(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧端子部材は、前記電極との接続部と、該接続部より他方の電極側に延出する第1延出部と、該第1延出部より前記電極配置方向と直角方向に延出する第2延出部と、該第2延出部の終端で垂直に起立する電圧端子部とからなることを特徴とする請求項1に記載の電流検出用抵抗器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、
図1乃至
図12を参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部材または要素には、同一の符号を付して説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施例の電流検出用抵抗器の実装状態を示す。この電流検出用抵抗器は、Cu−Mn−Ni系合金、Cu−Ni系合金等の抵抗合金材料からなる円柱状の抵抗体11と、該抵抗体とは別部材の一対の銅等の高導電率金属材料からなる角柱状の電極12と、該電極に接続し監視対象電流により抵抗体両端に生じる電圧を検出する一対の電圧端子部材3を備える。この実施例では、抵抗器はアルミ基板1の配線パターン2にハンダ接合等により固定されている。
【0012】
電圧端子部材3は電極12間から基板1に対して垂直に起立している電圧端子部3aを備え、コネクタ20内に設けた接続端子21と接続が可能である。接続端子21はより線22に接続され、図示しない電圧検出回路に接続される。すなわち、監視対象電流が抵抗体11を流れることによって生じる電圧が両電極12に接続した電圧端子部材3からコネクタ20内の接続端子21およびより線22を介して電圧検出回路に伝達され、そこで電圧値が検出され、既知の抵抗値から電流値が検出される。
【0013】
図2は電圧端子部を含む電圧端子部材の構成例を示す。電圧端子部材3は、電極12の抵抗体側端面との接続部3bと、該接続部より他方の電極側に延出する第1延出部3c1と、該第1延出部3c1の終端より電極配置方向と直角方向に延出する第2延出部3c2と、該第2延出部の終端で垂直に起立する電圧端子部3aとからなる。接続部3bには抵抗体を嵌め込む凹部Oが形成されている。
【0014】
一対の電圧端子部材の接続部3b間には絶縁部材4が鋏まれ、一対の電圧端子部材間を絶縁する。絶縁部材4には抵抗体を嵌め込む凹部Oが形成されている。一対の電圧端子部材3はそれぞれ電圧端子部3aが内側に位置するように絶縁部材4に接着材等を用いて固定される。その際、一対の電圧端子部3aが、電極12間の幅方向両側に配置され、且つ、それぞれ電極12間の中央に位置するように、第1延出部3c1および第2延出部3c2の長さが設定されている。なお、絶縁部材4は例えばガラエポ基板を用いて形成する。
【0015】
図3は電圧端子部材と絶縁部材を一体化したものを抵抗器に装着する状態を示す。絶縁部材4を間挿した一対の電圧端子部材3を図示するように抵抗体11の外周と凹部Oを合わせ、電極12,12の対向する端面12sの間に嵌め込み固定する。従って、電圧端子部材3の接続部3bは電極12の抵抗体側の端面12sに当接するため、電極の抵抗分の影響が極めて少なく、実抵抗値に基づく高精度の電圧検出が可能となる。
【0016】
そして、電圧端子部材3は、電極12の抵抗体側端面12sに当接する接続部13bと、該接続部13bより他方の電極側に延出する第1延出部3c1と、該第1延出部3c1の終端より電極配置方向と直角方向に延出する第2延出部3c2と、該第2延出部の終端で垂直に起立する電圧端子部3aとからなる。
【0017】
図4は電圧端子部材の形成方法を示す。まず、銅板等を打ち抜き、左図の展開図に示す形状の金属板材を形成する。次に、折り曲げ線Y1に沿って90度折り曲げ、折り曲げ線Y2に沿って逆向きに90度折り曲げる。さらに、折り曲げ線Y3、Y4に沿って同じ向きに90度折り曲げる。これにより、コネクタの接続端子21に装着可能な電圧端子部3aを備えた電圧端子部材3が形成される。
【0018】
図5Aはこの抵抗器の実装状態における正面略図(部分断面図)を示し、
図5Bはその側面略図(部分断面図)を示し、
図5Cは要部を示す。アルミ基板1の配線パターン2に抵抗器の一対の電極12が固定されている。断面角形の電極12の端面中央に断面円形の抵抗体11が突き合わせ溶接により固定されている。
【0019】
電極12の抵抗体側の端面12sには電圧端子部材の接続部3bが固定され、第1延出部3c1が他方の電極12との略中間地点まで延出している。そして、第1延出部より電極配置方向と直角方向に第2延出部3c2が延出し、その終端で電圧端子部3aが垂直に起立している。従って、両電圧端子部3aは両電極12の配置方向の中間で、電流経路に垂直となる同一平面X上に配置されている(
図5C参照)。
【0020】
すなわち、
図5Cにおいて、符号Xは電極12間の電流経路に垂直な平面である。電圧端子部材3の延出部、即ち第1延出部3c1のそれぞれの終端および/または第2延出部3c2は、電極12間の電流経路に垂直な同一平面Xに及んでいる。また、電圧端子部3aのそれぞれは同一平面X内に起立している。ここで、電流経路とは、抵抗器の抵抗体における主たる電流経路を意味し、中心軸方向の抵抗体そのものを意味する。なお、抵抗体の中心軸方向は、
図5C〜
図5Eにおいて示すx軸方向と一致する。また、平面Xは、x軸に垂直なy軸、z軸により形成される。
【0021】
なお、電圧端子部3aは、電流経路に垂直な同一平面X内に起立していなくてもよい。例えば、
図5Dは同一平面Xに対して、略同一角度で一対の電圧検出端子3aを折り曲げた例を示す。また、
図5Eは同一平面Xに対して、略直角に略同一角度で電圧検出端子3aの上部を折り曲げた例を示す。電圧検出端子3aの上部を折り曲げる必要がある場合は、抵抗体から離間した位置で曲げることが望ましい。
【0022】
図5Dの例では、電流経路に垂直な面Xに対してz軸と平行な直線を回転中心とする同じ傾きを有する同一面に、一対の電圧検出端子3aが位置している。言い換えると、一対の電圧検出端子3aはそれぞれ、電流経路に垂直な平面X上であって且つ電流経路と直交するねじれの位置にある線を基準として、左右対称のループを形成するように角度がつけられている。
図5Eの例では、電流経路に垂直な面Xに対してz軸を回転中心として直交する同一面に、一対の電圧検出端子3aの上部が位置している。後述するように、これらの面には抵抗体に流れる電流により発生する磁束Φが鎖交しないので、一対の電圧検出端子3aには起電力が生じない。
【0023】
図5Bにおいて、両電極12の中間位置の幅方向両側に起立した電圧端子部3aには、それぞれコネクタ20の接続部21が挿入されている。コネクタの接続部21からはより線22を介し電極12の両端面で検出した電圧信号が図示しない電圧検出回路に送られ、電流値が検出される。
【0024】
ここで、一対の電圧端子部材(接続部3bおよび第1延出部3c1)と抵抗体11の中心軸Cにより形成される面S1(
図5A参照)には抵抗体11を流れる電流Iによって形成される磁束Φ(抵抗体11の内部に自己インダクタンスLが生じる、および、抵抗体11の外部に相互インダクタンスMが生じる)が鎖交する。
図5Aから分かるように、正面視において、それぞれの第1延出部3c1の終端が重なっていて、電圧端子部3aが重なっている。このため面S1は接続部3bおよび第1延出部3c1により確定され、電圧端子部3aとは無関係になる。
【0025】
図6に示すように、抵抗体11を流れる電流Iにより抵抗体の抵抗Rに基づく検出電圧の他に、抵抗体自体の自己インダクタンスLに基づく誤差電圧と一対の電圧端子部材(接続部3bおよび第1延出部3c1)の相互インダクタンスMに基づく電圧とが重畳する。ここで、コネクタ20の出力端A’B’から抵抗体11側を見たインダクタンスは、自己インダクタンスLに基づく電圧と相互インダクタンスMに基づく電圧とが同一の電流Iで逆方向に形成されるため、L−M、となり、これを「実効的インダクタンスLe」と定義する。従って、Le=L−Mとなる。
【0026】
他方で、
図5Bに示すように、コネクタ20の出力端A’B’から抵抗体11側を見た等価回路には、より線22の一部とコネクタの接続部21と電圧端子部3aと第2延出部3c2からなる面積S2のループが存在する。しかしながら、抵抗体11を流れる電流Iによって生じる磁束Φは抵抗体の周方向に形成され、両電圧端子部3aは電極間における電流経路に垂直な面に対してz軸を回転中心とする同じ傾きを有する同一平面内に配置されているので、この面積S2のループには鎖交しない。従って、コネクタ20の出力端A’B’から抵抗体11側を見た等価回路には、このループについてインピーダンス成分が生じない。すなわち、コネクタ20の信号端子部3aへの挿入状況が変動し、面積S2が変動しても、コネクタ20の出力端A’B’で検出される電圧には影響しない。
【0027】
本発明は抵抗体11の抵抗Rに基づく正規の検出電圧の他に、抵抗体自体の自己インダクタンスLに基づく誤差電圧の影響を取り除くことができる電圧検出回路を提供することにある。このため、
図7に示すように、より線22の出力を電圧検出回路のローパスフィルタ24に接続する。実効的インダクタンスLeを一定値に固定し、ローパスフィルタの回路定数を合わせることで、以下に述べるように、誤差電圧の影響を除去することができる。
【0028】
図7は電圧検出回路に設けた抵抗rとキャパシタンスCとからなるローパスフィルタ24の回路例を示す。係るローパスフィルタ24をコネクタ20のより線22の後段に接続する。そして、コネクタ20の出力端から見た電圧検出回路の入力インピーダンスZinが抵抗器インピーダンスよりも十分大きいと仮定し、実効的インダクタンスLe(=L−M)、抵抗体11の抵抗値R、ローパスフィルタのキャパシタンスC、抵抗値rとした時、
Le/R=C・r
なる関係が得られると、実効的インダクタンスLeによる誤差電圧がキャンセルされる(
図7参照)。
【0029】
すなわち、抵抗体11の自己インダクタンスLに電流Iが流れることによって生じる誤差電圧が第1延出部3c1の相互インダクタンスMおよびローパスフィルタ24により相殺され、出力電圧に現れなくなる。その結果、出力電圧には抵抗体11の抵抗値Rと電流Iの積の電圧のみが取り出される。
【0030】
これにより、電流検出用抵抗器に、特に鋸歯状波電流が流れた時に波形ピークおよびボトム付近で生じる抵抗体の自己インダクタンスLによる大きな誤差電圧が除去され、正規の鋸歯状波電流Iに比例した抵抗値Rによる電圧のみを取り出すことが可能となる。本発明の電流検出用抵抗器では、コネクタ20の差し込み状況によらず、前述のとおり面S1が一定であるため、実効的インダクタンスLeが固定され、これに対応した回路定数のローパスフィルタを組み合わせることで、高周波数成分を含む電流の高精度の検出が可能となる。
【0031】
図8は電圧端子部材の他の実施例を示す。
図4に示す電圧端子部材は構造が複雑であったが、この構造を単純化したものである。この電圧端子部材5は、電極12に接続する接続部5bと、該接続部から他方の電極側に延出する延出部5c1と、該第1延出部より直角方向に延出する第2延出部5c2と、該第2延出部の終端で垂直に起立する電圧端子部5aとからなる。
【0032】
そして、延出部5c1,5c2は、接続部5bから他方の電極側に、電極12間の電極配置方向と直交する電極12間の略中間位置の線L上まで延出している。すなわち、延出部のそれぞれの終端は、電極12間における電流経路に垂直な同一平面まで及んでいる。この電圧端子部材5は、
図4と同様に金属パターンを打ち抜き等により形成し、折り曲げることで容易に形成可能である。
【0033】
次に、この電流検出用抵抗器に好適な抵抗器の構造例について説明する。この抵抗器は、電極間において抵抗体は、径が4mm以下の柱状に構成されたことを特徴としている。抵抗体を細い径にすることによって、高周波電流を検出する場合の表皮効果による抵抗値変動が抑制され、高周波を含む電流に対して高精度の電流検出が可能となる。すなわち、抵抗器自体が良好な高周波特性を有するものを組み合わせることで、より高周波数まで、インダクタンス成分に基づく誤差電圧の影響を排除した電流検出が可能となる。
【0034】
図9は抵抗器の第1実施例の構造を示す。この抵抗器は、Cu等からなる電極12間においてCu−Mn−Ni系合金、Cu−Ni系合金などの抵抗体11は、径が4mm以下の柱状に構成されている。抵抗体11を細い径にすることによって、直流電流の検出を基本とする電流検出用抵抗器において、ある程度迄の高周波電流に対して表皮効果による実効的な電流流路の減少を起こさず、直流電流と同様に高精度の電流検出が可能となる。
【0035】
図示するように、抵抗体11と電極12との接合部分に段差を有する。これにより、抵抗体11が配置された側の電極12の端面12sに電圧検出端子を固定できるため、実効的な抵抗値に基づいてより高精度な電流検出が可能となる。電極12のそれぞれは角柱状であり、電極12の断面における略中心に抵抗体11が固定されている。角柱状の電極を採用することで、面実装し易く、また、実装時に上下の方向性がないので取り扱いに便利である。
【0036】
電極12のそれぞれは、電極配置方向に長く、抵抗体11を挟んだ電極12間の距離の2倍よりも長い。これにより、回路パターンとの実装面積を確保でき、放熱を高めることができる。抵抗体11の径が小さいので、耐久性を確保する上で、抵抗体11からの放熱が重要となる。そして、電極12は抵抗体11の断面積よりも大きな断面積を有している。これにより、配線パターン、電極12、抵抗体11へと、電流経路が徐々に狭まる構成になるため、大電流を測定する場合でも抵抗体への過度な負荷集中を抑制することができる。
【0037】
また、抵抗体11の長さは抵抗体の径の1.5倍よりも小さい。すなわち、抵抗体の径を4mm以下と細くし、且つその長さを短くしている。これにより、高周波の大電流検出に適し、低い抵抗値であり、且つ小型化を実現できる。また、抵抗体11の径が小さいので、あまり長くすると強度不足になる。
【0038】
次に、抵抗器の抵抗値およびサイズの具体例について説明する。製品設計上、抵抗値は0.1mΩまたは0.2mΩに設定している。断面円形のCu−Mn−Ni系合金線を用い0.2mΩの抵抗値とする場合、直径φが1mmに対して長さNが0.36mm、直径φが2mmに対して長さNが1.42mm、直径φが3mmに対して長さNが3.2mmとなる。つまり抵抗体の長さNは直径φの1.5倍よりも短い長さにしている。
【0039】
抵抗体の直径φが2mmに対して長さNが1.42mmの場合(抵抗値0.2mΩの場合)、電極12の電極配置方向長さMは5mmとし、電極幅Pは3mmとしている。これらのサイズを採用することで、良好な抵抗値の周波数特性、放熱性等をバランスよく実現できる。
【0040】
図10は抵抗器の第2実施例を示す。第1実施例との相違点は、電極12aの抵抗体との当接面に凹部Qを備え、該凹部Qに抵抗体11の端部を嵌め込んで固定したものである。これにより、抵抗体の位置決め作業が容易となり、且つ、抵抗体と電極との接合をより容易に形成することができる。
【0041】
図11は抵抗器の第3実施例を示す。この実施例では、電極12bがパイプ状になっていて、細長い抵抗体11の両端部が電極12bを貫通した構造になっている。この実施例でも、抵抗体11の径を細くすることで、高周波電流が流れた時の表皮効果による抵抗値変動を抑制することができる。そして、抵抗体が電極12bの内部を貫通した構造となっていることから、スェージング加工(パイプ状の電極に抵抗体を挿入し、電極を外側から加圧して絞ることで固定する方法)や、焼き嵌め(パイプ状の電極を加熱膨張させて穴を広げ、抵抗体を挿入してから冷却して固定する方法)の適用が可能である。
【0042】
図12は抵抗器の第4実施例を示す。この実施例では、抵抗体が中央の円柱状抵抗体11とその両端の扁平状抵抗体11aから構成されている。そして、扁平状抵抗体11aの上下両面に板状の電極12cを備えている。従って、中央に細い径の円柱状の抵抗体とその両端に角柱状の電極を備えた構造は上記の各実施例と共通である。この例でも、角柱状の電極12cを備えることから、面実装が容易、放熱性が向上する、等のメリットも上記の各実施例と同様である。
【0043】
なお、上記の電圧端子部材3,5において、電圧端子部3a,5aは垂直に起立した構造について例示している。しかしながら、電圧端子部3a,5aが起立せず平坦な構造であっても、コネクタの接続部分21が平面状の電圧端子部3a,5aに接続させることで同様の作用効果が得られる。同様に、延出部は、接続部より他方の電極側に延出する第1延出部3c1,5c1と、該第1延出部より電極配置方向と直角方向に延出する第2延出部3c2,5c2からなると例示している。しかしながら、接続部より他方の電極側に延出する延出部は、両電極12間において電極配置方向と直交する例えば両電極間の中間位置の直線Lまで及んでいて(
図8参照)、その終端に電圧端子部3a、5aが形成されていれば、同様の作用効果が得られる。
【0044】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。