特許第6064252号(P6064252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三笠製薬株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6064252-そう痒症改善経皮吸収貼付剤 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064252
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】そう痒症改善経皮吸収貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/485 20060101AFI20170116BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A61K31/485
   A61K9/70 401
   A61K47/06
   A61K47/10
   A61K47/18
   A61K47/32
   A61P25/04
   A61P17/04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-9168(P2012-9168)
(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公開番号】特開2013-147459(P2013-147459A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年12月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039468
【氏名又は名称】三笠製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 博
(72)【発明者】
【氏名】有吉 知加子
(72)【発明者】
【氏名】原 和好
(72)【発明者】
【氏名】丸山 喜通
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1998/023290(WO,A1)
【文献】 特開2002−087954(JP,A)
【文献】 特開2010−024223(JP,A)
【文献】 国際公開第1999/002158(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61K 31/33−33/44
A61P 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および該支持体の一方の面に粘着層を有するそう痒症改善用経皮吸収貼付剤であって、該支持体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタンを主体とした合成樹脂フィルムまたはシート、あるいはこれらの積層体、多孔質体、発泡体、紙、布および不織布から選択され、該粘着層は、有効成分としてナルフラフィンまたはその塩、粘着基剤、粘着付与樹脂、薬物溶解剤およびpH調整剤を含有し、該粘着基剤がポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブチルゴム、天然ゴム、合成イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴムおよびスチレン−ブタジエン−スチレンゴムから選択される1種または2種以上のゴム系粘着剤であり、前記粘着付与樹脂が石油系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂およびクマロンインデン系樹脂から選択される1種または2種以上であり、前記薬物溶解剤がオレイルアルコールまたはオレイルアルコールとクロタミトンの混合物である、前記pH調整剤がジイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンから選択される1種または2種以上である、ことを特徴とするそう痒症改善用経皮吸収貼付剤。
【請求項2】
薬物溶解剤がオレイルアルコールとクロタミトンの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のそう痒症改善用経皮吸収貼付剤
【請求項3】
有効成分の含量が、粘着層中の0.003〜3.0質量%であることを特徴とする請求項1のいずれかに記載のそう痒症改善用経皮吸収貼付剤
【請求項4】
マウス血中動態試験において、貼付後、0.25および0.5時間では薬物が検出されず、約2時間で定常状態に達し、12時間を経過するまで0.04ng/mL以上の血漿中薬物濃度を示すことを特徴とする請求項1または2に記載のそう痒症改善用経皮吸収貼付剤
【請求項5】
粘着層が、0.25質量%のナルフラフィン塩酸塩と、26質量%のポリイソブチレンと、15質量%の脂環式炭化水素樹脂と、46.45質量%の流動パラフィンと、2質量%のクロタミトンと、10質量%のオレイルアルコールと、0.3質量%のモノエタノールアミンからなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のそう痒症改善用経皮吸収貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体および該支持体の一方の面に粘着層を有する貼付剤であって、該粘着層は、有効成分としてナルフラフィンまたはその塩、粘着基剤、粘着付与樹脂、薬物溶解剤およびpH調整剤を含有するそう痒症改善経皮吸収貼付剤に関する。さらに詳しくは、上記の貼付剤を調製することにより、一過性の血中薬物濃度の上昇を抑制し、血中薬物濃度を長時間一定に維持することのできるそう痒症改善経皮吸収貼付剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
そう痒(痒み)は、表皮(皮膚、粘膜および角膜)特有の感覚で、我々が日常でも感じる症状であり、炎症を伴う皮膚疾患においては最も高頻度に苦痛として感じられる症状である。痒みを伴う疾患には、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患によるものに加え、腎疾患(慢性腎不全)、腎透析、肝疾患、糖尿病、悪性腫瘍などに伴うものがある。これら痒みが重度になると、引っ掻き行動やイライラ感が増大してじっとしては居られず、ひいては日常生活に支障が出たり、睡眠障害を引き起こすなど、患者のQOL(Quality of Life)を著しく低下させてしまう。治療薬としては、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が一般的であるが、これらが奏効するのは蕁麻疹などの一部の痒みであり、アトピー性皮膚炎や内臓疾患に伴う重度の痒みには、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の服用、ステロイド薬の外用から民間療法に至るまで種々の既存治療法が全く奏効しない患者が存在することが医療上の大きな問題となっている。
【0003】
ナルフラフィンは、オピオイドκ(カッパー)受容体作動薬として、従来の末梢性の痒みとは別の、臨床的には難治性といわれてきたオピオイドシステムが関与する中枢性の痒みに対して、本質的に止痒作用を示す(特許文献1)。このナルフラフィンの強力な止痒作用は、抗ヒスタミン薬および抗アレルギー薬が有効ではない難治性の痒みに対する治療薬となる(特許文献2および3)。実際に、当該薬物を含有した経口そう痒症改善剤として、レミッチカプセル2.5μg(鳥居薬品(株))が上市されている。
【0004】
薬剤の投与方法の中で、経口投与は最も一般的な方法で、患者のQOLの面で優れているものであり、第一選択として用いられるのが通常である。しかしながら、経口投与では一過性の血中薬物濃度の上昇が起こり、それが副作用の原因となる場合がある。実際に、ナルフラフィンの経口剤は、副作用として不眠、便秘および眠気などが認められており、用量依存的に発現率が増加していることから、血中での一過性のナルフラフィン濃度の上昇が副作用発現の原因である可能性が考えられる。
【0005】
このため、副作用の原因となる一過性の血中薬物濃度の上昇を抑制し、血中薬物濃度を長時間一定に維持する経皮吸収貼付剤を調製することにより、持続的に薬効を示すが、副作用の発現を抑えた製剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3531170号公報
【特許文献2】特許第3617055号公報
【特許文献3】特許第3743449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の状況を鑑みてなされたもので、支持体および該支持体の一方の面に粘着層を有する貼付剤であって、該粘着層は、有効成分としてナルフラフィンまたはその塩、粘着基剤、粘着付与樹脂、薬物溶解剤およびpH調整剤を含有するそう痒症改善経皮吸収貼付剤を調製することで、副作用の原因となる一過性の血中薬物濃度の上昇を抑制し、血中薬物濃度を長時間一定に維持することができるそう痒症改善経皮吸収貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体および該支持体の一方の面に粘着層を有する貼付剤であって、該粘着層は、有効成分としてナルフラフィンまたはその塩、粘着基剤、粘着付与樹脂、薬物溶解剤およびpH調整剤を含有するそう痒症改善経皮吸収貼付剤を調製することにより、ナルフラフィンの一過性の血中薬物濃度の上昇を抑制し、血中薬物濃度を長時間一定に維持することができることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)に示したものである。
(1)支持体および該支持体の一方の面に粘着層を有する貼付剤であって、該支持体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタンを主体とした合成樹脂フィルムまたはシート、あるいはこれらの積層体、多孔質体、発泡体、紙、布および不織布から選択され、該粘着層は、有効成分としてナルフラフィンまたはその塩、粘着基剤、粘着付与樹脂、薬物溶解剤およびpH調整剤を含有し、該粘着基剤はポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブチルゴム、天然ゴム、合成イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴムおよびスチレン−ブタジエン−スチレンゴムから選択される1種または2種以上であり、該粘着付与樹脂は石油系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂およびクマロンインデン系樹脂から選択される1種または2種以上であり、該薬物溶解剤は、N−メチル−2−ピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、モノオレイン酸ソルビタン、炭酸プロピレン、オレイルアルコール、クロタミトンおよびl−メントールから選択される1種または2種以上であり、該pH調整剤は、ジイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムから選択される1種または2種以上であるそう痒症改善経皮吸収貼付剤。
(2)前記有効成分が、ナルフラフィン塩酸塩、ナルフラフィン硫酸塩、ナルフラフィンリン酸塩、ナルフラフィン硝酸塩、ナルフラフィンホウ酸塩、ナルフラフィンスルホン酸塩、ナルフラフィン炭酸塩、ナルフラフィン乳酸塩、ナルフラフィンギ酸塩、ナルフラフィン酢酸塩、ナルフラフィン酒石酸塩、ナルフラフィンリンゴ酸塩、ナルフラフィンクエン酸塩から選択される1種または2種以上である上記(1)に記載のそう痒症改善経皮吸収貼付剤。
(3)前記有効成分が、ナルフラフィン塩酸塩である上記(1)または(2)に記載のそう痒症改善経皮吸収貼付剤。
(4)前記有効成分の含量が、粘着層中の0.001〜5.0質量%である上記(1)から(3)のいずれかに記載のそう痒症改善経皮吸収貼付剤。
(5)前記粘着基剤が、ポリイソブチレンである上記(1)から(4)のいずれかに記載のそう痒症改善経皮吸収貼付剤。
(6)前記粘着付与樹脂が、脂環族系炭化水素樹脂である上記(1)から(5)のいずれかに記載のそう痒症改善経皮吸収貼付剤。
(7)前記薬物溶解剤が、オレイルアルコール、クロタミトンである上記(1)から(6)のいずれかに記載のそう痒症改善経皮吸収貼付剤。
(8)前記pH調整剤が、モノエタノールアミンである上記(1)から(7)のいずれかに記載のそう痒症改善経皮吸収貼付剤。
(9)前記有効成分の含量が、粘着層中の0.003〜3.0質量%である上記(1)から(8)のいずれかに記載のそう痒症改善経皮吸収貼付剤。
【発明の効果】
【0009】
以上に述べたように、本発明は、支持体および該支持体の一方の面に粘着層を有する貼付剤であって、該粘着層は、有効成分としてナルフラフィンまたはその塩、粘着基剤、粘着付与樹脂、薬物溶解剤およびpH調整剤を含有するそう痒症改善経皮吸収貼付剤を調製することで、副作用の原因となる一過性の血中薬物濃度の上昇を抑制し、血中薬物濃度を長時間一定に維持することのできるそう痒症改善経皮吸収貼付剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、そう痒症改善経皮吸収貼付剤およびナルフラフィン含有経口投与液を経皮貼付および経口投与した際の投与後経過時間に対する血漿中のナルフラフィン濃度の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のそう痒症改善経皮吸収貼付剤を詳細に説明する。なお、本明細書に記載の例示は、本発明を特に限定するものではない。
本発明の経皮吸収貼付剤は、支持体と、該支持体の一方の面に粘着層を有する貼付剤であって、該粘着層は、有効成分としてナルフラフィンまたはその塩、粘着基剤、粘着付与樹脂、薬物溶解剤およびpH調整剤を含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の「長時間」とは、12時間もしくは24時間以上を意味し、血中薬物濃度を12時間もしくは24時間以上一定に維持することを意味する。
【0013】
本発明の経皮吸収貼付剤に使用する支持体は、薬物の放出に影響しないものであり、貼着あるいは投錨が可能な限り特に限定されることはないが、皮膚面に貼付した際に著しい違和感を生じない程度に柔軟性を有するものが好ましく、伸縮性および非伸縮性のいずれのものも用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタンなどを主体とした合成樹脂フィルムまたはシート、あるいはこれらの積層体、多孔質体、発泡体、紙、布および不織布などより選択され、使用される。
【0014】
本発明の経皮吸収貼付剤における有効成分は、ナルフラフィンまたはその塩から選択されるものであり、そのいずれも利用可能であるが、特にナルフラフィンの塩であることが好ましい。
【0015】
ナルフラフィンの塩とは、一般にナルフラフィンと塩を形成可能な酸の塩であり、医学的あるいは薬学的に許容される塩であれば、特に限定はないが、具体的にはナルフラフィン塩酸塩、ナルフラフィン硫酸塩、ナルフラフィンリン酸塩、ナルフラフィン硝酸塩、ナルフラフィンホウ酸塩、ナルフラフィンスルホン酸塩、ナルフラフィン炭酸塩に代表される無機酸塩、ナルフラフィン乳酸塩、ナルフラフィンギ酸塩、ナルフラフィン酢酸塩、ナルフラフィン酒石酸塩、ナルフラフィンリンゴ酸塩、ナルフラフィンクエン酸塩に代表される有機酸塩などが挙げられ、より好ましくは、ナルフラフィン塩酸塩である。
粘着層中に配合する有効成分の含量は、製剤化が可能である限り、特に限定はないが、有効成分が少なすぎると薬効作用が不十分となり、また多すぎても薬物が十分に溶解せず、均一な製剤を得られない、経済的に不利であるなどの問題が発生するため、粘着層中の0.001〜5.0質量%であることが好ましい。より好ましいのは0.003〜3.0質量%であり、さらに0.01〜1.0質量%であることが最も好ましい。
【0016】
本発明の経皮吸収貼付剤において使用される粘着基剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、含水性粘着基剤などが挙げられる。最終製剤において、経皮吸収貼付剤としての機能を十分に発揮することができる保形性および粘着性を保持できれば、種類および添加量は、特に限定されないが、ゴム系粘着剤がより好ましい。このゴム系粘着剤の例としては、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブチルゴム、天然ゴム、合成イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴムおよびスチレン−ブタジエン−スチレンゴムなどが挙げられ、ここに挙げた1種または2種以上を使用することが好ましい。
【0017】
ポリイソブチレンとしては、オパノールB−10SFN、オパノールB−11SFN、オパノールB−12SFN、オパノールB−13SFN、オパノールB−15SFN、オパノールB−30SF、オパノールB−50SF、オパノールB−80、オパノールB−100、オパノールB−150、オパノールB−200(以上、BASFジャパン(株))、テトラックス3T、テトラックス4T、テトラックス5T、テトラックス6T、ハイモール4H、ハイモール5H、ハイモール5.5H、ハイモール6H(以上、JX日鉱日石エネルギー(株))、ビスタネックスLM−MS、ビスタネックスLM−MH(以上、エクソンモービル(有))などを挙げることができ、二種以上のポリイソブチレンを組み合わせて使用しても良い。
【0018】
本発明の経皮吸収貼付剤において使用される粘着付与樹脂としては、経皮吸収貼付剤としての製剤化が可能な限り、種類および配合量は、特に限定はされないが、例えば、石油系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂およびクマロンインデン系樹脂など、医学的あるいは薬学的に許容される粘着付与樹脂が挙げられる。
【0019】
石油系樹脂としては、アルコンP−90、アルコンP−100、アルコンP−115、アルコンP−125、アルコンP−140、アルコンM−90、アルコンM−100、アルコンM−115、アルコンM135(以上、荒川化学工業(株))、クイントン1325、クイントン1345、クイントン1500、クイントン1525L、クイントン1700(以上、日本ゼオン(株))、エスコレッツ2520、エスコレッツ4000、エスコレッツ5300、エスコレッツ5320、エスコレッツ5380(以上、エクソンモービル(有))などが例として挙げられるが、この中でもアルコンP−125などの脂環族系炭化水素樹脂がより好ましい。
【0020】
ロジン系樹脂としては、ロジンエステルA、ロジンエステルAZ、重合ロジンエステルC、重合ロジンエステルD−125、重合ロジンエステルD−13、重合ロジンエステルD−160、エステルガムAAG、エステルガムAAL、エステルガムA、エステルガムAAV、エステルガム105、エステルガムAT、エステルガムH、エステルガムHP、特殊ロジンエステルL、特殊ロジンエステルA−18、特殊ロジンエステルA−75、特殊ロジンエステルA−100、特殊ロジンエステルA−115、特殊ロジンエステルA−125、ハイペールCH、パインクリスタルKE−100、パインクリスタルKE−311、パインクリスタルKE−359、パインクリスタルKE−604、パインクリスタルD−6011、パインクリスタルKE−615−3、パインクリスタルD−6250(以上、荒川化学工業(株))、ハリエスターKT−2、ハリタックF−75、ハリタックFG−90、ハリタックAQ−90A(以上、ハリマ化成(株))などが例として挙げられる。
【0021】
テルペン系樹脂としては、YSレジン、YSレジンPX、YSレジンPXN、YSポリスター、マイティエース、YPレジン、YSレジンTO、YSレジンTR、YSレジンSX、クリアロンP、クリアロンM、クリアロンK、ダイマロン、YSオイルDA(以上、ヤスハラケミカル(株))、タマノル803L、タマノル901(以上、荒川化学工業(株))などが例として挙げられる。
【0022】
本発明の経皮吸収貼付剤において使用される薬物溶解剤としては、当該有効成分の安定性に対し、著しく影響を及ぼさなければ特に限定はなく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、モノオレイン酸ソルビタン、炭酸プロピレン、オレイルアルコール、クロタミトンおよびl−メントールなどから選択される1種または2種以上を使用することが好ましい。
【0023】
本発明の経皮吸収貼付剤において使用されるpH調整剤としては、当該有効成分の安定性に対し、著しく影響を及ぼさなければ特に限定はなく、例えば、ジイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどから選択される1種または2種以上を使用することが好ましい。
【0024】
本発明における経皮吸収貼付剤は、上記構成成分により構成され、従来公知の経皮吸収貼付剤の常法で製造される。ナルフラフィンまたはその塩が溶解または融解する過程を経るものであれば、特に制約はされないが、その代表的な製造方法は、薬物や基剤成分などを有機溶媒に溶解させて均一な溶解物を得る溶剤法や、薬物や基剤成分などを加熱混合させて均一な溶融物を得るホットメルト法が挙げられる。これら方法で得られた溶解および溶融物を適当な支持体表面に塗工し、使用時まで貼付剤の粘着層を被覆する目的で剥離紙または剥離フィルムを貼付し、所望の形状に切断してもよい。
【0025】
上記に示した粘着層は、必要に応じて、可塑剤を含んでも良い。可塑剤を添加する場合、添加する可塑剤の種類および配合量は、経皮吸収貼付剤としての製剤化が可能な限り特に限定はないが、例えば、流動パラフィン、ポリブテンなどを挙げることができる。
【0026】
流動パラフィンとしては、モレスコホワイトP−40、モレスコホワイトP−55、モレスコホワイトP−60、モレスコホワイトP−70、モレスコホワイトP−80、モレスコホワイトP−100、モレスコホワイトP−120、モレスコホワイトP−150、モレスコホワイトP−200、モレスコホワイトP−260、モレスコホワイトP−350、モレスコホワイトP−350P、モレスコバイオレスU−6、モレスコバイオレスU−7、モレスコバイオレスU−8(以上、(株)MORESCO)、ハイコールK−140N、ハイコールK−160、ハイコールK−230、ハイコールK−290、ハイコールK−350(以上、カネダ(株))コスモホワイトP60、コスモホワイトP70、コスモホワイトP120、コスモホワイトP200、コスモホワイトP260、コスモホワイトP350P(以上、コスモ石油(株))、流動パラフィン350(以上、JX日鉱日石エネルギー(株))、KAYDOL(以上、SONNEBORN,Inc.)などが例として挙げられる。
【0027】
ポリブテンとしては、LV−7、LV−50、LV−100、HV−15、HV−35、HV−50、HV−100、HV−300、HV−1900、SV−7000(以上、JX日鉱日石エネルギー(株))、ニッサンポリブテン、パールリーム(以上、日油(株))、PB680、PB950、PB1300、PB1400、PB2000、PB2400(以上、Daelim H&L Co.,Ltd.)などが例として挙げられる。
【0028】
さらに、必要に応じて、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、トコフェロール類(酢酸dl−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、d−δ−トコフェロール)、エデト酸ナトリウム(EDTA・2Na)をはじめとする酸化防止剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ショ糖脂肪酸エステルをはじめとする界面活性剤、ベントナイト、カオリン、タルクをはじめとする鉱物由来物質など、医学的あるいは薬学的に許容される添加剤を使用することができる。
【0029】
また、粘着層を被覆するための剥離材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの高分子材料で作られたフィルムや、紙の上にシリコーンオイルなどを塗布したものより選択され、使用される。
【0030】
本発明における経皮吸収貼付剤の粘着層の厚みは、使用目的により異なるが、薄くなると均一な粘着層を形成することが困難となり、厚くなると、皮膚に対する追従性の低下や粘着層の凝集性が悪化、ブレードなど問題が発生してしまう。したがって10〜300μmが好ましい。
【0031】
本発明における経皮吸収貼付剤の形状は、貼付剤本体の貼付操作、貼付時の皮膚への粘着性などに支障をきたさない範囲であれば、特に限定されないが、任意の形状を採ることができる。貼付剤本体の平面形状としては、例えば、三角形、四角形、五角形などの多角形の略直線により輪郭付けられる形状、楕円、円形などの曲線により輪郭づけられる形状、略直線と曲線の両方にて輪郭づけられる形状などが挙げられる。
【0032】
本発明における経皮吸収貼付剤をヒトに適用する場合の皮膚貼付面積は、目的の薬効を発現し、ヒトの皮膚に貼付可能な範囲であれば、特に限定はされないが、皮膚貼付面積が小さすぎると、目的の薬効を得られない、もしくは単位面積当たりの薬物吸収量を著しく高く設定する必要があり、皮膚に過度の負担となってしまうため、好ましくない。また大きすぎると、皮膚に対する追従性の低下や不快感など、貼付剤適用時の患者のQOLを損ねるため、3〜100cmの範囲が好ましい。より好ましくは、4〜80cmであり、さらに5〜50cmであることが最も好ましい。
【実施例】
【0033】
以下に実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す配合に基づき、後述する調製法1の方法により調製し、本発明のそう痒症改善経皮吸収貼付剤を得た。得られたそう痒症改善経皮吸収貼付剤を使用し、試験例1に従って血漿中ナルフラフィン濃度を測定した結果、0.25、0.5時間後は薬物が検出されず、1.5時間後は0.02ng/mL、2時間後は0.04ng/mL、4時間後は0.07ng/mL、8時間後は0.07ng/mL、12時間後は0.04ng/mLであった。また、測定された血漿中ナルフラフィン濃度の時間推移挙動(n=3)を図1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
(調製法1)
ポリイソブチレンをヘキサンに溶解し、ポリイソブチレン溶液(ポリイソブチレン濃度:10質量%)を調製する。ナルフラフィン塩酸塩を流動パラフィン中に分散させたのち、ポリイソブチレン溶液および残りの添加剤と混練する。得られた練合物を、上記剥離材上に、塗布展延して乾燥させ、乾燥後の厚みが30μmとなるように粘着層を形成した。粘着層塗布面に支持体を貼り合わせ、所望の大きさに裁断して本発明の経皮吸収貼付剤を得た。
【0036】
(比較例1)
ナルフラフィン塩酸塩に精製水を加えて溶解し、3μg/mL(ナルフラフィンの濃度として)となるようにナルフラフィン含有経口投与液を調製した。得られたナルフラフィン含有経口投与液を使用し、試験例1に従って血漿中ナルフラフィン濃度を測定した結果、0.25時間後は0.05ng/mL、0.5時間後は0.15ng/mL、1.5時間後は0.14ng/mL、2時間後は0.03ng/mL、4時間以降は薬物が検出されなかった。また、測定された血漿中ナルフラフィン濃度の時間推移挙動(n=3)を図1に示す。
【0037】
(試験例1)
マウス血中動態試験
実施例群では、前述の実施例1のそう痒症改善経皮吸収貼付剤を1.6cm(4μg/body)になるように裁断し、マウスの血中動態試験を実施した。腹部被毛を毛刈りしたICRマウス(オス、8週齢、体重約40g)3匹に、上記製剤を各1枚貼付し、12時間後に剥離した。製剤の貼付後、0.25、0.5、1.5、2、4、8および12時間の時点で採血を行った。
比較例群では、ICRマウス(オス、8週齢、体重約40g)3匹に、後述の比較例1のナルフラフィン含有経口投与液を各0.4mL(1.2μg/body)、経口ゾンデを用いて経口投与した。
双方の群のマウスから得られた血漿中のナルフラフィン濃度をLC/MS/MS(Liquid Chromatography−tandem Mass Spectrometry)により測定した。
【0038】
(結果)
実施例群では、本発明の貼付剤によって、ナルフラフィンの血漿中濃度が貼付後約2時間で定常状態に達し、貼付後12時間が経過するまで0.04ng/mL以上の濃度が保たれた(図1)。この結果より、比較例群である経口投与と比較して、本発明のナルフラフィン経皮吸収貼付剤は、製剤投与直後に起こる一過性の血中薬物濃度の上昇を抑制し、一定時間、ナルフラフィンの血中濃度を維持することができることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、支持体および該支持体の一方の面に粘着層を有する貼付剤であって、該粘着層は、有効成分としてナルフラフィンまたはその塩、粘着基剤、粘着付与樹脂、薬物溶解剤およびpH調整剤を含有するそう痒症改善経皮吸収貼付剤を調製することで、副作用の原因となる一過性の血中薬物濃度の上昇を抑制し、血中薬物濃度を長時間一定に維持することのできるそう痒症改善経皮吸収貼付剤に関するものであって、産業上十分に利用できるものである。

図1