特許第6064489号(P6064489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064489
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】ターボ冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/053 20060101AFI20170116BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   F25B1/053 C
   F25B1/00 387E
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-210772(P2012-210772)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-66396(P2014-66396A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小田 兼太郎
(72)【発明者】
【氏名】栗原 和昭
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 信義
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−281274(JP,A)
【文献】 特開昭54−137151(JP,A)
【文献】 特開2010−019541(JP,A)
【文献】 特開平04−340059(JP,A)
【文献】 特開昭56−127160(JP,A)
【文献】 実開昭59−132060(JP,U)
【文献】 特開平06−272977(JP,A)
【文献】 特開2011−185513(JP,A)
【文献】 米国特許第5542261(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0102665(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/053
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油を貯溜する油タンクと、前記潤滑油が給油されるインペラの回転駆動によって冷媒を圧縮するターボ圧縮機と、前記圧縮された冷媒を液化する凝縮器と、前記液化した冷媒を蒸発させて前記圧縮される冷媒を生成すると共に冷却対象物を冷却する蒸発器と、を有するターボ冷凍機であって、
前記蒸発器に貯溜された前記液化した冷媒の液面に対応する位置に開口する吸液口を有する油トラップ部と、
前記油トラップ部にトラップされた前記液化した冷媒を前記冷媒の沸点以上且つ前記潤滑油の沸点未満の温度に加熱する加熱部と、を有
前記油トラップ部は、
前記吸液口から水平方向に延びる導入部と、
前記導入部と連通し鉛直方向下方に延び、前記油トラップ部にトラップされた前記液化した冷媒を滞留させる貯溜部と、
を有する、ことを特徴とするターボ冷凍機。
【請求項2】
前記加熱部は、前記圧縮された冷媒の少なくとも一部との間の熱交換により前記加熱を行う熱交換器を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のターボ冷凍機。
【請求項3】
前記加熱部は、前記液化のために用いられる冷却水の少なくとも一部との間の熱交換により前記加熱を行う熱交換器を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のターボ冷凍機。
【請求項4】
前記油トラップ部は、外気との間で熱交換可能に設けられており、
前記加熱部は、前記油トラップ部を加熱可能に設けられたヒーターと、前記外気の温度を計測する温度計測部と、前記温度計部の計測結果に基づいて前記ヒーターの駆動を制御する制御部と、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のターボ冷凍機。
【請求項5】
前記油トラップ部の潤滑油を前記油タンクに返送する油返送部を有する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のターボ冷凍機。
【請求項6】
前記油トラップ部は、複数設けられており、
前記複数の油トラップ部は、前記吸液口の高さが互いに異なっている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のターボ冷凍機。
【請求項7】
前記蒸発器は、水平に軸が設定された円筒形状を有し、
前記蒸発器の軸方向一端側の底部に前記凝縮器が接続され、
前記蒸発器の軸方向他端側の頂部に前記ターボ圧縮機が接続され、
前記複数の油トラップ部は、前記蒸発器の軸方向に沿って配置され、
前記複数の油トラップ部における前記吸液口の高さは、前記軸方向他端側に配置された前記油トラップ部ほど高くなっている、ことを特徴とする請求項6に記載のターボ冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ冷凍機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、凝縮器、蒸発器、ターボ圧縮機の順に冷媒を循環させて冷却対象物を冷却するターボ冷凍機が知られている。このようなターボ冷凍機においては、油タンクからターボ圧縮機のインペラの回転軸や軸受等の摺動部位に潤滑油が給油されるようになっている。潤滑油は、油煙となって、または、ミストの状態で冷媒内に混入し、ターボ圧縮機から吐出されて、凝縮器を通って蒸発器に蓄積される。このため、油タンク内から油が徐々になくなっていく所謂油上がりと称される現象が生じていた。
【0003】
下記特許文献1には、蒸発液の冷媒液中に混入している潤滑油を連続して自動回収ができる圧縮式冷凍機が開示されている。この圧縮式冷凍機においては、蒸発器の冷媒液面付近では、圧縮機から洩れ込んだ潤滑油が冷媒液中に溶け込んで油の濃度が比較的高い状態にあることから、この液面付近の冷媒液をエジェクターによって吸い上げ、油タンクへ送って冷媒液を油タンク内で熱して蒸発させ、蒸発した冷媒ガスは再び圧縮機の吸い込み側に送られることで、冷凍サイクルを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−83526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷媒をそのまま油タンクに導入してしまうと、冷媒の蒸発により油タンク内を通過する冷媒ガス量が増加して、油タンクから圧縮機の吸い込み側に向かって冷媒の流速が増加し、油タンク内の油煙やミスト状の油滴が当該冷媒と共に圧縮機に吸い込まれ易くなり、凝縮器を通って再び蒸発器に蓄積され易くなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、冷媒から潤滑油を効率よく回収することができるターボ冷凍機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、潤滑油を貯溜する油タンクと、前記潤滑油が給油されるインペラの回転駆動によって冷媒を圧縮するターボ圧縮機と、前記圧縮された冷媒を液化する凝縮器と、前記液化した冷媒を蒸発させて前記圧縮される冷媒を生成すると共に冷却対象物を冷却する蒸発器と、を有するターボ冷凍機であって、前記蒸発器に貯溜された前記液化した冷媒の液面に対応する位置に開口する吸液口を有する油トラップ部と、前記油トラップ部にトラップされた前記液化した冷媒を前記冷媒の沸点以上且つ前記潤滑油の沸点未満の温度に加熱する加熱部と、を有前記油トラップ部は、前記吸液口から水平方向に延びる導入部と、前記導入部と連通し鉛直方向下方に延び、前記油トラップ部にトラップされた前記液化した冷媒を滞留させる貯溜部と、を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、蒸発器の冷媒液の液面付近から油の濃度が比較的高い状態の冷媒液をトラップし、トラップした冷媒液を加熱することで冷媒のみを蒸発させて除去し、潤滑油を濃縮させて回収することができる。
【0008】
また、本発明においては、前記加熱部は、前記圧縮された冷媒の少なくとも一部との間の熱交換により前記加熱を行う熱交換器を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒の熱を利用して、トラップした冷媒を蒸発させることができるため、別途熱源を用意することなく運転させることができる。
【0009】
また、本発明においては、前記加熱部は、前記液化のために用いられる冷却水の少なくとも一部との間の熱交換により前記加熱を行う熱交換器を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、凝縮器において用いられる冷却水の熱を利用して、トラップした冷媒を蒸発させることができるため、別途熱源を用意することなく運転させることができる。
【0010】
また、本発明においては、前記油トラップ部は、外気との間で熱交換可能に設けられており、前記加熱部は、前記油トラップ部を加熱可能に設けられたヒーターと、前記外気の温度を計測する温度計測部と、前記温度計側部の計測結果に基づいて前記ヒーターの駆動を制御する制御部と、を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、夏場等においては外気の熱を利用して、トラップした冷媒を蒸発させることができ、別途熱源を用意することなく運転させることができると共に、外気の熱を利用し難い冬場等においてはヒーターが駆動することで、トラップした冷媒を蒸発させることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記油トラップ部の潤滑油を前記油タンクに返送する油返送部を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、油トラップ部において濃縮した潤滑油を自動的に油タンクに返送することができる。
【0012】
また、本発明においては、前記油トラップ部は、複数設けられており、前記複数の油トラップ部は、前記開口する高さが互いに異なっている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、蒸発器における液面が一定の高さに保たれていなくても、油の濃度が比較的高い状態の冷媒液をトラップすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冷媒から潤滑油を効率よく回収することができるターボ冷凍機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態におけるターボ冷凍機の系統図である。
図2】本発明の第2実施形態におけるターボ冷凍機の系統図である。
図3】本発明の第3実施形態におけるターボ冷凍機の系統図である。
図4】本発明の第4実施形態における蒸発器の側面図である。
図5】本発明の第5実施形態におけるターボ冷凍機の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるターボ冷凍機1の系統図である。
本実施形態のターボ冷凍機1は、例えばフロンを冷媒として、空調用の冷水を冷却対象物とするものである。ターボ冷凍機1は、図1に示すように、凝縮器2と、膨張弁3と、蒸発器4と、ターボ圧縮機5と、を備えている。
【0017】
凝縮器2は、流路R1を介してターボ圧縮機5のガス吐出管5aと接続されている。凝縮器2には、ターボ圧縮機5によって圧縮された冷媒(圧縮冷媒ガスX1)が流路R1を通って供給されるようになっている。凝縮器2は、この圧縮冷媒ガスX1を液化するものである。凝縮器2は、冷却水が流通する伝熱管2aを備え、圧縮冷媒ガスX1と冷却水と間の熱交換によって、圧縮冷媒ガスX1を冷却するようになっている。
【0018】
圧縮冷媒ガスX1は、冷却水との間の熱交換によって冷却され、液化し、冷媒液X2となって凝縮器2の底部に溜まる。凝縮器2の底部は、流路R2を介して蒸発器4と接続されている。流路R2には、冷媒液X2を減圧するための膨張弁3が設けられている。蒸発器4には、膨張弁3によって減圧された冷媒液X2が流路R2を通って供給されるようになっている。
【0019】
蒸発器4は、冷媒液X2を蒸発させてその気化熱によって冷水を冷却するものである。蒸発器4は、冷水が流通する伝熱管4aを備え、冷媒液X2と冷水と間の熱交換によって、冷水を冷却すると共に冷媒液X2を蒸発させるようになっている。冷媒液X2は、冷水との間の熱交換によって熱を奪って蒸発し、冷媒ガスX3となる。蒸発器4の頂部は、流路R3を介してターボ圧縮機5のガス吸入管5cと接続されている。
【0020】
ターボ圧縮機5には、蒸発器4において蒸発した冷媒ガスX3が流路R3を通って供給されるようになっている。ターボ圧縮機5は、蒸発した冷媒ガスX3を圧縮し、圧縮冷媒ガスX1として凝縮器2に供給するものである。ターボ圧縮機5は、冷媒ガスX3を圧縮する第1圧縮段11と、一段階圧縮された冷媒をさらに圧縮する第2圧縮段12と、を具備する2段圧縮機である。
【0021】
第1圧縮段11にはインペラ13が設けられ、第2圧縮段12にはインペラ14が設けられており、それらが回転軸15で接続されている。ターボ圧縮機5は、電動機10によってインペラ13,14を回転駆動させて冷媒を圧縮するようになっている。インペラ13,14は、ラジアルインペラであり、軸方向で吸気した冷媒を半径方向に導出する不図示の3次元的ねじれを含むブレードを有する。
【0022】
ガス吸入管5cには、第1圧縮段11の吸入量を調節するためのインレットガイドベーン16が設けられている。インレットガイドベーン16は、冷媒ガスX3の流れ方向からの見かけ上の面積が変更可能なように回転可能とされている。インペラ13,14の周りには、それぞれディフューザ流路が設けられており、半径方向に導出した冷媒を、当該流路において圧縮・昇圧し、また、さらにその周りに設けられたスクロール流路によって次の圧縮段に供給することができるようになっている。インペラ14の周りには、出口絞り弁17が設けられており、ガス吐出管5aからの吐出量を制御できるようになっている。
【0023】
ターボ圧縮機5は、密閉型の筐体20を備える。筐体20は、圧縮流路空間S1と、第1の軸受収容空間S2と、モーター収容空間S3と、ギヤユニット収容空間S4と、第2の軸受収容空間S5と、に区画されている。圧縮流路空間S1には、インペラ13,14が設けられている。インペラ13,14を接続する回転軸15は、圧縮流路空間S1、第1の軸受収容空間S2、ギヤユニット収容空間S4に挿通して設けられている。第1の軸受収容空間S2には、回転軸15を支持する軸受21が設けられている。
【0024】
モーター収容空間S3には、ステータ22と、ロータ23と、ロータ23に接続された回転軸24と、が設けられている。この回転軸24は、モーター収容空間S3、ギヤユニット収容空間S4、第2の軸受収容空間S5に挿通して設けられている。第2の軸受収容空間S5には、回転軸24の反負荷側を支持する軸受31が設けられている。ギヤユニット収容空間S4には、ギヤユニット25と、軸受26,27と、油タンク28と、が設けられている。
【0025】
ギヤユニット25は、回転軸24に固定される大径歯車29と、回転軸15に固定されると共に大径歯車29と噛み合う小径歯車30と、を有する。ギヤユニット25は、回転軸24の回転数に対して回転軸15の回転数が増加(増速)するように、回転駆動力を伝達するものである。軸受26は、回転軸24を支持するものである。軸受27は、回転軸15を支持するものである。油タンク28は、軸受21,26,27,31等のインペラ13,14の各摺動部位に供給される潤滑油を貯溜するものである。なお、符号37は、各摺動部位に潤滑油を供給する給油ポンプである。
【0026】
このような筐体20には、圧縮流路空間S1と第1の軸受収容空間S2との間において、回転軸15の周囲をシールするシール部32,33が設けられている。また、筐体20には、圧縮流路空間S1とギヤユニット収容空間S4との間において、回転軸15の周囲をシールするシール部34が設けられている。また、筐体20には、ギヤユニット収容空間S4とモーター収容空間S3との間において、回転軸24の周囲をシールするシール部35が設けられている。また、筐体20には、モーター収容空間S3と第2の軸受収容空間S5との間において、回転軸24の周囲をシールするシール部36が設けられている。
【0027】
ところで、ギヤユニット収容空間S4では、ギヤユニット25の特にインペラ13,14に回転駆動力を伝達する大径歯車29によって、潤滑油が掻き上げられ、ミスト状の油滴や油煙が発生している。また、回転軸15,24の摺動部位におけるシールは完全ではないため、例えば空間の圧力差によって潤滑油が他の空間に漏れ出すと、冷媒に混入して圧縮流路空間S1に導入され、凝縮器2を通って蒸発器4に溜まり、油タンク28の液面の低下及び蒸発器4における冷媒への伝熱効率の低下となる。
【0028】
蒸発器4には、油トラップ部40が設けられている。油トラップ部40は、蒸発器4の冷媒液X2の液面付近から油の濃度が比較的高い状態の冷媒液X2をトラップして貯溜する構成となっている。油トラップ部40は、蒸発器4に貯溜された冷媒液X2の液面に対応する位置に開口する吸液口41を有する。蒸発器4においては、冷媒液X2の底部からの導入等により、貯溜された冷媒液X2の液面が揺動しており、油トラップ部40は、当該揺動した冷媒液X2をトラップするようになっている。
【0029】
このため、油トラップ部40の吸液口41は、蒸発器4に貯溜された冷媒液X2の液面揺動がないと仮定した静的な液面100の高さ以上の高さに設けられている。本実施形態の吸液口41の下端は、静的な液面100に接近して配置されている。これにより、油トラップ部40は、蒸発器4に貯溜された冷媒液X2を大量にトラップすることがなく、蒸発器4の冷媒液X2の液面付近から油の濃度が比較的高い状態の上澄み液のみを捕集・吸液することができる。
【0030】
油トラップ部40は、蒸発器4の側部に接続されており、蒸発器4の内部と連通している。本実施形態の油トラップ部40は、継手であるL字のエルボ管から形成されている。油トラップ部40は、吸液口41から水平方向に延びる導入部42と、導入部42と連通し鉛直下方に延びる貯溜部43と、を有する。これにより、蒸発器4に貯溜された冷媒液X2のうち吸液口41を介して溢れ出たものを、導入部42を通って貯溜部43に滞留させることができる。
【0031】
貯溜部43には、ヒーター(加熱部)50が設けられている。本実施形態のヒーター50は、電熱ヒーターであり温度制御が可能な構成となっている。ヒーター50は、油トラップ部40にトラップされた冷媒液X2を冷媒の沸点以上且つ潤滑油の沸点未満の温度に加熱するものである。冷媒の沸点及び潤滑油の沸点はその成分や圧力によって変化するものであるが、概略として例えば、冷媒の沸点は十数℃程度で、潤滑油の沸点は百℃以上であるため、その間に加熱温度を設定することは比較的容易にすることができる。
【0032】
ヒーター50は、油トラップ部40の貯溜部43の周りを囲うように設けられている。本実施形態の油トラップ部40のようにエルボ管から形成されている場合、当該エルボ管の周りに電熱線を巻き付けるようにしてヒーター50を配置してもよい。油トラップ部40を形成するエルボ管には、熱伝導性の高いアルミニウムや銅等の金属材を採用することが好ましい。また、ヒーター50の熱で蒸発器4の中の冷媒液X2が温まって冷水の冷却効率が低下しないように、ヒーター50と蒸発器4との間に断熱部材を配置することが好ましい。
【0033】
本実施形態では、油トラップ部40の貯溜部43における潤滑油を油タンク28に返送する油返送部60を有する。油返送部60は、流路R4と、エジェクター61と、を有する。流路R4は、貯溜部43の底と、油タンク28とを接続するものである。流路R4には、潤滑油を搬送するためのエジェクター61が設けられている。エジェクター61は、流体の流動によって負圧を発生させ、貯溜部43の底に溜まった潤滑油を吸い込んで搬送するものである。流体としては、各摺動部位から油タンク28に戻って行く潤滑油や圧縮冷媒ガスX1等を用いることができる。
【0034】
続いて、上記構成のターボ冷凍機1の作用について説明する。
【0035】
ターボ圧縮機5が駆動すると、蒸発器4の冷媒ガスX3がインペラ13,14によって吸い込まれ、圧縮されて圧縮冷媒ガスX1となって凝縮器2に導かれる。凝縮器2で冷媒は液化し、蒸発器4に送られる際に膨張弁3によって冷媒液X2の温度が低下して蒸発器4を満たす。蒸発器4では、冷媒液X2が冷水から熱を奪って蒸発して冷媒ガスX3となり、冷媒ガスX3は再びターボ圧縮機5に吸い込まれる。このように冷媒が、ターボ圧縮機5、凝縮器2、蒸発器4を順に循環することで、冷凍サイクルが繰り返される。
【0036】
この冷凍サイクルにおいて冷媒に混入した潤滑油は、蒸発器4において蒸発することができずに蒸発器4に溜まる。潤滑油は、比重の関係で冷媒液X2の液面付近において比較的濃度が高く、蒸発器4における冷媒液X2の液面は、流路R2を介して導入される冷媒液X2等によって揺動している。この蒸発器4には、油トラップ部40が設けられている。油トラップ部40は、蒸発器4の冷媒液X2の液面付近において揺動する油の濃度が比較的高い状態の冷媒液X2をトラップして貯溜する。
【0037】
ここで、油トラップ部40の吸液口41は、蒸発器4に貯溜された冷媒液X2の液面揺動がないと仮定した静的な液面100の高さ以上の高さに設けられているため、蒸発器4に貯溜された冷媒液X2を大量にトラップすることがなく、蒸発器4の冷媒液X2の液面付近から油の濃度が比較的高い状態の上澄み液のみを捕集・吸液することができる。吸液口41に導入された冷媒液X2は、導入部42を水平方向に流通した後、鉛直下方に落下し貯溜部43に溜まる。
【0038】
油トラップ部40の貯溜部43には、ヒーター50が設けられている。ヒーター50は、油トラップ部40にトラップされた冷媒液X2を冷媒の沸点以上且つ潤滑油の沸点未満の温度に加熱する。ヒーター50の加熱により、冷媒液X2は蒸発して冷媒ガスX3となって油トラップ部40の吸液口41を介して蒸発器4の中に戻り、再びターボ圧縮機5に吸い込まれ、冷凍サイクルに寄与することとなる。このように、トラップした冷媒液X2を加熱することで冷媒のみを蒸発させて除去し、潤滑油を濃縮させることができる。
【0039】
また、本実施形態においては、油返送部60が設けられており、油トラップ部40の貯溜部43の底には、溜まった潤滑油を抜き出す流路R4が接続されている。油トラップ部40において濃縮された潤滑油は、エジェクター61によって流路R4を介して油タンク28に返送される。このように、回収した潤滑油は、油タンク28に戻るため、油上がりを確実に防止することができる。
このように、油トラップ部40において予め冷媒を除去することによって、油タンク28の中でガス化する冷媒量が少なくなり、タンク圧力も低くなるため、各摺動部位に供給された潤滑油が油タンク28に戻ってくることが容易になり、また油煙やミスト状の油滴が当該冷媒と共に漏出することを防止することができる。
【0040】
したがって、上述の本実施形態によれば、潤滑油を貯溜する油タンク28と、潤滑油が給油されるインペラ13,14の回転駆動によって冷媒を圧縮するターボ圧縮機5と、圧縮された冷媒を液化する凝縮器2と、冷媒液X2を蒸発させて圧縮される冷媒を生成すると共に冷却対象物を冷却する蒸発器4と、を有するターボ冷凍機1であって、蒸発器4に貯溜された冷媒液X2の液面に対応する位置に開口する油トラップ部40と、油トラップ部40にトラップされた冷媒液X2を冷媒の沸点以上且つ潤滑油の沸点未満の温度に加熱するヒーター50と、を有する、という構成を採用することによって、冷媒から潤滑油を効率よく回収することができるターボ冷凍機1が得られる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0042】
図2は、本発明の第2実施形態におけるターボ冷凍機1の系統図である。
図2に示すように、第2実施形態では、油トラップ部40にトラップされた冷媒液X2を加熱する加熱部として熱交換器51を有する点で、上記実施形態と異なる。
【0043】
熱交換器51は、圧縮冷媒ガスX1の少なくとも一部との間の熱交換により加熱を行う構成となっている。熱交換器51は、油トラップ部40の貯溜部43に巻回された伝熱管51aを有する。伝熱管51aの一端は、流路R1と接続されており、圧縮されて高温となった圧縮冷媒ガスX1が供給されるようになっている。伝熱管51aの他端は、蒸発器4と接続されており、当該熱交換により熱を奪われた圧縮冷媒ガスX1を蒸発器4に導入させるようになっている。
【0044】
上記構成の第2実施形態によれば、ターボ圧縮機5によって圧縮された圧縮冷媒ガスX1の熱を利用して、トラップした冷媒を蒸発させることができるため、別途熱源を用意する必要がなく、また、凝縮器2における冷却の仕事量を減らし、運転効率を向上させることができる。なお、冷媒の加熱温度は、伝熱管51aの巻数や接触面積等によって容易に調整することができる。また、上記実施形態のヒーター50を併設して、最終的な温度調整をヒーター50で行ってもよい。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0046】
図3は、本発明の第3実施形態におけるターボ冷凍機1の系統図である。
図3に示すように、第3実施形態では、油トラップ部40にトラップされた冷媒液X2を加熱する加熱部として熱交換器52を有する点で、上記実施形態と異なる。
【0047】
熱交換器52は、凝縮器2において液化のために用いられる冷却水の少なくとも一部との間の熱交換により加熱を行う構成となっている。熱交換器52は、油トラップ部40の貯溜部43に巻回された伝熱管52aを有する。伝熱管52aの一端は、凝縮器2の伝熱管2aの入口側と接続されており、蒸発器4における冷媒温度と比べて高温の冷却水が供給されるようになっている。伝熱管52aの他端は、凝縮器2の伝熱管2aの出口側と接続されており、熱交換した冷却水を出口側の伝熱管2aに合流させるようになっている。
【0048】
上記構成の第3実施形態によれば、凝縮器2において用いられる冷却水の熱を利用して、トラップした冷媒を蒸発させることができるため、別途熱源を用意する必要がなく、また、運転効率を向上させることができる。なお、伝熱管52aは、凝縮器2の伝熱管2aの入口側と接続される構成であってもよく、例えば、伝熱管52aを、凝縮器2の伝熱管2aの出口側と接続させて、凝縮器2において熱交換して高温となった冷却水をポンプによって供給するようにすれば、出口側の方が凝縮器2において冷媒から熱を奪って高温となっているため加熱効率を高くすることができる。また同様に、上記実施形態のヒーター50を併設して、最終的な温度調整をヒーター50で行ってもよい。
【0049】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0050】
図4は、本発明の第4実施形態における蒸発器4の側面図である。
図4に示すように、第4実施形態では、油トラップ部40が複数設けられており、複数の油トラップ部40は、開口する高さが互いに異なっている点で、上記実施形態と異なる。
【0051】
図4に示すように、蒸発器4は水平に軸が設定された円筒形状を有し、その一端側の底部から冷媒液X2が導入され、その他端側の頂部から冷媒ガスX3が流出していくため、貯溜された冷媒液X2の液面のレベルは一定でなく、一端側と他端側とで僅かな差があって傾いている(図4において水平線を一点鎖線で示す)。このため、第4実施形態では、この傾きに対応して複数の油トラップ部40は、開口する高さが互いに異なっている。
【0052】
上記構成の第4実施形態によれば、蒸発器4における液面が一定の高さに保たれていなくても、複数の油トラップ部40は、開口する高さが互いに異なっているため、油の濃度が比較的高い状態の冷媒液X2をトラップすることができる。また、例えばターボ冷凍機1の運転開始時や停止時において蒸発器4において液面が大きく変動するような場合であっても、高さの異なる油トラップ部40のいずれかが油の濃度が比較的高い状態の冷媒液X2をトラップすることができる。
【0053】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0054】
図5は、本発明の第5実施形態におけるターボ冷凍機1の系統図である。
図5に示すように、第5実施形態では、油トラップ部40を加熱可能に設けられたヒーター50と、外気の温度を計測する温度計測部62と、温度計側部62の計測結果に基づいてヒーター50の駆動を制御する制御部63と、を有する点で、上記実施形態と異なる。
【0055】
本実施形態の温度計側部62は、外気の温度を直接的に計測する温度センサーからなり、計測結果を制御部63に出力する構成となっている。なお、第5実施形態では温度計測の精度は要求されないので、例えば温度計側部62は、外気の温度を間接的に計測するもの、例えば、年間の各季節における平均の温度データを予め記憶しておき、現日付と当該温度データを照合して該当する温度データから外気の温度を導くもの等であってもよい。
【0056】
本実施形態の制御部63は、温度計側部62から受信した信号に基づいて、ヒーター50の駆動を制御する。具体的に、制御部63は、温度計側部62の計測結果が所定の閾値以上のときにヒーター50の駆動を「OFF」にし、当該閾値未満のときにヒーター50の駆動を「ON」にする制御を行う。当該閾値としては、冬場等で0℃以下とならない程度の温度に設定することが好ましい。
【0057】
上記構成の第5実施形態によれば、油トラップ部40が熱伝導性のある金属材で構成され、また冷媒自体の沸点も低いことから、夏場等においては外気の熱を利用して、トラップした冷媒を蒸発させることができ、ヒーター50に電源を入れることなく運転させることができる。一方、外気の熱を利用し難い冬場等においては、温度計側部62の計測結果に基づいて、制御部63がヒーター50を駆動させることで、トラップした冷媒を蒸発させることで加熱機能を保障することができる。
【0058】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、油トラップ部の潤滑油をエジェクターで返送する形態について説明したが、本発明はこの形態に限定されることなく、例えばポンプによって潤滑油を油タンクに返送する形態であってもよい。
【0060】
また、例えば、上記実施形態では、油トラップ部の冷媒を、ヒーター、圧縮冷媒ガス、冷却水、あるいは大気、によって加熱すると説明したが、本発明はこの形態に限定されることなく、例えば、蒸気やバーナー等によって加熱する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…ターボ冷凍機、2…凝縮器、4…蒸発器、5…ターボ圧縮機、13,14…インペラ、40…油トラップ部、50…ヒーター(加熱部)、51…熱交換器、52…熱交換器、60…油返送部、100…液面、X1…圧縮冷媒ガス(圧縮された冷媒)、X2…冷媒液(液化した冷媒)、X3…冷媒ガス(圧縮される冷媒)
図1
図2
図3
図4
図5