(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064324
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】ルーバー
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20170116BHJP
E06B 9/36 20060101ALI20170116BHJP
E06B 7/08 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
E04B1/76 300
E06B9/36 F
E06B7/08
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-5499(P2012-5499)
(22)【出願日】2012年1月13日
(65)【公開番号】特開2013-144885(P2013-144885A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2014年12月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】赤川 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】杉本 英夫
(72)【発明者】
【氏名】辻 芳人
(72)【発明者】
【氏名】松井 宣明
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−281178(JP,A)
【文献】
特開2008−208563(JP,A)
【文献】
特開2011−058319(JP,A)
【文献】
実開昭62−080990(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62−1/99
F24F 1/00
E06B 9/24−9/388
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外方に配置される羽根部を有したルーバーであって、
前記羽根部の外形をなし、複数の通気孔が貫通形成された囲い部材と、
前記囲い部材が区画形成する空間に収容されて保持される複数の塊状の保水材と、を有し、
前記複数の通気孔は、前記囲い部材の側壁部のうちの少なくとも互いに対向する一対の側壁部に貫通形成されており、
前記保水材同士の間には隙間が形成されており、前記隙間には、前記通気孔から取り込まれた外気が通過することを特徴とするルーバー。
【請求項2】
請求項1に記載のルーバーであって、
前記複数の保水材は、幾つかの群に小分けされているとともに、前記群毎に、透水性且つ通気性の袋部材に前記保水材は収容されており、
前記袋部材は、不織布又は織布であることを特徴とするルーバー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のルーバーであって、
前記囲い部材は、端部が開口した無蓋箱体であり、前記開口は露出していることを特徴とするルーバー。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のルーバーであって、
前記保水材に給水する給水機構を有し、
前記囲い部材の上方には、前記給水機構の給水口部が設けられ、
前記給水口部から前記囲い部材内の前記保水材に向けて水を落下供給し、
前記囲い部材内の各前記保水材に順次上から下へと水が流下して、上下方向の前記保水
材が冷却されることを特徴とするルーバー。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のルーバーであって、
前記囲い部材が区画形成する前記空間には、前記保水材と共に、配管が収容されており、
前記配管の一方の管端からは、前記建物の屋内空調に使用される熱媒体が送り込まれ、
前記配管の他方の管端からは、前記熱媒体が送出されることを特徴とするルーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外方に配置される羽根部を有したルーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファサード等の建物の外方位置には、日射遮蔽目的等でルーバーが配置されている。かかるルーバーは、互いの間に間隔を空けて並ぶ複数の羽根部を有し、これら羽根部によって建物の屋内への日差しの侵入を防ぐようにしている。
しかし、夏季のように日射が強い時期や、西日を受ける時間帯などには、アルミニウム等の金属製の羽根部が日射を吸収して高温化してしまい、その結果、羽根部自体が輻射熱源となって、その周辺の屋外空間や屋内空間を暑熱環境にしてしまうおそれがあった。
この点につき、特許文献1には、ルーバーの複数の羽根部内に冷却水の流路を設けて水冷することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−116741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、羽根部内に冷却水の流路を形成すると同羽根部の構造が複雑化し、加工費等の増大を通してコストアップを招く。
また、冷却水は、羽根部に保水されて、羽根部表面から気化することによって冷却されるので、羽根部の保水性を高める必要がある。その場合、外装材としての強度を確保しつつ、保水性を高めなければならず、セラミック製の材料等では、その両立が難しいといえる。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、外装材としての強度の確保と高い保水性との両立を図ることができるルーバーであって、冷却水の蒸発を促進することでルーバーの羽根部の冷却効果が高められた安価なルーバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
建物の外方に配置される羽根部を有したルーバーであって、
前記羽根部の外形をなし、複数の通気孔が貫通形成された囲い部材と、
前記囲い部材が区画形成する空間に収容されて保持される複数の塊状の保水材と、を有し、
前記複数の通気孔は、前記囲い部材の側壁部のうちの少なくとも互いに対向する一対の側壁部に貫通形成されており、
前記保水材同士の間には隙間が形成されており、前記隙間には、前記通気孔から取り込まれた外気が
通過することを特徴とする。
【0007】
また、複数の保水材はそれぞれ塊状であり、囲い部材の上記空間に収容された状態では、保水材同士の間に隙間が形成されている。そして、かかる隙間は、囲い部材の通気孔から取り込まれた外気の通り道となる。よって、当該外気の通過によって、保水材の表面等に保持された水の蒸発が促進されるので、その気化熱による保水材の冷却が効果的に行われ、これにより、ルーバーの羽根部の冷却効果を大幅に高めることができる。
更には、羽根部の構成は、囲い部材内の空間に複数の塊状の保水材を配置しただけの(例えば、積み上げただけの)簡単な構成なので、当該羽根部を安価に製造可能であり、その結果、ルーバーを安価に提供可能となる。
【0008】
前記複数の保水材は、幾つかの群に小分けされているとともに、前記群毎に、透水性且つ通気性の袋部材に前記保水材は収容されており、
前記袋部材は、不織布又は織布であることとしてもよい。
【0009】
前記囲い部材は、端部が開口した無蓋箱体であり、前記開口は露出していることとしてもよい。
【0010】
前記保水材に給水する給水機構を有し、
前記囲い部材の上方には、前記給水機構の給水口部が設けられ、
前記給水口部から前記囲い部材内の前記保水材に向けて水を落下供給し、
前記囲い部材内の各前記保水材に順次上から下へと水が流下して、上下方向の前記保水
材が冷却されることとしてもよい。
【0011】
請求項5に示す発明は、請求項1乃至4の何れかに記載のルーバーであって、
前記囲い部材が区画形成する前記空間には、前記保水材と共に、配管が収容されており、
前記配管の一方の管端からは、前記建物の屋内空調に使用される熱媒体が送り込まれ、前記配管の他方の管端からは、前記熱媒体が送出されることを特徴とする。
上記請求項5に示す発明によれば、配管内の熱媒体は、囲い部材内の保水材を介して冷却されるので、当該熱媒体を建物の屋内空調に利用することができる。よって、屋内空調のエネルギー効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外装材としての強度の確保と高い保水性との両立を図ることができるルーバーであって、冷却水の蒸発を促進することでルーバーの羽根部の冷却効果が高められた安価なルーバーを提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態のルーバー10,10…が設けられた建物1の外観斜視図である。
【
図3】
図3Aは、後述する羽根部20を一部破断して示す拡大側面図であり、
図3Bは、
図3A中のB−B断面図である。
【
図4】複数の袋部材29,29…に小分けされて収容された保水材28,28…の概略側面図である。
【
図5】羽根部20を緑化したルーパー10の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
===本実施形態===
図1は、本実施形態のルーバー10,10…が設けられた建物1の外観斜視図である。この例では、建物1は複数階の一例としての8階建てのビルであり、窓W,W…を有する外壁部3の屋外側には、外装材としてのルーバー10,10…が外壁部3に支持される形で設けられている。そして、これらルーバー10,10…により建物1の屋内への日差しが緩和されている。
【0015】
なお、この例では、外壁部3において日差しを和らげたい部分に選択的にルーバー10を設けているため、不規則なパターンで配置されているが、何等これに限らない。例えば意匠的観点から千鳥パターン等の規則性を有したパターンで配置しても良いし、或いは外壁部3の全面に亘ってルーバー10,10…を配置しても良い。
また、この例では、一つのルーバー10により2階分の遮光を行うようにしている。つまり、ルーバー10は2階分の階高に相当する高さ寸法に形成されているが、かかる高さ寸法は何等これに限らない。例えば、1階分又は3階以上の複数階分の遮光を行うように、1階分又は3階分以上の階高に相当する高さ寸法に設定しても良い。
【0016】
図2は、本実施形態のルーバー10の斜視図である。なお、
図2では一部の構成を破断して示している。また、
図3Aは、後述する羽根部20を一部破断して示す拡大側面図であり、
図3Bは、
図3A中のB−B断面図である。
【0017】
図2に示すように、このルーバー10は、遮光用に略平板形状(略扁平形状)の複数の羽根部20,20…を有した縦型ルーバー10である。すなわち、羽根部20の長手方向を鉛直方向に向けながら、複数の羽根部20,20…が、建物1の外壁部3の壁面3aに沿って水平方向に間欠的に並んで配置されている。
なお、同壁面3aに対する各羽根部20の向きは、遮光条件に応じて適宜設定される。例えば、この例では、同壁面3aに対して羽根部20の幅方向が直交方向を向いているが、場合によっては、同壁面3aに対して各羽根部20の幅方向を平行に向けても良いし、同壁面3aに対して所定の傾き角で羽根部20の幅方向が傾斜するように各羽根部20を配置しても良い。
【0018】
各羽根部20は、当該羽根部20の外形をなす囲い部材22と、囲い部材22の内方に収容・保持される複数の塊状の保水材28,28…と、を有している。そして、各羽根部20の上方には、保水材28,28…に給水すべく給水機構30の給水口部31,31…が配置されており、更に、囲い部材22は、上端22euが開口した無蓋箱体である。よって、当該上端22euの開口を導水口として用いて、上記給水口部31から水を囲い部材22内へ落下供給することにより、囲い部材22内の各保水材28,28…に順次上から下へと水が流下して、上下方向の概ね全ての保水材28,28…が冷却され、その結果、日射起因のルーバー10の高温化は防止される。ちなみに、給水機構30の給水口部31は、例えばノズルや点滴パイプであり、かかる給水口部31を、羽根部20に係る囲い部材22の上端22euに設けても良いし、羽根部20における上下方向の中間位置に設けても良い。
【0019】
また、
図2、
図3A、及び
図3Bに示すように、囲い部材22が具備する四つの側壁部22WL,22WL,22WS,22WSのうちで少なくとも互いに対向する一対の側壁部22WL,22WLには、複数の通気孔22H,22H…が貫通形成されており、更に、囲い部材22内で互いに隣り合う塊状の保水材28,28…同士の間には隙間S,S…が形成されている。そして、かかる隙間S,S…は、上記通気孔22H,22H…から囲い部材22内に取り込まれた外気の通り道となる。よって、当該外気の通過によって、保水材28,28…が保持する水の蒸発が促進されるので、水の気化熱による保水材28,28…の冷却がより効果的に行われ、その結果、ルーバー10の各羽根部20の冷却効果を飛躍的に高めることができる。なお、このとき、保水材28,28…は塊状であるので、その表面積は大きく、これにより高い保水性を奏し得て、このことも冷却性の向上に寄与する。
【0020】
囲い部材22は、既述のように四つの側壁部22WL,22WL,22WS,22WSを有する略扁平形状の箱部材であり、不図示のステイ部材等を介して壁面3aに支持されている。そして、下端22edには底板等の底部(不図示)を有し、当該底部によって下方から保水材28,28…の重量を支持している。但し、囲い部材22の下端近傍に、底部の代わりとなって、保水材28,28…の重量を支持し得るもの(例えば1階の場合には地面Gや床部Bがこれに該当する)が存在する場合には、囲い部材22に底部を設けずに同囲い部材22の下端22edは開口されていても良い。
【0021】
囲い部材22の素材としては、例えば、鋼やアルミニウム等の金属や木、樹脂などが挙げられ、この例では、耐候性を高めるべく溶融亜鉛メッキ鋼が使用されている。但し、何等上述に限らず、つまり、囲い部材22内の中空空間に保水材28,28…を収容しても変形しない程度の剛性を有した材料であって、外装材としての強度を有する材料であれば、上記以外の材料を用いても良い。
【0022】
かかる囲い部材22は、各側壁部22WL,22WL,22WS,22WSに対応するサイズの各平板を箱状に連結することで作成されても良いし、又は、全ての側壁部22WL,22WL,22WS,22WSに相当する面積を有した一枚の平板を、囲い部材22の三つの角部に相当する各位置で屈曲するとともに、同平板の端縁同士を連結して残る一つの角部を形成することで、囲い部材22を作成しても良いし、或いは、二つの略断面コ字形状の部材23,23同士を、略断面ロ字形状になるように突き合わせつつボルト等の連結部材で連結固定することで作成しても良い。この例では、三番目の方法たる略断面コ字形状の部材23,23を用いる方法によって、囲い部材22を形成している。このような略断面コ字形状の部材23の一例としては、日鐵ファインフロア(商品名:日鐵住金建材(株)製)等を例示できるが、何等これに限らず、例えば鋼製平板を屈曲して作成しても良い。
【0023】
ところで、この例では、
図2、
図3A、及び
図3Bに示すように、通気孔22H,22H…は、四つの側壁部22WL,22WL,22WS,22WSのうちで面積の大きい方の一対の側壁部22WL,22WLにのみ形成されており、これにより、通気孔22H,22H…の開口面積を大きくして外気の通過量の増大を図っている。但し、四つの側壁部22WL,22WL,22WS,22WSのうちで面積の小さい方の一対の側壁部22WS,22WSのみに、通気孔22H,22H…が形成されていても良く、或いは、これら四つの全ての側壁部22WL,22WL,22WS,22WSに通気孔22H,22H…が形成されていても良い。
【0024】
また、この例では、通気孔22Hの形状は、水平方向に長い横長矩形形状であり、当該横長矩形形状の通気孔22Hが、上下方向に複数並んで形成されているが、通気孔22Hの形状や配置パターンは何等これに限るものではなく、例えば真円等の円形形状であっても良いし、三角形や五角以上の多角形でも良い。また、
図2の例では、水平方向については通気孔22Hが一つだけ設けられているが、水平方向に複数の通気孔を並べて配置しても良い。なお、かかる通気孔となり得る孔が予め形成された平板としてはパンチングメタル材等を例示できて、つまりパンチングメタル材を用いて囲い部材22を作成しても良い。
【0025】
保水材28としては、例えば、軽石、セラミックボール、ハイドロボール(玉粘土を発泡させたもの)、人工軽量骨材、パミス(多孔質火成岩の破砕したもの)、レンガチップ、瓦チップ、石材などを使用可能である。但し、何等上述に限るもではない。すなわち、囲い部材22内に積み上げ収容した際に変形し難い塊状の部材であって保水性を有する部材であれば、上述以外のものでも適用可能であり、例えば多孔質の塊材でも良い。なお、ルーバー10を建物1の高所に配置する場合には、保水材28は軽量な方が好ましく、その観点からは、上述のなかで比較的低密度の素材となる軽石やセラミックボール、ハイドロボール等が好ましい。
【0026】
また、望ましくは、保水材28として、その体積が1cm
3以上のものを用いると良く、更に望ましくは、その体積が3cm
3以上のものを用いると良く、そうすれば、保水材28,28…同士の間の隙間Sの目詰まりを防いで、当該隙間S,S…を確実に形成可能となる。
【0027】
更に、望ましくは、
図4の概略側面図に示すように、囲い部材22内の複数の保水材28,28…は、幾つかの群G28,G28…に小分けされているとともに、当該群G28毎に、透水性且つ通気性の袋部材29に、塊状の保水材28,28…が二つ以上収容されて、当該袋部材29の口部(不図示)は閉塞されていると良い。そして、このようになっていれば、万一、経年劣化等により保水材28が割れる等して複数の分離片が生じた場合であっても、保水材28は袋部材29に収容されて纏められているので、これら分離片は袋部材29内に留められる。よって、囲い部材22の通気孔22Hからの抜け落ちを確実に防止できて、かかるルーバー10が高所に設けられた場合にも高い安全性を確保できる。なお、袋部材29の素材の一例としては、不織布や織布等が挙げられる。
【0028】
また、場合によっては、
図5の概略斜視図に示すように、各羽根部20の下方、または下部側方に隣接させて植栽基盤40Bを収容したプランター40を設置しても良い。このようにすれば、プランター40にヘデラやオオイタビ等のつる植物を植栽することで、当該植物に羽根部20の囲い部材22を登攀させることができて、これにより、当該植物によって囲い部材22の側壁部22WLの壁面が覆われて羽根部20の緑化が図られ、当該羽根部20の緑化も、日照起因の羽根部20の高温化の抑制に寄与するようになる。なお、つる植物の登攀を補助すべく、囲い部材22の側壁部22WLの壁面に上下方向に沿わせつつワイヤやネット(不図示)を敷設しても良い。なお、かかるワイヤ42やネットは、
図5に示すように、水平方向に隣り合う羽根部20,20同士の間の空間(例えば中間位置)に配置されても良く、この場合には、羽根部20の側壁部22WLの壁面は蔓植物で覆われないが、その周辺近傍の緑化を図れるので、上述と同様の高温化抑制効果を奏し得る。
【0029】
また、給水機構30の給水口部31から保水材28,28…へ供給した水の未蒸発分は、羽根部20の下端部に到達して余剰水となるが、当該余剰水をプランター40に供給してつる植物の栽培に供しても良い。なお、
図5のようにプランター40を囲い部材22の下方に設けた場合には、余剰水はそのまま直接プランター40に落下供給されるが、他方、プランター40を囲い部材22の下部側方に設置する場合には、囲い部材22の下端部には、囲い部材22内の中空空間からプランター40の植栽基盤40Bへと余剰水を誘導するための導水管(不図示)が設けられることになる。
ちなみに、羽根部20,20同士の間の空間は、防風効果によって風が弱められるので、特に高層階の植物にとっては、風ストレスが緩和されており、また、羽根部20が冷却されているので、つる植物の日射による熱ストレスが緩和されており、よって、当該つる植物にとっても良好な生育環境になっている。
【0030】
図6は、ルーバー10aの変形例の斜視図である。上述の実施形態では、二つの略断面コ字形状部材23,23を互いに突き合わせることにより、羽根部20の箱状の囲い部材22を形成していたが、この変形例では、略断面コ字形状部材23を一つだけ用いることにより、羽根部20aの囲い部材22aを形成している。そして、これにより、囲い部材22aは、概ね三つの側壁部23WL,23WS,23WSしか有さず、つまり四側方のうちの一方は、略全面に亘って開口しているが、かかる囲い部材22aが区画する空間に、保水材28,28…を収容して保持可能であれば、このように構成しても良い。ちなみに、
図6の例では、保水材28、28…を保持させる目的で、面積の大きい側壁部23WLの両脇に連続する面積の小さい方の一対の側壁部23WS,23WSには、それぞれ端縁にリブ部23b,23bが設けられている。すなわち、当該リブ部23b,23bによって、保水材28,28…を引っ掛けて保持するようになっている。
【0031】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0032】
上述の実施形態では、ルーバー10の一例として縦型ルーバー10を例示したが、何等これに限るものではなく、横型ルーバー10bとして構成しても良い。すなわち、
図7の斜視図に示すように羽根部20の長手方向を水平方向に向けながら、複数の羽根部20,20…が、建物1の外壁部3の壁面3aに沿って鉛直方向に間欠的に並んで配置されていても良い。また、この場合についても、同壁面3aに対する各羽根部20の向きは、遮光条件に応じて適宜設定される。例えば、同壁面3aに対して羽根部20の幅方向を直交させても良いし、又は、同壁面3aに対して各羽根部20の幅方向を平行に向けても良いし、或いは、同壁面3aに対して所定の傾き角で羽根部20の幅方向が傾斜するように各羽根部20を配置しても良い。ちなみに、この場合にも、給水機構30の給水口部31は、最上段の羽根部20の上方に配置されるが、当該羽根部20は水平方向に長いことから、複数の給水口部31が、水平方向に間欠的に配置されることになる。
【0033】
また、同
図7の例では、最上段の羽根部20の上方のみに給水口部31,31…が配置されており、給水口部31,31…から給水された水は、最上段の囲い部材22を上下方向に通過した後に、同囲い部材22の下面壁部22WLの通気孔22Hを介してその下方の隣に位置する囲い部材22の上面壁部22WLの通気孔22Hへと落下供給され、これを順次上方から下方へと繰り返すことによって下方に位置する囲い部材22,22…へと給水するように構成されているが、何等これに限るものではなく、例えば、羽根部20毎にその直上に給水口部31,31…を配置しても良い。
【0034】
上述の実施形態では、囲い部材22の一例として略直方体の箱体を例示したが、その形状は何等これに限らない。つまり、複数の保水材28,28…を収容可能な空間を区画する部材であって複数の通気孔22H,22H…が貫通形成された部材であれば、これ以外の形状の部材でも良い。例えば、囲い部材22は円筒体でも良いし、断面形状が四角形以外の多角形の筒体でも良い。
【0035】
上述の実施形態では、保水材28,28…に給水する給水機構30を設けていたが、この給水機構30は必須構成ではない。その理由は、保水材28,28…への水の供給を、雨水に頼っても良いからである。但し、給水機構30を設けている方が、天候に左右されずに保水材28,28…を保水状態にできて、ルーバー10の冷却効果を確実に奏することができるので、その方が好ましい。
【0036】
上述の実施形態では、囲い部材22(22a)内には、保水材28,28…しか収容せず、ルーバー10の冷却効果を、その周辺の屋外空間や屋内空間の暑熱環境の改善のみに利用していたが、何等これに限るものではない。例えば、囲い部材22(22a)内に、保水材28,28…とともに銅管や鋼管等の配管(不図示)を収容し、当該配管内に屋内空調用の熱媒体を流しても良い。すなわち、配管の一方の管端からは熱媒体が送り込まれ、他方の管端からは熱媒体が送出されるようにしても良い。このようにすれば、配管内の熱媒体は、同配管内を通過中に囲い部材22(22a)内の保水材28,28…と熱交換して冷却されるので、当該冷却後の熱媒体を建物1の屋内空調に利用することができる。よって、屋内空調のエネルギー効率を高めることができる。ちなみに、熱媒体は、液体でも気体でも良く、配管はアルミ管でも良い。また、囲い部材22(22a)内の配管を、つづら折り状に配置すれば、その流路長を長く稼ぐことができて、熱交換効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 建物、3 外壁部、3a 壁面、
10 縦型ルーバー(ルーバー)、10a 縦型ルーバー(ルーバー)、
10b 横型ルーバー(ルーバー)、
20 羽根部、20a 羽根部、
22 囲い部材、22a 囲い部材、
22H 通気孔
22WL 側壁部、22WS 側壁部、22ed 下端、22eu 上端、
23 略断面コ字形状部材、23WL 側壁部、23WS 側壁部、23b リブ部、
28 保水材、29 袋部材、
30 給水機構、31 給水口部、
40 プランター、40B 植栽基盤、42 ワイヤ、
G28 群、
S 隙間、B 床部、G 地面、