【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年10月3日、http://www.rehab.go.jp/ri/event/2012openhouse/kaihatsu6.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような電動車椅子において、その操作履歴を計測するシステムを導入するためには、操作部から操作部の制御マイコンに至る回路の一部にアナログ電圧計測器を付加する方法や、操作部の制御マイコンに操作量を表す信号を出力させるためのデジタル出力機能を設ける方法がある。しかし、これらの方法では、電動車椅子の電気系統に改変を加えるため、手間や費用がかかるだけでなく、改変後の安全性が保証されず、実生活環境での長期使用が難しいという問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、容易に電動車椅子の操作状態を計測することが可能な操作状態計測システム、操作状態計測方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る操作状態計測システムは、
ユーザの操作により傾きが変化する操作部を備え、該操作部の傾きに応じて制御される電動車椅子の操作状態を計測する操作状態計測システムであって、
前記操作部に着脱可能であって、前記操作部の所定方向の加速度を検出する操作加速度検出部と、
前記操作加速度検出部により検出された加速度に基づいて、前記ユーザによる前記操作部の操作状態を取得する操作状態取得部と、
現在時刻を計時する計時部と、
前記電動車椅子の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記操作状態取得部により取得された操作状態と、前記計時部により取得された、当該操作状態の取得時刻と、前記位置情報取得部により取得された、当該取得時刻における位置情報と、を対応付けて記憶する操作履歴記憶部と、
を備えることを特徴する。
【0007】
前記操作状態取得部は、前記操作部の操作状態として、前記操作部の操作方向と、当該操作方向における操作量と、を取得してもよい。
【0008】
前記電動車椅子の前記所定方向の加速度を検出する車体加速度検出部をさらに備え、
前記操作状態取得部は、前記
操作加速度検出部により検出された加速度と、前記車体加速度検出部により検出された加速度と、に基づいて、前記ユーザによる前記操作部の操作状態を取得してもよい。
【0009】
前記車体加速度検出部は、前記操作部の近傍に設けられてもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る操作状態計測方法は、
ユーザの操作により傾きが変化する操作部を備え、該操作部の傾きに応じて制御される電動車椅子の操作状態を計測する操作状態計測方法であって、
前記操作部に着脱可能な操作加速度検出部から、前記操作部の所定方向の加速度を取得する操作加速度取得ステップと、
前記操作加速度取得ステップにおいて取得された加速度に基づいて、前記ユーザによる前記操作部の操作状態を取得する操作状態取得ステップと、
前記操作状態取得ステップにおいて取得された操作状態と、現在時刻を計時する計時部から取得した、当該操作状態の取得時刻と、前記電動車椅子の位置情報を取得する位置情報取得部から取得した、当該取得時刻における位置情報と、を対応付けて操作履歴記憶部に記録する履歴記憶制御ステップと、
を備えることを特徴する。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
ユーザの操作により傾きが変化する操作部を備え、該操作部の傾きに応じて制御される電動車椅子の前記操作部に着脱可能な操作加速度検出部から、前記操作部の所定方向の加速度を取得する操作加速度取得手段、
前記操作加速度取得手段により取得された加速度に基づいて、前記ユーザによる前記操作部の操作状態を取得する操作状態取得手段、
前記操作状態取得手段により取得された操作状態と、現在時刻を計時する計時部から取得した、当該操作状態の取得時刻と、前記電動車椅子の位置情報を取得する位置情報取得部から取得した、当該取得時刻における位置情報と、を対応付けて操作履歴記憶部に記録する履歴記憶制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容易に電動車椅子の操作状態を計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る操作状態計測システム1の概略構成を示すブロック図、
図2は、操作状態計測システム1が導入された電動車椅子2の外観斜視図である。
図1及び
図2に示すように、操作状態計測システム1は、電動車椅子2のユーザによる操作履歴を計測するためのシステムであって、操作加速度検出部100と、車体加速度検出部200と、A/D変換装置300と、操作状態計測装置400と、情報処理装置500と、から構成される。
【0018】
電動車椅子2は、バッテリーを電源として電動モーターを駆動することにより走行する車椅子である。電動車椅子2は、ユーザが着座するシート部210と、シート部210の左右に設けられたアームレスト部220と、アームレスト部220の一方の前方端部に設けられた操作部230と、を有する。
【0019】
操作部230は、電動車椅子2を運転する際にユーザが操作する装置である。操作部230は、具体的には、ユーザの操作により傾きが変化するジョイスティック231を有し、ジョイスティック231の操作方向及び操作量を表す操作信号を電動車椅子2の制御回路(図示せず)に出力する。電動車椅子2の制御回路は、その操作信号に基づいて、電動車椅子2の走行を制御する。
【0020】
操作加速度検出部100は、操作部230の加速度を検出する。
図3に、操作加速度検出部100の概略構成を表す垂直方向断面図を示す。操作加速度検出部100は、具体的には
図3に示すように、加速度センサ110と、加速度センサ110を操作部230に着脱可能に保持するためのキャップ部120と、から構成される。
【0021】
加速度センサ110は、ジョイスティック231の3軸方向の加速度を検出する加速度センサである。加速度センサ110は、配線(図示せず)によりA/D変換装置300に接続され、加速度センサ110の出力信号は、A/D変換装置300によりアナログ信号からデジタル信号に変換され、操作状態計測装置400へ入力される。
【0022】
キャップ部120は、ジョイスティック231の上面及び側面を覆うキャップ状に形成され、ジョイスティック231に着脱可能に構成されている。キャップ部120の内側上端部には、加速度センサ110が固定されている。従って、キャップ部120をジョイスティック231に被せることにより、加速度センサ110をジョイスティック231に着脱可能に保持することができる。なお、ユーザの操作によりキャップ部120がジョイスティック231から外れることを防ぐため、キャップ部120はジョイスティック231にネジ止めされていてもよい。
【0023】
車体加速度検出部200は、電動車椅子2の加速度を検出する。車体加速度検出部200は、具体的には、電動車椅子2の3軸方向の加速度を検出する加速度センサから構成される。車体加速度検出部200は、配線(図示せず)によりA/D変換装置300に接続され、その出力信号は、A/D変換装置300によりアナログ信号からデジタル信号に変換され、操作状態計測装置400へ入力される。
【0024】
ここで、操作加速度検出部100が検出する加速度は、重力加速度と、電動車椅子2の移動により生じる加速度と、の影響を受ける。従って、これらの加速度の影響を除去し、ユーザの操作によるジョイスティック231の加速度、すなわち、電動車椅子2の本体に対する相対的なジョイスティック231の加速度を取得するために、本実施形態では、操作加速度検出部100により検出された加速度から、車体加速度検出部200により検出された加速度を差し引くことにより、ユーザの操作によるジョイスティック231の加速度を取得する。
【0025】
また、車体加速度検出部200は、操作部230の近傍のアームレスト部220に設けられる。操作加速度検出部100及び車体加速度検出部200が設けられる位置が離れていると、電動車椅子2自体の変形により、操作加速度検出部100が影響を受ける電導車椅子2の移動により生じる加速度と、車両加速度検出部200が影響を受ける電導車椅子2の移動により生じる加速度とに差が生じる。従って、車体加速度検出部200は、この差の影響が無視できる程度に、操作部230の近傍に設けられることが好ましい。
【0026】
A/D変換器装置300は、操作加速度検出部100及び車体加速度検出部200からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、操作状態計測装置400に出力する。また、A/D変換装置300は、リチウムイオン電池等のバッテリーを備え、操作加速度検出部100、車体加速度検出部200、及び操作状態計測装置400に電源を供給可能である。
【0027】
操作状態計測装置400は、操作加速度検出部100及び車体加速度検出部200により検出された加速度に基づいて、ユーザによる操作部230の操作状態を取得する。操作状態計測装置400は、具体的には、ノート型PC(Personal Computer)や、タブレット型端末装置、携帯電話、スマートフォンといった、電動車椅子2に搭載可能な情報処理装置から構成される。また、操作状態計測装置400は、ネットワーク600を介して、PCやサーバから構成される情報処理装置500と通信可能であり、取得した操作状態を情報処理装置500に送信可能である。また、操作状態計測装置400は、ネットワーク600を介さずに情報処理装置500と通信可能に構成されてもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係る操作状態計測装置400のハードウェア構成について説明する。
【0029】
図4に示すように、操作状態計測装置400は、制御部410と、ROM(Read Only Memory)420と、RAM(Random Access Memory)430と、表示部440と、通信部450と、外部インターフェース(I/F)460と、操作部470と、計時部480と、を備えている。
【0030】
制御部410は、例えば、CPU(Central Processing Unit)から構成されており、操作状態計測装置400の全体の制御を行う。
【0031】
ROM420は、制御部410が操作状態計測装置400全体を制御するためのプログラムやデータを格納する不揮発性メモリである。例えば、ROM420は、制御部410が後述する操作状態計測処理を実行するためのプログラムや、後述する操作状態履歴テーブル421を格納している。
【0032】
RAM430は、は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成される。制御部410は、ROM420に記憶されているプログラムをRAM430にロードし、作業領域として用いる。
【0033】
表示部440は、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイ装置から構成される。表示部440は、制御部410の制御の下で、計測した操作状態や、ユーザに知らせるべき情報を表示する。
【0034】
通信部450は、例えば、無線通信ユニット等から構成され、必要に応じて所定のネットワークに接続し、情報処理装置500との通信を行う。
【0035】
外部インターフェース460は、外部装置と操作状態計測装置400とを接続するためのインターフェースである。本実施形態において、外部インターフェース460は、A/D変換装置300と接続され、A/D変換装置300から操作加速度検出部100及び車体加速度検出部200により検出された加速度を表すデジタル信号の入力を受け付ける。
【0036】
操作部470は、ユーザが操作状態計測装置400を操作するためのタッチパネルやボタン、キー等の入力装置から構成される。操作部470は、ユーザから、例えば、操作状態の測定を開始または終了する旨の入力操作を受け付け、制御部410に入力する。
【0037】
計時部480は、現在時刻を計時するものであり、例えば、タイマから構成される。
【0038】
次に、操作状態計測装置400の制御部410の機能的構成について説明する。
図5は、本実施形態に係る操作状態計測装置400の制御部410の機能的構成を表すブロック図である。
図5に示すように、制御部410は、操作加速度取得部411、車体加速度取得部412、操作状態取得部413、履歴記憶制御部414、通信制御部415、として機能する。
【0039】
操作加速度取得部411は、操作加速度検出部100により検出された加速度を取得する。具体的には、操作加速度取得部411は、所定のサンプリング間隔で、操作加速度検出部100により検出された加速度を表すデジタル信号を、外部I/F460を介してA/D変換装置300から取得する。
【0040】
車体加速度取得部412は、車体加速度検出部200により検出された加速度を取得する。具体的には、車体加速度取得部412は、所定のサンプリング間隔で、車体加速度検出部200により検出された加速度を表すデジタル信号を、外部I/F460を介してA/D変換装置300から取得する。
【0041】
操作状態取得部413は、操作加速度取得部411により検出された加速度と、車体加速度取得部412により検出された加速度とに基づいて、ユーザによる操作部230の操作状態を取得する。具体的には、操作状態取得部413は、操作状態として、ユーザによるジョイスティック231の操作方向(前後方向及び左右方向)と、各操作方向における操作量(ジョイスティック231の傾斜角度)を取得する。
【0042】
履歴記憶制御部414は、操作状態取得部413により取得された操作状態と、その操作状態を取得した時刻とを対応付けて、操作状態履歴テーブル421に記憶させる。
【0043】
図6に操作状態履歴テーブル421に格納されるデータの一例を示す。
図6に示す例では、操作開始時刻をt=0[sec]とした場合の、操作状態取得部413により取得した操作状態と、その操作状態の取得時刻と、をそれぞれ縦軸及び横軸として折れ線グラフで表している。また、
図6(a)は、操作状態として、ユーザによるジョイスティック231の左右方向の操作における操作角度(左方向が正の値、右方向が負の値)を取得した場合のグラフである。また、
図6(b)は、操作状態として、ユーザによるジョイスティック231の前後方向の操作における操作角度(前方向が正の値、後方向が負の値)を取得した場合のグラフである。このように、操作状態履歴テーブル421は、操作状態取得部413により取得された操作状態(具体的には、前後方向及び左右方向の操作角度)の時間履歴を表すデータを格納する。
【0044】
通信制御部415は、通信部450または外部インターフェース460を介して、情報処理装置500等の外部装置からの操作状態履歴テーブル421に記憶されたデータの送信要求に応じて、操作状態履歴テーブル421に記憶されたデータを送信する。
【0045】
次に、本実施形態に係る操作状態計測装置400の動作について、図面を参照して説明する。
図7は、本実施形態に係る操作状態計測装置400の制御部410が実行する操作状態計測処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、この操作状態計測処理は、上述したROM420内にプログラムとして予め記憶されており、制御部410がプログラムを読み出して実行することで、実際の処理が行われるものとする。
【0046】
操作状態計測装置400の制御部410は、例えば、ユーザによる操作部470への操作を契機として
図7に示す操作状態計測処理を開始する。
【0047】
まず、操作加速度取得部411は、所定のサンプリング間隔で、操作加速度検出部100から出力される加速度を表す検出信号を取得する(ステップS11)。
【0048】
また、車体加速度取得部412は、所定のサンプリング間隔で、車体加速度検出部200から出力される加速度を表す検出信号を取得する(ステップS12)。
【0049】
次に、操作状態取得部413は、ステップS11において操作加速取得部411が取得した加速度と、ステップS12において車体加速度取得部412が取得した加速度とに基づいて、ユーザによるジョイスティック231の操作状態を取得する(ステップS13)。
【0050】
具体的には、操作状態取得部413は、操作加速度取得部411により取得された加速度から、車体加速度取得部412により検出された加速度を差し引くことにより、ユーザの操作によるジョイスティック231の加速度を取得する。そして、操作状態取得部413は、取得したジョイスティック231の加速度に基づいて、操作状態として、ジョイスティック231の操作方向とその操作量とを算出する。
【0051】
履歴記憶制御部414は、ステップS13において操作状態を取得した時刻を計時部480から取得し、当該操作状態と対応付けて操作状態履歴テーブル421に記憶させる(ステップS14)。そして、ステップS11に処理を戻す。
【0052】
制御部410は、以上のステップS11〜S14の処理を繰り返し実行する。また、制御部410は、例えばユーザから操作部470を介して操作状態計測処理の終了を示す入力を受け付けた場合、操作状態計測処理を終了する。
【0053】
以上のように構成される操作状態計測システム1によれば、操作部230に着脱可能な操作加速度検出部100を取り付けることにより、ユーザによる操作部230の操作状態を測定することができる。従って、操作部230の制御回路自体に手を加えることなく、容易に操作部230の操作状態を取得することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態によって限定されるものではない。
【0055】
例えば、上記の実施形態に係る操作状態計測システム1は、電動車椅子2の位置情報を取得するGPS(Global Positioning System)装置をさらに備えてもよい。このような構成において、操作状態計測装置400は、操作加速度検出部100及び車体加速度検出部200から加速度を取得するとともに、GPS装置から位置情報を取得し、操作状態と位置情報とを対応付けて操作状態履歴テーブル421に記録することができる。従って、電動車椅子2のユーザビリティや安全性、ユーザの操作技能等の評価に、操作状態だけでなく、位置情報も活用することができる。
【0056】
また、上記の実施形態に係る操作状態計測システム1において、操作加速度検出部100及び車体加速度検出部200は、さらに角加速度を検出するジャイロセンサを備えてもよい。このような構成により、操作部230の回転操作の履歴を取得することができる。
【0057】
また、本発明に係る操作状態計測装置は、専用の装置によらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、ネットワークに接続されているコンピュータに、上記動作を実行するためのプログラムを、コンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体(CD−ROM、MO等)に格納して配布し、当該プログラムをコンピュータシステムにインストールすることにより、上述の処理を実行する操作状態計測装置を構成してもよい。
【0058】
また、コンピュータにプログラムを提供する方法は任意である。例えば、プログラムは、通信回線の掲示板(BBS)にアップロードされ、通信回線を介してコンピュータに配信されてもよい。また、プログラムは、プログラムを表す信号により搬送波を変調した変調波により伝送され、この変調波を受信した装置が変調波を復調してプログラムを復元するようにしてもよい。そして、コンピュータは、このプログラムを起動して、OSの制御のもと、他のアプリケーションと同様に実行する。これにより、コンピュータは、上述の処理を実行する操作状態計測装置として機能する。