(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のリサーフ領域の少なくともいずれかが前記ガードリングを複数備え、同一の前記リサーフ領域内の前記ガードリングの幅が同一であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記短絡部が、互いに隣接する前記ガードリングの相互間のみをそれぞれ短絡する複数の短絡領域を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0013】
又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
本発明の実施形態に係る半導体装置100は、
図1に示すように、シリコンカーバイト基板(SiC基板)1を有し、素子領域101及び素子領域101の周囲を囲む外周領域102が主面に定義された第1導電型の半導体基体10と、素子領域101と外周領域102との境界領域において半導体基体10の上部の一部に素子領域101を囲んで埋め込まれ、半導体基体10との間でpn接合を形成する第2導電型の主接合部4と、互いに離間して外周領域102に多重に配置された第1リサーフ領域51〜第4リサーフ領域54と、主接合部4及び第1リサーフ領域51〜第4リサーフ領域54中のガードリング11を相互に電気的に短絡する短絡部8とを備える。主接合部4は、素子領域101と外周領域102の境界を含む一定の幅の境界領域に形成されている。第1リサーフ領域51〜第4リサーフ領域54は、主接合部4の周囲を囲んで外周領域102の上部に埋め込まれた少なくとも1つのガードリング11をそれぞれ有する。
【0015】
なお、第1導電型と第2導電型とは互いに反対導電型である。すなわち、第1導電型がn型であれば、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型であれば、第2導電型はn型である。以下では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合を例示的に説明する。
【0016】
図1に示した半導体装置100の半導体基体10は、SiC基板1上にSiCからなる半導体層を積層した構造である。以下では、半導体基体10が、高濃度n型のSiC基板1上に低濃度n型のエピタキシャル成長膜2が形成された構造である場合を例示的に説明する。エピタキシャル成長膜2の上部の一部に、選択的にガードリング11が埋め込まれている。
【0017】
また、半導体装置100が素子領域101上にショットキー電極3が配置されたショットキーバリアダイオード(SBD)である例を、
図1は示している。即ち、エピタキシャル成長膜2とショットキー電極3との界面にショットキー接合が形成されている。逆バイアス印加時に、ショットキー電極3の外側の電極端31に電界集中が生じる。電界緩和を目的として、ショットキー電極3の電極端31近傍の半導体基体10内に主接合部4が配置されている。主接合部4を形成するために、例えばイオン注入法によって半導体基体10内にp型半導体領域が形成される。なお、主接合部4の側面は、外側の端部41において第1リサーフ領域51のガードリング11の側面に接している。第1リサーフ領域51〜第4リサーフ領域54は、主接合部4の端部41に発生する電界集中を緩和するために配置されている。
【0018】
短絡部8は、例えば外周領域102の上部の一部に埋め込まれて、主接合部4とすべてのガードリング11を短絡する。
図2に示した例では、直線状の短絡部8によって主接合部4及び各ガードリング11が短絡されている。なお、
図2では、酸化膜9の図示を省略している(以下の平面図において同様)。
【0019】
外周領域102では、エピタキシャル成長膜2上にチップ端7まで酸化膜9が配置されている。また、SiC基板1の裏面には、裏面電極16が配置されている。
【0020】
図3に、半導体装置100全体の平面図を示す。素子領域101の周囲に配置された外周領域102が、耐圧構造が配置される耐圧構造領域である。
図3に示すように、外周領域102の幅をdとする。なお、
図3ではガードリング11の図示を省略している。
図2は、素子領域101と外周領域102の境界部分を示すために、
図3の右上部の一部を拡大した平面図である。
【0021】
以下において、外周領域102に配置されたリサーフ領域を総称して「リサーフ領域5」という。
図1では4つの環状の第1リサーフ領域51〜第4リサーフ領域54が外周領域102に配置されている例を示したが、リサーフ領域5の数は4つに限られるものではない。
【0022】
なお、リサーフ領域5のいずれかがガードリング11を複数備えている。
図1に示した例では、第1リサーフ領域51に含まれるガードリングの個数は1であるが、第2リサーフ領域52〜第4リサーフ領域54に含まれるガードリングの個数はそれぞれ5である。
図4(a)〜
図4(c)に、外周領域102の拡大図を示す。なお、
図4(a)〜
図4(c)ではショットキー電極3の図示を省略している。
【0023】
素子領域101からの距離が長いリサーフ領域5ほど、リサーフ領域5内のガードリング11の幅は狭く形成されている。ただし、同一のリサーフ領域5内では、ガードリング11の幅は同一である。ガードリング11の幅の詳細については後述する。
【0024】
ここで、
図3に示した半導体装置100と同様に素子領域101と外周領域102が定義されたSBDについて、関連技術のリサーフ構造又はガードリング構造を耐圧構造として採用した例を説明する。即ち、ショットキー電極3が配置された素子領域101の周囲を囲んで、SBDの耐圧を向上するためのリサーフ構造やガードリング構造などの耐圧構造が形成される外周領域102が配置されている。
【0025】
耐圧構造にリサーフ構造を採用した例を
図5、
図6に示し、ガードリング構造を採用した例を
図7、
図8に示す。リサーフ構造とガードリング構造のいずれを採用した例も、半導体基体10はSiC基板1上にエピタキシャル成長膜2が形成された構造であり、エピタキシャル成長膜2上にショットキー電極3が配置されている。エピタキシャル成長膜2とショットキー電極3の界面にショットキー接合が形成されている。逆バイアスVは、ショットキー電極3と裏面電極16間に、裏面電極16が正電位になるように印加される。
【0026】
逆バイアス印加時に、ショットキー電極3の電極端31に電界集中が生じる。電界緩和を目的として、ショットキー電極3の電極端31の近傍で半導体基体10にp型半導体領域がイオン注入法によって形成され、主接合部4が形成されている。
【0027】
リサーフ構造を採用した例では、
図5、
図6に示すように、主接合部4の外側で外周領域102に第1リサーフ領域51a〜第4リサーフ領域54aが主面に沿って同心円状に連続的に配置されている。一方、ガードリング構造を採用した例では、
図7、
図8に示すように、主接合部4の外側で外周領域102に複数のガードリング11aが主面に沿って同心円状に互いに離間して配置されている。
【0028】
逆バイアス時に、pn接合周辺では空乏層が広がる。この空乏層内の電界の大きさは、pn接合部で最大である。このような空乏層・電界・電圧の関係は、一般的に以下の式(1)に示すポアソン方程式により表される:
∇
2φ(x,y,z)=ρ(x,y,z)/ε ・・・(1)
式(1)で、φ(x,y,z)は座標(x,y,z)の電位、ρ(x,y,z)は座標(x,y,z)の電界密度、εは誘電率である。
【0029】
図9〜
図12に、1次元での計算モデルと計算結果について示す。
図9に示した計算モデルは、pn接合ダイオードを1次元で表したものであり、逆バイアスVを印加した状態の電気回路も示している。pn接合ダイオードの両端において、裏面電極16とショットキー電極3が、SiC基板1の裏面とエピタキシャル成長膜2の表面のp型半導体層17にそれぞれ形成されている。
【0030】
図9に示した1次元モデルでは、ポアソン方程式も式(2)のように簡単になる:
∂
2/∂x
2(φ(x))=ρ(x)/ε=eN(x)/ε ・・・(2)
ここで、電荷密度=不純物濃度とし、不純物濃度は深さ方向に一定値であり、階段接合として計算した。
【0031】
n型のSiC基板1の不純物濃度を1×10
18cm
-3とし、n型のエピタキシャル成長膜2の膜厚をt1、不純物濃度を8.5×10
15cm
-3とした。エピタキシャル成長膜2の表面には、深さt2で濃度が1×10
17cm
-3 のp型半導体層17が形成されている。ここで、膜厚t1を12μm、深さt2を0.8μmとした。
図10に、
図9に示したpn接合ダイオードの不純物濃度プロファイルを示す。なお、
図10の横軸はpn接合と垂直方向の位置を示し、原点はSiC基板1とエピタキシャル成長膜2との境界である。
図10中においては、SiC基板1での値を一点鎖線Aで示し、エピタキシャル成長膜2での値を実線Bで示し、p型半導体層17での値を破線Cで示す(以下において同様。)
逆バイアスが印加されたpn接合ダイオードでは、
図11に示すように、pn接合部で電界が最大である。不純物濃度が高い場合には空乏層の広がりが少ないので、分配される電位差は少ない。不純物濃度が低い場合には空乏層が広がるので、分配される電位差は大きい。最大電界を同じにしたときに印加電圧を高くできる設計が、高耐圧設計である。
【0032】
ショットキー電極3に接続されているp型半導体層17は、全体が空乏化している。このため、
図11に示すように、空乏層がショットキー電極3まで届き(リーチスルー)、ショットキー電極3の界面で1MV/cm程度の電界が発生している。また、エピタキシャル成長膜2のn型領域も全体が空乏化しているため、空乏層がSiC基板1までリーチスルーし、エピタキシャル成長膜2とSiC基板1との界面に0.65MV/cm程度の電界が発生している。
【0033】
なお、
図11におけるエピタキシャル成長膜領域とp型半導体層領域の面積を比較すれば、それぞれの電圧降下を推定できる。
図12に示すように、電圧降下の大部分はエピタキシャル成長膜2内で発生しており、SiC基板1での電圧降下は殆ど生じない。厚み0.8μmのp型半導体層17はすべて空乏化しているのに対し、SiC基板1の空乏層の幅は0.05μmであった。
【0034】
上記のように、半導体層が完全に空乏化すると電極や基板界面に電界が発生し、最大電界も大きくなる。このため、完全な空乏化を抑制することにより、高耐圧な素子設計となる。
【0035】
ここで、
図7、
図8に示したガードリング構造に関して説明する。主接合部4とエピタキシャル成長膜2の界面はpn接合となるので、逆バイアス印加時の主接合部4とエピタキシャル成長膜2の界面に空乏層が発生する。
【0036】
主接合部4が逆バイアス印加時に完全に空乏化すると、例えば
図11に示したように、ショットキー電極3の界面に電界が発生する。しかしながら、
図11は1次元モデルに関する計算結果なので、電極端31のような端部には対応していない。
【0037】
電極端31に空乏層が存在する場合には、電極端31に急激な電位勾配と電界集中が発生して、耐圧が低下してしまう。電極端31での電界集中を防止するためには、高濃度のp型半導体からなり、完全な空乏化を防止できるだけの厚みを有する主接合部4を必要とする。
【0038】
例えば、主接合部4のp型不純物の最大濃度を1.4×10
18cm
-3 程度とすれば、主接合部4は完全には空乏化しない。このため、電極端31の電界は零である。ガードリング構造を採用した場合には、ガードリング11aと主接合部4とでp型不純物濃度を同じにすることができる。このため、主接合部4と同時にガードリング11aを形成できる。この場合、ガードリング11aの注入深さは主接合部4の深さと同じである。
【0039】
高濃度の主接合部4を形成することでショットキー電極3の電極端31での電界集中はほぼなくなるが、主接合部4の外側の端部41に電界が集中する。このため、主接合部4の端部41の電界集中を緩和する必要がある。以下に、端部41の電界集中をガードリングによって緩和する方法について説明する。
【0040】
pn接合周辺に形成される空乏層は、不純物濃度が高い場合に薄くなり、不純物濃度が低い場合には厚くなる。例えば、主接合部4やガードリング11には空乏層が広がっており、ガードリング11から広がる空乏層は隣接するガードリング11に達する。
【0041】
ここで、
図13を参照して、ガードリング11aの機能について更に詳しく説明する。各ガードリング11aの低電位側pn接合21には空乏層が形成されないので、電界は発生しない。一方、各ガードリング11aの高電位側pn接合20ではエピタキシャル成長膜2内を空乏層が広がり、高電位側のガードリング11aに向かって空乏層が順次連結されていく。
【0042】
しかし、エピタキシャル成長膜2内を空乏層が大きく広がるため、エピタキシャル成長膜2でリーチスルーが起こりやすい。このため、リサーフ構造に比べて低耐圧になる問題がある。
【0043】
また、上記のようにガードリング11a内の空乏層の広がりはごく僅かであり、ガードリング11a内の空乏化していない部分については電位差がないので、耐圧に貢献せず、無駄な領域である。このため、ガードリング11aを耐圧構造に用いた場合には、多数のガードリング11aを配置する必要からチップの外周領域102の幅dが広くなるので、チップサイズの増大をまねく点も問題である。
【0044】
次に、
図5、
図6に示したリサーフ構造に関して説明する。耐圧構造にリサーフ構造を採用した場合、外周領域102のp型半導体領域は、主接合部4とリサーフ領域5aに分かれる。ガードリング構造の場合と同様に、主接合部4の端部41での電界集中を緩和するために、リサーフ領域5aが配置されている。また、主接合部4の電界集中を緩和するためにも、ガードリング構造と同様に、リサーフ領域5aの注入深さは主接合部4の深さと同程度にする必要がある。リサーフ構造を用いた場合には、リサーフ領域5a内部に適度に空乏層が広がるように注入濃度を設定し、主接合部4からリサーフ領域5aの端部まで連続したp型半導体領域とする。
【0045】
更に詳細に
図5、
図6について説明すると、リサーフ領域5aは第1リサーフ領域51a〜第4リサーフ領域54aまで4つの領域に分かれている。第1リサーフ領域51aはリサーフ領域5の中で不純物濃度が最も高い部分であり、第4リサーフ領域54はリサーフ領域5の中で最も濃度が低い部分である。
【0046】
リサーフ領域5の濃度は、例えば以下の式(3)〜式(5)に表されるようにp型不純物がドープされている:
N2=N1×0.75 ・・・(3)
N3=N1×0.5 ・・・(4)
N4=N1×0.25 ・・・(5)
ここで、N1は第1リサーフ領域51aの不純物濃度、N2は第2リサーフ領域52aの不純物濃度、N3は第3リサーフ領域53aの不純物濃度、N4は第4リサーフ領域54aの不純物濃度である。
【0047】
リサーフ領域5aでは空乏層がリサーフ領域全体に広がるため、外周領域102の幅dを縮小でき、ガードリング構造の場合と比べてチップサイズを小さくできる。また、リサーフ領域5aの内部にも空乏層が広がるため、エピタキシャル成長膜2内での空乏層の広がりが抑制される。このため、エピタキシャル成長膜2でリーチスルーが起こりにくく、ガードリング構造と比較して高耐圧の素子設計が可能である。
【0048】
ところで、Si基板の場合には、注入面積を適宜調節してイオン注入を行った後に900℃程度で加熱することによって、熱拡散による不純物濃度の調整が可能である。
図14(a)〜
図14(d)に、シリコン(Si)半導体膜の熱拡散による不純物濃度調整方法の例を示す。即ち、
図14(a)に示すように、主接合部やリサーフ領域などのSiエピタキシャル成長膜23内のp型半導体形成領域24に、マスク30を用いて選択的にp型不純物を注入する。次いで、
図14(b)に示すようにSiエピタキシャル成長膜23の表面に酸化膜9を形成し、熱拡散によってp型半導体領域25を形成する。そして、
図14(c)に示すように、素子領域上に形成された酸化膜9の一部が除去されて開口部90が形成される。その後、
図14(d)に示すように、開口部90にショットキー電極3が形成される。
【0049】
上記のように、Si基板の場合には、熱拡散による不純物濃度の調整が可能である。しかし、SiC基板の場合には、高温に加熱しても不純物の拡散はほぼ起こらない。このため、イオン注入プロファイルのみでの濃度調整が必要である。
【0050】
不純物の熱拡散を利用できないSiC基板1にてリサーフ構造を採用する場合には、高濃度の主接合部4のイオン注入と低濃度のリサーフ領域5のイオン注入を別工程で行う必要がある。また、耐圧構造最適化のためにリサーフ領域5が不純物濃度の異なる複数の領域からなる場合には、リサーフ領域5を形成するために複数回のイオン注入が必要である。これにより、外周領域の幅を更に縮小することが可能であるが、イオン注入の回数が更に増加する。
【0051】
以上に説明したように、関連技術のガードリング構造では、逆バイアス印加時に、各ガードリングから高電位側に広がった空乏層が隣接するガードリングに接し、ガードリング間が空乏層で連結されることよって電界集中が緩和される。このとき、ガードリング内では空乏層が殆ど広がらないため、高電位側のガードリングが配置された方向にエピタキシャル成長膜内を空乏層を長く広げる必要がある。このとき、エピタキシャル成長膜内をSiC基板方向にも空乏層が広がり、リーチスルーが起こりやすい。このため、関連技術のガードリング構造はリサーフ構造に比べて低耐圧である。更に、ガードリング内に広がる空乏層はごく僅かであるため、チップサイズが増大するなどの問題がある。
【0052】
しかし、
図1に示した半導体装置100では、短絡部8によってガードリング11間が短絡されている。このため、外周領域102にガードリング構造を採用したにも拘わらず、
図13に示したような高電位側への空乏層の広がりのみによってガードリング11間を連結する必要がない。即ち、関連技術のリサーフ構造と同様に、容易に主接合部4からリサーフ領域5の最外部まで連続したp型半導体領域とすることができる。したがって、ガードリング11へのイオン注入量を、リサーフ構造並みに抑えることができる。このため、イオン注入の広がりよりも十分に大きく実用的なガードリング幅と隙間のガードリング構造を実現できる。また、ガードリング全体に空乏層が広がるため、関連技術のガードリング構造と比較して、外周領域102の幅dを狭くすることができる。これにより、チップサイズの増大を抑制できる。
【0053】
更に、半導体装置100では、素子領域101から離れたリサーフ領域5ほど、リサーフ領域5に含まれるガードリング11の幅が狭く形成されている。このため、関連技術のリサーフ構造のように、不純物濃度の異なる複数の領域をリサーフ領域に形成する必要がない。このため、イオン注入回数の増大を抑制することができる。
【0054】
第2リサーフ領域52〜第4リサーフ領域54におけるガードリング11の幅及びガードリング11間の隙間は、以下の関係を満たすように規定することが好ましい。即ち、X番目のリサーフ領域中のガードリング11の幅D
X、及び隣接するガードリング11間の隙間W
Xが、以下の式(6)、式(7)の関係を満たす:
D
X=P×ND
X/ND1 ・・・(6)
W
X=P−D
X ・・・(7)
ここで、Xは2以上の整数である。Pはガードリング11の配置ピッチ、ND
Xは素子領域101からX番目のリサーフ領域5の空間変調濃度、ND1は素子領域101に最近接の第1リサーフ領域51の空間変調濃度である。例えば、配置ピッチPを2.5μmとして、以下のように、
図1に示した半導体装置100のガードリング11の幅や隙間が設定される。即ち、第1リサーフ領域51のガードリング11の幅D
1を2.5μmとする。第2リサーフ領域52のガードリング11の幅D
2を1.875μm、ガードリング11間の隙間W
2を0.625μmとする。第3リサーフ領域53の幅D
3を1.25μm、ガードリング11間の隙間W
3を1.25μmとする。そして、第4リサーフ領域54のガードリング11の幅D
4を0.625μm、ガードリング11間の隙間W
4を1.875μmとする。
【0055】
上記のようにガードリング11の幅D
X、及び隣接するガードリング11間の隙間W
Xを規定し、且つ、短絡部8によって主接合部4及びガードリング11を相互に電気的に短絡することにより、
図5及び
図6に示した関連技術のリサーフ構造と同様な空間変調濃度を設定することができる。これにより、イオン注入の回数を抑制しつつ、関連技術のリサーフ構造と同等の耐圧を、同等の外周領域102の幅dで実現できる。なお、短絡部8の幅は、電界への影響を考慮すれば、細い方が好ましい。
【0056】
本発明の実施形態に係る半導体装置100の外周領域102に形成する耐圧構造は、他の同様な耐圧構造を必要とする半導体装置についても適用可能である。例えば、ショットキー接合とpn接合を併設したMPS(Merged PiN Schottoky)構造のダイオードやJBS(Junction-Barrier Shottky)構造のダイオードに適用でき、MOS−FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)などの耐圧構造にも適用できる。
【0057】
本発明の実施形態に係る半導体装置100の製造方法の例を、
図15(a)〜
図15(e)を参照して説明する。
【0058】
まず、
図15(a)に示すように、エピタキシャル成長膜2の主接合部4を形成する領域に、レジスト32を用いて選択的にp型不純物を注入する。次いで、
図15(b)に示すようにレジスト33を形成し、エピタキシャル成長膜2のガードリング11を形成する領域に選択的にp型不純物を注入する。このとき、主接合部4にも同時にp型不純物を注入する。つまり、主接合部4には2回のイオン注入が行われる。このため、主接合部4の不純物濃度はガードリング11よりも高い。例えば、主接合部4の不純物濃度は1.4×10
18cm
-3程度であり、ガードリング11の不純物濃度は5×10
16〜7×10
17cm
-3程度である。なお、同一工程で形成されるため、主接合部4とガードリング11の深さは同じである。
【0059】
その後、
図15(c)に示すようにエピタキシャル成長膜2の表面に酸化膜9を形成する。そして、
図15(d)に示すように、素子領域上の酸化膜9の一部が除去されて開口部90が形成される。
図15(e)に示すように、開口部90にショットキー電極3が形成される。更に、裏面電極16を形成することにより、半導体装置100が完成する。
【0060】
なお、
図15(b)を参照して説明したガードリング11を形成する工程において、
図16に示すマスク34を使用することにより、短絡部8をガードリング11と同時に形成することができる。レジスト33は、マスク34により形成される。
図16でハッチングを付した部分が、エピタキシャル成長膜2にイオン注入する領域である。
図16において、短絡部8に対応する領域を領域8Aとして示し、ガードリング11及び主接合部4に対応する領域を、それぞれ領域4A、領域11Aとして示している。このように、短絡部8はガードリング11と同じ導電型であり、同一の不純物濃度である。
【0061】
上記のように、半導体装置100では、関連技術のリサーフ構造と比較して大幅にイオン注入回数を削減することができる。この効果は、外周領域102をより小さく、且つ、よりリサーフ領域の不純物濃度を細かく設定して高品質な半導体装置を製造する場合などに大きい。
【0062】
上記では、リサーフ領域を第1リサーフ領域51〜第4リサーフ領域54の4つに分割した例を示したが、更に細かくリサーフ領域を分割してもよい。リサーフ領域を細かく分割することにより、リサーフ領域の面積を縮小することができる。或いは、リサーフ領域の面積を変えずにリサーフ領域を更に細かく分割することにより、イオン注入量、エピタキシャル濃度と厚さなどの製造ばらつきを吸収することができる。
【0063】
リサーフ領域を4つ以下の、2つ或いは3つに分割する場合でも、本発明の効果は得られる。例えば、2つに分割する場合についてイオン注入回数を関連技術のリサーフ構造と比較すれば、関連技術では2回のイオン注入が必要であるのに対し、半導体装置100ではイオン注入工程を1回減らすことができる。
【0064】
<変形例>
図2では、直線状の短絡部8が連続的に延伸して主接合部4及びガードリング11を短絡する例を示した。しかし、短絡部8が第1リサーフ領域51〜第4リサーフ領域54まで直線的に連続しているため、短絡部8に電界の乱れが集中し、短絡部が弱くなる傾向が生じる。
【0065】
このため、短絡部8を分断させてもよい。例えば
図17に示すように、短絡部8を、互いに隣接するガードリング11の相互間のみをそれぞれ短絡する複数の短絡領域81〜83によって構成してもよい。短絡領域81〜83は、直線上に配置されない。
図18に示すように、エピタキシャル成長膜2の上部に埋め込まれた短絡領域81〜83によって、隣接するガードリング11同士が短絡されている。
【0066】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0067】
例えば、上記ではガードリング11のピッチが外周領域102の全面に渡って同一である例を示したが、リサーフ領域5毎にガードリング11のピッチを変えてもよい。また、SiC基板1がn型基板である場合を例示的に説明したが、SiC基板1にp型基板を使用し、主接合部4やガードリング11、短絡部8にn型半導体を使用して半導体装置100を構成する場合にも、本発明は適用可能である。
【0068】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。