特許第6064469号(P6064469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6064469-モータ駆動装置 図000002
  • 特許6064469-モータ駆動装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064469
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/288 20160101AFI20170116BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20170116BHJP
   H02H 7/06 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   H02P7/288 G
   H02P29/00
   H02H7/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-200576(P2012-200576)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-57428(P2014-57428A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】横井 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】今村 圭介
(72)【発明者】
【氏名】江口 智仁
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−321631(JP,A)
【文献】 特開2007−274867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/00、7/03−7/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動部材に連結され該移動部材を移動させるモータと、整流素子を介した直流電源を前記モータに対して電気的に接続・遮断する駆動回路とを備え、前記駆動回路により、前記整流素子を介した前記直流電源を電気的に接続して前記モータを駆動するモータ駆動装置において、
前記整流素子と前記モータとの間に接続されたローパスフィルタと、
保護抵抗と、
前記モータの回転速度を検出する検出手段と、
前記モータの非駆動状態で、前記モータの回転速度が所定値を下回るときに前記保護抵抗を前記駆動回路を介した前記モータに電気的に接続し、前記モータの回転速度が前記所定値を上回るときに前記駆動回路を介した前記モータを前記整流素子を介することなく前記直流電源の高側電位部に電気的に接続するスイッチング部材とを備え
前記ローパスフィルタは、前記整流素子と前記駆動回路の間に直列で電気的に接続されるコイルと、前記コイルの一端とグランドの間に電気的に接続されるコンデンサとを有することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
移動部材に連結され該移動部材を移動させるモータと、整流素子を介した直流電源の高側電位を前記モータの一側端子に対して電気的に接続・遮断する第1のFETと、前記直流電源の低側電位を前記モータの他側端子に対して電気的に接続・遮断する第2のFETとを備え、前記第1のFET及び前記第2のFETにより、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記一側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記他側端子をそれぞれ電気的に接続して前記モータを駆動するモータ駆動装置において、
前記整流素子と前記モータとの間に接続されたローパスフィルタと、
保護抵抗と、
前記モータの回転速度を検出する検出手段と、
前記モータの非駆動状態で、前記モータの回転速度が所定値を下回るときに前記保護抵抗を前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子及び前記低側電位に電気的に接続し、前記モータの回転速度が前記所定値を上回るときに前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子を前記直流電源の前記高側電位に電気的に接続するスイッチング部材とを備え
前記ローパスフィルタは、前記整流素子と前記第1のFETの間に直列で電気的に接続されるコイルと、前記コイルの一端とグランドの間に電気的に接続されるコンデンサとを有することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項3】
移動部材に連結され該移動部材を移動させるモータと、整流素子を介した直流電源の高側電位を前記モータの一側端子に対して電気的に接続・遮断する第1のFETと、前記直流電源の低側電位を前記モータの他側端子に対して電気的に接続・遮断する第2のFETと、前記整流素子を介した前記高側電位を前記モータの前記他側端子に対して電気的に接続・遮断する第3のFETと、前記低側電位を前記モータの前記一側端子に対して電気的に接続・遮断する第4のFETとを備え、前記第1のFET〜前記第4のFETにより、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記一側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記他側端子をそれぞれ電気的に接続し、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記他側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記一側端子をそれぞれ電気的に切断して前記モータを一方向に駆動し、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記一側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記他側端子をそれぞれ電気的に切断し、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記他側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記一側端子をそれぞれ電気的に接続して前記モータを逆方向に駆動するモータ駆動装置において、
前記整流素子と前記モータとの間に接続されたローパスフィルタと、
保護抵抗と、
前記モータの回転速度を検出する検出手段と、
前記モータの非駆動状態で、前記モータの回転速度が所定値を下回るときに前記保護抵抗を前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子及び前記低側電位又は前記第3のFETを介した前記モータの前記他側端子及び前記低側電位に電気的に接続し、前記モータの回転速度が前記所定値を上回るときに前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子又は前記第3のFETを介した前記モータの前記他側端子を前記直流電源の前記高側電位に電気的に接続するスイッチング部材とを備え
前記ローパスフィルタは、前記整流素子と前記第1のFET及び前記第3のFETとの間に直列で電気的に接続されるコイルと、前記コイルの一端とグランドの間に電気的に接続されるコンデンサとを有することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のモータ駆動装置において、
前記スイッチング部材は、
前記保護抵抗又は前記高側電位に接続可能なリレーと、
前記リレーの励磁コイルに電気的に接続され、該励磁コイルに通電可能なスイッチング素子とを有することを特徴とするモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動停止中のモータが外力により回転させられた際の該モータの発電による過電圧に対処するモータ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、こうしたモータ駆動装置として種々のものが提案されている。例えば特許文献1に記載されたモータ駆動装置は、駆動停止中のモータの回転速度が所定値を超えたときに、該回転速度を減速させる制御を行うことで、モータの誘起電圧(発電)による過電圧を防止するというものである。
【0003】
また、特許文献2に記載されたモータ駆動装置は、移動装置の移動速度が所定の値よりも大きくなって三相モータが電源電圧以上の発電を行うと、該三相モータの複数のコイルの中点を短絡させて電圧を下げるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−103707号公報
【特許文献2】特開平10−323079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、モータの回転速度を検出して該回転速度を減速させる制御を行うため、操作者(利用者)の意図した動作が妨げられて利便性が損なわれる可能性がある。また、モータの回転速度の減速時に発生する作動方向とは逆方向の力によって、機械的な部位に過大な負荷がかかる可能性がある。
【0006】
一方、特許文献2では、移動装置の移動速度が所定の値よりも大きくなって三相モータが電源電圧以上の発電を行ったときの制御のため、三相モータの回転速度を検出する回路と電圧を検出する回路とが必要になる。
【0007】
本発明の目的は、利便性を損ねることなく、より簡素な回路構成でモータの誘起電圧による過電圧を防止することができるモータ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、移動部材に連結され該移動部材を移動させるモータと、整流素子を介した直流電源を前記モータに対して電気的に接続・遮断する駆動回路とを備え、前記駆動回路により、前記整流素子を介した前記直流電源を電気的に接続して前記モータを駆動するモータ駆動装置において、前記整流素子と前記モータとの間に接続されたローパスフィルタと、保護抵抗と、前記モータの回転速度を検出する検出手段と、前記モータの非駆動状態で、前記モータの回転速度が所定値を下回るときに前記保護抵抗を前記駆動回路を介した前記モータに電気的に接続し、前記モータの回転速度が前記所定値を上回るときに前記駆動回路を介した前記モータを前記整流素子を介することなく前記直流電源の高側電位部に電気的に接続するスイッチング部材とを備え、前記ローパスフィルタは、前記整流素子と前記駆動回路の間に直列で電気的に接続されるコイルと、前記コイルの一端とグランドの間に電気的に接続されるコンデンサとを有することを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、前記駆動回路により、前記整流素子を介した前記直流電源及び前記モータを電気的に接続して前記モータを駆動することで、前記移動部材が移動される。一方、前記駆動回路により、前記整流素子を介した前記直流電源及び前記モータを電気的に切断すると、前記モータが非駆動状態となる。前記モータの非駆動状態で、前記移動部材が外力で移動して前記モータが回転させられると、該モータの誘起電圧(発電)により前記駆動回路が接続状態となることがある。このとき、前記モータの回転速度が前記所定値を下回っていれば、即ち前記モータの誘起電圧が過大でなければ、前記スイッチング部材により前記駆動回路を介した前記モータが前記保護抵抗に電気的に接続される。これにより、前記モータの誘起電圧が解消されて、前記素子に印加される前記モータの誘起電圧が過大になることもない。また、前記モータの回転速度が前記所定値を上回っていれば、即ち前記モータの誘起電圧が過大になろうとすれば、前記スイッチング部材により前記駆動回路を介した前記モータが前記整流素子を介することなく前記直流電源に電気的に接続される。これにより、前記モータの誘起電圧が前記直流電源の電圧以上になることはなく、前記素子に印加される前記モータの誘起電圧が過大になることもない。
【0010】
以上により、前記モータの誘起電圧の過電圧の防止にあたって前記モータを減速させたりする必要がなく、例えば操作者の手動操作に伴って前記移動部材が移動する場合には、当該操作者の意図する速度で前記移動部材を移動させることができる。また、前記検出手段により、前記モータの回転速度を検出することで前記モータの誘起電圧の過電圧の防止できるため、例えば前記モータの誘起電圧を検出するための回路を別設する必要がなく、回路構成をより簡素化することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、移動部材に連結され該移動部材を移動させるモータと、整流素子を介した直流電源の高側電位部(高側電位)を前記モータの一側端子に対して電気的に接続・遮断する第1のFETと、前記直流電源の低側電位部(低側電位)を前記モータの他側端子に対して電気的に接続・遮断する第2のFETとを備え、前記第1のFET及び前記第2のFETにより、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記一側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記他側端子をそれぞれ電気的に接続して前記モータを駆動するモータ駆動装置において、前記整流素子と前記モータとの間に接続されたローパスフィルタと、保護抵抗と、前記モータの回転速度を検出する検出手段と、前記モータの非駆動状態で、前記モータの回転速度が所定値を下回るときに前記保護抵抗を前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子及び前記低側電位に電気的に接続し、前記モータの回転速度が前記所定値を上回るときに前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子を前記直流電源の前記高側電位に電気的に接続するスイッチング部材とを備え、前記ローパスフィルタは、前記整流素子と前記第1のFETの間に直列で電気的に接続されるコイルと、前記コイルの一端とグランドの間に電気的に接続されるコンデンサとを有することを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、前記第1のFET及び前記第2のFETにより、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記一側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記他側端子をそれぞれ電気的に接続して前記モータを駆動することで、前記移動部材が移動される。一方、前記第1のFET及び前記第2のFETにより、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記一側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記他側端子をそれぞれ電気的に切断すると、前記モータが非駆動状態となる。前記モータの非駆動状態で、前記移動部材が外力で移動して前記モータが回転させられると、該モータの誘起電圧(発電)により前記第1のFETが接続状態となることがある。このとき、前記モータの回転速度が前記所定値を下回っていれば、即ち前記モータの誘起電圧が過大でなければ、前記スイッチング部材により前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子が前記保護抵抗を介して前記低側電位に電気的に接続される。これにより、前記モータの誘起電圧が解消されて、前記素子に印加される前記モータの誘起電圧が過大になることもない。また、前記モータの回転速度が前記所定値を上回っていれば、即ち前記モータの誘起電圧が過大になろうとすれば、前記スイッチング部材により前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子が前記高側電位に電気的に接続される。これにより、前記モータの誘起電圧の電位が前記高側電位以上になることはなく、前記素子に印加される前記モータの誘起電圧が過大になることもない。
【0013】
以上により、前記モータの誘起電圧の過電圧の防止にあたって前記モータを減速させたりする必要がなく、例えば操作者の手動操作に伴って前記移動部材が移動する場合には、当該操作者の意図する速度で前記移動部材を移動させることができる。また、前記検出手段により、前記モータの回転速度を検出することで前記モータの誘起電圧の過電圧の防止できるため、例えば前記モータの誘起電圧を検出するための回路を別設する必要がなく、回路構成をより簡素化することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、移動部材に連結され該移動部材を移動させるモータと、整流素子を介した直流電源の高側電位部(高側電位)を前記モータの一側端子に対して電気的に接続・遮断する第1のFETと、前記直流電源の低側電位部(低側電位)を前記モータの他側端子に対して電気的に接続・遮断する第2のFETと、前記整流素子を介した前記高側電位を前記モータの前記他側端子に対して電気的に接続・遮断する第3のFETと、前記低側電位を前記モータの前記一側端子に対して電気的に接続・遮断する第4のFETとを備え、前記第1のFET〜前記第4のFETにより、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記一側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記他側端子をそれぞれ電気的に接続し、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記他側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記一側端子をそれぞれ電気的に切断して前記モータを一方向に駆動し、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記一側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記他側端子をそれぞれ電気的に切断し、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記他側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記一側端子をそれぞれ電気的に接続して前記モータを逆方向に駆動するモータ駆動装置において、前記整流素子と前記モータとの間に接続されたローパスフィルタと、保護抵抗と、前記モータの回転速度を検出する検出手段と、前記モータの非駆動状態で、前記モータの回転速度が所定値を下回るときに前記保護抵抗を前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子及び前記低側電位又は前記第3のFETを介した前記モータの前記他側端子及び前記低側電位に電気的に接続し、前記モータの回転速度が前記所定値を上回るときに前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子又は前記第3のFETを介した前記モータの前記他側端子を前記直流電源の前記高側電位に電気的に接続するスイッチング部材とを備え、前記ローパスフィルタは、前記整流素子と前記第1のFET及び前記第3のFETとの間に直列で電気的に接続されるコイルと、前記コイルの一端とグランドの間に電気的に接続されるコンデンサとを有することを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、前記第1のFET〜前記第4のFETにより、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記一側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記他側端子をそれぞれ電気的に接続し、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記他側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記一側端子をそれぞれ電気的に切断して前記モータを一方向に駆動することで、前記移動部材が一方向に移動される。
【0016】
反対に、前記第1のFET〜前記第4のFETにより、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記一側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記他側端子をそれぞれ電気的に切断し、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記他側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記一側端子をそれぞれ電気的に接続して前記モータを逆方向に駆動することで、前記移動部材が逆方向に移動される。
【0017】
一方、前記第1のFET〜前記第4のFETにより、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記一側端子、前記整流素子を介した前記高側電位及び前記モータの前記他側端子、前記低側電位及び前記モータの前記他側端子、並びに前記低側電位及び前記モータの前記一側端子をそれぞれ電気的に切断すると、前記モータが非駆動状態となる。前記モータの非駆動状態で、前記移動部材が外力で移動して前記モータが回転させられると、該モータの誘起電圧(発電)により前記第1のFET又は前記第3のFETが接続状態となることがある。
【0018】
このとき、前記モータの回転速度が前記所定値を下回っていれば、即ち前記モータの誘起電圧が過大でなければ、前記スイッチング部材により前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子又は前記第3のFETを介した前記モータの前記他側端子が前記保護抵抗を介して前記低側電位に電気的に接続される。これにより、前記モータの誘起電圧が解消されて、前記素子に印加される前記モータの誘起電圧が過大になることもない。
【0019】
また、前記モータの回転速度が前記所定値を上回っていれば、即ち前記モータの誘起電圧が過大になろうとすれば、前記スイッチング部材により前記第1のFETを介した前記モータの前記一側端子又は前記第3のFETを介した前記モータの前記他側端子が前記高側電位に電気的に接続される。これにより、前記モータの誘起電圧の電位が前記高側電位以上になることはなく、前記素子に印加される前記モータの誘起電圧が過大になることもない。
【0020】
以上により、前記モータの誘起電圧の過電圧の防止にあたって前記モータを減速させたりする必要がなく、例えば操作者の手動操作に伴って前記移動部材が移動する場合には、当該操作者の意図する速度で前記移動部材を移動させることができる。また、前記検出手段により、前記モータの回転速度を検出することで前記モータの誘起電圧の過電圧の防止できるため、例えば前記モータの誘起電圧を検出するための回路を別設する必要がなく、回路構成をより簡素化することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のモータ駆動装置において、前記スイッチング部材は、前記保護抵抗又は前記高側電位部(高側電位)に接続可能なリレーと、前記リレーの励磁コイルに電気的に接続され、該励磁コイルに通電可能なスイッチング素子とを有することを要旨とする。
【0022】
同構成によれば、小さな電力で前記スイッチング素子をオン状態にして前記励磁コイルを通電・励磁することで、前記リレーにより前記保護抵抗及び前記高側電位間の接続を切り替えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、利便性を損ねることなく、より簡素な回路構成でモータの誘起電圧による過電圧を防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態が適用される車両の後部を示す側面図。
図2】同実施形態の電気的構成を示す回路ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図2を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両1のボデー2の後部には開口部2aが形成されている。また、車両1のボデー2の後部には、開口部2aの上部に設けられたドアヒンジ2bを介して移動部材を構成するバックドア3が開閉自在に取着されている。開口部2aは、ドアヒンジ2bを中心にバックドア3を上方に押し上げることで開放されるとともに、ドアヒンジ2bを中心にバックドア3を下方に引き下げることで閉鎖される。
【0026】
バックドア3には、ボデー2に一方の端部が回動自在に連結された移動部材を構成する伸縮ステー4の他方の端部が回動自在に連結されている。この伸縮ステー4は、DCモータ5を内蔵しており、該DCモータ5に駆動されてその延在方向に伸縮する。バックドア3は、伸縮ステー4が伸長するようにDCモータ5が一方向に駆動されることでドアヒンジ2bを中心に上方に押し上げられ、伸縮ステー4が短縮するようにDCモータ5が逆方向に駆動されることでドアヒンジ2bを中心に下方に引き下げられる。
【0027】
一方、バックドア3を手動でドアヒンジ2bを中心に上方に押し上げると、伸縮ステー4は、非駆動状態にあるDCモータ5を一方向に回転させつつ伸長し、反対に、バックドア3を手動でドアヒンジ2bを中心に下方に引き下げると、伸縮ステー4は、非駆動状態にあるDCモータ5を逆方向に回転させつつ短縮する。このとき、発電機として機能するDCモータ5は、その回転方向に応じた極性の誘起電圧を発生する。この誘起電圧の大きさは、DCモータ5の回転速度の増加に伴って増加する。つまり、DCモータ5の誘起電圧の大きさは、伸縮ステー4の伸縮速度が増加するほど、即ちバックドア3の開閉速度が増加するほど増加する。
【0028】
次に、本実施形態の電気的構成について説明する。
図2に示すように、モータ駆動装置は、前記DCモータ5と、例えばボデー2側に搭載された制御回路10及び駆動回路11と、DCモータ5の回転速度Nを検出する検出手段としての回転速度センサ12とを備えて構成される。制御回路10は、例えばマイクロ・コントローラ(MCU)を主体に構成されており、駆動回路11を介してDCモータ5を駆動制御するとともに、回転速度センサ12を介してDCモータ5の回転速度Nを取得する。
【0029】
すなわち、駆動回路11は、いわゆるHブリッジ回路を構成するもので、高側電位接続用としての2つのpMOSFET21,23と、低側電位接続用としての2つのnMOSFET22,24とを備える。
【0030】
pMOSFET21は、そのドレインがコイル25の一端に接続されている。コイル25の他端は抵抗26の一端に接続されるとともに、該抵抗26の他端は整流素子としてのダイオード27のカソードに接続され、更にダイオード27のアノードは直流電源の高側電位+B(例えば12V)に接続されている。つまり、pMOSFET21のドレインは、コイル25、抵抗26及び順方向のダイオード27を介して高側電位+Bに接続されている。また、pMOSFET21は、そのソースがnMOSFET22のドレイン及びDCモータ5の一側端子5aに接続されるとともに、ゲートが制御回路10に接続されている。
【0031】
nMOSFET22は、そのドレインがpMOSFET21のソース及びDCモータ5の一側端子5aに接続されるとともに、ソースが直流電源の低側電位としてのグランドGNDに接地(接続)され、更にゲートが制御回路10に接続されている。
【0032】
同様に、pMOSFET23は、そのドレインがコイル25の一端に接続されている。つまり、pMOSFET23のドレインは、コイル25、抵抗26及び順方向のダイオード27を介して高側電位+Bに接続されている。また、pMOSFET21は、そのソースがnMOSFET24のドレイン及びDCモータ5の他側端子5bに接続されるとともに、ゲートが制御回路10に接続されている。
【0033】
nMOSFET24は、そのドレインがpMOSFET23のソース及びDCモータ5の他側端子5bに接続されるとともに、ソースがグランドGNDに接地され、更にゲートが制御回路10に接続されている。
【0034】
従って、制御回路10は、これらMOSFET21〜24のゲートに、オン・オフ状態(H(ハイ)レベル・L(ロー)レベル状態)の切り替わる駆動信号を出力してスイッチング動作させることで、DCモータ5を駆動制御する。
【0035】
例えば、pMOSFET21及びnMOSFET22のゲートにオン状態の駆動信号が出力されるとともに、pMOSFET23及びnMOSFET24のゲートにオフ状態の駆動信号が出力されたとする。このとき、pMOSFET21及びnMOSFET24がオン動作するとともに、nMOSFET22及びpMOSFET23がオフ動作する。これにより、DCモータ5は、その一側端子5aがpMOSFET21、コイル25、抵抗26及びダイオード27を介して高側電位+Bに接続されるとともに、他側端子5bがnMOSFET24を介してグランドGNDに接地される。そして、DCモータ5が一方向に回転駆動され、伸縮ステー4が伸長してバックドア3が開作動する。
【0036】
一方、pMOSFET21及びnMOSFET22のゲートにオフ状態の駆動信号が出力されるとともに、pMOSFET23及びnMOSFET24のゲートにオン状態の駆動信号が出力されたとする。このとき、pMOSFET21及びnMOSFET24がオフ動作するとともに、nMOSFET22及びpMOSFET23がオン動作する。これにより、DCモータ5は、その他側端子5bがpMOSFET23、コイル25、抵抗26及びダイオード27を介して高側電位+Bに接続されるとともに、一側端子5aがnMOSFET22を介してグランドGNDに接地される。そして、DCモータ5が逆方向に回転駆動され、伸縮ステー4が短縮してバックドア3が閉作動する。
【0037】
ここで、コイル25の一端は、素子としての電解コンデンサ28の一端に接続されるとともに、該電解コンデンサ28の他端は、グランドGNDに接地されている。同様に、コイル25の他端は、素子としての電解コンデンサ29の一端に接続されるとともに、該電解コンデンサ29の他端は、グランドGNDに接地されている。コイル25及び電解コンデンサ28,29は、MOSFET21〜24を介してDCモータ5に供給される直流電源の高周波成分(即ちノイズ)をカットするローパスフィルタLFを構成する。
【0038】
また、コイル25の他端(及び抵抗26の一端)は、リレー30の可動接点31に接続されるとともに、該リレー30の一方の固定接点32は、保護抵抗35の一端に接続され、更に該保護抵抗35の他端は、グランドGNDに接地されている。さらに、リレー30の他方の固定接点33は、高側電位+Bに接続されている。
【0039】
そして、リレー30の励磁コイル34は、一端が高側電位+Bに接続されるとともに他端が、例えばNPNトランジスタからなるスイッチング素子36のコレクタに接続されている。このスイッチング素子36は、エミッタがグランドGNDに接地されるとともに、ベースが制御回路10に接続されている。
【0040】
従って、制御回路10は、スイッチング素子36のベースに、オン・オフ状態(Hレベル・Lレベル状態)の切り替わる励磁信号を出力してスイッチング動作させることで、励磁コイル34(リレー30)を駆動制御する。なお、制御回路10は、基本的に、スイッチング素子36のベースにオフ状態の励磁信号を出力することで、可動接点31を固定接点32に常時接触させている。そして、制御回路10は、全てのMOSFET21〜24がオフ動作しているとき、即ちDCモータ5が非駆動状態にあるとき、DCモータ5の回転速度Nが所定値Nthを上回れば、スイッチング素子36のベースにオン状態の励磁信号を出力することで、励磁コイル34を励磁して可動接点31を固定接点33に接触させる。リレー30及びスイッチング素子36はスイッチング部材SWを構成する。
【0041】
つまり、制御回路10は、基本的にコイル25の他端をリレー30(可動接点31)及び保護抵抗35を介してグランドGNDに接地している。そして、制御回路10は、DCモータ5が非駆動状態にあるとき、該DCモータ5の回転速度Nが所定値Nthを上回れば、励磁コイル34を駆動することで、コイル25の他端をリレー30(可動接点31)を介して高側電位+Bに接続する。
【0042】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、制御回路10が、pMOSFET21,23のゲートにオフ状態の駆動信号が出力し、nMOSFET22,24のゲートにオン状態の駆動信号を出力しているとする。このとき、全てのMOSFET21〜24がオフ動作することで、DCモータ5(一側端子5a及び他側端子5b)に直流電源が供給されることはなく、該DCモータ5は停止したままである。そして、DCモータ5に伸縮ステー4を介して連結されたバックドア3は、そのときの開閉位置で停止したままである。
【0043】
なお、DCモータ5の非駆動時、制御回路10は、スイッチング素子36のベースにオフ状態の励磁信号を出力している。これにより、リレー30の可動接点31は、固定接点32との接触状態を維持している。従って、保護抵抗35の一端は、リレー30(可動接点31)、抵抗26及びダイオード27を介して高側電位+Bに接続されている。そして、保護抵抗35には、DCモータ5の非駆動時においても常に電流(いわゆる暗電流)が流れ続けている。保護抵抗35の抵抗値は、この電流が直流電源の容量に影響を及ぼすほど過大にならないように設定されている。
【0044】
ここで、制御回路10が、pMOSFET21及びnMOSFET22のゲートにオン状態の駆動信号を出力し、pMOSFET23及びnMOSFET24のゲートにオフ状態の駆動信号を出力したとする。このとき、pMOSFET21及びnMOSFET24がオン動作するとともに、nMOSFET22及びpMOSFET23がオフ動作する。これにより、DCモータ5は、その一側端子5aがpMOSFET21、コイル25、抵抗26及びダイオード27を介して高側電位+Bに接続されるとともに、他側端子5bがnMOSFET24を介してグランドGNDに接地される。そして、DCモータ5が一方向に回転駆動され、伸縮ステー4が伸長してバックドア3が開作動する。
【0045】
一方、制御回路10が、pMOSFET21及びnMOSFET22のゲートにオフ状態の駆動信号を出力し、pMOSFET23及びnMOSFET24のゲートにオン状態の駆動信号を出力したとする。このとき、pMOSFET21及びnMOSFET24がオフ動作するとともに、nMOSFET22及びpMOSFET23がオン動作する。これにより、DCモータ5は、その他側端子5bがpMOSFET23、コイル25、抵抗26及びダイオード27を介して高側電位+Bに接続されるとともに、一側端子5aがnMOSFET22を介してグランドGNDに接地される。そして、DCモータ5が逆方向に回転駆動され、伸縮ステー4が短縮してバックドア3が閉作動する。
【0046】
なお、DCモータ5の駆動時、ローパスフィルタLFは、MOSFET21〜24を介してDCモータ5に供給される直流電源の高周波成分をカットする。また、DCモータ5の駆動時、制御回路10は、スイッチング素子36のベースにオフ状態の励磁信号を出力している。従って、DCモータ5の駆動時においても、保護抵抗35に常に電流(暗電流)が流れ続けることになる。
【0047】
ここで、DCモータ5の非駆動状態において、操作者(利用者)がバックドア3を手動でドアヒンジ2bを中心に下方に引き下げた(閉操作した)とする。このとき、DCモータ5(一側端子5a及び他側端子5b間)には、他側端子5bに対して一側端子5aの方が電位の高くなる極性の誘起電圧を発生する。このDCモータ5の誘起電圧によりpMOSFET21が、ダイオードとして機能して接続状態となることがある。このとき、DCモータ5の回転速度Nが所定値Nth以下であれば、即ちDCモータ5の誘起電圧が過大でなければ、スイッチング部材SWによりDCモータ5の一側端子5aがpMOSFET21及び保護抵抗35を介してグランドGNDに接地される。これにより、DCモータ5の誘起電圧が解消されて、電解コンデンサ28,29に印加されるDCモータ5の誘起電圧が過大になることもない。
【0048】
また、DCモータ5の回転速度Nが所定値Nthを上回っていれば、即ちDCモータ5の誘起電圧が過大になろうとすれば、スイッチング部材SWによりDCモータ5の他側端子5bがpMOSFET21を介して高側電位+Bに接続される。これにより、DCモータ5の誘起電圧の電位が高側電位+B以上になることはなく、電解コンデンサ28,29に印加されるDCモータ5の誘起電圧が過大になることもない。
【0049】
一方、DCモータ5の非駆動状態において、操作者(利用者)がバックドア3を手動でドアヒンジ2bを中心に上方に押し上げた(開操作した)とする。このとき、DCモータ5(一側端子5a及び他側端子5b間)に一側端子5aに対して他側端子5bの方が電位の高くなる極性の誘起電圧を発生する。このDCモータ5の誘起電圧によりpMOSFET23が、ダイオードとして機能して接続状態となることがある。このとき、DCモータ5の回転速度Nが所定値Nth以下であれば、即ちDCモータ5の誘起電圧が過大でなければ、スイッチング部材SWによりDCモータ5の他側端子5bがpMOSFET23及び保護抵抗35を介してグランドGNDに接地される。これにより、DCモータ5の誘起電圧が解消されて、電解コンデンサ28,29に印加されるDCモータ5の誘起電圧が過大になることもない。
【0050】
また、DCモータ5の回転速度Nが所定値Nthを上回っていれば、即ちDCモータ5の誘起電圧が過大になろうとすれば、スイッチング部材SWによりDCモータ5の他側端子5bがpMOSFET23を介して高側電位+Bに接続される。これにより、DCモータ5の誘起電圧の電位が高側電位+B以上になることはなく、電解コンデンサ28,29に印加されるDCモータ5の誘起電圧が過大になることもない。
【0051】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、DCモータ5の誘起電圧の過電圧の防止にあたって該DCモータ5を減速させたりする必要がなく、例えば操作者の手動操作に伴ってバックドア3が開閉する場合には、当該操作者の意図する速度で前記移動部材を移動させることができる。また、回転速度センサ12により、DCモータ5の回転速度を検出することでDCモータ5の誘起電圧の過電圧の防止できるため、例えばDCモータ5の誘起電圧を検出するための回路を別設する必要がなく、回路構成をより簡素化することができる。
【0052】
(2)本実施形態では、小さな電力でスイッチング素子36をオン状態にして励磁コイル34を通電・励磁することで、リレー30により保護抵抗35及び高側電位+B間の接続を切り替えることができる。
【0053】
(3)本実施形態では、電解コンデンサ28,29(ローパスフィルタLF)に印加されるDCモータ5の誘起電圧が過大になって電解コンデンサ28,29に不具合が発生する可能性を低減できる。
【0054】
(4)本実施形態では、DCモータ5の誘起電圧の過電圧の防止にあたって該DCモータ5を減速させたりする必要がなく、DCモータ5の回転速度の減速時に発生する作動方向とは逆方向の力によって、機械的な部位に過大な負荷がかかることを解消できる。
【0055】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、nMOSFET22及びpMOSFET23を割愛して、一方向にのみDCモータ5を回転駆動可能な回路構成にしてもよい。この場合、電動により開作動のみ可能なバックドア3となる。ただし、DCモータ5と伸縮ステー4との連携関係を逆転させて、電動により閉作動のみ可能なバックドア3としてもよい。
【0056】
・前記実施形態において、MOSFET21〜24のタイプは任意である。例えば、全てのMOSFET21〜24がp型であってもよいし、n型であってもよい。
・前記実施形態において、スイッチング素子36としてMOSFETを採用してもよい。
【0057】
・前記実施形態において、移動部材としては、車両側部に設けられるサイドドア(スイングドア、スライドドアなど)であってもよい。また、DCモータ5の動力によって移動するとともに、手動による操作によっても移動する任意の部材であればよい。
【0058】
・前記実施形態において、保護抵抗35は、可動接点31よりもコイル25側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0059】
+B…高側電位、GND…グランド(低側電位)、LF…ローパスフィルタ、SW…スイッチング部材、3…バックドア(移動部材)、4…伸縮ステー(移動部材)、5…DCモータ(モータ)、5a…一側端子、5b…他側端子、10…制御回路、11…駆動回路、12…回転速度センサ(検出手段)、21…pMOSFET(第1のFET)、22…nMOSFET(第2のFET)、23…pMOSFET(第3のFET)、24…nMOSFET(第4のFET)、25…コイル、27…ダイオード(整流素子)、28,29…電解コンデンサ、30…リレー、34…励磁コイル、35…保護抵抗、36…スイッチング素子。
図1
図2