特許第6064588号(P6064588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064588
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】中継装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/40 20150101AFI20170116BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20170116BHJP
【FI】
   H04B1/40
   H04W72/04 110
   H04W72/04 135
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-283575(P2012-283575)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-127874(P2014-127874A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123940
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 辰一
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 久晃
【審査官】 野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−232430(JP,A)
【文献】 特開2009−033676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/40
H04W 72/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して、一群のパケット列として音声信号を受信するネットワークインタフェースと、
無線機が接続される無線機インタフェースと、
前記音声信号が一時記憶される音声バッファと、
前記一群の音声信号のパケット列の先頭パケットが入力されたとき、前記音声信号の前記音声バッファへの一時記憶を開始するとともに、この先頭パケットの入力を契機として前記無線機に対して通信チャンネルの確保を要求し、前記無線機から通信チャンネルが確保できた旨の返信があったのち、前記音声バッファに一時記憶していた音声信号を読み出して前記無線機に転送する制御部と、
を備えた中継装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記無線機に対して通信チャンネルの確保を要求したのち、前記無線機から所定時間以上返信がない場合、前記一時記憶した音声信号の転送を取りやめる請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記無線機は、呼出情報を用いて通信相手を個別に呼び出す個別呼出機能を備え、
前記制御部は、前記先頭パケットに前記呼出情報が含まれていたとき、前記無線機から通信チャンネルが確保できた旨の返信があったのち、前記無線機に対して前記呼出情報を転送して個別呼出を行わせたのち、前記音声バッファに一時記憶していた音声信号を読み出して前記無線機に転送する請求項1または請求項2に記載の中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線機の通信をネットワークを介して中継する中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
相互に電波が到達しないエリアのトランシーバ同士が通信できるように、LANなどのネットワークで通信を中継する中継装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1の中継装置は、ネットワークから音声信号(音声パケット)を受信すると、中継用の無線機であるレピータを送信状態にする(PTTをオンにする)とともに、受信した音声信号をレピータに転送する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−135291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レピータは、中継装置からPTTオン信号を受信すると、まず通信チャンネルを確保したのち、音声信号の送信を開始する。すなわち、レピータは、PTTオン信号が入力されたとき即座に音声信号の送信を開始できる訳ではなく、そのとき空きチャンネルがあってもチャンネル確保の処理に100ms程度の時間が掛かり、もし、空きチャンネルがない場合には、空きチャンネルができるまで待たなければならない。
【0005】
しかし、上述したように、従来の中継装置では、PTTオンと同時に音声信号が入力されるため、チャンネル確保に要する期間に入力された音声信号は、相手トランシーバに送信することができず捨てられることになる。したがって、通信相手の無線機では、受信した音声信号が頭切れになってしまうという問題点があった。
【0006】
この発明は、無線機の通信をネットワークを用いて中継した場合でも、通話に頭切れを起こさない中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の中継装置は、ネットワークを介して、一群のパケット列として音声信号を受信するネットワークインタフェースと、無線機が接続される無線機インタフェースと、前記音声信号が一時記憶される音声バッファと、制御部とを備える。制御部は、一群の音声信号のパケット列の先頭パケットが入力されたとき、音声信号の音声バッファへの一時記憶を開始するとともに、この先頭パケットの入力を契機として無線機に対して通信チャンネルの確保を要求し、無線機から通信チャンネルが確保できた旨の返信があったのち、音声バッファに一時記憶していた音声信号を読み出して無線機に転送する。
【0008】
上記発明において、無線機に対して通信チャンネルの確保を要求したのち、無線機から所定時間以上返信がない場合、一時記憶した音声信号の転送を取りやめるようにしてもよい。
【0009】
また、上記発明において、呼出情報を用いて通信相手を個別に呼び出す個別呼出機能を備えた無線機を無線機インタフェースに接続し、受信した先頭パケットに呼出情報が含まれていたとき、無線機から通信チャンネルが確保できた旨の返信があったのち、無線機に対して呼出情報を転送して個別呼出を行わせたのち、音声バッファに一時記憶していた音声信号を読み出して無線機に転送するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、無線機が通信チャンネルを確保するまで音声信号を一時記憶しておき、通信チャンネルが確保できたとき、一時記憶していた音声信号を無線機に転送するようにしたことにより、通話に頭切れが生じることがなく、また、チャンネル確保と同時に音声信号の送信が開始されるため、必要以上の遅延も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施形態である中継装置が適用される通信システムの構成図である。
図2】通信システムにおける音声データの送受信のシーケンスを示す図である。
図3】通信システムの中継装置のブロック図である。
図4】中継装置の動作を示すフローチャートである。
図5】この発明の実施形態である中継装置が適用される通信システムの構成図である。
図6】無線機の記憶内容を示す図である。
図7】中継装置の記憶部の記憶内容を示す図である。
図8】RTPパケットの構成を示す図である。
図9】中継装置の動作を示すフローチャートである。
図10】中継装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して本発明の中継装置および通信システムについて説明する。まず、図1図4を参照して本発明の基本的な構成について説明する。
【0013】
図1は、この発明の実施形態である通信システムの構成図である。この通信システムは、互いにネットワーク1で接続された複数台の中継装置2を用いて、異なる通信エリアA、Bに存在するトランシーバ4(4A,4B)同士の通信を可能にしたシステムである。
【0014】
ネットワーク1はたとえばEthernet(登録商標)で構成されるLANやインターネットが適用可能である。このネットワーク1に複数(図1では2台)の中継装置2が接続されている。各中継装置2(2A,2B)は、それぞれ異なる通信エリアA,Bをカバーしている。各中継装置2には、中継用トランシーバであるレピータ3(3A,3B)が接続されている。レピータ3は、据置型のトランシーバであり、いわゆるプッシュ・トゥ・トーク(Push to Talk:PTT)形式の半二重通信機器である。各レピータ3の通信圏内には、トランシーバ4(4A、4B)が存在している。レピータ3とトランシーバ4とは相互に通信可能な形式のものである。
【0015】
レピータ3およびトランシーバ4は、いわゆるデジタルトランシーバである。デジタルトランシーバは、デジタル信号に変換された音声信号やデータなどの通信が可能であり、音声信号の通信と並行して宛先情報などの制御情報を同時に通信することができる。レピータ3は、トランシーバ4から受信したデジタル信号をパケット化して中継装置2に入力するとともに、中継装置2から入力されたパケットから音声信号や制御情報を取り出し、この音声信号や制御情報を時間軸のデジタル信号に変換して送信する。
【0016】
図1の通信システムにおいて、トランシーバ4B(送信側トランシーバ)からトランシーバ4A(受信側トランシーバ)に音声信号を送信する場合を例に上げて、本通信システムについて説明する。トランシーバ4BのユーザがPTTスイッチをオンして通話音声をマイクから入力するすると、この音声信号は、無線通信によってレピータ3B(送信側レピータ)に伝達される。レピータ3Bは、この音声信号を、有線のデジタル通信により中継装置2B(送信側中継装置)に送信する。中継装置2Bは、この音声信号を数十ミリ秒ごとにRTPパケット化し、その音声信号の時間長に応じた数のパケット列として、ネットワーク1を介して中継装置2A(受信側中継装置)へ伝送する。
【0017】
受信側では、この音声信号が、トランシーバ4Aで頭切れにならないように、図2に示すような手順で転送される。中継装置2Aが、ネットワーク1を介してRTPパケットを受信すると、このRTPパケットに含まれている音声信号をバッファし、レピータ3A(受信側レピータ)に通信チャンネルの確保を要求する。レピータ3Aは、中継装置2Aからチャンネル確保要求のメッセージを受信すると、空きチャンネルを検索して通信チャンネルを確保する。通信チャンネルが確保されると、レピータ3Aは、中継装置2Aに対してチャンネルが確保できた旨を応答する。中継装置2Aは、この応答メッセージでチャンネルが確保されたことを確認し、バッファしていた音声信号を読み出してレピータ3Aに転送する。レピータ3Aは、この音声信号を無線通信でトランシーバ4A(受信側トランシーバ)に送信する。トランシーバ4Aはこの音声信号を受信して音声として再生する。
【0018】
このように、中継装置2Aが、ネットワーク1を介して受信した音声信号を一旦バッファし、レピータ3Aが無線のチャンネルを確保したことが確認できたのち、レピータ3Aに対して音声信号の転送を開始するため、受信側のトランシーバ4Aで受信した音声信号の頭切れが発生しない。
【0019】
以下、図3を参照して中継装置2について説明する。中継装置2は、制御部20、無線機インタフェース21、ネットワークインタフェース22および音声バッファ23を有している。
【0020】
無線機インタフェース21は、下流(レピータ3側)の端部に設けられており、レピータ3から入力された上りパケットを制御部20に入力するとともに、制御部20から入力された下りパケットをレピータ3に送出する。ネットワークインタフェース22は、上流(ネットワーク1側)の端部に設けられており、ネットワーク1経由で受信した通信相手からのパケットである下りパケットを制御部20に入力するとともに、制御部20から入力された上りパケットをネットワーク1に送出する。無線機インタフェース21、ネットワークインタフェース22ともに、たとえばEthernet(登録商標)の物理層のコネクタなどが適用可能であり、デジタル通信の物理層やデータリンク層を担当する。
【0021】
音声バッファ23は、ネットワーク1を介して受信したRTPパケットの音声データをバッファするメモリである。音声バッファ23は、FIFOメモリであってもよく、通常のRAMであってもよい。また、図3では制御部20と別に設けられているが、制御部20に内蔵されていてもよい。
【0022】
制御部20は、マイコン等で構成され、機能的に、記憶部24、上りパケット処理部25および下りパケット処理部26を備えている。
【0023】
上りパケット処理部25は、無線機インタフェース21から入力された上りの音声パケットをRTPパケットにフォーマット変換してネットワークインタフェース22に転送する。このとき、上りパケット処理部25は、このRTPパケットのIPヘッダに送信先(受信側中継装置)のIPアドレスを書き込み、RTPパケットのUDPヘッダに送信先のポート番号を書き込む。また、レピータ3から入力される音声パケットの音声信号は、たとえばG.711やAMBEなどの方式で符号化されているが、上りパケット処理部25は、これをIP電話にも適用できるように、G.726またはG.729などの符号化方式にCODEC変換してもよい。
【0024】
下りパケット処理部26は、ネットワークインタフェース22から入力されたRTPパケットから音声データ(ペイロード)のみを取り出して音声バッファ23に書き込み、レピータ3に対してチャンネル確保要求メッセージを送信する。レピータ3からチャンネル確保応答が返ってきたとき、音声バッファ23にバッファしている音声データを読み出し、レピータ3に転送するパケットのフォーマットに変換し、また必要に応じてCODEC変換して無線機インタフェース21に転送する。CODEC変換は、上りパケット処理部25とは逆に、G.726、G.729などの方式で符号化されている音声信号をG.711やAMBEなどの符号化方式に変換する。
【0025】
図4のフローチャートを参照して中継装置2が下りパケットを受信したときの動作を説明する。下りパケットとは、ネットワーク1経由で他の中継装置2から送られてくるRTPパケットである。図4(A)は、下りパケットを受信するごとに実行される受信処理動作を示すフローチャートである。ネットワークインタフェース22から下りパケットが入力されると(S100)、制御部20(下りパケット処理部26)は、このパケットから音声データをデコードし(S110)、デコードした音声データを音声バッファ23にバッファする(S120)。
【0026】
制御部20は、このパケットが先頭パケットであるかを判断する(S130)。先頭パケットとは、上述のパケット列の先頭のパケットであり、通信相手の発話が開始されたことを示すものである。受信した下りパケットが先頭パケットであった場合には(S130でYES)、図4(B)に示す送信処理動作を起動する(S140)。先頭パケットでなかった場合には(S130でNO)、すでに送信処理動作が起動されているのでそのまま処理を終了する。
【0027】
図4(B)は送信処理動作を示すフローチャートである。この処理は、パケット列毎に実行される。すなわち、図2の先頭パケットで起動し、このパケット列の終了によって終了する。まず、レピータ3に対してチャンネル確保要求のメッセージを送信する(S200)。こののち、このメッセージに対して、レピータ3からチャンネルが確保できた旨の返信(チャンネル確保応答)があるか(S210)、または返信がないままタイムアウトするまで(S220)待機する。
【0028】
チャンネル確保応答があると(S210でYES)、レピータ3のPTTをオンし(S230)、音声バッファ23にバッファしている音声データのレピータ3への転送を開始する(S240)。バッファしている音声データが終了するまでこの転送を継続する(S250)。音声データが終了すると(S250でYES)、PTTをオフして(S260)、処理を終了する。
【0029】
以上は、本発明を基本的な構成の通信システムに適用した場合について説明した。以下は、個別呼出機能を備えた中継装置2を用いた通信システムに本発明を適用した場合について説明する。なお、以下の説明において、既に説明した部分には、同一の部品番号を付して説明を省略する場合がある。
【0030】
図5は、個別呼出が可能な中継装置2を有する通信システムの構成図である。この通信システムは、互いにネットワーク1で接続された複数台の中継装置2を用いて、異なる通信エリアA〜Cに存在するトランシーバ4(4A,4B,4C)同士の通信を可能にしたシステムである。
【0031】
ネットワーク1はたとえばEthernet(登録商標)で構成されるLANやインターネットが適用可能である。このネットワーク1に1または複数(図1では3台)の中継装置2が接続されている。各中継装置2(2A,2B,2C)は、それぞれ異なる通信エリアA,B,Cをカバーしている。各中継装置2には、据置型のトランシーバが中継用トランシーバであるレピータ3(3A,3B,3C)として接続されている。レピータ3は、PTT形式の半二重通信機器である。各レピータ3の通信圏内には、1または複数台(図5では2台)のトランシーバ4(4A−1,2、4B−1,2、4C−1,2)が存在している。レピータ3とトランシーバ4とは相互に通信可能なデジタルトランシーバである。
【0032】
トランシーバ4は、図6に示すように、自局を識別するID(無線機識別情報)400、および、自局が所属するグループ番号401を記憶しており、受信したデジタル信号に宛先情報として自局のID400または自局が所属するグループ番号401が埋め込まれていれば、この信号を復調して音声信号をスピーカ等から出力する。また受信したデジタル信号に自局のID400または自局が所属するグループ番号401が埋め込まれていない場合には、このデジタル信号を破棄する。なお、自局のID400や自局が所属するグループ番号401は、受信した音声信号中に、たとえばスケルチコードとして挿入されている。
【0033】
図7は、中継装置2の記憶部24の構成を示す図である。また、図8は、RTP(Real-time Transport Protocol)パケットの構成図である。なお、中継装置2の構成は図2に示したものと同一であるため図示を省略する。制御部20の記憶部24には、図7に示す自局IPアドレス記憶エリア200、通信用ポート番号記憶エリア201、および、宛先管理テーブル202が設定されている。宛先管理テーブル202は、レピータ3から入力された音声パケット、すなわち、レピータ3と通信するトランシーバ4が送信した音声信号に含まれる宛先情報である呼出情報に基づいて、この音声パケットの送信先である他の中継装置2のIPアドレスおよびポート番号を割り出すためのテーブルである。すなわち、宛先管理テーブル202には、所定のトランシーバ4を呼び出すための呼出情報として、ID種別(呼出がグループ呼出であるか個別呼出であるかの種別)およびその呼出のIDが記憶され、これに対応づけて、この呼出情報によって呼び出されるトランシーバ4が所属する通信エリアをカバーする他の中継装置2のIPアドレス、ポート番号が記憶されている。なお、音声パケットの音声信号のCODECをレピータ3から入力された形式と変換する場合、宛先管理テーブル202に変換先のCODEC方式も記憶される。
【0034】
制御部20の上りパケット処理部25は、上述したように、無線機インタフェース21から入力された上りの音声パケットをフォーマット変換してネットワークインタフェース22に転送する。このとき、この上り音声パケットに埋め込まれている呼出情報を読み出し、その呼出情報で宛先管理テーブル202を検索して、対応するIPアドレスおよびポート番号を読み出す。そして、フォーマット変換によって図8のように構成されたRTPパケットのIPヘッダに、この読み出したIPアドレスを宛先アドレスとして書き込み、UDPヘッダにこの読み出したポート番号を宛先ポート番号として書き込む。なお、IPヘッダの送信元IPアドレスの欄には、この中継装置2のIPアドレスが書き込まれ、UDPヘッダの送信元ポート番号の欄には、この中継装置2で使用されるポート番号が書き込まれる。そして、RTPペイロードに続けて(RTPペイロードの一部として)、音声パケットに埋め込まれていた呼出情報および発信元ID(音声信号を送信したトランシーバ4のID)が書き込まれる。
【0035】
また、制御部20の下りパケット処理部26は、上述したように、ネットワーク1を介して他の中継装置2から送られてきたRTPパケットを受信し、フォーマット変換してレピータ3に転送する。このとき、RTPパケットに書き込まれている呼出情報(ID種別およびID)を読み出して、レピータ3に転送する音声パケットに書き込む。
【0036】
図9のフローチャートを参照して中継装置2が上りパケットを受信した時の動作を説明する。無線機インタフェース21から上りの音声パケットが入力されると(S30)、このパケットに呼出情報が含まれるか否かを判断する(S31)。呼出情報が含まれない場合には(S31でNO)、全体呼出であるとしてこの音声パケットをマルチキャストのRTPパケットに変換してネットワークインタフェース22に送出する。
【0037】
音声パケットに呼出情報が含まれている場合には(S31でYES)、この呼出情報を読み出し(S32)、読み出した呼出情報で宛先管理テーブル202を検索して宛先のIPアドレスおよびポート番号を読み出す(S33)。そして、このIPアドレス、ポート番号を宛先IPアドレス、宛先ポート番号とする図8に示すようなRTPパケットを作成する(S34)。上述したように、このRTPパケットには呼出情報も書き込まれている。作成されたRTPパケットをネットワークインタフェース22に送出する(S35)。ネットワークインタフェース22は、このRTPパケットを送信する。このRTPパケットには特定の宛先IPアドレスが書き込まれているため、ユニキャストでその宛先IPアドレスの中継装置2に送信される。
【0038】
このように、音声信号に埋め込まれる呼出情報に対応するIPアドレス(ポート番号を含む)を宛先管理テーブル202に記憶しておき、音声信号(音声パケット)が入力されたとき、宛先管理テーブル202を用いてこの音声信号の宛先IPアドレスを決定することにより、ネットワーク1を介する中継先(中継装置2)が複数ある場合でも、正しい中継先へパケットを転送することができる。
【0039】
また、IPパケット(RTPパケット)に呼出情報を書き込んで送信することにより、トランシーバ4の通信がネットワーク1で中継されても、中継先トランシーバ4に対して選択呼出(個別呼出またはグループ呼出)を行うことが可能になる。
【0040】
図10のフローチャートを参照して中継装置2が下りパケットを受信したときの動作を説明する。このフローチャートにおいて、図4に示したフローチャートと同じ処理ステップには同じS番号を付している。図10(A)は、下りパケットを受信するごとに実行される受信処理動作を示すフローチャートである。ネットワークインタフェース22から下りパケットが入力されると(S100)、制御部20(下りパケット処理部26)は、このパケットから音声データをデコードし(S110)、デコードした音声データを音声バッファ23にバッファする(S120)。
【0041】
また、制御部20は、このパケットが先頭パケットであるかを判断する(S130)。受信した下りパケットが先頭パケットであった場合には(S130でYES)、図10(B)に示す送信処理動作を起動する(S140)。先頭パケットでなかった場合には(S130でNO)、すでに送信処理動作が起動されているのでそのまま処理を終了する。先頭パケットであった場合には(S130でYES)、さらに、そのパケットに呼出情報が含まれているかを判断する(S141)。そのパケットに呼出情報が含まれている場合には(S141でYES)、その呼出情報を記憶部24に保存する(S142)。
【0042】
図10(B)は送信処理動作を示すフローチャートである。この処理は、パケット列毎に実行される。まず、レピータ3に対してチャンネル確保要求のメッセージを送信する(S200)。こののち、このメッセージに対して、レピータ3からチャンネルが確保できた旨の返信(チャンネル確保応答)があるか(S210)、または返信がないままタイムアウトするまで(S220)待機する。
【0043】
チャンネル確保応答があると(S210でYES)、レピータ3のPTTをオンし(S230)、呼出情報が記憶されているかを判断する(S231)。呼出情報が記憶されている場合には(S231でYES)、この呼出情報を読み出し(S232)、この呼出情報で個別呼出をかけるようレピータ3に指示したのち(S233)、音声バッファ23にバッファしている音声データのレピータ3への転送を開始する(S240)。また、呼出情報が記憶されていない場合には(S231でNO)、一斉呼出をかけるようレピータ3に指示したのち(S234)、音声バッファ23にバッファしている音声データのレピータ3への転送を開始する(S240)。なお、呼出をかけることにより、受信側のトランシーバ4は、スケルチを開いて音声信号の到来を待つため、音声信号が頭切れすることなく、トランシーバ4に受信される。
【0044】
音声データのレピータ3への転送をバッファしている音声データが終了するまでこの転送を継続し、音声データが終了すると(S250でYES)、PTTをオフして(S260)、処理を終了する。
【0045】
上記実施形態では、チャンネル確保要求を送信したのち、チャンネル確保応答を受信しないで一定時間が経過するとタイムアウトさせているが、タイムアウトさせなくても良い。また、タイムアウトした場合には、さらにチャンネル確保要求を送信し直すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 ネットワーク
2 中継装置
3 レピータ(無線機)
4 トランシーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10