特許第6064221号(P6064221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064221
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】電気機器の筺体構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20170116BHJP
   G08B 21/16 20060101ALN20170116BHJP
   G08B 17/00 20060101ALN20170116BHJP
   G08B 17/06 20060101ALN20170116BHJP
【FI】
   H05K5/02 L
   !G08B21/16
   !G08B17/00 G
   !G08B17/06 K
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-235939(P2012-235939)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-86637(P2014-86637A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】上田 英一
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−211852(JP,A)
【文献】 実開平02−049179(JP,U)
【文献】 実開平03−048196(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
G08B 17/00
G08B 17/06
G08B 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体および当該機器本体の少なくとも一部を覆う封止体を有する筺体を備え、
前記筺体の内部に浸入した水を前記筺体の外部に排出し、電気機器の設置姿勢における側面に備えた排出孔と、
前記排出孔から前記筺体の内部に流体が浸入したときに、当該流体の浸入を妨げるように立設してある障壁部を複数備え、
前記複数の障壁部が、前記排出孔の前記筐体の内部側の正面に対面して前記排出孔に対して平行に立設してある第一障壁板と、
前記電気機器の設置姿勢において、前記第一障壁板の上方で、下方に傾斜するように立設してある第二障壁板と、を有した電気機器の筺体構造。
【請求項2】
前記第一障壁板、前記第二障壁板、および、前記第一障壁板および前記第二障壁板を覆う前記封止体で囲まれた領域には溜り部が備えてある請求項1に記載の電気機器の筺体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に設置される防災用又は防犯用の電気機器において、当該電気機器の内部空間に浸入した水を電気機器の外部に排出する水抜き構造を備えた筺体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器の一種として、壁面に設置される防災用又は防犯用の警報器がある。このような電気機器には、通常、当該警報器が水に晒された場合であってもその機能を維持する必要があるため、例えば当該警報器の内部に浸入した水を抜く水抜き構造が設けられる。
【0003】
例えば当該水抜き構造として、特許文献1には、機器本体と、機器本体の少なくとも一部を覆う封止体との相互間に止水壁を設けたものが記載してある。当該止水壁は、具体的には機器本体に形成された立ち上げ部であり、当該立ち上げ部の周面に複数の止水リブが形成されている。複数の止水リブは、相互に所定間隔を隔てて配置されており、最初の止水リブによって浸入してきた水を堰き止めることができる。仮に最初の止水リブを越えて電気機器の内部空間側に水が浸入しようとする場合でも、次の止水リブで順次堰き止めることができる。
【0004】
これら複数の止水リブは、電気機器の内部に入り込む水を外部に排水するための水抜き路の壁を形成している。このような水抜き路は、止水リブの数に応じて、一本あるいは複数本形成される。当該水抜き路は、電気機器を設置した姿勢において、機器本体の上部から側部、さらに下部に至るように、途切れることなく連続的に形成されている。従って、浸入してきた水が最初の止水リブで堰き止められると、最初の水抜き路を伝って機器本体の下部に至る。仮に浸入してきた水が最初の止水リブを乗り越えた場合でも、次の止水リブで堰き止められて次の水抜き路を伝って機器本体の下部に至る。このように水抜き路によって排水効果を高め、水が機器本体の内部空間側に浸入するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−102555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気機器として、例えばガス警報器を浴室の壁面に設置する場合がある。当該ガス警報器において、例えば筺体の側面に水抜き孔が形成されているような場合、当該水抜き孔から湯気や水などの流体が浸入する虞があった。
この場合、浸入した流体が筺体の内部で自由に流動できるような内部構造であれば、当該流体が例えば基板や電池と接触してこれら部材の表面で結露して例えば短絡する等、ガス警報器の動作不良の原因となる虞があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、筺体内部に浸入した水を排出する水抜き構造を維持した状態で、筺体の内部に浸入した流体が当該筺体の内部で流動し難い電気機器の筺体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る電気機器の筺体構造の第一特徴構成は、機器本体および当該機器本体の少なくとも一部を覆う封止体を有する筺体を備え、前記筺体の内部に浸入した水を前記筺体の外部に排出し、電気機器の設置姿勢における側面に備えた排出孔と、前記排出孔から前記筺体の内部に流体が浸入したときに、当該流体の浸入を妨げるように立設してある障壁部を複数備え、前記複数の障壁部が、前記排出孔の前記筐体の内部側の正面に対面して前記排出孔に対して平行に立設してある第一障壁板と、前記電気機器の設置姿勢において、前記第一障壁板の上方で、下方に傾斜するように立設してある第二障壁板と、を有した点にある。
【0009】
本構成によれば、排出孔から筺体の内部に流体が浸入した場合、障壁部によって当該流体の浸入が妨げられる。即ち、障壁部により、浸入した流体の流動は規制されるため、当該流体は筺体の内部で自由に流動し難くなり、例えば電気機器の筺体内部に配設してある基板部や電池と接触してこれら部材の表面で結露するのを未然に防止することができる。そのため、ガス警報器が当該結露を原因として、例えば短絡する等の動作不良を起こすのを防止できる。
【0010】
従って、本発明の電気機器の筺体構造は、筺体の内部に浸入した水を筺体の外部に排出する排出孔を閉じたり、排出孔の孔径を小さくする等の改変をすることなく、水抜き構造を維持した状態で、筺体の内部に浸入した流体が当該筺体の内部で流動し難い構造となる。
【0011】
本構成では、電気機器の設置姿勢における側面に備えた排出孔から浸入した流体は、まず、排出孔の筐体の内部側の正面に対面して排出孔に対して平行に立設してある第一障壁板に突き当たり、流体の浸入が妨げられる。第一障壁板に突き当たった流体が当該第一障壁板の上方に移動した場合、第二障壁板に突き当たり、流体の浸入が妨げられる。第二障壁板は下方に傾斜するように設けてあるため、当該第二障壁板および筺体で囲まれた領域に流体の一部を滞留させることができる。
さらに、本構成では、第二障壁板の上方から、筺体の内部に浸入した水が第二障壁板に流下した場合であっても、第二障壁板は下方に傾斜するように設けてあり、この水は第二障壁板に沿って下方に流下することができるため、筺体の内部に浸入した水は当該筺体の内部に溜まり難い。そのため、本構成においては、電気機器の水抜き構造を維持した状態で、筺体の内部に浸入した流体が当該筺体の内部でより一層流動し難い構造とすることができる。
【0012】
本発明に係る電気機器の筺体構造の第二特徴構成は、前記第一障壁板、前記第二障壁板、および、前記第一障壁板および前記第二障壁板を覆う前記封止体で囲まれた領域に溜り部を備えた点にある。
【0013】
本構成では、溜り部に流体の一部を滞留させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電気機器の概要を示す斜視図である。
図2】電気機器の分解斜視図である。
図3】電気機器の分解斜視図である。
図4】電気機器の断面概略図(図1のIV-IV断面図)である。
図5】電気機器の断面概略図(図1のV-V断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明は、機器本体および当該機器本体の少なくとも一部を覆う封止体によって形成された筺体を有する電気機器の筺体構造である。
【0016】
図1〜5に示したように、当該電気機器Xは、機器本体10および当該機器本体10の少なくとも一部を覆う封止体20を有する筺体Yを備えている。電気機器Xの筺体構造は、筺体Yの内部に浸入した水を筺体Yの外部に排出する排出孔25と、当該排出孔25から筺体Yの内部に流体が浸入したときに、当該流体の浸入を妨げるように立設してある障壁部50を複数備えている。
【0017】
電機機器Xは、屋内や屋外で壁面に設置する態様であればどのような機器であってもよい。当該壁面に設置する電機機器としては、例えば防災用又は防犯用の警報器が挙げられる。当該警報器は、その内部に外部環境の変化を検知する検知部31を備える。当該検知部31は外部環境の変化を検知するセンサであればよく、このようなセンサとして、酸素センサ、COセンサ、都市ガスセンサ、LPガスセンサなどのガスセンサ、火災センサなどを使用することができるが、これに限られるものではない。
【0018】
ガスセンサは、被検知ガスを検知するものであればどのような態様であってもよい。例えば酸素センサは酸素ガスを検出でき、COセンサは不完全燃焼で発生する一酸化炭素ガスを検出でき、都市ガスセンサやLPガスセンサは炭化水素ガス等の漏洩ガスを検出することができるものであれば、公知の半導体式センサ素子、接触燃焼式センサ素子および電気化学式センサ素子などが使用できる。
火災センサは、温度の上昇を感知する温度センサや、煙感知機能を有する公知の散乱光式煙センサなどが使用できる。
【0019】
本実施形態では、警報器として、不完全燃焼を検出するため、COガスの漏洩を検知するガス警報器Xを浴室の壁面に設置する態様について説明する。当該ガス警報器Xの形状は特に限定されるものではないが、本実施形態では上面視で矩形状であり、厚板状(例えば12×7×2.5cm)の形状を呈するものを例示する。この場合、当該ガス警報器Xは、例えばその長辺を地面に垂直に設置する縦置き姿勢(設置姿勢)によって設置することができる。
【0020】
機器本体10は基板部30を収容しており、底面11と側面12とを一体に形成して構成されている。即ち、底面11および側面12とで囲まれた空間に基板部30が収容される。側面12の端部(封止体20の側)には、封止体20と重ね配置される本体周縁端部12aが形成してある。本体周縁端部12aには、ガス警報器Xの周縁に沿うように溝部Bが形成してある。また、本体周縁端部12aには、その全周に亘って複数の防水リブ12bが形成されており、溝部Bは、隣接する防水リブ12bどうしの間の空間で構成される。溝部Bおよび防水リブ12bは、水の浸入方向に対して略直交する方向に設けられているため、防水リブ12bによって浸入してきた水を堰き止めることができる。堰き止められた水は溝部Bを伝ってガス警報器Xの下方に流れ落ちて外部に排出することができる。
【0021】
封止体20は、機器本体10の少なくとも一部を覆う部材である。本実施形態では、封止体20は、機器本体10の全体を覆う場合について説明する。
【0022】
封止体20には、スピーカ部32が発した警報音を外部に放音するスピーカ開口部24、筺体Yの内部に浸入した水を筺体Yの外部に排出する排出孔25、被検知ガスを検知部31に導入する被検知ガス導入口26、および、スイッチ操作を行うスイッチ押圧部27が形成してあり、封止体20の裏面に形成した凹部には、導光部28や電池29aが配設してある。
尚、封止体20の表面には封止板40を貼り付けてある。当該封止板40には、スピーカ開口部24や被検知ガス導入口26に対応するスピーカ開口部44および被検知ガス導入口46がそれぞれ形成してある。
【0023】
基板部30には、検知部31、スピーカ部32、LED33およびスイッチ部34などの部品が配設してある。本実施形態では、COガスを検知する検知部31として、電気化学式COセンサを使用した場合について説明する。電気化学式COセンサとは、COガスを、隔膜を通して触媒作用を有する作用電極上に導き、COガスを酸化することによりガス濃度に応じた電圧または電流を出力するセンサである。スピーカ部32は、検知部31からの信号を受けて警報音を発するものであればどのような態様であってもよく、例えば圧電スピーカなどを使用することができる。LED33が発した光は、導光部28を介して外部に放出される。
【0024】
検知部31は、封止体20から筺体Yの内部の側に向って立設した収容部22に収容してある。当該収容部22は、検知部31である電気化学式COセンサを収容できる形態であればその形状は特に限定されるものではなく、本実施形態では、矩形状を呈する場合を例示する。収容部22は、封止体20の裏面から立設し、基板部30によって収容部22の矩形状の開口が塞がれる。
【0025】
本発明の電気機器(ガス警報器)Xの筺体構造は、排出孔25から筺体Yの内部に流体が浸入したときに、当該流体の浸入を妨げるように立設してある障壁部50を複数備えている。
【0026】
本実施形態では、ガス警報器Xを浴室の壁面に設置する態様であるため、当該流体は湯気、水蒸気、水などが例示される。
【0027】
排出孔25から筺体Yの内部に流体(例えば湯気)が浸入した場合、障壁部50によって当該流体の浸入が妨げられる。即ち、障壁部50により、浸入した流体の流動は規制されるため、当該流体は筺体Yの内部で自由に流動し難くなり、排出孔25から筺体Yの内部深くまで浸入するのを防止できる。そのため、当該筺体Yの内部に配設してある部材、例えば基板部30や電池29と接触してこれら部材の表面で結露するのを未然に防止することができる。
【0028】
本実施形態では、複数の障壁部50が、排出孔25に対面して排出孔25に対して平行に立設してある第一障壁板50aと、ガス警報機Xの設置姿勢において、第一障壁板50aの上方で、下方に傾斜するように立設してある第二障壁板50bと、を有するように構成してある。
【0029】
本明細書では「ガス警報機Xの設置姿勢」とは、ガス警報器Xの筺体Yを垂直に設置した姿勢をいうものとする。
【0030】
本実施形態では、図3,5に示したように、第一障壁板50aは機器本体10の底面11の裏面のみから立設し、第二障壁板50bは機器本体10の側面12および封止体20の側面(封止端部21)から立設する場合を例示するが、この態様に限定されるものではない。また、第二障壁板50bの上方には、下方に傾斜するように立設してある第三障壁板50cを設けてもよい。当該第三障壁板50cは、機器本体10側の電池収容室29および封止体20側の電池収容室29より立設する。
【0031】
第一障壁板50aの設置角度は、当該流体の浸入を妨げるように立設してあれば、排出孔25に対して平行に立設するほか、下方に傾斜するように立設してもよい。第二障壁板50bおよび第三障壁板50cの設置角度についても、当該流体の浸入を妨げるように立設してあれば、特に限定されるものではない。
【0032】
本構成では、排出孔25から浸入した流体(湯気)は、まず、排出孔25に対面して排出孔25に対して平行に立設してある第一障壁板50aに突き当たり、流体の浸入が妨げられる。第一障壁板50aに突き当たった流体が当該第一障壁板50aの上方に移動した場合、第二障壁板50bに突き当たり、流体の浸入を妨げられる。第二障壁板50bは下方に傾斜するように設けてあるため、当該第二障壁板50bおよび封止体20で囲まれた領域には溜り部51が形成され、当該溜まり部51に流体の一部が滞留する。
【0033】
さらに、第二障壁板50bより上方に移動した流体は、第三障壁板50cに突き当たり、流体の浸入を妨げられる。第三障壁板50cは下方に傾斜するように設けてあるため、当該第三障壁板50cおよび封止体20で囲まれた領域には溜り部52が形成され、当該溜まり部52に流体の一部が滞留する。
【0034】
さらに、本構成では、第二障壁板50b或いは第三障壁板50cの上方から、筺体の内部に浸入した水が第二障壁板50b或いは第三障壁板50cに流下した場合であっても、第二障壁板50bおよび第三障壁板50cは下方に傾斜するように設けてあるため、この水は第二障壁板50b或いは第三障壁板50cに沿って下方に流下することができる。このように、本構成であれば、筺体の内部に浸入した水は当該筺体の内部に溜まり難い。
【0035】
よって、本発明のガス警報器Xの筺体構造は、筺体Y内部に浸入した水を排出する水抜き構造を維持した状態で、筺体Yの内部に浸入した湯気などの流体が当該筺体Yの内部で流動し難い構造となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、壁面に設置される防災用又は防犯用の電気機器において、当該電気機器の内部空間に浸入した水を電気機器の外部に排出する水抜き構造を備えた筺体構造に利用できる。
【符号の説明】
【0037】
X 電気機器
Y 筺体
10 機器本体
20 封止体
25 排出孔
50 障壁部
50a 第一障壁板
50b 第二障壁板
図1
図2
図3
図4
図5