(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064508
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】真空コンデンサ形計器用変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 38/24 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
H01F38/24 501
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-228660(P2012-228660)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-82292(P2014-82292A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大造
(72)【発明者】
【氏名】深井 利眞
(72)【発明者】
【氏名】家田 正彦
(72)【発明者】
【氏名】谷水 徹
【審査官】
池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−054796(JP,A)
【文献】
実開昭55−037246(JP,U)
【文献】
特開昭60−021514(JP,A)
【文献】
特開2009−129956(JP,A)
【文献】
実開平05−038855(JP,U)
【文献】
実開昭50−127614(JP,U)
【文献】
実開平02−129719(JP,U)
【文献】
実公昭45−013223(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の外筐と、
前記外筐の開放端を閉塞して設けられる1次側端板と、
前記1次側端板面から前記外筐内に立設される内部1次電極と、
前記1次側端板の内部1次電極が設けられる面と対向して前記外筐内に設けられる2次側端板と、
前記2次側端板面から前記1次側端板方向に立設される内部2次電極と、
を有し、前記内部1次電極と前記内部2次電極を対向配置して主コンデンサを形成し、当該主コンデンサが形成される空間を真空とした真空コンデンサ形計器用変圧器であって、
前記外筐の一部は絶縁筒であり、前記絶縁筒を前記1次側端板側に偏倚して設け、
前記1次側端板及び前記絶縁筒の外周部を絶縁モールドで被覆したモールド部を設け、
前記モールド部の外周を金属皮膜で被覆する
ことを特徴とする真空コンデンサ形計器用変圧器。
【請求項2】
前記絶縁筒の長さと前記外筐の長さの比率は、1:2〜1:10である
ことを特徴とする請求項1に記載の真空コンデンサ形計器用変圧器。
【請求項3】
前記外筐の1次側端板により閉塞されていない開放端に設けられる接地側端板と、
当該接地側端板と前記2次側端板との間に設けられる筒状の2次側絶縁筒と、
をさらに有し、
前記2次側絶縁筒の内周面と前記2次側端板とで形成される空間を真空とし、当該空間に2次側コンデンサを設ける
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空コンデンサ形計器用変圧器。
【請求項4】
前記外筐の1次側端板により閉塞されていない開放端に設けられる接地側端板と、
当該接地側端板と前記2次側端板との間に設けられる筒状の2次側絶縁筒と、
をさらに有し、
前記2次側絶縁筒の内周面と前記2次側端板とで形成される空間に不活性ガスまたは乾燥空気を封入し、当該空間に2次側コンデンサを設ける
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空コンデンサ形計器用変圧器。
【請求項5】
前記外筐を前記絶縁筒に導体筒を接合して形成し、
前記導体筒を前記1次側端板または前記接地側端板を構成する材料で形成する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の真空コンデンサ形計器用変圧器。
【請求項6】
前記モールド部の一部は測定対象の接合部に嵌合するように形成され、当該嵌合部には金属皮膜を被覆しない
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の真空コンデンサ形計器用変圧器。
【請求項7】
前記測定対象の接合部と前記モールド部の嵌合部との接触面を密着させる
ことを特徴とする請求項6に記載の真空コンデンサ形計器用変圧器。
【請求項8】
前記金属皮膜を接地する
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の真空コンデンサ形計器用変圧器。
【請求項9】
前記1次側端板及び前記2次側端板には、直径の大きさが異なる円筒状の内部1次電極板及び内部2次側極板をそれぞれ同心円状に設け、
前記内部2次電極の直径の最大値を、前記内部1次電極の直径の最大値よりも大きくする
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の真空コンデンサ形計器用変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ形計器用変圧器に関し、特に、1次側端子と分圧点との間に設けられる主コンデンサに真空コンデンサを用いた真空コンデンサ形計器用変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
計器用変圧器(VT:Voltage Transformers)は分圧回路によって高電圧を安全な電圧に変換させ、電圧計などの計測器や保護継電器などに入力するために使用する機器である。計器用変圧器には、巻線形、コンデンサ形、抵抗形といくつかの方式がある。
【0003】
計器用変圧器として、真空コンデンサ(VC:Vacuum Capacitor)を用いた真空コンデンサ形計器用変圧器がある(例えば、特許文献1)。以下、真空コンデンサ形計器用変圧器を真空VTと称する。真空VTは、真空コンデンサの構成上、高い絶縁耐力を有し、また、経年劣化による焼損事故は発生せず信頼性の高い計器用変圧器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−54796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、真空VTにおいて、1次側の真空コンデンサは、周囲環境の影響を受けるなどの理由により、その静電容量が変化するおそれがある。静電容量の変化は、真空VTの電圧測定精度低下の要因となるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、真空VTの電圧測定精度の向上に貢献する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の一態様は、筒状の外筐と、前記外筐の開放端を閉塞して設けられる1次側端板と、前記1次側端板面から前記外筐内に立設される内部1次電極と、前記1次側端板の内部1次電極が設けられる面と対向して前記外筐内に設けられる2次側端板と、前記2次側端板面から前記1次側端板方向に立設される内部2次電極と、を有し、前記内部1次電極と前記内部2次電極を対向配置して主コンデンサを形成し、当該主コンデンサが形成される空間を真空とした真空コンデンサ形計器用変圧器であって、前記外筐の少なくとも一部は絶縁筒であり、前記1次側端板及び前記絶縁筒の外周部を絶縁モールドで被覆したモールド部を設け、前記モールド部の外周を金属皮膜で被覆することを特徴としている。
【0008】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記絶縁筒を前記1次側端板側に偏倚して設けることを特徴としている。
【0009】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記絶縁筒の長さと前記外筐の長さの比率は、1:2〜1:10であることを特徴としている。
【0010】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記外筐の1次側端板により閉塞されていない開放端に設けられる接地側端板と、当該接地側端板と前記2次側端板との間に設けられる筒状の2次側絶縁筒と、をさらに有し、前記2次側絶縁筒の内周面と前記2次側端板とで形成される空間を真空とし、当該空間に2次側コンデンサを設けることを特徴としている。
【0011】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記外筐の1次側端板により閉塞されていない開放端に設けられる接地側端板と、当該接地側端板と前記2次側端板との間に設けられる筒状の2次側絶縁筒と、をさらに有し、前記2次側絶縁筒の内周面と前記2次側端板とで形成される空間に不活性ガスまたは乾燥空気を封入し、当該空間に2次側コンデンサを設けることを特徴としている。
【0012】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記外筐を前記絶縁筒に導体筒を接合して形成し、前記導体筒を前記1次側端板または前記接地側端板を構成する材料で形成することを特徴としている。
【0013】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記モールド部の一部は測定対象の接合部に嵌合するように形成され、当該嵌合部には金属皮膜を被覆しないことを特徴としている。
【0014】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記測定対象の接合部と前記モールド部の嵌合部との接触面を密着させることを特徴としている。
【0015】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記金属皮膜を接地することを特徴としている。
【0016】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記1次側端板及び前記2次側端板には、直径の大きさが異なる円筒状の内部1次電極板及び内部2次側極板をそれぞれ同心円状に設け、前記内部2次電極の直径の最大値を、前記内部1次電極の直径の最大値よりも大きくすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
以上の発明によれば、真空VTの電圧測定精度の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る真空コンデンサ形計器用変圧器の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る真空コンデンサ形計器用変圧器をC−GISに接続した例を説明する説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る真空コンデンサ形計器用変圧器をC−GISの接続部に接続した状態を説明する説明図(要部拡大断面)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る真空コンデンサ形計器用変圧器(真空VT)について、図を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る真空VT1の概略断面図である。実施形態に係る真空VT1は、1次側絶縁筒2、円筒部3及び接地円筒部4により形成される外筐5と、外筐5内に設けられる1次側コンデンサ6とを有する。なお、外筐5内に形成される2次側ケース7内には、保護継電器や計測器への出力電圧を分担する2次側コンデンサ(図示せず)が設けられる。
【0021】
1次側絶縁筒2は、例えば、セラミック材などの無機絶縁材料を円筒状に形成した部材である。1次側絶縁筒2の一方の開放端には円筒状の導電部材である円筒部3が設けられ、1次側絶縁筒2の他方の開放端には円筒状の導電部材である接地円筒部4が設けられる。
【0022】
円筒部3の開放端には導電部材である1次側端板8が設けられる。一方、接地円筒部4の開放端には、導電部材である接地側端板9が設けられる。接地側端板9には、接地線(図示せず)が接続され、真空VT1の外筐5(接地円筒部4)が接地される。接地側端板9には、外筐5の軸を中心とした円形の孔が形成されており、この孔の外周部から1次側端板8方向に立設して無機絶縁材料で形成された円筒状の2次側絶縁筒10が設けられる。そして、2次側絶縁筒10の1次側端板8側の開放端は導電部材である2次側端板11により密閉される。このように、円筒部3の開放端を1次側端板8で密閉し、接地円筒部4の開放端を接地側端板9、2次側絶縁筒10及び2次側端板11で密閉することで外筐5内部を真空状態にした真空部12が形成される。なお、1次側絶縁筒2に直接1次側端板8を設けて1次側絶縁筒2の開放端を密閉してもよい。また、1次側絶縁筒2の他方の開放端に直接接地側端板9を設けてもよい。また、2次側絶縁筒10と接地側端板9は、直接または導電部材である円筒部13aを介して接続される。同様にして、2次側絶縁筒10と2次側端板11は、直接または導電部材である円筒部13bを介して接続される。
【0023】
1次側コンデンサ6は、1次側端板8と2次側端板11との間に形成される。1次側端板8の主面であって外筐5内周側の面には、内部1次電極8aが設けられる。内部1次電極8aは、例えば、円筒状の電極であり、2次側端板11方向に延設される。内部1次電極8aを複数設ける場合は、直径が順次小さくなる内部1次電極8aが同心円状に複数配置される。一方、2次側端板11の1次側端板8と対向する面には、内部2次電極11a,11bが設けられる。内部2次電極11a,11bは、例えば、内部1次電極8aと直径の異なる円筒状の電極であり、1次側端板8方向に延設される。すなわち、内部1次電極8aと内部2次電極11a,11bは、その側面が非接触で対向するように交互に配置され1次側コンデンサ6が形成される。
【0024】
また、最も大きい直径を有する内部2次電極11aの直径は最も大きい直径を有する内部1次側電極8aの直径よりも大きく、内部2次電極11aの側面が外筐5の内周面(接地円筒部4の内周面)に対向して設けられる。このように、内部2次電極11aと接地円筒部4の内周面とを対向させることで、内部2次電極11aと接地円筒部4との間にコンデンサが形成される。その結果、2次側端板11に2次側コンデンサ(図示せず)を接続した場合、分圧コンデンサの静電容量は、内部2次電極11aと接地円筒部4との間に形成されるコンデンサと2次側コンデンサの合成容量となる。よって、分圧コンデンサの静電容量が大きくなる。
【0025】
1次側端板8の内部1次電極8aが設けられる面の反対側の面には、測定対象機器(高電圧側)と接続される接続導体8bが設けられる。この接続導体8b(1次側端板8)と1次側絶縁筒2が絶縁モールドで被覆されモールド部14が形成される。さらに、モールド部14の外周は金属皮膜15で覆われる。金属皮膜15は、金属であれば特に限定されない。また、金属皮膜15は、直接または接地円筒部4を介して接地される。このようにモールド部14を金属皮膜15で覆うことで、真空VT1周辺の電界の影響や、大気の湿度、気圧、汚損の影響が低減される。
【0026】
2次側ケース7は、2次側絶縁筒10の内周面と2次側端板11により形成される。この2次側ケース7内には、2次側コンデンサ(図示せず)が設けられる。2次側ケース7内を真空にしたり不活性ガス(He、N
2、Ar、SF
6など)や乾燥空気を充填したりすることで、2次側コンデンサに対する大気の湿度や気圧の影響や2次側コンデンサの汚損の影響が低減される。その結果、2次側端板11から2次側絶縁筒10や2次側コンデンサの表面を伝わって接地側端板9を流れる漏洩電流が小さくなり、真空VT1の出力が安定するとともに真空VT1の電圧測定精度が向上する。
【0027】
2次側コンデンサは、2次側端板11及び接地側端板9と電気的に接続される。2次側コンデンサは適宜周知のコンデンサを用いればよく、例えば、フィルムコンデンサが用いられる。また、2次側ケース7内を真空としその内部に電極を配置し、2次側コンデンサを真空コンデンサとしてもよい。
【0028】
図2、3を参照して、本発明の真空VT1についてさらに詳しく説明する。
図2では、プラグインタイプの真空VT1をガス絶縁スイッチギヤ16(C−GIS:Cubicle type Gas Insulated Switchgear)に接続する形態を例示して説明する。なお、真空VT1が接続される測定対象となる機器としては、C−GIS16の他に固体絶縁スイッチギヤ(SIS:Solid-Insulated Switchgear)などがある。
【0029】
図2に示すように、C−GIS16には、真空VT1のモールド部14が着脱可能なブッシングモールド17が設けられており、このブッシングモールド17によりC−GIS16の外装18とC−GIS16の被測定部19との絶縁が行われる。ブッシングモールド17(及び
図3に示すブッシング導体20、接合部20a)は、外装18の気密性を確保した状態で設けられる。そして、外装18内にSF
6ガスなどの絶縁ガスが充填される。また、外装18及び真空VT1の外筐5は接地されており、この外装18と真空VT1の外筐5(金属皮膜15)は電気的に接続される。このように接地部を2箇所設けることで、真空VT1の安全性がより向上する。
【0030】
図3に示すように、真空VT1のモールド部14はC−GIS16のブッシングモールド17に嵌設され、C−GIS16のブッシング導体20と真空VT1の接続導体8bとが電気的に接続される。具体的には、モールド部14をブッシングモールド17に嵌設することで、接続導体8bとブッシング導体20の端部に設けられた接合部20a(マルチコンタクトなど)が接合し、真空VT1と被測定部19の接続が行われる。
【0031】
ブッシングモールド17に真空VT1のモールド部14を嵌合すると、ブッシングモールド17の外側面に設けられた外装18と真空VT1の金属皮膜15とが接触する。C−GIS16は、外装18を直接接地(または、外装18にアース線(図示せず)を接続)して設けられる。一方、金属皮膜15も直接または接地円筒部4を介して接地される。つまり、外装18と金属皮膜15を接触させることで、C−GIS16及び真空VT1は、外装18での接地と、金属皮膜15での接地との2箇所の接地部を有することとなる。
【0032】
モールド部14は、モールド部14とブッシングモールド17の接触面(図中Aで示す)が密着するように、ブッシングモールド17に設けられる。例えば、モールド部14は、グリスやシリコンカバーなどを介してブッシングモールド17に嵌設される。このようにモールド部14とブッシングモールド17との間の隙間を無くすことで、ブッシング導体20からの閃絡が防止される。また、ブッシング導体20(及び接合部20a)から金属皮膜15への閃絡を防止するために、モールド部14のブッシングモールド17への嵌合部には金属皮膜15を設けない。なお、モールド部14の形状は、ブッシングモールド17に嵌合できる形状であれば、その形状は特に限定されるものではない。
【0033】
以上のように、本発明の真空VTによれば、1次側絶縁筒を絶縁モールドで覆うことで、外筐の絶縁性を確保することができる。また、1次側絶縁筒を覆うモールド部の外周を金属皮膜で被覆することで、外部環境のノイズが主コンデンサに与える影響を低減し、真空VTの電圧測定精度を向上させることができる。
【0034】
また、本発明の真空VTによれば、外筐を構成する1次側絶縁筒を1次側端板側に設けることで、外部環境のノイズが主コンデンサに与える影響を低減し、真空VTの電圧測定精度を向上することができる。つまり、外筐に占める1次側絶縁筒の長さを短くし、外筐の接地側端板が設けられる側を導電部材である接地円筒部とすることで、真空VTの接地部分を大きくすることができる。その結果、真空VTに対する周辺の電界の影響が低減され、真空VTの電圧測定精度が向上する。
【0035】
また、1次側絶縁筒を1次側端板近傍に配置することで、1次側端板及び1次側絶縁筒の外周に形成されるモールド部を小さくすることができ、真空VTを小型化することができる。
【0036】
1次側絶縁筒の長さは、短くすればするほど、真空VTの大きさを縮小することができる。これは、ステンレス鋼などの金属で形成される円筒部や接地円筒部の厚さは、セラミックなどで形成される1次側絶縁筒よりも薄く加工でき、真空VT1の横幅を縮小することができるためである。一方で、1次側絶縁筒の長さを外筐の長さの1/10以上とすることで、外筐の絶縁性を確保することができる。したがって、1次側絶縁筒の長さと外筐の長さの比率を、1:1〜1:10、より好ましくは1:2〜1:10とすることで、外筐の絶縁性を維持して真空VTを小型化することができる。
【0037】
また、本発明の真空VTにおいて、接地円筒部を導電部材で形成し、この接地円筒部の内周面に対向するように内部2次電極を設けることで、内部2次電極と接地円筒部との間にコンデンサが形成される。その結果、分圧コンデンサの静電容量は、内部2次電極と接地円筒部との間に形成されたコンデンサと2次側コンデンサとの合成容量となり、分圧コンデンサの静電容量を増加させることができる。
【0038】
また、1次側端板と内部1次電極、2次側端板と内部2次電極、接地円筒部と接地側端板または円筒部と1次側端板など、接合される各導電部材を同じ材料で形成することで、真空VTの放電電圧、加工性、熱変形性及び強度が向上する。各導電部材を構成する材料としては、例えば、加工性や入手容易性などから、ステンレス鋼(SUS)などが好ましい。なお、1次側端板と内部1次電極、接地円筒部と接地側端板などを異なる種類の導電部材で形成して真空VTを構成した場合、その構造や組み合わせにより放電部や電圧の安定性を考慮しなくてはならない場合がある。
【0039】
また、真空VTの外筐(金属皮膜や接地円筒部)を接地することで、真空VTを測定対象となる機器に設けた場合、真空VTでの接地と測定対象機器の外装での接地との2箇所で接地が行われることとなる。つまり、真空VTの接地と測定対象機器の接地が2箇所設けられることとなり、真空VTの接地及び測定対象機器の接地をより確実に行うことができ、安全性が向上する。
【0040】
また、真空VTを測定対象機器の接合部に嵌合させるプラグイン型とした場合、測定対象機器の接合部と真空VTの嵌合部との接触面とを密着させることで、ブッシング導体と他の部材との間に生じる閃絡を防止することができる。また、絶縁モールドの外周を金属皮膜で覆うことで、ブッシング導体と他の部材との間での閃絡をさらに防止することができる。
【0041】
なお、本発明の真空VTについて具体例を示して詳細に説明したが、本発明の真空VTは、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない範囲で適宜設計変更が可能であり、そのように変更された形態も本発明の真空VTの範囲に属する。
【0042】
例えば、本発明の真空VTの内部構造として、特許文献1に記載された真空VTの内部構造を適用してもよい。具体的には、特許文献1に記載された真空VTの絶縁筒を縮小し、一次線路側フランジ側に設けることで、真空VTのサイズの縮小化と真空VTの電圧測定精度の向上を実現することができる。また、2次側端板と接地側端板との間に真空コンデンサを形成することで、分圧コンデンサの静電容量が真空コンデンサと2次側コンデンサ(及び、外筐と内部2次電極で形成されるコンデンサ)の合成容量となり、分圧コンデンサの静電容量を大きくすることができる。
【0043】
また、真空VTの形状の小型化を考慮しない場合は、絶縁筒長を大きくとったり、真空VT全体を絶縁モールドで覆ったりすることで、真空VTの絶縁性をより向上させることができる。
【0044】
また、1次側コンデンサは、内部1次電極と内部2次電極が対向配置された最小構成だけで構成した形態としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…真空コンデンサ形計器用変圧器(真空VT)
2…1次側絶縁筒(絶縁筒)
3,13a,13b…円筒部
4…接地円筒部(導体筒)
5…外筐
6…1次側コンデンサ(主コンデンサ)
7…2次側ケース
8…1次側端板
8a…内部1次電極、8b…接続導体
9…接地側端板
10…2次側絶縁筒
11…2次側端板
11a,11b…内部2次電極
12…真空部
14…モールド部
15…金属皮膜
16…ガス絶縁スイッチギヤ(C−GIS)
17…ブッシングモールド
18…外装
19…被測定部
20…ブッシング導体
20a…接合部