特許第6064332号(P6064332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064332
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】車両用スライドドア装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/06 20060101AFI20170116BHJP
   E05F 11/54 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   B60J5/06 A
   B60J5/06 B
   E05F11/54 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-26457(P2012-26457)
(22)【出願日】2012年2月9日
(65)【公開番号】特開2013-163414(P2013-163414A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 芳史
(72)【発明者】
【氏名】山口 順士
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知英
【審査官】 佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−234839(JP,A)
【文献】 実開平02−035819(JP,U)
【文献】 特開2003−335136(JP,A)
【文献】 特開2009−161086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/06
E05F 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボデーの側部に形成されたドア開口における床面よりも下部に配置され、前後方向に延設されたボデー側ロアレールと、
該ボデー側ロアレールの上方且つ前記ドア開口の後方に配置され、前後方向に延設されたボデー側レールと、
前記ドア開口を開閉するスライドドアに連結され、前記ボデー側ロアレール及び前記ボデー側レールそれぞれ摺動可能に支持されるドア側ロアガイドローラユニット及びドア側ガイドローラユニットと、
前記ドア開口における床面よりも下側となる前記スライドドアの下部に配置され、前後方向に延設されたドア側ロアレールと、
前記ドア開口の下部に連結され、前記ドア側ロアレールを摺動可能に支持するボデー側ロアガイドローラユニットとを備え
前記スライドドアに設けられるレールは、単一の前記ドア側ロアレールのみであり、
前記スライドドアの全閉状態において、前記ドア側ロアレール及び前記ボデー側ロアレールが上下方向において重なり合うことを特徴とする車両用スライドドア装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用スライドドア装置において、
前記ボデー側ロアガイドローラユニットは、常に前記ドア側ロアガイドローラユニットよりも後方に配置されることを特徴とする車両用スライドドア装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用スライドドア装置において、
前記ドア側ロアレールは、前記ボデー側ロアレールよりも下側に配置されていることを特徴とする車両用スライドドア装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用スライドドア装置において、
前記ボデー側ロアレール及び前記ドア側ロアレールは、全閉状態において、前記床面の直下に配置されていることを特徴とする車両用スライドドア装置。
【請求項5】
車両ボデーの側部に形成されたドア開口における床面よりも下部に配置され、前後方向に延設されたボデー側ロアレールと、
該ボデー側ロアレールの上方且つ前記ドア開口の後方に配置され、前後方向に延設されたボデー側レールと、
前記ドア開口を開閉するスライドドアに連結され、前記ボデー側ロアレール及び前記ボデー側レールのそれぞれに摺動可能に支持されるドア側ロアガイドローラユニット及びドア側ガイドローラユニットと、
前記ドア開口における床面よりも下側となる前記スライドドアの下部に配置され、前後方向に延設されたドア側ロアレールと、
前記ドア開口の下部に連結され、前記ドア側ロアレールを摺動可能に支持するボデー側ロアガイドローラユニットとを備え、
前記ボデー側ロアガイドローラユニットは、常に前記ドア側ロアガイドローラユニットよりも後方に配置されることを特徴とする車両用スライドドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スライドドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用スライドドア装置として種々のものが提案されている。図5に示すように、例えば特許文献1に記載された車両用スライドドア装置は、車両ボデー80の側部に形成されたドア開口80aの下縁に沿ってボデー側ロアレール81が設置されるとともに、ドア開口80aの後方のクォータパネル80bにおいてボデー側センターレール82が設置されている。また、ボデー側ロアレール81の後部上側にボデー側ガイドローラユニット83が連結されるとともに、ボデー側センターレール82の前部下側にボデー側ガイドローラユニット83が連結されている。
【0003】
一方、スライドドア86には、その前側下部にボデー側ロアレール81を摺動可能なドア側ガイドローラユニット87が連結されるとともに、後側中間部にボデー側センターレール82を摺動可能なドア側ガイドローラユニット87が連結されている。また、スライドドア86には、その下部にボデー側ガイドローラユニット83の摺動可能なドア側ロアレール88が設置されるとともに、中間部にボデー側ガイドローラユニット83の摺動可能なドア側センターレール89が設置されている。
【0004】
従って、スライドドア20は、そのドア側ガイドローラユニット87,87をそれぞれボデー側ロアレール81及びボデー側センターレール82に摺動させ、そのドア側ロアレール88及びドア側センターレール89にそれぞれボデー側ガイドローラユニット83,83を摺動させることで、ドア開口80aを開閉する。つまり、特許文献1では、ドア開口80aの上縁に沿って設置されるボデー側アッパレールや、該ボデー側アッパレールを摺動するドア側ガイドローラユニットが廃止されており、これによっていわゆるドアサッシュ(ドアフレーム)のないスライドドア86への適用を実現している。
【0005】
また、図6に示すように、特許文献2に記載された車両用スライドドア装置は、車両ボデー90の側部に形成されたドア開口90aの後端下部にヒンジ91が設置されるとともに、ドア開口90aの後方のクォータパネル90bにおいてボデー側センターレール92が設置されている。
【0006】
そして、スライドドア(図示略)は、そのドア側ガイドローラユニットをボデー側センターレール92に摺動させつつ、ヒンジ91により前後方向に対して傾けられて、ドア開口90aを開閉する。従って、特許文献2でも、ドア開口90aの上縁に沿って設置されるボデー側アッパレールや、該ボデー側アッパレールを摺動するドア側ガイドローラユニットが廃止されて、いわゆるセダンのリアドアへの適用を実現している。
【0007】
なお、特許文献3に記載された車両用スライドドア装置についても特許文献2と同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−335136号公報
【特許文献2】特開2008−49946号公報
【特許文献3】特開2009−114782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1では、ドア側ロアレール88及びドア側センターレール89が車室内に露出することで、スライドドア86(例えばドアトリム)の意匠・構造に制約を与えてしまう。
【0010】
一方、特許文献2、3では、スライドドアの開閉にヒンジ91が利用されることで、スライドドアの開閉量(いわゆるドアストローク)が制限され、大きな開閉量を要するスライドドアへの適用はできない。また、ヒンジ91は、スライドドアを支えるために大型化を余儀なくされ、スライドドアの下部周りに十分な配置スペースを確保する必要がある。
【0011】
本発明の目的は、スライドドアの意匠・構造に対する制約を緩和しつつ、十分な開閉量を確保することができる車両用スライドドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ボデーの側部に形成されたドア開口における床面よりも下部に配置され、前後方向に延設されたボデー側ロアレールと、該ボデー側ロアレールの上方且つ前記ドア開口の後方に配置され、前後方向に延設されたボデー側レールと、前記ドア開口を開閉するスライドドアに連結され、前記ボデー側ロアレール及び前記ボデー側レールそれぞれ摺動可能に支持されるドア側ロアガイドローラユニット及びドア側ガイドローラユニットと、前記ドア開口における床面よりも下側となる前記スライドドアの下部に配置され、前後方向に延設されたドア側ロアレールと、前記ドア開口の下部に連結され、前記ドア側ロアレールを摺動可能に支持するボデー側ロアガイドローラユニットとを備え、前記スライドドアに設けられるレールは、単一の前記ドア側ロアレールのみであり、前記スライドドアの全閉状態において、前記ドア側ロアレール及び前記ボデー側ロアレールが上下方向において重なり合うことを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、前記スライドドアは、前後方向への移動に伴い、前記ドア側ロアガイドローラユニット及び前記ドア側ガイドローラユニットをそれぞれ前記ボデー側ロアレール及び前記ボデー側レールに摺動させ、前記ドア側ロアレールに前記ボデー側ロアガイドローラユニットを摺動させることで、前記ドア開口を開閉する。この場合、前記ボデー側ロアガイドローラユニットの摺動する前記ドア側ロアレールは前記スライドドアに設けられるものの、該スライドドアにより前記ドア開口の閉塞される全閉状態では、前記床面よりも下側に配置されて車室内に露出することはない。従って、前記スライドドア(例えばドアトリム)の意匠・構造に対する制約を緩和することができる。また、前記スライドドアによる前記ドア開口の開閉は、スライド動作のみで実現できるため、例えば従来形態のようにヒンジを併用した場合に比べて十分な開閉量を確保できる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用スライドドア装置において、前記ボデー側ロアガイドローラユニットは、常に前記ドア側ロアガイドローラユニットよりも後方に配置されることを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、前記車両ボデーにおける前記スライドドアの支持位置は、前記ボデー側ロアレール及び前記ボデー側レールにおける前記ドア側ロアガイドローラユニット及び前記ドア側ガイドローラユニットの両支持位置、並びに前記ドア側ロアレールにおける前記ボデー側ロアガイドローラユニットの支持位置からなる。そして、前記ドア側ロアガイドローラユニット及び前記ボデー側ロアガイドローラユニットに対して前記ドア側ガイドローラユニットに高低差が設定されており、且つ、前記ボデー側ロアガイドローラユニットが常に前記ドア側ロアガイドローラユニットよりも後方に配置されている。従って、これら3つの支持位置の各2つの支持位置を結ぶ線分は、前記スライドドアの開閉位置に関わらず、必ず三角形を描く。これにより、前記スライドドアを、その開閉位置に関わらずこれら3つの支持位置でより安定した姿勢で前記車両ボデーに支持できる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用スライドドア装置において、前記ドア側ロアレールは、前記ボデー側ロアレールよりも下側に配置されていることを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、前記ドア側ロアレールにおける前記ボデー側ロアガイドローラユニットの支持位置が、前記ボデー側ロアレールにおける前記ドア側ロアガイドローラユニットの支持位置よりも下側に配置される分、前記3つの支持位置の描く三角形を拡大でき、前記スライドドアを、いっそう安定した姿勢で前記車両ボデーに支持できる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用スライドドア装置において、前記ボデー側ロアレール及び前記ドア側ロアレールは、全閉状態において、前記床面の直下に配置されていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、車両ボデーの側部に形成されたドア開口における床面よりも下部に配置され、前後方向に延設されたボデー側ロアレールと、該ボデー側ロアレールの上方且つ前記ドア開口の後方に配置され、前後方向に延設されたボデー側レールと、前記ドア開口を開閉するスライドドアに連結され、前記ボデー側ロアレール及び前記ボデー側レールのそれぞれに摺動可能に支持されるドア側ロアガイドローラユニット及びドア側ガイドローラユニットと、前記ドア開口における床面よりも下側となる前記スライドドアの下部に配置され、前後方向に延設されたドア側ロアレールと、前記ドア開口の下部に連結され、前記ドア側ロアレールを摺動可能に支持するボデー側ロアガイドローラユニットとを備え、前記ボデー側ロアガイドローラユニットは、常に前記ドア側ロアガイドローラユニットよりも後方に配置されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、スライドドアの意匠・構造に対する制約を緩和しつつ、十分な開閉量を確保することができる車両用スライドドア装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態を示す模式図。
図2】(a)(b)は、図1のA−A線及びB−B線に沿った断面図。
図3図1のC−C線に沿った断面図。
図4図1のD−D線に沿った断面図。
図5】従来形態を示す斜視図。
図6】別の従来形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図4を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1に示すように、車両ボデー10には、その側部に形成されたドア開口10aの下部に配置されたボデー側ロアレール11が前後方向に延設されている。また、車両ボデー10には、ドア開口10aの高さ方向中間部で該ドア開口10aの後方となるクォータパネル10bに配置されたボデー側センターレール12が前後方向に延設されている。これらボデー側ロアレール11及びボデー側センターレール12は、互いに平行である。さらに、車両ボデー10には、ボデー側ロアレール11の後方下側にボデー側ロアガイドローラユニット13が回動自在に連結されている。
【0021】
一方、ドア開口10aを開閉するスライドドア20には、その前側下部にボデー側ロアレール11を摺動可能なドア側ロアガイドローラユニット16が回動自在に連結されるとともに、後部高さ方向中間部にドア側センターガイドローラユニット17が回動自在に連結されている。さらに、スライドドア20には、ドア開口10aにおける床面Fよりも下側であって、ボデー側ロアレール11よりも下側であって、該ボデー側ロアレール11に対し後方にオフセットして配置されたドア側ロアレール18が前後方向に延設されている。このドア側ロアレール18は、ボデー側ロアレール11等と平行であって、前記ボデー側ロアガイドローラユニット13が摺動可能である。つまり、スライドドア20は、ドア側ロアガイドローラユニット16及びボデー側ロアレール11等を介して車両ボデー10に対し前後方向に移動可能に支持されている。
【0022】
そして、スライドドア20は、前後方向への移動に伴い、ドア側ロアガイドローラユニット16及びドア側センターガイドローラユニット17をそれぞれボデー側ロアレール11及びボデー側センターレール12に摺動させ、ドア側ロアレール18にボデー側ロアガイドローラユニット13を摺動させることで、ドア開口10aを開閉する。ボデー側ロアガイドローラユニット13は、スライドドア20の開閉位置に関わらず、常にドア側ロアガイドローラユニット16よりも後方に配置されるように設定されている。
【0023】
なお、車両ボデー10におけるスライドドア20の支持位置は、ボデー側ロアレール11及びボデー側センターレール12におけるドア側ロアガイドローラユニット16及びドア側センターガイドローラユニット17の両支持位置P1,P2、並びにドア側ロアレール18におけるボデー側ロアガイドローラユニット13の支持位置P3からなる。そして、ドア側ロアガイドローラユニット16及びボデー側ロアガイドローラユニット13(支持位置P1,P3)に対してドア側センターガイドローラユニット17(支持位置P2)に高低差が設定されており、且つ、ボデー側ロアガイドローラユニット13(支持位置P3)が常にドア側ロアガイドローラユニット16(支持位置P1)よりも後方に配置されている。従って、これら3つの支持位置P1〜P3の各2つの支持位置を結ぶ線分は、スライドドア20の開閉位置に関わらず、必ず三角形Tを描く。特に、ドア側ロアレール18は、ボデー側ロアレール11よりも下側に配置されて、ドア側センターガイドローラユニット17(支持位置P2)からの離隔距離が増加している分、三角形Tが拡大されている。図1では、支持位置P1〜P3及び三角形Tとしてスライドドア20の全閉位置に相当するものを代表して描いており、スライドドア20の全開位置に相当するものを支持位置P1’、P2’、P3’及び三角形T’として併せて描画している。
【0024】
次に、スライドドア20の支持構造について更に説明する。
図2(a)に示すように、ボデー側ロアレール11の前端部は、車両室内方に向かって屈曲している。一方、ドア側ロアガイドローラユニット16は、スライドドア20の前端部に固着されたアーム部材21に回動自在に連結された、例えば金属板からなるガイドブラケット22を備える。図3に示すように、このガイドブラケット22は、アーム部材21の先端部に対向して開口する略コの字状の連結部22aを有しており、アーム部材21の当該先端部を挟み込む連結部22aを貫通する支持ピン23により、高さ方向に延びる軸線O1周りにアーム部材21(スライドドア20)に回動自在に連結されている。そして、ガイドブラケット22には、車両幅方向に軸線の延びる支持ピン25によりロードローラ24が軸支されるとともに、高さ方向に軸線の延びる支持ピン27によりガイドローラ26が軸支されている。なお、図2(a)に示すように、ガイドローラ26(及び支持ピン27)は、ロードローラ24を前後方向(レール長手方向)で挟み込むように対で配設されている。
【0025】
図3に示すように、ドア側ロアガイドローラユニット16は、両ガイドローラ26がボデー側ロアレール11に転動可能に装着されることで、スライドドア20のボデー側ロアレール11に沿った移動を案内するとともに、ロードローラ24が車両ボデー10の支持部材10c上に転動可能に装着されることで、スライドドア20の荷重を支える。なお、既述のように、ボデー側ロアレール11の前端部は車両室内方に向かって屈曲している。そして、ドア側ロアガイドローラユニット16は、スライドドア20の全閉状態及び全開状態でボデー側ロアレール11の前端部及び後端部にそれぞれ配置される。従って、ボデー側ロアレール11に案内されるドア側ロアガイドローラユニット16は、支持ピン23周りにアーム部材21に対しガイドブラケット22を回動させることでスライドドア20の前後移動を許容する。
【0026】
図2(b)に示すように、ボデー側センターレール12の前端部も、車両室内方に向かって屈曲している。一方、ドア側センターガイドローラユニット17は、スライドドア20の後端部に固着されたブラケット31に回動自在に連結された、例えば金属板からなるガイドブラケット32を備える。図4に示すように、このガイドブラケット32は、ブラケット31の先端部に対向して開口する略コの字状の連結部32aを有しており、ブラケット31の当該先端部共々連結部32aを貫通する支持ピン(図示略)により、高さ方向に延びる軸線O2周りにブラケット31(スライドドア20)に回動自在に連結されている。そして、ガイドブラケット32には、車両幅方向に軸線の延びる支持ピン35によりロードローラ34が軸支されるとともに、高さ方向に軸線の延びる支持ピン37によりガイドローラ36が軸支されている。なお、図2(b)に示すように、ガイドローラ36(及び支持ピン37)は、ロードローラ34を前後方向(レール長手方向)で挟み込むように対で配設されている。
【0027】
図4に示すように、ドア側センターガイドローラユニット17は、両ガイドローラ36がボデー側センターレール12の上部に転動可能に装着されることで、スライドドア20のボデー側センターレール12に沿った移動を案内する。また、ドア側センターガイドローラユニット17は、ロードローラ34がボデー側センターレール12の底壁上に転動可能に装着されることで、スライドドア20の荷重を支える。なお、既述のように、ボデー側センターレール12の前端部は車両室内方に向かって屈曲している。そして、ドア側センターガイドローラユニット17は、スライドドア20の全閉状態及び全開状態でボデー側センターレール12の前端部及び後端部にそれぞれ配置される。従って、ボデー側センターレール12に案内されるドア側センターガイドローラユニット17は、軸線O2周りにブラケット31に対しガイドブラケット32を回動させることでスライドドア20の前後移動を許容する。
【0028】
図2(a)に示すように、ボデー側ロアガイドローラユニット13は、ボデー側ロアレール11の後方で、高さ方向に延びる軸線O3周りに車両ボデー10に回動自在に連結された、例えば金属板からなるガイドレバー41を備える。そして、図3に示すように、ガイドレバー41の先端部には、高さ方向に軸線の延びる支持ピン43によりガイドローラ42が軸支されている。なお、図2(a)に示すように、ガイドローラ42(及び支持ピン43)は、前後方向(レール長手方向)に間隔をあけて対で配設されている。
【0029】
一方、ドア側ロアレール18は、その後端部が車両外方に向かって屈曲している。図3に示すように、ドア側ロアレール18には、ボデー側ロアガイドローラユニット13の両ガイドローラ42が転動可能に装着されることで、スライドドア20のドア側ロアレール18に沿った移動を案内させる。
【0030】
以上により、スライドドア20は、全閉状態で車両ボデー10(クォータパネル10b)の室外面と略面一となるように、あるいは開放状態で車両ボデー10(クォータパネル10b)の室外面上に配置されるように案内される。
【0031】
次に、本実施形態の動作について説明する。
スライドドア20は、前後方向への移動に伴い、ドア側ロアガイドローラユニット16及びドア側センターガイドローラユニット17をそれぞれボデー側ロアレール11及びボデー側センターレール12に摺動させ、ドア側ロアレール18にボデー側ロアガイドローラユニット13を摺動させることで、ドア開口10aを開閉する。この場合、ボデー側ロアガイドローラユニット13の摺動するドア側ロアレール18はスライドドア20に設けられるものの、該スライドドア20によりドア開口10aの閉塞される全閉状態では、床面Fよりも下側に配置されて車室内に露出することはない。従って、スライドドア20(例えばドアトリム)の意匠・構造に対する制約が緩和される。また、スライドドア20によるドア開口10aの開閉は、スライド動作のみで実現できるため、例えば従来形態のようにヒンジを併用した場合に比べて十分な開閉量(いわゆるドアストローク)が確保される。
【0032】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、ボデー側ロアガイドローラユニット13の摺動するドア側ロアレール18は、スライドドア20によりドア開口10aの閉塞される全閉状態では、床面Fよりも下側に配置されて車室内に露出することはない。従って、スライドドア20(例えばドアトリム)の意匠・構造に対する制約を緩和することができる。
【0033】
また、スライドドア20によるドア開口10aの開閉は、スライド動作のみで実現できるため、例えば従来形態のようにヒンジを併用した場合に比べて十分な開閉量を確保できる。あるいは、従来形態のように大型のヒンジを併用した場合に比べて、スライドドア20の下部周りに要する配置スペースの制約を緩和することができる。
【0034】
(2)車両ボデー10におけるスライドドア20の支持位置は、ボデー側ロアレール11及びボデー側センターレール12におけるドア側ロアガイドローラユニット16及びドア側センターガイドローラユニット17の両支持位置P1,P2(P1’,P2’)、並びにドア側ロアレール18におけるボデー側ロアガイドローラユニット13の支持位置P3(P3’)からなる。そして、本実施形態では、ドア側ロアガイドローラユニット16及びボデー側ロアガイドローラユニット13に対してドア側センターガイドローラユニット17に高低差が設定されており、且つ、ボデー側ロアガイドローラユニット13が常にドア側ロアガイドローラユニット16よりも後方に配置されている。従って、これら3つの支持位置P1〜P3(P1’〜P3’)の各2つの支持位置を結ぶ線分は、スライドドア20の開閉位置に関わらず、必ず三角形T(T’)を描く。これにより、スライドドア20を、その開閉位置に関わらずこれら3つの支持位置P1〜P3(P1’〜P3’)でより安定した姿勢で車両ボデー10に支持できる。
【0035】
(3)本実施形態では、ドア側ロアレール18におけるボデー側ロアガイドローラユニット13の支持位置P3(P3’)が、ボデー側ロアレール11におけるドア側ロアガイドローラユニット16の支持位置P1(P1’)よりも下側に配置される。従って、その分、3つの支持位置P1〜P3(P1’〜P3’)の描く三角形T(T’)を拡大でき、スライドドア20を、いっそう安定した姿勢で車両ボデー10に支持できる。
【0036】
(4)本実施形態では、ドア開口10aの上縁に沿って設置されるボデー側アッパレールや、該ボデー側アッパレールを摺動するドア側ガイドローラユニットを廃止したことで、いわゆるドアサッシュ(ドアフレーム)のないスライドドアへの適用も可能となり、スライドドア20自体やルーフの意匠・構造に対する制約を緩和することができる。そして、例えばセダンのリアドアなどをスライドドアにすることができる。
【0037】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態においては、ドア側ロアレール18を、ボデー側ロアレール11に対し後方にオフセットして配置したが、ボデー側ロアガイドローラユニット13及びドア側ロアガイドローラユニット16等の干渉を回避できるのであれば、これらドア側ロアレール18及びボデー側ロアレール11の前後方向の位置が合致していてもよい。
【0038】
・前記実施形態においては、ボデー側ロアレール11にドア側ロアガイドローラユニット16のガイドローラ26を転動させて、ボデー側ロアレール11に沿うスライドドア20の移動を案内した。これに対し、ガイドローラ26に代えて、ボデー側ロアレール11にドア側ロアガイドローラユニット16の適宜の摺動体を摺動させて、ボデー側ロアレール11に沿うスライドドア20の移動を案内してもよい。
【0039】
・前記実施形態においては、ドア側ロアレール18内を転動するガイドローラ42を採用したが、これに加えて、ドア側ロアレール18の外側面を転動するガイドローラを別設してもよい。このように変更することで、ドア側ロアレール18に沿うスライドドア20の移動をより堅固に案内することができる。
【0040】
・前記実施形態においては、ボデー側ロアガイドローラユニット13のガイドローラ42をドア側ロアレール18に転動させて、ドア側ロアレール18に沿うスライドドア20の移動を案内した。これに対し、ガイドローラ42に代えて、ドア側ロアレール18にボデー側ロアガイドローラユニット13の適宜の摺動体を摺動させて、ドア側ロアレール18に沿うスライドドア20の移動を案内してもよい。
【0041】
・前記実施形態においては、ドア側ロアレール18を、ボデー側ロアレール11よりも下側に配置したが、ボデー側ロアレール11よりも上側に配置してもよい。また、ボデー側ロアガイドローラユニット13及びドア側ロアガイドローラユニット16等の干渉を回避できるのであれば、これらドア側ロアレール18及びボデー側ロアレール11の高さ方向の位置が合致していてもよい。
【0042】
・前記実施形態において、ボデー側センターレール12は、ボデー側ロアレール11の上方にあれば、その高さ方向の位置は任意である。
・前記実施形態において、スライドドア20の開閉に伴い、ボデー側ロアガイドローラユニット13及びドア側ロアガイドローラユニット16の前後位置が逆転してもよい。
【0043】
・本発明は、フロントドアに適用してもよいし、ワンボックス車やミニバン車、セダン、ワゴン等のリアドアに適用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
F…床面、10…車両ボデー、10a…ドア開口、10b…クォータパネル、11…ボデー側ロアレール、12…ボデー側センターレール(ボデー側レール)、13…ボデー側ロアガイドローラユニット、16…ドア側ロアガイドローラユニット、17…ドア側センターガイドローラユニット(ドア側ガイドローラユニット)、18…ドア側ロアレール、20…スライドドア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6