特許第6064388号(P6064388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6064388-ボンディングヘッド 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064388
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】ボンディングヘッド
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   H01L21/60 311T
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-145862(P2012-145862)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-11263(P2014-11263A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082108
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄次
(72)【発明者】
【氏名】安吉 裕之
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−87210(JP,A)
【文献】 特開平4−230050(JP,A)
【文献】 特開2010−129890(JP,A)
【文献】 特開2007−329306(JP,A)
【文献】 特開2011−109046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/60−21/607
H05K13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに設けられてレーザ光を透過させるツールベースを備え、このツールベースを透過させたレーザ光により電子部品を加熱して基板に接合するようにしたボンディングヘッドにおいて、
上記ツールベースの上記レーザ光が入射する表面に接触して設けられ、上記レーザ光を透過させる光透過性を有するとともに、上記ツールベースの熱伝導率よりも大きな熱伝導率を有した放熱部材と、
上記放熱部材の上記レーザ光が入射する表面に接触して設けられ、その中心部を上記レーザ光が通過できるように放熱部材の周囲に配置され、かつ上記放熱部材の熱伝導率よりも大きな熱伝導率を有する金属材料からなる冷却部材とを備えることを特徴とするボンディングヘッド。
【請求項2】
上記放熱部材における上記レーザ光が透過する部分の厚さは、ツールベースにおける上記レーザ光が透過する部分の厚さよりも大きく設定してあることを特徴とする請求項1に記載のボンディングヘッド。
【請求項3】
上記ツールベースと電子部品との間にボンディングツールが配置されて、該ボンディングツールはツールベースと電子部品とにそれぞれ接触するようになっており、上記ツールベースを透過したレーザ光はボンディングツールを加熱して、加熱されたボンディングツールが電子部品を加熱するようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボンディングヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボンディングヘッドに関し、より詳しくは、ハウジングに設けられてレーザ光を透過させるツールベースを備え、このツールベースを透過させたレーザ光により電子部品を加熱して基板に接合するようにしたボンディングヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のボンディングヘッドとして、ツールベースを透過させたレーザ光により直接電子部品を加熱するようにしたものが知られている(特許文献1)。このボンディングヘッドは、電子部品にレーザ光吸収性と耐久性がある場合に用いられており、電子部品はツールベースの下面で直接保持されて、ツールベースを透過したレーザ光により加熱されるようになっている。
また従来、ツールベースを透過させたレーザ光によりボンディングツールを加熱し、このボンディングツールを介してこれに吸着保持した電子部品を加熱するようにしたボンディングヘッドも知られている(特許文献2)。このボンディングヘッドは、電子部品にレーザ光吸収性と耐久性がない場合に用いられており、この場合には光吸収性を有するボンディングツールをツールベースの下面に装着し、ボンディングツールの下面で電子部品を保持するようにしている。
上記特許文献1、2におけるボンディングヘッドにおけるツールベースは、いずれも石英で製造されている。石英は光透過性を有するためレーザ光によっては昇温されず、また熱伝導率が小さいため、レーザ光によって加熱された電子部品、又はボンディングツールからの伝熱が伝わりにくく、それ自体が昇温されにくくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−182162号公報
【特許文献2】特開2010−129890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子部品を基板に接合するボンディング処理を行えば、ツールベースには加熱された電子部品又はボンディングツールからの熱が伝わるため、温度が上昇するようになる。
電子部品を基板に接合した後、次の電子部品をピックアップする際には、ツールベースは所定温度以下となっていなければならないが、上述したようにツールベースを構成する石英は熱伝導率が小さいため、これが昇温されると逆に冷却に時間がかかることになる。特にボンディングツールを用いたボンディングヘッドにおいては、ボンディングツールを冷却してもそれに伴なってツールベースからボンディングツールに熱が戻ってきてしまうため、冷却時間の短縮が困難であった。
そして特に熱硬化性樹脂を接着剤に用いたボンディングにおいては、電子部品をピックアップする際には、ツールベースの温度を熱硬化性樹脂が硬化しない室温付近まで降下させる必要があるため、ボンディング装置のタクトアップのためには冷却時間の短縮は必須の課題であった。
本発明はそのような事情に鑑み、より迅速にツールベースを冷却することが可能なボンディングヘッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、ハウジングに設けられてレーザ光を透過させるツールベースを備え、このツールベースを透過させたレーザ光により電子部品を加熱して基板に接合するようにしたボンディングヘッドにおいて、
上記ツールベースの上記レーザ光が入射する表面に接触して設けられ、上記レーザ光を透過させる光透過性を有するとともに、上記ツールベースの熱伝導率よりも大きな熱伝導率を有した放熱部材と、
上記放熱部材の上記レーザ光が入射する表面に接触して設けられ、その中心部を上記レーザ光が通過できるように放熱部材の周囲に配置され、かつ上記放熱部材の熱伝導率よりも大きな熱伝導率を有する金属材料からなる冷却部材とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
上述したようにツールベースは、電子部品を基板に接合する際に加熱されて温度が上昇するようになる。しかるに本発明においては、ツールベースのレーザ光が入射する表面に放熱部材を接触させて設けてあり、この放熱部材は上記ツールベースの熱伝導率よりも大きな熱伝導率を有しているので、電子部品からツールベースに逃げてこれに蓄熱されようとする熱は、上記大きな熱伝導率を有する放熱部材に速やかに逃げるようになる。
したがってツールベースが昇温されるのを常に良好に防止することができるので、ボンディング装置のタクトアップを達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1において、1は基板2に電子部品3を接合するボンディング装置であって、該ボンディング装置1は、上記基板2を支持して水平面内でX−Y方向に移動させる基板ステージ4を備えている。上記基板ステージ4の上方側にボンディングヘッド6を配置してあり、このボンディングヘッド6は昇降加圧機構7によって昇降させることができるようにしてある。
上記ボンディングヘッド6は筒状に形成したハウジング6Aを備えており、このハウジング6Aの下端部にリング状の取付部材6Bを介してツールベース8を水平に固定し、後に詳述するように該ツールベース8の下面にボンディングツール9を着脱自在に吸着保持すると同時に、該ボンディングツール9の下面に上記電子部品3を着脱自在に吸着保持できるようにしてある。
【0009】
上記ハウジング6Aの側面上部には可撓性を有する光ファイバー11の一端部を水平方向となるように接続してあり、この光ファイバー11の他端はレーザ発振器12に接続してある。
上記レーザ発振器12から発振されたレーザ光Lは、光ファイバー11を介して上記一端部からハウジング6Aの中心に向けて水平に照射されるとともに、集光レンズ13によって所要の大きさに集光されるようになっている。
そして水平方向に照射されたレーザ光Lは、ハウジング6Aの内部上方中央部に設けた反射ミラー14により鉛直下方に反射され、ツールベース8の上記レーザ光Lが入射する側の表面に積層密着させて設けた光透過性を有する放熱部材15および上記ツールベース8を透過してボンディングツール9に照射されて、該ボンディングツール9を加熱することができるようになっている。
【0010】
上記放熱部材15はツールベース8の熱伝導率よりも大きな熱伝導率を有しており、この放熱部材15の上面に、該放熱部材15の熱伝導率よりも大きな熱伝導率を有する冷却部材16を接触させて設けてある。この冷却部材16は、その中心部を上記レーザ光が通過できるように筒状に形成してあり、したがって放熱部材15の周囲に配置されてその上面に接触している。また該放熱部材15の外周面は、ハウジング6Aの内周面に密着させてある。
本実施例においては上記ツールベース8の厚さを薄く設定すると同時に、上記放熱部材15の厚さをツールベース8の厚さよりも大きく設定している。これによりツールベース8に蓄熱される熱量を可及的に少なくすることができ、またツールベース8の厚さを薄く設定してもその強度を放熱部材15によって補強することができる。
【0011】
上記ツールベース8は例えば強度が高く、かつ熱伝導率が小さな石英によって薄板状に形成してある。石英の熱伝導率は1.5W/m・Kである。上記放熱部材15は例えば熱伝導率が大きなサファイヤによって薄板状に形成してある。サファイアの熱伝導率は40W/m・Kである。また冷却部材16やハウジング6Aはアルミニウムによって製造してあり、アルミニウムの熱伝導率はサファイヤよりも大きく、236W/m・Kである。なお、ボンディングツール9はシリコンカーバイド製の薄い部材から構成してあり、シリコンカーバイドの熱伝導率は80W/m・Kである。
上記放熱部材15の材料としてはサファイヤのほか、レーザ透過性を有し、かつ熱伝導率の大きなダイヤモンドやルビーを用いることができる。また冷却部材16やハウジング6Aとしてはアルミニウムのほかに、熱伝導率の大きな金属材料を用いることができる。特にこの冷却部材16やハウジング6Aの内部に、例えば冷却水を流通させる冷却通路を設けて、冷却部材16とハウジング6Aとの少なくともいずれか一方を冷却するようにすることが望ましい。
【0012】
上記基板ステージ4、レーザ発振器12および昇降加圧機構7の作動は図示しない制御装置によって制御されるようになっており、この制御装置によってレーザ発振器12を作動させることにより、レーザ光Lをボンディングツール9に照射させてこれを加熱することができるようにしてある。
上記レーザ発振器12としては、半導体レーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、或いはその他のレーザを用いることができる。
【0013】
上記ハウジング6Aには負圧供給手段21に接続されたツール吸着用負圧ポート22と、負圧供給手段23に接続されたチップ吸着用負圧ポート24とが設けられており、ツール吸着用負圧ポート22から導入される負圧によってボンディングツール9をツールベース8の下面に吸着保持し、またチップ吸着用負圧ポート24から導入される負圧によって電子部品3をボンディングツール9の下面に吸着保持することができるようにしてある。
上記ツール吸着用負圧ポート22は、冷却部材15に形成した半径方向の連通孔26と上下方向の連通孔27、および冷却部材16の下面に形成した連通溝29を介して、放熱部材15とツールベース8とに両者を貫通させてそれぞれ形成したツール吸着孔30、31に連通させている。
これらツール吸着孔30、31はボンディングツール9と重合する位置に形成してあり、したがってツール吸着孔30、31に負圧を導入することにより、ツールベース8の下面にボンディングツール9を吸着保持することができるようになっている。
【0014】
他方、上記チップ吸着用負圧ポート24は、ツールベース8の上面に形成した水平方向の連通溝33を介して、ツールベース8とボンディングツール9とに両者を貫通させてそれぞれ形成したチップ吸着孔35、36に連通させている。
そして上記チップ吸着孔35、36に負圧を導入することにより、ボンディングツール9の下面に電子部品3を吸着保持することができるようにしてある。
上記ツール吸着用負圧ポート22には常時負圧が供給されて上記ツールベース8からボンディングツール9が脱落しないようになっており、他方、チップ吸着用負圧ポート24には電子部品3を吸着保持する際に負圧が供給されるようになっている。
【0015】
以上の構成において、電子部品3をボンディングツール9の下面に吸着保持した状態において、レーザ光Lが放熱部材15およびツールベース8を透過してボンディングツール9に照射されると、該ボンディングツール9がレーザ光Lによって加熱されて、電子部品3およびその下面の複数箇所に配置されたバンプ37が加熱されるようになる。
制御装置は、基板ステージ4を作動させて、ボンディングツール9に保持した電子部品3と基板2とを位置合わせした状態において、上記昇降加圧機構7によるボンディングヘッド6の下降を開始するようになっている。ボンディングヘッド6を所定の高さまで下降させ、電子部品と基板とを当接させ所要のボンディング荷重をかけた状態において、レーザ発振器12からレーザ光Lを発振させてボンディングツール9に照射させることにより、ボンディングツール9に吸着保持された電子部品3は、加熱されながら基板2へ押圧されて該基板2に接合されるようになる。
このようにしてボンディング作業が終了したら、制御装置からの指令によりチップ吸着孔35、36からの吸引が停止されるので、ボンディングツール9による電子部品3の保持状態が解除され、その後、昇降加圧機構7によりボンディングヘッド6が上昇され、次回のボンディングに移行するようになる。
【0016】
上記ボンディングツール9がレーザ光Lによって加熱される際には、加熱されたボンディングツール9からこれに接触しているツールベース8に熱が逃げることになるが、ツールベース8の熱伝導率は小さく設定してあるので、ボンディングツール9からツールベース8に逃げる熱量を抑制することができる。したがってこれにより、ボンディングツール9を速やかに所要の温度まで昇温させることが可能となる。
ところでボンディング作業が行われると、熱はボンディングツール9からツールベース8に伝達されるので、それによってツールベース8の温度が上昇するようになる。しかしながらツールベース8には該ツールベース8の熱伝導率よりも大きな熱伝導率を有する放熱部材15が接触されているので、ツールベース8に蓄熱されようとする熱は速やかに放熱部材15に逃げるようになる。これにより、ツールベース8の温度を常に低温に維持することが可能となる。
そして放熱部材15に逃げた熱は、さらに冷却部材16やハウジング6Aを介して外部に逃げるようになる。
【0017】
上記ボンディングツール9に対するレーザ光Lの照射を終了した際には、このボンディングツール9は冷却されることになるが、この際には、それ以前にボンディングツール9からツールベース8に逃げた熱によって昇温されたツールベース8からボンディングツール9に熱が戻ることとなる。
しかしながら上述したように、ツールベース8に逃げた熱は放熱部材15側に逃げるので、ツールベース8からボンディングツール9に戻ろうとする熱量を従来に比較して遥かに低減させることが可能となる。
したがってこれにより、ボンディングツール9の速やかな冷却が可能となる。このように本実施例によれば、従来に比較してボンディングツール9の冷却効率を高めることができるので、ボンディング装置1のタクトアップを達成することが可能となる。
【0018】
なお、上記実施例では、レーザ光Lによりボンディングツール9を加熱し、この加熱されたボンディングツール9によって電子部品3を加熱するようにしているが、ボンディングツール9を省略してツールベース8に電子部品3を吸着保持し、この電子部品3をレーザ光Lによって直接加熱するようにしてもよい。
この場合には、上記ツール吸着用負圧ポート22からツール吸着孔30、31への負圧の導入を停止させて、ツールベース8の下面に吸着保持していたボンディングツール9を離脱させるとともに、チップ吸着用負圧ポート24からチップ吸着孔35に負圧を導入して、該チップ吸着孔35によってツールベース8の下面に直接電子部品3を吸着保持すればよい。つまりこの場合には、ツールベース8がボンディングツール9として作用することになる。
このように上記実施例のボンディング装置1は、ツールベース8を透過させたレーザ光Lにより、ボンディングツール9を介して電子部品3を加熱したり、ツールベース8に吸着保持した電子部品3を直接加熱したりすることができるが、それぞれ専用機として構成することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0019】
1 ボンディング装置 2 基板
3 電子部品 6 ボンディングヘッド
6A ハウジング 8 ツールベース
9 ボンディングツール 15 放熱部材
16 冷却部材 L レーザ光
図1