(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064363
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/06 20150101AFI20170116BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20170116BHJP
【FI】
A63B53/06 B
A63B102:32
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-108636(P2012-108636)
(22)【出願日】2012年5月10日
(65)【公開番号】特開2013-233346(P2013-233346A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史明
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0298612(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/102501(WO,A1)
【文献】
特開昭48−50838(JP,A)
【文献】
実開昭52−97153(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3136691(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3130408(JP,U)
【文献】
特開2005−160947(JP,A)
【文献】
米国特許第2198981(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00−53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体と、該ヘッド本体のウェイト材装着部に着脱可能に取り付けられたウェイト材とを有しており、
該ウェイト材装着部の雌ネジにウェイト材の雄ネジが噛合しているゴルフクラブヘッドにおいて、
該ウェイト材は、該雄ネジを有した頭部と、該頭部から突出したロッド部とを備えており、
該頭部に貫通孔が設けられており、
該ロッド部は、該頭部から突出する本体部と、該本体部よりも小径の小径部とを有し、
該小径部が該貫通孔に挿通されており、
該小径部の先端面にストッパプレートが装着されており、
該ウェイト材装着部は、入口側に前記雌ネジが設けられ、奥側に該ロッド部が係合した筒部が設けられていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
ヘッド本体と、該ヘッド本体のウェイト材装着部に着脱可能に取り付けられたウェイト材とを有しており、
該ウェイト材装着部の雌ネジにウェイト材の雄ネジが噛合しているゴルフクラブヘッドにおいて、
該ウェイト材は、該雄ネジを有した頭部と、該頭部から突出したロッド部とを備えており、
該ロッド部は、該頭部に対し、ボルトによって留めつけて一体化されており、
該ウェイト材装着部は、入口側に前記雌ネジが設けられ、奥側に該ロッド部が係合した筒部が設けられていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
請求項2において、前記頭部に貫通孔が設けられており、前記ロッド部に挿入孔が設けられており、前記ボルトは、該頭部の貫通孔と該ロッド部の挿入孔内に配置されていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ロッド部が前記頭部に回転可能となっていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記ウェイト材に、比重の異なるパーツが着脱可能に装着されていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
請求項5において、前記パーツは、前記ロッド部に装着されていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記ウェイト材はゴルフクラブヘッドのソール部に斜めに装着されていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに係り、特にウェイト材を備えたゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、シャフトの先端部にヘッドが取り付けられたものである。シャフトの基端側にグリップが装着されている。
【0003】
一般的なゴルフクラブヘッドにあっては、ヘッドに直にホゼル穴が設けられており、シャフトは該ホゼル穴に挿入され、接着剤によって固着されている。
【0004】
ゴルフクラブヘッドの重量やバランス調節するために、ゴルフクラブヘッドにウェイト材をねじ込みにより着脱可能に取り付けたものが用いられている(例えば特許文献1)。
【0005】
図10は特許文献1のゴルフクラブヘッドの断面図である。このゴルフクラブヘッド1は、ヘッド本体2のソール部に雌ネジ穴3が設けられ、この雌ネジ穴3にウェイト材(錘部材)4がねじ込みにより着脱可能に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−69106
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにウェイト材4を雌ネジ穴3にねじ込むに際しては、ウェイト材4を雌ネジ穴3に当て、工具を雌ネジ穴3に係合させて回すのであるが、ウェイト材4を雌ネジ穴3に当てるに際しては、十分に注意を払って正しく同軸状に当ててから回す必要がある。仮にウェイト材4の軸心方向が雌ネジ穴3の軸心方向と斜交していると、ウェイト材4を回してもウェイト材4が雌ネジ穴3に入っていかなかったり、ウェイト材4が傾いたまま無理矢理にねじ込まれて雌ネジ穴3のネジ面が損壊したりするおそれがある。
【0008】
また、
図10の従来例では、ウェイト材4を雌ネジ穴3に当てたり回したりするときにウェイト材4が雌ネジ穴3から脱落し易い。このようなことから、従来のゴルフクラブヘッドでは、ウェイト材の装着に手間がかかっていた。
【0009】
本発明は、ウェイト材を雌ネジ穴に容易に装着することができるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のゴルフクラブヘッドは、ヘッド本体と、該ヘッド本体のウェイト材装着部に着脱可能に取り付けられたウェイト材とを有しており、該ウェイト材装着部の雌ネジにウェイト材の雄ネジが噛合しているゴルフクラブヘッドにおいて、該ウェイト材は、該雄ネジを有した頭部と、該頭部から突出したロッド部とを備えており、
該頭部に貫通孔が設けられており、該ロッド部は、該頭部から突出する本体部と、該本体部よりも小径の小径部とを有し、該小径部が該貫通孔に挿通されており、該小径部の先端面にストッパプレートが装着されており、該ウェイト材装着部は、入口側に前記雌ネジが設けられ、奥側に該ロッド部が係合した筒部が設けられていることを特徴とするものである。
請求項2のゴルフクラブヘッドは、ヘッド本体と、該ヘッド本体のウェイト材装着部に着脱可能に取り付けられたウェイト材とを有しており、該ウェイト材装着部の雌ネジにウェイト材の雄ネジが噛合しているゴルフクラブヘッドにおいて、該ウェイト材は、該雄ネジを有した頭部と、該頭部から突出したロッド部とを備えており、該ロッド部は、該頭部に対し、ボルトによって留めつけて一体化されており、該ウェイト材装着部は、入口側に前記雌ネジが設けられ、奥側に該ロッド部が係合した筒部が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
前記ロッド部は頭部に対し回転自在となっていてもよい。
【0012】
前記ウェイト材に比重の異なるパーツを着脱可能に装着してもよい。
【0013】
ウェイト材はゴルフクラブヘッドのソール部に対し斜め方向に装着されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のゴルフクラブヘッドにあっては、ウェイト材をウェイト材装着部に装着するに際して、ウェイト材のロッド部をウェイト材装着部の筒部に係合させる。これにより、ウェイト材の脱落が防止されると共に、ウェイト材とウェイト材装着部と同軸状に位置させ、容易にねじ込むことができる。
【0015】
ロッド部を頭部に対し回転自在とした場合は、頭部のみを回してウェイト材をウェイト材装着部にねじ込むことができる。
【0016】
ウェイト材に比重の異なるパーツを装着することにより、ウェイト材の重量調節を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係るウェイト材装着部の断面図である。
【
図4】
図1のゴルフクラブヘッドにおけるウェイト材装着途中図である。
【
図6】(a)図はさらに別のウェイト材の断面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【
図7】(a)図はさらに別のウェイト材の断面図、(b)図はこのウェイト材の斜視図である。
【
図9】異なる実施の形態に係るゴルフクラブヘッドのウェイト材装着部の断面図である。
【
図10】従来のゴルフクラブヘッドの断面図である。
【
図11】別の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの側面図である。
【
図12】
図11のゴルフクラブヘッドのウェイト材装着部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0019】
図1〜4は第1の実施の形態に係るゴルフクラブヘッド5を示すものである。このゴルフクラブヘッド5は、ヘッド本体6と、該ヘッド本体6のソール部やバック部等に設けられたウェイト材装着部7と、該ウェイト材装着部7にねじ込みにより着脱可能に取り付けられたウェイト材10とを有する。
【0020】
ウェイト材装着部7は、
図4の通り、入口側が雌ネジ部7aとなっており、奥側が雌ネジを有しない筒部7bとなっている。なお、この実施の形態では、ウェイト材装着部7の入口の周縁部はテーパ面7cとなっている。また、筒部7bは雌ネジ部7aよりも小径であり、雌ネジ部7aと筒部7bとの境界部分は段差部7dとなっている。筒部7bは、この実施の形態では円筒形である。筒部7bの最奥部のコーナー部はテーパ面7eとなっている。
【0021】
図2の通り、ウェイト材10は、外周面に雄ネジが刻設された頭部11と、該頭部11に固着されたロッド部12とを有する。頭部10の頭頂面には、工具の係合穴11a,11bが設けられている。
【0022】
図1の通り、頭部11の頭頂面と反対面は凹所11cとなっており、この凹所11cにロッド部12が挿入されている。凹所11cの奥底面には、入口側が小径であり、奥側が大径となっている係止凹部11dが設けられている。
【0023】
ロッド部12は、頭部11から突出する本体部12aと、該本体部12aよりも小径であり、凹所11cに挿入された小径部12bと、該小径部12bの先端面から突設された係止凸部12cとを有している。この係止凸部12cは、基端側が先端側よりも小径であり、前記係止凹部11dと同一形状、同一大きさとなっている。この係止凸部12cは係止凹部11dに対し冷し嵌め、焼き嵌め、無理嵌め等により嵌合しており、これにより頭部11とロッド部12とが一体化されている。
【0024】
なお、ロッド部12は頭部11と同軸状である。この実施の形態では、ロッド部12は頭部11に対し回転可能となっていてもよく、回転不能となっていてもよい。
【0025】
このウェイト材10をウェイト材装着部7に装着するには、
図4(a)のようにウェイト材10をウェイト材装着部7に接近させ、
図4(b)のようにウェイト材10のロッド部12をウェイト材装着部7の筒部7bに差し込んだ後、工具を工具係合穴11a,11bに係合させて回す。
【0026】
このウェイト材10にはロッド部12が設けられており、
図4(b)のようにウェイト材10を単にウェイト材装着部7に差し込んだだけで、ロッド部12が筒部7bに係合し、ウェイト材10がウェイト材装着部7と正確に同軸状となる。そのため、
図4(b)の状態からウェイト材10を回すと、ウェイト材10の雄ネジがウェイト材装着部7の雌ネジ部7aの内周面の雌ネジにスムーズに噛合する。ウェイト材10を十分にねじ込むと、頭部11の下端面が段差部7dに強く押し付けられ、ウェイト材10がウェイト材装着部7にしっかりと装着される。
【0027】
また、この実施の形態では、
図4(b)のように、ウェイト材10をウェイト材装着部7に差し込んだ状態でロッド部12が筒部7bに係合しているので、装着作業時にウェイト材10がウェイト材装着部7から脱落しにくい。
【0028】
このように、この実施の形態によると、ウェイト材10をウェイト材装着部7にきわめて容易に装着することができる。
【0029】
上記実施の形態では、ロッド部12が円柱状となっているが、
図5のウェイト材10Aのように角柱状のロッド部12Aとしてもよい。この場合、ロッド部12Aは頭部11に対し回転自在としておく。
図5のウェイト材10Aのその他の構成は上記ウェイト材10と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0030】
本発明では、
図6のウェイト材10Bのように、パーツ15をロッド部12にねじ込み等により着脱可能に装着してもよい。この場合、パーツ15を取り外したり、別重量のパーツに取り替えることにより、ウェイト材10Bの重量を変えることができる。ウェイト材10Bのその他の構成はウェイト材10と同一であり、
図6のその他の符号はウェイト材10と同一部分を示している。
【0031】
図7のウェイト材10Cでは、頭部11Cに、軸心部を貫通する貫通孔11eが設けられている。ロッド部12Cの小径部12bが該貫通孔11eに回転自在に挿通されている。小径部12bの先端面にストッパプレート17が装着されている。このストッパプレート17は、先端側が基端側よりも大径の係止凸部17aが設けられている。小径部12bの先端面の同様形状の係止凹部12gに該係止凸部17aを嵌合させている。ストッパプレート17は貫通孔11eよりも大径の円盤状であり、ロッド部12Cは頭部11Cから不抜となる。
【0032】
ロッド部12Cの本体部12aは小径部12bよりも大径である。小径部12b、貫通孔11eは、軸心線方向と垂直な断面形状が円形であり、頭部11Cはロッド部12Cに対し回転自在となっている。頭部11Cの頭頂面の工具係合穴11fに工具を係合させて頭部11Cを回すことができる。
【0033】
図8のウェイト材10Dは、頭部11Dに対しロッド部12Dをボルト18によって留め付けて一体化したものである。その他の構成はウェイト材10Cと同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0034】
上記実施の形態では、ウェイト材装着部7は非貫通穴であるが、本発明では、
図9のヘッド本体6’のウェイト材装着部7’のように貫通穴状の筒形であってもよい。
図9のその他の構成は
図1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0035】
本発明では、ウェイト材はソール部に対し斜めに装着されてもよい。
図11はその一例を示すゴルフクラブヘッドのヒール側から見た側面図、
図12はこのゴルフクラブヘッド5’のウェイト材装着部のヘッド前後方向の縦断面図である。図示の通り、ゴルフクラブヘッド5’のソール部5aに対しウェイト材装着部7がその軸心線方向をヘッド前後方向においてソール状態における水平面に対し角度θにて斜交させて設けられている。この角度θは10〜60°特に20〜50°とりわけ30〜45°程度が好ましい。
図11,12のように、ウェイト材装着部7は、その奥側ほどゴルフクラブヘッド5’の前方となるように傾斜している。
【0036】
このようにソール部5aにウェイト材10を斜めに装着すると、ソール面に対し垂直にウェイト材10を装着した場合に比べて、インパクト時にウェイト材10に振動が加えられてもウェイト材10が緩みにくくなる。
【0037】
ウェイト材10を緩みにくくするためにゴルフクラブヘッド内のリブやソールの内面構造を変えると、ゴルフクラブヘッドの固有振動数に変化が生じて打球音に変調が生じたり、リブなどにより打球時の振幅が小さくなることがあるが、ウェイト材装着部及びウェイト材を斜めとした場合にはこのようなことが防止される。なお、上記角度θが60°よりも大きいと上記の効果が乏しくなってしまう。逆に、角度θが10°よりも小さいと、ウェイト材装着部の構造が複雑になり、その重量が大きくなり、ウェイト材による重量調整の幅が小さくなる。
【符号の説明】
【0038】
5 ゴルフクラブヘッド
6,6’ ヘッド本体
7,7’ ウェイト材装着部
7a 雌ネジ部
7b 筒部
10,10A,10B,10C,10D ウェイト材
11,11C,11D 頭部
12,12C,12D ロッド部