2つのスイッチの各々を通って流れ、これにより、例えば、各スイッチに固定されたヒートシンクを介して熱を放散させる。位相巻線7の電流の大きさが電流制限値を超えると、コントローラ14は位相巻線7を非励磁する。上述のように、非励磁は、位相巻線7をフリーホイールさせることを含むことができる。しかしながら、ここで説明するように、非励磁中にインバータ9の全てのスイッチQ1−Q4を開くことには利点がある。コントローラ14が位相巻線7をフリーホイールさせる場合、コントローラ14は、ハイ側のスイッチ(例えば、Q1)を開く。すると、電流は、インバータ9のロー側のループの周りを流れる。つまり、電流は、既に閉のロー側のスイッチ(例えば、Q4)を通って流れ出て、他方のロー側のスイッチ(例えば、Q2)のダイオードを通って戻る。結果的に、別の電源スイッチ(例えば、Q2)が非励磁中に導電する。このことは、別の熱源を生成する利点を有する。しかしながら、インバータ9の全ての電源スイッチQ1−Q4が非励磁中に開にされると、位相巻線7の電流は、電源スイッチの他方の対(例えば、Q2及びQ3)のダイオードを通って強制的に戻される。結果的に、別の2つの電源スイッチが非励磁中に導電し、これにより、2つの付加的な熱源を生成する。従って、モータシステム1の昇温がより良好に均衡する。具体的には、熱源の第1の対(例えば、電源スイッチQ1とQ4)は励磁中に生成され、熱源の第2の、異なる対(例えば、電源スイッチQ2とQ3)は非励磁中に生成される。より均衡のとれた昇温に加えて、必ずしも熱衝撃のリスクを上昇させることなく、又は、電源スイッチを破損する可能性なしに、モータシステム1をより迅速に昇温させることができる。
【0052】
上述の実施形態において、コントローラ14は、各逆転期間の終わりに一定量だけ電流制限値を上昇させる(ステップS44)。次いでコントローラ14は、電流制限値に対する上限閾値に達すると、予熱ルーチンを終了させる(ステップS45)。代替的に、電流制限値を一定量だけ上昇させるのではなく、コントローラ14は、各逆転期間の終わりにTEMP信号を感知し、次いで、感知した温度を用いて、電流制限値ルックアップテーブルから新しい電流制限値を選択することができる。次いで、コントローラ14は、電流制限値が上限閾値と一致すると又はモータシステム1の温度が閾値を超えると、予熱ルーチンを終了することができる。この代替的なスキームにより、電流制限値は、モータシステム1の温度の変化に直接応答して調整される。従って、モータシステム1の温度が、予想より早い又は遅い速度で上昇している場合には、コントローラ14は、適切な電流制限値を選択することにより補償することができる。しかしながら、このスキームに起こり得る問題は、ひとたび昇温が開始すると、温度センサ13により感知される温度が、モータシステム1の構成要素の温度を正確に反映しない場合があることである。例えば、電源スイッチQ1−Q4は、温度センサ13に近接して配置される場合がある。従って、電源スイッチQ1−Q4により放散される熱は、最初に、おそらく温度センサ13によって感知される。一方、モータシステム1の他の構成要素は、電源スイッチQ1−Q4からより遠くに配置される場合がある。結果として、モータシステム1の他の構成要素が温度変化をほとんど又は全く受けなかった場合に、温度センサ13は大きな温度の変化を記録することがある。元のスキームは、モータシステム1内部の温度に関係なく、ある期間にわたって電流制限値を徐々に上昇させることによって、この潜在的な問題を克服する。
【0053】
可変の電流制限値(すなわち、時間と共に変化するもの、又は、モータシステム1の温度の変化に応答して変化するもの)を採用する利点にもかかわらず、コントローラ14は、固定の電流制限値を採用することができると考えられる。この場合、次いでコントローラ14は、モータシステム1の初期温度に依存する逆転駆動期間を採用する。例えば、コントローラ14は、異なる温度に対して異なる逆転駆動期間を含むルックアップテーブルを格納することができる。従って、コントローラ14は、単一の電流制限値であっても、モータシステム1の温度をモータ3を安全に起動することができるレベルまで上昇させるのに十分な期間にわたって回転子5を逆転駆動する。熱衝撃が引き続き懸念される場合は、電流制限値を比較的低いレベルに設定することができる。
【0054】
上述の実施形態において、各逆転期間の長さは同じである。結果的に、電流制限値の各増分間の期間は同じである。このことは、コントローラ14により実行される命令を単純化する利点を有する。しかしながら、より低い温度でより長い期間にわたり昇温するのが望ましい場合がある。これにより、例えば熱衝撃をさらに緩和することができる。これを実行する1つの方法は、異なる温度に対して異なる電流制限値及び異なる逆転期間を含むルックアップテーブルを採用することである。従って、コントローラ14は、予熱ルーチンの開始時及び各逆転期間の終了時に、TEMP信号を用いて電流制限値ルックアップテーブルを指標づけし、電流制限値及び逆転期間を選択することができる。
【0055】
各逆転期間中、コントローラ14は、順次位相巻線7を励磁及び非励磁する。結果としてもたらされる電力損失は、次いで、モータシステム1を昇温させるように作用する。様々な熱源に対して良好な熱経路を有するモータシステム1の構成要素(例えば、固定子6、位相巻線7及び電源スイッチQ1−Q4)は、相対的に素早く昇温する。対照的に、不良な熱経路を有する構成要素は、相対的にゆっくり昇温する。結果的に、予熱ルーチンの終わりに、構成要素の幾つかが、安全な運転温度に達していない可能性がある。代替的に、良好な熱経路を有する構成要素を、より長い期間にわたりより高い温度で保持し、不良な熱経路を有する構成要素が安全な運転温度に達するようにする必要がある。上述の実施形態において、各逆転期間のすぐ後に、別の逆転期間(予熱ルーチンの一部として)、又は正転期間(正転駆動ルーチンの一部として)が続く。代替的な実施形態において、各逆転期間の後には一時停止期間が続き、この間コントローラ14は、DIR及びDIR2をクリアすることにより回転子5の駆動を停止する。結果として、各逆転期間中に発生した熱は、より長い期間かけて、モータシステム1全体にわたって伝搬し、従って不良な熱経路を有する構成要素を温める。一時停止期間の終わりに、コントローラ14は、上述したのと同じ様式で進行させ、すなわち、コントローラ14は、電流制限値を上昇させて(S44)電流制限値を上限閾値と比較する(S45)。コントローラ14は、各逆転期間の終わりに、一定の一時停止期間を採用することができる。代替的に、コントローラ14は、モータシステム1の温度に依存する一時停止期間を採用することができる。例えば、コントローラ14は、より低い温度では、より長い一時停止期間を採用することができる。
【0056】
予熱ルーチンを実行する際に、コントローラ14は、回転子を逆転駆動させる方向に、位相巻線7を励磁する(ステップS43)。このことにより、回転子5が、完全に位置合わせされた位置において静止する前に、比較的小さい角度(例えば、5機械角度)だけ回転するという利点を有する。代替的に、コントローラ14は、回転子5を正転させる方向で、位相巻線7を励磁する。次いで、回転子5は、完全に位置合わせされた位置において静止する前に、より大きい角度(例えば、85機械角度)だけ回転する。しかし、回転子5の運動は、比較的小さいままである。具体的には、回転子5は、完全に回転しないようにされる。従って、回転子5が自由な速度で回転すると生じかねない、モータシステム1の構成要素の破損の可能性を避けることができる。
【0057】
ここまで、単相永久磁石ブラシレスモータ3を予熱することに対して言及した。しかしながら、上述の予熱ルーチンは、多相モータ及びスイッチドリラクタンスモータを含むがこれらに限定されない、他の型式のブラシレスモータを予熱するのにも同様に用いることができる。
【0058】
以下に本発明の実施態様を記載する。
(実施態様1) ブラシレスモータを予熱する方法であって、1つ又はそれ以上の駆動期間にわたり前記モータの位相巻線を順次励磁及び非励磁するステップを含み、前記位相巻線は前記各駆動期間全体にわたり同じ方向に励磁され、前記モータの回転子を位置合わせされた位置にロックすることを特徴とする方法。
(実施態様2) 前記回転子は、前記各駆動期間中、少なくとも1秒間、前記位置合わせされた位置にロックされることを特徴とする、実施態様1に記載の方法。
(実施態様3) 前記回転子は、前記1つ又はそれ以上の駆動期間中、一回転しないようにされることを特徴とする、実施態様1〜実施態様2のいずれかに記載の方法。
(実施態様4) 前記方法は、温度を感知するステップと、感知した前記温度を用いて前記各駆動期間の長さ又は前記駆動期間の数を定めるステップと、を含むことを特徴とする、実施態様1〜実施態様3のいずれかに記載の方法。
(実施態様5) 前記方法は、より低い感知した温度に対して、より長い前記駆動期間又はより多数の前記駆動期間を定めるステップを含むことを特徴とする、実施態様4に記載の方法。
(実施態様6) 電流は、前記位相巻線を励磁すると、少なくとも1つのスイッチを通って流れるようにされ、電流は、前記位相巻線を非励磁すると、少なくとも1つの別のスイッチを通って流れるようにされることを特徴とする、実施態様1〜実施態様5のいずれかに記載の方法。
(実施態様7) 電流は、前記位相巻線を励磁すると、第1のスイッチの対を通って流れるようにされ、電流は、前記位相巻線を非励磁すると、第2の異なるスイッチの対を通って流れるようにされることを特徴とする、実施態様6に記載の方法。
(実施態様8) 前記方法は、前記位相巻線の電流が電流制限値を超えたことに応じて前記位相巻線を非励磁するステップと、前記1つ又はそれ以上の駆動期間中、少なくとも1回、前記電流制限値を上昇させるステップと、を含むことを特徴とする、実施態様1〜実施態様7のいずれかに記載の方法。
(実施態様9) 前記方法は、前記電流制限値を定期的に上昇させるステップを含むことを特徴とする、実施態様8に記載の方法。
(実施態様10) 前記方法は、前記位相巻線の電流が前記電流制限値を超えたことに応じて前記位相巻線を非励磁するステップと、各駆動期間に対して異なる電流制限値を採用するステップと、を含むことを特徴とする、実施態様1〜実施態様9のいずれかに記載の方法。
(実施態様11) 前記方法は、連続する各駆動期間に対して、より高い電流制限値を採用するステップを含むことを特徴とする実施態様10に記載の方法。
(実施態様12) 前記方法は、温度を感知するステップと、感知した前記温度を用いて電流制限値を定めるステップと、前記位相巻線の電流が前記電流制限値を超えたことに応じて前記位相巻線を非励磁するステップと、を含むことを特徴とする、実施態様1〜実施態様11のいずれかに記載の方法。
(実施態様13) 前記モータは、一方向性であり、前記位相巻線は、前記モータを逆転駆動する方向に励磁されることを特徴とする、実施態様1〜実施態様12のいずれかに記載の方法。
(実施態様14) 実施態様1〜実施態様13のいずれか1項に記載の方法を行うことを特徴とする、ブラシレスモータのための制御システム。