【文献】
COE S. E.,OPTICAL, THERMAL AND MECHANICAL PROPERTIES OF CVD DIAMOND,DIAMOND AND RELATED MATERIALS,NL,ELSEVIER SCIENCE PUBLISHERS,2000年 9月 1日,V9 N9-10,P1726-1729
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
当該技術分野においてはダイヤモンド材料の合成のための化学気相成長又は蒸着(CVD)法が今や周知である。ダイヤモンド材料の化学気相成長に関する有用な背景技術情報がジャーナル・オブ・フィジックス(Journal of Physics)の特集号、即ち、ダイヤモンド関連技術を特集したコンデンスド・マター(Condensed Matter),第21巻,36号(2009)に見受けられる。例えば、アール・エス・バルマー等(R. S. Balmer et al.)による書評記事は、CVDダイヤモンド材料、技術及び用途に関する包括的な概要を与えている(これについては、「ケミカル・ベーパ・デポジション・シンセティック・ダイヤモンド:マテリアルズ,テクノロジー・アンド・アプリケーションズ(Chemical vapour deposition synthetic diamond: materials, technology and applications)」,ジャーナル・オブ・フィジックス(J. Phys.),コンデンスド・マター(Condensed Matter),第21巻,36号,2009年,364221を参照されたい)。
【0003】
ダイヤモンドが黒鉛と比較して準安定状態にある領域内にある状態で、CVD条件下におけるダイヤモンドの合成は、内部熱力学ではなく、表面反応速度論によって規定される。CVDによるダイヤモンド合成は、通常、典型的にはメタンの形態の僅かなフラクション(典型的には、5%未満)の炭素を用いて実施される。但し、過剰水素分子中において他の炭素含有ガスを利用することができる。水素分子を2000Kを超える温度まで加熱した場合、水素原子への相当な解離が生じる。適当な基板材料の存在下において、合成ダイヤモンド(人造ダイヤモンド又は人工ダイヤモンドとも称される)材料を析出させることができる。
【0004】
水素原子は、これが基板から非ダイヤモンド炭素をエッチングにより選択的に除去してダイヤモンド成長が生じることができるようにするのでプロセスにとって必要不可欠である。CVDダイヤモンド成長に必要なラジカルを含む反応性炭素及び水素原子を発生させるためにガス種を含む炭素及び水素分子を加熱する種々の方法が利用可能であり、かかる方法としては、アークジェット、ホットフィラメント、DCアーク、酸素アセチレン炎及びマイクロ波プラズマが挙げられる。
【0005】
電極を必要とする方法、例えばDCアークプラズマは、電極腐食及びダイヤモンド中への物質の混入に起因した欠点を呈する場合がある。燃焼方法には電極腐食に関する問題はないが、燃焼方法は、高品質ダイヤモンド成長と一致したレベルまで精製しなければならない比較的高価な供給ガスを利用する。また、酸素アセチレン混合物を燃焼させた場合であっても、火炎の温度は、ガス流中の相当なフラクションの水素原子を達成するには不十分であり、かかる方法は、程々の成長速度を達成するための局所領域内におけるガスのフラックスの濃縮を利用する。恐らくは、燃焼がバルクダイヤモンド成長のために普及していない主要な理由は、kWhで表される抽出可能なエネルギーコストである。電気と比較して、高純度アセチレン及び酸素の使用は、熱を発生させる上で費用のかかるやり方である。ホットフィラメント型反応器は、一見すると簡単なように見えるが、制限された量の水素原子を成長面まで比較的効果的に運ぶようにするために必要な低ガス圧力での使用に制限されるという欠点を有する。
【0006】
上述のことに照らして、マイクロ波プラズマは、電力効率、成長速度、成長面積及び得ることができる生成物の純度の面でCVDダイヤモンド析出を実施する最も効果的な方法であることが判明した。
【0007】
マイクロ波プラズマ活性化型CVDダイヤモンド合成システムは、典型的には、原料ガス供給源とマイクロ波電力源の両方に結合されたプラズマ反応器容器を含む。プラズマ反応器容器は、定常マイクロ波を支える空洞共振器を形成するよう構成される。炭素源及び水素分子を含む原料ガスがプラズマ反応器容器内に送り込まれ、かかる原料ガスを定常マイクロ波によって活性化させると、高電場領域内にプラズマを生じさせることができる。適当な基板をプラズマに近接して設けると、ラジカルを含む反応性炭素は、プラズマから拡散して基板に至ることができ、そして基板上に析出可能である。水素原子も又、プラズマから拡散して基板に至ることができ、そして基板から非ダイヤモンド炭素をエッチングにより選択的に除去してダイヤモンド成長が生じることができるようにする。
【0008】
CVD法による合成ダイヤモンド膜成長のための考えられるマイクロ波プラズマ反応器群が当該技術分野において知られている。かかる反応器は、多種多様な設計のものである。共通の特徴は、プラズマチャンバ、プラズマチャンバ内に設けられた基板ホルダ、プラズマを生じさせるマイクロ波発生器、マイクロ波発生器からのマイクロ波をプラズマチャンバ中に送り込む結合構造体、プロセスガスをプラズマチャンバ内に送り込んでプロセスガスをプラズマチャンバから除去するガス流システム及び基板ホルダ上の基板の温度を制御する温度制御システムを含む。
【0009】
種々の考えられる反応器設計例をまとめて記載したシルヴァ等(Silva et al.)による有益な概要的論文が上述のジャーナル・オブ・フィジックスに記載されている(これについては、「マイクロウェーブ・エンジニアリング・オブ・プラズマ‐アシステッドCVDリアクターズ・フォア・ダイヤモンド・デポジション(Microwave engineering of plasma-assisted CVD reactors for diamond deposition)」,ジャーナル・オブ・フィジックス(J. Phys.),コンデンスド・マター(Condens. Matter),第21巻,36号,2009年,364202を参照されたい)。特許文献に注目すると、米国特許第6645343号明細書(発明者:フラウンホッファー(Fraunhofer))は、化学気相成長プロセスによるダイヤモンド膜成長のために構成されたマイクロ波プラズマ反応器の一例を開示している。この米国特許明細書に記載された反応器は、円筒形プラズマチャンバを有し、このベースには基板ホルダが取り付けられている。冷却装置が基板ホルダ上の基板の温度を制御するために基板ホルダの下に設けられている。さらに、ガス入口及びガス出口がプロセスガスを供給したりこれを除去したりするためにプラズマチャンバのベースに設けられている。マイクロ波発生器が高周波同軸ラインによりプラズマチャンバに結合され、この高周波同軸ラインは、プラズマチャンバの上方でその送り側端部のところで細分され、そしてプラズマチャンバの周囲のところで、プラズマチャンバの側壁内に取り付けられた石英リングの形態をした本質的にリング状のマイクロ波窓に方向付けられている。
【0010】
マイクロ波プラズマ反応器、例えば先行技術において開示されたマイクロ波プラズマ反応器を用いると、適当な基板、例えばシリコンウェーハ又は高融点金属ディスクを形成する炭化物上への化学気相成長によって多結晶ダイヤモンドウェーハを成長させることが可能である。かかる多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、一般に、これらの成長させたままの形態では不透明であるが、ウェーハの互いに反対側のフェースを研磨することによって多結晶CVDダイヤモンドウェーハを透明に作ることができ、それにより光学用途向きの透明な多結晶ダイヤモンド窓を作ることができる。
【0011】
ダイヤモンド材料は、これが高い熱伝導率を有するので熱拡散部品として有用である。例えば、かかる一用途は、
図1に概略的に示されているようなディスクレーザにおける熱拡散基板としてである。ディスクレーザは、レーザ利得材料LGMの薄いディスクが載せられた熱拡散基板Sを有する。薄いディスクは、これがレーザ利得を備えたミラーとして働くのでアクティブミラーとも呼ばれる場合が多い。熱拡散基板は、これから熱を引き出して放熱する冷却剤Cの作用を受ける場合がある。出力カプラOが光学空洞共振器OCを形成するようアクティブミラーと対向して位置決めされる。アクティブミラーは、例えばダイオードレーザDLによりポンピングされ、高出力型レーザ光LLが出力カプラを通って放出される。
【0012】
ディスクレーザのアクティブミラーを実装するために熱拡散基板として多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハを用いることが知られている。ダイヤモンド材料は、その熱伝導率が極めて高いのでかかる用途で有用であることが判明した。さらに、ダイヤモンド材料は、熱伝導率が極めて低く、その結果、熱によるディストーションが少ない。
【0013】
多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハの熱的性能は、ウェーハの物理的寸法(直径及び厚さ)及びウェーハを形成しているダイヤモンド材料の品質で左右される。例えば、厚くて面積の広いウェーハは、薄くて面積の狭いウェーハよりも良好な熱拡散機能性を有する傾向があろう。さらに、熱伝導率は、結晶粒度、不純物及び/又は欠陥、例えば成長中にダイヤモンド材料中に入り込む非ダイヤモンド炭素の影響を受けることが知られている。加うるに、材料品質は、ウェーハ幾何学的形状及び成長速度に緊密に関連している。例えば、ウェーハを増大した厚さまで成長させる場合、不純物及び/又は欠陥が多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハ中に取り込まれる速度が増大する傾向がある。さらに、ウェーハを増大した直径まで成長させる場合、不純物及び/又は欠陥が多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハ中に、特にウェーハの周囲のところに取り込まれる速度が増大する傾向がある。さらに又、ウェーハを増大した成長速度で成長させる場合、不純物及び/又は欠陥が多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハ中に取り込まれる速度が増大する傾向がある。加うるに、ウェーハを増大させた厚さ及び増大させた直径まで成長させると共に/或いはウェーハを増大させた成長速度で増大させる場合にも、合成プロセス中におけるウェーハ亀裂発生の問題が生じる場合がある。
【0014】
例えば高性能ディスクレーザのような用途に関し、直径が20mm、厚さが少なくとも2mm、熱伝導率が少なくとも2000Wm
-1K
-1の多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハを提供することが望ましい。典型的な熱的等級の多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハは、2000Wm
-1K
-1未満の熱伝導率を有する傾向がある。したがって、かかる高性能熱的用途に関し、今日まで、高品質誘電等級又は光学等級の多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハが利用されている。しかしながら、良好な品質の材料を得るためにはかかる高い等級の多結晶CVD合成ダイヤモンド材料を低い成長速度で成長させるのが一般的であり、それにより費用が増大する。
【0015】
上述したことに照らして、本発明の或る特定の実施形態の目的は、熱拡散用途、例えばディスクレーザにおいて高い熱伝導率を有する厚い多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハを作製するために低コストのマイクロ波プラズマCVDダイヤモンド合成プロセスを提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図2に示されたマイクロ波プラズマ反応器は、次の部品、即ち、プラズマチャンバ2、基板ホルダ4、基板5、マイクロ波発生器6、核形成フェース9′及び成長フェース9″を備えた多結晶CVDダイヤモンドウェーハ9を成長させるために使用中生成されるプラズマ8、マイクロ波結合構造体10、誘電体窓12、原料ガス容器システム14、1つ又は2つ以上のガス入口16、1つ又は2つ以上のガス出口18、基板ホルダ4の支持面と基板5の後面との間にガス隙間22を構成するためのスペーサワイヤ又はスペーサパッド20及び供給管26を介してガス隙間22に結合されたガス供給システム24及び基板ホルダを冷却するための液体冷却剤供給システム28を含む基板温度管理装置を含む。
【0028】
マイクロ波プラズマ反応器は、3つのサブシステム、即ち、(A)プロセスガス及びマイクロ波をプラズマチャンバの頂部プレートを介してプラズマチャンバ中に送り込むよう構成されたガス及びマイクロ波送り出しシステム、(B)ベース、頂部プレート及びベースから頂部プレートまで延びていて、マイクロ波共振モードを支える空洞共振器を構成する側壁を備えたプラズマチャンバ、空洞共振器は、ベースから頂部プレートまで延びる中心回転対称軸線Sを有し、(C)プラズマチャンバのベース内に設けられていて、使用中、多結晶CVDダイヤモンドウェーハを成長させることができる基板を支持する支持面を提供する基板取り付け構造体及び液体冷却剤及び/又は気体冷却剤を基板ホルダに供給して使用中、基板ホルダの支持面全体にわたる温度プロフィールを制御する冷却剤送り出しシステムを含む基板温度制御システムを有するものと考えられる。
【0029】
以下においてサブシステムの各々について詳細に説明する。
【0030】
(A)ガス及びマイクロ波送り出しシステム
【0031】
マイクロ波結合構造体10は、マイクロ波を方形導波管から環状誘電体窓12に送るよう構成された同軸導波管を有する。同軸導波管は、内側導体及び外側導体を有する。環状誘電体窓は、マイクロ波透過性材料、例えば石英で作られ、この環状誘電体窓は、プラズマチャンバの頂部に真空密環状窓を形成する。マイクロ波発生器6及びマイクロ波結合構造体10は、適当な波長のマイクロ波を発生させてかかるマイクロ波をプラズマチャンバ中に誘導結合し、それにより使用中において基板5のすぐ上に位置した高エネルギー最大振幅を有する定在波をプラズマチャンバ内に形成するよう構成されている。
【0032】
マイクロ波結合構造体10は、導波管プレート13を更に含む。導波管プレート13は、
図3(a)、
図3(b)及び
図4に詳細に示されている。導波管プレート13は、環状形態に設けられた複数個の孔32を有し、各孔は、同軸導波管からのマイクロ波を、環状誘電体窓12を通ってプラズマチャンバ中に結合する導波管を形成する。導波管プレートは、孔相互間に延びていて、冷却剤及び/又はプロセスガスを外側円周方向領域から内側軸方向領域に供給するのに適した複数本のチャネル34を更に有する。
【0033】
この構成例は、これによりマイクロ波電力を環状誘電体窓経由でプラズマチャンバ中に結合できると共に、導波管構造体によって包囲されたプラズマチャンバの領域への冷却剤及び/又はプロセスガスの提供を可能にするので、有利であることが判明した。
【0034】
上述のことに加えて、導波管プレートは、同軸導波管の中央導体を支持するよう構成されているのが良い。したがって、
図2に示された中央導体は、接地ポストであるが、別の一構成例では、中央導体は、マイクロ波発生器からの方形導波管の上側壁に設置されることが必要ではない電気的に浮動状態のポストとして形成できる。導波管内で電気的に浮動する内側導体は、多くの点において、電力を方形導波管から同軸導波管に伝送する簡単且つ好都合な方法であることが判明している。これには、例えば冷却剤としての水及びプロセスガスのようなサービスを
図2に示されているような中央導体から導入することができる接地箇所を失うという欠点がある。しかしながら、本発明の或る特定の実施形態は、導波管プレート内のチャネルを介してかかるサービスを供給する別の手段を提供する。
【0035】
さらに、導波管プレートは、プラズマチャンバの上方部分と下方部分を互いに結合して使用中において環状誘電体窓に加わる大きな圧縮応力を回避するよう構成されるのが良く、この場合、同軸導波管の中央導体を介する機械的アンカー箇所が使用されることはない。さらに又、環状誘電体窓は、2つの互いに反対側の表面を有するのが良く、マイクロ波は、これら互いに反対側の表面を通ってプラズマチャンバ中に結合され、シールが2つの互いに反対側の表面に設けられるのが良い。これにより、信頼性のあるシールをプラズマチャンバの上方区分と下方区分との間で且つ誘電体窓のところに形成することができる。
【0036】
図4は、環状誘電体窓12及び導波管プレート13をマイクロ波プラズマ反応器内にどのようにすれば設けることができるかの一例を示すマイクロ波プラズマ反応器の一部分の断面図である。図示の構成例では、導波管プレート13の外側周辺部分が同軸導波管38の外側導体36とプラズマチャンバの側壁40との間に設けられている。環状誘電体窓12の外側周辺部分が導波管プレート13とプラズマチャンバの側壁40との間に設けられている。環状誘電体窓12の内側部分が導波管プレート13の内側部分と別のプレート42との間に保持されている。導波管プレートの孔32は、環状誘電体窓12及び冷却剤及び/又はプロセスガスのパスをこれら孔相互間で導波管プレート13の内側部分中に供給するチャネル34と整列している。環状誘電体窓12は、エラストマーOリング44を用いて導波管プレートに取り付けられるのが良い。この構成例では、別のプレート42を誘電体窓12の一部分がエラストマーOリング44を介して別のプレート42と導波管プレート13との間に設けられると共に保持された状態で導波管プレートに取り付けるのが良い。
【0037】
上述の導波管プレートは、次の幾つかの有利な機能を実行する。
(i)導波管プレートは、冷却剤及び/又はプロセスガスの噴射を可能にする。
(ii)導波管プレートは、浮動中央同軸導体を支持する。
(iii)導波管プレートは、プラズマチャンバの上側部品と下側部品との間の結合部を形成する。
(iv)導波管プレートは、同軸導波管からのマイクロ波を基板に向かう軸方向をなしてプラズマチャンバ中に送り込む。
(v)導波管プレートは、環状誘電体窓を支持する。
【0038】
図示の実施形態では、導波管プレートの複数個の孔は、マイクロ波をプラズマチャンバの中心軸線に平行な方向でプラズマチャンバ中に結合するよう構成されている。この構成例では、導波管プレートは、プラズマチャンバの中心軸線に垂直な平面内に設けられた状態でプラズマチャンバ内に上壁の一部分を形成している。マイクロ波をプラズマチャンバの軸線に平行な方向でプラズマチャンバ中に結合することは、効率が高く、しかも複雑な同軸供給形態の必要性を回避することが判明した。したがって、冷却剤及び/又はプロセスガスのためのチャネルが導波管プレートに設けられておらず且つ/或いは浮動ポストが設けられていない場合であっても、本発明の導波管プレートは、マイクロ波をプラズマチャンバ中に効率的且つ簡単な仕方で結合する上で依然として有利である。
【0039】
複数個の孔は、好ましくは、周期的回転対称性を有するよう構成される。例えば、n個の孔が設けられる場合、孔は、n倍の回転対称性を有するよう円に沿って対称に構成される。対称構造は、孔の非対称性の結果としてプラズマチャンバ内に生じる電場の非対称性を回避する上で好ましい。
【0040】
上述の環状誘電体窓は、誘電体材料の単一の完全なリングで形成される。しかしながら、別の構成例では、環状誘電体窓は、複数個の別々の弧状セグメントで形成されても良く、各セグメントは、導波管プレートの対応の孔を横切って封止される。
【0041】
一形態では、導波管プレートの孔相互間に延びる1本又は2本以上のチャネルは、基板ホルダと対向して配置されていて、プロセスガスを基板ホルダに向かって噴射する1つ又は2つ以上の噴射ポートにプロセスガスを供給するよう構成された少なくとも1本のチャネルを含む。この構成により、軸方向ガス流構造体をマイクロ波結合構造体と同一のチャンバの端のところに設けることができる。
【0042】
導波管プレートの中央部分は、基板ホルダと対向して配置された導電性表面46を支持するのが良い。導電性表面は、導波管プレートにより形成されても良く又は導波管プレートの中央部分に連結された別個の金属製本体により形成されても良い。プロセスガスを基板ホルダに向かって噴射する1つ又は2つ以上のガス入口ノズル16が導電性表面に設けられるのが良い。一形態では、導電性表面は、湾曲しており、かかる導電性表面は、プラズマチャンバの中央領域に向かって延びる。例えば、導電性表面は、円錐形の本体を形成するのが良い。かかる導電性表面は、これがプラズマチャンバの上方領域内のプラズマ生成を阻止するのを助けることができるので有用である。事実上、導電性表面は、使用中において高電場領域を隠すことができる。即ち、導電性表面は、プラズマチャンバの中央領域に向かって延びる導電性表面を備えていない対応のチャンバ内に存在する高電場最大振幅領域を包囲するよう配置されるのが良い。
【0043】
導波管プレートは、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個以上の孔を有するのが良い。孔の個数を変化させることが、プラズマチャンバ中へのマイクロ波結合効率に影響を及ぼすことができるということが判明した。或る特定の構成によれば、導波管プレートは、奇数個の孔、最も好ましくは素数個の孔を有する。例えば、導波管プレートは、3個、5個又は7個の孔を有するのが良い。
【0044】
各孔は、事実上、方形導波管と等価である。三方孔(three way aperture)は、孔の長さを最大するのに役立ち得る。代替手段としての四方孔(four way aperture)と六方孔(six way aperture)の両方は、モード安定性の観点からは欠陥があると判明した。幾つかの孔の存在にもかかわらず、電力を主としてTM
0mnモードで空洞中に結合することができる。高次モード、即ちTM
1mn(「1は、0に等しくない」の発生の形態で目に見える孔の対称性に起因した作用効果がある。かくして、3つ全ての孔が同相で励振される三方孔がモードのTM
3mnシリーズに結合し、他方、四方孔及び六方孔は、これよりも極めて高次のTM
8mn及びTM
12mnモードに結合することが予想される。しかしながら、実際には、四方孔及び六方孔は、寄生モードの影響を受けやすい。かくして、四方又は六方孔は、TM
2mnモードに結合するのが良い。全体として、作用効果は、四方及び六方孔がプラズマに非対称性を生じさせることができ、かかる非対称性の結果として、プラズマがオフセンタ状態で動き又は二方に分かれる。三方孔は、他の形態で生じるより深刻な一方又は二方分解モードよりも望ましさの低い安定した三方引き効果(three way pulling effect)を与える。孔に生じる三方モードの作用効果を打ち消すようになった摂動を局所電場に対して生じさせる基本的に金属本体であるモード解除ブロックを用いて非安定性を取り扱うのが良い。これら金属ブロックの位置を実験的に定めることができる。これら金属ブロックを高壁電流の領域(即ち、H場が高いところ)に配置することによって、ブロックを用いて望ましくないモードを途絶させることができる。したがって、一構成では、複数個のモード解除ブロックがプラズマチャンバの内壁上、例えばプラズマチャンバの側壁又は底部上に設けられ、モード解除ブロックは、複数個の孔により生じる電磁摂動を補償するよう構成されている。モード解除ブロックは、孔形態に対称に関連付けられるよう互いに間隔を置いて配置される。例えば、モード解除ブロックの個数は、導波管プレートに設けられた孔の個数に等しいのが良く、モード解除ブロックは、孔形態に対応した対称性を有するよう位置決めされる。例えば、3つの孔が導波管プレートに設けられる場合、3つのモード解除ブロックがプラズマチャンバの下方部分内でプラズマチャンバの周りに取り付けられると共に孔により生じる電場の摂動を打ち消すよう対称に配置されるのが良い。変形例として、モード解除ブロックの個数は、孔の個数の整数倍であるのが良く、他方、依然として孔形態に対称に関連付けられるよう配置される。モード解除ブロックは、プラズマチャンバの内壁にくっつけられるのが良く或いはプラズマチャンバの壁によって一体に形成されても良い。三方孔の別の考えられる代替手段は、五方又は七方孔を用いることである。これらは素数なので、これらは、提示二方モード等とのオーバーモーディング(over-moding)に抵抗する。この場合、モード解除ブロックは不要である場合がある。
【0045】
マイクロ波エネルギーを特定の半径方向幅を備えた孔によりプラズマチャンバに供給することが更に有利である。導波管プレートの孔により提供される環状隙間(半径方向の環状隙間)とプラズマチャンバの直径の比は、1/10〜1/50、1/20〜1/40、1/25〜1/35であり又はほぼ1/30である。この環状隙間は、孔をプラズマチャンバの側壁に隣接して配置することにより提供されるのが良く、同軸導波管の外側導体の直径は、プラズマチャンバの空洞共振器の直径と同等であり、内側導体は、環状隙間について上述した比を達成するために外側導体よりも僅かに小径であるに過ぎない。これら2つの導体の直径の比を変えることによって、チャンバへの適合が達成される最適箇所を見出すことが可能である。別の構成では、孔は、プラズマチャンバの側壁から離れて、例えば、頂部プレートの中央と縁との間の中間位置のところに配置されても良い。有利には、チャンバ及びマイクロ波結合組立体のコンポーネントは、高い精度に合わせて、例えば、コンポーネントの寸法形状及び位置決めが規定の仕様の0.1%の範囲内に収まるよう構成されるべきである。
【0046】
ガス供給システムは、原料ガス容器システム14、1つ又は2つ以上のガス入口16及び1つ又は2つ以上のガス出口18を含む。1つの軸方向に配置されたガス入口が
図2では、上述の導波管プレート13も又形成するプラズマチャンバの頂部プレートの中央に設けられた状態で示されている。オプションとして、ガス入口は、プラズマチャンバの頂部プレートの一領域にわたってガス入口ノズルのアレイを提供するよう改造可能である。
【0047】
ガス入口は、基板ホルダの真上でプラズマチャンバの頂部に設けられると共に供給ガスを基板に向かって高速で直接送るよう構成されている。プロセスガスがプラズマチャンバのベースに又はこの近くに設けられた1つ又は2つ以上の出口のところで取り出される。オプションとして、ポンプを用いてプロセスガスを入口に再循環させることができる。かかるシステムの利点は、基板のほうへ方向付けられた高速ガス流が活性化されたガス種を対流によってプラズマから基板に運ぶことにある。これは、プラズマから基板への活性化ガス種の拡散を利用したシステムと比較して、成長速度の増大を助ける。さらに、上述したように、かかる構成を用いて水素ガス流量を増大させることによって、より多くの水素原子を多結晶ダイヤモンドウェーハの周辺領域に押しやることができ、かくして、非ダイヤモンド炭素をエッチングしてこれを成長面から除去する速度が増大すると共に成長中のウェーハの周辺領域の材料の品質が向上する。
【0048】
別の又は追加の手段は、基板の成長面のほうへ方向付けられると共に成長中、多結晶ダイヤモンドウェーハの周辺領域に十分に高い濃度の水素原子が提供されるようにするのに十分広い領域にわたり配置された複数個のガス入口ノズルを備えたガス入口ノズルアレイを提供することである。この点に関し、比較的多数のノズルを密に間隔を置いて配置して比較的一様なガスの流れを保証するのが良い。比較的高い数密度のノズルをアレイの状態に提供することにより、使用中における基板に向かうガス流の一様性が向上すると共にプラズマを基板に対して一様に平べったくすると共に付形することができ、それにより比較的広い領域にわたって高い速度で一様なダイヤモンド膜形成を達成することができる。また、比較的小さい面積のノズルを提供してノズルアレイの面積がノズル出口自体の面積ではなく、大部分がノズル相互間の空間で構成されるのが有用であることが判明した。したがって、ノズル入口アレイの面積に対して比較的高い数密度のノズルを提供することが有利であることは判明しているが、ノズル入口の面積を全体としてノズルアレイの面積で除算して得られる比が小さいアレイを提供することも又有利であることが判明している。小径ノズルは、高速で方向付けられるガス流を提供する上で有利であることが判明している。しかしながら、比較的広い領域にわたりダイヤモンド膜の一様な被着を得るために比較的広い領域にわたって比較的一様なガス流を提供することも又望 ましい。したがって、比較的小さな入口ノズルサイズとかかるノズルの比較的高い数密度の組み合わせは、高速で方向付けられるガス流と比較的広い領域にわたるガス流の一様性との釣り合いを達成する上で有利であることが判明した。
【0049】
上述したことに照らして、改造型ガス流システムは、基板ホルダに対向して設けられていて、プロセスガスを基板ホルダのほうへ方向付ける複数個のガス入口ノズルを含むガス入口ノズルアレイを有するのが良く、ガス入口ノズルアレイは、プラズマチャンバの中心軸線に対して実質的に平行又は末広がりの向きで設けられた少なくとも6つのガス入口ノズル(実質的に平行という表現は、完全に平行な構造の少なくとも10°以内、5°以内、2°以内又は1°以内を意味している)、0.1個/cm
2以上(しかしながら、或る特定の用途については極めて高いことが好ましい)のガス入口ノズル数密度(なお、ガス入口ノズル数密度は、垂線がプラズマチャンバの中心軸線に平行に位置する平面上にノズルを投影し、そしてこの平面上のガス入口数密度を測定することによって測定される)及び10以上(しかしながら、或る特定の用途ではこれよりも極めて大きいことが好ましい)のノズル面積比(なお、ノズル面積比は、垂線がプラズマチャンバの中心軸線に平行に位置する平面上にノズルを投影し、この平面上のガス入口ノズル領域の全面積を測定し、これをノズルの総数で除算して各ノズルと関連した面積を出し、そして各ノズルと関連した面積を各ノズルの実際の面積で除算することによって測定される)を含む。
【0051】
プラズマチャンバは、使用中、定在マイクロ波を支える空洞共振器を形成するよう構成されている。一形態によれば、プラズマチャンバは、使用中、TM
01n定在マイクロ波、例えばTM
011モードを支えるよう構成されている。動作周波数は、400〜500MHzまでの範囲内又は800〜1000MHzまでの範囲内にあるのが良い。
【0052】
また、空洞共振器高さと空洞共振器直径の比が0.3〜1.0までの範囲内、0.4〜0.9までの範囲内又は0.5〜0.8までの範囲内にあるよう条件を満たす直径を有するよう構成された円筒形空洞共振器を提供するのが有利であることが判明した。かかる比は、先行技術の構成と比較したときに比較的小径の空洞を構成する。直感に反するように思われるが、広い領域上に一様なCVDダイヤモンド成長を達成するための一様で安定性があり且つ大面積のプラズマを形成するよう比較的小さな直径を有するプラズマ反応器チャンバを用いるのが有利であることが判明した。比較的小径の空洞共振器は、次の有益な技術的作用効果をもたらすことができる。
(i)チャンバ内の共振モード純度を向上させると共にCVDダイヤモンド合成に必要な長時間スケールにわたって動作中、多くのモード相互間の複雑な連係を回避することができる。例えば、小径チャンバは、好ましくない高次モードを刺激するCVDダイヤモンド成長面の僅かな温度不安定性の問題を軽減することができる。
(ii)特定の比較的小さな直径範囲内で形成された空洞は、基板の頂部コーナのところに極めて強烈な半径方向電場(E‐フィールド)を形成しないで基板全体にわたる電場を一様にする基板のところの局所高次軸対称モードの生成を可能にすると考えられる。
(iii)比較的低いQファクタを有する小径空洞は、始動及び同調が容易であり、しかもマイクロ波源周波数のばらつきの影響を受けにくい。
【0053】
かかる比較的小径の空洞は又、プラズマの不安定性をもたらすチャンバ内に生じる複雑且つ相互作用するガス対流の問題を軽減するのに役立つ。すなわち、本発明者の考えているところによれば、小径空洞は、プラズマチャンバ内におけるガス流とマイクロ波電力の両面でシステムを制御するのが簡単且つ容易であり、その結果、一様で且つ安定した大面積プラズマを形成すると共に維持し、それにより広い領域にわたって一様なCVDダイヤモンド成長を達成することができるようになる。それと同時に、空洞の直径は、プラズマが圧縮状態になって基板を横切って非一様になるほど小さいものであってはならない。
【0054】
例えば、プラズマチャンバのベースから頂部プレートまで測定した空洞共振器高さは、400MHzから500MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて300mmから600mmまで、300mmから500mmまで若しくは400mmから500mmまでの範囲内にあり、又は800MHzから1000MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて150mmから300mmまで、150mmから250mmまで又は200mmから250mmまでの範囲内にあるのが良い。空洞共振器直径は、400MHzから500MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて400mmから1000mmまで、500mmから900mmまで若しくは600mmから800mmまでの範囲内にあり、又は800MHzから1000MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて200mmから500mm、250mmから450mm若しくは300mmから400mmまでの範囲内にあるのが良い。空洞共振器の容積は、400MHzから500MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて0.018m
3から0.530m
3まで、0.062m
3から0.350m
3まで、0.089m
3から0.270m
3まで若しくは0.133m
3から0.221m
3までの範囲内、又は800MHzから1000MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて0.002m
3から0.06m
3まで、0.007m
3から0.04m
3まで、0.01m
3から0.03m
3まで若しくは0.015m
3から0.025m
3までの範囲内にあるのが良い。
【0055】
上述したような小径空洞構成例を用いた場合の1つの潜在的な問題は、チャンバの壁コンポーネントが過熱するという問題である。しかしながら、空洞共振器の壁が使用中、プラズマにさらされ、即ち、プラズマが珪素汚染を回避するためにベルジャー内に閉じ込められない構成を提供するのが有利であることが判明した。プラズマ反応器の容器は、通常、溶接ステンレス鋼で作られる。というのは、これは、超高真空(UHV)チャンバについて一般に認められている選択材料だからである。しかしながら、これにより、インターフェースのところでのアーク発生、高温表面上のスート(すす)の生成及び全体的な熱伝達不良という問題を生じさせるということが判明した。さらに、これらチャンバは、作るのに多額の費用がかかる。アルミニウムは、熱的に良好な材料であることが判明しており、又、機械加工するのが容易である。かくして、ステンレス鋼は、真空チャンバにとって良好な材料ではあるが、その熱的性能が極めて貧弱なので、ステンレス鋼は、高い電力密度にさらされる領域での使用には好適ではない。例えばアルミニウムのような材料は、伝統的には高真空に適したものとはみなされていないが、実際には、従来のエラストマーシールを使用できるほどに高真空の使用の仕方にとっては極めて良好である。
【0056】
上述したことに照らして、空洞共振器は、使用中、空洞共振器内に生じるプラズマにさらされるよう構成された内壁を有するのが良く、かかる内壁は、空洞共振器内の内壁の全表面積の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%を占める金属製の表面から成る。金属製の表面は、アルミニウムの重量を基準として少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%を占めるアルミニウム又はアルミニウムの合金で作られるのが良い。さらに、環状誘電体窓により形成される内壁の一部分は、好ましくは、空洞共振器内の内壁の全表面積の25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下である。
【0057】
基本的な形態としての円筒形チャンバが
図2に示されているが、オプションとして追加の特徴を設けることができる。例えば、チャンバの壁からの突出部を或る特定の場合に設けるのが良い。これら突出部は、基板の近くに形成される電場を変更するために設けられるのが良く、それにより垂直方向非対称がもたらされ、かかる垂直方向非対称は、プラズマ生成が望ましくないプラズマチャンバの反対側の端部のところの電場に対して基板上の電場を強める。加うるに、かかる突出部は、モードフィルタとして機能することができ、それによりプラズマを駆動する電場の安定性及び/又は純度を促進する。かかる突出部は又、プラズマの熱的性質を変えるよう設けられるのが良く、それにより、CVDダイヤモンド成長の一様性を向上させるのを助けることができ、使用中、プラズマを封じ込める物理的バウンダリとして機能することができ、そしてプラズマが基板の上方の軸方向中央存在場所から逸脱するのを阻止すると共に/或いはプラズマチャンバの側壁に沿ってこれを上るガス流を遮り、それによりもしそのように構成されていなければ、入口ガス流及び/又はプラズマを不安定化させる場合のあるチャンバ内のガス同伴及び望ましくない対流を減少させることができる。かかる場合、プラズマチャンバ内に設けられた任意の追加の構造体が高い回転対称度及びプラズマチャンバの回転対称軸線との位置合わせ関係を有し、それにより良好で一様な品質のダイヤモンドウェーハの実現を達成することが保証されるべきである。
【0059】
基板をモデル化又は実験的測定によって示すことができる空洞共振器内に導入したときに電場プロフィールが著しく混乱状態になることが判明した。この点に関し、
図5(a)〜(c)は、プラズマ反応器の空洞共振器内の基板の種々の高さにより電場がどのように変化するかを示す電場プロフィールプロットを示している。かかるプロットは、Y軸上の電場E
zの大きさと基板上の空洞共振器の直径を横切る横方向位置Xとの関係を示している。
【0060】
図5(a)は、基板Sの成長面が空洞共振器Cの底部Bのすぐ上に配置されている場合の電場プロフィールを示している。電場プロフィールは、TM
01nチャンバに関するJ
0ベッセル関数である空のチャンバの電場プロフィールによって決定される。基板とチャンバ壁との間にセットアップされた同軸モードを形成するような基板の上縁から電場大きさへの寄与はほんの僅かに過ぎない。この構成例では、電場は、基板の中央領域の上方で高く、そして基板の縁に向かって著しく衰える。したがって、この電場プロフィールの結果として、基板成長面の周辺領域ではCVDダイヤモンド成長不良が生じる。
【0061】
図5(b)は、基板Sの成長面が空洞共振器Cの底部Bよりも高いところに位置した場合の電場プロフィールを示している。この場合、電場プロフィールは、基板とチャンバ壁との間にセットアップされていて、チャンバの中央領域中に次第に減衰する同軸モードによって決定される。この構成例では、電場は、基板の周辺領域の上方で高く、そして基板の中央領域に向かって減少する。したがって、この電場プロフィールの結果として、基板成長面の中央領域ではCVDダイヤモンド成長が不良である。
【0062】
図5(c)は、基板Sの成長面が空洞共振器C内の包囲面よりも上方の正確なところに配置された場合の電場プロフィールを示している。空のチャンバの電場プロフィールは、高電場のリングが基板縁の周りに配置された状態で基板の大部分の上方に実質的に一様な電場領域を形成するよう基板とチャンバ壁との間にセットアップされた同軸モードと釣り合いが取られている。電場の中央領域は、実質的に一様であるが、基板縁の周りに配置された高電場リングのちょうど内側に僅かに低い電場領域を有している。この低い電場領域により成長面のこの領域のところにCVDダイヤモンド成長不良が生じると考えられる。しかしながら、実際には、停電場領域のすぐ外側の高電場リングがプラズマを外方に引っ張り、中央領域の僅かな非一様性を補償し、その結果、広い領域にわたって一様なCVDダイヤモンド成長を可能にする大きく且つ平坦で一様なプラズマが基板の大部分の上方に生じるのを助けることが判明した。実際には、広い領域にわたり一様なCVDダイヤモンド成長を可能にする基板の大部分上の大きくしかも平らであり且つ一様なプラズマを基板直径と基板の成長面の高さの比が10から14まで、11から13.5まで又は11.0から12.5までの範囲内にある場合に達成することができるということが判明しており、この場合、基板の成長面の高さは、基板を包囲した表面の平均高さと相対関係にある。
【0063】
本発明の或る特定の実施形態によれば、基板ホルダは、空洞共振器の中心回転対称軸線から1.0mmの範囲内、0.5mmの範囲内、0.25mmの範囲内、0.2mmの範囲内、0.15mmの範囲内、0.10mmの範囲内又は0.05mmの範囲内に位置する回転対称軸線を有する。さらに、使用の際、基板は、基板ホルダ上に配置されて位置合わせされるのが良く、その結果、基板ホルダ上に配置されると、基板の回転対称軸線が空洞共振器の中心回転対称軸線から1.0mmの範囲内、0.5mmの範囲内又は0.2mmの範囲内に位置するようになる。
【0064】
基板ホルダが基板と同一直径である構成例の場合、基板ホルダは、全体が基板の下に配置され、基板を包囲する表面は、プラズマチャンバの底部によって形成されるのが良い。したがって、この場合、基板を包囲した表面の平均高さは、プラズマチャンバCの底部Bの高さに等しく、基板の成長面の高さH
gsは、
図6(a)に示されているように基板S及び基板ホルダSHを包囲したプラズマチャンバの底部から測定されることになる。変形例として、基板ホルダが基板よりも非常に大きく、かくして基板を包囲する広い平坦面が形成されている構成例の場合、基板を包囲した表面の平均高さ位置は、基板ホルダの頂面に等しい。したがって、この場合、基板の成長面の高さH
gsは、
図6(b)に示されているように基板Sを包囲した基板ホルダSHの頂面から測定されることになる。基板ホルダが基板から外方に延び、傾斜し、湾曲し又は段付き頂面が基板を包囲している構成例の場合、局所包囲表面の平均高さH
lssをRsで示された基板の縁と半径方向Xで取った基板縁から基板の厚さの約2倍、即ち、2×Tsの距離のところとの間の断面の高さの平均値H
localによって定めることができる。
【0065】
かかる構成例は、傾斜基板ホルダについて
図6(c)に示されている。例えば、基板から45°の角度をなして半径方向に基板から距離2×Tsまで傾斜した頂面を有する基板ホルダの場合、基板を包囲した表面の平均高さは、基板ホルダSHの高さの半分に等しい。したがって、この場合、基板の成長面の高さH
gsは、基板ホルダの高さSHの半分から測定される。
【0066】
上述のことと関連して、基板成長面と局所包囲表面との間に特定高さの段部を提供することにより、プラズマチャンバの電場プロフィールが乱され、空のチャンバの電場プロフィールが基板とチャンバ壁との間にセットアップされた同軸モードとの釣り合いが取られ、それにより高電場リングが上述したように基板縁の周りに局所化された状態で、実質的に一様な電場領域が基板の大部分上に形成されるということが判明した。
【0067】
基板とチャンバとの間にセットアップされた同軸モードの大きさは、空洞共振器直径と基板直径の比によっても影響を受ける場合がある。したがって、或る特定の実施形態では、空洞共振器の直径と基板直径の比が1.5〜5、2.0〜4.5又は2.5〜4.0である形態を提供することが好ましい場合があり、空洞共振器直径は、空洞共振器の高さの50%未満、40%未満、30%未満又は20%未満の高さのところで測定される。特に好ましい一構成例では、上述の比は、空洞共振器直径が基板の成長面の高さのところで測定される場合にも当てはまる。
【0068】
かくして、適当な基板寸法を提供すると共に基板をプラズマチャンバ内に正しく配置することにより、広い領域にわたって一様なプラズマが生じるのを助けることができる。さらに、かかる構造により達成される一様なプラズマは又、基板に向かう比較的一様な熱流を提供し、これは、CVDダイヤモンドが成長後に冷えると、CVDダイヤモンドの亀裂発生の問題を軽減するのを助けるということが判明した。この点に関し、CVDダイヤモンドウェーハ中の応力釣り合いは、主として、ダイヤモンドウェーハ全体にわたる成長温度のばらつきによって決まる。成長中における高温領域は、冷却中に互いに接触し、したがって、引張り状態になり、低温領域は相互接触の度合いが小さく、したがって、圧縮状態のままである。冷却中のCVDダイヤモンドウェーハ内の応力のばらつきの結果として、亀裂発生が生じることがある。したがって、基板温度の大きな変動は、望ましくない。
【0069】
とは言うものの、上述の構成を用いた場合の潜在的な一問題は、基板の縁の周りに設けられた高電場リングにより、基板の縁のところに高い基板温度が生じる場合があり、これにより、潜在的に、CVDダイヤモンド材料が成長後に冷えたときに基板の亀裂発生が生じることである。確かに、直感的に望ましい基板成長面全体にわたって完全に一様な温度を有するのではなく、本発明者は、基板成長面の縁温度が基板成長面の中央領域の温度よりも低いようにすることが実際には望ましいと考えている。かかる構成の理由は、CVDダイヤモンド材料内の圧縮領域が亀裂発生の源となる場合のある場所の近く、即ち、CVDダイヤモンドウェーハの縁の近くに位置するようにすることによって亀裂伝搬を最小限に抑えることができるということにある。したがって、基板成長面の縁を成長中、中央領域よりも僅かに低温状態に保つことは、結果として得られるCVDダイヤモンドウェーハの縁の近くに圧縮領域を形成する上で有利であると考えられる。亀裂発生が冷却中のCVDダイヤモンドウェーハの縁のところで開始される場合、CVDダイヤモンドウェーハの縁の付近の圧縮領域は、亀裂がCVDダイヤモンドウェーハの中心に向かって伝搬するのを阻止する。したがって、発生が開始された亀裂は、短く、しかも次に僅かな縁損傷を取り除くよう処理可能なCVDダイヤモンドウェーハの外縁のところに位置したままである傾向がある。この点に関し、一例が
図2の反応器形態に示されている基板温度制御システムを提供することが有利である。
【0070】
基板5は、基板ホルダ4の支持面と基板5の後面との間にガス隙間22を構成するようスペーサワイヤ又はスペーサパッド20によって基板ホルダ4から間隔を置いて配置されている。さらに、ガス供給システム24が供給管26を経てガス隙間22に結合され、この供給管は、ガス供給システム24から基板ホルダ4を通って延び、この供給管26は、基板ホルダの支持面に設けられた1つ又は2つ以上の出口を通ってガスをガス隙間22中に送り込むよう構成されている。基板ホルダ4を冷却するための液体冷却材供給システム28も又設けられている。
【0071】
液体冷却材供給システム28は、基板ホルダに対して大まかな基本的冷却作用をもたらす。しかしながら、このシステムは、広い面積にわたって高品質の一様なCVDダイヤモンド析出を得るために本発明者によって必要とされると考えられる基板の細かい温度制御又は調整にとって正確さの度合いが不十分であるということが判明した。したがって、基板温度の正確な制御又は調整を可能にするためにガス供給システム24,26が設けられている。ガス供給システムは、互いに異なる熱伝導率を有する少なくとも2種類のガスを基板の下のガス隙間中に注入すると共に、基板ホルダ上の基板の温度を制御するために少なくとも2種類のガスの比を変化させるよう構成されているのが良い。例えば、ガス供給システムは、軽いガス、例えば水素と重いガス、例えばアルゴン(アルゴンは、熱伝導率が低い)の混合物を利用するのが良い。有利には、基板の温度を制御するために用いられるガスは、主要なプロセス化学作用にも利用されるガスであり、従って、追加のガス源は、不要である。基板の縁部温度が基板の中央領域に対して高すぎる場合、軽ガスに対する重ガスの比率を増大させて基板の中央領域下のガスの熱伝導率を減少させるのが良く、かくして基板の中央領域は、基板の縁部に対して昇温する。これとは逆に、基板の縁部温度が基板の中央領域に対して低すぎる場合、重ガスに対する軽ガスの比率を増大させて基板の中央領域化のガスの熱伝導率を増大させるのが良く、かくして基板の中央領域は、基板の縁部に対して冷える。基板の絶対温度並びに基板の互いに異なる領域の相対温度は、基板の下のガス隙間内のガス流量及びガス組成を変化させることによっても制御できる。
【0072】
スペーサワイヤ16は、基板の下に中央ガス隙間空洞を形成するよう構成されるのが良く、その結果、ガスは、中央ガス隙間空洞内に溜まるようになる。例えば、スペーサワイヤ16は各々、形状が弧状であり、これらスペーサワイヤは、リングの状態に形作られており、スペーサワイヤ相互間にはガスを流通させることができる隙間が形成されている。スペーサ要素は、導電性であると共に/或いは導電性接着剤、例えばSilver DAG(商標)により定位置に固定されるのが良く、この導電性接着剤は、スペーサ要素と基板ホルダとの良好な電気的接触を保証するのに有用であることが判明した。これは、温度制御に悪影響を及ぼす場合のある基板の下におけるアーク発生という問題を阻止するのに役立つ。また、スペーサワイヤのリング区分相互間の隙間の位置によりダイヤモンドウェーハの厚さに変化を生じさせることができるということが注目された。所望ならば、隙間の数及び位置を調整すると所与の反応器により生じるダイヤモンドウェーハに固有の他の非一様性を補償することができる。
【0073】
マイクロ波プラズマ反応器は、上述したように基板の成長面の中央領域の1つ又は2つ以上の測定値及び成長面の周辺領域の1つ又は2つ以上の測定値を含む少なくとも2つの温度測定値を取るよう構成された1つ又は2つ以上の温度測定装置を更に含む。温度測定値を互いに同時に又は互いに短い時間間隔内で取ることができ、基板温度制御システムを用いると、温度勾配が上述の範囲をはみ出ないようにすることができる。温度測定装置は、
図2に示されている高温計(パイロメータ)30から成るのが良い。2つの高温計が設けられるのが良く、一方の高温計は、中央温度測定値を取るためのものであり、もう一方は、周辺の温度測定値を取るためのものである。
【0074】
マイクロ波プラズマ反応器は、別の特徴部、例えば、基板の周りに設けられた金属製温度加減リングを有するのが良い。かかる温度加減リングは、2つの役割を果たし、即ち、温度加減リングは、高電場のリングを基板縁部から遠ざけ、又、別個に加熱される(プラズマによって)部品及び別個に冷却される(チャンバベースによって)部品である場合、温度加減リングは、基板の縁部温度を直接加減する。したがって、リングは、基板の縁部を冷却するよう機能することができ、それによりどのような引張り応力をもその大きさを減少させ、CVDダイヤモンドの亀裂発生の恐れを低くする。加うるに、基板の周りに設けられた温度加減リングを調節することによっても、基板の縁部に沿って下方に向かうCVDダイヤモンドの過剰成長を加減することができ、それにより基板からのCVDダイヤモンド材料の取り出しを助けることができる。上述の構造体の場合と同様、かかるリング構造体がプラズマチャンバ内に設けられる場合、保証されるべきこととして、このリングは、回転対称性であり、そしてプラズマチャンバの回転軸線に対して正確に位置合わせされ、それにより大面積合成ダイヤモンドウェーハを成長させる場合に有害な非対称の発生を阻止する。
【0075】
基板温度制御システムは、次の条件、即ち、5℃<T
c−T
e<120℃、10℃<T
c−T
e<100℃、10℃<T
c−T
e<80℃、20℃<T
c−T
e<80℃又は20℃<T
c−T
e<60℃を満たすよう基板の成長面上におけるCVDダイヤモンド成長中、基板の成長面の温度を制御するよう構成されるのが良く、T
cは、成長面の中央領域の温度であり、T
eは、成長面の周辺領域の温度である。T
c−T
eが大きすぎるようになると、冷却中、CVDダイヤモンドウェーハの中央領域に過度に大きな張力が生じる場合があり、それによりCVDダイヤモンドウェーハの中央領域に亀裂が生じる。T
c−T
eが小さすぎるようになった場合、圧縮領域は、CVDダイヤモンドウェーハの縁の近くでは生じず、ウェーハの縁のところで発生開始する亀裂は、CVDダイヤモンドウェーハを横切って伝搬する可能性が多分にあり、その結果、完全なウェーハ破損を含む極めて長い亀裂が生じる。
【0076】
例えば上述した構成を利用した場合であっても、多くの問題が依然として存在する場合がある。但し、これら問題は、上述の構成により実質的に軽減される場合がある。例えば、場合によっては、具体的に言えば、大面積多結晶ダイヤモンドディスクを成長させるために大きな基板を用いた場合又は複数の単結晶ダイヤモンドを単一の成長プロセスで比較的広い面積にわたって高融点金属基板にくっつけられた複数の単結晶ダイヤモンド基板上に成長させる場合、基板の端から端までにおける非一様なCVDダイヤモンド成長、CVDダイヤモンド成長中における基板からのCVDダイヤモンドウェーハの層状剥離並びにCVDダイヤモンドウェーハの成長後の冷却の際の亀裂発生開始及び伝搬という問題が依然として存在する。これは、高品質一様なCVDダイヤモンドを成長させることができる領域を増大させる目下の要望があるので特に問題である。さらに、これら問題は、基板を次の成長プロセスにおいて再使用する場合に悪化する傾向がある。これは、基板が高価でありしかも経済的に競合する工業プロセスにおいて再使用が望ましいので、特に問題である。
【0077】
本発明者が検討した考えられる一手段は、成長面の品質が成長後の冷却時にCVDダイヤモンドウェーハの取り外しに何らかの仕方で影響を及ぼすことであったが、かくして亀裂が生じた。しかしながら、成長面を処理して正確に定められた平坦度及び粗さを有するようにすることは、それ自体問題を解決するものではないということが判明した。これら問題の取り組みに焦点を当てた大規模な研究後、本発明者は、驚くべきこととして、観察された問題が基板の成長面全体にわたって基板の下のガス隙間の高さの極めて僅かなばらつきによって生じる温度の僅かな変化の結果であるということを見出した。具体的に説明すると、本発明者は、自分達のための供給業者により提供された円筒形高融点金属基板は、名目上平坦な前面及び後面を有するが、これら表面は、十分に平坦ではないということを見出した。基板の後面の僅かな平坦度のばらつきの結果として、ガス隙間の高さの僅かなばらつきが生じ、この結果、基板全体にわたって冷却度の差が生じるということが判明した。ガス隙間高さのばらつきにより生じる温度のばらつきの結果として、CVDダイヤモンド成長後の冷却時にCVDダイヤモンドに応力のばらつきが生じ、それにより、ダイヤモンドウェーハが少なくとも成長段階の一部分において亀裂が生じる場合があり、その結果歩留りが減少する。
【0078】
上述の構成例は、円周方向に対称である温度のばらつきを制御することができるが、円周方向に対称ではない温度のばらつき、例えば、ガス隙間高さのばらつきにより生じる温度のばらつきを制御するのは困難である場合がある。例えば、高融点金属基板は、使用中に垂れ下がって座屈する傾向がある(これらの融点から判断して長時間であるにもかかわらず)。一様な垂れ下がりは、主として、上述したように制御可能なT
c−T
eを変更する。しかしながら、座屈により、対称ではないウェーハ縁周りの温度に非一様性が生じる。したがって、縁全体を圧縮状態に維持することは容易ではない。典型的な座屈の大きさは、20ミクロン(山から谷まで)を超える場合がある。約200ミクロンのガス隙間の場合、これは、厚さの10%のばらつき及び対応の温度変化に対応している。この結果、ウェーハ縁周りに最高60℃までの温度変化が生じる場合ある。
【0079】
この問題を解決するため、ガス隙間の高さhが100μm以下、80μm以下、60μm以下、40μm以下、20μm以下、10μm以下、5μm以下、又は2μm以下のばらつきを有するようにすることが有利である。これは、例えば、供給業者により提供される基板の後面を更に処理して基板ホルダの支持面のプロフィールと相補する極めて正確に定められたプロフィールを有するようにすることによって達成できる。例えば、基板ホルダの支持面が平坦である場合、基板ホルダの後面は、これは極めて正確に平坦であるように処理されるべきである。
【0080】
したがって、機械的手段(好ましくは、一様な無指向性処理、例えば研削ではなくラップ仕上げによる)基板後面形状の制御が有利であることが判明した。さらに、基板ホルダの支持面は又、基板の後面と相補する正確に定められたプロフィールを有するよう処理されるのが良い。
【0081】
上述したことに加えて、供給業者により提供された幾つかの円筒形高融点金属基板の使用の結果として、前面と後面の両方を上述したように処理した場合であっても、一様且つ高品質のCVDダイヤモンドが得られないことも又判明した。商業的に入手できる高融点金属は、少量の黒鉛生成欠陥及び/又は不純物、例えば鉄やニッケルを含む場合が多い。かかる欠陥及び/又は不純物の比率が非常に僅かであっても、これは、かかる基板の成長面上におけるCVDダイヤモンド成長に悪影響を及ぼすことが判明している。したがって、上述したように基板の前面と後面の両方の正確な処理を行うことに加えて、基板の成長面のところの黒鉛生成欠陥及び/又は不純物の重量を基準として0.5%未満、0.1%未満、0.075%未満、0.05%未満、0.025%未満、0.01%未満、0.005%未満又は0.001%未満の極めて高い化学的純度を備えた炭化物生成高融点金属基板を用いることが有利である。
【0082】
オプションとして、成長面の表面粗さRaは、1nm〜1μmである。成長面の粗さは、この成長面上で成長させられるCVDダイヤモンドの結晶構造と基板へのCVDダイヤモンドの密着強度の両方に影響を及ぼす場合のあることが判明した。1nmから1μmまでの範囲内の表面粗さR
aは、成長中における早期離層を阻止するのに十分な付着性を成長中のCVDダイヤモンドに提供する一方で、ダイヤモンド材料の亀裂発生を生じさせないでCVD成長後の冷却時、ダイヤモンド材料を基板から取り出すことができるほど十分に低い付着性を提供する上で特に有用であることが判明した。表面粗さの好ましい範囲は、1nmから500nmまで、10nmから500nmまで、10nmから200nmまでであるのが良い。代表的には、まず最初に、ラッピング用流体中に懸濁させたダイヤモンドグリットを用いて高融点金属ディスクを鋳鉄ホイール上でラップ仕上げする。一般に、ラッピングプロセスは、バルク材料除去のために用いられると共に所与のプロセスに必要な平坦度を達成するためにも用いられる。ラップ仕上げされたままの表面が用いられる数少ないプロセスが存在する。ラップ仕上げに関する代表的なR
a値は、100nm〜500nmである。しかしながら、通常、次に低い表面粗さ値を得るために例えば研削機/研磨機を用いると共に細かいグリットを用いてラップ仕上げされた表面を更に加工する。CVDダイヤモンド成長に先立って、高融点金属基板をクリーニングしてラッピングプロセスから生じた汚染を全て除去するようにすると共に/或いは高融点金属基板にシード添加してこれら高融点金属基板上におけるダイヤモンド成長のための核形成を助けるようにするのが良い。
【0084】
上述の装置を用いて、高い成長速度で厚くて熱伝導率の高い多結晶CVD合成ダイヤモンド材料を作製する方法を開発した。この方法は、
耐火金属基板をCVD反応器内に装入するステップを含み、
耐火金属ガードリングを耐火金属基板の周辺領域周りに配置するステップを含み、耐火金属ガードリングは、耐火金属基板の縁と耐火金属ガードリングとの間に幅1.5mm〜5.0mmの隙間を定め、
耐火金属基板の単位面積当たりの出力で表される出力密度が2.5Wmm
-2から4.5Wmm
-2までの範囲にあるような出力でマイクロ波をCVD反応器中に導入するステップを含み、
プロセスガスをCVD反応器中に導入するステップを含み、CVD反応器内のプロセスガスは、窒素分子N
2として計算して600ppbから1500ppbまでの範囲の窒素濃度と、1.5体積%から3.0体積%までの範囲にある炭素含有ガス濃度と、92体積%から98.5体積%までの範囲にある水素濃度とを含み、
耐火金属基板の平均温度を制御してこの平均温度が750℃から950℃までの範囲にあるようにすると共に耐火金属基板上の縁と中央箇所との温度差を80℃以下に保つようにするステップを含み、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料を耐火金属基板上で少なくとも1.3mmの厚さまで成長させるステップを含み、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料を冷却して厚さが少なくとも1.3mmであると共に多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の厚さ全体にわたる室温での平均熱伝導率が多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の少なくとも中央領域にわたり少なくとも2000Wm
-1K
-1であり(中央領域は、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の全領域の少なくとも70%である)且つ単一置換窒素濃度が多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の少なくとも中央領域にわたり0.80ppm以下である多結晶CVD合成ダイヤモンド材料を得るステップを含み、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料は、少なくともこの多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の中央領域にわたり実質的に亀裂がなく、従って、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の外側主要フェースの両方と交差すると共に長さが2mmを超えて延びる亀裂が中央領域には存在しない。
【0085】
このプロセスでは、成長速度を増大させるために増大した窒素及び炭素含有ガスを使用する一方で、成長中の多結晶CVD合成ダイヤモンド材料中の非ダイヤモンド炭素及び窒素の取り込み量を減少させるために高い出力密度を用いる。高い出力密度条件が高い成長速度で熱伝導率の高い多結晶CVD合成ダイヤモンド材料を作製する上で有利であることが判明したが、かかる条件は、一様な仕方で制御するのが困難である。上述したマイクロ波プラズマ反応器及び基板形態は、本発明を実現するために安定し且つ一様な仕方でかかる条件を維持することができる。反応器設計の開発とプロセス設計の開発を組み合わせることによって、高い成長速度での厚くて熱伝導率の高い多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の作製を達成することが可能であった。
【0086】
耐火金属基板の直径は、60mmから120mmまでの範囲、80mmから110mmまでの範囲、90mmから110mmまでの範囲、又は95mmから105mmまでの範囲にあるのが良い。耐火金属基板の直径は、以下のパラメータの釣り合いを取るよう最適化されるのが良い。
(a)成長直後のウェーハから取り出すことが可能な製品ウェーハの個数。例えば、90mm直径の基板は、12個の20mm直径の製品ウェーハの最大収率をもたらし、これに対し、100mm直径の基板は、成長直後のウェーハから対称パターンで切断された場合に16個の20mm直径の製品ウェーハの最大収率をもたらす。これを実際には、成長直後の100mm直径ウェーハから不規則でオフセットしたパターンで切断された場合、17個の製品ウェーハに増大させることができる。
(b)出力密度。基板の直径を減少させた場合、基板の単位面積当たりの出力密度が反応器チャンバへのマイクロ波出力入力が所与の場合、増大する。出力密度は、基板の単位面積当たりに吸収される全出力及び/又は基板の単位面積当たりに送り出される全出力として定義される場合がある。
(c)出力/圧力取り扱い能力。基板の直径を増大させた場合、基板の出力/圧力取り扱い能力を増大させることができるということが判明した。例えば、100mm基板は、少なくとも本明細書において説明する反応器形態に関し90mm基板よりも高い出力/圧力取り扱い能力を示し、見かけ上同じ品質の材料について高い成長速度を容易に与えることが判明した。
(d) 製品材料の一様性。基板の直径を増大させた場合、成長直後のウェーハの周辺領域の材料の品質が低下する場合のあることが判明した。
【0087】
上述したパラメータを全て考慮に入れると、高い成長速度での厚くて熱伝導率の高い多結晶の合成に関し、約100mmの基板直径が好ましいことが判明した。
【0088】
出力密度は、2.75Wmm
-2から4.25Wmm
-2までの範囲、3.0Wmm
-2から4.0Wmm
-2までの範囲、3.2Wmm
-2から3.8Wmm
-2までの範囲、又は3.3Wmm
-2から3.6Wmm
-2までの範囲にあるのが良い。さらに、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の成長中における作業圧力は、100Torr(トル)から300Torrまでの範囲、150Torrから250Torrまでの範囲、175Torrから225Torrまでの範囲、又は195Torrから205Torrまでの範囲に制御されるのが良い。高い出力密度及び高い圧力条件は、高い成長速度での厚くて熱伝導率の高い多結晶ダイヤモンド材料の合成に有利であることが判明しているが、出力密度及び圧力が高すぎる場合、成長条件は、安定性が低くなり、しかも一様な仕方で制御するのが困難になる。
【0089】
上述した基板直径及び出力密度/ガス圧力パラメータを用いると、以下のプロセスガス組成が好ましいことが判明した。
(a) 窒素分子N
2として計算して、600ppbから1500ppbまでの範囲、700ppbから1300ppbまでの範囲、800ppbから1200ppbまでの範囲、又は900ppbから1100ppbまでの範囲の窒素濃度、
(b) 1.5体積%から3.0体積%までの範囲、1.6体積%から2.5体積%までの範囲、1.7体積%から2.3体積%までの範囲、又は1.8体積%から2.1体積%までの範囲の炭素含有ガス濃度、
(c) 92体積%から98.5体積%までの範囲、94体積%から97体積%までの範囲、又は95体積%から96体積%までの範囲の水素濃度。
【0090】
この点に関し、高い窒素及び炭素含有ガス濃度が材料の成長速度を増大させる上で望ましい。しかしながら、窒素及び炭素含有ガス濃度が高すぎる場合、製品材料の品質及び熱伝導率が所望レベルを下回って減少する。不活性ガス、例えばアルゴンも又、プロセスガス中に導入されるのが良い。
【0091】
上述のことと関連して、炭素含有ガス濃度及び水素濃度は、CVD反応器中に導入されるガスの濃度として計算される。窒素ガスも又、CVD反応器中に追加されるが、これは不純物としても存在する。CVD反応器内の窒素濃度は、例えば、国際公開第01/96633号パンフレットに記載されているようなガスクロマトグラフィによって測定でき、かかる窒素濃度は、CVD反応器中に意図的に追加された窒素ガスと不純物として存在している窒素の合計である。窒素は、CVD反応器内で多種多様な形態で存在している場合があり、かかる形態としては、窒素原子や窒素分子の種々の形態が挙げられる。したがって、本明細書では、窒素濃度は、窒素分子N
2の等価濃度として計算されている。代表的には、窒素は、利用される原料ガスの純度に応じて最高約300ppbのレベルで不純物として存在する場合がある。意図的に追加される窒素の濃度(即ち、不純物としての窒素含有量を含まない)は、代表的には、不純物を含む測定窒素濃度よりも低いであろう。例えば、CVD反応器中に意図的に追加される窒素濃度は、600ppbから1200ppbまでの範囲、600ppbから1000ppbまでの範囲、620ppbから800ppbまでの範囲、又は640ppbから700ppbまでの範囲にあるのが良い。
【0092】
耐火金属基板の平均温度は、775℃から900℃までの範囲、800℃から875℃までの範囲、又は820℃から860℃までの範囲にあるよう制御されるのが良い。さらに、耐火金属基板上の縁と中央箇所との温度差は、60℃以下、40℃以下、20℃以下、又は10℃以下に制御されるのが良い。基板温度は、成長速度及び不純物取り込み量に影響を及ぼす場合がある。さらに、基板の縁と中央箇所との温度差が大きいと、冷却時に応力が熱的に誘発されると共にウェーハの亀裂発生が生じる場合がある。したがって、上述したようにガス隙間構造を用いた基板温度の注意深い制御がこれらの問題を軽減するために有利である。
【0093】
しかしながら、かかる基板温度制御を利用した場合であっても、高出力密度を用いた高い成長速度での厚くて熱伝導率の高い多結晶ダイヤモンド材料の合成により、依然として、亀裂発生が熱により誘発される場合があるということが判明した。この問題は、基板の縁温度が所望の成長条件下において高すぎることに原因があった。したがって、基板の縁温度を低下させるため、耐火金属ガードリングが耐火金属基板の周辺領域周りに配置されるのが良く、この耐火金属ガードリングは、耐火金属基板の縁と耐火金属ガードリングとの間に幅1.5mm〜5mmの隙間を定めている。耐火金属ガードリングは、基板の縁のところに配置されてこれから熱を奪うよう構成されなければならないが、多結晶CVDダイヤモンド材料が過剰に成長し、ガードリングが成長後におけるウェーハの放出を阻止するような位置及び形状であってはならない。
【0094】
上述のことに照らして、耐火金属ガードリングは、耐火金属基板の周辺領域周りに配置されるのが良く、耐火金属基板の縁と耐火金属ガードリングとの間の隙間は、1.5mmから5mmまでの範囲、2mmから4mmまでの範囲、又は2.5mmから3.5mmまでの範囲の幅を有する。高さ、断面幅及び断面形状は、基板の縁のところの温度制御を最適化する一方で、ガードリング上におけるダイヤモンド成長の問題を軽減するよう定められるのが良い。
図7は、適当に形作られた耐火金属ガードリングを含むCVD反応器を示している。CVD反応器は、
図2に示されたCVD反応器と同一又は類似しており、同一の部分について同一の参照符号が用いられている。基板取付け形態は、耐火金属基板5の周りに設けられたガードリング80を有するよう改造されている。上述したように、基板5は、基板ホルダ4との間にガス隙間22を形成するようスペーサワイヤ20に取り付けられている。ガードリング80は、基板の周辺領域周りで基板ホルダ4上に直接設けられ、ガードリング80と基板5の縁との間には隙間82が形成されている。支持基板上のガードリングの高さは、基板の上面の高さとほぼ同じである。例えば、ガードリングの高さは、基板の高さを基準として20mm以内、15mm以内、10mm以内、5mm以内、又は3mm以内であるのが良い。
【0095】
図8は、ガードリング80の断面を詳細に示している。ガードリングの外面は、垂直部分84、傾斜部分86、及び平坦な頂部分88を有している。ベース90の幅は、熱を使用中基板ホルダ4中に伝えるよう最適化されているのが良い。ガードリングベース90と基板ホルダとの接触面積が大きければ大きいほど、ガードリングの冷却度がそれだけ一層大きくなる。当初、幅1mmのベース接触部を有するガードリングが利用されたが、この結果、ガードリングの頂面上にダイヤモンド成長が生じた。したがって、作動中におけるガードリングの温度を減少させるためにベース接触部の幅を3mmまで増大させた。この改造は、ガードリング上におけるダイヤモンド材料の成長を阻止するのに成功した。
【0097】
上述した装置及びプロセス条件を用いると、高い成長速度で厚くて熱伝導率の高い多結晶CVDダイヤモンドウェーハを作製することが可能である。多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の少なくとも中央領域にわたり少なくとも2000Wm
-1K
-1の多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の厚さ全体にわたる室温での平均熱伝導率を有し、中央領域は、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の全領域の少なくとも70%であり、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の少なくとも中央領域にわたり0.80ppm以下の単一置換窒素濃度を有し、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の厚さは、少なくとも1.3mmであり、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料は、少なくとも中央領域にわたり実質的に亀裂がなく、従って、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の外側主要フェースの両方と交差すると共に長さが2mmを超えて延びる亀裂が中央領域には存在しない。
【0098】
上述したように、出力密度の増大は、合成プロセスにおいて炭素含有ガス及び窒素の増大を相殺し、その結果、製品の非ダイヤモンド炭素含有量が甚だしくは増大せず、しかも窒素含有量は、実際に減少する。これは、成長面に対する水素原子フラックスの増大に起因しており、それにより、成長中、材料を効果的に綺麗にし、それにより高熱伝導率材料を高い成長速度で作製することができる。したがって、プロセスガス組成と出力密度は、所望の製品を実現するよう釣り合わされるのが良い。この点において、多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハは、0.70ppm以下、0.60ppm以下、0.50ppm以下、又は0.45ppm以下の単一置換窒素濃度を有するのが良い。さらに、多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハは、0.10ppm以上、0.20ppm以上、0.30ppm以上、又は0.35ppm以上の単一置換窒素濃度を有するのが良い。提供される窒素が多すぎる場合、成長速度の増大が大きすぎ、材料の品質が低くなりすぎる。出力密度を更に増大させると、この作用効果を相殺することができるが、安定した成長を維持するための装置の出力取り扱い能力に制約が生じる。これとは逆に、提供される窒素が少なすぎる場合、材料の成長速度が低すぎて厚いウェーハを採算の取れる仕方で達成することができない。
【0099】
上記のことに関連して、単一置換窒素濃度を270nmでの吸収度の増大によって分光学的に測定することができるということが注目される。サンプルは、両面研磨されて酸洗浄される。次に、200〜1800nmのスペクトルを集める。生の分光計データを次式により吸収係数データに変換する。
上式において、Aは、吸収係数であり、Sは、分光計からの測定信号であり、Bは、1800nmで取られたバックグラウンド信号であり、tは、サンプルの厚さ(cm)である。単一置換窒素含有量は、270nmでの吸収係数増加分に比例し、比例定数は、0.7114である。吸収度の増大は、領域240nmから300nmまでの線形バックグラウンドを差し引くことによって計算される。データの示すところによれば、高い出力密度及び高い成長速度で成長させた新規な多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の単一置換窒素含有量は、同等の熱伝導率を有するが、低い出力密度及び低い成長速度で成長させた材料の単一置換窒素含有量のほぼ半分である。
【0100】
好ましくは、多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハは、このウェーハの厚さ全体にわたる室温での平均熱伝導率が少なくとも2025Wm
-1K
-1、少なくとも2050Wm
-1K
-1、少なくとも2075Wm
-1K
-1、少なくとも2100Wm
-1K
-1、少なくとも2125Wm
-1K
-1、又は少なくとも2150Wm
-1K
-1である。熱伝導率を高くすることが可能ではあるが、これにより、一般的に言って、炭素含有ガス及び/又は窒素の減少が必要になり、その結果、成長速度が減少する。この点に関し、本発明者は、多くの高性能熱的用途に関し、2000Wm
-1K
-1から2200Wm
-1K
-1までの範囲の室温での熱伝導率が適当であるという知見を得た。したがって、成長速度を装置要件に対して釣り合わせるため、室温での熱伝導率は、2200Wm
-1K
-1未満、2180Wm
-1K
-1未満、2175Wm
-1K
-1未満、又は2160Wm
-1K
-1未満であるのが良い。
【0101】
熱伝導率とFTIR吸収スペクトルのCHx成分との間の実証済みの関係を用いて厚いダイヤモンドウェーハに関して熱伝導率を測定することができる。この関係は、トゥイッチェン等(Twitchen et al.),「サーマル・コンダクティビティ・メジャーメンツ・オン・シーブイディー・ダイヤモンド(Thermal conductivity measurements on CVD diamond)」,ダイヤモンド・アンド・リレイテッド・マテリアルズ(Diamond and related materials),2001年,第10巻,p.731〜735に記載されている。ダイヤモンド窓のIRスペクトルの2760cm
-1から3030cm
-1までの範囲のCHx成分の積分面積は、線形ベースラインによりいったん補正されると、ダイヤモンドの熱伝導率に定量的に関連付けられるということが示された。
【0102】
本発明に従って作製された多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の数個のサンプルを上述した事実の使用により今日まで測定したが、かかるサンプルは、約2150Wm
-1K
-1、場合によってはこれを超える厚さにわたる平均熱伝導率を有することが判明した。
【0103】
変形例として、レーザフラッシュ技術を用いると、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の厚さにわたる熱伝導率を測定することができる。レーザフラッシュは、熱拡散率の一次元測定法である。測定では、サンプルの前側フェースのところのエネルギーの吸収を行い、次にこのサンプル片の後側フェースのところの温度上昇プロフィールを測定する。熱拡散率(α)は、次式によって与えられる。
上式において、dは、サンプルの厚さであり、τ
1/2は、最大温度を半減するのに要する時間である。この熱拡散率を次式により熱伝導率に変換することができる。
上式において、kは、熱伝導率であり、ρは、材料の密度であり、c
pは、比熱である。熱伝導率のレーザフラッシュ測定法に関する規格は、BS EN 821-2:1997である。
【0104】
注目されるべきこととして、多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハの熱伝導率は、不純物及び/又は欠陥濃度のばらつきと共に結晶粒度のばらつきに起因してウェーハの厚みを通過する際に変化することになる。したがって、本明細書では、熱伝導率は、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料のウェーハの厚さにわたる平均値として測定される。測定技術がウェーハが厚すぎるので1回の測定でウェーハの厚さ全体にわたる熱伝導率を測定するのに適していない場合、ウェーハを2つ又は3つ以上の薄い区分に分割するのが良く、各区分の熱伝導率を測定し、次に平均熱伝導率値を計算する。
【0105】
例えば、上述したレーザフラッシュ測定法は、厚いサンプルについて実施するのが困難である。以下の表は、本発明の実施形態に従って作製された2700ミクロン厚さの多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハから取られたサンプルに関するレーザフラッシュデータを示している。
【表1】
【0106】
厚さが約450ミクロンの5つのサンプルを多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハの核生成フェース側から、即ち、多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハの最初の450ミクロン分から取った。4つの別のサンプルを多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハの成長フェース側、即ち、多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハの最後の450ミクロン分から取った。データから理解できるように、核生成フェース側からのサンプルは、一般に、低い熱伝導率を有し、かかるサンプルは、例えばサンプル2及びサンプル4の場合、2000Wm
-1K
-1限度よりも僅かに下回る場合がある。しかしながら、ウェーハの直径全体にわたるサンプル箇所のうちの任意のもののところのウェーハ全体の平均熱伝導率は、2000Wm
-1K
-1限度をかなり上回ることが判明した。
【0107】
上述の表において、ウェーハの最初の450ミクロン分から取ったサンプルに関する平均値は、2010Wm
-1K
-1として計算され、これに対し、ウェーハの最後の450ミクロン分から取ったサンプルに関する平均値は、2010Wm
-1K
-1として計算された。ウェーハの下側部分と上側部分との間の材料は、下側部分と上側部分との間の熱伝導率を有するが、この熱伝導率は、上側部分の熱伝導率とほぼ同じである。したがって、材料全体にわたり、しかも取られたサンプルに関する材料全体について計算された平均熱伝導率は約2090Wm
-1K
-1である。
【0108】
上記のことと関連して、本発明に従って成長させた多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハは、ウェーハの厚さにわたる平均熱伝導率を増大させるための合成後処理によってその核生成フェースの一部が除去されるのが良いことも又理解されよう。
【0109】
多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハは、60mmから120mmまでの範囲、80mmから110mmまでの範囲、90mmから110mmまでの範囲、又は95mmから105mmまでの範囲にある成長直後の直径を有するのが良い。上述したように、この直径は、作製したウェーハの面積を材料品質、材料一様性及び基板の出力取り扱い能力に対して釣り合わせる最適化されるのが良い。
【0110】
多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハは、少なくとも1.5mm、少なくとも1.7mm、少なくとも1.8mm、少なくとも1.9mm、少なくとも2.0mm、少なくとも2.2mm、少なくとも2.5mm、少なくとも2.75mm、少なくとも3.0mm、少なくとも3.25mm、又は少なくとも3.5mmの厚さを有するのが良い。この厚さは、意図した最終使用で決まることになる。上述したように、材料を大きな厚さまで成長させているとき、多結晶材料の結晶粒度は、不純物取り込み速度と同様に増大する。したがって、高い熱伝導率のウェーハを極めて厚い寸法まで成長させることは、困難である。したがって、本発明者は、本明細書において説明した装置及びプロセスが厚さ3.5mmを超える高熱伝導率ウェーハを作製することができるということを実証した。
【0111】
ガス隙間による温度制御を含む基板形態及び適切に形作られたガードリング構造体により、亀裂のないウェーハは、冷却時に基板から自然に離層することができる。この点において、ウェーハの直径の少なくとも75%、少なくとも80%、85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%であるウェーハの中央領域にわたりウェーハには実質的に亀裂がないと言える。
【0112】
成長直後の多結晶CVD合成ダイヤモンドウェーハを大面積形態で利用でき又は最終用途に応じて小さなアイテムに切断することができる。
【0113】
本発明を好ましい実施形態に関して具体的に図示すると共に説明したが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく形態及び細部における種々の変更を実施できることは当業者には理解されよう。