特許第6064246号(P6064246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6064246ボーンチャイナ用魚骨灰及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064246
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】ボーンチャイナ用魚骨灰及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 33/24 20060101AFI20170116BHJP
   C04B 41/86 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   C04B33/24 Z
   C04B41/86 A
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-213817(P2014-213817)
(22)【出願日】2014年10月20日
(65)【公開番号】特開2016-79074(P2016-79074A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】501286358
【氏名又は名称】深川製磁株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500022649
【氏名又は名称】株式会社鈴廣蒲鉾本店
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博晶
(72)【発明者】
【氏名】深川 一太
(72)【発明者】
【氏名】水田 正常
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−188415(JP,A)
【文献】 特開平03−164411(JP,A)
【文献】 特開平04−265214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 33/00−33/36
C04B 41/80−41/91
C01B 25/00−25/46
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化カルシウム50〜55質量%、五酸化二リン40〜45質量%の成分を含む魚骨灰からなることを特徴とするフリットなしで施釉できるボーンチャイナ用魚骨灰。
【請求項2】
魚アラから骨を選別する工程、選別された骨をたんぱく分解能を持った酵素が入った湯で煮て、骨から身を分離する工程、NaOH溶液で煮沸または高圧高温処理して靱や腱を分離し、HClで中和する工程、水で洗浄し、乾燥する工程、乾燥させた骨を焼成灰化する工程、焼成灰化した骨を粉砕して粉にする工程で順次処理することを特徴とする請求項1に記載のフリットなしで施釉できるボーンチャイナ用魚骨灰の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーンチャイナの原料となるボーンチャイナ用魚骨灰及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボーンチャイナ(骨灰磁器)は、綺麗な白色を有し、透光性、審美性等の点で優れているため、食器や装飾用磁器として使用されている。
【0003】
ボーンチャイナの原料は、一般磁器の製造に用いる原料である長石、カオリンなどの他に牛骨灰を加えて粘土を精製する。牛骨灰は、脱脂した牛の骨を、空気を供給して焼くことによって作られ、鉱物相としてリン酸カルシウムを含んでいる(特許文献1〜3参照)。ボーンチャイナに含まれるリン酸カルシウム(リン酸三カルシウム)の含有量は、日本でのJIS規格では30質量%以上である。
【0004】
ボーンチャイナは、例えば、次の(1)〜(8)の工程で順次処理されて製造される。(1)粘土調整 原料(牛骨灰、陶石、長石、珪石、粘度、カオリン)の粉砕、混合、土練(又は泥漿調整)
(2)成形(ろくろ成形又は鋳込み成形)
(3)乾燥仕上げ
(4)焼き締め(1250〜1300℃)
(5)釉薬掛け(フリット釉のスプレー掛け)
(6)本焼成(1100〜1200℃)
(7)上絵付
(7)錦窯(800〜900℃)
(8)検査
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−184245公報
【特許文献2】特開2011−073949公報
【特許文献3】特開平10−167805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のボーンチャイナに使用されている、牛の骨を焼成して製造された牛骨灰は高価になるという問題があり、また、牛の骨を焼成灰化する際に強烈な悪臭と煤煙を発生することから、高価な脱臭設備が必要となるという課題があった。
【0007】
また、ボーンチャイナの製造法では、釉薬の調合はフリットを専用窯で1350℃焼成する必要があり、従来の磁器製法と同じフリットなしの簡単な釉薬調合法を利用することができなかった。
【0008】
一方で、日本では魚を多く食するために魚の解体、調理の際に発生する魚のアラは年間およそ2000万トンにおよび、肥料や飼料などに再利用されているものは1割にも満たないのが現状である。
【0009】
そこで、本発明は、魚を処理した後の廃棄物である魚の骨を有効利用して、従来の磁器製法と同じフリットなしの釉薬調合法で製造できるボーンチャイナの原料となるボーンチャイナ用魚骨灰及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1の発明は、酸化カルシウム50〜55質量%、五酸化二リン40〜45質量%の成分を含む魚骨灰からなることを特徴とするフリットなしで施釉できるボーンチャイナ用魚骨灰である。
【0012】
本願請求項の発明は、魚アラから骨を選別する工程、選別された骨をたんぱく分解能を持った酵素が入った湯で煮て、骨から身を分離する工程、NaOH溶液で煮沸または高圧高温処理して靱や腱を分離し、HClで中和する工程、水で洗浄し、乾燥する工程、乾燥させた骨を焼成灰化する工程、焼成灰化した骨を粉砕して粉にする工程で順次処理することを特徴とする請求項1に記載のフリットなしで施釉できるボーンチャイナ用魚骨灰の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、魚の処理後に廃棄物として排出される魚の骨を使用するので、牛骨灰に比べて骨灰の製造が安価で且つ強烈な臭気も発生しないので、簡単な設備で製造可能となる。その結果、魚の処理後に発生する大量の廃棄物を再生化することにより、魚を食する海洋国日本の漁業資源を有効利用することが可能となる。
【0014】
本発明の魚骨灰により、釉薬の調合は、従来のボーンチャイナの製造法ではフリットを専用窯で焼成する必要があったが、従来の磁器製法と同じフリットなしの簡単な調合法を利用することが可能となった。
【0015】
本発明の魚骨灰を使用することにより、透明感があり且つ色合いが白色の上質のボーンチャイナが得られる。牛骨灰を使ったボーンチャイナでは30%以上の含有が必要とされ、透光性を際立たせるには、含有率を50%に高めるが、本発明の魚骨灰を使ったボーンチャイナでは、魚骨灰自体の酸化カルシウム、リン酸カルシウムの含有率が高いので、含有率を抑えても透明感のある上質のボーンチャイナが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のボーンチャイナ用魚骨灰の製造について説明する。
【0017】
魚を断頭調理する魚屋やスーパー、かまぼこなどの水産加工工場などで大量に発生する魚アラを収集し、魚骨灰の原料とする。
【0018】
収集した魚アラには魚の頭蓋骨、背骨、肋骨などの骨の他にこれらについている身などのタンパク質が含まれているので、骨以外のものを分別するためにタンパク質を分解、除去する。その手順の一例を次に示す
【0019】
(1)骨に残る身を酵素で溶かす。
たんぱく分解能を持ったたんぱく質分解酵素(例えば、パパイン)が入った湯で煮て、骨から身を完全に分離する。
(2)靱や腱をアルカリと酸で溶かす。
NaOH溶液で煮沸または高圧高温処理して、靱や腱を分離し、HClで中和する
(3)水でよく洗い、乾燥させる。
(4)乾燥させた骨を焼成灰化し、粉砕して粉にする。
【0020】
魚骨灰と牛骨灰の成分を比較すると表1のとおりである
【表1】
【0021】
本発明のボーンチャイナ用魚骨灰を使用したボーンチャイナの製造方法について説明する。
本発明の魚骨灰、陶石、長石、珪石、粘土、カオリンを含む粘土を粉砕・混合、土練(又は泥漿調整)を調整した後の工程は、従来の磁器製法と同じく、成形、素焼、施釉(浸し掛け)、本焼成する。また、釉薬の調合も、従来の磁器製法の場合と同じ調合法である。
【0022】
以下に製造例の一例について説明する。
(1)粘土調整:湿式粉砕した骨灰20〜30質量%、陶石10〜20質量%、長石10〜15質量%、珪石10〜15質量%、粘土10〜15質量%、カオリン15〜20質量%、石灰石10〜20質量%をミキサーで混合する。混合物を脱水した後、練り上げる、
(2)成形
練った土をロクロで成形する。
(3)乾燥仕上げ
成形品を2〜3日間乾燥して仕上げる。
(4)素焼き
乾燥した成形品をガス炉に入れて750〜850℃で、5〜6時間で焼き絞める。
(5)釉薬掛け
釉薬で浸し掛けにより施釉する(なお、フリットは不要である)。
(6)本焼成
1200〜1250℃で本焼成する。
(7)上絵付
絵の具で絵や模様を描く。
(8)錦窯
錦窯に入れて 750〜850℃で上絵を焼き付ける。
(9)検査
仕上がり具合を検査し、合格品を製品とする。
【0023】
以上の工程により、透明感があり且つ色合いが白色の上質のボーンチャイナが得られた。