(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記閾角度は、前記第1吸込口(21)が開状態のときに前記吹出口から吹き出された前記調和空気が前記第1吸込口(21)に直に吸い込まれる現象を発生させない限界角度である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空調室内機(10)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような空調室内機では、調和空気の吹出角度を調整する風向調整羽根がスイングモード中に特定の下向き姿勢になったとき、調和空気が風向調整羽根を越えて下部吸込口に直に吸い込まれる現象、いわゆるショートサーキットが発生し、能力が著しく低下する。
【0004】
本発明の課題は、風向調整羽根の動作を調整して、ショートサーキットを未然に防止する空調室内機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る空調室内機は、少なくとも2つの吸込口と調和空気を吹き出す吹出口とが設けられている壁掛け式の空調室内機であって、ケーシングと、開閉板と、風向調整羽根と、制御部とを備えている。本体ケーシングは、吹出口よりも下方または後方に位置する第1吸込口と、吹出口よりも上方に位置する第2吸込口とを有している。開閉板は、第1吸込口を開閉する。風向調整羽根は、水平面に対する傾斜角度を変更して調和空気の吹出角度を調整する。制御部は、風向モードとして、スイングモードとマニュアルモードとが切換可能に設定されている。スイングモードは、傾斜角度を自動で変更することによって風向調整羽根を揺動させる。マニュアルモードは、風向調整羽根の傾斜角度を使用者の選択する角度に維持する。マニュアルモードでは、所定角度範囲内で風向調整羽根の傾斜角度の選択が可能である。その所定角度内には、制御部が第1吸込口の開閉の判断を行うための閾値となる閾角度が設定されている。制御部は、マニュアルモードにおいて選択された風向調整羽根の傾斜角度が閾角度を超えているときは、開閉板を介して第1吸込口を閉じる。さらに制御部は、風向モードがスイングモードへ切り換えられたとき、傾斜角度が閾角度を超えない範囲で風向調整羽根を揺動させる。
【0006】
一般に、マニュアルモードでは、風向は段階的に切換可能であるので風向が下向きに切り換えられたとき、吹出口よりも下方または後方に第1吸込口がある空調室内機では、ショートサーキットが発生し易い。
【0007】
それゆえ、風向調整羽根の傾斜角度をそれ以上下向きに大きくするとショートサーキットを発生させてしまうような閾角度を予め設定しておき、風向設定によって決定された風向調整羽根の傾斜角度が閾角度よりも大きくなる場合には、第1吸込口を閉じ、ショートサーキットを防止する。
【0008】
但し、スイングモードでは、風向調整羽根の傾斜角度が閾角度よりも大きくなったり小さくなったりするので、その都度、第1吸込口を開閉した場合、ユーザーに視覚的不快感を与えるだけでなく、開閉板の動作時の音による聴覚的不快感をも与える懸念がある。
【0009】
この空調室内機では、制御部は、マニュアルモードにおいて選択された風向調整羽根の傾斜角度が閾角度を超えているときは、開閉板を介して第1吸込口を閉じる。さらに制御部は、風向モードがスイングモードへ切り換えられたとき、傾斜角度が閾角度を超えない範囲で風向調整羽根を揺動させる。その結果、ショートサーキットが防止され、開閉板の繰り返し動作による視覚的不快感および聴覚的不快感が解消される。
【0010】
本発明の第2観点に係る空調室内機は、第1観点に係る空調室内機であって、閾角度の設定が可能である。制御部は、閾角度が設定された後のスイングモードにおいて、閾角度が、風向調整羽根の揺動範囲内にある場合には、閾角度が揺動範囲外となるように揺動範囲を調整する。
【0011】
この空調室内機では、閾角度を再設定したためにスイングモードにおいて閾角度が揺動範囲内に入ってしまった場合でも、制御部はその閾角度が揺動範囲外となるように揺動範囲を調整するので、ショートサーキットを防止するだけでなく、ユーザーに視覚的不快感および聴覚的不快感を与えることも防止することができる。
【0012】
本発明の第3観点に係る空調室内機は、第1観点又は第2観点に係る空調室内機であって、制御部が、閾角度が揺動範囲の下限角度となるように揺動範囲を調整する。
【0013】
この空調室内機では、揺動範囲の下限角度と閾角度とが離れて揺動範囲が狭くなることを防止するため、閾角度が揺動範囲の下限角度となるよう調整し、揺動範囲の最大化を図ることができる。
【0014】
本発明の第4観点に係る空調室内機は、第1観点から第3観点のいずれか1つに係る空調室内機であって、閾角度が、第1吸込口が開状態のときに吹出口から吹き出された調和空気が第1吸込口に直に吸い込まれる現象を発生させない限界角度である。
【0015】
この空調室内機では、制御部は、マニュアルモードにおいて選択された風向調整羽根の傾斜角度が閾角度を超えているときは、開閉板を介して第1吸込口を閉じる。さらに制御部は、風向モードがスイングモードへ切り換えられたとき、傾斜角度が閾角度を超えない範囲で風向調整羽根を揺動させる。その結果、ショートサーキットが防止され、開閉板の繰り返し動作による視覚的不快感および聴覚的不快感が解消される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1観点に係る空調室内機では、制御部は、マニュアルモードにおいて選択された風向調整羽根の傾斜角度が閾角度を超えているときは、開閉板を介して第1吸込口を閉じる。さらに制御部は、風向モードがスイングモードへ切り換えられたとき、傾斜角度が閾角度を超えない範囲で風向調整羽根を揺動させる。その結果、ショートサーキットが防止され、開閉板の繰り返し動作による視覚的不快感および聴覚的不快感が解消される。
【0017】
本発明の第2観点に係る空調室内機では、閾角度を再設定したためにスイングモードにおいて閾角度が揺動範囲内に入ってしまった場合でも、制御部はその閾角度が揺動範囲外となるように揺動範囲を調整するので、ショートサーキットを防止するだけでなく、ユーザーに視覚的不快感および聴覚的不快感を与えることも防止することができる。
【0018】
本発明の第3観点に係る空調室内機では、揺動範囲の下限角度と閾角度とが離れて揺動範囲が狭くなることを防止するため、閾角度が揺動範囲の下限角度となるよう調整し、揺動範囲の最大化を図ることができる。
【0019】
本発明の第4観点に係る空調室内機では、ショートサーキットが防止され、開閉板の繰り返し動作による視覚的不快感および聴覚的不快感が解消される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
(1)空調室内機10の構成
図1は、運転時の空調室内機10の斜視図である。また、
図2は、
図1における空調室内機10の断面図である。
図1及び
図2において、空調室内機10には、本体ケーシング11、室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40が搭載されている。
【0023】
(1−1)本体ケーシング11
本体ケーシング11は、天面部11a、前面パネル11b、背面板11c及び下部水平板11dを有し、内部に室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、フィルタ24、及び制御部40を収納している。
【0024】
天面部11aは、本体ケーシング11の上部に位置し、天面部11aの前部には、上部吸込口12が設けられている。
【0025】
前面パネル11bは空調室内機10の前面部を構成しており、吸込開口がない湾曲した形状を成している。また、前面パネル11bは、その上端が天面部11aに回動自在に支持され、ヒンジ式に動作することができる。
【0026】
(1−2)フィルタ24
上部吸込口12と室内熱交換器13との間にはフィルタ24が配置されている。フィルタ24は、上部吸込口12から吸い込まれた空気に含まれる塵埃を除去する。なお、フィルタ24は、フィルタ自動清掃ユニット25に組み込まれた状態で本体ケーシング11に収納されている。
【0027】
(1−3)室内熱交換器13
室内熱交換器13は、通過する空気との間で熱交換を行う。また、室内熱交換器13は、側面視において両端が下方に向いて屈曲する逆V字状の形状を成す。
【0028】
(1−4)室内ファン14
図2において、室内ファン14は、室内熱交換器13の下方に位置する。室内ファン14は、クロスフローファンであり、室内から取り込んだ空気を、室内熱交換器13に当てて通過させた後、室内に吹き出す。室内ファン14および室内熱交換器13は、底フレーム16に取り付けられている。
【0029】
(1−5)垂直風向調整板20
図1に示すように、垂直風向調整板20は、本体ケーシング11の吹出口15より奥側に配置されている。垂直風向調整板20は、複数の羽根片201と、複数の羽根片201を連結する連結棒203を有している。
【0030】
複数枚の羽根片201は、連結棒203が吹出口15の長手方向に沿って水平往復移動することによって、その長手方向に対して垂直な状態を中心に左右に揺動する。なお、連結棒203は、ステッピングモータ(図示せず)によって水平往復移動する。
【0031】
(1−6)風向調整羽根31
吹出口15が、本体ケーシング11の下部に設けられている。吹出口15には、吹出口15から吹き出される調和空気の方向を変更する風向調整羽根31が回動自在に取り付けられている。風向調整羽根31は、ステッピングモータ(図示せず)によって駆動し、調和空気の吹き出し方向を変更するだけでなく、吹出口15を開閉することもできる。風向調整羽根31は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。
【0032】
(1−7)コアンダ羽根32
また、吹出口15の近傍にはコアンダ羽根32が設けられている。コアンダ羽根32は、ステッピングモータ(図示せず)によって前後方向に傾斜した姿勢をとることが可能であり、運転停止時に前面パネル11bに設けられた収容部130に収容される。コアンダ羽根32は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。
【0033】
本実施形態の空調室内機10は、調和空気の吹き出し方向を制御する手段として、風向調整羽根31のみを回動させて調和空気の吹き出し方向を調整する通常吹出モードと、風向調整羽根31及びコアンダ羽根32を回動させてコアンダ効果によって調和空気をコアンダ羽根32の外側面32aに沿わせたコアンダ気流にして調整するコアンダ効果利用モードとを有している。
【0034】
なお、コアンダ(効果)とは、気体や液体の流れのそばに壁があると、流れの方向と壁の方向とが異なっていても、壁面に沿った方向に流れようとする現象である(朝倉書店「法則の辞典」)。
【0035】
(1−8)吹出流路18と吸込流路22
また、吹出口15は、吹出流路18によって本体ケーシング11の内部と繋がっている。吹出流路18は、吹出口15から底フレーム16のスクロール17に沿って形成されている。
【0036】
室内空気は、室内ファン14の稼動によって上部吸込口12、室内熱交換器13を経て室内ファン14に吸い込まれ、室内ファン14から吹出流路18を経て吹出口15から吹き出される。
【0037】
さらに本体ケーシング11の下面部には、下部吸込口21が吹出口15よりも壁側に設けられている。下部吸込口21は、吸込流路22によって本体ケーシング11の内部と繋がっており、吸込流路22は下部吸込口21からスクロール17に沿って形成されている。つまり、吸込流路22は、スクロール17を挟んで吹出流路18と隣接している。
【0038】
開閉板29が開状態のとき、下部吸込口21近傍の室内空気は、室内ファン14の稼動によって下部吸込口21、吸込流路22、フィルタ24及び室内熱交換器13を経て室内ファン14に吸い込まれ、室内ファン14から吹出流路18を経て吹出口15から吹き出される。
【0039】
(1−9)制御部40
図3は、空調室内機10の制御ブロック図である。
図3において、制御部40は、CPU41とメモリ42とを搭載している。制御部40は、垂直風向調整板20のステッピングモータ208、風向調整羽根31のステッピングモータ318、コアンダ羽根32のステッピングモータ328、及び開閉板29のステッピングモータ308に接続されている。
【0040】
また、制御部40は、遠隔操作装置(以下「リモコン45」とよぶ)と赤外線信号の送受信を行う。ユーザーは、制御部40に対しリモコン45を介して風向設定、閾角度設定、スイング範囲設定及び開閉板閉状態設定などの指令を送信することができる。それゆえ、リモコン45には、風向設定部451、閾角度設定部453、スイング範囲設定部455及び開閉板閉状態設定部457が設けられている。
【0041】
制御部40では、風向調整羽根31の動作による風向モードとして、スイングモードとマニュアルモードとが切換可能に設定されており、風向設定部451によって切り換えることができる。なお、スイングモードとは、風向調整羽根31の水平面に対する傾斜角度を自動で変更することによって風向調整羽根31を揺動させるモードである。マニュアルモードとは、風向調整羽根31の水平面に対する傾斜角度を使用者の選択する角度に維持するモードである。
【0042】
(2)細部構成
(2―1)下部吸込口21の開閉機構30
図4Aは、風向調整羽根31の下向きの傾斜角度θが閾角度θsより大きいときの下部吸込口21周辺の断面図である。また、
図4Bは、風向調整羽根31の下向きの傾斜角度θが閾角度θsより小さいときの下部吸込口21周辺の断面図である。
【0043】
図4Aにおいて、下部吸込口21には、開閉機構30が設置されている。開閉機構30は、回動式の開閉板29と、その開閉板29を回動させるステッピングモータ308を含む。
【0044】
開閉板29は、下部吸込口21の開口に嵌り込んで下部吸込口21を塞ぐことができる大きさである。開閉板29の回動軸307は下部吸込口21の長手方向両端部の上方に位置している。開閉板29と回動軸307とは、ヒンジリンク309とで連結されている。
【0045】
また、開閉板29が下部吸込口21を閉じる閉位置において、回動軸307は開閉板29の上方で且つ開閉板29の幅方向の中央よりも吹出口15寄りに位置している。それゆえ、回動軸307が
図4AにおいてCW方向に90°回動することによって、開閉板29は、その外面が下部吸込口21の前方縁(吹出口15に近い側の縁)に近接した鉛直姿勢となる。
【0046】
その結果、
図4Bに示すように、開閉板29は下部吸込口21から鉛直下方へ僅かに突出した状態となる。その突出寸法は、開閉板29の幅方向寸法の半分以下が好ましい。なぜなら、空調室内機10の取り付け位置がカーテンレールの真上にあるような場合、開閉板29の突出寸法が長過ぎるとカーテンレールと干渉するからである。
【0047】
この場合、開閉板29の突出寸法が短いので、吹出口15から下部吸込口21の方向に流れ出た気流の遮断が不十分となり、ショートサーキットが発生する可能性がある。それゆえ、風向調整羽根31の傾斜角度θが下向きに閾角度θsより大きい場合には、下部吸込口21を閉じる制御によって、ショートサーキットを未然に防止する。つまり、閾角度θsは、風向調整羽根31の傾斜角度θのうち、ショートサーキットを発生させない下向きの限界角度と言える。
【0048】
ここで、ショートサーキットとは、下部吸込口21が開状態のときに吹出口15から吹き出された調和空気が風向調整羽根31を越えて下部吸込口21に直に吸い込まれる現象をいう。
【0049】
本実施形態では、断面が円弧形状の風向調整羽根31を採用しているので、風向調整羽根31の水平面に対する傾斜角度θを認定する際には、
図4A及び
図4Bに示すように、風向調整羽根31の上面前端Fと上面後端Rとを結んだ直線と水平面との角度をもって傾斜角度θとしている。
【0050】
(2−2)リモコン45の風向設定部451
風向設定部451は、風向モードをマニュアルモード及びスイングモードのいずれか一方を選択させる構成になっている。さらに、マニュアルモードを選択した場合、所定角度範囲内で風向調整羽根31の傾斜角度θの選択が可能である。
【0051】
例えば、風向調整羽根31がスイングモードで動作中に、使用者が風向モードをマニュアルモードへ切り換えた場合、風向調整羽根31はその切り換え操作直後の傾斜角度θで停止し、使用者が風向設定をしなければその傾斜角度θはそのまま維持される。
【0052】
さらに、風向は段階的に切換可能であり、例えば上向きから下向きへ5段階の風向設定が可能である。したがって、使用者が風向モードをマニュアルモードへ切り換えた場合、風向調整羽根31はその切り換え操作直後の傾斜角度θで停止することもできるが、使用者が5段階の風向から一の風向を選択することによってその風向に設定維持される。
【0053】
なお、閾角度θsは、上記所定角度範囲内に設定されており、ショートサーキット防止のため、制御部40が下部吸込口21の開閉の判断を行うための閾値となる。
【0054】
(2−3)リモコン45の閾角度設定部453
制御部40では、風向調整羽根31の水平面に対する傾斜角度のうち、ショートサーキットを発生させない下方限界の角度である閾角度θsの設定が可能であり、閾角度設定部453(
図3参照)によって設定することができる。
【0055】
この閾角度θsは、空調室内機10の機種によっては異なることがあるので、空調室内機10が工場出荷される際に設定される。それゆえ、メーカー側がマイナーチェンジ等によって風向調整羽根31の閾角度θsの変更が必要な場合は、容易に設定値を変更することができる。
【0056】
また、サービスパーソンまたはユーザー側にとっても、空調室内機10の据え付け位置によって予め設定されていた風向調整羽根31の閾角度θsが適切でないような場合にはその閾角度θsを容易に変更することができるので、使い勝手がよい。
【0057】
(2−4)リモコン45のスイング範囲設定部455
また、制御部40では、風向調整羽根31のスイングモードにおけるスイング範囲を設定が可能であり、スイング範囲設定部455によって設定することができる。
【0058】
スイング範囲は、空調室内機10の機種によっては異なることがあるので、空調室内機10が工場出荷される際に設定される。それゆえ、メーカー側にとってマイナーチェンジ等によって風向調整羽根31のスイング範囲の変更が必要な場合には、容易にそれを変更することができる。
【0059】
また、サービスパーソンまたはユーザー側にとっても、空調室内機10の据え付け位置によって予め設定されていた風向調整羽根31のスイング範囲が適切でないような場合にはそのスイング範囲を容易に変更することができるので、使い勝手がよい。
【0060】
(2−5)開閉板閉状態設定手段
さらに、制御部40では、下部吸込口21を開閉板29によって常に閉じた状態に設定することが可能であり、開閉板閉状態設定部457によって設定することができる。例えば、ユーザーが開閉板29による下部吸込口21の開閉動作を不快に感じる場合には、ユーザー自身が下部吸込口21を閉じたままに設定することができるので、ユーザーにとって使い勝手がよい。
【0061】
(3)下部吸込口21の開閉制御
(3−1)マニュアルモードによる風向設定時の下部吸込口21の開閉制御
例えば、ユーザーがリモコン45の風向設定部451を介して風向調整羽根31の傾斜角度θを変更し、変更後の傾斜角度θを確定したとき、その確定後の傾斜角度θが下向きに閾角度θsより大きかった場合、制御部40は、開閉板29を介して下部吸込口21を閉じて、ショートサーキットの発生を防止する。
【0062】
逆に、ユーザーがリモコン45の風向設定部451を介して風向調整羽根31の傾斜角度θを変更し、変更後の傾斜角度θを確定したとき、その確定後の傾斜角度θが閾角度θsより小さくなった場合、制御部40は、ショートサーキットの発生はないと判断して、閉じていた下部吸込口21を開ける。
【0063】
但し、制御部40が、開閉板29を介して下部吸込口21を開閉するのは、風向調整羽根31の動作が完了した後である。なぜなら、ユーザーが風向調整羽根31による風向設定を繰り返している間は、風向調整羽根31の姿勢(傾斜角度)は確定しておらず、風向調整羽根31の姿勢が確定しないまま、開閉板29が下部吸込口21の開閉動作に入った場合、風向が設定される毎に開閉板29の動作が繰り返され、ユーザーに不快感を与えるからである。
【0064】
しかし、風向調整羽根31の動作が完了した後に開閉板29が下部吸込口21の開閉動作に入ることによって、開閉板29の不要な動作が省かれるので、ユーザーの不快感も解消される。以下、フローチャートを参照しながら上記制御を説明する。
【0065】
図5は、マニュアルモードによる風向設定時の下部吸込口21の開閉制御の制御フローチャートである。
図5において、制御部40は、ステップS1で「マニュアルモードの風向設定指令があるか否か」を判定し、当該指令があるときはステップS2へ進み、当該指令がないときは待機して、当該指令があるか否かの判定を継続する。
【0066】
次に、制御部40は、ステップS2で「風向調整羽根31の動作が完了したか否か」を判定し、風向調整羽根31の動作が完了したと判定したときはステップS3へ進み、風向調整羽根31の動作が完了していないと判定したときは待機して、風向調整羽根31の動作が完了したか否かの判定を継続する。
【0067】
ここで、制御部40は、ステッピングモータ318へ入力するパルス数および/又はステッピングモータ318の励磁状態に基づいて風向調整羽根31の動作が完了したか否かを判定している。ステッピングモータ318には、風向調整羽根31が現在位置から狙いの傾斜角度θとなる位置までに相当する目標パルスが入力されるので、入力パルス数が目標パルスに到達するまでの間は風向調整羽根31の動作が完了しない。したがって、ステッピングモータ318への入力パルス数に基づいて風向調整羽根31の動作の完了を合理的に判定することができる。
【0068】
また、ステッピングモータ318にパルスが入力されている間は、ステッピングモータ318は励磁状態であるので、励磁状態であるか否かによっても風向調整羽根31の動作完了を合理的に判定するができる。
【0069】
制御部40は、ステップS3で「風向調整羽根31の傾斜角度θが閾角度θsを超えているか否か」を判定し、傾斜角度θが閾角度θsを超えていると判定したときはステップS4へ進み、傾斜角度θが閾角度θsを超えていないと判定したときはステップS5へ進む。
【0070】
制御部40は、ステップS4で開閉板29を介して下部吸込口21を閉じる。これによって、風向調整羽根31の姿勢が確定しないまま、風向が設定される毎に開閉板29の動作が繰り返されてユーザーに不快感を与えるという事態を防止することができる。
【0071】
なお、制御部40がステップS3で「傾斜角度θが閾角度θsを超えていない」と判定してステップS5へ進んだ場合は、ステップS5において開閉板29を介して下部吸込口21を開ける、或いは、当初から開いている場合はそのまま開状態を維持する。なぜなら、風向調整羽根31の傾斜角度θが閾角度θsよりも大きくなることがないので、下部吸込口21を開状態に維持していても、ショートサーキットが発生しないからである。
【0072】
(3−2)スイングモードにおける下部吸込口21の開閉制御
本実施形態では、閾角度設定部453を介して閾角度θsを変更すること、或いは、スイング範囲設定部455を介してスイング範囲を変更することができるため、変更前は閾位置(風向調整羽根31の傾斜角度θが閾角度θsとなる位置)が風向調整羽根31のスイングモードのスイング範囲内に入っていなかったのに対し、変更後は閾位置が風向調整羽根31のスイング範囲内に入ってしまうことが想定される。
【0073】
ユーザーがリモコン45の風向設定部451を介して風向モードをスイングモードに設定したとき、或いはマニュアルモードからスイングモードに切り換えたとき、閾位置が風向調整羽根31のスイング範囲にある場合には、風向調整羽根31の傾斜角度θが閾角度θsよりも大きくなったり小さくなったりするので、その都度、開閉板29が下部吸込口21を開閉した場合、ユーザーに視覚的不快感を与えるだけでなく、開閉板29の動作時の音による聴覚的不快感をも与える懸念がある。
【0074】
そこで、本実施形態では、風向モードがスイングモードに設定されたとき、或いは、マニュアルモードからスイングモードに切り換えられたとき、風向調整羽根31の傾斜角度θが閾角度θsを超えない範囲で風向調整羽根31を揺動させる。以下、フローチャートを用いて、その詳細を説明する。
【0075】
図6は、スイングモードにおける下部吸込口21の開閉制御の制御フローチャートである。
図6において、制御部40は、ステップS21で「スイングモードの設定指令があるか否か」を判定し、スイングモードの設定指令があるときはステップS22へ進み、スイングモードの設定指令がないときは待機して、「スイングモードの設定指令があるか否か」の判定を継続する。
【0076】
次に、制御部40は、ステップS22で「閾位置(風向調整羽根31の傾斜角度θが閾角度θsとなる位置)が揺動範囲(スイング範囲)内であるか否か」を判定し、閾位置がスイング範囲内であるときはステップS23へ進み、閾位置がスイング範囲内でないときはステップS25へ進む。
【0077】
制御部40は、ステップS23で風向調整羽根31の傾斜角度θが閾角度θsを超えないように風向調整羽根31のスイング範囲を調整する。これによって、風向調整羽根31の傾斜角度θが閾角度θsを超えることがなく、開閉板29による下部吸込口21の繰り返し開閉が防止されるので、ユーザーに視覚的不快感および聴覚的不快感を与えることがない。
【0078】
なお、制御部40がステップS22で「閾位置がスイング範囲内でない」と判定してステップS25へ進んだ場合は、ステップS25においてスイングモードを実行する。
【0079】
制御部40は、ステップS24で「閾位置が調整後の風向調整羽根31のスイング範囲外であるか否か」を判定し、閾位置がスイング範囲外であるときはステップS25へ進み、閾位置がスイング範囲外でないとき、すなわち閾位置がスイング範囲内のときは再びステップS23へ戻り風向調整羽根31のスイング範囲を調整する。そして、制御部40は、ステップS25においてスイングモードを実行する。
【0080】
ところで、制御部40がステップS23で風向調整羽根31の傾斜角度θが閾角度θsを超えないように風向調整羽根31のスイング範囲を調整する際、制御部40は閾角度θsがスイング範囲の下限角度となるよう調整する。なぜなら、スイング範囲の下限角度と閾角度θsとが離れて揺動範囲が狭くなることを防止して、スイング範囲の最大化を図ることができるからである。
【0081】
(4)下部吸込口21の開閉制御の具体例
(4−1)具体例A
例えば、空調室内機10の据え付け位置の下方に家具があり、吹き出された調和空気の方向がその家具によって偏向され、風向調整羽根31が予め設定されていた閾角度θsに到達する前にショートサーキットが発生するような場合、閾角度θsがそのまま維持されることは適切でない。そのような場合、サービスパーソンは、閾角度設定部453を介して閾角度θsを初期設定知よりも小さい値に設定することができる。したがって、変更後の閾角度θsにおける風向調整羽根31は、変更前に比べて上向きとなる。
【0082】
空調室内機10の据え付け後、ユーザーは何も知らずにマニュアルモードで風向調整羽根31の傾斜角度θを変更後の閾角度θsより大きく設定し、吹き出された調和空気の方向が家具によって偏向されてショートサーキットを引き起こしそうな状態になっても、上記ステップS1〜S5の制御が行われることによって、制御部40が開閉板29を介して下部吸込口21を閉じるので、ショートサーキットの発生は回避される。
【0083】
他方、閾角度θsの変更の影響として、変更前は閾位置(風向調整羽根31の傾斜角度θが閾角度θsとなる位置)が風向調整羽根31のスイングモードのスイング範囲内に入っていなかったのに対し、変更後は閾位置が風向調整羽根31のスイング範囲内に入ってしまい、風向調整羽根31が閾位置を超えて下向きになっているにも拘わらず下部吸込口21が開いたままになる、という不都合な事態が想定される。
【0084】
しかしながら、上記ステップS21〜S25の制御が行われることによって、制御部40が、スイングモードにおいて閾位置が風向調整羽根31のスイング範囲にある場合には、閾位置がスイング範囲外となるようにスイング範囲を調整する。その結果、上記のような不都合な事態が回避される。
【0085】
(4−2)具体例B
例えば、空調室内機10の据え付け位置が標準よりも高位置になったため、予め設定されていた風向調整羽根31のスイング範囲では空調室内機10の下方から前下方にかけて広範囲に調和空気が届かない状態になるような場合、スイング範囲がそのまま維持されることは適切でない。そのような場合、サービスパーソンは、スイング範囲設定部455を介してスイング範囲を初期設定知よりも広く、つまり、下向きにより大きく設定することができる。
【0086】
他方、スイング範囲の変更の影響として、変更前は閾位置が風向調整羽根31のスイング範囲内に入っていなかったのに対し、変更後は閾位置が風向調整羽根31のスイング範囲内に入ってしまい、風向調整羽根31が閾位置を超えて下向きになっているにも拘わらず下部吸込口21が開いたままになる、という不都合な事態が想定される。
【0087】
しかしながら、上記ステップS21〜S25の制御が行われることによって、制御部40が、スイングモードにおいて閾位置が風向調整羽根31のスイング範囲にある場合には、閾位置がスイング範囲外となるようにスイング範囲を調整する。その結果、上記のような不都合な事態が回避される。
【0088】
(5)特徴
(5−1)
空調室内機10では、制御部40は、マニュアルモードにおいて選択された風向調整羽根31の傾斜角度θが閾角度θsを超えているときは、開閉板29を介して下部吸込口21を閉じる。さらに制御部40は、風向モードがスイングモードへ切り換えられたとき、傾斜角度θが閾角度θsを超えない範囲で風向調整羽根31を揺動させる。その結果、ショートサーキットが防止され、開閉板29の繰り返し動作による視覚的不快感および聴覚的不快感が解消される。
【0089】
(5−2)
空調室内機10では、閾角度θsを再設定したためにスイングモードにおいて閾角度θsがスイング範囲内に入ってしまった場合でも、制御部40はその閾角度θsがスイング範囲外となるように揺動範囲を調整するので、ショートサーキットを防止するだけでなく、ユーザーに視覚的不快感および聴覚的不快感を与えることも防止することができる。
【0090】
(5−3)
空調室内機10では、スイング範囲の下限角度と閾角度θsとが離れて揺動範囲が狭くなることを防止するため、閾角度θsがスイング範囲の下限角度となるよう調整し、スイング範囲の最大化を図ることができる。