(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064444
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】注出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/36 20060101AFI20170116BHJP
B65D 51/22 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
B65D47/36 N
B65D51/22
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-188603(P2012-188603)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-46922(P2014-46922A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】吉弘 憲司
(72)【発明者】
【氏名】木内 航機
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 永成
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 義和
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−173631(JP,A)
【文献】
特開2012−076785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/36
B65D 51/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の開口部に装着される閉鎖板に円環状のスコアを形成した中栓と、
中栓を覆い、容器本体に装着される上蓋を有し、
前記スコアでの破断によって中栓が開口される注出容器であって、
前記中栓は、閉鎖板の中心に立設された円柱部から外方に放射状に延び、前記上蓋を回転させて前記容器本体に装着する回転方向と逆方向に凸状に曲面状に湾曲した形状であり、その先端部がスコアに沿って等間隔に配列して形成された複数の曲面羽根状壁片を有し、
前記上蓋は、前記中栓の曲面羽根状壁片を囲み、該曲面羽根状壁片に係止可能な複数の係止突起を有し、
前記曲面羽根状壁片の数が前記係止突起の数よりも多く、
前記上蓋が前記容器本体に装着され、前記曲面羽根状壁片と前記係止突起とが相互に干渉し合う状態が生じたときに、前記曲面羽根状壁片の全てを干渉し合う状態とならない位置に配置され、
上蓋を容器本体から外す際に、前記曲面羽根状壁片と前記係止突起とが相互に係止して前記中栓のスコアが開口されることを特徴とする注出容器。
【請求項2】
前記曲面羽根状壁片と係止突起の数の最大公約数が3以上である請求項1に記載の注出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の口部に装着される中栓と、前記容器本体に装着される上蓋とを有し、前記上蓋の回転力により中栓の閉鎖板のスコアを破断して分離部を閉鎖板から分離し、中栓を開口する注出キャップを用いた注出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中栓部材とオーバーキャップ部材とを備え、中栓部材の注出口を閉塞する閉塞体を容易破断部で接続し、前記閉塞体及びオーバーキャップ部材のうち一方に第1係合部をキャップ径方向に突設し、前記閉塞体及び前記オーバーキャップ部材のうち他方にキャップ径方向に突設され、キャップ周方向に向けて延びる弾性変形可能な第2係合部を形成し、前記オーバーキャップ部材を前記中栓部材に対してキャップ周方向の一方側へ回動させて前記第2係合部の先端部と前記第1係合部とがキャップ周方向に係合し、キャップ周方向の他方側へ回動させることで、前記第2係合部がキャップ径方向に弾性変形して前記第1係合部を通過するように形成された注出キャップが提案されている(特許文献1)。
このような注出キャップによれば、オーバーキャップ部材に加えられた外力によって容易破断部が予期せず破断してしまうことが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−173631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前述した従来のキャップは、前記閉塞体及び前記オーバーキャップ部材のうち、一方に形成されるキャップ径方向に突設され、キャップ周方向に向けて延びる弾性変形可能な第2係合部の断面形状が直線状の鉤状を呈している。このため、オーバーキャップ部材を容器体に装着する際の抵抗が大きく、また、装着した際に、第1係合部と第2係合部が重なって相互に干渉(係合)した状態が続くと、前記第1係合部及び/又は第2係合部にクリープ変形が生じ、オーバーキャップ部材による中栓部材の容易破断部(スコア・弱化線)の破断が安定的に行われない恐れがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、上蓋を容器本体に装着する際の抵抗が小さく、また、上蓋を中栓に装着した際に、中栓と上蓋の係合部が重なって相互に干渉(係合)した状態が続いても、前記係合部のクリープ変形が防止され、上蓋による中栓に形成されたスコア(弱化線)の破断を容易に行って中栓を開口する注出キャップを用いた注出容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る注出容器は、容器本体の開口部に装着される閉鎖板に円環状のスコアを形成した中栓と、中栓を覆い、容器本体に装着される上蓋を有し、前記スコアでの破断によって中栓が開口される注出容器であって、前記中栓は、閉鎖板の中心
に立設された円柱部から外方に放射状に延び、
前記上蓋を回転させて前記容器本体に装着する回転方向と逆方向に凸状に曲面状に湾曲した形状であり、その先端部がスコアに沿って等間隔に配列して形成された複数の曲面羽根状壁片を有し、前記上蓋は、前記中栓の曲面羽根状壁片を囲み、該曲面羽根状壁片に係止可能な複数の係止突起を有し、
前記曲面羽根状壁片の数が前記係止突起の数よりも多く、前記上蓋が前記容器本体に装着され、前記曲面羽根状壁片と前記係止突起とが相互に干渉し合う状態が生じたときに、前記曲面羽根状壁片の全てを干渉し合う状態とならない位置に配置され、上蓋を容器本体から外す際に、前記曲面羽根状壁片と前記係止突起とが相互に係止して前記中栓のスコアが開口されることを特徴とする。
【0007】
このような構成により、上蓋を容器本体に装着する際の抵抗が小さく、また、装着した際に、中栓の曲面羽根状壁片と上蓋の係止突起が位置して相互に干渉(係合)した状態が続いても係止突起と曲面羽根状片のクリープ変形が防止され、上蓋による中栓のスコア(弱化線)の破断が容易、確実に行うことができる。
また、このような構成により、上蓋を容器本体から外す方向に回転させる際に、容器本体に装着された上蓋の回転動作(回転角度)を少なくして中栓の曲面羽根状壁片と上蓋の係止突起の係止が可能となり、容易に中栓の開口が行われる。
【0011】
本発明に係る注出容器において、前記曲面羽根状壁片と係止突起の数の最大公約数が3以上である構成とすることができる。
このような構成により、上蓋を容器本体から外す方向に回転させる際に、上蓋の回転力が相互に係止する3組以上の係止突起と曲面羽根状壁片とが係止するので、上蓋の回転力を確実に中栓に伝えることができ、より安定的に中栓の閉鎖板をスコアにて破断させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る注出容器によれば、上蓋を中栓に装着する際の抵抗が小さく、また、装着した際に、中栓の曲面羽根状壁片と上蓋の係止突起が位置して相互に干渉(係合)した状態が続いても曲面羽根状壁片と係止突起のクリープ変形が防止され、上蓋による中栓のスコア(弱化線)の破断が容易、確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る注出容器の構造を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す容器に用いられる中栓を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す中栓のA−Aにおける断面図である。
【
図4A】
図1に示す上蓋のA−Aにおける断面図で、
図2及び
図3に示す中栓の各曲面羽根状壁片と上蓋の環状係合壁に形成された係止突起との相対位置関係(その1)を示す断面図である。
【
図4B】
図1に示す上蓋のA−Aにおける断面図で、
図2及び
図3に示す中栓の各曲面羽根状壁片と上蓋の環状係合壁部に形成された係止突起との相対位置関係(その2)を示す断面図である。
【
図4C】
図1に示す上蓋のA−Aにおける断面図で、
図2及び
図3に示す中栓の各曲面羽根状壁片と上蓋の環状係合壁部に形成された係止突起との相対位置関係(その3)を示す断面図である。
【
図5A】中栓に形成される曲面羽根状壁片の他の形態例と、該曲面羽根状壁片と上蓋の環状係合壁部に形成された係止突起との相対的位置関係(その1)を示す断面図である。
【
図5B】中栓に形成される曲面羽根状壁片の他の形態例と、該曲面羽根状壁片と上蓋の環状係合壁部に形成された係止突起との相対的位置関係(その2)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
本発明の実施の一形態に係る注出容器100は、
図1に示すように構成され、注出容器100は、容器本体10、中栓20及び上蓋30から成り、中栓20と上蓋30とにより注出キャップが構成され、中栓20が容器本体10に固定的に装着され、上蓋30が、容器本体10に螺合して、回転させることにより装着及び取り外しが可能になっている。
【0016】
容器本体10は、円筒形状の口部11、該口部11の外周面にはネジ部11aが形成され、図示されていないが該口部11に続いて肩部、及び肩部に続く胴部にて構成され、胴部の下端部は底部にて閉鎖されている。中栓20は円盤状の閉鎖板21を有し、閉鎖板21の周縁から垂下する環状の装着部22が形成されている。環状の装着部22には全周にわたって溝22aが形成されており、その溝22aを口部11の先端部を嵌合することにより、閉鎖板21が口部11の開口を塞いだ状態で中栓20が口部11に装着される。
【0017】
次いで、中栓20の構造について、
図1乃至
図3を参照して詳細に説明する。
【0018】
図2及び
図3において、中栓20には、閉鎖板21の上面の注出ノズル26の内側に、閉鎖板21の中心に立設された円柱部280と、円柱部280の周囲から分離部24の外方に放射状に延び、その先端部281a、282a、283a、284a、285a、286a、287a、288aがスコア23に沿って等間隔に配列して形成された8つ(複数)の曲面羽根状壁片281、282、283、284、285、286、287、288とから構成されている。8つの曲面羽根状壁片281〜288は等間隔に配置され、それぞれは、反時計回り方向Dccに向けて凸状に曲面状に湾曲した形状を有している。
【0019】
次いで、上蓋30の構造について、
図1、
図4Aを参照して詳細に説明する。
上蓋30は、円盤状の上板31の周縁から垂下する環状外壁部32を有し、その内面には容器本体10の口部11の外周面に形成されたネジ部11aに螺合するネジ部32aが形成されている。また、この環状外壁部32の内側には、同心的に上板31から垂下する環状押え部33が形成され、上蓋30が容器本体10に装着された状態で、環状押え部33の先端部が口部11に嵌合された中栓20の閉鎖板21の外周部分を押さえる。さらに環状押え部33の内側には、同心的に上板31から垂下する環状係合壁部38が形成されている。そして、この環状係合壁部38の内面には、内方に向いて突出する4つ(複数)の係止突起381、382、383、384が形成されている(
図4A参照)。各係止突起381〜384は、反時計回り方向Dccに徐々に肉厚が増加する鋸刃状となっている。
【0020】
そして、前述した中栓20と上蓋30から成る注出キャップを用いた注出容器100において、上蓋30を時計回り方向Dcに回転させて容器本体10に装着する際は、
図4A及び
図4Bに示すように、上蓋30の環状係合壁部38の各係止突起381〜384は、中栓20の閉鎖板21の上面の注出ノズル26の内側に形成し、反時計回り方向Dccに向けて凸状に湾曲した各曲面羽根状壁片281〜288の外面に摺接しつつ、上蓋30が容器本体10に装着される。このため、上蓋30はその回転が妨げられることなくスムーズに回転し、上蓋30を容器本体10に装着する際の抵抗が低減される。
【0021】
一方、容器本体10に装着された状態の上蓋30を反時計回り方向Dccに回転させて容器本体10から取り外す際は、
図4Cに示すように、上蓋30の環状係合壁部38の4つの係止突起381〜384が、中栓20の曲面羽根状壁片288、282、284、286の先端部288a、282a、284a、286aに係止する。そして、この係止によって、回転する上蓋30の回転力が中栓20の閉鎖板21に作用し、該閉鎖板21に形成したスコア23が破断し、分離部24が閉鎖板21(中栓20)から分離されて中栓20が開口する。
【0022】
そして、上蓋30の環状係合壁部38に形成された係止突起381〜384の数(4つ)と、中栓20の壁片281〜288の数(8つ)とはその数が異なる。このため、上蓋30が容器本体10に装着された状態で、
図4Aに示すように、曲面羽根状壁片282の先端部282aと係止突起382、曲面羽根状壁片284の先端部284aと係止突起383、曲面羽根状壁片286の先端部286aと係止突起384、及び曲面羽根状壁片288の先端部288aと係止突起381とが、それぞれ相互に乗り上げて干渉しても、中栓20の壁片281〜288が外方に放射状に延び、凸状で曲面状に湾曲した形状を呈していることにより弾性的に変形し、干渉状態が長く続いても、曲面羽根状壁片282、284、286、288と係止突起382、383、384、381のクリープ変形は起き難い。さらに、中栓20の残りの4つの曲面羽根状壁片281、283、285、287は上蓋30の係止突起381〜384に干渉しないため、前述したクリープ変形したとしても、他の曲面羽根状壁片281、283、285、287は係止突起381〜384に干渉しないためクリープ変形しない。従って、上蓋30を反時計回り方向Dccに回転させて容器本体10から取り外す際に、クリープ変形せず、或いは、クリープ変形していない曲面羽根状壁片281、283、285、287の先端部281a、283a、285a、287aに係止突起381〜384が係止される。この結果、上蓋30の回転力が中栓20に確実に伝わり、中栓20の閉鎖板21のスコア23を確実に破断し、分離部24を閉鎖板21から取り除いて開口することができる。
【0023】
また、上蓋30の環状係合壁部38に形成された係止突起381〜384の数(4つ)が、中栓の第1係合部25を構成する壁片281〜288(先端部281a〜288a)の数(8つ)より少ないので、上蓋30が容器本体10に装着された状態で、
図4A及び
図4Bに示すように、隣接した係止突起(381〜384)の間に少なくとも1つの曲面羽根状壁片(281〜288)が配置される。このため、容器本体10に装着された上蓋30を係止突起381〜384の配置間隔より小さい曲面羽根状壁片281〜288の配置間隔(角度間隔)だけ回転させることにより、4つ曲面羽根状壁片の先端部と係止突起381〜384とが係止した状態になる。従って、上蓋30を反時計回り方向Dccに回転させて容器本体10から取り外す際に、係止突起381〜384が曲面羽根状壁片281、283、285、287の先端部281a、283a、285a、287aに係止させる際に空回りが少なく、上蓋30の回転開始から遅れることなく、中栓20の閉鎖板21のスコア23を破断して開口することができる。
【0024】
さらに、上蓋30の環状係合壁部38に形成された係止突起351〜354の数(4つ)と、中栓20の曲面羽根状壁片281〜288の数(8つ)との最大公約数が「4」であるので、上蓋30を反時計回り方向Dccに回転させて容器本体10から取り外す際に、
図4Cに示すように、環状係合壁部38の4つの係止突起と4つの曲面羽根状壁片の先端部とが係止するので、4組の係止突起と曲面羽根状壁片により上蓋30の回転力を確実に中栓20に伝えることができ、より安定的に中栓20の閉鎖板21のスコア23を破断させることができる。
尚、上蓋30の環状係合壁部38に形成された係止突起351〜354の数と、中栓20の曲面羽根状壁片281〜288の数との最大公約数は「3以上」であれば、上蓋30の回転力を確実に中栓20に伝えて安定的に中栓20の閉鎖板21のスコア23を破断させることができ、3〜6が好ましい。
【0025】
図5A及び
図5Bは、前述した本発明の注出容器100の中栓20に形成される曲面羽根状壁片の他の形態例を示し、中栓20の曲面羽根状壁片と上蓋の係止突起との数を
図5A及び
図5Bに示すように同じ数にすることもできる。この場合、上蓋30側の環状係合壁部39の内面に形成された係止突起391〜394と中栓20側の曲面羽根状壁片291〜294の先端部291a〜294aとが相互に係止していない状態(
図5A参照)において、上蓋30を反時計回り方向Dccに回転させると、
図5Bに示すように、環状係合壁部39の各第1係止突起381〜384が曲面羽根状壁片291〜294の先端部291a〜294aに係止する。そして、この係止によって、上蓋30の回転力が中栓20の閉鎖板21に伝達し、閉鎖板21のスコア23を破断して分離部24が閉鎖板21から分離される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明したように、本発明に係る注出容器は、上蓋を中栓に装着する際の抵抗が小さく、また、装着した際のクリープ変形が防止され、容器本体に装着された上蓋を当該容器本体から外す際に、中栓のスコアを容易に破断させて開口できるようにした注出容器として有用である。
【符号の説明】
【0027】
10 容器本体
11 口部
11a ネジ部
20 中栓
21 閉鎖板
22 装着部
22a 溝
23 スコア
24 分離部
281、282、283、284、285、286、287、288、291、292、293、294 曲面羽根状壁片壁片
26 注出ノズル
30 上蓋
31 上板
32 環状外壁部
33 環状押え部
38、39 環状係合壁部
381、382、383、384、391、392、393、394 係止突起
100 注出容器