特許第6064373号(P6064373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニデックの特許一覧

<>
  • 特許6064373-眼科検査装置 図000002
  • 特許6064373-眼科検査装置 図000003
  • 特許6064373-眼科検査装置 図000004
  • 特許6064373-眼科検査装置 図000005
  • 特許6064373-眼科検査装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064373
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】眼科検査装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20170116BHJP
   A61B 3/024 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A61B3/14 A
   A61B3/14 L
   A61B3/02 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-123194(P2012-123194)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-248009(P2013-248009A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】秋田 純一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直幸
(72)【発明者】
【氏名】南原 孝啓
(72)【発明者】
【氏名】岩田 真也
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−061461(JP,A)
【文献】 特開2011−255045(JP,A)
【文献】 特開平04−272740(JP,A)
【文献】 特開昭59−189826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼眼底に検査視標を投影して、前記検査視標に対する被検者の応答に基づいて前記被検眼の視機能の検査を行う眼科検査装置において、
前記検査視標を形成するための視標投影光学系と、
所定の輝度値にて前記検査視標を投影する際の投影光束の光量を検出する検出部と、
前記検出部によって検出される検出結果が所定の光量レベルとなるように前記検出結果に基づいて前記視標投影光学系における投影光束の光量を調整する制御手段と、
を備えることを特徴とする眼科検査装置。
【請求項2】
前記視標投影光学系は、前記投影光束を被検眼に向かう光路と前記検出部に向かう光路に分岐する光路分岐部材を備える、
ことを特徴とする請求項1の眼科検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は患者眼に検査視標を投影して眼の検査をする眼科検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科検査装置として、患者の眼底を撮影する撮影部を備えると共に、撮影部で撮影された患者の眼底に視野検査用の視標を投影して、患者の応答に基づく視標の明度識別閾値を求める視野検査を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種の眼科検査装置で得られた眼底像から視神経乳頭や視神経線維束欠損が観察され、視野計の測定結果から患者の光感受性が定量化されることで視機能が評価され、緑内障等の診断に役立てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006‐61461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで装置に使用される光源は輝度及び色度の特性のばらつきや、光源の経時劣化による輝度の低下がある。一方、眼科検査装置の検査で視標の形成に使用される光源の光量が微弱であるために、光源の特性の誤差が検査結果の精度に影響してしまうおそれがある。例えば、視野検査で、被検者の視認による応答を得て網膜の感度閾値を計測する場合、視標光量の微妙な変動であっても、閾値の計測結果に直接的に影響を及ぼしうる。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、検査の信頼性を維持できる眼科検査装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 被検眼眼底に検査視標を投影して、前記検査指標に対する被検者の応答に基づいて前記被検眼の視機能の検査を行う眼科検査装置において、前記検査視標を形成するための視標投影光学系と、所定の輝度値にて前記検査視標を投影する際の投影光束の光量を検出する検出部と、前記検出部によって検出される検出結果が所定の光量レベルとなるように前記検出結果に基づいて前記視標投影光学系における投影光束の光量を調整する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば検査の信頼性を維持できる眼科検査装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお以下では、眼底観察及び撮影と、眼底の視野検査を一台で行える眼底検査装置を例に挙げて説明する。図1は眼底検査装置の外観構成図である。図2は眼底検査装置の光学系及び制御系の説明図である。
【0010】
図1において、眼底検査装置1は、基台1aと、基台1aに対して左右方向(X方向)及び前後(作動距離)方向(Z方向)に移動可能に設けられた移動台2、移動台2に設けられた駆動部6によって患者眼(眼)Eに対して左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)及び前後方向(X方向)に移動可能に設けられた撮影部(装置本体)3、患者の顔を支持するために基台1aに固設された顔支持ユニット5を備える。なお、撮影部3の内部には後述する光学系及び制御系が収納される。
【0011】
撮影部3の検者側には、ジョイスティック4、コントロール部7a、モニタ8が設けられている。ジョイスティック4は眼Eに対して撮影部3を相対移動させるために用いられる。ジョイスティック4が傾倒されると摺動機構によって移動台2が基台1a上をXZ方向に摺動し、ジョイスティック4の側面に設けられた回転ノブ4aを回転すると撮影部3がY方向に移動する。なおジョイスティック4の頂部のスイッチ4bは眼底像の撮影動作のトリガ信号入力に用いられる。コントロール部7aは、各種撮影・検査条件等の設定に用いられる。コントロール部7aとしてはマウス、キーボード、タッチパネル(モニタ8に取り付けられる)等の周知の入力手段が用いられる。モニタ8には眼Eの観察・撮影画像の他、各種検査結果が表示される。例えば、モニタ8には眼底観察画面、前眼部観察画面、視野検査画面等が表示される。
撮影部3の患者側には、患者に装置内部を覗き込ませる撮影窓9、眼(網膜)の視機能検査時などに患者が応答信号を入力するための応答ボタン7bがある。
【0012】
図2の光学系は、照明光学系10、眼底や前眼部等の観察・撮影をする観察・撮影光学系30、眼底にフォーカス指標(フォーカス指標)を投影するフォーカス指標投影光学系40、患者眼Eの視線を誘導する固視標と各種検査視標を呈示する視標呈示光学系70から構成される。
【0013】
<照明光学系> 照明光学系10は、撮影照明光学系と観察照明光学系を有する。撮影照明光学系は、可視光束を照射する撮影光源14、コンデンサレンズ15、リング状の開口を有するリングスリット17、リレーレンズ18、ミラー19、中心部に黒点を有する黒点板20、リレーレンズ21、孔あきミラー22、対物レンズ25を有する。
観察照明光学系は、近赤外光の光束を照射する照明光源11、近赤外光を透過する赤外フィルター12、コンデンサレンズ13、コンデンサレンズ13とリングスリット17との間に配置されたダイクロイックミラー16、リングスリット17から孔あきミラー22までの光学系と、対物レンズ25を有する。
【0014】
<観察・撮影光学系> 観察・撮影光学系30は、眼底観察光学系、眼底撮影光学系、前眼部観察光学系を有する。眼底観察光学系は、対物レンズ25、孔あきミラー22の開口近傍に位置する撮影絞り31、光軸方向に移動可能なフォーカシングレンズ32、結像レンズ33、跳ね上げミラー34を備える。跳ね上げミラー34の反射方向の光路には、赤外光反射・可視光透過の特性を有するダイクロイックミラー37、リレーレンズ36、赤外域に感度を有する観察用の二次元撮像素子38が配置され、赤外光源で照明された眼底像が撮像素子38で撮影される。なお、跳ね上げミラー34は挿脱機構39によって眼底の観察時に光路に挿入され、眼底の撮影時に光路から外される。
眼底撮影光学系は、対物レンズ25,撮影絞り31から結像レンズ33までの光学系を眼底観察光学系と共用する。また眼底撮影光学系は、可視域に感度を有する撮影用の二次元撮像素子35を備え、可視光源14で照明された眼底像が撮像素子35で撮影される。なお、撮影絞り31は眼Eの瞳孔と略共役な位置に置かれる。フォーカシングレンズ32はモータを備える移動機構49で光軸に沿って移動される。
【0015】
以上の構成により眼底の観察時には、照明光源11を発した光束は対物レンズ25によって眼Eの瞳孔付近で一旦収束された後、拡散して眼底を照明する。眼底からの反射光は、対物レンズ25、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33、跳ね上げミラー34、ダイクロイックミラー37、リレーレンズ36を介して撮像素子38に結像する。眼底の撮影時、撮影光源14で照明された眼底からの反射光は対物レンズ25、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33を経て二次元撮像素子35に結像する。
【0016】
前眼部観察光学系は、赤外光を発する光源35a、35b、対物レンズ25、前眼部観察補助レンズ26(以下、補助レンズと記す)を有し、穴あきミラー22から撮像素子38までの光学系を眼底観察光学系と共用する。赤外光源35a,35bは撮影光軸L1を挟んで対称的配置された一対の矩形状のLED光源であり、眼Eの角膜に向けて所定の投影角度で発散光束による有限遠の指標(患者眼に対して垂直方向に延びる矩形状の指標)を投影する。つまり光源35a,35bによって前眼部全体が照明されると共に、眼Eと撮影部3の三次元方向のアライメント状態が示される。
【0017】
なお、補助レンズ26は駆動手段26aの駆動で光路に挿脱される。補助レンズ2が光軸L1に置かれたとき前眼部と撮像素子38が略共役関係になる。つまり前眼部の観察時には、補助レンズ26が光軸L1上に置かれて撮像素子38で撮像された前眼部がモニタ8に表示される。一方、眼底観察時には、補助レンズ26が駆動手段26aの駆動で光路から退避され、撮像素子38と眼底が略共役関係となり、撮影された眼底像がモニタ8に表示される。
また、本実施形態では穴あきミラーの開口付近(眼底の略共役位置)に点光源27が設けられており、眼底観察時に点光源27が点灯されることで、眼底に形成されたワーキングドットWによる作動距離方向のアライメントが行われるようになっている。
【0018】
<フォーカス指標投影光学系> フォーカス指標投影光学系40は、赤外光源41、スリット指標板42、スリット指標板42に取り付けられた2つの偏角プリズム43、照明光学系10の光路に斜設されたレバー45、レバー45に取り付けられ眼底の共役位置に置かれるスポットミラー44、ロータリーソレノイド46、投影レンズ47とを備える。
レバー45は光軸上に置かれ、スポットミラー44は光軸上を避けた位置に置かれるようにレバー45の先端に取り付けられる。これにより眼底の観察時に、スポットミラー44からの反射光が眼底上の光軸L1上を避けた位置に投影される。
【0019】
スリット指標板42の光束は、偏角プリズム43で分離された後、投影レンズ47を介してスポットミラー44で反射され、リレーレンズ21、孔あきミラー22、対物レンズ25を経て眼底に投影される。眼底のフォーカスが合っていないとき、スリット指標板42の指標像(フォーカス指標S1,S2)は眼底と共役関係になっていないため眼底に分離して投影される。この場合、フォーカス視標S1,S2の分離状態の検出結果に基づき、駆動機構49の駆動によってフォーカシングレンズ32及びフォーカス視標投影光学系40が連動して光軸方向に移動される。一方、眼底のフォーカスが合った状態では、フォーカス指標S1,S2は眼底と共役位置にあり合致する。なお、フォーカスが合った状態で眼底撮影が行われるときには、ロータリーソレノイド46の軸の回転によってレバー45が光路から退避される。
【0020】
<視標呈示光学系> 視標呈示光学系70は、患者眼(被検眼眼底)に固視標及び検査視標を呈示する視標呈示部100を持ち、観察・撮影光学系30の対物レンズ25から跳ね上げミラー34までを共用する。また視標呈示部100には所定の輝度値にて検査視標を投影する際の投影光束の光量(投影光量)を検出する検出部である光量モニタ140が接続され、光量モニタ140は制御部80に接続される。これにより制御部80は光量モニタ140による視標呈示部100の光量の検出結果に基づき視標呈示部100の光量の出力を調節する。なお光量モニタ140には周知のフォトダイオード等が使用される。
【0021】
視標呈示部100には、例えば特開2003‐172974号公報に記載の周知の構成が適用される。図3に視標呈示部100の例を示す。視標呈示部100は、光源101、分光手段としての波長選択ミラー102,103、反射ミラー104〜106、表示パネル110〜112、クロスダイクロプリズム120、光路分岐用のビームスプリッター130を持つ。光源101には白色のLED光源が使用される。これ以外にも光源101には、ハロゲンランプ等の周知の熱輻射光源や、レーザ光源などを使用できる。
【0022】
波長選択ミラー102は、赤色の波長帯域の光束を反射して、その他の波長帯域の光束を透過させる特性を持つ。波長ミラー103は、緑色の波長帯域の光束を反射して、その他の波長帯域の光束を透過させる特性を持つ。反射ミラー104は残りの(青色の)波長帯域の光束を反射させる。
表示部である各表示パネル110〜112は格子状に配置された複数の画素をもち、各画素の駆動で光源101からの光束の透過量を調整することで被検眼眼底に投影される指標を形成する。ここでは表示パネル110はミラー102で反射された赤色の光束で照明される。表示パネル111はミラー103で反射された緑色の光束で照明される。表示パネル112はミラー104で反射された青色の光束で照明される。これにより各表示パネル110〜112によってRGBの各色の画像が形成される。つまり表示パネル110の画素の駆動で赤色の映像が形成され、表示パネル111の画素の駆動で緑色の映像が形成され、表示パネル112の画素の駆動で青色の映像が形成される。そして各色の映像の合成によって白色又はカラーの検査視標が形成される。
【0023】
なお表示パネル110〜112には液晶パネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル等の周知のものが使用される。更には表示パネルにMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等を用いて、画素の駆動により、光源101からの各RGB光束を反射させて視標を形成しても良い。
【0024】
クロスダイクロプリズム120は、各表示パネル110〜112を透過した各色の光束を同軸にする。これにより各表示パネル110〜112に形成されたRGB毎の画像が合成されて一つの画像が形成される。
ビームスプリッター130は、クロスダイクロプリズム120で同軸にされた光束を光軸L2に導くと共に、光束の一部を反射して光量モニタ140に導く。
以上の構成により、光源101から照射された光束は波長選択ミラー102、103、反射ミラー104を介して、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の異なる波長帯域を持つ3つの光束成分に一旦分光される。そしてR光束は反射ミラー105を介して表示パネル110を照明し、G光束は直接表示パネル111を照明し、B光束は反射ミラー106を介して表示パネル112を照明する。各表示パネル110〜112を透過した光束は、クロスダイクロプリズム120で同軸にされ、プリズム120で反射された光束は光路分起用プリズム130を透過して光軸L2に導かれる成分と、プリズム130で反射されて光量モニタ140に入射される成分とに分けられる。
【0025】
光量モニタ140はプリズム130による反射光量を検出する。光量モニタ140で信号が検出されると、制御部80は光量モニタ140による光量の検出結果に基づき光源101の輝度(光量)が一定値となるようにを調節する。これにより、光源の経時劣化による輝度の低下、光源ごとの特性のばらつきに関わらず、ビームスプリッター130で反射され光軸L2方向に導かれる光束の光量を一定に保つことができるようになる。
以上の視標呈示光学系によって、被検眼眼底に投影される検査視標の輝度が変化される。
【0026】
<制御系> 制御部80は、上述の光学系及び制御系に接続されて各種動作制御を行う。また制御部80には記憶部であるメモリ83が接続され、各種プログラムや、光源101の光量の基準値(設定値)の情報等が予め記憶されている。また制御部80は光量モニタ140による投影光束の光量の検出結果が所定の光量レベルとなるように、投影光量の検出結果に基づき視標呈示光学系70の投影光束を調整する。例えば、制御部80は光量モニタ140による投影光束の光量の検出時に液晶パネル110〜112を所定の透過率に設定する。また制御部80は視標呈示部100の光源101の出力変更と表示パネル110〜112の画素制御により投影光束を調節する。
【0027】
次に以上のような構成を備える眼底撮影装置の動作を説明する。
まず装置を起動させると、光源101の出力がチェックされる。制御部80によって光源101が所定光量となるように点灯されると、上述のように各表示パネル110〜112に合成されたRGBの波長帯域毎の画像がクロスダイクロプリズム120で合成される。クロスダイクロプリズム120で合成された光束はビームスプリッター130を介して光軸L2に導かれると共に、その光量の一部はビームスプリッター130で反射されて光量モニタ140に入射される。制御部80は光量モニタ140で検出された光量とメモリ83に記憶されている基準値(光量)とを比較する。測定光量と基準値との差分が所定の誤差範囲であると判断されると、制御部80は光源101の出力又は表示パネル110〜112の画素制御の状態を変えずに視野検査を開始する。一方、光量モニタ140の測定光量と基準値を比較した結果、測定光量が基準値に対して所定の誤差範囲から外れると判断されると、制御部80は、光源101の出力又は表示パネルの画素制御によって、光源101の測定光量が基準値に対して所定の誤差範囲となるようにする。例えば、測定光量が基準値よりも低い場合には、制御部80は光源101の光量を増加させるように出力を調整することで、被検眼眼底に対する指標の投影光束の光量を調節する。そして新たに設定された光源101の出力の基準値をメモリ83に記憶させる。又は光源101の出力を変えずに、各表示パネル110〜112の透過率を変えることで、眼底に投影される指標の投影光束の光量を調節する。そして新たに設定された各表示パネル110〜112の透過率の情報をメモリ83に記憶させる。
このように装置の起動時に指標の投影光束の光量補正が行われることで、光源101の劣化や光源101の交換等による条件変化に関わらず、常に一定の光量で検査視標を投影でき、所定の検査精度を維持できるようになる。
【0028】
以上のように光源101の出力の基準値の補正が完了したら、患者の顔を装置1に近づけ、撮影眼(患者眼E)を、撮影窓9に合わせて装置内部を覗き込ませ、前眼部像を用いた位置合わせ(アライメント)を開始する。制御部80による駆動手段22aの駆動で光軸L1に前眼部観察補助レンズ22を置き、光源35a、35bを点灯させると患者眼Eの前眼部が照明され、角膜上にアライメント視標が投影されるようになる。また制御部80は、視標呈示部100の駆動で患者眼Eに固視標を呈示させる。具体的には制御部80は光源101を点灯させた状態で、各表示パネル110〜112の画素の駆動で光軸L2に対応する位置に固視標を形成する。
【0029】
眼Eが固視標で誘導されると、モニタ8に前眼部像が表示される。図4にモニタ8に表示される前眼部像の例を示す。ここでは、撮像素子38で撮像された前眼部像F1上に矩形状のアライメント視標M1、M2が現れている。制御部80は、アライメント視標M1、M2の受光結果に基づき撮影部3と患者眼Eとの位置合わせ(アライメント)を行う。
制御部80は、撮像素子38で撮像されたアライメント指標像M1、M2から求められる中間位置と、撮像素子38で検出された前眼部像から求められる瞳孔中心を一致させるように、駆動部6の駆動で撮影部3全体を上下左右(XY)方向に移動させる。またアライメント視標M1、M2が所定間隔となるように、駆動部6の駆動で撮影部3を眼Eに対して前後(Z)方向に移動させる。なお本実施形態のアライメント動作の詳細な説明は国際公開2008/062527号公報を参照されたい。
三次元方向のアライメントが許容範囲に入ると、制御部80はアライメントの完了を判断して、眼底のフォーカス合わせを開始する。
【0030】
制御部80は光源35a,35bを消灯させ、駆動手段26aの駆動で前眼部観察補助レンズ26を光路上から退避させて、光源11を点灯させる。
図5はモニタ8に表示される眼底像の例であり、図5(a)に眼底のフォーカスが合っていない状態、図5(b)に眼底のフォーカスが合っている状態が示されている。制御部80は、撮像素子38の撮像範囲の輝度分布に基づき、フォーカス指標S1,S2の位置を特定し、検出されたフォーカス指標S1,S2間の距離(分離状態)を求め、検出結果に基づくフォーカス合わせを行う。
【0031】
図5(a)に示されるようにフォーカスが合っていないとき、制御部80はフォーカス視標S1,S2が合致するように、フォーカシングレンズ32を光軸L1上で移動させる。そして制御部80によってフォーカスが適切であると判断されるとフォーカス調節が完了する。
モニタ8に眼底像F2が鮮明に映る状態となると、制御部80によって視野計測中に生じる眼Eの移動及び回旋により生じる眼Eと撮影部3(光軸L1)の位置ずれを補正するオートアライメント、呈示視標の位置ずれを補正するトラッキングが行われる。なおオートアライメント及びトラッキングについての詳細な説明は特開2011‐255045号公報を参照されたい。
【0032】
次に、制御部80は、メモリ83に予め記憶されている視野計測プログラムに従い、眼Eに視野検査視標を呈示させる。制御部80は上述の固視標の呈示方法と同じく、検査視標の呈示位置に対応させて各表示パネル110〜112の画素の駆動を制御することで、眼底の所期の位置に固視標及び検査視標を呈示させる。また光源101の出力又は表示パネル110〜112の画素の駆動により視野検査視標の輝度(明るさ)を所定のステップで変更させる(例えば1dBステップ)。この時、装置の起動時に補正された光量の基準値を基準として検査視標の投影光束の光量が制御されるので、患者眼に所定輝度の検査視標が精度良く投影されるようになる。
【0033】
以上のような視標呈示部100の駆動制御で、視野検査指標の呈示位置がランダムに切り変えられると共に、視野検査指標の輝度が変更される。このとき、患者は固視標による固視を維持しながら、視野検査視標を認識したら応答ボタン7bを押す。制御部80は、入力信号に基づきそのときの視野検査視標の輝度を、その計測点における患者の認識可能な感度の応答情報としてメモリ83に記憶させる。一方、視野検査視標に対する応答ボタン7bの入力が無い場合には、そのときの視野検査視標の輝度を、計測点における患者が認識できない感度の応答情報としてメモリ83に記憶させる。
【0034】
この時、上述したように装置の起動時に光源101の出力値又は液晶パネル110〜112の透過率が補正されていることで、眼底には所期の投影光量の検査視標が投影される。その為、患者の視野検査結果を精度良く得ることができる。
すべての計測点での視野検査が終了すると、制御部80は眼底視野の感度閾値の分布状態をモニタ8に表示させる。検者はモニタ8に表示された視野感度の分布状態から網膜上の視機能の分布を確認する。
【0035】
以上のように装置の起動時に検査視標の投影光量が補正(調整)されることで、患者眼の検査精度を維持できるようになる。また装置の起動時に光源101の光量低下が自動的に検出して補正されるため検者の手間を軽減することもできる。
なお以上のような投影光量の補正は、装置の起動時だけでなく任意のタイミングで行うことができる。例えば、コントロール部7aの操作で投影光量の検出が行われる時期を検者が設定しても良い。具体的には装置の起動回数がメモリ83に蓄積される状態で、装置の起動が所定回数繰り返された時に投影光量の検出が実行されるように設定しても良い。又は視野検査が開始される直前に投影光量の検出の制御が実行されても良い。
【0036】
なお本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば上記では光源101に白色光源を用いる例を示したが、RGBのそれぞれの波長帯域を持つ複数の光源が設けられても良い。なおこの場合は、図3において光源101の光束の波長帯域を選択するミラー102、103等の構成を省略できる。
【0037】
またRGBの波長帯域毎に投影光量を検出して色温度を補正しても良い。例えば図3において、各表示パネル110〜112のオン(ON)とオフ(OFF)の切り替えによって、光量モニタ140でRGB毎の異なる波長帯域の光量を検出する。例えばR成分の光量を検出する場合には、表示パネル110のみをONにし、表示パネル111、112をOFFにする。同様にG成分の光量検出では表示パネル111をONにして表示パネル110、112をOFFにする。B成分の光量検出では表示パネル112をONにして、表示パネル110,111をOFFにする。そして制御部80は光量モニタ140によるRGB毎の光量の検出結果に基づき、各表示パネル110〜112の画素の駆動でその透過量(投影量)を調節し、RGB毎の投影光量の出力を個別に調節する。なおこの場合にはメモリ83にRGB毎の投影光量の基準値が記憶されているとする。
【0038】
以上のように、視標の色温度が一定に保たれることで、例えば、装置の光源の種類が変わった場合であっても光源101の色温度が一定に保たれるようになる。特にカラーの検査視標による検査を行う場合に、色温度が一定に保たれることで所定の検査精度を維持できることが期待される。
勿論、光源101にRGB各色の複数の光源が用いられる場合には、各光源の光量又は各RGB光源に対応付けられた液晶パネルが個別に調節されても良い。
【0039】
なおこのような色温度の補正は、表示パネル110〜112の局所領域で異なる色温度となるように補正されてもよい。このようにするとモニタ8の同一画面上で異なる色温度の画像を形成できるようになる。
また上記では眼底に検査視標を投影して患者の応答に基づく視野検査を行う例を説明した。これ以外にも本発明は患者眼に検査視標を呈示する視標呈示部を備える装置に適用可能であり、光源の光量の出力値(透過量)に基づく輝度又は色度の補正が行われることで常に所定の精度での検査結果を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】眼底検査装置の外観構成図である。
図2】眼底検査装置の光学系及び制御系の説明図である。
図3】視標呈示部の説明図である。
図4】モニタに表示される前眼部像の例である。
図5】モニタに表示される眼底像の例である。
【符号の説明】
【0041】
1 眼底検査装置
10 照明光学系
30 観察・撮影光学系
40 フォーカス指標投影光学系
80 制御部
100 視標呈示部
110、111、112 表示パネル
130 ビームスプリッター
140 光量モニタ
図1
図2
図3
図4
図5