特許第6064239号(P6064239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064239
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】チェックリンク装置
(51)【国際特許分類】
   E05C 17/22 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   E05C17/22 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-178427(P2012-178427)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-34865(P2014-34865A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 清彦
(72)【発明者】
【氏名】西條 俊久
(72)【発明者】
【氏名】深谷 徳
(72)【発明者】
【氏名】摂津 慶治
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−252282(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0150366(US,A1)
【文献】 特開2003−118369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のアーム芯部と、前記アーム芯部の一端に設けられ、車両本体又はドアの一方に回動可能に連結される連結芯部と、前記アーム芯部の他端に設けられ、該アーム芯部の長手方向に交差する方向に張り出したストッパ芯部とが設けられた芯金を有し、少なくとも前記ストッパ芯部を樹脂材料で被覆することでストッパ部を形成したアームと、
前記車両本体又は前記ドアの他方に取り付けられると共に、開口を有し、該開口に前記アームが摺動可能に挿通され、前記ストッパ部との当接によって前記ドアの全開位置を規定する保持部材と、
を備えるチェックリンク装置であって、
前記ストッパ芯部は、少なくとも前記保持部材の当接面と前記ストッパ部との当接時、前記保持部材の前記当接面に対向する端面に曲面を有し、
少なくとも前記保持部材の前記当接面と前記ストッパ部との当接時、前記保持部材の前記開口の縁部から前記ストッパ芯部に対する荷重方向に沿う延長線が、前記ストッパ芯部の前記曲面を通過する位置にあることを特徴とするチェックリンク装置。
【請求項2】
請求項1記載のチェックリンク装置において、
前記ストッパ芯部の略中央には、該ストッパ芯部を板厚方向に貫通し、前記樹脂材料が充填される孔部が形成されていることを特徴とするチェックリンク装置。
【請求項3】
請求項1記載のチェックリンク装置において、
前記アーム芯部が樹脂材料で被覆されることでアーム部が形成されると共に、該アーム部には、前記保持部材の摺動体が摺動する凹部及び凸部が前記被覆した樹脂材料によって少なくとも1組形成されており、
前記保持部材の摺動体が前記凹部から前記凸部へと移動する上り傾斜面又は前記凸部にある位置で、前記ストッパ部と前記保持部材の当接面とが当接することを特徴とするチェックリンク装置。
【請求項4】
請求項1記載のチェックリンク装置において、
前記ストッパ芯部を被覆する樹脂材料の厚みは、前記保持部材と対向する側が最も厚くなるように形成されていることを特徴とするチェックリンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアの全開位置を規定するチェックリンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車両本体とドアとの間に配置され、ドアの全開位置(最大開位置)を規定する装置であるチェックリンク装置が用いられている。
【0003】
一般的なチェックリンク装置は、一端が車両本体に回動可能に連結されたアームと、ドアに取り付けられ、アームが摺動可能に挿通される保持部材とを備え、アームの他端に設けたストッパ部が保持部材の当接面に当接することによりドアの全開位置を規定する。このため、ドアを全開にする際の荷重を受け止めるストッパ部は、高い強度を備える必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、アームの芯金の端部に形成した張出部を折り曲げて突部を形成し、この突部を樹脂材料で被覆することで強度を向上させたストッパ部を有するチェックリンク装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3099226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のチェックリンク装置の場合には、芯金を折り曲げて突部を形成したストッパ部を備えたことにより、該ストッパ部での芯金自体の強度は向上するものの、保持部材のケースの進む方向の先には、樹脂材料を介して前記突部や、該突部を形成する芯金の板端面の角部が配置されている。このため、ストッパ部を覆う樹脂材料が保持部材との当接によって衝撃を受けた際、芯金の突部やその角部を起点とした樹脂材料の剥離防止を目的に、荷重の受け面積拡大及びケースとストッパ部との上下方向での片当たり時の角度差を小さくするため、ストッパ部の上下方向寸法を大きくする必要があることから、ストパ部が大型化してしまう。しかも、この装置では、板材を切断して形成した張出部を折り曲げることで突部を形成しているため、加工性が低く、製造コストが高くなるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、低コストで強度の高いストッパ部を構成することができるチェックリンク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るチェックリンク装置は、板状のアーム芯部と、前記アーム芯部の一端に設けられ、車両本体又はドアの一方に回動可能に連結される連結芯部と、前記アーム芯部の他端に設けられ、該アーム芯部の長手方向に交差する方向に張り出したストッパ芯部とが設けられた芯金を有し、少なくとも前記ストッパ芯部を樹脂材料で被覆することでストッパ部を形成したアームと、前記車両本体又は前記ドアの他方に取り付けられると共に、開口を有し、該開口に前記アームが摺動可能に挿通され、前記ストッパ部との当接によって前記ドアの全開位置を規定する保持部材と、を備えるチェックリンク装置であって、前記ストッパ芯部は、少なくとも前記保持部材の当接面と前記ストッパ部との当接時、前記保持部材の前記当接面に対向する端面に曲面を有し、少なくとも前記保持部材の前記当接面と前記ストッパ部との当接時、前記保持部材の前記開口の縁部から前記ストッパ芯部に対する荷重方向に沿う延長線が、前記ストッパ芯部の前記曲面を通過する位置にあることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、樹脂材料で被覆されたストッパ芯部の保持部材に当接する側の端面に曲面を設けたことにより、保持部材とストッパ部との当接に伴う荷重が、樹脂材料と端面に設けた曲線状の曲面との間に作用した際、この荷重を曲面によって分散させ、角部等の1点に集中荷重を生じることを回避できる。このため、樹脂材料に割れを生じる集中荷重がかかることを防止でき、樹脂材料のストッパ芯部からの剥離を防止して、高い強度を有するストッパ部を構成することができる。さらに、ストッパ部は、アーム芯部の他端を幅方向に張り出して設けたストッパ芯部によって構成されるため、例えば一枚板の芯金の外形を所望の形状に切断するだけで形成でき、加工性に優れ、コストも低減することができる。しかも、ストッパ芯部の保持部材側が板厚面(板端面)からなる曲面で構成されるため高強度であり、保持部材との当接時の変形を抑え、耐久性を高めることができる。このように、ストッパ部では、ストッパ芯部の変形が抑制された構造とされ、且つ曲面で保持部材からの荷重を受ける構造とされているため、樹脂材料の剥離を一層確実に防止することができる。
【0010】
た、保持部材の当接面とストッパ部とが当接した際にストッパ部に付与される荷重をより確実にストッパ芯部の曲面によって分散させることができる。


【0011】
前記ストッパ芯部の略中央には、該ストッパ芯部を板厚方向に貫通し、前記樹脂材料が充填される孔部が形成されていてもよい。そうすると、ストッパ部では、保持部材からの荷重を、曲面だけでなく、前記孔部の内周面でも受けることができ、つまりストッパ部の荷重受面積を孔部によって拡大することができる。しかも、孔部がストッパ芯部の略中央に位置する。従って、保持部材から樹脂材料に加わる荷重を一層バランスよく分散することができ、さらに、ストッパ芯部の上下面に形成された樹脂材料の被覆同士を孔部によって連結することができるため、樹脂材料の剥離を一層確実に抑えることができる。
【0012】
前記アーム芯部が樹脂材料で被覆されることでアーム部が形成されると共に、該アーム部には、前記保持部材の摺動体が摺動する凹部及び凸部が前記被覆した樹脂材料によって少なくとも1組形成されており、前記保持部材の摺動体が前記凹部から前記凸部へと移動する上り傾斜面又は前記凸部にある位置で、前記ストッパ部と前記保持部材の当接面とが当接する構成とすると、保持部材とストッパ部との当接直前に、保持部材が、摺動体と上り傾斜面との間の摺接作用によって移動方向とは逆方向への力を受けるため、保持部材からストッパ部に伝達される荷重が抑制され、ストッパ部の破損や衝撃音の発生を低減することができ、樹脂材料の剥離を一層確実に防止することができる。
【0013】
前記ストッパ芯部を被覆する樹脂材料の厚みは、前記保持部材と対向する側が最も厚くなるように形成されていてもよい。そうすると、ストッパ部の大型化を避けつつ、保持部材から荷重を受けた際には、厚みのある樹脂材料が変形することでクッションとなって荷重を受け止めることができ、樹脂材料の剥離を一層確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂材料で被覆されたストッパ芯部の保持部材に当接する側の端面に曲面を設けたことにより、保持部材とストッパ部との当接に伴う荷重が、樹脂材料と端面に設けた曲線状の曲面との間に作用した際、この荷重を曲面によって分散させ、角部等の1点に集中荷重が生じることを防止できる。このため、樹脂材料に割れを生じる集中荷重がかかることを避けることができ、樹脂材料のストッパ芯部からの剥離を防止して、高い強度を有するストッパ部を構成することができる。さらに、ストッパ部は、アーム芯部の他端を幅方向に張り出して設けたストッパ芯部によって構成されるため、例えば一枚板の芯金の外形を所望の形状に切断するだけで形成でき、加工性に優れ、コストも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るチェックリンク装置の平面図である。
図2図2は、図1中のII−II線に沿う断面図である。
図3図3は、チェックリンク装置を搭載した四輪自動車の要部を概念的に示す平面図であり、図3(A)は、ドアを閉じた状態での平面図であり、図3(B)は、ドアを開いた状態での平面図である。
図4図4は、チェックリンク装置のアームの平面図である。
図5図5は、図4に示すアームの側面図である。
図6図6は、アームを構成する芯金の平面図である。
図7図7は、アームのストッパ部及びその周辺部を拡大した斜視図であり、図7(A)は、ストッパ部と保持部材とが真っ直ぐ当接した状態を示す図であり、図7(B)は、ストッパ部と保持部材とが片当たりした状態を示す図である。
図8図8は、ドアが全開位置となり、ストッパ部と保持部材が当接した状態での側面断面図である。
図9図9は、ドアの開閉に伴うチェックリンク装置の保持部材とアームとの位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るチェックリンク装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るチェックリンク装置1の平面図である。図2は、図1中のII−II線に沿う断面図であり、図1に示すチェックリンク装置1の側面断面を示す。図3は、チェックリンク装置1を搭載した四輪自動車の要部を概念的に示す平面図であり、図3(A)は、ドアDを閉じた状態での平面図であり、図3(B)は、ドアDを開いた状態での平面図である。
【0018】
図1図3に示すように、チェックリンク装置1は、保持部材10とアーム20とを備え、車両本体(車体)BとドアDとの間に配置される。本実施形態では、チェックリンク装置1が適用されるドアDとして、車両本体Bの前席右側ドアを例示している。ドアDは、前側の端部が車両本体BのドアヒンジHjに回動自在に支持され、ドアヒンジHjを回動中心として、図3(A)に示す閉じた状態から図3(B)に示す開いた状態に開閉可能である。
【0019】
図1及び図2に示すように、保持部材10は、アーム20が長手方向に沿って摺動自在な状態で挿通され(図8も参照)、アーム20の一端に設けられた後述するストッパ部20cとの当接によってドアDの全開位置(最大開位置)を規定するものである。
【0020】
本実施形態の場合、保持部材10は、ケース11及びカバープレート12を有し、これらケース11及びカバープレート12で形成される箱状の空間内にチェック機構14を保持している。ケース11及びカバープレート12は、例えば鋼板製である。カバープレート12は、ケース11に形成された係止爪11bによって当該ケース11に係止・固定される。そして、保持部材10は、ケース11が2本のボルト13及び図示しないナットによってドアパネルDPに取り付けられることでドアパネルDPに対して固定されている。
【0021】
アーム20が挿通される保持部材10の開口10aは、ケース11及びカバープレート12の中央に形成された開口11a,12aによって形成されている。保持部材10は、ケース11及びカバープレート12を用いた構造以外であっても勿論よく、例えば一体構造の箱状としてもよい。
【0022】
チェック機構14は、アーム20の上下両面に当接する一対の摺動体15,15と、各摺動体15をアーム20に向けて付勢する一対のコイルばね16,16とを有する。各摺動体15は、アーム20の被覆22に対する摩擦係数の小さい合成樹脂、例えば、ポリアセタール等によって成形されている。コイルばね16に代えて、ゴム等の弾性体を用いてもよい。
【0023】
図4は、チェックリンク装置1のアーム20の平面図であり、図5は、図4に示すアーム20の側面図であり、図6は、アーム20を構成する芯金21の平面図である。また、図7は、アーム20のストッパ部20c及びその周辺部を拡大した斜視図であり、図7(A)は、ストッパ部20cと保持部材10とが真っ直ぐ当接した状態を示す図であり、図7(B)は、ストッパ部20cと保持部材10とが片当たりした状態を示す図である。
【0024】
図1図2及び図4図7に示すように、アーム20は、板状の芯金21と、芯金21を覆う合成樹脂の被覆22とから構成され、平面視で長手方向に沿って僅かに湾曲しながら延びた板状部材である。アーム20には、板状で長尺なアーム部20aと、アーム部20aの一端に形成された連結部20bと、アーム部20aの他端に形成されたストッパ部20cとが設けられている。被覆22の素材としては、加工が容易で、高強度な合成樹脂が望ましく、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、ABS樹脂、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂が好適である。なお、図7では、芯金21の形状を明示するため、被覆22を2点鎖線で示している。
【0025】
図2及び図4に示すように、連結部20bは、被覆22によって後述する開口部21eを被覆するようにして、中央に連結孔20eが設けられている。図1図2及び図7に示すように、ストッパ部20cは、アーム部20a側の面が保持部材10、つまりカバープレート12外面の当接面12bと当接する平面の受け面Faとなる。
【0026】
図1及び図2に示すように、アーム20は、一端の連結部20bが揺動ピンPにより、車両本体Bに固定されたブラケットBkに連結され、ドアパネルDPに形成したアーム挿通孔Haから挿通されたアーム部20aの他端のストッパ部20cが保持部材10を介してドアD内に配置される。ブラケットBkは、車両本体Bに対して、突部Bkpによって位置決め及び回り止めされた状態でボルト23によって固定されている。
【0027】
図2及び図5に示すように、アーム20は、芯金21を覆う合成樹脂の厚さが長手方向に沿って変化するように被覆22がモールドされている。被覆22は、アーム部20aの連結部20b側で厚さが一定であるが、中央に向かって次第に増加した後、中間の厚さが薄くなり(第1チェック部PC1)、その後増加して一定の厚さとなり、再度ストッパ部20cの近傍(第2チェック部PC2)で厚さが薄くなった後、再び厚くなるように形成されている。これにより、被覆22には、連結部20b側からストッパ部20c側に向かう方向で略中央部から順に、第1凸部22a、第1凹部22b(第1チェック部PC1)、第2凸部22c、第2凹部22d(第2チェック部PC2)、第3凸部22eが連続して形成されている。
【0028】
図2図4図6に示すように、アーム20を構成する芯金21は、長手方向に沿って僅かに湾曲しながら延在する鋼板からなるアーム芯部21aと、アーム芯部21aの一端に形成される連結芯部21bと、アーム芯部21aの他端に形成され、アーム芯部21aの幅方向へ張り出したストッパ芯部21cとを有し、平面視略T字形状に成形された一枚板である。
【0029】
アーム芯部21aの適宜個所には、樹脂孔21dが形成されている。樹脂孔21dに被覆22の樹脂が入り込むことで、アーム芯部21aと被覆22とが剥離し難くなっている。連結芯部21bには、一端の連結孔20eと対応する位置に連結孔20eよりも僅かに直径が大きい開口部21eが形成されている。
【0030】
ここで、ストッパ部20cの構造について、図4図8を参照してより具体的に説明する。
【0031】
ストッパ部20cは、芯金21のストッパ芯部21cを被覆22で先端に向かって先細りする矩形テーパ形状にモールドして構成されており、被覆22のアーム部20a側の端面が保持部材10に対する受け面Faを構成している。
【0032】
図6図7(A)及び図7(B)に示すように、ストッパ芯部21cは、アーム芯部21aから一端側へと延出されると共に、アーム芯部21aの長手方向に交差する方向(幅方向)に張り出した一対の拡幅部24,24を有し、平面視で先細りの台形状に形成され、アーム芯部21aと同じ板厚で構成されている(図2及び図5参照)。拡幅部24,24には、被覆22の受け面Faに対応する板厚面(板端面)である端面Fb,Fbがそれぞれ設けられると共に、これら端面Fb,Fbと外側部との間には曲面Fc,Fcが設けられている。曲面Fcは、アーム芯部21a側からストッパ芯部21c側に向かって逃げるように湾曲しており、少なくとも保持部材10の当接面12bとストッパ部20cとの当接時に当接面12bに対向する端面Fbに設けられているため、保持部材10からの荷重を分散させる。
【0033】
図7(A)に示すように、ドアDが全開されて保持部材10とストッパ部20cとが当接した状態において、保持部材10の開口10a(開口12a)の縁部であって、ストッパ芯部21cに対する荷重方向に沿う延長線Lが、ストッパ芯部21cの曲面Fcを通過する位置にある。
【0034】
図7(B)に示すように、ドアDが全開された際に保持部材10とストッパ部20cとが片当たりした状態においても、保持部材10の開口10a(開口12a)の縁部であって、ストッパ芯部21cに対する荷重方向に沿う延長線Lが、ストッパ芯部21cの曲面Fcを通過する位置にある。片当たりとは、例えば、チェックリンク装置1の度重なる使用による経年劣化等により、ストッパ部20cの受け面Faと保持部材10の当接面12bとが互いに平行から外れた状態で当接する現象のことである。
【0035】
ストッパ芯部21cの略中央には、板厚方向を貫通する丸孔(孔部)26が形成されている。丸孔26は、アーム芯部21aの長手方向で該アーム芯部21aの幅寸法に含まれ、且つストッパ芯部21cの先端面25と拡幅部24の根元との間となる位置に形成されている。この際、丸孔26は、ストッパ芯部21cの上下面との境界線となる上下の周縁部にバーリング等の突起がなく、且つ該周縁部は、ストッパ芯部21cの上下面と面一又は多少窪んだ形状とされている(図2及び図5参照)。そのため、ストッパ芯部21cの加工性が優れる。
【0036】
このようなストッパ芯部21cを覆う被覆22は、図7(A)から明らかなように、端面Fb及び曲面Fcを覆う部分と、それ以外の略全体を覆う部分とで樹脂材料の厚みが異なるように形成されている。すなわち、被覆22は、端面Fb及び曲面Fc以外の略全体を覆う部分の厚みをt0とすると、端面Fbと被覆22の受け面Faとの間の厚みは、t0の2倍程度となるt1とされ、曲面Fcを覆う部分では、該曲面Fcが先端側に向かって湾曲しているため、曲面Fcと受け面Faとの間の厚みは、t1より大きなt2となっている。従って、ストッパ部20cでは、ストッパ芯部21cを被覆する樹脂材料(被覆22)の厚みは、保持部材10と対向する側が最も厚い厚みt1又はt2となるように形成されている。
【0037】
図8に、ドアDが全開位置となり、ストッパ部20cと保持部材10が当接した状態での側面断面図を示す。
【0038】
チェックリンク装置1では、図8に示すように、ドアDが全開されて保持部材10とストッパ部20cとが当接した状態、つまり、保持部材10のカバープレート12の当接面12bがストッパ部20cの受け面Faに当接した状態では、保持部材10の摺動体15が、ストッパ部20cに隣接する第3凸部22e上に位置するように構成されている。すなわち、保持部材10のアーム20に対する移動方向で、カバープレート12の当接面12bと摺動体15の摺動面のカバープレート12側の端部との間の幅W0は、ストッパ部20cの受け面Faと第3凸部22eの第2凹部22d側の端部との間の幅W1より小さく設定されている。これにより、保持部材10がストッパ部20cに当接する直前に、摺動体15は、第2凹部22dから第3凸部22eへの上り傾斜面22fを乗り越えることになる。
【0039】
なお、ドアDが全開されて保持部材10とストッパ部20cとが当接した状態において、保持部材10の摺動体15は、第2凹部22dから第3凸部22eへの上り傾斜面22fに位置するように構成されてもよい。この場合には、前記幅W0は、幅W1より大きく、且つ受け面Faと上り傾斜面22fの第2凹部22d側の端部との間の幅W2より小さく設定されることになる。つまり、保持部材10がストッパ部20cに当接する直前に、摺動体15は、上り傾斜面22fに摺接していることになる。
【0040】
図9は、ドアDの開閉に伴うチェックリンク装置1の保持部材10とアーム20との位置関係を示す平面図である。なお、図9中の参照符号Chは、車両本体BのドアヒンジHjの中心を示す。
【0041】
先ず、図1及び図9中に実線で示すアーム20のように、チェックリンク装置1は、車両本体Bに対してドアDを閉じた場合、ドアDに固定された保持部材10において一対の摺動体15が、それぞれアーム20の上下面に摺接した状態で、揺動ピンP側に最も近い位置、つまりストッパ部20cが保持部材10から最も遠い位置に配置される。この際、アーム20は、車両本体Bの前後方向に沿って配置される。
【0042】
次に、図9に実線で示す状態から、車両本体Bに対してドアDを開くと、チェックリンク装置1は、ドアDが開くのに伴ってアーム20を揺動ピンPの軸心回りに図9において反時計回りに回転させ、このアーム20の回転に伴い、保持部材10がアーム20に沿ってストッパ部20c側に移動する。この間、一対の摺動体15は、一対のコイルばね16のばね力によってアーム20の上下面に摺接してアーム20に沿って移動しながら、アーム20の上下面形状に応じて一対のコイルばね16を適宜弾性変形させながら上下動する。
【0043】
このアーム20に沿った移動により、保持部材10が、アーム20の第1チェック部PC1(第1凹部22b)に至ると、一対のコイルばね16のばね力及び被覆22の窪み形状により、一対の摺動体15が第1チェック部PC1から移動することが規制される。その結果、アーム20は、ドアDと共に車両本体Bに対して図9に示す中間開位置Pmに停止させられる。このときのドアヒンジHjの中心Chに対するドアDの開き角度を、図9に参照符号θで示す。
【0044】
開き角度θの状態からドアDがさらに開かれると、保持部材10が、アーム20の第2チェック部PC2(第2凹部22d)を通過し、上り傾斜面22fに摺接しながらドアDが開かれる力が吸収されつつ、最終的には第3凸部22eに到達し、保持部材10のカバープレート12がアーム20のストッパ部20cに当接する。その結果、アーム20は、ドアDと共に車両本体Bに対して中間開位置Pmよりも開いた図9に示す全開位置Pfoに停止させられる。この状態においては、一対のコイルばね16のばね力により、一対の摺動体15が第3凸部22e上に位置し、又は当接時の反動により第2チェック部PC2(第2凹部22d)に戻ってアーム20の長手方向に移動することが規制される。その結果、アーム20は、ドアDと共に車両本体Bに対して中間開位置Pmよりも開いた図9に示す全開位置Pfoに停止させられる。このときのドアヒンジHjの中心Chに対するドアDの開き角度を、図9に参照符号θで示す。
【0045】
このような全開位置Pfoにおいては、保持部材10のカバープレート12とアーム20のストッパ部20cの受け面Faとが当接しているため、チェックリンク装置1は、車両本体Bに対してドアDが更に開かれることを阻止すると共に、車両本体Bに対してドアDを全開位置Pfoに保持することができる。
【0046】
一方、上述した全開位置PfoからドアDを閉じると、ドアDに固定された保持部材10が、一対の摺動体15を介してアーム20を揺動ピンPの軸心回りに図9において時計回りに回転させながら、当該保持部材10はアーム20に沿ってブラケットBk側に移動する。この間、一対の摺動体15は、一対のコイルばね16のばね力によってアーム20の上下面に摺接してアーム20に沿って移動しつつ、アーム20の上下面形状に応じて一対のコイルばね16を適宜弾性変形させながらアーム20に対して上下動する。このアーム20に沿った移動により、保持部材10は、ドアDを開く場合と逆の動作で、第2チェック部PC2から第1チェック部PC1を経て最も揺動ピンP側に接近した位置に移動する。
【0047】
以上のように、本実施形態に係るチェックリンク装置1では、ストッパ芯部21cは、少なくとも保持部材10の当接面12bとストッパ部20cとの当接時、保持部材10の当接面12bに対向する端面Fbに曲面Fcを有する。
【0048】
このように、被覆22で覆われたストッパ芯部21cの保持部材10に当接する側の端面Fbに曲面Fcを設けたことにより、ストッパ部20cと保持部材10とが真っ直ぐ当接した場合であっても(図7(A)参照)、片当たりした場合であっても(図7(B)参照)、この当接に伴う荷重が、被覆22を構成する樹脂材料と端面Fbに設けた曲線状の曲面Fcとの間に作用した際、この荷重を曲面Fcによって分散させることができ、角部等の1点に集中荷重を生じることを回避できる。このため、樹脂材料に割れを生じる集中荷重がかかることを避けることができ、被覆22のストッパ芯部21cからの剥離を防止して、高い強度を有するストッパ部20cを構成することができる。
【0049】
また、少なくとも保持部材10の当接面12bとストッパ部20cとの当接時、保持部材10のストッパ芯部21cに対する荷重方向に沿う延長線Lが、ストッパ芯部21cの曲面Fcを通過する位置にある構造とされることにより、保持部材10の当接面12bとストッパ部20cとが当接した際にストッパ部20cに付与される荷重をより確実にストッパ芯部21cの曲面Fcによって分散させることができる。
【0050】
ストッパ部20cは、アーム芯部21aの他端を幅方向に張り出して設けたストッパ芯部21cによって構成されるため、例えば一枚板の芯金21の外形を図6に示すような形状に切断するだけで形成でき、加工性に優れ、コストも低減することができる。しかも、ストッパ芯部21cの受け面Faに対応する部分、つまり保持部材10側の部分は、板厚面(板端面)からなる端面Fb(曲面Fc)であり、且つ丸孔26は拡幅部24上に位置しないため高強度であり、保持部材10との当接時の変形を抑え、耐久性を高めることができる。このように、ストッパ部20cでは、ストッパ芯部21cの変形が抑制された構造とされ、且つ曲面Fcで保持部材10からの荷重を受ける構造とされているため、被覆22を構成する樹脂材料の剥離を一層確実に防止することができる。
【0051】
ストッパ部20cでは、ストッパ芯部21cの略中央に、該ストッパ芯部21cを板厚方向に貫通し、被覆22を構成する樹脂材料が充填される丸孔26が形成されている。このため、ストッパ部20cでは、保持部材10からの荷重を、端面Fbや曲面Fcだけでなく、丸孔26の内周面でも受けることができ、つまりストッパ部20cの荷重受面積が丸孔26によって拡大されている。しかも、丸孔26がストッパ芯部21cの略中央に位置する。従って、保持部材10から被覆22を構成する樹脂材料に加わる荷重をよりバランスよく分散することができ、さらに、ストッパ芯部21cの上下面に形成された樹脂材料の被覆22同士を丸孔26によって連結することができるため、樹脂材料の剥離を一層確実に抑えることができる。
【0052】
換言すれば、ストッパ部20cでは、被覆22を構成する樹脂材料に生じる保持部材10からの荷重を、ストッパ芯部21cの曲面Fcで受けて分散させ、合わせて丸孔26によって受けて分散させることができるため、大きな荷重受面積を確保しつつ、この荷重受面に生じる荷重を効果的に分散させることができる。これにより、保持部材10を確実に受止めつつ、被覆22の剥離を防止することができ、ストッパ部20cの強度や耐久性を一層高めることができる。しかも、丸孔26は、その周縁部にバーリング等の突起がなく、且つ該周縁部は、ストッパ芯部21cの上下面と面一又は多少窪んだ形状とされている。このように丸孔26の周縁部に突起等がないと、ストッパ芯部21cにおけるアーム芯部21aの幅寸法に含まれる範囲内で孔を大きくとることができることから、丸孔26は拡幅部24上には位置しないため、ストッパ芯部21cを高強度化しつつ荷重受面積を拡大でき、また、保持部材10の開口10aの上下部分からの荷重が、丸孔26の上下の樹脂材料樹脂の上下面に均等にかかるため、バランスよく荷重を受けることができる。
【0053】
チェックリンク装置1では、アーム芯部21aが樹脂材料で被覆されることでアーム部20aが形成されると共に、該アーム部20aには、保持部材10の摺動体15が摺動する凹部及び凸部が被覆22によって少なくとも1組形成されており(本実施形態では、第1凸部22aと第1凹部22bの組、第2凸部22cと第2凹部22dの組、第3凸部22eの合計2.5組)、保持部材10の摺動体15が第2凹部22dから第3凸部22eへと移動する上り傾斜面22f又は第3凸部22e上にある位置で、ストッパ部20cと保持部材10の当接面12bとが当接する(図8参照)。これにより、保持部材10とストッパ部20cとの当接直前に、保持部材10が、摺動体15と上り傾斜面22fとの間の摺接作用によって移動方向とは逆方向への力を受けるため、保持部材10からストッパ部20cに伝達される荷重が抑制され、ストッパ部20cの破損や衝撃音の発生を低減することができ、被覆22を構成する樹脂材料の剥離を一層確実に防止することができる。
【0054】
チェックリンク装置1では、ストッパ芯部21cを被覆する樹脂材料の厚みは、保持部材10と対向する側が最も厚い厚みt1又はt2となるように形成されている(図7(A)参照)。このため、ストッパ部20cの大型化を避けつつ、保持部材10から荷重を受けた際には、被覆22を構成する樹脂材料が変形することでクッションとなって荷重を受け止めることができ、樹脂材料の剥離を一層確実に抑えることができる。
【0055】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0056】
例えば、上記では、保持部材10をドアDに取り付け、連結部20bを車両本体Bに設けたブラケットBkに回動自在に支持させた構成を例示したが、上記とは逆に、保持部材10を車両本体Bに設け、連結部20bをドアDに回動自在に支持させた構成としてもよい。
【0057】
また、上記では、ストッパ芯部21cを構成する拡幅部24が左右方向に配置されたチェックリンク装置1を例示したが、アーム20の向きは当該チェックリンク装置1が搭載される車種等によって適宜変更可能であり、拡幅部24が上下方向や傾斜姿勢で使用されても勿論よい。
【符号の説明】
【0058】
1 チェックリンク装置
10 保持部材
10a〜12a 開口
11 ケース
12 カバープレート
12b 当接面
14 チェック機構
15 摺動体
20 アーム
20a アーム部
20b 連結部
20c ストッパ部
21 芯金
21a アーム芯部
21b 連結芯部
21c ストッパ芯部
22 被覆
22a 第1凸部
22b 第1凹部
22c 第2凸部
22d 第2凹部
22e 第3凸部
22f 上り傾斜面
24 拡幅部
25 先端面
26 丸孔
B 車両本体
D ドア
DP ドアパネル
Fa 受け面
Fb 端面
Fc 曲面
C1 第1チェック部
C2 第2チェック部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9